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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3

689 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:10

「ちょっとお」

薄いピンクのルージュがひかれたくちびるがそう動いていた。
言葉としては伝わってくる。けれどそれが意味を成すには、僕はあまりに……驚いていた。
いや、見惚れていたという方が正しいかもしれない。

「どした? だいじょーぶかい? これ」
「や、どうなんでしょ」
「飯田さんみたいんなっちゃってますね」

近くにいた二人と話している声がする。
新垣さんと愛ちゃん、だったと思う。

「おーい。戻っといで」

ぶんぶんと小さな手が目の前で振られ、そのままぺちりと僕の頬を刺激した。
そのあまりにやわらかな感覚が僕を現実へと引き戻す。

690 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:11

「あっ……」
「あ、帰ってきた? カオリみたくなったかと思ったっしょ」
「や、あの…、はあ」
「久しぶりに遊びにきたのにさ。人の顔見ていきなりどっかいっちゃうんだもん。
 なあんかもう、安倍さんちょっとショックだよ」

ふいに楽屋へ……、僕が遊びにきていた娘。の楽屋へ顔を出した安倍さんが、拗ねた演技で僕を責める。
芝居だと解っていながら、僕はその責める仕草にドキリとさせられてしまう。

「だ、だって安倍さん……。その……」
「なーに? 言ってごらん」
「その……、髪」

やっとそう口にした僕へ、安倍さんがクスクスと笑った。。
リズムでも取るように小さく身体を揺らし、「切っちゃった」と、ただ一言。

691 :『やっぱり好きで……』:2007/07/25(水) 00:14

「はあ…。ビックリ、しました」
「そんだけ?」
「っと、あ〜……、可愛い、です」
「年上に向かって可愛いはないっしょ。でも……ほんと?」
「はい。ホントに。やっぱり僕の中の安倍さんはショートのイメージが強くて」

不満げだった口調が瞬く間に変わった。
雲間から光を差す太陽みたいにあったかい笑顔で。

「そっか。うん。ならよかった」
「え?」

良かった? なら?
その言葉に繋がる“元”が思い浮かばず困惑した僕へ、少しからかいを滲ませた安倍さんが笑う。

「ん。なんでもないよ」
「ちょ…、ええ?」
「はい。いいから。思い出さなくて」

少し慌てた安倍さんがそう言った。
思い出す……?
そしてさっき自分で口にした言葉が。

「あっ! でも…」

まさか、と。
一つだけ思い当たったシーンが僕の口を動かし、安倍さんは何とも言い難い表情になる。

「僕……、ですか?」
「……どうかなあ」

曖昧な、どうとでもどうにでもとれる呟きを残して視線を逸らせた。
その横顔が嬉しそうに見えたのは、それに短くなった髪からのぞく耳朶が赤く見えたのは、僕の気のせい……なのかな?

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