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【小説】チープなドラマ感覚で【みたいな】

1 :名無し娘。:2006/09/17(日) 19:57
ハロプロ全般、上から下まで。
予定は未定で確定ではないけれど、書いていこうと思います。
『ヒロインx男』の形が多くなると思うので、好まない方はスルーでお願いします。
下の方でコソコソいきます。
レスしてもらえるなら喜んで受けます。
類似したものを書いてくださる方はどんどん書いてください。

532 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:56

 …………

533 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:57

そしてこのざまだ。
どうせだったら隠れてないで、素直に彼氏だと言って姿を現せば良かったとも思わないでもない。
が、しかしだぞ?
もしもヘンに不機嫌になって、そんな風評を流されでもしたら、それは桃子のためにならないだろう。
うむ、仕方がないのだ。

などと考えている間に状況に変化が生じたようだ。
少し離れたベンチに座る桃子が立ち上がり、一歩二歩と動いた。
その向こうへ目をやると……例のさわやか君が走ってきたところだった。
一言二言交わしたらしい二人がベンチに腰を下ろし、なにかポツポツと話してるようだ。

くそう、話の内容が気になるけど、これ以上近づくのはマズイ気がする。
もしもの時だけしか俺の出番はない予定なんだからな。
遠目に見える二人は、和やかに会話を交わしているようだ。
桃子のヤツ、そんな笑顔でいなくてもいいだろうに……。
しばらくそんな二人を見つめていた俺は、急に今の自分を客観的に見てしまった。

 ――あれ? なんか俺、ストーカーみてーじゃん

勿論、桃子に頼まれてのことであって、自身で望んでいていることではない。
けれどこれは、状況的になんの言い訳もなく、ストーカーそのものだった。

534 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:57

「バカらしい」

一つ呟いて立ち上がろうと腰を上げたそのときだった。
桃子の声が聞こえた。
さっきまではほとんど聞こえなかったハズの声が。
木の陰から見た桃子は、さのさわやか君に肩を抱かれながら、困ったような笑顔を作っていた。

「なっ――」

出しかけた声を危ういところで飲み込んで、あらかじめ交わしていた約束を思いだした。
もしなにかあった場合、いかにも通りかかった風に姿を現す、そんな手筈になっていた。
今はまだ“もし”でも“なにか”でもないのかもしれないが、そんなことはもう知ったことじゃない。
心の中に次々と浮かび上がってくる言葉を押さえながら、努めて冷静に隠れ場所から出て行く。

535 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:58

「桃子ぉー」

今きたばかりだというように、さりげなく冷静に。
その声で俺に気がついた二人は、元の距離感を取り戻して普通を装う。
くそったれめ、見てたんだよこっちは……ああ、ムカムカする。

「なに? デートか?」
「違うよぉ、全然そんなのじゃないから」

もうすっかり普段の桃子に戻った声で、いつもの笑顔を見せる。

「おばさんが呼んでるってさ。携帯繋がらないって言ってたぞ」
「あれ? そう?」

そしてなにも言わずに――言えずにか――いるさわやか君に向き直って、少し申し訳なさそうに話しだした。

「じ、じゃあ、ゴメンね。私、そういうことだから、ね。また学校で」
「あっ……うん。……わかった」
「ほれ、桃子。行くぞ」
「うん。じゃあ」

536 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59

なにごとも無かったように先に歩く俺の後で小さな足音が聞こえる。
桃子は黙ってついてくる。俺もなにも言わない。
今、振り向いて口を開いたら、余計なことを口にしてしまいそうだからだ。

やっぱり行かなきゃよかったんじゃないかとか、あんな笑顔みせやがってとか。
あのさわやか君の方がいいんじゃねえの? とか、肩なんか抱かれやがって、とか。
無性にイライラするし、ヤになるくらいザワザワする。
あのまま放っておいたらキスとかされちまったんじゃないだろうか。

 ――キス? 桃子が?

ふと浮かんだ考えにますます腹立たしくなる。
一応、デートらしいデートもしていないとはいえ、付き合ってる……ハズの俺でもしてないのに。
あのさわやか君が桃子のくちびるを……桃子のくちびるを……
ぷにぷにしてんだろうなあ……キスじゃなくてもいいから触りたいな。
人差し指でそっとつついてみたりして……ぷにゅ、なーんてなっ、チクショウめ。

 ――あー、キスしてぇ!

537 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59

「キス、したいの?」
「当たり前じ――、はぁっ!?」

後からかけられた笑うようなリズムの声に返事をしかけて、ハッと気がついて振り返った。
少し恥ずかしげに口元へ手を添えた桃子が、急に振り返った俺をビックリした顔で見つめている。

「い、今なんて?」
「だーかーらぁー、キス……、したいの? って」
「な、な、な……なん」
「今、言ったじゃん?」

クスクスと微笑みながら問いかけるように語尾が上がる独特の話し方。
どうやらまたやっちまったらしい……ちゃんと付き合うようになってからは注意してたのに。
あのさわやか君に苛ついてた分、そっち方面への注意がおろそかになってたらしい。

538 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59

「し、したいって言ったらさせてくれんのか?」
「えぇー? どーしよっかなあ……そんなにしたいの?」
「そ、いや、別に、そーでもないけどさ」
「えー? どっちよお」
「し、そんな、別にっ!」
「そっかぁ……」

そう言って桃子は後ろ手に組んで歩き出した。

 ――しまった!! ついヘンな意地はって……うあぁぁぁ!!

539 :『さいさん』:2006/11/29(水) 23:00

素直に言えばよかった。
今のタイミングだったらアリだったのかもしれないのに……
せっかくのチャンスを逃がした自分を悔やんでいると、桃子が俺の横をすり抜けて追い越していく。
なにか話すべきかと差し伸べた左手が空を切る。
俺の手を避けるようにクルリとターンした桃子が真正面に向き合って、つま先立ちで……

「今日のお礼だよ」

一瞬肩へ置かれた桃子の手が、また背中で組まれて、なにかリズムを取るように小さく揺れながらそう言った。
そう言った、くちびる。
くちびるが……やわらかかった。

「一々聞かなくってもいいからぁ。今度はそっちから……ね♥」

俺はゆるゆるになりそうな頬を精一杯引き締めて、「おう」と小さく返事を返した。
心の中ではガッツポーズをしながら大声を上げて吠えまくってたのは言うまでもない。

540 :名無し娘。:2006/11/29(水) 23:01

 おしまい

541 :名無し娘。:2006/11/29(水) 23:02

ぐはっ!
最後で名前欄間違えたorz

さて、次はなににすっかなあ。

542 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:20

それはとても久しぶりの事だった。
浴びるように酒を飲み、酩酊に近い状態。
ふわついた足どりで歩む帰路は、アルコールの力を借りてもなお、冷たい風が頬に痛くすらある。
そんな冬の夜の事だった。

おそらく酔ってさえいなければ通らないような道だったであろう。
かえって回り道になる、公園を横切るように抜けていく道程。
酔いに任せた気まぐれで足を向けた公園内。
薄汚れた電灯が数本、相応の広さを誇る空間を照らし出してはいたが、その明かりは儚いまでに微弱だった。

そんな薄暗い公園の中を、遊具の間を縫うようにゆったりとした足どりで進んでいた時。
不意に感じた痛みに顔をしかめて足元を見ると、なにかを踏んだ拍子に足首を少しばかり捻ったようだった。

543 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:21

ぼやきつつも暗がりで目を凝らして見る。
酔眼を細め、バランスを崩した原因に焦点をあわせていくと、それは小ぶりなスニーカーだった。

のみならず。
そのスニーカーには足首がついていた。
無論、猟奇的な殺人事件などであろうはずもなく、視線を移せば足首から上もついていたのだが。

死んでたりしないよな?
と、誰に問うでもなく口にのぼった言葉に想像は膨らみ小さく身震いをした。
足先を踏まれても身動ぎ一つせずに倒れている人影。
アルコールのまわった頭でなんとすべきか考えた。

544 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:22

 1. とりあえず警察でも呼んでやるか。>>546

 2. どうするにせよ、まずは様子をみてみないとな。>>551

 3. 放置に決まっている。厄介ごとはごめんだ。>>558

545 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:22

 …………

546 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:23

携帯を切ってから待つこと数分。
キコキコと耳に障る音を響かせて自転車に乗ってやってきた警官。

「あんたが通報した人? で……これ? どれどれ」

おっとりした口調だが面倒事であることを隠そうともしない警官がそう俺に確認すると、よいしょと膝を屈めて確認作業に入った。
詳細に調べるまでもなく、ただ単に泥酔して潰れているだけだったらしい。

「ダメだねぇ、こりゃ……完全に潰れてるよ。知り合いじゃないんだった?」

改めて違うと告げると、小さく溜息をつきながら立ち上がった警官は困ったように口を開いた。

「派出所まで運ぶから。あんたその自転車おしてついてきてくれんかね」

一応、簡単な調書を取るし。
そう付け足した警官の言葉は、要請ではなく命令だと酔った頭ながらに考えた。
が、しかし、逆らうのはどうにもうまくない。
頭の中で、余計なことしなきゃ良かったとぼやきながら自転車へ近づいていった。

547 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:23

担いでいた人間を派出所の奥へ押し込み、腰を叩きながら戻ってきた警官。
一通りの事を聞き終えると探るような口調で聞いてきた。

「あんた…あれ、誰だか知らなかったのかね?」

なにを聞かれているのか解らなかった。
いや、言葉面通りにとるならば、答えは“知らない”、先程から告げていることだった。
聞かれている事の真意が解らず眉を顰めていると、警官は少し顔を近づけてきながら囁いた。

「あれな…TVで見たことないか? 藤本美貴とかいう芸能人だな。娘がファンなんだよ」

一瞬考えて、その名前と顔が結びついた。
暗い上にパンツルック、相当に着込んだらしく体型もうかがえなかった。
おまけにしっかり巻き付けたマフラーにサングラスと帽子。
解らなくても無理はなかろう、そう思いながら、心の何処かで惜しいことをしたと感じていた。
その“惜しい”が、どう、何が惜しいのかハッキリしないままにそう感じていた。

548 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:24

その表情をどう受け取ったものか。
警官はさっきまでとは違い、やや馴れ馴れしいとも思える口調で話し出した。

「あの藤本美貴がな、ああも泥酔してるとはねぇ。こりゃあ……な」

適当に相槌などうっていると、グッと身を寄せてきた警官が首に腕を廻すようにしながら囁いた。

「……一緒にやっちまうか」

警官のあまりに信じがたい発言にしばし硬直状態だった。
が、その意味を理解したその時、凄まじい勢いで頭に血が上るのが解った。

549 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:24

 1. 甘美な誘惑に逆らえるはずもなく、便乗させてもらおう。>>560

 2. そんな極悪な行為に走れるわけがないと、激発する。>>569

 3. とりあえず乗ったフリだけして、それから考えよう。>>572

550 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25

 …………

551 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25

まさかとは思うものの、恐る恐る鼻先に手を伸ばしてみると、掌に感じる微かな息遣い。
一つ安堵の息をはいて揺り起こそうと試みた。
揺すっても叩いても、全く返ってこないリアクションに、先程から湧き上がっていた疑念を確かめる事にした。

コートの裾を少々捲り上げ、ゆったりとしたパンツの上に手を伸ばした。
予想は的中したようだった。
その感触は男の尻とは比べものにならない柔らかな弾力を伝えてきた。
ついついモゾモゾと動きそうになる手に、グッと自制して一つ溜息をついた。

はてさて、どうしたものかと考える。
男だったら蹴っ飛ばしてでも起こしてやれば、後は放置で構わなかろうものだった。
が、女を蹴り飛ばせるタイプではないと自覚していた。

少し考えて、仕方がないと溜息を一つ。

俯せの両脇に手を突っ込み、今起きてはくれるなよと祈りながらグッと力を込めた。
何とか自身の体に寄り掛からせてバランスを取ると、極めて小さくなった相互の距離に鼻腔をくすぐる甘い匂いが刺激的だった。
邪念を振り払おうと小さく首を振り一息に身体を捻って、驚くほど華奢な身体を背負った。
家まで残り数分だったハズの距離が長く、短く感じた不可思議な冬の夜だった。

552 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25

普通に歩けば数分の距離だが、軽いとはいえ人一人、そして相当に廻っていたアルコールは著しく身体に負担を強いた。
背中に荷物をしょったまま、不自由な姿勢で四苦八苦しつつも鍵を開け部屋に入る。
やっとの思いで彼女をベッドに放り込み暖房を強めにつけて寝室を出る。
キッチンで冷蔵庫から引っぱり出したミネラルウォーターを一口飲み、酔いを覚ますためのシャワーを浴びに向かった。

熱いシャワーで汗を流し、締めに冷水を浴びて意識を覚醒させ、腰にタオルを巻いて頭を拭きながらバスルームを出た。
そのままでキッチンへ足を向けかけて、ふと気がつく。
封を開けたままでリビングに置きっぱなしになっているミネラルウォーター。
それでいいやとボトルを取りに向かった。
テーブルに置いてあったボトルに手を伸ばしかけたその時。
カチャっと静かな音と共に寝室の扉が開きさっきの女が姿を現した。

「………」

無言で見つめ合うこと数秒。
女の肩が大きく動いた。
どうやら息を吸い込んでいるらしい。
動きピタリと止まった瞬間、弾けるように動いた身体は数歩分の距離を詰め、ぶつかるように空間を埋めた。

553 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26

「んむぅー!」

手で塞いだ口元がモゴモゴと動き、間に合わなかったら絶叫に近い声量で叫ばれていたであろう事を感じさせた。
暴れる女を必死に抑えようと苦心しながらも口から手は離せない。
そんな状態は二人のバランスを崩すのには十分だったらしい。

後ろに傾く女に巻き込まれるように寝室側へ倒れ込んだ。
それでも口から手を離さずにいられたのは僥倖だったろうか。

「んんんー! んむー!!」

なにか訴えかける女に、一から事情を説明していく。
最初はモゴモゴ言い通しで、話など聞く状態ではないようだったが、幾度か繰り返すうちに少しずつ納得してきたらしい。
険しい顔で眉間によっていた皺が消え、懐疑的だった表情は恥ずかしげなものになっていた。
納得したかどうか、大声を出さないかどうか問い、コクコクと頷くのを確認してゆっくりと手を離していく。

「ぷはっ…はぁー……」

554 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26

大きく深呼吸してのし掛かるような姿勢であることに気がつき飛び跳ねるように身体を離して、慌てて釈明した。
女はそれに耳を傾け「気にしてんの?」と笑いながら言った。
二人で寝室のカーペットの上に座り込み、少し落ちついた状態になってやっと気がついた。
部屋に運び込んだ女が誰だったのかということに。
女を指差し口を開けはしたがなにを言うべきか迷う間に、女の方が先に口を開いた。

「あっ! もしかして今気がついた? えっへっへ……気がつかれないんじゃ悲しいもんねー」

そう、この目の前にいる女は、国民的アイドルグループとか言われる……言われた? モーニング娘。の藤本美貴だった。
目の前に座っている藤本は、いつの間にか帽子もサングラスもマフラーも取り払っていて。
コートも脱ぎ、たっぷりとしていたセーターも脱いでいた。
酔っているとはいえこんなに無防備でいいんだろうかと余計な心配をしてしまった。

「あぁ…暑いんだもん」

俺の表情を読んだのか、そう話す口調はいまだ酒気をたっぷりと帯びていると解るものだ。
待っていてと一言残し、冷蔵庫から冷えたペットボトルを持ってきて手渡すと、彼女は嬉しそうにキャップを捻った。

555 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26

傾けられたボトルはみるみるうちに澄んだ液体を彼女の中に落とし込む。
その姿の無防備さ。
クっと上がった顎から喉元に続くラインは吸い寄せられんばかりに美しかった。
満足げにボトルを置いた彼女は薄く微笑み、その口から僅かに溢れた水が胸元へと伝っていた。
セーターの下は薄いシャツで、少しはだけた胸元へ伝う液体は淫靡ですらあった。
それに目線を遣った藤本は、顔を上げるとクククと小さく喉を鳴らすように笑った。
その笑いはまるで……

556 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:27

 1. まさか……誘ってるのか?>>578

 2. まさか襲われるんじゃ?>>585

557 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:27

 …………

558 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28

酔っぱらってはいるものの、明日の仕事にも差し障りがあるといけない。
そう考え、足音を殺して、そっと後ずさりして公園に背を向けた。

翌日。
何事もなく仕事を終え、帰宅した俺は、何気なくつけたTVに釘付けになった。

『──にある公園でTV等で活躍中の──さんが死体となって発見されました』

ニュース原稿を読むアナウンサーは沈痛な表情を作り、淡々と書かれいる内容を口にしていた。

俺は自分の選択を後悔する日々がしばらくの間は続くだろうと、頭の片隅で冷静な声が響くのを聞いたような気がした。



end.>>542

559 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28

 …………

560 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28

警官は派出所の入り口をロックして、奥へと進み掛けた所で手招きをしてきた。
警官は喜色満面の笑みを浮かべ、さも楽しげに行動に移った。
手錠とロープで四肢の自由を奪い、しっかりと留められていたコートの前を開き、高級感溢れるセーターをたくしあげた。

「さすがに芸能人ってのはブラまで高そうだな」

制服の背中越しに覗き見えたキャミからのぞくそれは、今までのどの経験よりも淫靡なものを感じさせる。
半ばまで捲り上げられたセーターに隠れている、そんな微妙な状態が、感じたことのない感覚を刺激していた。
電灯の明かりを映して繊維がキラキラと光り、小さいけれど形の良さそうな双丘を強調するように見える。

「この完全に脱がさないってのがたまんねぇんだよ……」

独り言のように呟く背中に心の中で同意しつつ続きを促した。
傍らに置いてあったハサミに手を伸ばし、キャミの肩紐部分を切り裂きブラが露わにされた。
ゆっくりと指先をブラの隙間へ差し込み、それに逆らおうとする胸の弾力さえ楽しむようにジワジワと顕わになっていく白い乳房。
一瞬、動きが止まったかと思うと、クイっと浮かせて一気にブラがずり上げられた。

「ほぉ〜……」

561 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28

完全にさらけ出された胸元に違和感を感じたのか、藤本は小さく震えると同時に天井を向いたままでうっすらと目を開いた。
二、三度瞬きすると拘束された手足を動かそうと身動ぎをして、やっと己の置かれた異質な状況に気がついたらしい。

「な、なに? あんた達…ここ……っ!?」
「お目覚めか? まぁ、マグロじゃ面白くねぇからな」

蛍光灯の光に照らし出された乳房に手を伸ばしながらいやらしく警官が呟いた。
急激に覚醒した中、自身の状況に戸惑いながらも、その行為による嫌悪感をむき出しに声を上げた。

「ち、ちょっと…イヤ、なにしてんのよっ! や、やめて……触んなよっ!」

そう叫んでやっと警官の後ろにある存在に気がついたらしい。
僅かな希望に縋るように、懇願するような目で助けを請うた。

「あ、あんたっ……助け──」
「バカか? この状況でここにいる人間が助けてくれるとでも思ってんのか?」

何かを言おうとするよりも早く警官が口を開いた。
出来るものならばその目で睨み殺そうとせんばかりの双眸を警官に向け、藤本は悔しげに歯を食いしばっていた。
が、警官にはより喜悦を呼び起こす要因らしく、その目を見ながら行為を再開した。

562 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29

「っ!? ……ヤ、イヤぁ……あんた警察でしょ! なんでこんな──」
「警察が全部正義の味方だとは限らないだよ……いやいや、日本は治安が乱れてきてるんだな」

からかうように茶化した台詞を吐いたその口で、淡い色の乳首にむしゃぶりついた。
唾液に濡れる胸を、なんとかしていやらしく蠢く口元から離そうと力を込める。
が、それすらもまた楽しみであるらしく、逃れようと身動ぎする身体のいたる所へと指先を、そして舌先を這わせた。

「やっ、…ふざけんなよっ!」
「うるせぇ!」

口と同時に手が動いていた。
容赦のない力任せの平手打ちに、藤本は側頭部を畳に打ち付けグッタリとなった。
かろうじて意識は残っているらしく、小さな呻き声が洩れ聞こえていた。

「喘ぎ以外の声は認めねぇんだよ」

警官は満足そうに呟き、ゆったりとしたパンツと同時にパンティーまでも引き下ろした。
半ば無意識に脚を閉じ拒もうとしたようだったが、ロープで開き気味に固定された両脚ではそれも出来ず。
ただ無意味に力が込められたことだけをキレイに張った両の太股が教えていた。
隠されるべき秘部は蛍光灯の光に照らしだされ、欲望の元へさらけ出されていた。

563 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29

「ご開帳〜ってトコだ。じっくり拝ませてもらうぜ」

いやらしい笑みを浮かべる警官の指は、薄目の恥毛を撫でるように動き、その秘部の形をなぞりだす。
むき出しにされた感覚と生身が触れる感覚。
それは激しい拒絶を呼び起こしたようだった。

「──っ! っ! 誰かぁ!!」

大きく一声、それに続けて声を上げようとした藤本に、なんの躊躇もなく、握り拳を振り下ろすことで応える警官。
ガッっと鈍い音が聞こえ、乱れた長い髪に隠れた口元かららしき血が畳に散った。

「ダメだって言ったろうが……ちっ! さっさとやっちまうか」

言うやテーブルに置かれたコップに手を伸ばし、その中の透明な液体を口に含んだ。
どうやら呼び出されるまで飲んでいたであろうカップ酒らしい。
当然のように濡れてもいない秘部に霧吹きのように吹きかけ、指先で膣内へ湿り気を塗り広げた。
制服の下だけを手早く脱いで、いきり立っている己の男根を握り秘部に押し当てる。

「……い、いやぁ……」

小さな嗚咽に隠れて聞こえる藤本の声からは、すでに抵抗するだけの力は失われているように感じられた。
押し当てられた男根を拒むように閉じられた秘部を、割って入ろうとするその行為に対する拒絶感、嫌悪感からの声。

564 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29

「う、あぁぁっ! 痛っ、痛い! やめて、お願いだか──」

無理矢理に挿入された異物は、藤本には痛みのみしかもたらさない。

「おぉ…さすがになかなか」
「やだっ、やめてぇ……うぅっ」

ほとんど濡れてなどいないために、警官が腰を前後するたびに膣壁が擦られているのだろう。
切れ上がった瞳からポロポロと涙をこぼしながらそう哀願していた。
既に行為に没頭しだしている警官は、そんなことには頓着せずに腰を振り続けている。

「いやだぁ…い、痛っ…痛いよぉ……」

押し入れられた嫌悪すべき異物が与える感覚に、洩れ落ちる言葉すら弱まっていく。
そんな反応に拘ることなく、己の欲望にまみれたペニスを深く差し入れては引き、差し入れては引きを繰り返していた。

「うっ……しかし思ったよりも使い込んじゃいねぇようだな。すげぇ締めつけだぜ。……お?」

いたぶるように投げつける言葉を吐きだした表情が、不意に更なる喜びをまとったものに変化した。
無理矢理に、力任せに近かった腰の動きが少しずつ滑らかなものになっていく。

565 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:30

「ハッハッハ…くっ……締めつけてるだけじゃなく、濡れてきてるようだな。
 アイドルの藤本美貴様が、こんな冴えないオヤジにぶち込まれてグショグショになるのか!」
「うっ…うぅ…やっ…っ……」

藤本は屈辱感に打ちのめされ、さりとて抵抗することも、顔を隠すことすら出来ないままで。
ただ突き入れられるペニスに迂闊な声など漏らさぬよう歯を食いしばり顔を背け、ただこの地獄のような時間を耐えていた。

「あぁ、あまり締めつけるもんだからそろそろ限界だぜ」

抵抗の緩くなった腰の動きを一層早め、喘ぐように藤本の耳元で囁いた。
少しでも離れようと、より顔を背けた藤本は、自身の体内で蠢く汚物に微妙な変化を感じたらしい。

膣内で出される、そう思ったのだろう。

なにか叫ぼうとした瞬間、警官の腰が大きく退かれ、正面を向いた藤本の顔面に、白濁した液体を吐き出した。

「うあっ!」

とっさに眼を閉じた藤本の瞼に、柔らかな唇に、なめらかな頬に、緩く波打った髪に。
欲望の全てを吐きかけた警官は満足そうに腰をおろし大きく息を吐いた。

566 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:30

「さて、お前さんの番だ。好きなようにやっちまいな」

その言葉に誘われるようにフラフラと近づくと、藤本は放心したようにグッタリと動かなくなっていた。
胸元から膝まで、白い肌をさらけ出したままで。
ただ自身を襲った現実から目を背けるように顔だけを長い髪で隠したままで。

蛍光灯の光の下で、改めてみるその身体は欲望を呼び起こし理性を奪うのに十分だった。
収まりのつかなくなっていたペニスを引き出すや、なんの前振りもなく藤本を貫いた。

「うあぁ、あっ…んんっ」

一つの悪夢が過ぎ去り、気の抜けていた藤本の口から洩れた声。
それまでの屈辱や痛みからの声とは音色の違う声だった。
荒い息を吐きながら、貪るように乳房を揉みしだき乳首を口にし腰を振っている行為に反応した声。

「やっ、くぅ…あぁ、ん……はぁ」

嫌悪の中にも甘さが混じり、屈辱の底に喜びが隠れていた。
腰に手を遣り突き上げるように押し入れられるペニスに、湧き出す愛液は畳を濡らし、紅色の乳首は硬さを増してその存在を主張していた。

「ああぁん、やっ、んぅ…ひぁ!」

567 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31

突き上げる速度は勢いを増し、藤本の身体は拘束された限度の中で跳ねるような反応をしていた。
漏らすまいとしていた甘い声は堪え難いところまできているようで、食いしばる口を割り、狭い空間に響いた。

「いっ…いい、いや、ああぁー…んぅ、あっ」

次第に激しい腰の動きに同調するように小さく腰を動かす自身の身体を恨めしく思いながらもそれを止めることが出来ずにいるようだった。

「あぁ、あぁん、くぅっ……もう、だ……だめぇぇぇ!!」

藤本はは膣内に熱いほとばしりを感じながら、ビクビクと細かく震え、畳の上に腰を落とした。
秘部から白濁した濃厚な性をしたたらせ、悦びとも苦しみともつかない表情を浮かべていた。



 end.>>542

568 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31

 …………

569 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31

今まで大人しくしていたところへもってきての激しい反発に、警官は驚きの表情で見かえしている。
時をおくにしたがって、当初の驚きから立ち直ると、居直るように猛々しい表情を見せだしてきた。

「手を出す気がないんならすっこんでろ。とっとと家に帰って全て忘れて寝ちまえよ」

歯をむき出しにして凄んでみせるようにそう言うと、その存在などなかったかのように奥へ向かって動き始めた。
その人を人とも思わない態度に、意志とは別の所で身体が動き、警官の肩口を掴んだ。

「あっ? なんだ、まだいたのか。……ヤメロ? 帰んなよ、あんちゃん」

まるでハエでも追い払うような手振りだった。
その直後、警官の身体は入り口へ叩きつけられていた。
戸口にグッタリと倒れ込む警官を一瞥して奥へと続く戸を開けた。

570 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32

奥へと踏み込もうとしかけたところで、まだ酔い潰れていると思った藤本と目があった。
申し訳程度に敷かれた布団の上で上体を起こし、自身の置かれた状況が掴めず困惑したように両手を己の身体に廻していた。
簡単に要点だけに絞って事情を説明し終えると、話の途中から固く強張った頬がほんの少しだけ柔らかみを帯びたようだった。
早く此処から連れ出して無事に送り届けようと差し伸べた手は、不意にその動きを止めた。
そして全く同じタイミングで、差し伸べられた手を取ろうとしていた彼女の表情が疑念に歪んだ。

彼女の目に映る光景。
それは頽れる男と、その陰から覗く狂気に歪んだ制服の手元から立ちのぼる薄い煙だった。
彼女の耳に聞こえる音。
それは小さな呻きと醜い哄笑だった。

そして、それはさして長くもなかった俺の人生が終わりゆく時だった。



 end.>>542

571 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32

 …………

572 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32

警官は派出所の入り口をロックして、奥へと進み掛けた所で手招きをしてきた。
その表情は、これからの行為で頭が一杯のようで、己の欲望に見にくく歪んで見えた。
俺が参加する、しないに関わらず、やる気だったのだろう、すでに藤本の身体は自由に動く余地などほとんど無いように見えた。
警官は手錠とロープで四肢の自由を奪って、しっかりと留められていたコートの前を開き、高級感溢れるセーターをたくしあげた。

「さすがに芸能人ってのはブラまで高そうだな」

制服の背中越しに覗き見えたキャミからのぞくそれが、目の前にいる警官の本気さをハッキリと悟らせた。
半ば捲り上げられたセーターに隠れている、そんな微妙な状態が、警官の薄汚い心根に対する憤りを駆り立てた。
電灯の明かりを映して繊維がキラキラと光り、整った双丘を強調するように見える。

「この完全に脱がさないってのがたまんねぇんだよ……」

半ば独り言のように呟く背中を心の中で罵倒しつつも今は機会を窺うべきだと言い聞かせる。
傍らに置いてあったハサミに手を伸ばし、キャミの肩紐部分を切り裂きブラが露わにされた。
ゆっくりと指先をブラの隙間へ差し込み、それに逆らおうとする胸の弾力さえ楽しむようにジワジワと顕わになっていく白い乳房。
一瞬、動きが止まったかと思うと、クイっと浮かせて一気にブラがずり上げられた。

「ほぉ〜……」

573 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32

完全にさらけ出された胸元に違和感を感じたのか、小さく震えたと同時に天井を向いたままでうっすらと目を開いた。
二、三度瞬きすると拘束された手足を動かそうと身動ぎをしてやっと異質な状況に気がついたらしい。

「な、なに? あんたたち…ここ……どこっ!?」
「お目覚めか? まぁ、マグロじゃ面白くねぇからな」

蛍光灯の光に照らし出された乳房に手を伸ばしながらいやらしく警官が呟いた。
急激に覚醒した中、自身の状況に戸惑いながらも、その行為による嫌悪感をむき出しに声を上げた。

「ち、ちょっと…イヤ、なにしてんのっ! やっ、……触んな!」

そう叫んでやっと警官の後ろにある存在に気がついたらしい。
僅かな希望に縋るように、懇願するような目で助けを請うた。

「あ、あっ……助け──」
「バカか? この状況でここにいる人間が助けてくれるとでも思ってんのか?」

何かを言おうとするよりも早く警官が口を開いた。

「ヤダ…イヤぁ……くっ」
「へへへっ、お前も参加していいんだぞ」

振り向いてそう話す表情、口調。
それに触れた瞬間、込み上げてきた感情に機を窺うも何もなくなっていた。

574 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33

藤本に向き直った警官の髪を掴み仰け反らせるように容赦なく引き寄せる。

「ぎゃっ!」

突然の痛みに悲鳴をあげる警官の喉元に手を伸ばし、爪が食い込むほどの力を込めて締め上げた。
驚きと苦しさに歪む顔に、一言「鍵」とだけ告げて空いた手を差しだした。

「グッ…、っ……」

絶え絶えの呼吸に顔色を青くしながら、締め付けられている喉元にその動作を制限されながらも微かに頷いた。
それを確認すると同時に、差しだした方の手を急かすようにクイクイと動かすと、すぐさまその掌に小さな金属製の鍵がのせられる。
その鍵を一瞥し、本物であろうと確認すると、締め上げていた方の腕を強く振るい警官を畳に叩きつけてやった。

「カハッ! ゲッ──」

苦しみから解放され、酸素を求め喘ぐ警官を横目に藤本の両手を拘束していた手錠を素早く外した。
そして振り返り、まだこちらに背を向け喘ぎ続ける警官の左腕を捻りあげた。

「ぐぁ!? 痛っ──」

力任せに畳へ叩きつけて手錠を掛け、背中に押しつけ自由を奪いながら右腕を取る。
拘束されると理解した警官が暴れ出そうとするよりも早く、金属的な音を響かせながら手錠はその役割を果たした。
手近にあったタオルを猿ぐつわにして騒がれる心配もなくす。
そして自由を奪われた警官の耳元に一言二言トドメ代わりに口外出来ないであろう旨を囁いて、藤本の元へ歩み寄った。

575 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33

脚を縛り付けていたロープを自分でほどいた藤本は部屋の隅で座り込んでいた。
身を守ろうとするように、それとも震えを止めようとするかのように両手で身体を抱き、じっと一連のやりとりを見ていたようだった。

強い疑念と怯えの目を向ける藤本に、少し離れたままでこれまでの事情を一から話した。
一通り話し終えると、少しだけばつの悪そうな顔をしながら携帯を取り出して「良い?」と目で問うてきた。
手振りで「どうぞ」と促すと、微かに表情を緩めて何処かへ電話をかけ出した。

部屋の外へ出てから待つこと数分。

「あの…助けてもらったんですよね」

携帯をしまった藤本は、なにをどう話すか迷う素振りをみせながら口を開いた。
一瞬考えて頷くと、藤本は何故かおかしそうに笑った。

「あっ、ごめんなさい……どうもありがとうございましたっ」

笑いだしたことに対するものだろう、一つ詫びると少し間をおいて、ふてくされているような礼をされた。
微妙に泳いでいる目や、その表情をみるに、それが今の精一杯の気持ちなのだということが窺えてきた。
しばらくどちらも口を開かないままでいると、バッグの中にしまわれていた携帯が鳴った。
会話の内容に耳を澄ましていると、どうやら迎えが近くまできたらしい。

576 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33

「あっ…アタシ行かなくちゃ」

同じタイミングで立ち上がると、少しだけ見あげるようにしてそう言った。
何か言わなければならないと思っているようで、口を薄く開いたまま、もどかしげな顔を見せた。

流した視線の先の何かが目にとまったんだろう。
隅にあったデスクでこちらに背を向けてなにやらしていた藤本は、振り向きざま睨むような目で言った。

「暇があったら電話して」

それは噛み付くような口調で。
困惑して紙片を受け取ると、くしゃっと笑って言葉を足した。

「ねっ!」

紙片に目を落としてしっかりと頷いて見せた
すると藤本はニッと歯をみせて笑顔を作り、一言残して走り出した。

「またねっ!」

またね……か。
意外な事態にこの先を想像しながら、長い夜を終わらせるために歩き出した。



 end.>>542

577 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34

 …………

578 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34

誘われているかのような妖しくみえる微笑。
呆然とそれを見ていると、四つん這いでジリジリとにじり寄ってくるその胸元は大きく開いて谷間とそれを包み込むブラが見え隠れしている。

「ンフフ…」

その指先が膝元に届き、ゆっくりと這い上がってきた。
滑らかな指先は休むことなく、やがて胸から喉元、そしてアゴから唇に達し形をなぞるように動く。

「……しよっか」

いまだ抜けきらないアルコールのせいか、それともこの妖しい魅力のせいなのか。
弾けるようにその手を掴み、一気に引き寄せて唇をあわせた。

「んんっ、ぅ……」

貪るように舌を絡ませ呼吸すら忘れて互いの口内を責め合った。
先に限界に達したのは藤本の方で。
ツーっと淫らに光る糸をひき離れた口で荒い息を吐いた。

「はっ、はぁ…ふぅ」

579 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34

息が整いだした頃、フッと笑った藤本は、クルリと向きを変え、ベッドの方へと這いだした。
その姿はパンツルックではあったものの、コートに隠されていない、丸みのあるヒップラインを認識させる。
そしてそれを解って強調するように艶めかしい動きで離れていく。
そのヒップに誘われるように後を這い進み、藤本の上体がベッドへ届いたところでその脚を掴んだ。

「あっ…」

藤本はベッドの縁に背持たれるように振り向き、掴んでいる手ごと招き寄せるみたいに脚を縮める。
脚から手をあげていき、その細い腰をぐっと抱き寄せ首筋に何度もキスを落とす。

「や、んっ……ふふっ」

甘い香りに微かに混ざる汗の匂いに鼻をすり寄せキスを続けると、藤本はくすぐったそうに身を捩り吐息混じりの声で笑った。
キスを続けながらシャツのボタンに手を掛け一つ一つ外していく。
露わになったブラを目で楽しみながらも、そのふくらみの頂上を指先で掻くように刺激をする。
その指先に感じる感覚に合わせてビクリビクリを小さく跳ねる身体が、より一層の刺激を求めようとする動きが艶めかしさを醸し出していた。
吸い込まれるように胸元へ這わせた唇は、布一枚越しに探り当てた突起を舌で、唇で、歯で弄ぶ。

「んぅ、くぅ…はぁ、あぁん」

口で引きちぎるみたいにブラをずらしていきながら、柔らかなヒップを包み込むパンツを少しずつおろしていく。
指先に感じる滑らかな肌の感触と、シルクの感触。

580 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35

ほぼ同時に、外気に触れてその存在を主張するようにツンと上を向いた乳首を歯をたてた。

「──っ!」

背を反りかえる大きな反応と、声にならない声を上げ、一瞬の間をおいてベッドに沈んでいく身体をなぞるように下へとすべりおりた。
薄いグレーのパンティに僅かな染みを見つけ、そっとなぞるように指先を埋めていく。
ゆっくり侵入していく指と静々大きくなる染みとは対照的に、藤本は息を乱し断続的に身体を震わす。

「はぁ、はぁん、んぅぅ」

その声に急かされるようにパンティを引き下ろそうとする、小さな吐息をつきながら藤本は上体を起こした。

「……美貴だけ?」

薄く微笑みながらの台詞に、あぁと気がつき腰に巻いてあったタオルを取り払った。
のし掛かるみたいに抱きつかれ、歯のぶつかりそうな勢いでキスをされた。
お返しの濃厚な熱いキスの後、スッと身体を滑らせた藤本は既に硬く存在を主張していたペニスを口に含んだ。
熱く熔けそうな口内でより硬度を増していくペニスを刺激しながら嬉しそうな笑顔を見せる。
自身の口内で脈打つペニスを、唾液と、先から出る粘液でねっとりと濡らすと右の手でしごきながら舌先で突き、舐め回す。

581 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35

想像以上の快感に身を捩りながらも、身体を持ち上げるともつれあうように組み敷き、白い背中をみせる藤本美貴を後ろから貫いた。

「っ! あぁああっ、んっ」

見た目の感じよりも肉付きの良いヒップをしっかりと掴み、奥の奥まで一気につき入れる。

「ひぁっ! んんぅぅ…っ、くぅん」

その身体で侵入してくるペニスを感じながら、なにか堪えるような声を上げる。
少し引き、間髪入れずにまた奥へと突き刺す。
互いに酒気の残る身体を熱を共有するほどに触れ合わせて夢中に絡み合う。

「やっ、も…もっとぉ、突いて…ああぁん」

絡め取り放すまいと蠢く肉襞を感じながら、出し入れを繰り返すピストン運動はその激しさを増していく。
時折キュッと締めつける動きに小さく呻きながらも、パンパンと音が響くほどに挿し入れる。

「ひゃぅ! あぅっん、アタる…そこ、はぁっん、そう、そこ…イイのぉ」

僅かに角度を変えて身体の芯へ、それこそ貫かんばかりに突き上げると、より快楽を得る敏感な点を突いたようで。
今までよりも一つオクターブの上がった声を響かせる。

582 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35

丹念に、それでも時折意図的にツボを逸らして幾度も突き上げると、堪えきれないように髪を振り乱して首を振り、合わせるように腰を動かしてくる。
次第に互いの快楽が同調するような感覚と共に昂ぶっていく。

「はぁ、はぁ、んぅあ、っ……ああぁぁん、もう…いきそっ、う」

それは言葉だけでなく。
反り返る身体で、にじむ汗で、乱れる髪で。
そしてなによりも熔かすほど熱く、締めつけを増す肉壷で限界が近いことを物語っていた。

「あっ、あっ、くぅっ…い、くぅ……あぁぁぁ〜っ!!」

一際高く絶叫に近いの声と、時が止まったように全身を張り詰めさせる藤本。
一瞬遅れて込み上げた快感の全てを、その白く汗ばむ背中に解き放った。

力尽きたようにベッドへ崩れ落ちる藤本の横へ、大きく息を吐きながら倒れ込む。
心地良い酩酊感と開放感に身を任せ、眼を閉じて深く沈んでいった。

583 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36

閉じた瞼越しに感じる陽の光に目を覚ました。
気怠さを自覚しながら上体を起こし大きく一息ついた。
昨晩のことを思い返し、夢か現か混濁した意識の中、ベッドサイドの小さなテーブルの上に目がとまった。
小さなメモが一枚。
手にしてみるそれには携帯らしき番号とメッセージが一行。


 気が向いたらでてあげる!


夢じゃなかった。
そう思い自然と笑みが浮かんできた。
どうやら一つの出会いを逃さずにいたらしい。



 end.>>542

584 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36

 …………

585 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36

己の中の眠っている何を見抜かれたかのように僅かに後退った。
その不思議な笑みと妖しさを秘めた強い目に飲まれ身体が動かなかった。
不意に立ち上がった藤本の予想外に華奢な手に引かれて寝室へ、そしてベッドの上に押し倒される。
そのすらりとした脚をふわりと包み込んでいたパンツを脱ぎ捨て、露わになった下半身にはシャツの隙間から黒いパンティが覗けた。

ペットボトルの水を口に含んだ藤本が薄く微笑みながらその濡れた唇を押しあてて。
舌で割られた口内に流れ込んでくる水と、艶めかしく動く舌にむせ返るような感覚を覚えた。
軽く咳き込む身体の上で藤本美貴は、流麗な身体のラインを強調するように腰を引きながら髪をかき上げる仕草。

「……もうこんなになってる」

クスクスと喉で笑いながら、タオル越しに硬くなりだしているペニスの上で艶めかしく腰をふっている。
たまらずその身体に手を伸ばすが、触れる直前に細い腕でそっと払い除けられた。

「触りたいの? まだダメだよ」

妖しい目で笑いながら、払った手を掴みバンザイの姿勢でベッドに押しつけられた。
そして自らシャツのボタンへ手を掛け、一つ、また一つと焦らすようにゆっくりと外していく。
少しずつ見えてくる白い素肌と、対極の黒いブラ。
視覚での興奮はますます血液を一点に集めていく。
脱いだシャツをゆらゆらと動かし、目隠しをするようにそのまま顔の上に落とした。

586 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37

白色の甘く芳しいブラインド越しに見えていた世界が唐突に黒く陰る。
何かを言おうと開きかけた口元をポニュっと柔らかく温かい感触が遮った。
血液を下半身へ集める圧迫感は、その柔らかさの中に小さな“しこり”を感じさせる。
陰りの正体に気がつき、不自由な唇で“しこり”をくわえ、ついばみ、舌を伸ばした。

「うぅん…ふふっ……あんっ」

しばらくそんな行為を楽しむと、不意に苦しくも心地良い圧迫感が消える。
すると「うぁ」っと声が上がるほどの、背筋がむず痒くなるような快感が走った。
乳首の辺りにヌメッとしたものが這い回る。
硬くなった先端を避けるように円を描くそれは、なんとも言い難いもどかしさだった。

「あははっ…ビクンビクンって、おもしろーい」

からかうように笑う藤本の声はその行為で自身も感じているかのような喜悦に満ちていた。
爪の先で引っ掻かれると、堪えようとしても堪えきれない反応をしてしまう。
カリッ、カリッと不規則に続く刺激に呻いていると、なんの前触れもなくカチカチに硬くなった己自身が自由にされた。

「もうすっごいことんなっちゃってるじゃん……」

587 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37

熱く脈打つそれに、ひやりとした手が触れる感触。
そっと撫でるように、根本から這い上がっていく。
カリで一瞬止まった手は、猫の首元へするような柔らかさで愛でるように動く。
先端から洩れ出す汁を塗り広げるようにしごかれ、たまらずまた声を上げる。

「ふ〜ん…気持ちいいんだ」

声を上げた途端に藤本はそう呟くと、同時に手の動きも止まった。
ジリジリと焦らされシャツを払い除け起きあがろうとすると、クスクスと笑う細い腕に阻まれる。

「ちゃんとシテあげるから…ジッとしてて」

不思議な魔力を秘めた声だった。
あれほど焦れていた気分が押さえ付けられたようで、黙って大人しく体を沈めた。

が、続きは乾いた手の感覚ではなく、生温く淫靡な感覚だった。
思わず跳ねるように上体が起き、そそり立つペニスをくわえ込んだ藤本がその視界に入った。
身体なんてものは現金なもので、あの藤本が己のペニスをくわえている。
その意識が一回り大きく膨らませたらしい。

「わっ…まだ大きくなるんだ……」

588 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37

藤本は少し荒い息を吐きながらそう言うと、再び先端をくわえ込みながら空いた手で袋を優しく包んだ。
柔らかく揉むように動いたかと思うと、急に締めつけるように強く握る。
そうしながらも休むことなく口は動き続け、クチュクチュと音を立てながら出し入れしては舌でねっとりと舐め回す。
その度にビクッと身体を震わし声を上げてしまった。

その刺激に対する反応は、より一層藤本をも刺激するらしく。
互いの反応が相乗効果となり、どんどんと昂ぶっていく。

「あぁっ…もう我慢出来ないっ」

不意に全ての行為を止めて膝立ちになった藤本は、そう言いながら黒いパンティに手を掛けた。
脱ぎ捨てられたパンティは淫らに湿り気を帯び、ベッドの脇へ放られた。
暖かみのある照明の下でグッショリと濡れ張り付いた茂みと、とテラテラといやらしく光る秘部が露わになる。
身体を跨ぐように再び膝立ちの姿勢に戻ると、ゆっくりと腰を下ろし始めた。

「あっ…熱い……」

ぬぷっと音が聞こえてきそうな感覚と共に亀頭が秘部へと埋まっていく。

「うっ、あぁぁ……はぁ」

パンパンに張り詰めたペニスを奥深くまで飲み込んでいく藤本は、自分の身体を抱きしめながら押し寄せる快楽に身を震わせている。

589 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38

先端が最深部へ到達するまで腰を沈めると耐えかねたのか、小さく腰を引きながら倒れ込んできた。

「はぁ…ん、はぁ、はぁ……」

一つの波が過ぎ、やや落ちついた様子になった藤本美貴は、ほぅっと溜息をついて耳元で囁いてきた。

「アタシが動くから…ね」

そう囁くとやり場のないままで投げ出していた両手を取り、それでバランスを取るようにしてゆっくりと腰を動かしはじめた。

「ん、んんっ、はぁん、くぅぅ」

腰を前後に揺するたび、切なげな声をあげフルフルと揺れる胸に舌を伸ばそうとするが、意図してなのかそうでないのか、際どいところで届かない。
快楽を貪ることに夢中になっているかのように眼を閉じ、一心に腰を振り続ける藤本美貴はその動きを激しくしていく。

「ああぁん、んっ、んん、いいっ、はあんっ!」

激しい腰の動きに合わせるように秘壷はその圧力を強め、ペニス全体をギュっと締めつける。
激しい動きと締めつけに、たまらず達しそうになると、それを感じ取ったのか、動きが緩やかになった。

「──っ、はぁ…ま、まだ……まだダメ!」

クッと腰を上げたかと思うと、片手で強くペニスの根本を握りしめた。
小さな苦鳴を漏らすのも構わず、込み上げた欲望を押し戻そうとするように強く握られ、昂ぶりを抑えつけられた。

590 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38

「うふふ…もうちょっとガンバってね」

一旦落ちついたのを確認し、再び腰を下ろし、その感覚楽しむようにペニスを膣内へくわえ込んだ。

「んんっ、うぅっ、ふぅっん…んぅ、っぅうん」

吐き出せなかった欲望を抱え込んだペニスを奥深くで味わうと、ブルっと一つ震えゆっくり腰を揺すりだした。

「ん、きっ、気持ち、いいっ! あぅぅ、あっ、あぁぁぁ!」

夢中に腰を揺すりながらも更なる快楽を求めようと握りあっていた手を自分の胸へと誘った。
小さいけれど形の良い柔らかな胸をほぐすように揉むと、激しくと催促するかのように手を動かされた。
藤本の腰を振るタイミングに合わせて、腰を突き上げてやると一層強い反応が返ってくる。

「ひっっ! ああぅ! あっ! んっ! あっ! も、もう…」

重ねられる快感は藤本の身体を急速に限界へ近づけていく。
それと同じように、一度止められた昂ぶりがこみ上げてくるのが判る。

「だめ、あはぁっ! もぉダメッ …い、いくぅぅぁっ!」

大きく跳ねた声と身体を震わせる藤本。
その体内に熱い液体を撒き散らしながら意識は落ちていく。
最後に感じたものは、どうしようもないほどの満足感と、自分の上に崩れ落ち抱きついてくる柔らかな身体だった。

591 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38

閉じた瞼越しに感じる陽の光に目を覚ました。
異常な気怠さを自覚しながら上体を起こし大きく一息ついた。
昨晩のことを思い返し、夢か現か混濁した意識の中、ベッドサイドの小さなテーブルの上に目がとまった。
小さなメモが一枚。
手にしてみるそれにはメッセージが一行。

 またドコかで遇ったら……ね

夢じゃなかった。
そう思い自然と笑みが浮かんできた。
何故だかまた逢えるだろうという確信めいたものがあった。



 end.>>542

592 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:39

 GAME OVER

593 :名無し娘。:2006/12/08(金) 01:10
いいねこれ



>>542の人気に嫉妬

594 :名無し娘。:2006/12/08(金) 14:42
上手いこと作るもんだな

595 :名無し娘。:2006/12/08(金) 18:47
まあ
いやらしい

596 :名無し娘。:2006/12/08(金) 21:30

昨日書き忘れたことを書こうかな……なーんて思ったら。
早々とレスされててビックリ(^^;;;

これも実はリメイクというか、リファインというか。
だいぶ前に違うヒロインで書いたのを、ハロプロで近しいイメージの人に変えてみました。
名前と、台詞をちょこちょこいじって、バランス崩さない程度に手を入れただけで。
そのときはhtmlだったからリンクはるのが簡単だったんだけどなぁ。
「あ、ここでもできるじゃん」、なんて思ったけど、レスナンバーで指定するのはドキドキしましたw
最初に計算したけど、一個でもズレてたらなんだかワカンなくなるもんねえ。
その昔、プロットたてたときには分岐や文章量で倍ぐらい考えてたんだけど、途中で疲れてきたし飽きた。


>>593
いいっすか? そりゃあいい。
542くらい人気になればいいなあ。いいのかな?

>>594
実は書いたのは二年くらい前だとか。

>>595
さかんにエロが足りない言うてる人に言ってあげてください。


ではまたそのうち。

597 :名無し娘。:2006/12/15(金) 22:45

>>432の後日談のせまーす。
『OFF』が出てから書いたんだった……気がする。
ショートショート的な。
この後、もう一本、微妙な時期にも書いたんだったと思いだした。
あー結構好きだったんだなぁw

598 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:47

店を開ける前、準備中の空いた時間にふとした誘惑に駆られて買った本を取り出してみた。
なにかの番組で見たネタを思い出し、妙に期待しながらページを開いた。

………

……ふむぅ

……ほうほう

おぉ……

「……おん?」

これはなかなか……?

「久遠?」
「……え?」
「こんな暗くしたままでなにブツブツ言ってんの?」
「うわっ!?」

肩越しに聞こえた声に現実に引き戻され、それと同時に開いていた本を閉じて背中に隠すようにして振り向いた。

599 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:47

「そんな驚かなくてもいいじゃん」
「ど、ど、ど──」
「どもりすぎだってば。なに、なに隠したの?」
「いや、なんでもない。仕事上の事で…ってコラ、なんでもないって──」
「嘘つけ〜、おいらの知らないトコでエッチな本見てたんだろっ…寄こせっ♪」
「──危ないから、よせって…ホントに、うわっ──」
「きゃあ!」

無理矢理にでも本を奪おうと、乗りかかるような姿勢になった真里。
そんな状態で支えきれずにバランスを崩して2人もろとも転がり落ちた。
こんな時、自分的に一瞬がスローモーションに感じる。
その瞬間、まず真里を庇うように転がり落ちるトコロは褒められて然るべきじゃあないだろうか。

「いってー……」
「ご、ごめん…大丈夫?」
「俺は平気だけど……そっち──」
「そっか、なら良かった」
「は?」

600 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:48

狭い空間で痛打した後頭部を押さえながら視線だけを廻らすと、ニンマリした顔つきの真里が起きあがったところだった。
その手に今しがたまで俺が眺めていた本を手にして。

「へぇ〜♪ くお〜ん、こーゆーの見るんだ。へぇ〜♪」
「いや、違う。そうじゃなくって──」

とっさに奪おうと手を出すが、その行動は予測済みだったらしく、伸ばした手の届かないトコロへかざされてしまう。

「なんか恥ずかしいよ〜」
「あのね──」
「でも、言ってくれればいくらでも持ってきたげるのにさ♪」
「いや…だから──」
「やん♪ 久遠の愛を感じちゃう♪」
「………」

自分の写真集を手に、妙なハイテンションっぷりを見せる真里を、倒れ込んだ姿勢のままで半ば呆れてみていた。
なんかクネクネ動いて可愛いようなおかしいような。

601 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:49

「で? で? どう? どうだった? おいらのナイスバディにクラクラしちゃったり?」
「いや……」
「なに?」
「ベトナムも良さそうなところだな──」
「はぁ? それだけ?」
「あっ」
「そうそう、大事なところでしょ」
「寄せて上げての特殊効果が──」
「もういいっ!」

最後まで言い終えるよりも早く、写真集の角で殴打された。
脳内に響く鈍い音に昏倒しそうになるのを堪え、二激目を振り下ろそうとする手を何とか掴んだ。

「嘘に決まってるじゃん」
「え?」
「すっげぇ可愛くって……綺麗で、魅力的で……こんな素敵な娘と一緒にいられるなんて……
 改めて夢でもみてるみたいだって、そう思ったりしてさ」
「………」
「ん? どしたの?」

602 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:49

写真集を持って振り上げた手を掴まれた、不自然な姿勢のままで硬直したみたいに動かないでいる真里。
その表情ははにかむような、くすぐったいような。
耳まで赤く染めて、喜びを隠しきれずにいるような。

「だってそんな……」

語尾は小さくなり聞き取れないほどだったが、言いたいことは判る。
普段あまり言わないようなことを言っていると自覚はしていたから。

「改めて。あぁ、俺って真里のこと好きなんだなって」

頬を染めている真里の手をそっと下ろして両手を脇に揃えさせ、ギュッを抱きしめた。
小さな身体を包み込むようにして抱きしめて、その首筋に顔を埋めるように真里を感じる。

「もぉ…なんでそんな……久遠」
「ん?」

603 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:50

触れ合う身体から伝わる言葉は甘い吐息のような囁きで。

「……おいらも大好きだよ」

その言葉はそっと身体に染み込んで、全体に震えるような喜びをもたらす力を含んでいた。

「……あっ…ん、く、久遠」
「悪ぃ…本能のなせるワザってヤツで」

余計なところにまで力がいったらしく、真里にも気づかれていた。

「や、ちょっと…こんなトコで!?」
「我慢出来ない…」
「ん…仕事、でしょ…あっ」
「少し遅らせるからイイ」
「やだ…く、くお…ん……あん」

開店時間、ちょっと遅らせても構わないな。
そう思いながら行為に没頭していった。

604 :名無し娘。:2006/12/15(金) 22:51

あぁ、こんなの書いてたなぁって懐古うpでした。

605 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:56

「いらっしゃ――、なんだ……」

もう閉めようと思っていた頃、開いたドアに反応した言葉を半端で収めて、あえてぶっきらぼうな言葉に置き換えた。
ドアの隙間からのぞき込んだ顔が、消えたと思ったら滑り込むように入って来た小さな姿。
それがいつもよりも……小さく見えたのは気のせいだろうか。

「なんだってなんだよ…」
「いや、こんな時間にこっちに来るの、あんまりないなって、な」

言いながら看板の照明を落とすスイッチを叩き、カウンターを回り込んでフロアに出る。

「そうだっけ…」
「そうだよ」

挨拶なんか不要な間柄のコイツに、ひらひらと手を振りながら座るように促す。
ドアを背に動こうとせずいる小さな身体の後ろに手を伸ばして鍵を一捻りした。

「いいの? 閉めちゃって」
「いいさ。ちょうど閉めようと思ってたんだから」
「………」
「いつまで立ってんの? 座れよ」
「あ…うん」

手近な椅子に腰を下ろしたのを確認して、カウンターに戻った。

「なんか飲むだろ?」
「……アルコールならなんでもいい、って言ったら怒る?」
「怒りゃあしないけどな、でも却下」
「なんだよ、それ……」

606 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:56

ロックアイスを落としたグラスにウーロン茶、そしてキンキンに冷やしたタンブラーにビールを注ぐ。
それを両手に近づいていくと、苦笑しながら「自分は飲むのかよ」って文句を言われた。
普段の半分にも満たない、力のない声だった。

「俺はいいんだよ。ほれ、飲め」
「ん…あんがと」

手渡したグラスに口をつけるのを見ながら、バレないように小さくため息をついた。

「で、どうかした?」
「別に…。どうかしなきゃ来ちゃイケないのかよぉ」
「ならそんな景気の悪い顔すんな」
「別にっ、そんなことないってば」
「ふ〜ん」
「………」
「………」

更に言葉を続けようとしたようだったが、それを飲み込むように俯きグラスを見つめていた。

「で、実際なに……別れ話かなぁ?」
「っ!? ……知ってたんじゃん」

それほど意外でも無さそうに、それでも上げた顔に少しだけ驚きの色が見えた。

「ある人から聞いてな」
「全部?」
「全部見たし、全部読んだ」
「……信じる?」
「……どう思う?」
「そんなの……」

607 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:57

卑怯だなと理解していながらの台詞だった。
案の定、下唇を噛み黙り込まれてしまった。

「信じるよ」
「そう…そっか……」

打ち拉がれたように頭を垂れたその姿に、用意していた言葉を放りだした。

「バッカ…記事じゃないからな」
「え……?」
「此処に来たってコトは、そういうことだろ? なら信じるさ」
「久遠……」

今にも泣き出してしまいそうな表情。

「だから、そんな顔すんなって」
「……う、うん」

無理に作った笑顔。

608 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:58

「俺はさ、そっちの世界のことなんて知らないけどな……“らしく”ないって位は解るよ。
 シンドイだろうって位は解る……」
「……ん」
「あんなコト望んでたんじゃないんだろ?」
「……うん」
「でも…ああするしかなかったんだ」
「…うん」

なにのことを、どれを指しているのかは解っているんだろう。
両手で覆った向こうから漏れてくる小さな肯定。
苦々しい思いをすり替えるようにビールを口に運んで立ち上がった。

「ならいいさ」
「…っ……な、なにが…い、いいんだよぉ」

後ろに回って見る背中は儚いほどに弱々しい。
そっと肩に手を置いて、このキモチが少しでも伝わればいいと、少しでもコイツが楽になればいいと、耳元に口を近づけた。

「やれるだけのことをすりゃあいいよ……ずっと応援してるから」

堪えるように鼻を鳴らして、無理にでも何か言おうとしているらしい、その小さな身体を抱きしめた。

「頑張れ…頑張れ」
「………」
「ずっと側にいるから…我慢ばっかしなくたっていいんだから」
「…ふっ、ぐ……ぅ……」

返事も出来ずに、ただ嗚咽を堪えている耳元で。
なにも出来ずにいる自分の想いを届ける為にささやき続けた。

「頑張れ……」

609 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:58

end.

610 :名無し娘。:2006/12/23(土) 21:00

表記通り、例の件での公式発表直後に書いた。
自分の書いたものとの整合性を何とかするためと言い訳をして、まだ大丈夫って言い聞かせた。

今でも応援はしてるけど、もう書けないかなぁ。

611 :名無し娘。:2007/01/10(水) 00:41

全二回か三回予定で紺野さん。
設定も書いたのも卒業前。
多分、さくら組(安倍さん卒業後)くらいの時期だった。
非狩狩の作者さんと共作したものを、氏の許可も得て、ちょいと手を入れて掲載。

612 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:41

「気持ちいい?」

作業を中断して、上目遣いで彼女が問う。

「うん、すごく……」

彼女を見下ろし、僕が答える。
僕の答えに、彼女は嬉しそうに微笑んで、作業を再開させた。
愛らしい、ぷっくりした薄桃色の唇に、僕の硬直した肉棒が、飲み込まれていく。
ベッドに腰を下ろした僕と、その目の前に座り込む彼女。
彼女は今、僕の股の間に頭を割り込ませている。
僕は彼女からフェラチオされていた。
彼女のほっぺたの内側が、僕の肉茎に張り付く。
彼女の熱くなった体温が、僕の体温と溶け合う。
彼女の唾液が絡む音が、僕の昂奮を加速させる。
彼女の頭の前後運動が、激しくなる。
いっそ淫猥とさえ思える水音が大きくなり、彼女は羞恥からか、その表情を歪めたようだった。
限界が近い。

「……イきそう……」

613 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:42

離れるように、という意味で言ったつもりだったが、彼女はさらに舌を激しくうごめかした。

「口に、出ちゃうよ……」

言った瞬間、彼女が舌先で、鈴口をチロチロと刺激する。
苦痛に耐えるように、僕の顔は歪む。
肉茎の根元を握る彼女の細くて、そのくせ柔らかい指が、唇の動きと連携して、激しく擦り上げる。
その刺激のあまりの強さに、僕は思わずのけぞってしまった。それまで堪えてきた発射欲を、解放した。
いや、させられた。

「イ、イクよっ」

彼女の口の中に、精液を放つ。そんなことをしたのは初めてのことだった。
口でされたことすらも、今日が初めてなのだ。
彼女は眉をひそめながらも、僕の精液を口内に受け止めている。
やがて射精の噴出が収まると、彼女は肉棒を口の中から解放した。
彼女の唾液でてらてらと光る自分の肉棒を見ると、若干の昂奮と同時に、どこか後ろめたい気分になる。
「ん〜ん〜」と喉を鳴らすような声に我に返ると、彼女が口元に手をやりおろおろしている。
口の中の精液をどうにかしようとしているんだと察して、ティッシュを数枚取って渡してやる。
涙目で僕を見上げて、何故か少し躊躇した後、ティッシュを受け取り、口の中の精液を吐き出した。

614 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:42

「大丈夫だった? ごめんね、口に出しちゃって」

彼女が離れなかったのだ、ということは判っているけれど、それでも僕は謝る。
さきほどの後ろめたさから来るもの…だったろうと思う。
彼女はぷるぷると首を横に振って言う。

「いいの、わたしがしてあげたかったんだから。それより…」

上目遣いで僕をうかがい、少し言い淀む。

「ごめんね、その、の、飲めなくて……」

まるで、飲めなかったということが悪いことのような言い様に、僕は、うっと、言葉に詰まる。
僕がイった後おろおろしていたのも、ティッシュをすぐに受け取らなかったのもそのためか……

「そんなこと──」

しなくてもいいのに、そう言おうとした。
だが、それに先んじて彼女が言葉を重ねた。

「今度は、ちゃんと飲むから……」

……何を言っても、無駄なんだなって、そう思う瞬間。
僕はただ、その言葉に頷くだけだった。

615 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:43

不意に、彼女の携帯が鳴った。
慌てた様子で、彼女が部屋の隅に置いてあった鞄を探る。

「マネージャーから……」

携帯を取り出した彼女が、僕の顔色をうかがうようにその相手を告げる。
軽く頷いてみせると彼女は「ごめんね」と口にしてから部屋を出て行った。
廊下からかすかに、話し声が聞こえる。

一人になってようやく、自分の肉棒の先から精液が垂れているのに気付いて、慌ててティッシュを取って処理した。
カーペットには落ちていないようだ。
脇に畳んでおいた、下着とハーフパンツを履いてしばらく待っていると、戻ってきた彼女の表情が暗いものに変わっていた。

「明日の予定がちょっと変更になったって」

休みになった、という雰囲気ではないようだ。
となれば……あぁ。

「早くなったの?」
「……うん」

彼女は申し訳なさそうに、俯く。

「それで、その……今日は……」

ここまで…ってことだ。
そんなに恐縮することじゃないのに。

616 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:44

「僕だけ気持ち良くしてもらっちゃったね」
「き、気持ち良かった?」

丸いほっぺた――“頬”と言うより、彼女には似合っている気がする――を、真っ赤に染めながら、彼女に尋ねられる。
褒められた、と思ったのか、少し嬉しそうだ。
彼女の態度に対して、僕はわざと軽そうな笑顔で、ともすれば無神経に受け取れる言葉を選ぶ。

「初めてとは思えないくらい、上手かったよ」

自分の声が、どことなくざらついているように感じる。
鼓膜を紙やすりで、擦られたような不快感。
しかし彼女はそれを感じ取ることはなかったらしい。
俯いたまま、ちらちらとこちらに目を向けて恥ずかしそうに口を開いた。

「ビ、ビデオ、とか見て……その、バ、バナナで……」

彼女は日頃の言動そのままの生真面目さで正直に答える。

「練習したんだ?」

そんな“行為”を練習していたという事実。
それをハッキリと言葉で指摘され、真っ赤になった顔を隠すように頷いた。

「お、男の人って、こういうの好きだって、聞いて、それで……よろ、喜んで、ほしくって」

そんなこと説明しなくても良いだろうに、とも思うのだが。

617 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45

「ありがとう」

というもの、ちょっとずれた発言かもしれない。
けれど他に、この気持ちを伝える適切な言葉が思いつかなかった。

「あ、あの…」

何か言いたげに口を開いた彼女だったが、それに続く言葉はなんとなく想像が出来た。
だから僕は、あえてそれを遮る為だけの言葉を口にする。

「シャワー、浴びてきたら。もう寝ないと」
「あ。うん……」

弱々しい声で頷いた彼女は、ほんの少しの間、僕を見つめて部屋を出る…寸前、足を止め思いきったように振り向いた。

「ねえ、私のこと…」

躊躇いがちの小さな、でも精一杯の言葉。

「好き?」
「……好きだよ」

618 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45

予想できた言葉だった。
その彼女の精一杯の言葉に、僕は笑顔を作って……作った笑顔で、当然のように答える。

「当たり前じゃない」

あさ美は安堵した笑顔を返して、バスルームへ向かった。
閉じられた扉の向こうで遠ざかっていく彼女の足音を意識した。
やがてそれが聞こえなくなると、僕は体をベッドに投げ出した。

深く、大きな溜息をつく。

あれはいつだったろう……
付き合い始めてしばらく経ったデートの日、彼女は僕の喜ぶ顔を見るのが好きだと言ってくれた。
そんな彼女の気持ちが、僕は心底嬉かったんだ。

嬉しかったはずなんだ……

それなのに……なんだろう、この胸に絡みつくものは。
靴の中に転がり込んだ小石のような感覚は。

 何か違う

何かが、いつからか彼女から、紺野あさ美から向けられる感情は、あの時と違ってきている。
どこかそんな気がしてならなかった。

619 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45

僕が起きた時にはすでに、あさ美は朝ご飯の支度を終えていた。
綺麗に整えられた髪と服装で、いつ出かけても大丈夫そうな姿で。
あさ美はウェーブのかかった自分の髪が嫌いらしく、綺麗なストレートになるまで、相当な時間がかかっても必ず手入れをする。
そのお陰で、ただでさえ時間が必要なんだから、ここまでしなくてもいいのにと思う。

「何時に起きたの? 別にこんなにしてくれなくてもいいのに……」

少し眠そうにも見えるあさ美にそう言った。
すると彼女は、笑顔で……さも何でもないことのように言う。

「私がしてあげたかったんだから、大丈夫。……食べたく、なかった?」

小さくなっていく言葉尻は肯定を求めるような色を感じさせた。
僕はそれに、形ばかりの笑顔を作り「そんなことないよ」と返してあげる。
最近、作り笑いがすっかり得意になってしまった自分に気がつきだしていた。

食事中は食べることに集中してしまうあさ美に付き合って、黙々とテーブルの上の料理を片付けていく。
ときおり箸を運ぶ手を休めてあさ美を見つめる。
食事をしている時の彼女の、幸せそうな、ふわりとした表情が好きだった。
あさ美のペースに合わせて食事をすると、三十分近く――時にはそれ以上――かかってしまうが、その間、会話はほとんどない。
だけど、嫌な沈黙ではないのは彼女のまとうその幸せそうな空気故だろうか。

620 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:46

食事の後片付けは僕がやる。
あさ美はこれもやりたがったのだが、これだけは譲らなかった。
準備の手際がいいのだが、片付けるとなると、なぜか手際が悪いと言うか、要領が悪いと言うか。
一度片付けを終えた後をのぞいいてみたが、食器棚の中が無理矢理押し込めたみたいになっていた。
神経質、とまではいかないと思うが、どちらかと言えば整理整頓にこだわる方なので、こればっかりはどうしても任せられなかった。

慌ただしい朝の時間。
仕事の時間が早まったってのに、ギリギリまでねばるように一緒にいたがったあさ美が、名残惜しげに出かけていった。
一方、講義までも時間があり、バイトも入っていない僕は、ベッドに腰を下ろし、このざらついた不快感の根を探し求めて記憶を辿った。

621 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:46

 …………

622 :名無し娘。:2007/01/10(水) 00:47

ひとまずここまで。
つづきは近日中にでも。

623 :名無し娘。:2007/01/29(月) 20:25
更新まだーー

624 :名無し娘。:2007/02/26(月) 09:15
待ってる

625 :名無し娘。:2007/02/26(月) 20:49

>>622 で大嘘ぶっこきましてごめんなさい。
今度こそ、今週中くらいにはなんとかm(_ _)m

626 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:11

出会ったのはほんの小さな偶然だったっけ。
前々から“貸し”があったサークルの友人から「借りを返す」と誘われて、出向いていったコンサート。
なんでも相当にレアなチケットだとかで「本当なら返しすぎでお釣りが欲しいくらいだ」とかボヤいていたのを覚えている。
それがモーニング娘。だってことは会場に着いてから知ったんだった。

 ましてや最前列だったなんて……

そう、僕等の席は、きっとファンならば垂涎ものだろう、メンバーが至近に見える最前列だった。
まるで興味がないワケじゃあなかったけれど、歌まではよく知らなくて、周囲の熱気に置いてけぼりをくらいながら始まったコンサート。

「あれ? こんなモンだっけ? 人数」

記憶に残っていた大所帯ぶりとはかけ離れている人数に、隣でノリノリになってる友人に問い掛けた。

「あぁ、だって今日は、さくらコンだからね──」

 サクラコン……

それ以降、なにやら説明を続ける友人の話を聞き流して記憶を探った。
確かスポーツ紙かなにかで見た覚えがあった。
二つに分かれて別々になんとかかんとか……って。
まぁ、その時は気にしなかったことだし、今でも大した違いではなかっただろう。
なかなかついてはいけないノリではあったけれど、それなりに楽しめばいいことだったんだから。

627 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:13

ほんの二メートルあるかないかという距離、手を伸ばせば届くようなステージの上で、笑顔を振りまき歌い踊る彼女達は確かに輝いて見えた。
幾分かは少人数になっているとはいえ、個々のダンスにステップを踏みながらのフォーメーション。
なかなかブラウン管を通して観るのとは違う、小さな感動に目を瞠らされていた。
が、そんな最中、視界の隅に捉えた小さなアクシデント。
多分、なにかの間違いで接触でもしたんだろう、メンバーの娘が一人、尻もちをつくように転んでしまっていた。
幸い怪我なんかはなかったようで、すぐに立ち上がって曲に戻ったけれど、動揺しているのか、その動きがぎこちなく見えた。
そして……気のせいかもしれないけど、立ち上がった瞬間のその娘と目があったような気がしたんだ。
ファンなら大喜びで自慢して廻るんだろうか……まぁ、気のせいだと思うことにした。
曲が終わり、衣装替えでもするんだろう一度舞台袖に消えていく彼女達。
しばらく待つと、新しい衣装に身を包んで現れたメンバー。
煌びやかな照明を浴びて何事もなかったかのようにステージは進み出した。
僕もいつの間にかそんなことは忘れて舞台の上の彼女達に集中していった。

その最中、時折妙な感覚に囚われる……なんとはなしに見られているような感覚。
何気なく周囲を見廻してみても当然のように、誰に注視されているわけでもないようだった。
気にはなったけれど、こんな場所でそんなことを気にしても仕方がないと思いなおしてステージに目を向けた。

その後は何事もなく全てのステージが終わり、食事をして友人と別れて家に帰った。
それなりに良かったとは思ったけれど、多分もう見に行くこともないだろうと思った。
せいぜいTVの画面上や雑誌などで見かける程度でしかないだろうと、そう思っていた。
数日後、奇妙な電話を受けるまでは。

628 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:14

その日、バイトへ向かう為に家を出る、その少し前のことだった。
珍しく携帯の方ではなく固定電話が着信を告げた。
離れて暮らす息子に、やたらと世話を焼きたがる母さんからかなと思いながら取りあげた受話器。

「もしもし?」
『あ……』
「……?」

 あ?

「もしもし? どちら様?」
『あ、あの…紺野です。紺野あさ美です』
「……誰?」
『えっと、あの…この前コンサートに来てくれましたよね?』
「……はい?」
『モーニング娘。の紺野あさ美です』
「……イタズラなら切りますよ」
『ま、待って待って…あの、わたし、違いますっ』

 ……なんなんだ

完全にイタズラ電話だと思い込んでいたんだ。
次の一言を聞くまでは。

629 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:15

「切るよ」
『あぁ、先輩、待っ──』

耳から離しかけた受話器から微かに届いた単語。

 先輩?

「先輩? キミ、誰だって?」
『あ、あの…中学の時に一緒だったんです……』

 中学?

「僕の後輩? 北海道の?」
『はいっ、そうなんです』
「で、誰だっけ? 紺野…さん?」
『はい』

そういえば一時期、学校で話題になっていた記憶がある。
確か二個下の学年でアイドルになった娘がいたって。
そうと知った時には、その娘は東京に出てしまったらしくて、そう長く続いた話題ではなかったと思うけど。

 それがこの娘だって……?

630 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:16

「ええっと…」
『あの、この前コンサートに…最前列で──』
「ああっ! もしかして転んだ娘?」
『あっ、あぁ、やっぱり見られてた……恥ずかしいなぁ…あ、えっと、そうです』
「その時、僕と目があった?」
『は、はいっ、気がついてくれてたんですね』
「気のせいかなと思ったんだけど……」
『あの時…一番前にいるのに、なんか静かに見てる人がいるなって…』
「あっ、うん…」
『そう思って見たら……あれ? って……先輩? って気がついて』
「へぇ…」
『それで、ちらちら見てたら…他の娘とぶつかっちゃって』
「そっか。それで転んだんだ……」
『はい…』
「それは解ったけど……なんで? よくこの番号解ったね」
『あ、あの……こっちで知ってる人に会うことなんて無かったんで…友達に聞いて……』
「中学で、僕のこと知ってたの?」
『はいっ。それで……あの、もし良かったらなんですけど』
「うん」
『す、少しお話でも出来たらなって……』

この電話から数日後、僕達は初めて――というのもヘンな話だけど――会ったんだ。

631 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:17

どこにでもあるようなチェーンの珈琲ショップで待ち合わせ、人混みに紛れるようにして向かい合って座った。
腰を下ろしてから二十分は経って、一杯目の珈琲も空こうというのに、まだ彼女は「おはようございます」と「はい」しか話していない。
仕方なしに呼び出された側の僕から話を振っていった。

「あのさ…」
「はいっ」

 反応はいいんだよな……

俯き加減だった顔を上げて、ほんの少し掠れた声で返事をされた。

「中学の時…だったよね。っと…野球部、マネージャー、じゃあないよね?」
「…ちがいます」
「僕は君のこと知ってた? あ、ごめん…」
「い、いえ…全然。覚えてなくて当たり前ですから」
「あ、じゃあ会ったことはあるんだ? ……ホント、ごめん」
「あ、あっ、謝らないでください」

全く覚えていないことを詫びると、彼女はブンブンと手を振って大袈裟にそれを押し止めた。
そして、また少し俯いてゆっくりと、言葉を選ぶようにぽつぽつと話し出した。

632 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:18

「わたし陸上部で…あの、中学の時…でも、全然大したことはなかったんですけど……」

「一年の時、ロードワークで校外を走ってたら転んじゃって…あの、よく転んだりするんです、わたし」

「あ、あの…それで、転んじゃって…どう転んだか覚えてないんですけど」

「なんでか、こう…けっこう血が出ちゃって、痛くて…『どうしよう』みたいになっちゃて」

「座り込んだままで、膝のところ…血が出てるあたりを押さえてて、少し泣きそうになってて……」

「その時に、後ろから話しかけてきてくれた人がいて……」

そこで彼女は上目遣いでちらっと僕を見た。
あぁと思って自分を指差すと、彼女は嬉しそうに、そのふにっとした頬を少しだけ赤らめて頷いた。

「僕…なにしたっけ?」
「あの…『どうしたの? 大丈夫?』って声をかけてくれて…」

「わたしの膝に気がついてくれて…『うちの学校の子だよね?』って」

「そ、それで……わたしのこと、その…おぶってくれて、保健室まで、連れていってくれて」

「けっこう、離れてたんですけど……全然なんでもないみたいに、学校までおぶってくれて……」

「その時、先輩は野球部の格好だったから……お礼しなきゃって思ってたんですけど…」

「グラウンドで何度も見かけてたんですけど、なんか…あの、恥ずかしくって……」

彼女はそこまで慌てるように言うと、一層深めに、顔を隠すみたいに俯いてモジモジしていた。
全く覚えていない僕もどうかとは思うけど、ともかく、やっと話が繋がった。

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