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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3
- 1 :TACCHI:2006/09/18(月) 03:42
- すいません、前スレ埋めてしまいまして(汗)
今度から、こっちでお願いしますm(_ _)m
- 659 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/07/10(火) 23:42
-
ラジオは聴いてないんですけど、各所の話題から想像して書いてみました。
>>647-654 統計(仮称)さん
私も気にしてましたけど、気にしない方がいいらしいです、長さ。
で、ちょっとうまく数字で絡めたいい話でした。
小春いい子だなあ……(ホロリ
統計さんの“僕”がどんどんと他の誰でもない“僕”になってきてる感じがしました♪
- 660 :−ストレッチ−:2007/07/11(水) 00:35
-
「よいしょっと」
一人、ダンスレッスンの準備のため、早めに来てストレッチをする。
開脚をして、ベターっと頭を床につけて深呼吸をする。
「ん〜…やっぱり、股関節がちょっと硬くなってるかも…」
「おはようございま〜す♪」
鏡を写して見えたのは、レッスン着の絵里が立っている。
僕は、開脚したまま顔を上げた。
「あぁ、絵里。おはよ〜♪」
「あ、先輩おはよ…えぇ〜!?」
絵里は、僕を見て驚いた表情をしている。
「どうしたの?」
「先輩って、そんなに体柔らかいんですか?!」
「うん、そうだけど…あれ? 知らなかった?」
「はい、先輩コンサートの時いつも自分の楽屋に居るから」
「そっか、みんなでストレッチとかしないもんなぁ〜…あ、絵里。後ろから
押してくれないかな?」
「はぁ〜い♪」
絵里が、僕に駆け寄ってきて背中を優しく押す。
「うわ〜、やわらか〜い♪」
「絵里も、柔らかいじゃん。それと、一緒だよ」
「でも、男の人もこんなに柔らかくなるんですね」
「まぁ、毎日努力してますから」
「さすが、先輩♪ えいっ!!」
僕の体に急に重みが加わった。
「ちょ、ちょっと絵里〜お、重い…」
「むぅ〜、重くないです〜」
絵里が、さらに僕に体重を預けてくる。ってか、背中になんか当たってるから!!
- 661 :−ストレッチ−:2007/07/11(水) 00:35
-
「ギブ、ギブ!!」
「許しませ〜ん!! 絵里は、重くないです〜」
我慢できなくなって無我夢中で体を捻る。
「キャッ!!」
僕は、気づくと絵里の上に倒れこんでいた。
「あ、ご、ごめん!!」
慌てて離れようとすると、絵里は僕をがっちりと腕でロックして離そうとしない。
「絵里?」
「先輩…たまには、甘えていいですよね?」
絵里は、僕を見つめていた。そして、ゆっくりと目をつぶる。
「・・・」
僕も、そのまま絵里の唇に…
「おはようございま〜す!!」
レッスン場に愛ちゃんが、元気に入ってきた。慌てて離れる二人。
「おぉ、●●と絵里。早いね〜」
「う、うん。ちょっと早めに来て絵里にストレッチ手伝ってもらってたから」
「ほんまかぁ〜。あ、絵里昨日話してた服屋行ってきたやよ♪」
「ほんとに♪」
絵里が、愛ちゃんの方へ向かおうとする時僕の耳元でこう囁いた。
『また、一緒にストレッチしましょうね♪』
僕は、その後なぜかレッスン場で筋トレを始めていた。
- 662 :TACCHI ◆wJKONNaqEI :2007/07/11(水) 00:40
-
今回は、亀井さんを中心に…
チョイエロでw
>>659 匿名さん
ラジオ聞いてないんですが、なんか作品見ただけで、修羅場みたいな
感じがしますねw
女の子って怖いなぁ〜って、この作品見て改めて思いましたね…
今週中にもう一本書けたら書きます。三連休は、暇なので…(泣)
- 663 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:00
-
「おはようございまーす」
久住さんとの、ちょっとした遊びが終わってすぐ。
ドアが開く音と共に、聞き慣れた声が楽屋に響いた。
「あー、ミッツィーおはよー」
「おはよ。お邪魔してます」
「あ、せんぱいに久住さん。おはようございます」
ペコリとお辞儀しつつ、改めて挨拶してくれる光井さん。
そんな彼女を見てふと思い、久住さんに問いかける。
「光井さんは…どう?」
「はい?」
「さっきの、太陽は誰かって話」
「…なんでですか?」
「………」
「………」
「…いや」
「え?」
「ごめん。なんでもない」
…自分のアホ。
- 664 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:01
-
「ミッツィー」
「はーい」
言いながら、久住さんが手招きする。
光井さんは笑みを浮かべながら、トテトテと寄ってきた。
「おふたりで、なにしてたんですか?」
「えっとねー、地球とその仲間たちの話」
「…へ?」
光井さんが首をかしげる。
「光井さん、太陽系」
「…あー」
「七夕でしょ今日。織姫星のことから、話が飛んでさ」
「そういえば、七夕でしたね今日」
「そうそう。それで、せんぱいが太陽なの」
「…はい?」
光井さんが再び首をかしげる。
久住さん…もうちょっと説明してあげないと、ね。
「僕が太陽で、光井さんたちが惑星なんだってさ」
「………」
「ほら、数。ぴったりじゃない?」
「…なるほど」
指折りしながら、光井さんが答える。納得したようだった。
- 665 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:01
-
「…わたしは、冥王星かな」
「え?」
「………」
「…なんで、そう思うの?」
「うーん。いちばん年下、だから?」
「………」
「あ、いや。なんとなくです。なんとなく」
「………」
そう言って、ごまかす光井さんだったけど。
自らの謙譲と、他のメンバーへの尊敬を意識した言葉に思えた。
まだ14歳、中学生の光井さんだけど。
こういうところが妙にしっかりしてて、感心する。
「せんぱい」
「………」
「せんぱい?」
「あ、ごめん。なに?」
「太陽にいちばん近いのって、確か水星ですよね?」
「ああ…そうだね」
「…誰でしょうね?」
「え?」
「せんぱいが、太陽なら」
「…うん」
「水星は?」
「………」
- 666 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:02
-
質問の真意。分かったような、分からないような。
そして、答えられないというか、答えたくないというか。
僕を見つめる光井さんは、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
どうやらからかわれているらしく、ちょっと憎らしく見えた。
…よーし。
- 667 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:03
-
「光井さん」
「…え?」
「光井さん、だよ」
「………」
顔を赤くする光井さん。
さっきから一転して、とても可愛らしく見えた。
「や、でもお」
「なに?」
「わたしはー。ほら、さっき」
「うん。光井さんはそう思ってるのかもしれないけど」
「………」
「僕は、そうじゃないから」
「………」
「…だめ?」
「え?」
「僕がそういう風に思ってるの、迷惑?」
「やっ、そんなこと。…でもぉ」
「でも?」
「………」
今度は、俯き加減でモジモジし始める光井さん。
ちょっと、やりすぎたかな。
- 668 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:04
-
「…ごめん」
「え?」
「冗談」
「………」
「光井さんの質問、ちょっと意地悪だったから。つい」
「…もう」
「うん。でも、ごめんね」
「いえ、わたしも。ごめんなさい」
一瞬、頬をふくらませた光井さん。
けど、すぐに笑顔に戻って、許してくれた。
「…でもさ」
「はい?」
「100パーセント、冗談ってわけじゃないよ」
「………」
「初めて会ってからまだ半年だし」
「………」
「仕事も、別々のこと多いじゃない?」
「…はい」
「だから光井さんのこと、まだよく分かってないと思う」
「………」
「だから…気になってる、っていうか」
「………」
「うまく、言えないんだけど」
「…わたしも」
「え?」
「おんなじこと、思ってました。たぶん」
「…そっか」
「はい」
「………」
「………」
そう2人で言いあい、2人で見つめあって。
そして、2人で笑いあった。
- 669 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:04
-
「…ちょっとー」
「「あ…」」
やばい。すっかり忘れてた。
「なに2人でいい雰囲気作っちゃってるんですかー」
「ごめんなさい」
「ごめん」
「だめです」
光井さんと違って、久住さんはなかなか許してくれなかった。
- 670 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/12(木) 21:05
-
>>647-654 の続きということで。
これで7人、順番に、ひと通り登場させ終わりました。
最後の方は、無理矢理です。こんなんでどうもすいません。
>>656-658
へぇー、こんな話が。知りませんでした。
>>660-661
こういう描写って難しいと思いますが、うまくこなされますね。
- 671 :『経験値』:2007/07/15(日) 23:43
-
パーティを終えた帰り道、比較的近くに住むメンバーを送り終えた僕は車を停めミラー越しに後部座席へ目をやった。
綺麗にラッピングされた色とりどりの荷物に囲まれて、窓ガラスにもたれて静かな寝息。
一つだけ、膝の上にあるのは僕が送ったプレゼントだった。
「そんなに抱え込まなくても……」
両手で包むように大事そうに抱えられたそれは、さゆが本当に喜んでくれたという印のようでこっちまで嬉しくさせられる。
腕の中にあるそれを誰にも取られるもんかって、そんな風に主張しているみたいだった。
「誰も取ったりしないのにね」
喉を鳴らすように笑ったのが聞こえたんだろうか、さゆが「んっ」と吐息を洩らす。
ミラー越しのさゆが薄く目を開き、確かめるように瞳をさまよわせた。
「さゆ?」
後ろへ半身を乗り出して問いかけるように名前を呼ぶと、薄く開いていた瞳が僕へ向くのが解った。
- 672 :『経験値』:2007/07/15(日) 23:43
-
「さゆ」
「……せんぱい?」
もう一度、抑えた声で呼びかけると、寝ていたためだろう僅かに掠れた声が返ってくる。
「さゆみ…、寝ちゃってたんですね」
「はしゃぎすぎたんじゃない?」
そうからかうと、少し身体を起こしたさゆが「そんなことないですぅ」と可愛らしい反論をしてくる。
その口振りがとても“らしくて”、僕は更に言葉を重ねる。
「いくら主賓だからってあんなにはしゃげば疲れるのも無理ないよ」
「イーッだ。……せんぱいイジワル」
拗ねる仕草も自分で言うだけあってなかなかに可愛らしいけど、本当に拗ねられると厄介なことも学んでいる。
引き時だと判断して話題を変えるために目に付いたものへ話を流した。
「にしてもさ、そんなに喜んでもらえた? それ」
「え? あぁ」
さゆは腕の中の包みに目を落とし、そのプレゼントを見つめたままで、ポツリと「嬉しいですよ」と呟いた。
- 673 :『経験値』:2007/07/15(日) 23:44
-
「気に入ってくれたなら嬉しいけど。自分で言うのもヘンだけど、大した物じゃないのに」
「せんぱいがくれた物だから」
「そりゃどーも。結構悩んで決めたものではあるんだけどね。こないだのお詫びの意味――、あっと」
「おわ…なんのことですか?」
「…ほら、桃子ちゃん」
「ああ、あれ。あれは別に」
「解ってる。好きは好きなんだよね」
「そーですよ。ただあのときだけぇ……」
「うん。だから。あのときのお詫び」
そう改めて言った僕を何故だかさゆはじっと見つめている。
少し首をかしげてチラリと視線を逸らしたさゆは、少し表情を変えて話し出した。
「なら、一つお願いしていいですか?」
「…なにを?」
「オッケーしてくれなきゃ言いませんっ」
- 674 :『経験値』:2007/07/15(日) 23:45
-
妙な押しの強さにイヤな予感はしたけれど。
まあ誕生日祝いだと思って取り敢えず了承の言葉を返す。
「……いいよ」
「ホントに?」
「…ホントに」
「じゃあちょっとだけ目閉じててください」
「ヘンなことしない?」
「しません。ヘンなことってなんですか」
「……さあね。じゃあ、はい」
なかなか侮りがたい。
仕方なく目を閉じて、残った感覚に身を委ねる。
微かな衣擦れの音と揺らぐ気配。
半ば直感で身を退いて目を開くと、目を閉じたさゆがすぐそこにいた。
様子を窺うようにゆっくりと開いていく瞼が上がりきる前にヒョイと顔を寄せた。
「あっ」
頬へ手をやったさゆが小さな驚きを洩らし、それからなにをされたのか気がついたように呟いた。
「やっぱりせんぱいってばイジワルです」
自分の悪戯がうまくいかなかったことを残念そうに。
けれど少しだけ嬉しそうにはにかむさゆへのハッピーバースデイ。
- 675 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/07/15(日) 23:54
-
遅くなったけど道重さんおめ。
遅くなるけど明日は小春をなんとか…したいかな。
>>660-661 TACCHIさん
亀井さんで微エロいーですね。
明日辺りまた更新でしょうか。わくわく。
>>663-669 統計さん
ヤキモチ小春♪
いや、主役は光井さんですね。
そうか、もう書ききりましたか……で、次は?(笑)
まだまだ期待してますからねー。
- 676 :『指定席』:2007/07/17(火) 02:24
-
連日の――正しくは一日空いてるけれど――誕生パーティだった。
一昨日のさゆのバースディは、翌日のスケジュールに余裕があったおかげでそれなりのものだったけれど、今日、小春ちゃんのそれは仕事終わりの控え室を借りた簡素なものになってしまった。
それは前から解っていたことだけど、たった二日違いで、しかも小春ちゃんの方が年下なのに、我慢を強いているようで可哀想だと感じていた。
もちろん小春ちゃんはそれに不平を言うわけではないし、表情に出すこともないけれど、きっと淋しく感じているに決まっている。
だから。
少しでも喜んでほしくて、ほんの些細なサプライズを用意した。
デリバリーのピザや買い込んだ飲み物、食べ物での簡単なパーティを終えて、愛佳ちゃんから順にプレゼントを渡していく。
そうして僕自身の番になり、目の前に小春ちゃんがやってくる。
「せんぱい?」
両手になにも持っていない僕へ訝るような愛ちゃんの声。
小春ちゃんは大きな瞳で真っ直ぐに僕を見ている。
「僕からのプレゼントはここにはないんだ」
「え?」
「おいで」
そう誘ってドアを開ける。
小春ちゃんの後についてこようとするメンバーへ「小春ちゃんだけだよ」って笑うと、一斉に不満を訴える声が上がる。
呆れた口調で「誰の誕生日?」と問い掛けたら瞬く間にその声が止んだ。
まあ何人かは言いたいことがありそうな顔だったけれど。
それは後でフォローするとして、今は小春ちゃんに意識を戻す。
- 677 :『指定席』:2007/07/17(火) 02:25
-
廊下へ出たところでこっちを見て待っている小春ちゃんの背を押して、一つ隣の部屋の扉で立ち止まる。
「どうぞ、お嬢さま」
大仰な仕草で小春ちゃんに、開けた扉の奥を指し示す。
照明だけがつけられたテーブル一つしかない部屋へ小春ちゃんが入ったことを確かめて、後へ続いた僕は後ろ手に扉を閉める。
その音で振り向いた小春ちゃんが不思議そうな表情を見せたそのとき、なにも言わずに照明を落とした。
「きゃあ!?」
突然の暗闇に小春ちゃんの悲鳴が重なった。
僕は闇の中で感覚的に伸ばした手で小春ちゃんを捉える。
「やあっ、せんぱい!? 怖いよおっ」
「大丈夫だから。すぐそばにいるから。ね? 落ち着いて」
「っ……、せんぱい」
よほど怖かったのかしがみついて離れない小春ちゃんを片手に、空いた手でそっとスイッチを探った。
指先に触れた感触でそれがそうだと解り、スイッチを入れると僅かな光源となる。
まったく見えなかった小春ちゃんの顔が見えて、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
その大きな瞳にうっすらと涙を浮かべ、僕の腕を掴んだ手が強ばっていることも解ったから。
「ごめん。ちょっとやりすぎた」
「…せんぱぁぃ」
顔を上げた小春ちゃんが僕を見つけ語尾が弱く震える。
驚かせたいとは思ったけれど怖がらせるつもりなんて無かった。
- 678 :『指定席』:2007/07/17(火) 02:26
-
「ごめんね。ちょっと驚かせようとした。ホント、ごめん」
「…せんぱい?」
「見て」
「え? ……うわぁ」
僕に釣られるように視線をあげた小春ちゃんが感嘆の声を上げる。
「星だぁ」
「うん。なにがいいかなって考えたとき、この前した話を思いだしたんだ」
「この前? あっ」
「小春ちゃん専用の星たち」
「嬉しいです。ありがとうございます」
僕の腕を掴んでいた手から力が抜けて、いつの間にか優しく絡めるように変わっていた。
その手が不意にクンと引かれる。
「せんぱい?」
「うん?」
「小春専用なんですよね?」
小春ちゃんが満天の星を見上げてそう確認してきた。
言うまでもなく、それは小春ちゃんのためのものだから。
「そうだよ」
「なら……こうやってる小春の横は、せんぱい専用です」
「…そっか。うん、嬉しいね」
「嬉しいですかあ?」
「うん。嬉しいよ」
「せんぱいが嬉しいと小春も嬉しいです」
そう笑う小春ちゃんはこの部屋を埋める星たちでは到底敵わない。
作られたそれではない自然な、素敵な笑顔を浮かべていた。
- 679 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/07/17(火) 02:27
-
小春おめ
- 680 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 22:59
-
「うーん」
いつもの楽屋。
大きな鏡を前に、前を向いたり横を向いたり。
いつも以上に、自分の身なりが気になっていた。
とある番組の収録。その都合で、スーツを着ることになった。
仕事でまともにスーツを着るのなんて、初めてかもしれない。
最初は、番組の方で用意してくれることになっていたけど。
丁度よい機会だと思って、自分で新調することにした。
仲の良いスタイリストさんに、いろいろアドバイスをもらって。
そうして完成した一着を今、身につけている。
注文したときには、それなりに納得したつもりだった。
しかし、ひとりでこうして着てみると、どうにも違和感がある。
普段、滅多に着ないこともあるんだろうと思う。でも。
「…着られてる、かな」
自嘲と諦めの混じった言葉を吐いて、鏡から離れた。
- 681 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:00
-
コンコン
みんなの楽屋への入り口。来訪を告げる。
「遊びに来ませんか?」
高橋さんからの誘いの電話。
今の自分の格好のことをすっかり忘れて、
いつもの調子で応じてしまったことを少し後悔していた。
「笑われちゃうかな」
さっき鏡の前で抱いた感情をそのままに、ぼやく。
と、目の前の扉が開いて高橋さんが現れた。
「せんぱい?」
「高橋さん」
「あ…」
「…来たよ」
「………」
「…高橋さん?」
「………」
言葉を発しない高橋さん。その視線が上下に動く。
- 682 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:01
-
「…変?」
「えっ?」
「いや、服」
「あ、やっ」
「高橋さん黙っちゃったから」
「………」
「やっぱり、おかしかったかなって」
「いや、あの。ほやなくてっ」
「ん?」
「ちょっと、びっ、びっくりしてしもうて」
「…そっか」
「はい…ごめんなさい」
「そんな。謝らないでよ」
「はい…ごめんなさい」
「いや、だから」
「あ…はい」
「うん」
「あ。とりあえず、どうぞ?」
「…うん。お邪魔します」
…びっくりした、か。
それはそれで、ちょっとショック…かも。
- 683 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:01
-
高橋さんに続いて、楽屋の中に入る。
「せんぱいのスーツ姿って、初めてかも」
「だよね」
「はい。なんか、新鮮ですね」
高橋さんが改めて、僕の方を眺めてくる。
「せんぱい?」
「なに?」
「クールビズ、ですか?」
「え?」
「だって」
高橋さんはそう言って、手を何かつまむような形に変える。
それを自分の首にあて、次いで胸元の方へと動かしていった。
「ああ、ネクタイ?」
「はい」
「まだ時間あるから、後でしようと思って」
「あ、そっか」
「うん」
「………」
少し考える風の高橋さん。次の言葉を待った。
- 684 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:02
-
「…せんぱい?」
「なに?」
「その、よかったら」
「うん」
「わたしが…締めて、あげましょか?」
「え?」
「ネクタイ」
「………」
控えめな、そしてためらいがちな提案。
即答できずに黙っている僕に、高橋さんが続ける。
「…イヤ、ですか?」
「あ、いや」
「………」
「嫌ってことは、ないんだけど」
「したら」
「…じゃあ、お願いできる?」
「はい!」
「持って来るから、ちょっと待ってて」
「はい、待ってます」
…まあ、いっか。
結局押し切られた形になってしまったけど。
嬉しそうな高橋さんを見て、そう思った。
- 685 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:02
-
「よろしくね」
「はい、せんぱい」
高橋さんは、僕が差し出したネクタイを受け取ると、
僕のすぐ目の前まで寄ってきて、シャツの襟に手を添えてきた。
とても慎重な、高橋さんの手つき。
慣れていないというのも、もちろんあるんだろうけど。
とても大切に扱われているように感じられて、すごく心地よかった。
それと。
…ドキドキする。
なんだろう、これ。よく分からない。困った。
と、とにかく。気づかれたら、すごく気まずい。きっと。
そう思って、動揺を表に出すまいとした。その矢先。
僕の首に手を回したまま、高橋さんの動きが止まる。
「せんぱい」
「な、なに?」
「わたし、さっき嘘つきました」
「さっき、って?」
「ドア開けたとき。せんぱい見て、びっくりしたって」
「ああ、あれ」
「はい。でも、びっくりしたんやなくて」
「うん」
「見惚れちゃってた。わたし」
「…え?」
「かっこいいです。せんぱい」
- 686 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:02
-
「………」
上目遣いの高橋さんから投げられる視線と、
ストレートど真ん中な褒め言葉。
さすがに照れくさくて、否定してしまいたくなる。
「また…冗談ばっかり」
「んなことないです。それとも」
「…え?」
「せんぱいは、わたしが嘘つきだって。そう思うてるんですか?」
「いや、そんなこと」
「はい。ホントですから」
「………」
「せんぱい?」
「…うん。ありがとう」
笑みを浮かべる高橋さん。再び手が動き始める。
そして。
「この前と、逆になりましたね」
「この前って?」
「ほら、レッスン場」
「…あっ」
「ね」
「…そうだね」
「はい。お返しです、せんぱい」
高橋さんの笑顔。
さっきのより何等級も、明るく輝いていた。
- 687 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/20(金) 23:04
-
…ベタなネタで、なんとも頂けないですが。
>>643-645 をご覧になってから戻ってきてくださると、なお良しです。
匿名さん、設定拝借しました(^^;
>>671-674
さゆが積極的ですね、最近(^^)
>>676-678
また使ってくださったようで。嬉しいですね、こういうの。
小春ちゃんも喜んでくれたようで、よかったよかった。
- 688 :名無し娘。:2007/07/21(土) 02:45
- ハァ━━━━━━ *´Д`* ━━━━━━ン!!!!!!
- 689 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:10
-
「ちょっとお」
薄いピンクのルージュがひかれたくちびるがそう動いていた。
言葉としては伝わってくる。けれどそれが意味を成すには、僕はあまりに……驚いていた。
いや、見惚れていたという方が正しいかもしれない。
「どした? だいじょーぶかい? これ」
「や、どうなんでしょ」
「飯田さんみたいんなっちゃってますね」
近くにいた二人と話している声がする。
新垣さんと愛ちゃん、だったと思う。
「おーい。戻っといで」
ぶんぶんと小さな手が目の前で振られ、そのままぺちりと僕の頬を刺激した。
そのあまりにやわらかな感覚が僕を現実へと引き戻す。
- 690 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:11
-
「あっ……」
「あ、帰ってきた? カオリみたくなったかと思ったっしょ」
「や、あの…、はあ」
「久しぶりに遊びにきたのにさ。人の顔見ていきなりどっかいっちゃうんだもん。
なあんかもう、安倍さんちょっとショックだよ」
ふいに楽屋へ……、僕が遊びにきていた娘。の楽屋へ顔を出した安倍さんが、拗ねた演技で僕を責める。
芝居だと解っていながら、僕はその責める仕草にドキリとさせられてしまう。
「だ、だって安倍さん……。その……」
「なーに? 言ってごらん」
「その……、髪」
やっとそう口にした僕へ、安倍さんがクスクスと笑った。。
リズムでも取るように小さく身体を揺らし、「切っちゃった」と、ただ一言。
- 691 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:14
-
「はあ…。ビックリ、しました」
「そんだけ?」
「っと、あ〜……、可愛い、です」
「年上に向かって可愛いはないっしょ。でも……ほんと?」
「はい。ホントに。やっぱり僕の中の安倍さんはショートのイメージが強くて」
不満げだった口調が瞬く間に変わった。
雲間から光を差す太陽みたいにあったかい笑顔で。
「そっか。うん。ならよかった」
「え?」
良かった? なら?
その言葉に繋がる“元”が思い浮かばず困惑した僕へ、少しからかいを滲ませた安倍さんが笑う。
「ん。なんでもないよ」
「ちょ…、ええ?」
「はい。いいから。思い出さなくて」
少し慌てた安倍さんがそう言った。
思い出す……?
そしてさっき自分で口にした言葉が。
「あっ! でも…」
まさか、と。
一つだけ思い当たったシーンが僕の口を動かし、安倍さんは何とも言い難い表情になる。
「僕……、ですか?」
「……どうかなあ」
曖昧な、どうとでもどうにでもとれる呟きを残して視線を逸らせた。
その横顔が嬉しそうに見えたのは、それに短くなった髪からのぞく耳朶が赤く見えたのは、僕の気のせい……なのかな?
- 692 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/07/25(水) 00:14
-
時期的なことは脳内で補正してください(^_^;)
>>680-686 統計さん
スーツかあ、なるほど。
いいなあ…不馴れな愛ちゃんにネクタイ締めてもらう……はぅ
うまく使っていただいたので、こちらもまた虎視眈々と狙ってようと思います(笑)
- 693 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:32
-
「はいっ、できました!」
「うん、ありがとう」
首まわりにほどよく収まったネクタイを感じつつ、
高橋さんにお礼を伝えてから、ほどなく。
「おはようございまーす」
「あ、おはよ」
「おはよう、亀井さん」
「…あーっ!」
…参ったな。
この調子じゃ、他のみんなにも同じ反応をされそうだ。
「せんぱい、スーツじゃないですか」
「う、うん」
「へぇ…」
「………」
「うん。とっても素敵です、せんぱい」
「あ、ありがと」
笑みを浮かべ、軽い調子でそう話す亀井さん。
高橋さんとの違いに、少し戸惑いを覚える。
- 694 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:32
-
「…けど」
「え?」
「曲がってないですか?」
「なにが?」
「ネクタイ」
亀井さんが、僕の首元に顔を近づけてくる。
「そんなこと、ないと思うけど」
「…せんぱい?」
「うん?」
「ちょっと、そのままでいてください」
そう言いながら亀井さんは、僕の返事を待たずに。
高橋さんが締めてくれたばかりのネクタイを、
するすると、ほどき始めてしまった。
「あ…」
高橋さんの口から漏れた、弱々しい声。
その意味が痛いほどよく分かって、慌てる。
「ち、ちょっと」
「せんぱい、そのままです」
「いや、あの」
「………」
「あ、高橋さん!」
もはや聞く耳持たずの亀井さんと、
楽屋の出口へと駆けていく高橋さん。
結局僕は…2人とも、止めることができなかった。
- 695 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:33
-
「できましたー」
「あ、ありがと…」
狼狽えつつも、とりあえず、お礼の言葉を返す。
一方亀井さんは、とても満足げな表情。
けど、僕の前から離れようとはしない。
「…亀井さん?」
「えへへ」
「な、なに?」
「…えいっ」
「わ!」
かけ声とともに、僕の胸に飛びついてくる。
思いも寄らぬ展開に、その場で固まってしまった。
「か、亀井さん?」
「………」
「急に、ど、どうしたの?」
「…せんぱい」
「………」
「すっごく、ドキドキしてますよ?」
僕の胸に耳をあてている亀井さんが、ささやく。
鼓動は、意志に反して大きくなるばかりだった。
- 696 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:34
-
ようやく離れてくれた亀井さん。
さっきの行動の理由を、説明してくれた。
「前に、読んだことがあるんです」
「…なにを?」
「女の人にネクタイを締めてもらうとドキドキする、って」
「………」
「ちょっと、試したくなっちゃいました」
「それで、あんなこと?」
「はい。ごめんなさい、いきなりで」
「………」
「でも、よかった」
「え?」
「せんぱい、ちゃあんとドキドキしてくれました」
「………」
もはや隠しようのない事実と、
頬の染まった亀井さんから注がれる視線。
気まずさと恥ずかしさの大波が、僕に押し寄せる。
「で、でもさ」
「はい?」
「いきなり抱きつかれたら、普通ドキッとするでしょ?」
「あ、そっかあ」
「…うん」
「…でも」
「な、なに?」
「えへへへ」
そんなのどうでもいいんです、とでも言いたげに。
亀井さんの表情はさっきと全然変わらなくて。
理屈をこねることで試みた、わずかばかりの抵抗は
さざ波を起こすことすら、できなかった。
- 697 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:35
-
「…あ」
「はい?」
「だとしたら、さ」
「はい」
「ネクタイが曲がってた、っていうのは?」
「はい。ちょっと…嘘ついちゃいました」
「…やっぱり」
瞬間、僕の意識は切り替わる。
「あっ、せんぱい?」
「ごめん、ちょっと出てくる!」
- 698 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:36
-
楽屋を飛び出していった高橋さん。
幸い遠くには行ってなくて、すぐに見つけることができた。
「高橋さん…」
「…せんぱい」
「…うん」
「ごめんなさい。わたし、へたっぴで」
「高橋さん、違うんだ」
「え?」
「亀井さんも、ネクタイ締めてみたかったんだって」
「………」
「曲がってる、っていうのは口実だったみたい」
「…そうですか」
「うん。だから」
「………」
「ね」
「…はい」
予想に反して、高橋さんの表情は晴れきらない。
まだなにか、気にしていることがあるんだろうか。
- 699 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:36
-
「亀井さんのこと…許してあげて」
「許すもなんも…怒ってなんかいません」
「…ホントに?」
「はい。大切な仲間やし」
「…そうだね」
「はい。けど」
「え?」
「ライバルでもあるんやって、思いました」
「…ライバル?」
「…はい」
「………」
その言葉の意味、なんとなく、分かれていない気がする。
そう思って、真意を尋ねようとしたけど。
「せんぱい」
「う、うん」
「戻りましょ」
高橋さんは、その機会を与えてくれなかった。
- 700 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/07/26(木) 00:46
- >>680-686 の続きです。
>>688
萌えていただけたようで、なによりです。
>>689-691
なんか、待ちかまえていたかのようなお話ですね。
遂に髪キッタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! という感じでしょうか
- 701 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/07/26(木) 19:38
-
>>693-699 統計さん
続いてくれてありがとー。
そうですか、ライバルとして認識しましたか(^_^;)
読みながら自分の想像(妄想)したのとは違う流れになったのが素敵でした。
さて、なんか考えるぞー。
- 702 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:14
-
とある病院の、待合室。
何かを見ているようで、何も見ていない。
誰かを待っているようで、誰も待っていない。
備え付けの長椅子に座ったまま、呆けたように。
去来する記憶と感情に呑まれ、流されていた。
- 703 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:15
-
ハロモニの収録。
最後に、ちょっとだけ遅れてやってきた亀井さん。
挨拶をと思って顔を見た途端、不安になる。
前にも見たことのある、調子が悪いときの表情だった。
「亀井さん?」
「…おはようございます」
「大丈夫?」
「え?」
「調子、悪いでしょ?」
「………」
「無理しない方が、いいよ?」
「…せんぱい」
「ん?」
「ありがとう」
「…うん」
「でも大丈夫。平気です」
「………」
心配させまいとするその言葉、予想はしてたけど。
安心することなんて、できるわけなかった。
- 704 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:15
-
案の定、亀井さんの体調は悪くなる一方に見えて。
見るに見かねた僕は、番組のスタッフさんに
休ませてあげてほしい、とお願いした。
しかし。
スタッフさん達は、いい顔をしてくれない。
今後の予定とか、いろいろ都合があったんだろう。
当然だ。そんなの、分かっているはずだったのに。
そのときの僕は、我慢することができなくて。
ちょっとした言い争いにまで、発展させてしまった。
大丈夫だから、と口では僕を制する亀井さん。
けど、結局収録どころではなくなってしまって、
近くの病院で診てもらうことになった。
先に収録の終わった僕は、単身病院へと駆けつける。
亀井さんは眠っていて、覚醒するにはまだかかるから、
今日の面会は諦めた方が良いとのことだった。
看護師さんがたまに通るだけの、静かな待合室。
備え付けの長椅子に腰掛ける。と。
さっきまでの記憶や感情が、どっと吹き出してきた。
- 705 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
…しばらくして。
「せんぱい?」
「あ、新垣さん」
「…カメは?」
「落ち着いたみたい。今、眠ってるって」
「そうですか」
「収録、終わった?」
「はい。他のみんなは、別の仕事があって」
「…そっか」
「はい」
「………」
「あの。隣、いいですか?」
「あ、うん」
僕の隣に腰掛けてきた新垣さん。
少しの沈黙を挟んでから、言葉を継いできた。
「…びっくりしちゃいました。さっき」
「ん?」
「せんぱい、珍しく怒ったから」
「………」
「………」
「…だって、さ」
「はい?」
「ライブとかなら、多少無理するのも分かるけど」
「………」
「あの番組で。あの内容で」
「………」
「無理させる必要なんて、あるの?」
「…せんぱい」
「そう思ったら…抑え、きかなくなって」
- 706 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
思わず吐露してしまった今の気持ちと、
その毒にあてられて、明らかに困った風の新垣さん。
しまったと思い、慌てて取り繕いの言葉を探す。
「…ごめん」
「え?」
「こんなこと言っちゃ、いや、思っちゃ駄目だよね」
「………」
「それと、もうひとつ謝らないと」
「…なんですか?」
「やりづらくなっちゃったでしょ。収録」
「………」
「ホント…ごめん」
「せんぱい…」
「………」
「せんぱい?」
「ん?」
「なんで…震えてるんですか?」
「…あ」
全然、気がつかなかった。でもその理由は。
「…偉い人たちに、生意気言っちゃったし」
「………」
「どうやって責任とろう、なんて考えたら」
「………」
「ちょっと、ビビっちゃったかも」
「………」
戸惑いの表情を隠さずに、新垣さんが僕を見つめる。
弱ったところを見せてしまったことを、ひどく悔いた。
そして、今度はどう言い訳しようかと。考え始めた、その時。
- 707 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
「せんぱい」
「…うん」
「その、責任の取り方とか」
「………」
「そもそもせんぱいに責任があるのか、とか」
「………」
「そういうの、よく分からないですけど。でも」
言いながら、新垣さんは僕の両手を取って。
自分の両手で、そっと包み込んでくる。
「…新垣さん」
「その震えは、止めてあげます」
「………」
「わたしの、責任で」
「………」
手から伝わる、新垣さんの体温。
心の中の、チクチクとした何かが溶けていくような感覚。
不思議な、けど心地良いそれに、少しの間身を委ねていた。
- 708 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:17
-
「新垣さん、ありがとう」
「もう、大丈夫…ですか?」
「うん」
「…よかった」
「え?」
「せんぱい、いつもの顔に戻ってくれました」
そう言う新垣さんも、いつもの笑顔に戻っていて。
僕も胸をなで下ろしかけたんだけど。
「…それにしても」
「うん?」
「カメがちょっと、羨ましいかも」
「羨ましい?」
「…はい」
「………」
「せんぱい?」
「なに?」
「もし、わたしがカメみたいになったら。せんぱいは」
「………」
「………」
「…新垣さん?」
「…いえ」
「え?」
「なんでも、ないです。ごめんなさい」
そう言って、何故か謝る新垣さんの表情は、髪に隠れて。
窺い知ることは、できなかった。
- 709 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:21
-
前々回のハロモニを見て、考えました。
完全に時機を逸してますが。
- 710 :名無し娘。:2007/08/07(火) 22:41
- ガキさぁぁーん・・・
- 711 :−笑顔の君−:2007/08/08(水) 23:48
-
亀井さんが、入院した次の日。お見舞いのフルーツを持って再び病院に行くと、
亀井さんに似た女性が僕に会釈した。僕も、不思議な感じで会釈する。
「どうも、亀井の母親です。いつも、お世話になってます」
「あ、こちらこそ、亀井さんにはいつもお世話になってます」
慌てて再び頭を下げる。亀井さんのお母さんは、亀井さんに似ていてお母さんには見えなかった。
「あの子今寝ちゃってね」
「あ、そうなんですか? じゃあ、これ亀井さんに…」
「●●くん、ありがとうね。そうだ、ちょっと時間いいかしら?」
「は、はい。今日はオフなんで…」
「じゃあ、そこの喫茶店でいいかしら?」
病院内にある喫茶店に入って、向き合って座る。なんだか、ちょっと恥ずかしかった。
- 712 :−笑顔の君−:2007/08/08(水) 23:49
-
「●●くん」
「はい」
亀井さんのお母さんが僕に深々と頭を下げる。
「あ、あの・・・」
「絵里のこと、本当にありがとうございます。●●くん、スタッフさんに言ってくれたんですって?」
「そ、そんな・・・でも、止めることできませんでした・・・」
「絵里ね、あなたのこと話すときすっごく笑顔なの。先輩から今日お菓子もらったぁ〜だとか
先輩に丁寧にダンス教えてもらったとかね」
亀井さんのお母さんの話を聞くたびに、亀井さんの笑顔が想像できた。
「今日もね、私に『先輩が、娘。に居てよかった。絵里、先輩の後輩でよかった』って笑顔で・・・」
僕は、その言葉に涙がポロポロと頬を伝うのがわかった。お母さんから、ハンカチを渡される。
「グスッ…すいません。すっごく嬉しくて…。・・・あの絵里さんに伝えてくれませんか?
僕は、君が後輩で本当によかったと思ってるよ。早く笑顔で僕たちの…仲間の所に戻ってきてくれって」
「はい。伝えておきます」
「あ、すいません。ハンカチ・・・洗って返します」
「いいのよぉ〜、気にしないで」
「じゃあ、僕そろそろ・・・」
「ありがとうね」
「こちらこそ、ありがとうございました」
亀井さんのお母さんに深々と頭を下げて病院を去る。
お見舞いに行ったはずなのに、なぜか僕が元気を貰ったそんな一日だった。
絵里、君の笑顔が大好きです。
- 713 :TACCHI:2007/08/08(水) 23:53
- すいません、パソコン壊れてしまい更新できませんでした・・・
亀井さんのお母さん、初登場ですw
>>709 統計さん
コラボさせていただきました。しかも、亀井さんも想像でしか登場しないという・・・(汗)
ガキさんの話も一瞬考えたんですが、こっちの話の方が話が先にできたんで、
こちらを載せましたが、いかがでしたでしょうか?
ハロモニ最近見てないなぁ〜。見なきゃ・・・
- 714 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/09(木) 00:22
-
>>713
これはこれは、お久しぶりです。
で…こういうの、本当に嬉しいです。ありがとうございます
ガキさんバージョンも、是非(^^)
- 715 :名無し娘。:2007/08/09(木) 08:22
- おか絵里
- 716 :MONIX ◆XBvOzcZfYg :2007/08/10(金) 02:39
- ( M _ O)<恥ずかしながら帰ってまいりました・・・
リハビリ1発目、いかせて頂きます
(リハビリで大転倒する可能性ありですが・・・)
- 717 :-仲間外れ???-:2007/08/10(金) 02:40
-
秋のツアーに向けてリハーサルが始まった頃・・・
リハが終わって楽器を片付けて最後に楽屋に戻った僕を待っていたのは
何とも不思議な光景だった。まず、楽屋に入る扉の前にはジュンジュンが立っている、
そしてその足元には僕のバッグと大きなビニール袋がひとつ・・・
「ジュンジュ〜ン、何してんの???」
僕はジュンジュンに尋ねる
「あ、●●センパイ、これ」
僕はジュンジュンが指差す楽屋の扉を見る、するとそこには貼り紙が1枚貼ってある
---●●先輩、入室禁止!!(着替えには隣の部屋を使って下さい)---
の一言、それからいたる所に普段みんなが書いているイラストが書いてあった・・・
「え〜???なんだこれ???」
思わず僕はそう呟いてしまった。
ジュンジュンの方を見ると、どう説明していいのかわからないような顔をしている・・・
それは恐らく言葉の方の問題であって、楽屋の中で何が行われているのかは知っているのだろう
ジュンジュンをここで問い詰める意味はないし、よくよく考えれば年頃の女の子の集団である
モーニング娘。・・・・・・・・・その中で唯一の男である僕抜きで話したい事もあるのだろう・・・
そうなると・・・・・・・・・ジュンジュンは中にいなくていいのか・・・・・・う〜ん???
考えれば考えるほど頭が痛くなってきた僕は半分諦めのような返事をジュンジュンに伝えた
- 718 :-仲間外れ???-:2007/08/10(金) 02:41
-
「OKOK♪I change clothes in room next to mine.」
(オッケー、僕は隣で着替えるよ)
僕がそういうとジュンジュンは安心したような表情になった・・・
なんだか釈然としないものが心には残っているが、別にこんな日があってもいいだろう
・・・・・・でも、実質仲間外れになって扉の前に立たされてるジュンジュンがかわいそうだ・・・
格好を見るともう着替え終わっているようだし、一緒に帰ろうかな・・・
「ジュンジュン、一緒に帰る???」
「うん♪」
「じゃあ、ちょっとここで待ってて」
僕が誘うと、ジュンジュンは嬉しそうな顔で答えてくれた
僕が着替えてくる間にジュンジュンも楽屋から荷物を取ってきたようで準備は万端
二人揃ってリハーサルスタジオから家路につく、途中でジュンジュンがお腹が減ったと
言うのでいつものラーメン屋さんに寄ってから帰宅した
初めてジュンジュンと2人でゆっくり話し込んだけど、本当に日本語上達したな〜
まだまだ微妙なニュアンスとか難しい言葉はわからないけど、そこは僕の底の浅い英語で
なんとかなった・・・・・・のかな・・・(汗)
うん、今日は実りの多い良い日だったな〜・・・なんて事を考えながら僕は眠りについた
---翌日---
今日も一番乗りで楽屋に入りみんなの到着を待つ・・・これはいつもの事なんだけど
いつもと違うのはみんな鬼のようにテンションが低い・・・
ジュンジュンと久住さんの2人を除いて・・・・・・・・・・・・
ジュンジュンはいつも通りなんだけど、久住さんはみんなと逆で朝から凄いテンション
昨日の事を聞いてもみんな一様に「ごめんなさい、秘密なんです」としか答えない・・・
いったい何があったんだろう???
このメンバー間コントラストの謎が解けるのには、およそ一週間を必要としたのだった・・・
続いていく・・・はず(汗)
- 719 :MONIX ◆XBvOzcZfYg :2007/08/10(金) 02:43
- あとがき
( M _ O)<う〜ん、やっぱり頭の中を文字で表すのって
最高に難しいっす・・・でも、楽しい♪♪
- 720 :名無し娘。:2007/08/10(金) 03:14
- 続きに期待
- 721 :名無し娘。:2007/08/11(土) 17:28
- どんどん書いてほすぃ
- 722 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:28
-
亀井さんの一件から、1週間後。
ハロモニの収録に、僕は真っ先に駆けつける。
そして、番組のスタッフさんに、この前の非礼を詫びた。
謝る必要なんかないよ、とみんなに気遣われて。
感じていた負い目が、少しだけ拭われたような気がした。
しかし。
今度は、僕の番だった。体調が、芳しく…ない。
朝起きたときに嫌な予感はしていて。やっぱりだった。
夏風邪プラス夏バテ、そんなところだと思うけど。
タイミングが、最悪だった。よりによって、何故今日なのか。
とにかく…今日は、死んでも倒れるわけにはいかない。
明日はオフだから、今日さえなんとか切り抜けられれば。
そう思って。そう覚悟を決めて。収録に臨んだ。
- 723 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:29
-
その日の夜。
ベッドに横たわり、体温計を見ながら、ため息をひとつ。
熱、咳、のど。典型的とはいえ、激しい症状が辛かった。
けど、何とかごまかすことはできたはずだ、と。
誰にも気づかれなかったはずだ、と。
確認するように、今日の収録のことを思い出していた。
…ほどなくして。
着信音。
ベッドから這い出て携帯を取る。亀井さんからだ。
声を整えるための、何回かの咳。そして、ボタンを押す。
- 724 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:30
-
「…もしもし?」
「もしもし、せんぱい?」
「亀井さん、おつかれさま」
「おつかれさまです」
「うん」
「せんぱい、今、家ですよね?」
「え?」
「家にいますよね?」
「あ、うん」
「今から行きますから」
「えっ?」
「そのままで、いてください」
「ちょ、ちょっと」
「………」
「亀井さん?」
「………」
切れて…しまった。急に、どうしたんだろう?
- 725 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:31
-
あれから5分も経たずして、亀井さんはやってきた。
すぐ近くで電話してきたらしく、さすがに慌てたけど。
なんとか着替えだけを済ませ、玄関へと急いだ。
「亀井さん?」
「はぁ、はぁ…せんぱい」
ビニール袋を手にした亀井さん。
息を切らせていて、いよいよただ事ではない。
「そんなに急いで…どうしたの?」
「はぁ、はぁ…」
「………」
「お、お邪魔して、いい、ですか?」
「あ、うん。あがって」
「…はい」
- 726 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:32
-
リビングで、息を整える亀井さん。
その姿が、先週の弱った亀井さんとダブって見える。
「亀井さん、病み上がりなんだから」
「………」
「そんな無理しちゃ…駄目だよ」
「…絵里、もう平気ですから」
「………」
「そんなことより」
「………」
「せんぱい…着替えましたね?」
「え」
「そのままでいてください、って言ったのに」
「え?」
「早く着替えて、休んでください」
「え?え?」
「風邪」
「………」
「ひいてますよね。せんぱい」
「………」
…そんな。
- 727 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:33
-
張り巡らしていた防御線が、もろくも崩れ去って。
のどの辺りに溜め込んでいたものが、一気に吹き出す。
「せ、せんぱい?」
「…っ」
「だ、大丈夫ですか?」
「………」
「…せんぱい」
「………」
「と、とりあえず、横になって」
「…うん」
背中をさすられながら、寝室へと向かって。
だるい体をベッドに横たえながら、恐る恐る亀井さんに尋ねた。
「もしかして、さ」
「はい?」
「みんな…知ってる?」
「せんぱいの、ことですか?」
「うん」
「…わかりません。でも」
「………」
「スタッフさんは、知らないと思います」
「…そっか」
…よかった。
一番知られたくなかった人達には、隠し通せたみたいで。
けど、そう思って胸をなでおろしたのは、まずかったらしく。
再び、激しい発作に見舞われてしまった。
「せ、せんぱい?」
「…っ」
「せんぱい…しっかり」
背中をさすってくれる亀井さんからの、いたわりの言葉。
その声は、とても痛々しくて。なんだか申し訳なかった。
- 728 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:34
-
咳が収まるのを見計らって、亀井さんが続ける。
「…せんぱい」
「…うん?」
「絵里。今日、すごく辛くて」
「え?」
「せんぱいが調子悪そうだってことに、気がついて」
「………」
「それを隠そうとしてることにも、気づいて」
「………」
「その理由も、すぐに分かって」
「………」
「分かった、から…誰にも、何にも、言えなくて」
「………」
「先週のせんぱいみたいに、できなくって」
「………」
「早く収録が終わってほしいって」
「………」
「そう思うことしか、できなくて」
「………」
堰を切ったような亀井さんの告白と、その表情。
どれほど思いつめていたのかが、痛いほど分かって。
ますます、申し訳がなかった。
- 729 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:34
-
「だから…」
「…うん」
「謝りに、来たんです」
「…え?」
「ごめんなさい…せんぱい」
「…謝る必要なんか」
「あるんです。だから…受け取ってください」
「………」
「それと」
「…うん」
「先週のお礼。まだ。ちゃんと言ってませんでした」
「………」
「ありがとう…せんぱい」
感謝を伝える、シンプルな。けど心に響く、その言葉。
求めていたわけでは、もちろんなかったけど。
こうして実際に貰えると、この上なく嬉しくて。
今の僕には一番の特効薬だって。そう思えた。
そして。
- 730 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:35
-
「…本当に、申し訳ないな」
「え?」
「あ、いや」
「………」
「いろいろ、気遣わせちゃったね」
「そんなこと」
「いや、ホントに。ごめんね」
「………」
「………」
「…せんぱい」
「うん?」
「そうやって…気にかけてくれるの」
「………」
「すっごく、嬉しいですけど」
「………」
「そうしたいのは、絵里も同じだから」
「………」
「だから…せんぱいは、謝らないで」
「………」
「ね?」
「…うん」
「はい」
諭すように、亀井さん。その表情は、幾分和らいで。
背負っていた負い目を、また少し、取り除いてくれた。
- 731 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/17(金) 22:40
-
>>702-708 の続きです。
長くてすんません。辛抱強く読んでもらえれば…有難い
>>717-718
ジュンジュンキタコレ
続きに期待
- 732 :『あーん』:2007/08/19(日) 22:38
-
帰り支度の最中、別の仕事で離れた楽屋にいたはずの先輩顔を出してくれた。
いつもの笑顔と右手に提げた魅惑的な箱と一緒に。
「差し入れもらったけど、食べる?」
そうかけられた声に何人かが目敏く反応した。
「アイスだ!」
「ケーキ?」
「どっちもハズレ」
小春とカメの勢いに先輩が笑う。
部屋の真ん中にあるテーブルで広げられたそれを真っ先にのぞき込んだのはさゆだった。
「やぁん、プリンだー」
「美味しいらしいよ」
キチンと人数分あったプリンはあっという間にそれぞれの手に渡り、みんなと同じようにプリンを手にした先輩が私と愛ちゃんの間に座る。
割とこういう形になることが多いのは私…私たちも先輩に認めてもらえてるのかって少し嬉しくなる。
たまたまかもしれないけど。
- 733 :『あーん』:2007/08/19(日) 22:39
-
プリンを手に考えていた自分の立ち位置みたいなものは、突然の大声でかき消されてしまった。
「あーーーっ!?」
耳元で聞こえた甲高い叫び声。
どっかのアニメ…まぁそれも間違いじゃないけど。
とにかくそんな声を出した当人へ視線を向けると、この世の終わりみたいな顔をした小春が足元を見つめていた。
「小春のプリ〜ン……」
「……はぁ、あんた子供じゃないんだからあ」
そう口にしてから気がついたけれど、まだ充分に子供って言える歳だっけ。
ため息をついて落としたプリンを拾い上げて、もったいないけどダメだねって小春を見上げる。
小春は今にも泣き出してしまうんじゃないかって顔で私を、それともプリンをかもしれないけど、ともかくそんな顔で見てる。
- 734 :『あーん』:2007/08/19(日) 22:39
-
「もおーっ」
目線を感じながらも床を拭き終えて、そう洩らして立ち上がる。
小春がビックリしたって目で追ってくる。
「ほらっ、あげるから」
差し出したのは未開封のプリン。
小春はどうしようか迷ってるみたいだった。
「ほらあっ。そんな顔しないの」
「……ありがとおございます」
もそもそと、だけど嬉しそうにプリンを口へ運ぶ小春を見てまた一つため息が洩れた。
自分の席に腰を下ろそうと振り向くと、何故だか嬉しそうに笑う先輩と目があった。
- 735 :『あーん』:2007/08/19(日) 22:40
-
「な、なんでしょう?」
「新垣さんの分、無くなっちゃったね」
「すいません。せっかくせんぱいが持ってきてくれたのに」
「じゃあさ、こうすればよくない?」
そう笑う先輩は小さなプラスティックのスプーンでプリンを掬って……あれ?
えっと……
「あーん」
「はい?」
私の目の前に一口のプリン。
でもそれを持ってるのは先輩の手で。
先輩のプリンで。
あーんって……
「ほらっ。あ〜ん」
「でも……」
「新垣さんが食べないなら小春が――」
「ダメぇ! 食べるっ、いただきます」
言ってから気がついた。
先輩が……、先輩と小春が楽しそうに笑ってることに。
余計な知恵ばっかりつけた後輩を一睨みして、差し出されたプリンに目を戻す。
「あーん」
なにがそんなに嬉しいんだろうってくらい、先輩は嬉しそうに笑っている。
おずおずと開けた口にそっと放り込まれたプリンは。
なんか悔しい気もするけれど、特別美味しいかもしれないって思った。
- 736 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/08/19(日) 22:46
-
……リハビリリハビリ(^-^;
皆さんさくっと書かれてるんで、そろそろなんか書かないとと(笑)
- 737 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:11
-
…あれから、しばらくして。
「亀井さん」
「はい?」
「今日はありがとう」
「いいえ、そんな」
「ううん、ホントに。で」
「はい」
「そろそろ…帰った方が、よくない?」
「………」
「風邪、移しても悪いし」
「………」
「あんまり遅くなっても…さ」
追い返すような言い方になってしまったのを悔やんだけど。
その理由は本心だし、仕方がないと思い直す。
と、俯き加減だった亀井さんが僕へと視線を戻した。
「…はい。けど」
「………」
「もうひとつ、やりたいことがあるんです」
「え?」
「お詫びと、お礼を兼ねて」
「………」
「せんぱい」
「ん?」
「キッチン、借りていいですか?」
持ってきたビニール袋を手にしながら、亀井さんが尋ねる。
その中身と。目的と。止めても無駄なんだろうことを理解しつつ。
今にも走り出していきそうな亀井さんに、頷いた。
- 738 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:12
-
…しばらくして。
「せんぱい、できましたよ」
「うん」
「今、食べます?」
「何を、作ってくれたの?」
「おかゆです」
「おかゆ」
「………」
「…ありがたいな」
「ホントに?」
「うん、ホントに」
「…よかったあ」
「………」
「で…どうします?」
「うん…少し、頂こうかな」
「じゃあ、持ってきますね」
「ありがとう」
言いながら、キッチンへと駆け戻る亀井さん。
茶碗とれんげの乗ったお盆を持ちながら、ゆっくりと戻ってきた。
そして、それじゃあ、とばかりに手を伸ばした僕の手をパチリ。
笑みを浮かべるその表情に、少しの胸騒ぎを覚えた。
- 739 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:15
-
「せんぱい?」
「う、うん」
「あーん」
「………」
「………」
「…亀井さん、勘弁してよ」
「いいじゃないですかー」
「いやいや」
「………」
「なんか恥ずかしいし」
「他に誰も、いませんよ?」
「そういう問題?」
「…もう」
口を尖らせる亀井さん。諦めてくれたかと、思ったんだけど。
「…じゃあ」
「え?」
「1回だけ」
「………」
「それでも…ダメですか?」
懇願するような口調と。一転して、切なげにさえ見える表情。
ずるいなあ、と思わせるそれに、結局僕は…負けてしまった。
「…1回、だけね」
「はい」
「………」
「じゃあ」
「…うん」
「あーん」
「…あーん」
「………」
「………」
「…どう、ですか?」
「…おいしい」
「ホントに?」
「うん。すごく、おいしい」
「…えへへ」
お世辞とか、亀井さんが食べさせてくれたからとか。
それは、そういうことじゃあ、全然なくて。
味覚と嗅覚が訴えるものの、限りなく純粋な表現だった。
- 740 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:15
-
「ごちそうさま」
「まだありますから、後で食べてください」
「うん」
とても病体とは思えない、あっという間の完食。
未だに残る食欲を抑えつつ、再びベッドに横たわった。
「味、塩だけじゃないんだね」
「はい。いろいろです」
「へぇ…」
「………」
「料理、結構やってるんだ」
「いえ、全然」
「…そうなの?」
「はい」
「そんな風には、思えないけど」
「………」
僕の疑問には答えず、お盆を手に立ち上がる亀井さん。
その歩みが、ドアの前でピタリと止まった。
- 741 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:16
-
「お母さんに、前から言われてたんです」
「…どんなこと?」
「料理できないのは、いろいろ忙しいし、仕方ない」
「うん」
「けど、おかゆの作り方。それだけは」
「………」
「しっかり覚えておきなさい、って」
「…そうなんだ」
「はい」
「………」
「なんで?って、聞いてみたんですけど」
「うん」
「教えてくれなかったんです」
「………」
「そのうち分かるから、って」
「………」
「…ようやく、分かりました」
「………」
「………」
「…なるほど」
「はい」
「いい、お母さんだね」
「はいっ」
振り返りながら、ちょっとだけ語気を強めた亀井さん。
心底嬉しそうで、ちょっと得意げな笑顔の亀井さん。
料理する前に着けたらしい、エプロンをまとったままの亀井さん。
その姿が、この前会った、亀井さんのお母さんと重なる。
そして。
「おやすみなさい。せんぱい」
スイッチを操る音と共に訪れた暗闇に、かき消されていった。
- 742 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/21(火) 01:19
-
>>722-730 の続きです。
>>732-735
「あーん」、かぶってもた。面目ない。
- 743 :名無し娘。:2007/08/22(水) 00:12
- 舌の記憶
- 744 :『Anniversary』:2007/08/27(月) 22:29
-
「おめでとう」
「え?」
そう呟いた僕へ、愛ちゃんが驚いた顔で振り返った。
「記念日、だよね」
「あっ……。覚えててくれたんですか?」
「一日すぎちゃったけどね。なんでかな、昨日うちに帰ってから不意に思い出したんだ」
「嬉しいです。覚えててくれて」
それは本当に喜んでくれている、そんな表情で。
あまりに真っ直ぐに向けられた感情は、逆に僕を心苦しくさせた。
「なにもお祝いとかはないんだけどね」
自分の居た堪れなさから目を背けるように苦笑いを浮かべて逃げる言葉。
けれど愛ちゃんはブンブンと首を振って、何故僕がそんなことを言うのか信じられないって顔をする。
- 745 :『Anniversary』:2007/08/27(月) 22:30
-
「そんなん要らないですっ。あ、要らないってその…ヘンな意味やなくて」
「うん。判ってる」
「あの…、せんぱいがそうやって、……覚えててくれただけで充分って意味で」
「そう? そっか。愛ちゃんは覚えてたの?」
「当たり前ですっ」
何の気無しに問い掛けた言葉だったけれど、返ってきた言葉は思いも寄らない強さを持っていた。
目を丸くした僕へ愛ちゃんが申し訳なさそうに「すいません」と口早に言った。
「あ、なんでもないから。うん。ちょっとビックリしただけで」
「すいません」
もう一度謝る愛ちゃんは六年の月日を経ても変わらないヘンな生真面目さと。
そして六年の月日を経た女性らしさを見せる表情をない交ぜにする。
「……うん」
僕はその変わらない部分も、変わっていく部分も、どちらも愛らしく微笑ましくて笑顔にさせられて。
ただ多くを語る必要もなく頷いただけだった。
「忘れるわけないです。先輩と……」
俯いていく横顔と小さく掠れて消える言葉。
辛うじて耳に届いたその言葉は、僕を気恥ずかしい心持ちにさせた。
- 746 :『あにばーさりー』:2007/08/27(月) 22:30
-
「おめでとう」
「え?」
「記念日、だよね」
「あっ……。覚えててくれたんですか?」
「うん。今日だよね」
「は? あの……」
「うん?」
「六周年…です」
「え?」
「あれ?」
「六周年?」
「そのことじゃなかったですか」
- 747 :『あにばーさりー』:2007/08/27(月) 22:31
-
「っていうと……」
「あ、じゃあ麻琴が卒業して一周年……」
「それってお祝いすることじゃない気がしない?」
「ですよね。えっとじゃあ……?」
「だって……」
「メロン記念日さんが八周年」
「……それ、気がつかなかった」
「せんぱいちょっとヒドイです」
「すいません……」
「ほしたらなんの…?」
「えっと、あれ? ……なんだったっけ」
「何周年なんですか?」
「四周年だって」
「それはハッキリ覚えてるんですね」
「……うん。そうみたい」
「なんやろ」
「なんだろうね」
「ほやったらとりあえず」
「とりあえず」
- 748 :『あにばーさりー』:2007/08/27(月) 22:31
-
「「四周年おめでとうございます」」
- 749 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/08/27(月) 22:33
-
えっと……同じ出だしで二本立てとか。
ああ、ごめんなさいごめんなさい。石とかは投げないようにお願いします(^-^;
とりあえず。
おめでとうございます。
そしてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
ではまた。
- 750 :−うぉーあいにー-:2007/09/05(水) 00:05
-
センパイ。
少し片言の日本語で僕を呼ぶ声。振り返ると、そこにはジュンジュンが
立っていた。
お、どうしたの? ジュンジュン。
アノ、私とセップンしてクダサイ。
は?
セップンしてクダサイ。
あの、ジュンジュン言ってる意味わかってる?
え? コレ言ったらセンパイ喜ぶイってたから。
ジュンジュンの後ろの方を見ると、僕が見ていることに気づいていないのか
二人で笑っている、さゆと絵里。なるほど…
ジュンジュン。
は、ハイ?
あのね、日本語でセップンって言うのは、キスってことなの。わかる?
セップン・・・キス?
そう、チューのこと。
ジュンジュンは、その瞬間顔が真っ赤になった。
僕とセップンしたいの?
イ、イエ…
僕は、ジュンジュンとセップンしたいよ?
え?
ジュンジュンの肩を優しく抱きしめる。そして、ゆっくりとジュンジュンと顔が…
駄目〜!!
すると、さゆと絵里が走ってやってくる。僕が見つめると、逃げようとする絵里と
さゆの首根っこを捕まえる。
こら!! ジュンジュンにうそ教えたら駄目だろ!!
ごめんなさ〜い・・・
ジュンジュン、ごめんね。こいつら、今怒るから。
・・・
−チュッ−
両手が塞がった状態で、僕の頬になにか柔らかいものが触れる。
我想?・・・
え?
そう言って走り去っていったジュンジュンの背中を見つめながらも、悪ガキの首根っこは離さなかった。
- 751 :TACCHI ◆wJKONNaqEI :2007/09/05(水) 00:06
-
初の新メンのジュンジュンを登場させました。
いやぁ〜、意外と片言っぽくするの大変だ…
勉強しなくては・・・
- 752 :『想い溢れて希う』:2007/09/05(水) 23:21
-
それは秋のツアーに向けてのダンスレッスン中だった。
流れていた曲が急に止まり先生の声が響いた。
「なにやってんのっ!」
「…すいません」
「謝らなくていい。なんで動きを止めたのかって訊いてんの」
厳しい視線と叱責の先で、自分の身体を抱くみたいな姿勢でいる先輩が俯いていた。
いつもよりもキツイレッスンのせいか、乱れた髪の先から汗がぽつぽつと零れて落ちる。
「すいません……。ちょっと顔洗ってきていいですか」
「…じゃちょっと休憩」
仕方なさそうにそう言った先生が出て行った。
声を掛けて近づく新垣さんに、大丈夫と手を挙げた先輩が深く息をついて出て行った。
その姿があのときの先輩とダブって見えて、胃がキリキリと締め付けられるみたいな不安感が記憶と一緒に蘇ってくる。
感情に…、その不安感に責め立てられるままに先輩の後を追ってしまった。
- 753 :『想い溢れて希う』:2007/09/05(水) 23:22
-
飛び出した廊下の向こうにいつもよりも少し小さく見える背中が消えていった。
小さな違和感に囚われる。
廊下を歩きながらふと視界に入ったそれで気がつかされた。
給湯室。顔を洗うと言って出て行ったのならここでいいんじゃないんだろうか。
なら……?
先輩が向かった先は。
T字に分かれたその方向は。
「せんぱい…」
そう口にしてしまってから声に出したことに気がついて、解放されたように膨れあがる懸念が指先に伝わる。
その震えた手に無理矢理に力を込めて、握ったドアノブをそっと回した。
「――えっ?」
色を変えたシャツを脱いでいた先輩は、しなやかな身体に汗を光らせたままで……
上体だけでこっちを見ている先輩は、少し険しい顔つきで右手を左の肘の辺りへ添えていた。
- 754 :『想い溢れて希う』:2007/09/05(水) 23:22
-
「せんぱい……?」
「れ、れいな? どうかしたの? あ、っていうか、ほら、着替え中だけど」
れなを見止めて変わった表情は、ほんの少しだけぎこちない笑顔。
茶化すように出された言葉に残る微かな動揺がれなを踏み込ませる。
「せんぱい、もしかして……左腕」
「なんで? どうもしないよ」
「あのときの、ですよね」
「だからー。関係ないってば。ちょっと寝不足。昨日遅くまで――」
「なんでっ!」
なんでって。
本当にただそんな気持ちで一杯だった。
「れいな……?」
「なんで……」
「な、なにがさ」
驚いたって顔をしていたのは一瞬だけで、すぐに笑顔に戻った先輩がそう呟いた。
今ならそれがごまかしだって解る。
もちろんそれは悪い意味で、先輩が自分のためにするごまかしなんかじゃなくて。
メンバーみんなを、今はれいなのことを考えてのごまかしだってことも。
だけど……
- 755 :『想い溢れて希う』:2007/09/05(水) 23:23
-
「せんぱいはいつも……いつも、いっつもそうやって! そうしてるとき“せんぱい”はどこにおるとっ?」
「え……?」
「れなは前に言ったこと、忘れとらんけんっ。それともやっぱりせんぱいにとってれなは頼りにならんと?」
「僕も……」
激情に駆られて吐き出した言葉は後輩であるれいなが口にして良い言葉じゃなかったかもしれない。
けれど先輩は前の…あのときみたいに真剣で、それでいて優しさも感じる目でれなを見つめる。
「僕も忘れてなんかいないよ」
「ならっ――」
「本当のこと、話すから」
困らせてしまっているのは知っていた。
従順に甘えていれば先輩にこんな顔をさせることもないことも。
けれどそれじゃあいつまでも、いつまで経っても越えられない壁があることにも気がついたから。
「聞かせてください」
「うん。あの後、まあ多少無理したからだけど、体力が落ちてくると痺れるみたいな感じになるんだ」
「やっぱりれなの――」
「待ってって。ちゃんと先生…あ、お医者さんね? 先生とも話してるから。
ちゃんと体力つけて、定期的に通院すれば問題ないって。そう言ってもらってるんだ」
「でも……」
「怪我をしたのは自分。無理をしたのも僕の判断。つまらない詮索されて記事にでもなるのはゴメンだったから」
- 756 :『想い溢れて希う』:2007/09/05(水) 23:24
-
そうやって自分を嘲笑う先輩の表情に胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。
違う。そうじゃないのに。
そう言おうとしたれいなを知っていたみたいに先輩が言葉を続けた。
「今の自分に折り合いをつけるだけだから。ちゃんとしてればしっかり治るんだしね。
だかられいなが気に病む必要なんてなにもないんだよ。僕がシャンとしてればいいだけの――」
「やっぱり……」
「え?」
ポツリとついて出た言葉。
けれど形にしてしまえば、それはそういうことなんだって気持ちを強くして。
明瞭な輪郭を作った気持ちは言葉になって溢れる。
「れなが言いたいのは…、れなが思ってるのはそんなことじゃなかっ!」
「ちょ、れい――」
「先輩だとか後輩だとかっ、……それは確かにそうっちゃけどっ。でも違くて。
せんぱいはいつもそうやってれなたちを離そうとする。なんで? なんでそんなにっ!」
「ま、待って、なにを――」
「れなたちはっ…、れいなは……、先輩後輩なんて関係ない! れなはただせんぱいが好きなだけなのにっ!」
「――っ、れ、いな……」
先輩の声が、表情が。
感情に流された言葉によってその色を変質させた。
そう気がついた、気がついてしまったれいなは……その世界から逃げた。
- 757 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/09/05(水) 23:27
-
前にたてたフラグの幾つかを片づけてみましたが。
さて……どうしましょうかね。
>>751 TACCHIさん
おかえりなさーい。
で、中国語キター。
続きもブログも期待してます。
- 758 :−スカイ・ブルー−:2007/09/12(水) 22:22
-
『じゃんけんぽん!!』
楽屋から出て行く僕とれいな。
「なんで、チョキだしたんやろ?」
「僕も、それ自分に言いたい…」
「これ、ちょっと多すぎん??」
みんなから頼まれたお買い物リストを覗き込むと、僕が居てよかったと思う量だった。
「ってか、これホントにみんな食べるのかな?」
「絶対食べん。これ、絵里やろ? なんね、絶対こんな量食べれんし…」
「ちょっと見せて」
『あっ…』
メモを取ろうとしてれいなの手と僕の手が触れる。メモが地面に落ちてそれを拾おうとしゃがむ。
−ゴンッ−
『ッ!!』
二人で、おでこを押さえる。そして、二人で向き合っているとなぜだか笑いがこみ上げてきた。
「あは…あはははは」
「にひ、ははははは」
「ご…あは…ごめん…はは」
「こっちこそ…にゃはは…すいま…あはは…すいません」
「あはは。行こうか?」
笑顔でれいなに手を差し伸べる。れいなも、笑顔で僕の手を掴み立ち上がる。
「ほら、先輩早くいかんと♪ 愛ちゃんたちが、怒るけんね」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
そう言って、僕の手を引いて走り出すれいな。その日の青空が、僕には本当に澄み渡って見えた。
- 759 :TACCHI ◆wJKONNaqEI :2007/09/12(水) 22:25
-
今回はれいなメインです♪
>>757 匿名さん
いや〜、なんかさすがっすね。匿名さんのれいなに触発されてれいな書いちゃったw
中国語、間違えてた事に気づいたのは秘密w
ブログにも、書いてますがラジオよかったら聞いてやってくださいwww
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