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【小説】チープなドラマ感覚で【みたいな】
- 1 :名無し娘。:2006/09/17(日) 19:57
- ハロプロ全般、上から下まで。
予定は未定で確定ではないけれど、書いていこうと思います。
『ヒロインx男』の形が多くなると思うので、好まない方はスルーでお願いします。
下の方でコソコソいきます。
レスしてもらえるなら喜んで受けます。
類似したものを書いてくださる方はどんどん書いてください。
- 485 :『The Legend of red thread?』:2006/11/25(土) 23:38
-
「まぁ、それはええわ。で、その後どうなったん?」
「……ひっぱたいちゃった」
「ほぉほぉ?」
「で、丁度通りかかったタクシーひろって帰ってきた」
「くおんは?」
「途中まで走って追っかけてきたけど……」
「まぁ、追いつくわけないわなぁ。で?」
「携帯に何度も電話入ったけど……」
「出なかったんやろなぁ」
「……うん」
丁度話の区切りになった時、アタシの携帯が着信を知らせていた。
「はいはい〜」
発信者は……くおん。
タイミングいいやっちゃなぁ〜。
Pi
「もしもし」
『あ、中澤さん。久遠です』
「ほい、お疲れさ〜ん」
『すいませんけど……お願いがあるんです』
「なんやろ? まぁ、大体解るけどな」
大体誰と話しているか分かったみたいで、ヤグチが自分を指差して手をブンブン振っている。
『……ひょっとして、もう聞いてます?』
「あぁ、聞いた。今おるし」
あっ、すまん、言ってもうたわ。
声出さずに怒っても全然堪えへんで……まぁ、声出しても同じやけどね。
- 486 :『The Legend of red thread?』:2006/11/25(土) 23:38
-
『替わって……は、もらえないんでしょうね』
「すまんなぁ、イヤやって」
『でしょうね。彼女の次のオフとか解りませんか?』
「ん……ちょっと待ってな」
電話口を押さえてヤグチに向かって問いかける。
「ヤグチ〜、アンタ次のオフいつやったっけ?」
「なんで言うかなぁ……再来週の水曜だったかな。それがどうしたの?」
「解った」
再び電話に向かって話す。
「再来週の水曜らしいわ」
『じゃあ、その日。今日と同じ場所で、朝から待ってるって伝えてください。
きてくれるまでずっと、意地でも待ってるって……絶対に裏切らないって信じさせてみせるって』
「ほぉ〜、それは大したもんやね。解った。伝えておくわ」
Pi
「くおんから伝言」
「なんだよぉ」
「次のオフん時、今日と同じ場所で朝からずっと待ってるんやて。
なんでも信用できるって証明するらしいで? ……どーするヤグチ〜?」
「……し、知らないよっ!」
「そっか……まぁ、ええわ。裕ちゃんもう寝るけど、ヤグチは泊まってくか?」
「……帰る。急にきてごめんね」
「そっか。一人でしっかり考えや」
「……バイバイ」
神妙な顔をして帰っていくヤグチを見送りながら思った。
自分の勘は間違ってなかったみたいやって。
- 487 :名無し娘。:2006/11/25(土) 23:40
-
世界バレー見終わってからとか思ってたらウトウトしてた。
第四セット途中までしか覚えてないやorz
明日の夜、時間があったら終わらせよっと。
- 488 :名無し娘。:2006/11/26(日) 16:05
- 大量更新キタコレ
読み切れねーよ
- 489 :名無し娘。:2006/11/26(日) 18:10
-
>>488
誰かがどんどん言うからw
さて。
予定外に早く帰ってきたので世界バレー前に終わらせよー。
- 490 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:11
-
─3─
けたたましい目覚ましの音で眠りを妨げられた。
ベッドの上から手だけを伸ばして目覚まし時計のボタンを叩き、デジタル時計に表示されている時間を確認してから溜息を一つ。
「はぁ……休みだったんだっけ」
呟いて上体を起こし、ベッドの脇に畳んであったシャツを羽織った。
ハッキリと覚醒してきて……不意に思い出す一つの言葉、押しつけられた約束。
『ずっと待ってる』
「誰も行くなんて言ってないじゃんかよ」
言葉に出して、そして少し考えた。
行かないよ…せっかくの休みなんだもん……買い物でもしに行こっと。
仕事の時間に合わせてあった時計のせいで、朝早く起きてしまった。
まだ出掛けるには少しばかり早い時間だった。
歯ブラシを銜えながら、今日、コレからのことを考える。
うん、まずはゆっくりと熱めのシャワーを浴びて身体を目覚めさせよう。
シャワーを終えてドライヤーで髪を乾かしてからシリアルとフルーツで軽く朝食を摂った。
『ずっと待ってる』
出掛けるために着替えをしながらも頭の中でしつこく響いて離れないアイツの言葉。
人づて――裕ちゃんに聞かされた――だけで、言葉を聞いたわけでもないのに、しっかりと久遠の声で響く言葉。
「フンッ! さっ、買い物行こう……」
吹っ切るように着替えをし、簡単なメイクを済ませて、サングラスをかけ、帽子を深くかぶって部屋を出る。
- 491 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:11
-
「うわっ……寒っ」
二月の寒風に吹きつけられて思わず顔をしかめながら、自分を納得させるように呟いて歩き出した。
一瞬脳裏に浮かんだ、海岸に立って待っているアイツの姿を振り払うように。
「…待ってるわけないよ、こんな寒いのに朝から待ってるだなんて」
表通りでタクシーをひろって、何度か足を運んだ事のある渋谷のめぼしいショップを廻る。
春物の洋服、アクセサリー、バッグや化粧品等、様々な店を行ききしてしばらく時間を潰していた。
昼過ぎになって、少し遅めの昼食がてらお茶でもしようと手近なお店に飛び込んだ。
窓際の席に陣取って、温かいミルクティーに口をつけながら、見るともなく窓の外の風景を見ていた。
相変わらず強い風が吹く中を、雑多な人達が歩いている。
サラリーマンらしき人がコートの前をしっかりとあわせながら歩いているのが何かと重なる。
「ホント、寒いよね今日……」
そう口に出してから風を避ける何ものもないような場所だったら尚のことだろうと思った。
そうやってボーっとしていると、また頭に浮かんできてしまう海岸の風景と約束の言葉。
『ずっと待ってる』
「気分が乗らないなぁ、もういいや……帰ろ」
お会計を済ませて、家へ帰るためにタクシーをひろった。
道が混んでいるようで、なかなか車が進まない事もあって無性にイライラとした気分だった。
段々と陽が傾き始める頃になってやっとマンションの前まで着いた。
運転手さんに料金を払って、開いたドアをくぐって表に出ようとした時……。
- 492 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:12
-
「あぁ〜、もうっ! 気になって仕方ないじゃんか!」
ドアを閉めたそうな顔をして、こっちの様子を窺っていた運転手さん。
もう一度シートに座り直しながら運転手さんに早口で告げた。
「すいません、江ノ島までお願いします」
怪訝そうな表情をしていた運転手さんに「なるべく急いでお願いします」とだけ言葉を重ねた。
そう言ったっきり黙り込んで、眼を閉じて頭の中で呪文のように。
──居るわけない、待っているわけない、どうせ……。
自分に信じ込ませようとするかのように繰り返す。
心の何処かで自分の思いを疑いながらも……。
車が海へと近づくにつれて、段々と強まってくる潮の香りと一つの思い。
「あ、ココでいいです」
運転手さんにそう告げて、この前タクシーをひろったのと同じところで車を降りた。
海から吹きつけてくる風は、タクシーに乗る前の風よりも遥かに冷たかった。
少し歩くとあの日の岩場が見えてくる。
「こんなに寒いんだもん、いるわけないよね」
海岸沿いの道路から見える範囲には人影すらなかった。
せっかく此処まできたんだから、ちゃんと待ってなどいないことを確認して、気分を楽にしてから帰ろうと砂浜に足を踏み入れた。
日の沈みかけてきた砂浜を、岩場を廻るようにゆっくり歩いていく。
少しずつ岩場の海側全てが見渡せる位置に近づくにつれ、鼓動が早くなってくるのを感じる。
後、僅かで……
「……ホラ、やっぱいないじゃんか。そんな事だと思ってたんだ」
心に溢れてきた安堵とも怒りとも――それとも別の何かなのか――判別のつかない気持ちを声に込めて吐き出した。
- 493 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:13
-
「いらっしゃいませ」
踵を返して帰ろうと思ったとき、どこからかそんな声が聞こえた。
初めて聞いた時と同じ声、同じ口調……久遠の声。
岩場を見まわすけれど、何処にもそれらしい人影は見えなかった。
「よっ!」
そんな掛け声と、一瞬遅れて砂を踏みつける音がおいらのすぐ後ろで聞こえた。
慌てて振り返ると……そこには久遠が立っていた。
「なっ……どっ……」
「どうしたの?」
突然現れた久遠の姿。
上手く声が出なかったおいらに向かって、あまりにも普通に話す久遠の顔を見ていたら、何故か少し落ち着いた気持ちになってきた。
「何時から待ってたの?」
「中澤さんに聞かなかった? 朝からだけど?」
「なにしてんだよっ。ヤグチくるなんて言ってないじゃん」
「でもきたじゃない」
「………」
「まぁ、取りあえずありがとう。で、俺は考えました。あの時の事。自分の事。
勿論真里の事を中心に。どうすれば信用してもらえるのかって事」
「………」
「まずコレ見てもらえる?」
そう言って久遠が取り出したのは自分の携帯。
幾つかの操作をして、その液晶に表示されているものをおいらに見せてくれた。
- 494 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:13
-
「なに? 着信履歴? あっ……」
「日付、覚えてるでしょ?」
その着信は、あの日の…あの時掛かってきた着信の履歴だった。
「で……次はコレね」
着信拒否設定の画面……さっきのアドレスが登録されている。
「こ、これがどうしたのさ……」
「あの日からそのままなんだ。まだあるからさ、もうちょっと付き合ってよ」
今度は……メールの送信履歴?
「読んで」
色々とありがとうございました。
好きな人が出来ましたので……。
久遠
「好きな人……って?」
小さく問いかけたおいらに、久遠はこっちを指差しながら呟いた。
「言ったじゃない。他に誰がいるの?」
「………」
目を合わせていられなくて俯いてしまった。
ヤバイよぉ、なんかちょっと泣きそう……。
- 495 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:14
-
そんなおいらに久遠は更に言葉を重ねてくる。
「でね……俺信用ないでしょ? だからさ、仕事替えてもいいと思ってるんだ」
その久遠の言葉に驚いて顔を上げた。
そんな事お構いなしに、飄々とした表情のままで話を続ける久遠。
「今の仕事って……まぁ、さっきみたいなこともあるわけだしさ」
「だって好きでやってるんじゃないの?」
「そりゃ好きだけど?」
「ならなんでそんな簡単に辞めてもいいなんて言えるんだよっ」
責めるように叩きつけたおいらの言葉に、さも当然のような表情で久遠が答えた。
「どっちかしか手に入らないなら……仕方がないかなってさ」
「………」
「だからさ、もうコレも要らないかなってね」
ヒュッ!
「えっ!?」
空を切るような音と同時に、綺麗に放物線を描いて海へ飛んでいったモノ。
ポチャン
- 496 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:15
-
波の音に紛れるように小さく聞こえた何かが水面を叩いた音。
今、久遠が投げて海にしずんでいったモノ……さっき久遠が手にしていたモノ。
そして今は久遠の手から消えてしまったモノ……さっき何度も見せられた携帯。
あの時ヤグチを無性に苛立たせた携帯。
久遠の仕事関係や友人のアドレスもメモリーされているであろう携帯。
「バイバーイ」
携帯の沈んでいった水面に、笑顔で手を振ってみせる久遠。
「バイバーイって……バカ! 自分でなにやったか解ってんの!?」
「これで多少は信じてくれるかな?」
「っ……」
自分の中でなにかが切れるのが解った。
そしてそれが…何がどうとか考える前に身体が動いていた。
- 497 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:15
-
ジャブ…ジャバ
携帯が沈んだ辺りめがけて海へ足を踏み入れた。
久遠じゃない……久遠じゃなかった……バカなのはおいらだったんだ。
「あっ、おいっ……」
「バカッ! うっさいっ!!」
久遠の制止の声も振り切ってザブザブと海へ入っていく。
腰の辺りまで海に入った時だった……足が地を離れて、気が付いたら後ろから腰を抱かれて持ち上げられていた。
「なにしてんだよっ! このクソ寒いのに!!」
「離せよぉ、拾いに行くんだからぁ……」
「よせって! あんなんどうとでもなるよっ!」
「ダメだよぉ…ダメ……拾わなきゃ……」
おいらは無我夢中でもがいたけれど、抱き上げる久遠の力に逆らえるハズもなくって。
久遠に腰を抱かれた状態のままで浜へ引き戻されてしまった。
二人して砂の上に座り込んで……久遠は何かを囁きながら、しゃくりあげるおいらの頬を撫でてくれていた。
- 498 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:15
-
…………
- 499 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:16
-
泣きながら「ごめんね」とばかり繰り返す真里を、少しでも寒さから守ろうとするように、膝の上に乗せた姿勢のまま抱きしめながら、俺は「真里のせいじゃない、大丈夫だから」と呟きながら涙に濡れる頬を拭うように撫でていた。
しばらくそうしていたけれど、陽の落ちてきた海岸の──ましてや二人とも身体の半ばまで濡れていたこともあって──その寒さは耐え難くなってきていて。
自分はまだしも真里に風邪でもひかせてしまってはと、彼女の肩を抱くように立ち上がらせ、車へ向かって歩き出した。
暖房を全開にして車を走らせながら、黙って俯いたまま助手席に座る真里に話しかけた。
「どっか手近な休めるトコ入るよ? イヤかもしれないけど我慢してな」
横目で真里の反応を窺っていると、返事こそ聞こえなかったけれど小さく頷いた事だけは確認できた。
走り出して数分で、道沿いに見えたラブホテル。
選択の余地はなく滑り込み、一瞬考えて、余計な飾り立ての為されていない、少しでも落ち着ける雰囲気の部屋を選んだ。
- 500 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:16
-
鍵を開けて部屋に入り、暖房と風呂のチェックをしてから、ドアの前で呆然と立ちつくしている真里に促した。
「先に風呂入っちゃいな? 服、乾かしておくから」
「っ……。うん、解った」
真里は何かを言いかけたみたいだったけれど、小さく頷いて素直に浴室に入っていった。
その間に自分でも濡れた服を脱いでバスローブを羽織り、暖房の風が直接当たるソファーに洋服を広げておいた。
「ふぅ……」
そうしているうちにバスルームから微かに水音が聞こえてきた。
俺はバスルームのドアを少しだけ開けて中を覗き、その奥のドア一枚隔てた空間でシャワーを浴びているであろう真里に声を掛けた。
「濡れた服…乾かしておくからさ。出たら取りあえずバスローブ着てな」
真里の服……腰まで海に浸かったのだから当たり前だけれど、パンツやパンティーはおろかシャツやジャケット、ブラまでも濡れていた。
「そっか、俺が腰まで濡れたんだものなぁ」
俺の胸くらいまでしかない真里は更に濡れていて当然だった。
さっきしたのと同じようにソファーに濡れた服を並べていく。
そんな作業を終えた頃、バスルームから真里の呼び声が漏れ聞こえてきた。
「……?」
- 501 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:17
-
バスルームのドアを少し開け、中を見ないように顔を出しながら真里に問いかけようとしたその時だった。
「ねぇ……」
さっきとは声の聞こえ方が違っていた。
余計な遮蔽物の無い、生々しい声。
そっと視線を上げていくと、浴室のドアが開いていて……そのドアの陰に隠れるように真里が立っていた。
「あのさ……入ってきなよ。久遠も…さ」
「あ〜っと、でもなぁ」
「ヤグチなら大丈夫だからさ。もしコレで久遠だけ風邪でもひいちゃったら、その方がヤグチはイヤだよ」
あまり余計な感情を悟られたくないかのように、少し早口で、でもハッキリと一息に喋る真里。
「……そっか、解った」
信用してもらえた……そう思っていいのかな。
でも調子乗って余計なコトして、またひっぱたかれて終わりにはしたくないからなぁ。
そんな事を考えながら、羽織っていたバスローブを脱いでそっと浴室のドアを開けた。
- 502 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:17
-
…………
- 503 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:17
-
──入ってきなよ。
自分でそうは言ったものの、さすがに恥ずかしくなって、バスタブに体を沈めて久遠が入ってくるのを待っていた。
そっとドアが開いて顔を覗かせる久遠が言った。
「失礼しま〜す」
「……プッ…アハハハッ、なにそれ? ……キャハハハッ」
「え〜っ? なにって言われてもなぁ」
「"失礼しま〜す"って……アハハハッ……おっかしいの、もぉ」
「やっと笑ったなぁ」
笑い続けるおいらの側に椅子を持ってきて座り込んで、真っ直ぐに視線を合わせながら久遠はそう言った。
「あっ、うん」
「店で見てた時に思ったんだけどさ、笑った顔がすっごいいいなって」
「そ、そうかな?」
「うん、全然いい。さっきまでしてたような顔も悪くないけどさ、かなり胸が痛かったからなぁ」
そう言いながら苦笑いを浮かべている久遠に、おいらは少し照れて笑いながら頷いた。
「うん、ありがとっ」
「うっし! 身体洗っちゃる。出なよ」
「え〜っ!? いいよっ! もう洗ったし…そんなの恥ずかしいじゃん!」
「今頃なに言ってんの。より綺麗に洗ってあげるから、出ろっ!」
「イヤッ!」
「なら力ずくでも……」
- 504 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:18
-
にやりって表現がピッタリの笑顔を作って、そんな事を言う久遠。
うわっ……目がマジだよぉ。
「あっ、待った! 解ったから。出る、出ますから、ちょっと待って。
出るから……ちょっとの間そっち向いててよ」
「……オッケー」
向こうを向いたのを確認してから、そっとバスタブから体を上げて、少し久遠から離れたところに椅子を置いて背中を向けて座った。
「いーよ?」
沈黙……返事がない。
そっと首だけ廻して後ろに居るはずの久遠に声を掛ける。
「久遠?」
そこにはなんかビックリしたような、呆然としているような、そんな顔をした久遠がさっきと同じ姿勢のままで座っていた。
- 505 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:19
-
「お〜い? なんとか言えよぉ、恥ずかしいじゃんかよぉ」
「おっ、あ、うん……可愛いなぁ」
「バッ、バカッ! もぉ〜、なんか余計恥ずかしいよぉ」
「ははは……さて、スポンジ・ブラシ・タオルどれが良い?」
「……タオル以外だったらどっちでもいい、かな」
「じゃあ素手で…」
スパァン!
「いった〜……そんなマジでひっぱたかなくても……」
「すっごいいやらしい顔してるんだもん!」
「ごめんなさい、じゃあスポンジでよろしいでしょうか?」
「……いいよ」
「では、背中から流させていただきます」
「うん、あんま見ないでね」
背中に当たるスポンジの感触がこそばゆいような、気持ちいいような、そんな微妙な感触。
肩口から真っ直ぐに腰まで滑っていくスポンジの感触。
- 506 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:20
-
スゥー
ゾクっとして……なんか泡に包まれたスポンジの当たり具合が……
「あんっ」
「ん?」
「……なんでもない」
サワサワ
「んっ……あ、あのさ」
「ん? なに?」
「もうちょっと力入れてくれない?」
「そう? あんまり力入れてやると、肌によくないかと思って」
「だ、大丈夫だから、ね?」
「ん、解った」
ゴシゴシ、サワ、ゴシゴシ
なんか力の入れ具合が……時々こう……明らかにワザとやってるなって思えるような微妙な力加減に変わるときがあって、ちょっと変な気持ちになっちゃいそうな時だった。
スルッ、ムニュ♪
「キャ!?」
「あっ……」
スポンジが脇に落ちていて、久遠の手がおいらの……む、胸を包みこむように触っていた。
さっきまでの事もあって無言で後ろを向いて睨みつけた。
- 507 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:20
-
「いや、違うんだ! じ、事故……そう事故で……」
「あっち向いて」
「え? あ、はい」
久遠が後ろを向いている間に、シャワーで泡を流した。
「今度はヤグチが洗ってあげるよ」
「え?」
振り向こうとした久遠の顔を両手で挟んで強引に向こうを向かせる。
「こっち向くな!」
「……はい」
さっき久遠が落としたスポンジを手にとって、更に泡立てて背中を擦った。
ゴシッ、ゴシッ
「っ……いっ……あ、あのさ、ヤグチさん?」
「なによぉ?」
ゴシッ、ゴシッ
「ち、ちょっと痛いんですけど?」
「そお?」
「あのね、ほら、もうちょっと優しく……」
「……うるさいなぁ、もう」
- 508 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:21
-
背中から脇へ、スポンジを軽く滑らせ……
「あ、ごっめ〜ん、手が滑っちゃった」
スルッ、ギュ
「ぐっ……」
「あっ…おっき……」
「ワザと……やった?」
久遠は振り向いておいらの表情を見ながらそう言い、更に言葉を続けた。
「聞くまでもない顔してるなぁ……」
「………」
「自分でやっといて赤面しないでくれる?」
「……あの、だってコレ」
「でさ、何時まで握ってんの?」
「イヤぁ〜ん!」
言われるまで気がつかなかったけど……そう、ソレを掴んだままだった。
跳ねるように立ち上がって、久遠に背を向けてしゃがみ込んだ。
「こっちのがイヤンだよ……お返しのお返しね」
ニュル
「あっ、ち、ちょっと……」
しゃがみ込んでいるおいらの後ろから、久遠の泡まみれの手が伸びてきた。
- 509 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:21
-
…………
- 510 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:22
-
人の大事なモノを散々握ってくれた──微妙に良かったけど──お礼に、両手一杯に泡立てて真里の身体に手を滑らせた。
「あっ、ち、ちょっと……」
「いいからいいから」
そんなことを言いながら、腰の後ろから滑らせ始めた手をお腹、そして胸へと廻していく。
「あ…んっ」
「ちょっと気持ちいい?」
「う、ん……」
ニュル
なんかソープみたいだな、っとか考えながら、大きくはないけれど形のいい、可愛らしい胸を包み込むように揉み、撫でた。
「あ、んんぅ…ちょっと、やん」
ニュルン
泡のせいで──勿論肌も綺麗でスベスベなんだけど──凄く、多少の力を入れて滑らせてもなめらかに胸の先端を刺激しながら動かせる。
「んぁっ、ぅん」
「こっち向いて?」
「ん、う…ん」
- 511 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:25
-
立て続けに与えられる刺激に、少しとろんとした反応だったけれど、首だけ廻らせてこちらに顔を向けた真里の唇に己の口を重ね合わせた。
チュ
「んっ」
チュプ
重ねた唇から漏れる淫靡な音がバスルームに響く中、互いの存在を求めるかのように舌を絡ませあった。
「っ、ぅん」
唇を合わせたままで胸を刺激していた手をゆっくりと下ろしていく。
クチュ
「ひっ、あぁ…んっ、くぅ」
「なんか全然準備OKみたいだね、もうすっかり……」
正直に応えてくれている真里の身体に、嬉しくてそんな軽口をつく。
- 512 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:26
-
「やっ、そんな…こと、シャワーのせい……あぁっん!」
「だってホラ……」
そのシャワーの水とは違うモノで湿っているトコロを刺激していた手を、一時離して真里に見えるように持ち上げた。
「あっ…だってぇ、久遠が…」
最後まで言わせることなく、再びその手を下に滑らせて更に敏感な部分を指先で転がした。
「ああぁっ、んっ…はぁ、ん〜ぁん」
椅子から崩れ落ちそうになっている真里の、腰に手を回して立ち上がらせバスタブの縁に腰掛けさせる。
「……ん…え?」
縁に腰掛けさせた真里の背中に手を廻して支えながら、長く深く、お互いを感じあうようなキスをした。
唇から首筋、首筋から胸元、そして柔らかなふくらみにキスをし、固くなっている先端を刺激するように舌先を這わせる。
「はぁ、ん…ああぁっっ」
ゆっくりと場所を変えていく唇、柔らかなふくらみを過ぎキュッと締まったウエストを通って更に下へと滑らせて。
「ひゃうっ! …くっ、あぁ、ん…あああぁぁ〜〜っ!」
濡れて妖しく輝きを放っている赤い小さなふくらみを刺激した途端に、一つ跳ね上がった声と共にビクビクと体を震わせる真里。
- 513 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:26
-
「もしかして、軽く達しちゃった?」
「はぁ……んっ」
問い掛けも聞こえているのかは解らなかったけれど、反応を見ればソレと解る程に真里はとろけてきているようだった。
あまり力の入っていない真里の身体を支えながら、バスタブの縁に手を掛けさせて後ろから自分の先端をあてがう。
「ん…あっ……こ、ここでしちゃうのぉ?」
「イヤ?」
「そ、そうじゃ……ん…ないけど……」
「もう我慢できない……」
耳元で囁きながらゆっくりと、少しずつ真里の中へと自分のモノを刺し入れていく。
ググッ
「くぅぁ……あっ…うあぁぁ、はぁん」
奥まで押し込んだところで一度動きを止めてみた。
無理な体勢ながらこっちを向いて、切なげな表情で口を開く真里。
「…はぁ、ん……く、くお、ん?」
「ん、なに?」
「あ、あの……」
求められている事が何なのか、解っていながら聞き返す。
そして聞き返しながら、腰を退く。
ズリュ
「あっ、うぅん…くぅん……」
抜けそうになる手前で、もう一度動きを止める。
- 514 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:27
-
「あっ…ねぇ、くおん〜……」
「動いて欲しいの?」
「ん……」
「言うのは恥ずかしいの?」
「っ…うん」
焦らしてあげようと思っていたのに、その表情が無性に可愛くて仕方がない。
「じゃあ頷くだけでもいいよ? 動いて欲しい?」
少し躊躇した後、こっちを向いた姿勢のままで、首だけでコクンと小さく頷いてくれた。
もうそれだけで充分だった…奥まで、深く、一息に突き上げた。
ズブブッ
「ああぁぁぁんぁ〜〜っ!」
一定のリズムを刻むように前後に、そして微妙に真里の内側を刺激するように、小さく円を描くように動く。
「あんっ…いいっ…ひっ、ああううっ…ああああぁぁぁあっ!!」
そうして動きながらも目の前にある艶やかな背中へと舌を這わせていた。
「あぁ……ひゃ…あっ、んん〜」
- 515 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:27
-
舌で背中を刺激し、両手は胸を優しく揉みしだきながら、身体を合わせていく。
奥へ達するときにだけ、より深く繋がるように、一番深い部分を貫くように、押し込むように動いた。
「あぁっ、そ、それ……い、いいっ、ああぁあああぁっ」
不意に真里の締め付けてくる力が跳ね上がった。
「くっ、ちょっと……」
「はぁん、あぁぁ〜〜っ……く、くおんも…いいの?」
「ああ、真里の…すごくね、うぁっ」
休むことなく動き続けながらも次第に真里の締め付けは強くなって。
おそらく意図してのことではないんだろうけれど、時に弱くなったり、不意に強く締め付けてきたり…。
とにかく絶妙によかった……相性がいいのかもしれない等と考えてる間にも互いの快感の度合いは増すばかりで。
「はあはあ…す、すご……くおん、うぁぁっ……」
「くぅっ!」
バスルームの中には二人の繋がりあったトコロがたてる淫靡な音。
そして二人の夢中になって愛し合う声が反響していた。
そして、それは次第に頂点に高まりつつあって……。
「はっ…んっ…ああっ…、もぉ…お、おかしくなっちゃうよぉ」
「良いよ、おかしくなっても……俺も、もう…すぐ」
その時真里の身体がガクガクと震え、その声が一際高く跳ね上がった。
「い、いいっああぁあああぁっ…イクッ…ああぁっいい、いっちゃう〜っ!!」
「うあっ!」
その直後、ビクビクと小刻みに痙攣している真里の可愛いお尻に熱くこみ上げてきたモノを吐き出した……。
- 516 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:28
-
…………
- 517 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:28
-
行為の余韻を楽しんだ後、身体を洗いあって、二人でバスタブに身を沈め、ゆっくりと暖まってからバスルームを出て。
今は心まで満ち足りた、心地よい疲労感に包まれて二人ともベッドでくつろいでいた。
部屋の中はかなり暖かくなっていた事もあって、おいらは一人で寝ているときのように裸で横たわって布団で顔まで隠し、右手だけを暖かな空気に曝していた。
久遠と繋がった右手だけは――。
久遠はおいらの横に座って、そっと手を握りながらこっちを見ていた。
少し気恥ずかしくて目を逸らしたままだったけれど、おいらの方から口を開いてみた。
なかなか恥ずかしくて聞けないことだけど……思い切って。
「ねぇ久遠?」
「ん? なに?」
話しかけられるのを待っていたかのような久遠の反応に、少し勇気づけられて言葉を続ける。
「あのさ、久遠ってさ、迷信とか占いとか……そんなの信じる人?」
「そうだな……いい事だけ信じるかな」
笑ってそんなありふれた答えを返してくる。
それじゃあ解んないじゃんかよぉ……ちぇっ!
――もう少し頑張ってみようかな。
- 518 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:29
-
「笑うなよぉ?」
「笑う? ん〜、解った、笑わない。続けて」
「あ、〜……」
「あ?」
「赤い糸って信じる?」
「……」
沈黙……そして。
「少し前から信じるようになったかな」
「えっ…?」
「ちょっと目ぇ瞑っててくれない?」
「な、なんでだよぉ?」
「いいから、少しだけ」
「解ったよ…これでいい?」
渋々目を閉じてジッとしていると、久遠がなにかコソコソと動き回っているような気配がしていた。
少し前からってどういう意味だろう……そうだって思っていいのかなぁ?
こうやって目を閉じていると自分の殻の中をグルグルと回り続けてばかりいるような気になる。
だから声を出すんだ。
自分の殻を破るために、信じられるその人を感じるために。
「ねぇ…すっごい気になるよぉ〜、ナニやってんだよぉ?」
「もうチョイね……もうチョイ、もうチョイ」
そんな事を言い続けている久遠。
しばらくそうしていると、自分の手…いや、指先に、ホンの微かになにか触れているような感触があった。
肌を掠めるような、こそばゆい感触。
- 519 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:30
-
「ちょっとぉ!? なにしてんの? 目ぇ開けるよ?」
「待ってって、後…三十秒」
「なんかくすぐったいんだってば」
「はい、いいよ、OK!」
ゆっくりと恐る恐る目を開けた。
まず視界に入ったのは久遠の悪戯っ子のような笑顔。
そして感じる、たわいもない、それでいて充分な充足感。
「見たかったのは俺の顔じゃないっしょ?」
「……解ってるよっ」
照れ隠しにワザと強くそういって目を逸らした。
逸らした先にあった久遠の手に……糸?
そう、何処から持ってきたのか――何処かからほぐしたのか――赤い糸が軽く括られていた。
その糸を目で追っていくと、おいらの指に軽く結われていた。
そっと顔を上げて、もう一度久遠の顔を真っ直ぐに見つめる。
久遠は、まるで子供が親にするような、「どう?」って……誇らしげで無邪気な笑顔をして見つめ返していた。
心に満ち溢れてくる温かい感情。
『あぁ…この人は大丈夫なんだ』って、そう思える。
確認するように顔のトコまで持ち上げた手、そこで気がついた。
大したことじゃないような気もするけど小さな疑問が口をついて出る。
「ねぇ、なんで薬指なの? 普通小指じゃない?」
「伝説って言ってたろ? こういうのもあるんだよ」
- 520 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:31
-
そう言って久遠が話してくれたのは、世に言う「赤い糸の伝説」の元になるギリシアの昔話。
伝説の登場人物を、今のおいら達に準えて、面白可笑しく、それでいて真剣に話してくれた。
そして薬指を選んだ理由、エジプトの昔話。
薬指にするエンゲージリングの由来にもなっているって話。
心で繋がる結びつきの話。
おいらはどちらも詳しく聞いたのは初めてだったから驚くことばかりで……。
でも最後まで聞き終えたとき、疑いは消え去り自然と言葉が零れていた。
一生を捧げるほどの結びつき。
「ヤグチってヤキモチ焼きだよ?」
「お手柔らかにお願いします」
苦笑いしながら言う久遠の顔を見ていたら、おいらもつられるように自然に笑みがこぼれてきた。
「バカっ!」
「今はこんなに細くて短い糸だけど…」
そう言って久遠は軽く手を挙げて、互いの繋がりがハッキリと見えるようにしながら言葉を続けた。
「きっと強くて丈夫な、何処まででも…何処にいても大丈夫って、そう思える糸になるようにするから」
「……うん、よろしくお願いしますっ」
――ゆっくりと2人で、素敵な糸を紡いでいこうねっ♪
- 521 :『The Legend of red thread?』:2006/11/26(日) 18:31
-
end.
- 522 :名無し娘。:2006/11/26(日) 18:44
-
忘れてた。
一つ自己弁護しとこうw
これを考えたのは、その昔、やぐのプリクラ疑惑が出た頃でした。
娘。を辞める頃にもチョロッと書いたけど……今はもう書けないかな、やぐではw
- 523 :名無し娘。:2006/11/26(日) 20:32
- エロエロキタコレ
- 524 :名無し娘。:2006/11/27(月) 13:03
- 古い時代の設定っていうがいいね
- 525 :名無し娘。:2006/11/29(水) 22:52
-
さらしてからタイムリー(?)に記事が出て、なんか苦笑いな今日この頃。
>>523
あんたも好きねえ、とか書いた本人がどの口で言うのかと(ry
>>524
今のやぐであんなの書けないんで、ほぼ丸投げしたのが幸いしたんでしょうかw
さて。
一番最初にさらしたヤツの続き、いきまーす。
- 526 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:53
-
「ああっ! ったくうっとおしい。このクソ蚊めっ!」
茂みにしゃがみ込んだ俺は、人様の耳元で独特の音を響かせる厄介者を追い払う作業に追われていた。
なかなかすばしっこいこやつめは、スルリスルリと嘲笑うように俺の手から逃げていく。
「くそうっ! なんで俺がこんなこと……」
ブツブツぼやいてみてもはじまらない。
が、ぼやかずにもいられない。このやり場のない怒りをどうしてくれよう。
そもそもこんなことになったのは、あの一通の手紙が原因だった……。
- 527 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:53
-
…………
- 528 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:53
-
部活を終えての帰り道、最近変えた帰宅ルートの終わり近くにある嗣永家。
その門前に、制服姿のちっこい背中を見つけた。
ハデな音を立てながらチャリをフルブレーキで止めると、驚いて振り返った桃子と目があった。
「よっ」
「おかえりー」
「家の前でなんしてんだ?」
「んー、ちょっと」
「桃子……?」
あきらかになにか隠してる。そんな素振り。
ってゆーか背中に廻ってる手になにか持ってんだろ。
「なに隠してんだ?」
「な、なんでもないよ?」
えらく芝居がかったセリフだった。
ものすごくあやしい。
「おにーさんに見せてごらん?」
「なんか笑顔がコワイんですけどー」
「うっせー。ごまかさないで、ホレ、見せろ」
- 529 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:54
-
すっげー渋々といった風に差し出された桃子の手には、薄いブルーの封筒と同色の便箋が二枚。
俺の顔色を窺うように少しアゴを引いて伏せ気味に、チラ見してくる桃子。
「なんの手紙?」
「その……。読んでみて」
「いいのか?」
コクンと頷かれて二枚の便箋を手に取った。
……ん……ほう………………くっ。
心拍数が上がってきてるのが解る。
桃子の前じゃなければ、こんな紙切れ破いて捨てちまうトコだったろう。
「ラブレターだな。クラスメイトかなんかか?」
「うん」
「ん? そういえば……高橋って名前覚えてんなあ」
「あ、一回会ってる。少し前に、ここで」
「……アイツか」
思いだした。
チャリでここを通りかかったとかぬかしてた、ちょっとさわやか系のアイツか。
あの野郎……。
- 530 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:55
-
「で、どうすんだ。これ」
「どうって……?」
「いや、ほら……」
「こういう手紙って、何度かもらってるんだけどぉ。いつも知らない子だから友達に断ってもらってたの。
でも、これって知ってる人、っていうかクラスの子だし、それもなんか悪いじゃん?」
「行くのか?」
「……ついてきて、くれたりしないかなぁ、なんて?」
ヤバイ。
またこの目は……この少し下から見上げてくる“お願い”目線。
「な、なんでだよ」
「だってぇー……」
くっ、マズイ。
またのせられっちまうじゃねーか。
なんとか流れを変えないと。
- 531 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:56
-
「まさか付き合うのか?」
「違うよぉ、そうじゃないから。……ね?」
……可愛いな、くそっ。
「おねがい♪」
だからといって、そういつもいつも……
「ただいてくれればいいから。きてほしいの」
いつもいつも……
「ダメぇ?」
「し、しょーがねえな」
「ンフ♪ やっぱ優しいんだっ」
桃子の目線に勝てない自分が恨めしい。
結局押し切られた……というか流されたのだった。
- 532 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:56
-
…………
- 533 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:57
-
そしてこのざまだ。
どうせだったら隠れてないで、素直に彼氏だと言って姿を現せば良かったとも思わないでもない。
が、しかしだぞ?
もしもヘンに不機嫌になって、そんな風評を流されでもしたら、それは桃子のためにならないだろう。
うむ、仕方がないのだ。
などと考えている間に状況に変化が生じたようだ。
少し離れたベンチに座る桃子が立ち上がり、一歩二歩と動いた。
その向こうへ目をやると……例のさわやか君が走ってきたところだった。
一言二言交わしたらしい二人がベンチに腰を下ろし、なにかポツポツと話してるようだ。
くそう、話の内容が気になるけど、これ以上近づくのはマズイ気がする。
もしもの時だけしか俺の出番はない予定なんだからな。
遠目に見える二人は、和やかに会話を交わしているようだ。
桃子のヤツ、そんな笑顔でいなくてもいいだろうに……。
しばらくそんな二人を見つめていた俺は、急に今の自分を客観的に見てしまった。
――あれ? なんか俺、ストーカーみてーじゃん
勿論、桃子に頼まれてのことであって、自身で望んでいていることではない。
けれどこれは、状況的になんの言い訳もなく、ストーカーそのものだった。
- 534 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:57
-
「バカらしい」
一つ呟いて立ち上がろうと腰を上げたそのときだった。
桃子の声が聞こえた。
さっきまではほとんど聞こえなかったハズの声が。
木の陰から見た桃子は、さのさわやか君に肩を抱かれながら、困ったような笑顔を作っていた。
「なっ――」
出しかけた声を危ういところで飲み込んで、あらかじめ交わしていた約束を思いだした。
もしなにかあった場合、いかにも通りかかった風に姿を現す、そんな手筈になっていた。
今はまだ“もし”でも“なにか”でもないのかもしれないが、そんなことはもう知ったことじゃない。
心の中に次々と浮かび上がってくる言葉を押さえながら、努めて冷静に隠れ場所から出て行く。
- 535 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:58
-
「桃子ぉー」
今きたばかりだというように、さりげなく冷静に。
その声で俺に気がついた二人は、元の距離感を取り戻して普通を装う。
くそったれめ、見てたんだよこっちは……ああ、ムカムカする。
「なに? デートか?」
「違うよぉ、全然そんなのじゃないから」
もうすっかり普段の桃子に戻った声で、いつもの笑顔を見せる。
「おばさんが呼んでるってさ。携帯繋がらないって言ってたぞ」
「あれ? そう?」
そしてなにも言わずに――言えずにか――いるさわやか君に向き直って、少し申し訳なさそうに話しだした。
「じ、じゃあ、ゴメンね。私、そういうことだから、ね。また学校で」
「あっ……うん。……わかった」
「ほれ、桃子。行くぞ」
「うん。じゃあ」
- 536 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59
-
なにごとも無かったように先に歩く俺の後で小さな足音が聞こえる。
桃子は黙ってついてくる。俺もなにも言わない。
今、振り向いて口を開いたら、余計なことを口にしてしまいそうだからだ。
やっぱり行かなきゃよかったんじゃないかとか、あんな笑顔みせやがってとか。
あのさわやか君の方がいいんじゃねえの? とか、肩なんか抱かれやがって、とか。
無性にイライラするし、ヤになるくらいザワザワする。
あのまま放っておいたらキスとかされちまったんじゃないだろうか。
――キス? 桃子が?
ふと浮かんだ考えにますます腹立たしくなる。
一応、デートらしいデートもしていないとはいえ、付き合ってる……ハズの俺でもしてないのに。
あのさわやか君が桃子のくちびるを……桃子のくちびるを……
ぷにぷにしてんだろうなあ……キスじゃなくてもいいから触りたいな。
人差し指でそっとつついてみたりして……ぷにゅ、なーんてなっ、チクショウめ。
――あー、キスしてぇ!
- 537 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59
-
「キス、したいの?」
「当たり前じ――、はぁっ!?」
後からかけられた笑うようなリズムの声に返事をしかけて、ハッと気がついて振り返った。
少し恥ずかしげに口元へ手を添えた桃子が、急に振り返った俺をビックリした顔で見つめている。
「い、今なんて?」
「だーかーらぁー、キス……、したいの? って」
「な、な、な……なん」
「今、言ったじゃん?」
クスクスと微笑みながら問いかけるように語尾が上がる独特の話し方。
どうやらまたやっちまったらしい……ちゃんと付き合うようになってからは注意してたのに。
あのさわやか君に苛ついてた分、そっち方面への注意がおろそかになってたらしい。
- 538 :『さいさん』:2006/11/29(水) 22:59
-
「し、したいって言ったらさせてくれんのか?」
「えぇー? どーしよっかなあ……そんなにしたいの?」
「そ、いや、別に、そーでもないけどさ」
「えー? どっちよお」
「し、そんな、別にっ!」
「そっかぁ……」
そう言って桃子は後ろ手に組んで歩き出した。
――しまった!! ついヘンな意地はって……うあぁぁぁ!!
- 539 :『さいさん』:2006/11/29(水) 23:00
-
素直に言えばよかった。
今のタイミングだったらアリだったのかもしれないのに……
せっかくのチャンスを逃がした自分を悔やんでいると、桃子が俺の横をすり抜けて追い越していく。
なにか話すべきかと差し伸べた左手が空を切る。
俺の手を避けるようにクルリとターンした桃子が真正面に向き合って、つま先立ちで……
「今日のお礼だよ」
一瞬肩へ置かれた桃子の手が、また背中で組まれて、なにかリズムを取るように小さく揺れながらそう言った。
そう言った、くちびる。
くちびるが……やわらかかった。
「一々聞かなくってもいいからぁ。今度はそっちから……ね♥」
俺はゆるゆるになりそうな頬を精一杯引き締めて、「おう」と小さく返事を返した。
心の中ではガッツポーズをしながら大声を上げて吠えまくってたのは言うまでもない。
- 540 :名無し娘。:2006/11/29(水) 23:01
-
おしまい
- 541 :名無し娘。:2006/11/29(水) 23:02
-
ぐはっ!
最後で名前欄間違えたorz
さて、次はなににすっかなあ。
- 542 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:20
-
それはとても久しぶりの事だった。
浴びるように酒を飲み、酩酊に近い状態。
ふわついた足どりで歩む帰路は、アルコールの力を借りてもなお、冷たい風が頬に痛くすらある。
そんな冬の夜の事だった。
おそらく酔ってさえいなければ通らないような道だったであろう。
かえって回り道になる、公園を横切るように抜けていく道程。
酔いに任せた気まぐれで足を向けた公園内。
薄汚れた電灯が数本、相応の広さを誇る空間を照らし出してはいたが、その明かりは儚いまでに微弱だった。
そんな薄暗い公園の中を、遊具の間を縫うようにゆったりとした足どりで進んでいた時。
不意に感じた痛みに顔をしかめて足元を見ると、なにかを踏んだ拍子に足首を少しばかり捻ったようだった。
- 543 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:21
-
ぼやきつつも暗がりで目を凝らして見る。
酔眼を細め、バランスを崩した原因に焦点をあわせていくと、それは小ぶりなスニーカーだった。
のみならず。
そのスニーカーには足首がついていた。
無論、猟奇的な殺人事件などであろうはずもなく、視線を移せば足首から上もついていたのだが。
死んでたりしないよな?
と、誰に問うでもなく口にのぼった言葉に想像は膨らみ小さく身震いをした。
足先を踏まれても身動ぎ一つせずに倒れている人影。
アルコールのまわった頭でなんとすべきか考えた。
- 544 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:22
-
1. とりあえず警察でも呼んでやるか。>>546
2. どうするにせよ、まずは様子をみてみないとな。>>551
3. 放置に決まっている。厄介ごとはごめんだ。>>558
- 545 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:22
-
…………
- 546 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:23
-
携帯を切ってから待つこと数分。
キコキコと耳に障る音を響かせて自転車に乗ってやってきた警官。
「あんたが通報した人? で……これ? どれどれ」
おっとりした口調だが面倒事であることを隠そうともしない警官がそう俺に確認すると、よいしょと膝を屈めて確認作業に入った。
詳細に調べるまでもなく、ただ単に泥酔して潰れているだけだったらしい。
「ダメだねぇ、こりゃ……完全に潰れてるよ。知り合いじゃないんだった?」
改めて違うと告げると、小さく溜息をつきながら立ち上がった警官は困ったように口を開いた。
「派出所まで運ぶから。あんたその自転車おしてついてきてくれんかね」
一応、簡単な調書を取るし。
そう付け足した警官の言葉は、要請ではなく命令だと酔った頭ながらに考えた。
が、しかし、逆らうのはどうにもうまくない。
頭の中で、余計なことしなきゃ良かったとぼやきながら自転車へ近づいていった。
- 547 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:23
-
担いでいた人間を派出所の奥へ押し込み、腰を叩きながら戻ってきた警官。
一通りの事を聞き終えると探るような口調で聞いてきた。
「あんた…あれ、誰だか知らなかったのかね?」
なにを聞かれているのか解らなかった。
いや、言葉面通りにとるならば、答えは“知らない”、先程から告げていることだった。
聞かれている事の真意が解らず眉を顰めていると、警官は少し顔を近づけてきながら囁いた。
「あれな…TVで見たことないか? 藤本美貴とかいう芸能人だな。娘がファンなんだよ」
一瞬考えて、その名前と顔が結びついた。
暗い上にパンツルック、相当に着込んだらしく体型もうかがえなかった。
おまけにしっかり巻き付けたマフラーにサングラスと帽子。
解らなくても無理はなかろう、そう思いながら、心の何処かで惜しいことをしたと感じていた。
その“惜しい”が、どう、何が惜しいのかハッキリしないままにそう感じていた。
- 548 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:24
-
その表情をどう受け取ったものか。
警官はさっきまでとは違い、やや馴れ馴れしいとも思える口調で話し出した。
「あの藤本美貴がな、ああも泥酔してるとはねぇ。こりゃあ……な」
適当に相槌などうっていると、グッと身を寄せてきた警官が首に腕を廻すようにしながら囁いた。
「……一緒にやっちまうか」
警官のあまりに信じがたい発言にしばし硬直状態だった。
が、その意味を理解したその時、凄まじい勢いで頭に血が上るのが解った。
- 549 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:24
-
1. 甘美な誘惑に逆らえるはずもなく、便乗させてもらおう。>>560
2. そんな極悪な行為に走れるわけがないと、激発する。>>569
3. とりあえず乗ったフリだけして、それから考えよう。>>572
- 550 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25
-
…………
- 551 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25
-
まさかとは思うものの、恐る恐る鼻先に手を伸ばしてみると、掌に感じる微かな息遣い。
一つ安堵の息をはいて揺り起こそうと試みた。
揺すっても叩いても、全く返ってこないリアクションに、先程から湧き上がっていた疑念を確かめる事にした。
コートの裾を少々捲り上げ、ゆったりとしたパンツの上に手を伸ばした。
予想は的中したようだった。
その感触は男の尻とは比べものにならない柔らかな弾力を伝えてきた。
ついついモゾモゾと動きそうになる手に、グッと自制して一つ溜息をついた。
はてさて、どうしたものかと考える。
男だったら蹴っ飛ばしてでも起こしてやれば、後は放置で構わなかろうものだった。
が、女を蹴り飛ばせるタイプではないと自覚していた。
少し考えて、仕方がないと溜息を一つ。
俯せの両脇に手を突っ込み、今起きてはくれるなよと祈りながらグッと力を込めた。
何とか自身の体に寄り掛からせてバランスを取ると、極めて小さくなった相互の距離に鼻腔をくすぐる甘い匂いが刺激的だった。
邪念を振り払おうと小さく首を振り一息に身体を捻って、驚くほど華奢な身体を背負った。
家まで残り数分だったハズの距離が長く、短く感じた不可思議な冬の夜だった。
- 552 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:25
-
普通に歩けば数分の距離だが、軽いとはいえ人一人、そして相当に廻っていたアルコールは著しく身体に負担を強いた。
背中に荷物をしょったまま、不自由な姿勢で四苦八苦しつつも鍵を開け部屋に入る。
やっとの思いで彼女をベッドに放り込み暖房を強めにつけて寝室を出る。
キッチンで冷蔵庫から引っぱり出したミネラルウォーターを一口飲み、酔いを覚ますためのシャワーを浴びに向かった。
熱いシャワーで汗を流し、締めに冷水を浴びて意識を覚醒させ、腰にタオルを巻いて頭を拭きながらバスルームを出た。
そのままでキッチンへ足を向けかけて、ふと気がつく。
封を開けたままでリビングに置きっぱなしになっているミネラルウォーター。
それでいいやとボトルを取りに向かった。
テーブルに置いてあったボトルに手を伸ばしかけたその時。
カチャっと静かな音と共に寝室の扉が開きさっきの女が姿を現した。
「………」
無言で見つめ合うこと数秒。
女の肩が大きく動いた。
どうやら息を吸い込んでいるらしい。
動きピタリと止まった瞬間、弾けるように動いた身体は数歩分の距離を詰め、ぶつかるように空間を埋めた。
- 553 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26
-
「んむぅー!」
手で塞いだ口元がモゴモゴと動き、間に合わなかったら絶叫に近い声量で叫ばれていたであろう事を感じさせた。
暴れる女を必死に抑えようと苦心しながらも口から手は離せない。
そんな状態は二人のバランスを崩すのには十分だったらしい。
後ろに傾く女に巻き込まれるように寝室側へ倒れ込んだ。
それでも口から手を離さずにいられたのは僥倖だったろうか。
「んんんー! んむー!!」
なにか訴えかける女に、一から事情を説明していく。
最初はモゴモゴ言い通しで、話など聞く状態ではないようだったが、幾度か繰り返すうちに少しずつ納得してきたらしい。
険しい顔で眉間によっていた皺が消え、懐疑的だった表情は恥ずかしげなものになっていた。
納得したかどうか、大声を出さないかどうか問い、コクコクと頷くのを確認してゆっくりと手を離していく。
「ぷはっ…はぁー……」
- 554 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26
-
大きく深呼吸してのし掛かるような姿勢であることに気がつき飛び跳ねるように身体を離して、慌てて釈明した。
女はそれに耳を傾け「気にしてんの?」と笑いながら言った。
二人で寝室のカーペットの上に座り込み、少し落ちついた状態になってやっと気がついた。
部屋に運び込んだ女が誰だったのかということに。
女を指差し口を開けはしたがなにを言うべきか迷う間に、女の方が先に口を開いた。
「あっ! もしかして今気がついた? えっへっへ……気がつかれないんじゃ悲しいもんねー」
そう、この目の前にいる女は、国民的アイドルグループとか言われる……言われた? モーニング娘。の藤本美貴だった。
目の前に座っている藤本は、いつの間にか帽子もサングラスもマフラーも取り払っていて。
コートも脱ぎ、たっぷりとしていたセーターも脱いでいた。
酔っているとはいえこんなに無防備でいいんだろうかと余計な心配をしてしまった。
「あぁ…暑いんだもん」
俺の表情を読んだのか、そう話す口調はいまだ酒気をたっぷりと帯びていると解るものだ。
待っていてと一言残し、冷蔵庫から冷えたペットボトルを持ってきて手渡すと、彼女は嬉しそうにキャップを捻った。
- 555 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:26
-
傾けられたボトルはみるみるうちに澄んだ液体を彼女の中に落とし込む。
その姿の無防備さ。
クっと上がった顎から喉元に続くラインは吸い寄せられんばかりに美しかった。
満足げにボトルを置いた彼女は薄く微笑み、その口から僅かに溢れた水が胸元へと伝っていた。
セーターの下は薄いシャツで、少しはだけた胸元へ伝う液体は淫靡ですらあった。
それに目線を遣った藤本は、顔を上げるとクククと小さく喉を鳴らすように笑った。
その笑いはまるで……
- 556 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:27
-
1. まさか……誘ってるのか?>>578
2. まさか襲われるんじゃ?>>585
- 557 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:27
-
…………
- 558 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28
-
酔っぱらってはいるものの、明日の仕事にも差し障りがあるといけない。
そう考え、足音を殺して、そっと後ずさりして公園に背を向けた。
翌日。
何事もなく仕事を終え、帰宅した俺は、何気なくつけたTVに釘付けになった。
『──にある公園でTV等で活躍中の──さんが死体となって発見されました』
ニュース原稿を読むアナウンサーは沈痛な表情を作り、淡々と書かれいる内容を口にしていた。
俺は自分の選択を後悔する日々がしばらくの間は続くだろうと、頭の片隅で冷静な声が響くのを聞いたような気がした。
end.>>542
- 559 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28
-
…………
- 560 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28
-
警官は派出所の入り口をロックして、奥へと進み掛けた所で手招きをしてきた。
警官は喜色満面の笑みを浮かべ、さも楽しげに行動に移った。
手錠とロープで四肢の自由を奪い、しっかりと留められていたコートの前を開き、高級感溢れるセーターをたくしあげた。
「さすがに芸能人ってのはブラまで高そうだな」
制服の背中越しに覗き見えたキャミからのぞくそれは、今までのどの経験よりも淫靡なものを感じさせる。
半ばまで捲り上げられたセーターに隠れている、そんな微妙な状態が、感じたことのない感覚を刺激していた。
電灯の明かりを映して繊維がキラキラと光り、小さいけれど形の良さそうな双丘を強調するように見える。
「この完全に脱がさないってのがたまんねぇんだよ……」
独り言のように呟く背中に心の中で同意しつつ続きを促した。
傍らに置いてあったハサミに手を伸ばし、キャミの肩紐部分を切り裂きブラが露わにされた。
ゆっくりと指先をブラの隙間へ差し込み、それに逆らおうとする胸の弾力さえ楽しむようにジワジワと顕わになっていく白い乳房。
一瞬、動きが止まったかと思うと、クイっと浮かせて一気にブラがずり上げられた。
「ほぉ〜……」
- 561 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:28
-
完全にさらけ出された胸元に違和感を感じたのか、藤本は小さく震えると同時に天井を向いたままでうっすらと目を開いた。
二、三度瞬きすると拘束された手足を動かそうと身動ぎをして、やっと己の置かれた異質な状況に気がついたらしい。
「な、なに? あんた達…ここ……っ!?」
「お目覚めか? まぁ、マグロじゃ面白くねぇからな」
蛍光灯の光に照らし出された乳房に手を伸ばしながらいやらしく警官が呟いた。
急激に覚醒した中、自身の状況に戸惑いながらも、その行為による嫌悪感をむき出しに声を上げた。
「ち、ちょっと…イヤ、なにしてんのよっ! や、やめて……触んなよっ!」
そう叫んでやっと警官の後ろにある存在に気がついたらしい。
僅かな希望に縋るように、懇願するような目で助けを請うた。
「あ、あんたっ……助け──」
「バカか? この状況でここにいる人間が助けてくれるとでも思ってんのか?」
何かを言おうとするよりも早く警官が口を開いた。
出来るものならばその目で睨み殺そうとせんばかりの双眸を警官に向け、藤本は悔しげに歯を食いしばっていた。
が、警官にはより喜悦を呼び起こす要因らしく、その目を見ながら行為を再開した。
- 562 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29
-
「っ!? ……ヤ、イヤぁ……あんた警察でしょ! なんでこんな──」
「警察が全部正義の味方だとは限らないだよ……いやいや、日本は治安が乱れてきてるんだな」
からかうように茶化した台詞を吐いたその口で、淡い色の乳首にむしゃぶりついた。
唾液に濡れる胸を、なんとかしていやらしく蠢く口元から離そうと力を込める。
が、それすらもまた楽しみであるらしく、逃れようと身動ぎする身体のいたる所へと指先を、そして舌先を這わせた。
「やっ、…ふざけんなよっ!」
「うるせぇ!」
口と同時に手が動いていた。
容赦のない力任せの平手打ちに、藤本は側頭部を畳に打ち付けグッタリとなった。
かろうじて意識は残っているらしく、小さな呻き声が洩れ聞こえていた。
「喘ぎ以外の声は認めねぇんだよ」
警官は満足そうに呟き、ゆったりとしたパンツと同時にパンティーまでも引き下ろした。
半ば無意識に脚を閉じ拒もうとしたようだったが、ロープで開き気味に固定された両脚ではそれも出来ず。
ただ無意味に力が込められたことだけをキレイに張った両の太股が教えていた。
隠されるべき秘部は蛍光灯の光に照らしだされ、欲望の元へさらけ出されていた。
- 563 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29
-
「ご開帳〜ってトコだ。じっくり拝ませてもらうぜ」
いやらしい笑みを浮かべる警官の指は、薄目の恥毛を撫でるように動き、その秘部の形をなぞりだす。
むき出しにされた感覚と生身が触れる感覚。
それは激しい拒絶を呼び起こしたようだった。
「──っ! っ! 誰かぁ!!」
大きく一声、それに続けて声を上げようとした藤本に、なんの躊躇もなく、握り拳を振り下ろすことで応える警官。
ガッっと鈍い音が聞こえ、乱れた長い髪に隠れた口元かららしき血が畳に散った。
「ダメだって言ったろうが……ちっ! さっさとやっちまうか」
言うやテーブルに置かれたコップに手を伸ばし、その中の透明な液体を口に含んだ。
どうやら呼び出されるまで飲んでいたであろうカップ酒らしい。
当然のように濡れてもいない秘部に霧吹きのように吹きかけ、指先で膣内へ湿り気を塗り広げた。
制服の下だけを手早く脱いで、いきり立っている己の男根を握り秘部に押し当てる。
「……い、いやぁ……」
小さな嗚咽に隠れて聞こえる藤本の声からは、すでに抵抗するだけの力は失われているように感じられた。
押し当てられた男根を拒むように閉じられた秘部を、割って入ろうとするその行為に対する拒絶感、嫌悪感からの声。
- 564 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:29
-
「う、あぁぁっ! 痛っ、痛い! やめて、お願いだか──」
無理矢理に挿入された異物は、藤本には痛みのみしかもたらさない。
「おぉ…さすがになかなか」
「やだっ、やめてぇ……うぅっ」
ほとんど濡れてなどいないために、警官が腰を前後するたびに膣壁が擦られているのだろう。
切れ上がった瞳からポロポロと涙をこぼしながらそう哀願していた。
既に行為に没頭しだしている警官は、そんなことには頓着せずに腰を振り続けている。
「いやだぁ…い、痛っ…痛いよぉ……」
押し入れられた嫌悪すべき異物が与える感覚に、洩れ落ちる言葉すら弱まっていく。
そんな反応に拘ることなく、己の欲望にまみれたペニスを深く差し入れては引き、差し入れては引きを繰り返していた。
「うっ……しかし思ったよりも使い込んじゃいねぇようだな。すげぇ締めつけだぜ。……お?」
いたぶるように投げつける言葉を吐きだした表情が、不意に更なる喜びをまとったものに変化した。
無理矢理に、力任せに近かった腰の動きが少しずつ滑らかなものになっていく。
- 565 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:30
-
「ハッハッハ…くっ……締めつけてるだけじゃなく、濡れてきてるようだな。
アイドルの藤本美貴様が、こんな冴えないオヤジにぶち込まれてグショグショになるのか!」
「うっ…うぅ…やっ…っ……」
藤本は屈辱感に打ちのめされ、さりとて抵抗することも、顔を隠すことすら出来ないままで。
ただ突き入れられるペニスに迂闊な声など漏らさぬよう歯を食いしばり顔を背け、ただこの地獄のような時間を耐えていた。
「あぁ、あまり締めつけるもんだからそろそろ限界だぜ」
抵抗の緩くなった腰の動きを一層早め、喘ぐように藤本の耳元で囁いた。
少しでも離れようと、より顔を背けた藤本は、自身の体内で蠢く汚物に微妙な変化を感じたらしい。
膣内で出される、そう思ったのだろう。
なにか叫ぼうとした瞬間、警官の腰が大きく退かれ、正面を向いた藤本の顔面に、白濁した液体を吐き出した。
「うあっ!」
とっさに眼を閉じた藤本の瞼に、柔らかな唇に、なめらかな頬に、緩く波打った髪に。
欲望の全てを吐きかけた警官は満足そうに腰をおろし大きく息を吐いた。
- 566 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:30
-
「さて、お前さんの番だ。好きなようにやっちまいな」
その言葉に誘われるようにフラフラと近づくと、藤本は放心したようにグッタリと動かなくなっていた。
胸元から膝まで、白い肌をさらけ出したままで。
ただ自身を襲った現実から目を背けるように顔だけを長い髪で隠したままで。
蛍光灯の光の下で、改めてみるその身体は欲望を呼び起こし理性を奪うのに十分だった。
収まりのつかなくなっていたペニスを引き出すや、なんの前振りもなく藤本を貫いた。
「うあぁ、あっ…んんっ」
一つの悪夢が過ぎ去り、気の抜けていた藤本の口から洩れた声。
それまでの屈辱や痛みからの声とは音色の違う声だった。
荒い息を吐きながら、貪るように乳房を揉みしだき乳首を口にし腰を振っている行為に反応した声。
「やっ、くぅ…あぁ、ん……はぁ」
嫌悪の中にも甘さが混じり、屈辱の底に喜びが隠れていた。
腰に手を遣り突き上げるように押し入れられるペニスに、湧き出す愛液は畳を濡らし、紅色の乳首は硬さを増してその存在を主張していた。
「ああぁん、やっ、んぅ…ひぁ!」
- 567 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31
-
突き上げる速度は勢いを増し、藤本の身体は拘束された限度の中で跳ねるような反応をしていた。
漏らすまいとしていた甘い声は堪え難いところまできているようで、食いしばる口を割り、狭い空間に響いた。
「いっ…いい、いや、ああぁー…んぅ、あっ」
次第に激しい腰の動きに同調するように小さく腰を動かす自身の身体を恨めしく思いながらもそれを止めることが出来ずにいるようだった。
「あぁ、あぁん、くぅっ……もう、だ……だめぇぇぇ!!」
藤本はは膣内に熱いほとばしりを感じながら、ビクビクと細かく震え、畳の上に腰を落とした。
秘部から白濁した濃厚な性をしたたらせ、悦びとも苦しみともつかない表情を浮かべていた。
end.>>542
- 568 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31
-
…………
- 569 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:31
-
今まで大人しくしていたところへもってきての激しい反発に、警官は驚きの表情で見かえしている。
時をおくにしたがって、当初の驚きから立ち直ると、居直るように猛々しい表情を見せだしてきた。
「手を出す気がないんならすっこんでろ。とっとと家に帰って全て忘れて寝ちまえよ」
歯をむき出しにして凄んでみせるようにそう言うと、その存在などなかったかのように奥へ向かって動き始めた。
その人を人とも思わない態度に、意志とは別の所で身体が動き、警官の肩口を掴んだ。
「あっ? なんだ、まだいたのか。……ヤメロ? 帰んなよ、あんちゃん」
まるでハエでも追い払うような手振りだった。
その直後、警官の身体は入り口へ叩きつけられていた。
戸口にグッタリと倒れ込む警官を一瞥して奥へと続く戸を開けた。
- 570 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32
-
奥へと踏み込もうとしかけたところで、まだ酔い潰れていると思った藤本と目があった。
申し訳程度に敷かれた布団の上で上体を起こし、自身の置かれた状況が掴めず困惑したように両手を己の身体に廻していた。
簡単に要点だけに絞って事情を説明し終えると、話の途中から固く強張った頬がほんの少しだけ柔らかみを帯びたようだった。
早く此処から連れ出して無事に送り届けようと差し伸べた手は、不意にその動きを止めた。
そして全く同じタイミングで、差し伸べられた手を取ろうとしていた彼女の表情が疑念に歪んだ。
彼女の目に映る光景。
それは頽れる男と、その陰から覗く狂気に歪んだ制服の手元から立ちのぼる薄い煙だった。
彼女の耳に聞こえる音。
それは小さな呻きと醜い哄笑だった。
そして、それはさして長くもなかった俺の人生が終わりゆく時だった。
end.>>542
- 571 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32
-
…………
- 572 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32
-
警官は派出所の入り口をロックして、奥へと進み掛けた所で手招きをしてきた。
その表情は、これからの行為で頭が一杯のようで、己の欲望に見にくく歪んで見えた。
俺が参加する、しないに関わらず、やる気だったのだろう、すでに藤本の身体は自由に動く余地などほとんど無いように見えた。
警官は手錠とロープで四肢の自由を奪って、しっかりと留められていたコートの前を開き、高級感溢れるセーターをたくしあげた。
「さすがに芸能人ってのはブラまで高そうだな」
制服の背中越しに覗き見えたキャミからのぞくそれが、目の前にいる警官の本気さをハッキリと悟らせた。
半ば捲り上げられたセーターに隠れている、そんな微妙な状態が、警官の薄汚い心根に対する憤りを駆り立てた。
電灯の明かりを映して繊維がキラキラと光り、整った双丘を強調するように見える。
「この完全に脱がさないってのがたまんねぇんだよ……」
半ば独り言のように呟く背中を心の中で罵倒しつつも今は機会を窺うべきだと言い聞かせる。
傍らに置いてあったハサミに手を伸ばし、キャミの肩紐部分を切り裂きブラが露わにされた。
ゆっくりと指先をブラの隙間へ差し込み、それに逆らおうとする胸の弾力さえ楽しむようにジワジワと顕わになっていく白い乳房。
一瞬、動きが止まったかと思うと、クイっと浮かせて一気にブラがずり上げられた。
「ほぉ〜……」
- 573 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:32
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完全にさらけ出された胸元に違和感を感じたのか、小さく震えたと同時に天井を向いたままでうっすらと目を開いた。
二、三度瞬きすると拘束された手足を動かそうと身動ぎをしてやっと異質な状況に気がついたらしい。
「な、なに? あんたたち…ここ……どこっ!?」
「お目覚めか? まぁ、マグロじゃ面白くねぇからな」
蛍光灯の光に照らし出された乳房に手を伸ばしながらいやらしく警官が呟いた。
急激に覚醒した中、自身の状況に戸惑いながらも、その行為による嫌悪感をむき出しに声を上げた。
「ち、ちょっと…イヤ、なにしてんのっ! やっ、……触んな!」
そう叫んでやっと警官の後ろにある存在に気がついたらしい。
僅かな希望に縋るように、懇願するような目で助けを請うた。
「あ、あっ……助け──」
「バカか? この状況でここにいる人間が助けてくれるとでも思ってんのか?」
何かを言おうとするよりも早く警官が口を開いた。
「ヤダ…イヤぁ……くっ」
「へへへっ、お前も参加していいんだぞ」
振り向いてそう話す表情、口調。
それに触れた瞬間、込み上げてきた感情に機を窺うも何もなくなっていた。
- 574 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33
-
藤本に向き直った警官の髪を掴み仰け反らせるように容赦なく引き寄せる。
「ぎゃっ!」
突然の痛みに悲鳴をあげる警官の喉元に手を伸ばし、爪が食い込むほどの力を込めて締め上げた。
驚きと苦しさに歪む顔に、一言「鍵」とだけ告げて空いた手を差しだした。
「グッ…、っ……」
絶え絶えの呼吸に顔色を青くしながら、締め付けられている喉元にその動作を制限されながらも微かに頷いた。
それを確認すると同時に、差しだした方の手を急かすようにクイクイと動かすと、すぐさまその掌に小さな金属製の鍵がのせられる。
その鍵を一瞥し、本物であろうと確認すると、締め上げていた方の腕を強く振るい警官を畳に叩きつけてやった。
「カハッ! ゲッ──」
苦しみから解放され、酸素を求め喘ぐ警官を横目に藤本の両手を拘束していた手錠を素早く外した。
そして振り返り、まだこちらに背を向け喘ぎ続ける警官の左腕を捻りあげた。
「ぐぁ!? 痛っ──」
力任せに畳へ叩きつけて手錠を掛け、背中に押しつけ自由を奪いながら右腕を取る。
拘束されると理解した警官が暴れ出そうとするよりも早く、金属的な音を響かせながら手錠はその役割を果たした。
手近にあったタオルを猿ぐつわにして騒がれる心配もなくす。
そして自由を奪われた警官の耳元に一言二言トドメ代わりに口外出来ないであろう旨を囁いて、藤本の元へ歩み寄った。
- 575 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33
-
脚を縛り付けていたロープを自分でほどいた藤本は部屋の隅で座り込んでいた。
身を守ろうとするように、それとも震えを止めようとするかのように両手で身体を抱き、じっと一連のやりとりを見ていたようだった。
強い疑念と怯えの目を向ける藤本に、少し離れたままでこれまでの事情を一から話した。
一通り話し終えると、少しだけばつの悪そうな顔をしながら携帯を取り出して「良い?」と目で問うてきた。
手振りで「どうぞ」と促すと、微かに表情を緩めて何処かへ電話をかけ出した。
部屋の外へ出てから待つこと数分。
「あの…助けてもらったんですよね」
携帯をしまった藤本は、なにをどう話すか迷う素振りをみせながら口を開いた。
一瞬考えて頷くと、藤本は何故かおかしそうに笑った。
「あっ、ごめんなさい……どうもありがとうございましたっ」
笑いだしたことに対するものだろう、一つ詫びると少し間をおいて、ふてくされているような礼をされた。
微妙に泳いでいる目や、その表情をみるに、それが今の精一杯の気持ちなのだということが窺えてきた。
しばらくどちらも口を開かないままでいると、バッグの中にしまわれていた携帯が鳴った。
会話の内容に耳を澄ましていると、どうやら迎えが近くまできたらしい。
- 576 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:33
-
「あっ…アタシ行かなくちゃ」
同じタイミングで立ち上がると、少しだけ見あげるようにしてそう言った。
何か言わなければならないと思っているようで、口を薄く開いたまま、もどかしげな顔を見せた。
流した視線の先の何かが目にとまったんだろう。
隅にあったデスクでこちらに背を向けてなにやらしていた藤本は、振り向きざま睨むような目で言った。
「暇があったら電話して」
それは噛み付くような口調で。
困惑して紙片を受け取ると、くしゃっと笑って言葉を足した。
「ねっ!」
紙片に目を落としてしっかりと頷いて見せた
すると藤本はニッと歯をみせて笑顔を作り、一言残して走り出した。
「またねっ!」
またね……か。
意外な事態にこの先を想像しながら、長い夜を終わらせるために歩き出した。
end.>>542
- 577 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34
-
…………
- 578 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34
-
誘われているかのような妖しくみえる微笑。
呆然とそれを見ていると、四つん這いでジリジリとにじり寄ってくるその胸元は大きく開いて谷間とそれを包み込むブラが見え隠れしている。
「ンフフ…」
その指先が膝元に届き、ゆっくりと這い上がってきた。
滑らかな指先は休むことなく、やがて胸から喉元、そしてアゴから唇に達し形をなぞるように動く。
「……しよっか」
いまだ抜けきらないアルコールのせいか、それともこの妖しい魅力のせいなのか。
弾けるようにその手を掴み、一気に引き寄せて唇をあわせた。
「んんっ、ぅ……」
貪るように舌を絡ませ呼吸すら忘れて互いの口内を責め合った。
先に限界に達したのは藤本の方で。
ツーっと淫らに光る糸をひき離れた口で荒い息を吐いた。
「はっ、はぁ…ふぅ」
- 579 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34
-
息が整いだした頃、フッと笑った藤本は、クルリと向きを変え、ベッドの方へと這いだした。
その姿はパンツルックではあったものの、コートに隠されていない、丸みのあるヒップラインを認識させる。
そしてそれを解って強調するように艶めかしい動きで離れていく。
そのヒップに誘われるように後を這い進み、藤本の上体がベッドへ届いたところでその脚を掴んだ。
「あっ…」
藤本はベッドの縁に背持たれるように振り向き、掴んでいる手ごと招き寄せるみたいに脚を縮める。
脚から手をあげていき、その細い腰をぐっと抱き寄せ首筋に何度もキスを落とす。
「や、んっ……ふふっ」
甘い香りに微かに混ざる汗の匂いに鼻をすり寄せキスを続けると、藤本はくすぐったそうに身を捩り吐息混じりの声で笑った。
キスを続けながらシャツのボタンに手を掛け一つ一つ外していく。
露わになったブラを目で楽しみながらも、そのふくらみの頂上を指先で掻くように刺激をする。
その指先に感じる感覚に合わせてビクリビクリを小さく跳ねる身体が、より一層の刺激を求めようとする動きが艶めかしさを醸し出していた。
吸い込まれるように胸元へ這わせた唇は、布一枚越しに探り当てた突起を舌で、唇で、歯で弄ぶ。
「んぅ、くぅ…はぁ、あぁん」
口で引きちぎるみたいにブラをずらしていきながら、柔らかなヒップを包み込むパンツを少しずつおろしていく。
指先に感じる滑らかな肌の感触と、シルクの感触。
- 580 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
ほぼ同時に、外気に触れてその存在を主張するようにツンと上を向いた乳首を歯をたてた。
「──っ!」
背を反りかえる大きな反応と、声にならない声を上げ、一瞬の間をおいてベッドに沈んでいく身体をなぞるように下へとすべりおりた。
薄いグレーのパンティに僅かな染みを見つけ、そっとなぞるように指先を埋めていく。
ゆっくり侵入していく指と静々大きくなる染みとは対照的に、藤本は息を乱し断続的に身体を震わす。
「はぁ、はぁん、んぅぅ」
その声に急かされるようにパンティを引き下ろそうとする、小さな吐息をつきながら藤本は上体を起こした。
「……美貴だけ?」
薄く微笑みながらの台詞に、あぁと気がつき腰に巻いてあったタオルを取り払った。
のし掛かるみたいに抱きつかれ、歯のぶつかりそうな勢いでキスをされた。
お返しの濃厚な熱いキスの後、スッと身体を滑らせた藤本は既に硬く存在を主張していたペニスを口に含んだ。
熱く熔けそうな口内でより硬度を増していくペニスを刺激しながら嬉しそうな笑顔を見せる。
自身の口内で脈打つペニスを、唾液と、先から出る粘液でねっとりと濡らすと右の手でしごきながら舌先で突き、舐め回す。
- 581 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
想像以上の快感に身を捩りながらも、身体を持ち上げるともつれあうように組み敷き、白い背中をみせる藤本美貴を後ろから貫いた。
「っ! あぁああっ、んっ」
見た目の感じよりも肉付きの良いヒップをしっかりと掴み、奥の奥まで一気につき入れる。
「ひぁっ! んんぅぅ…っ、くぅん」
その身体で侵入してくるペニスを感じながら、なにか堪えるような声を上げる。
少し引き、間髪入れずにまた奥へと突き刺す。
互いに酒気の残る身体を熱を共有するほどに触れ合わせて夢中に絡み合う。
「やっ、も…もっとぉ、突いて…ああぁん」
絡め取り放すまいと蠢く肉襞を感じながら、出し入れを繰り返すピストン運動はその激しさを増していく。
時折キュッと締めつける動きに小さく呻きながらも、パンパンと音が響くほどに挿し入れる。
「ひゃぅ! あぅっん、アタる…そこ、はぁっん、そう、そこ…イイのぉ」
僅かに角度を変えて身体の芯へ、それこそ貫かんばかりに突き上げると、より快楽を得る敏感な点を突いたようで。
今までよりも一つオクターブの上がった声を響かせる。
- 582 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
丹念に、それでも時折意図的にツボを逸らして幾度も突き上げると、堪えきれないように髪を振り乱して首を振り、合わせるように腰を動かしてくる。
次第に互いの快楽が同調するような感覚と共に昂ぶっていく。
「はぁ、はぁ、んぅあ、っ……ああぁぁん、もう…いきそっ、う」
それは言葉だけでなく。
反り返る身体で、にじむ汗で、乱れる髪で。
そしてなによりも熔かすほど熱く、締めつけを増す肉壷で限界が近いことを物語っていた。
「あっ、あっ、くぅっ…い、くぅ……あぁぁぁ〜っ!!」
一際高く絶叫に近いの声と、時が止まったように全身を張り詰めさせる藤本。
一瞬遅れて込み上げた快感の全てを、その白く汗ばむ背中に解き放った。
力尽きたようにベッドへ崩れ落ちる藤本の横へ、大きく息を吐きながら倒れ込む。
心地良い酩酊感と開放感に身を任せ、眼を閉じて深く沈んでいった。
- 583 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
閉じた瞼越しに感じる陽の光に目を覚ました。
気怠さを自覚しながら上体を起こし大きく一息ついた。
昨晩のことを思い返し、夢か現か混濁した意識の中、ベッドサイドの小さなテーブルの上に目がとまった。
小さなメモが一枚。
手にしてみるそれには携帯らしき番号とメッセージが一行。
気が向いたらでてあげる!
夢じゃなかった。
そう思い自然と笑みが浮かんできた。
どうやら一つの出会いを逃さずにいたらしい。
end.>>542
- 584 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
…………
- 585 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
己の中の眠っている何を見抜かれたかのように僅かに後退った。
その不思議な笑みと妖しさを秘めた強い目に飲まれ身体が動かなかった。
不意に立ち上がった藤本の予想外に華奢な手に引かれて寝室へ、そしてベッドの上に押し倒される。
そのすらりとした脚をふわりと包み込んでいたパンツを脱ぎ捨て、露わになった下半身にはシャツの隙間から黒いパンティが覗けた。
ペットボトルの水を口に含んだ藤本が薄く微笑みながらその濡れた唇を押しあてて。
舌で割られた口内に流れ込んでくる水と、艶めかしく動く舌にむせ返るような感覚を覚えた。
軽く咳き込む身体の上で藤本美貴は、流麗な身体のラインを強調するように腰を引きながら髪をかき上げる仕草。
「……もうこんなになってる」
クスクスと喉で笑いながら、タオル越しに硬くなりだしているペニスの上で艶めかしく腰をふっている。
たまらずその身体に手を伸ばすが、触れる直前に細い腕でそっと払い除けられた。
「触りたいの? まだダメだよ」
妖しい目で笑いながら、払った手を掴みバンザイの姿勢でベッドに押しつけられた。
そして自らシャツのボタンへ手を掛け、一つ、また一つと焦らすようにゆっくりと外していく。
少しずつ見えてくる白い素肌と、対極の黒いブラ。
視覚での興奮はますます血液を一点に集めていく。
脱いだシャツをゆらゆらと動かし、目隠しをするようにそのまま顔の上に落とした。
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