■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 最新50
俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3
- 702 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:14
-
とある病院の、待合室。
何かを見ているようで、何も見ていない。
誰かを待っているようで、誰も待っていない。
備え付けの長椅子に座ったまま、呆けたように。
去来する記憶と感情に呑まれ、流されていた。
- 703 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:15
-
ハロモニの収録。
最後に、ちょっとだけ遅れてやってきた亀井さん。
挨拶をと思って顔を見た途端、不安になる。
前にも見たことのある、調子が悪いときの表情だった。
「亀井さん?」
「…おはようございます」
「大丈夫?」
「え?」
「調子、悪いでしょ?」
「………」
「無理しない方が、いいよ?」
「…せんぱい」
「ん?」
「ありがとう」
「…うん」
「でも大丈夫。平気です」
「………」
心配させまいとするその言葉、予想はしてたけど。
安心することなんて、できるわけなかった。
- 704 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:15
-
案の定、亀井さんの体調は悪くなる一方に見えて。
見るに見かねた僕は、番組のスタッフさんに
休ませてあげてほしい、とお願いした。
しかし。
スタッフさん達は、いい顔をしてくれない。
今後の予定とか、いろいろ都合があったんだろう。
当然だ。そんなの、分かっているはずだったのに。
そのときの僕は、我慢することができなくて。
ちょっとした言い争いにまで、発展させてしまった。
大丈夫だから、と口では僕を制する亀井さん。
けど、結局収録どころではなくなってしまって、
近くの病院で診てもらうことになった。
先に収録の終わった僕は、単身病院へと駆けつける。
亀井さんは眠っていて、覚醒するにはまだかかるから、
今日の面会は諦めた方が良いとのことだった。
看護師さんがたまに通るだけの、静かな待合室。
備え付けの長椅子に腰掛ける。と。
さっきまでの記憶や感情が、どっと吹き出してきた。
- 705 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
…しばらくして。
「せんぱい?」
「あ、新垣さん」
「…カメは?」
「落ち着いたみたい。今、眠ってるって」
「そうですか」
「収録、終わった?」
「はい。他のみんなは、別の仕事があって」
「…そっか」
「はい」
「………」
「あの。隣、いいですか?」
「あ、うん」
僕の隣に腰掛けてきた新垣さん。
少しの沈黙を挟んでから、言葉を継いできた。
「…びっくりしちゃいました。さっき」
「ん?」
「せんぱい、珍しく怒ったから」
「………」
「………」
「…だって、さ」
「はい?」
「ライブとかなら、多少無理するのも分かるけど」
「………」
「あの番組で。あの内容で」
「………」
「無理させる必要なんて、あるの?」
「…せんぱい」
「そう思ったら…抑え、きかなくなって」
- 706 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
思わず吐露してしまった今の気持ちと、
その毒にあてられて、明らかに困った風の新垣さん。
しまったと思い、慌てて取り繕いの言葉を探す。
「…ごめん」
「え?」
「こんなこと言っちゃ、いや、思っちゃ駄目だよね」
「………」
「それと、もうひとつ謝らないと」
「…なんですか?」
「やりづらくなっちゃったでしょ。収録」
「………」
「ホント…ごめん」
「せんぱい…」
「………」
「せんぱい?」
「ん?」
「なんで…震えてるんですか?」
「…あ」
全然、気がつかなかった。でもその理由は。
「…偉い人たちに、生意気言っちゃったし」
「………」
「どうやって責任とろう、なんて考えたら」
「………」
「ちょっと、ビビっちゃったかも」
「………」
戸惑いの表情を隠さずに、新垣さんが僕を見つめる。
弱ったところを見せてしまったことを、ひどく悔いた。
そして、今度はどう言い訳しようかと。考え始めた、その時。
- 707 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:16
-
「せんぱい」
「…うん」
「その、責任の取り方とか」
「………」
「そもそもせんぱいに責任があるのか、とか」
「………」
「そういうの、よく分からないですけど。でも」
言いながら、新垣さんは僕の両手を取って。
自分の両手で、そっと包み込んでくる。
「…新垣さん」
「その震えは、止めてあげます」
「………」
「わたしの、責任で」
「………」
手から伝わる、新垣さんの体温。
心の中の、チクチクとした何かが溶けていくような感覚。
不思議な、けど心地良いそれに、少しの間身を委ねていた。
- 708 :統計(仮称) ◆StatPfTBPc :2007/08/07(火) 21:17
-
「新垣さん、ありがとう」
「もう、大丈夫…ですか?」
「うん」
「…よかった」
「え?」
「せんぱい、いつもの顔に戻ってくれました」
そう言う新垣さんも、いつもの笑顔に戻っていて。
僕も胸をなで下ろしかけたんだけど。
「…それにしても」
「うん?」
「カメがちょっと、羨ましいかも」
「羨ましい?」
「…はい」
「………」
「せんぱい?」
「なに?」
「もし、わたしがカメみたいになったら。せんぱいは」
「………」
「………」
「…新垣さん?」
「…いえ」
「え?」
「なんでも、ないです。ごめんなさい」
そう言って、何故か謝る新垣さんの表情は、髪に隠れて。
窺い知ることは、できなかった。
500KB
続きを読む
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50