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とくばん〜HPシャッフルサバイバルSP〜
- 1 :ゼロ ◆5eqMCHlE :2003/08/04 22:42:31
- このスレは、2003年のシャッフルユニット+αでのバトロワ風サバイバルゲーム小説のスレです。
残酷なシーンとか出てきますので、そういうの嫌いな方は見ないほうがいいです。
それでもいいという方がいれば──
少しの間、私の拙い小説にお付き合いください。
- 47 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/28 21:56:44
- ピッ…シュッ
なにやら電子音と、何かが抜けた音がした。
(ん?)
中に入っていたのは、何かの機械とゴツゴツとして濃い緑色の金属製のものと……リング付きのピン。
(これってたしかしゅr……)
ドゥーン
2階から聞こえてきた爆発音に驚き、一番初めに寝室に来た高橋を待っていたのは楽園などではなく、
手榴弾によってもはや上半身がバラバラになった新垣里沙の姿だった。
(7AIR→6AIR)
- 48 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/29 22:15:13
- 狩がなくなったら、狩狩の世話になろうと思ってます。
- 49 :名無し娘。:2003/08/29 23:43:41
- 狩狩で続けてくれるならこんなに嬉しいことはない
- 50 :名無し娘。:2003/08/29 23:44:18
- sage忘れた・・・・マジスマソ・・・ _| ̄|○
- 51 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/29 23:49:49
- ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
11WATERの村田めぐみ、斉藤 瞳、柴田あゆみは、大谷雅恵のいる7AIRと交渉するため、倉庫へと歩いていた。
現在彼女らは、島の中央にある山(というより、せいぜい小高い丘だが)の東屋を右手に見つつ歩いているところだ。
ちなみに現在、右方向は切り立った崖であり、その展望台に行くには東側から回り込まなければいけないのだが。
「島の反対側だとやっぱり遠いね。しかも微妙に山道だし。」柴田がため息をつく。
「ちょっと遠回りでも、島の周りを歩いて行った方が良かったかな?」村田は地図を見ている。
「でもまあ、北回りにしろ南回りにしろ、誰かと遭遇する可能性が中央を突っ切るルートより高いしね。
そこで平和的に通してくればいいんだけど、その遭遇したチームがもし戦う気になっていたら、
武器の乏しい私達じゃ逃げ切れるかわからないからね。まあ、諦めてよ。」斉藤が2人をなだめる。
「武器かあ、銃ないのはきっついねー。2丁ある銃は、飯田さんと矢口さんがそれぞれ持ってるしなあ。」
柴田は羨ましがる。
「それはしょうがないでしょー。私達が持っていっちゃったら本部が何かという時に困るしね。クロスボウで我慢っと。
ま、要は、銃なんていらないような展開になればいいのよ。」
斎藤は柴田をなだめた。
- 52 :名無し娘。:2003/08/29 23:52:00
- いつも扱いヒドイから毎回ハロプロロワイヤルで期待してるキャラが死んだよ・・・
- 53 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 00:12:03
- 11WATERに支給された銃は2丁のデリンジャーであったが、1丁は矢口が持っていった。
もう1丁は、はじめは飯田は斎藤達に持たせようとしたが、「大丈夫。使い方もわからないし。」と理由で断ったのだった。
銃器こそ持ってこなかったものの、近接用武器はそれぞれ1つずつ持ってきている。
斎藤は「モーニングスター」。(これを手にした時、藤本に「メロン記念日なのに、モーニング?」とつっこまれた。)
村田は「ホーリィソード」という名前の西洋剣。(説明書には、「スターオーシャン3のフェイトの武器」らしい。)
柴田は「クロスボウ」。3人の唯一の飛び道具である。
その時3人の歩いていた50m程前を、少女がすーっと滑るように通って行った。
「あれは、たしか田中れいなだよね?」村田が聞き、斉藤は頷く。
柴田は、昼前の道重の首輪の爆発シーンを思い出し少し青くなった。
「どうする? 呼び止める?」「いや、いいでしょ。…それよりも。」斉藤は田中が出てきた方を指差す。
「あそこにほら穴があるわね。あの娘はあそこから出てきたんじゃない? どうする調べてみる?」
「……たしかにどうなってるか興味あるね。」「いいと思うけど、とりあえず本部に連絡しようよ。」2人は賛成する。
「そうだね。」斉藤はトランシーバーを取り出す。
「もしもし、こちらメロンですが、現在島の中央にてほら穴を見つけました。これからそこを調べてみます。どうぞ?」
「─wwヘ√レv…こちら、飯田…v〜…十分気をつけて…─wwヘ√レvv〜─」
「わかりました。(ガチャ)」
- 54 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 00:12:46
- 3人はほら穴の中に入った。高さは3mくらい、幅は3人並ぶと歩きにくいくらいの大きさである。
ただ、奥行きはそれほどでもなく7,8mくらいしかなかった。
「ん?」「どうしたの?」「あれを見て。」斉藤が懐中電灯で照らした先には、海外旅行などで使うトランクケースが置いてあった。
そして、トランクケースの表には紙が貼ってあり、「宝箱」と大きな字で書いてある。
「怪しい……。」柴田は訝しがる。
「うーん、でもおそらくは……」何の躊躇もなく、斉藤はトランクケースを開けた。
中は………………………カラだった。
「やっぱりね。おそらくあの子が、この中身を持って行ったんでしょう。」
「そうすると、この島のほかの場所にも同じのがあるのかもしれないね。」
「そうね。でもまあ、今はとりあえず、目的地に急ぎましょう。」3人は再び倉庫へ向った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 55 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 23:58:34
- 一方その頃、保田圭と亀井絵里は、商店に到着していた。
(さすがは、商店ね。いろんなものがある。)
商店には、食べ物をはじめ、鍋や箒まで売っていた。そこに店の人がいてもおかしくないラインナップである。
亀井は、ためしに食パンを手にとって製造年月日を見てみる。昨日作られたものだ。
食べ物は他にも、レトルトカレーやら、ポッキーやら、カップラーメンやら……。
「うーん、さすがにパソコンは売ってないみたいですね。」亀井は保田のところに向った。
- 56 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 23:59:57
- 店の奥の住居を探していた保田だが、亀井が来たときにはスーツケース
(これはメロンの3人がみつけたものと同じものだが、もちろん彼女らがそれを知るはずもない)
を前に腕を組んでいた。よく見ると、スーツケースはあけられていて、中には鞭がおいてある。
「これなんですか?」
「んー、ここにスーツケースが置いてあってさ、開けてみたら中身これなのよ。」
「へぇー。…中に一緒に紙が入ってますよ。」
亀井は、説明書を広げて見る。
「なになに…、『これは、ファイナルファンタジー7のキスティスの最強武器のセイブ・ザ・クイーンです。
しかし特別な効果はなく普通の鞭なので普通にお使いください』だそうです。」
「これをどうしようっかなあと思ってさ。……とりあえず持って行こうかな。
あとは、食料品ね。これから村役場までいかなきゃいけないから、重いもの持つと歩きにくいしなあ。」
「本部の人に取りに来てもらったらどうですか?」
「やっぱりそれしかないかあ。そうだね、とりあえず連絡しよう。」
- 57 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/01 23:48:51
- 「えーこちら、保田。本部聞こえますか、どうぞ。」
「─wwヘ√レv…こちら、本部の中澤です…v〜…聞こえてます、どうぞ…─wwヘ√レvv〜─」
「裕ちゃん、もう大丈夫?」
「─wwヘ√レv…まあ、あたしもいつまで落ち込んでられないからね。…─wwヘ√レvv〜─」
「うん。…………あ、現在、商店にいます。ここに結構食べ物があるんですけど、
私たちは今から、パソコン探しに村役場の方へ行くので誰かしらここに取りに来て貰えると助かります。」
「─wwヘ√レv…わかりました。誰かしら行かせます。…─wwヘ√レvv〜─」
「じゃあ、よろしく。」ガチャ
「ふう、それじゃあ、村役場に向いましょうか。」
「はい。」
保田と亀井が外に出て村役場の方へしばらく歩いたとき、
何か機械を通したような感じの安倍の声が聞こえてきた。
「みんなー、聞こえてるー? 聞こえてたら山頂に集まってー。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 58 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/03 23:54:16
- 「みんなー、聞こえてるー? 聞こえてたら山頂に集まってー。」
現在、SALT5は島の中央部の小高い丘にいる。
丘の上は学校の体育館ぐらいの広さはあり、入り口は2つある。まずは、石の階段で大抵の人が使う北側と、
舗装されていない土の小道で裏道として使われている東南だ。
東と西は林になっていて木がたくさん生えている。そして、景色が広がっている南側に展望台はあるのだが、
(展望台といっても東屋にベンチが2台あるのみ。)
安倍は、一人でその展望台から拡声器で呼びかけている。
他の4人はいうと、松浦・加護、前田・小川と2組に分かれ、展望台より少し離れた木の影に隠れている。
- 59 :名無し娘。:2003/09/04 15:50:38
- 期待sage
- 60 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/05 00:07:41
- 前田有紀は、村役場でのやりとりを思い出していた。
前田と松浦が村役場に到着し、みんなで役場を引っかきまわして探し、ようやく拡声器をみつけた後、
安倍は宣言した。「なっち、これでみんなに呼びかけるんだ。」
「呼びかけてどうするんです?」前田は尋ねる。
「そりゃ、決まっているべさ。みんなで集まってここを脱出するんだ。」
「脱出するって…この首輪があるのにどうするんですか?」松浦が自分の首輪をさす。
「それは……、まだわからないけど、みんな集まればいい案が出てくるよ。」安倍はあっけらかんとしている。
「何度でも言います。危険だと思います。モーニング娘。だけならとにかく。」前田はあくまでも反対だ。
「やってみなければわからないと思う。もし、やってみて誰も来なければその時はその時に考るよ。」
「そういう問題じゃなくて、もし来た人がゲームに乗っている人だったらどうするかってことなんです。
撃たれていっかんの終わりです。」
「乗っている人なんていないと思うよ。」
「はぁ……。とりあえず、呼びかけるなら私は少し離れたところで見ています。一緒には呼びかけはしませんよ。」
「安倍さん、悪いんですけど私も離れたところにいます。」松浦も慎重派だ。
「加護は……安倍さんと一緒に呼びかける。」「わ、私も。」加護と小川は安倍側につく。が、
「2人とも大丈夫。なっち1人で大丈夫だから。ね。」
安倍は2人にウインクしてみせた。
- 61 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/06 20:16:59
- それは、安倍が5、6回目の呼びかけをした時のことだった。
「みんな集まれば……」
パーン
破裂音が前田の耳に入っていた。前田達が隠れている木の上に止まっていた鳥がぎゃあぎゃあ騒いで飛び立っていく。
安倍の方をふとみる。驚いているようだが無事のようだ。本気であてるつもりだったのか威嚇だったのか。
少し経つと安倍は気を取り直したようで、拡声器を再び手に持つ。
「み、みんな集まればきっとここから脱出できるべさー。」
その時、広場の北側に人影が見えた。あの薄手の衣装は……7AIR。
といっても全員ではなく、石川、稲葉、大谷の3人。
しかし、一緒に脱出しようという雰囲気は彼女達からは感じられなかった。
前田は何かイヤな予感がした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 62 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:14:46
- 東屋の前にいる安倍は、石川達を見つけると一瞬驚いた表情になったが、すぐ笑顔に戻った。
「あ、梨華ちゃーん。よく来てくれたよー。」拡声器を通した声があたりに響く。
「安倍さん。他の人たちは?」石川は普通に聞いたが、
「ごめーん、遠くてよく聞こえないんだ。近づいて貰っていいかなー。」安倍には声が届かないようだ。
石川は手でメガホンを作り、大声を張り上げる。
「安倍さんが近づいてくださーい。」
「わかったー。」安倍は拡声器を持って、石川のいる北側に近づいてくる。
やがて2人の距離は10m弱ぐらいに縮まったところで安倍は拡声器を地面に置いた。
「本当によくきてくれたよ。なっち、うれしい。」
- 63 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:21:09
- 新垣を埋葬した後、AIRは別荘を離れ丘に向っていた。その理由は島を見渡すことと、SALT5の探索だった。
ある程度近づくと安倍の呼びかける声が響いてきた。
新垣の死はAIRに深い悲しみとSALT5に対する疑念を生んだ。
手榴弾の罠は、SALTが意図的に置いておいたのではないのかということだ。
それで正直、石川は安倍の呼びかけは本当の呼びかけか、それとも罠か判断がつかなかった。
とりあえず、ミカに銃を空に向けて撃つよう頼んだ。
これは、もし安倍の呼びかけが本物だったら銃声にもめげずに呼びかけを続けるだろう。
しかし、もし誰かを誘い込むための罠だったら、作戦がバレていると思い、
SALT5が丘から立ち去るのではないかと思った。
結果は……呼びかけは続けられた。とりあえずは3人で安倍に話してみようということになった。
丘に来たとき、そこにいたのは安倍1人だった。
一応、大谷と稲葉は、安倍には向けていないものの利き手にシグ/ザウェルを握っている。
(他の4人はどこ? もしかして近づいた瞬間に攻撃するの?)
だから安倍にこっちに来てもらうよう要請した。もし罠なら何か理由をつけてこないはず。
しかし、安倍はいつもの調子で来て、拡声器を地面に置いた。ということは……いや判断するのはまだはやい。
彼女には聞きたいことがある。それは──
- 64 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:22:17
- 「安倍さん、新垣里沙が死にました。」石川は新垣のことをわざとフルネームで話した。
「ええっ、り、里沙ちゃんが? な、なして?」安倍は目を大きくして驚く。
その表情は演技とは思えなかった。しかし──
(単にその被害者が新垣で驚いているのかもしれない。)
「誰かしらの手榴弾の罠に嵌りました。」石川の中で疑惑は薄まることない。
「わ、罠? 誰の?」
「安倍さんはご存知ないですか?」
「いや、今はじめて聞いたよ。酷い人がいるなあ。なっち信じられない。」
(その酷い人はSALTの誰かなのよ。)
「やっぱり、一刻も早くここを脱出するべさ。」
「安倍さんは何か案があるんですか?」
「それは、まだだけど、みんなが集まればきっといい案が思いつくよー。」
(大したポジティブシンキングね。とりあえず他の4人を確認しないと。)
「まあ、いいでしょう。ところで、他の4人はどこですか?」
「……えっと、近くにいるよ。」
「呼んで下さい。」
「う、うん、いいけど、そっちの他の3人は?」
「そっちがでてきたらこっちも呼びます。」
「……わかった。」
といいつつ、やおら自分の背負っているナップザックを開け、中から何か取り出そうとした。
(あれ? 拡声器で呼べばいいのに……)と思ったその瞬間──
- 65 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:23:47
- パーン
破裂音があたりの空気を刺激する。
左胸に穴が穿った安倍が──刑事ドラマのように──スローモーに後ろに倒れる。
それは、ほんの数秒のことかもしれない。しかし、石川には30秒にも1分にも感じられた。
倒れた安倍の右手には──トランシーバーが握られていた。
石川は驚き、銃声が聞こえてきた方向を振り返る。
そこには──シグ/ザウェルを持って立ちすくむ大谷がいた。
「ち、違う違うの。」
大谷は首を激しく振っていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 66 :名無し娘。:2003/09/09 00:52:30
- なっち南無
- 67 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:43:18
- 石川が安倍に近づくように求め、安倍が近づくことにより、結果小川麻琴達がいるところから遠ざかり、
小川達には安倍と石川が何を喋っているのか全然聞こえなくなった。
ただ、途中で安倍が「ええっ、り、里沙ちゃんが? な、なして?」と驚いたのだけは聞こえた。
(里沙ちゃんがどうしたんだろう?)
しかしその他はほとんど聞こえなかった。また特に言い争いしている感じにも見えなかった。
しばらくその状態が続き、やがて安倍が自分のナップザックを空けて調べていると、
パーン
突然、銃声が響いた。安倍は後ろに倒れる。
「あ、安倍さん?」聞こえないのはわかっていたが、小川は安倍の名前を呼んだ。
「い、いきなり!?」隣を見ると前田は驚いていたが、「まこちゃん、ここで待っていて」
というと木の影を伝って石川達に近づきながらナップザックを開け、石川達に向かってデザートイーグルを撃つ。
パン
- 68 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:44:47
- すいません、67のはじめに次の一行を入れてください
時は少し遡る──
- 69 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:46:18
- その銃声がまるでビデオの再生ボタンを押したかのように、
石川達3人は動き始め、銃声のした方向とは反対側の林に慌てて隠れ反撃する。
パン、パパン、パーン、パラララララ
何回かの銃声のやり取りがあった後、丘の北側の入り口からミカが現れ、前田を狙う。
(前田さんっ、ど、どうしよう?)
そんな小川の心を知ってか、小川から広場を挟んで反対側に林に隠れていた松浦が、
前田を狙うミカを牽制するように、デザートイーグルで援護し始めた。
(わ、私も援護しなくちゃ)
小川は慌ててデザートイーグルを取り出し、誰にも当たらないような方向へ向けて撃とうとするが、
カチッ、カチッ
(あ、あれ? どうして…? そうだ、安全装置!!)
小川は安全装置を外そうとするが、まさかこういう事態になるとは思っていなかったから、
どこをどうしたら安全装置が外れるのかわからず、あたふたしていた。
- 70 :名無し娘。:2003/09/10 04:18:50
- 更新乙。移動はいつするんですか?
個人的に不定期の少なめより定期の大量更新期待。
- 71 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/11(木) 21:00
- そんな中でも、銃声は絶えずいろんな方向から響いてくる。
小川があたふたしていたが、そのうち広場の様子がおかしいのに気づいた。
見ると、広場全体が黒い煙で覆われている。小川がびっくりしていると、
「まこちゃん、今のうち逃げるよ。」
目の前には前田が戻ってきていた。良く見れば前田の左上腕の衣装が破れ、血がでている。
「前田さん、その怪我…」
「ああ、ちょっとしくじったよ。そんなことより早く。」前田は小川の手を引っ張る。
「は、はい。」
小川と前田は、黒々とした煙の中をつっきり、反対側の林に飛び込む。
反対側には、突然の煙の発生に驚いた松浦と加護がいたが、前田の「2人とも今のうちに逃げるよ。」という声に促されて、
東南の小道を下って“戦場”から脱出した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 72 :名無し娘。:2003/09/11(木) 22:46
- 初めて読んだけどすげぇ・・・引き込まれるわ
それにしてもバトロワの団体戦って初めてかも
- 73 :名無し娘。:2003/09/12(金) 13:01
- >>11-12
たしかデリンジャーはリボルバーではなく、
さりとてマガジンがあるわけでもなく、
バレルに直接弾を込める形の銃だったかと。
しかも装弾数は二発。
、、、ピンチだ! 11WATER!!
- 74 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/13(土) 23:16
- >70
移転しますた。大量更新については、その方向でいきたいと思います。
チーム単位で更新できればと。
定期については・・・、できればやりたいなあと。むむむ。
>72
ありがとうございます。
>73
ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!
武器に対してのつっこみ
キタヽ(^◇^〜)ノ (◇^〜ノ) ヽ( )ノ (ヽ〜^◇) ヽ(〜^◇^)ノーーーーーー!!!!
ううう、銃器の知識がないものですみませんぬ。
えと、「次元が持っているようなリボルバーに6発弾を詰められる銃」のことです。
「うたばんスタッフが名前を間違えた。アヤカも勘違い。」と脳内フォローしてくださいまし。
よろしくおねがします。
- 75 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/14(日) 19:46
- 自分なりに落ち着いていた石川だったが、自分の後ろにいる人間の精神状態までは把握できていなかった。
丘にいたのが安倍一人だったことから、いや新垣のあの死に様を見たときから、
大谷の何かがおかしくなっていたのだろう。
冷静を装っていたが、いつ自分があのように殺されるかという恐怖に怯えていた。
そしてそれは、丘で石川が安倍と交渉しているときも、いつ横から他のSALTが、いやWATERやFOODまでもでてきて、
銃で大谷を蜂の巣にするか…、表には冷や汗としてぐらいにしか出ていなかったが、
精神的にリーチがかかっている状態だった。よって、石川と安倍の交渉にも耳に届いていなかった。
そんな中、安倍がナップザックを開け何かを探している様子が大谷の目に映る。
安倍が中からマシンガン取り出し、笑顔のまま大谷へ向けそのままトリガーをひく。
そんな光景が大谷の脳裏に焼きついた。
(死にたくないよ。しにたくない。シニタクナイ…。)
大谷はゆっくりとした動作で、安全装置をはずしてあるシグ/ザウェルを上げ、銃口を安倍に向ける。
ナップザックを探している安倍、そんな安倍を注目している石川と稲葉。大谷の異変に気付くものはいない。
大谷はゆっくりトリガーを弾いた。
- 76 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/14(日) 19:48
- パーン
大谷はどこを狙ったわけでもなかった。むしろ狙っていたら外れていたかもしれない。
銃弾は安倍の左胸に吸い込まれた。安倍がビデオのスロー再生のように後ろに倒れる。
倒れた安倍の右手には──トランシーバーを持っていた。
(え? トランシーバー?)
石川が大谷の方に振り向いた。大谷がシグ/ザウェルを構えているのを知ると驚愕の表情を浮かべる。
「ち、違う違うの。」
大谷は首を激しく振った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 77 :73:2003/09/14(日) 22:03
- 更新乙です。
何かやる気を削ぐようなレス入れちゃってスマソ。
楽しみにしてるんで頑張ってください
- 78 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:16
- ミカ・高橋・里田の3人は、丘の北の入り口の階段のところで待機していた。
もし上にいる3人に何かあったら、階段の3人で救助したり、最悪でも3人だけでも残るという石川の配慮からだ。
その中で、ミカは階段の上のほうで丘の様子を伺っていた。
「ミカさーん、上の様子どうですか?」下にいる高橋が聞いてくる。
「うーん、安倍サンと石川サンが何か話しているよ。内容まではちょっとわからないけど…。」
その時、安倍が何かナップザックの中を探しはじめた。その途中で──
パーン
突然、銃声が響いた。安倍は何かを片手にばったりと倒れる。
石川が後ろを向き、驚愕の表情を浮かべている。後ろからなので撃ったのが稲葉なのか大谷なのかわからない。
3人とも、いやミカさえも動けないでいた。しかし、
パン
- 79 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:18
- ミカから向って右側の林から銃声が聞こえてきた。その音に弾かれるように広場の3人は反対側の林へと姿を隠す。
(はっきりとは見えなかったけど、体型からするとあれは前田サン…。)
「な、何があったんですか?」今度は里田が怯えながら聞いてくる。「うん、大丈夫、とりあえずは…。」
(まさか、安倍サンが撃たれたなんて言えない…。)そうこうしているうちに右側の林と左側の林で銃撃戦が始まった。
パン、パパン、パーン
「アイ! マイ! 危ないからちょっとここで待っててね。」「は、はい。」「わかりました…。」
(サポートしなくては…。)
ミカは1人、シグ/ザウェルを取り出し、安全装置を外し階段の最上段から伏せながら前田を狙う。
(まさか、本気で使うことになるとは…。)
ミカは、前田を牽制することによってしばらく石川達をサポートしていたが──
キュン
- 80 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:19
- ミカの頭上を銃弾が通り過ぎていく、被っていた帽子が後ろに飛ばされた。
シグ/ザウェルを握っている手が汗ばんだ。仕方なく、銃弾が飛んできたほうに応戦する。
その状態がどれくらい続いただろうか、ふと小さなボールのようなものがミカの横を通り過ぎ、広場に落ちた。
それは落ちると、真っ黒な煙を吐き出した。ミカが驚いて右後方を見ると──
里田が2個目の煙玉を投げるところだった。2個目、3個目──
そこで広場は煙で覆われた。トランシーバーでは聞こえないだろうと判断したミカは、
銃声がまだ聞こえていたが、危険を承知で石川達に近づく。
見ると、石川達もこっちに来るところだった。先頭の石川はミカを見ると安心し、ほっとした表情になった。
「まだ、油断はいけません。早いところ逃げましょう。」
7AIRはミカを先頭に北の階段から“戦場”を脱出した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 81 :名無し娘。:2003/09/15(月) 21:29
- 更新乙です ドキドキしっぱなしです
- 82 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:49
- 診療所にいた辻希美は、安倍の声を聞くといてもたってもいられず、矢口の静止を振り切って丘に向った。
(安倍さん……。)
安倍は、辻にとってモーニング娘。内での「お姉さん」ともいえる存在だった。
ミニモニがまだ結成される前の、4期の他のメンバーがプッチやたんぽぽに配属され活躍し、
それを横目に一人いじけていて、レッスンにも身が入らず先生に怒られてばかりだった辻に優しくしてくれたのが、
どこのユニットにも属していなかった安倍だった。
ある時、安倍は気晴らしにとパスタ屋に辻を連れて行った。
「ここ、あんまり有名じゃないけど、おいしんだー。」
そして、辻が何も喋らずカルボナーラを食べていると、
「ねえ、のの。たとえ今、あんまり活躍できなくても、のののこと見てくれている人は必ずいるからさ、
一緒に頑張るべさ。」
とたらこスパののりが歯についた顔でニッコリ微笑んでくれた。
その言葉を胸に、再びレッスンに真面目に取り組み、矢口がそれを見ていたかどうかはわからないが、
後にミニモニ。で辻は大活躍するようになる。
- 83 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:50
- 辻が急いでいると、目指す丘から銃声が1発聞こえてきた。
しばらくして、今度は銃声が何発も響いてくる。
それでも丘へ向おうとした辻だったが、強い力で後ろから引っ張られ前に進めない。
「ダメだよ、のの。危ないよ。」
辻が振り返ると心配そうな顔をした吉澤がいた。
「で、でも、安倍さんが……。」
「うん、言いたい事はわかるよ。だから」ここで吉澤は辻の前に出る。
「吉澤が前に出るよ。ののは後ろから着いてきて。」
「う、うん。わかった。」辻は頷く。
デーモンスピアを構えた吉澤が慎重に前を行き、剣を持った辻が後から続く。
(盾は診療所に置いてきてしまった。)
銃声はしばらくは響いていたが、そのうちしなくなった。
やがて、2人は丘の方向から降りてくる4人の人影を発見する。
咄嗟に隠れた2人だったが、4人のうち1人が辻にとって親友だったので、姿を現し彼女の元へと駆けていく。
- 84 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:50
- 「あいぼーん!!」
「の、のの…。」
加護は辻の姿を見るとポロポロと泣き出した。
加護が泣き出したこと、前田が左腕を負傷していたこと、そして安倍がそこにいはいないこと。
これらによって安倍がどうなったかなんとなく辻にはわかってしまった。わかりたくはなかったが。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 85 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:51
- >77
いえいえ、お気になさらずに。
>81
ありがとうございます。
- 86 :名無し娘。:2003/09/17(水) 23:14
- 更新乙。
- 87 :名無し娘。:2003/09/18(木) 06:07
- 安倍が早くも脱落か・・・・先が全く読めない
- 88 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/20(土) 21:53
- 矢口真里は、松浦の話を聞き終わると「はぁー」とため息をもらした。
「まさか、石川達が何で安倍さんを……。おいら信じられないよ。」
矢口、松浦、小川、前田は、前田の左腕の応急処置をするために診療所に来ていた。
今は、矢口が丘での出来事を松浦から聞いるところだった。隣の部屋では小川が前田の怪我の応急処置をしている。
「信じられないかもしれませんがこれが真実です。ですから、AIRに会ったら注意してください。」
「う〜ん、とりあえず心に留めておくよ。」
「戻りました。」玄関の方で吉澤の声がする。「おかえり。」矢口は迎えにいった。
吉澤、辻、加護の3人は丘の様子を見に行っていのだ。
「ひぐっひぐっ。おやびーん。なっちさんがー、うぇーん。」
最初に入ってきた辻は、矢口の元に駆け寄り大声でなく。
次に入ってきた加護は、顔を真っ赤にし、今にも泣きそうだった。
最後に入ってきた吉澤は、いつもの陽気さは微塵も見せずに落ち込んでいるようだった。
そして、その吉澤の背中には安倍が──もう冷たくなっていたが──背負われていた。
「野ざらしのままじゃしのびなくて…。」
吉澤は診療所のベッドに安倍を寝かせる。
矢口が観察してみると胸に銃創があり、そこから出る血で衣装は真っ赤だったが、他は怪我もなく綺麗だった。
顔もこころなしか笑っているように見える。
- 89 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/20(土) 21:53
- 「最後まで笑顔か…。なっちさんらしいな。」矢口は呟いた。
「ええ、私が見つけた時から笑顔でした。」吉澤が後に続く。
「あ、あの。矢口さん。」
「ん? どうしたあいぼん?」
「安倍さんの手が前で組まれてたんですよ。あと、帽子と拡声器が近くにありませんでした。」
「手が組まれていたのって最初からじゃないの?」
「松浦達が立ち去る時は煙でよく見えなかったのでわからなかったです。
あと、帽子は……風で飛ばされたのかもしれませんね。拡声器は……AIRが持っていったのでしょう。」
松浦が割り込む。
「あの……、風はほとんど吹いていなかったような気がしますが……。」
「たしかに、そういう気もするね。」
治療の終わったらしい小川が前田とともに戻ってきた。
(拡声器を持っていったのはAIRじゃない気がする…)
矢口は何故かそう思った。
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- 90 :名無し娘。:2003/09/21(日) 00:54
- ヤグの「安倍さん」・「なっちさん」は、違和感が…
- 91 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 11:24
- >>90
ΣΣ(゚Д゚;)
こちらの調査不足です。すみませぬ。
調べてこよう。
- 92 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 11:35
- http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Piano/9409/kosyou3.html
そうか、「なっち」もしくは「なっつぁん」なのか。
えと88-89は死に動揺してたということでお願いします。
- 93 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:38
- 安倍の呼びかけに亀井が出て行きそうになったが、保田圭はそれを制した。
「まあ、そう焦らないで。」
保田の脳裏に浮かんだのは、矢口から借りたDVD「バトルロワイヤル」。
そこでは、今の安倍と同じように説得にあたった生徒2人が、ゲームに乗った生徒に銃殺されるシーンがある。
保田はそれを思い出したのだ。
そんな保田に浮かんだシーンをなぞるように、丘の方角から銃撃戦が聞こえてきた。
「保田さん、これは?」亀井が不安そうに聞いてくる。
「おそらく、あまりよくない事態のようね。」眉を顰め、保田は正直に答える。
数分後、銃声がやんだ。気のせいか、丘の方が煙っている気もする。
やがて丘の方角何かに追われるように6人の人物が逃げてきた。
「あれは、石川? ということは7AIR…。」
(おそらくは、あの銃撃戦に関係があるのは疑いもないわね。さて……。)
「亀井」
「はい?」
「私、ちょっと話を聞いてくる。大丈夫だと思うけど、万が一の場合は集会所に逃げて。
場所はわかるわね?」
「え? それって…」
いまいち保田の発言の意図がわかっていない亀井を置いていき、保田はAIRに近づく。
- 94 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:38
- 「石川!」保田が呼びかけると、石川はビクッとなり、慌ててシグ/ザウェルを構える。
「そんな物騒なものしまいなさいよ。久しぶりね。とはいっても、実際にはそんなには経ってはないけど、ね。」
石川は銃を下げると少し安心したような表情になった。「保田さん……。」
「……新垣は? あと、丘から銃声が聞こえたけど?」
それから石川は保田に今までのことを話した。途中でミカなり、稲葉にフォローしてもらいながら。
ふと、保田は大谷の様子がおかしいことに気付く。寒くもないのに震えているようだ。
だがしかし、今は石川の話を聞いていた。
「というとあのなっつぁんの呼びかけは罠だった。ということね?」
「ええ、他のメンバーが周りの木に隠れていて、近づいたらいきなり撃ってきました。」
「……。」
(自分達のいたところに罠を張り新垣を殺し、しかも呼びかけまでもが罠……。
なっつぁんがそんなことをするとは思えないけど、他のメンバーが勝手にしたのかもしれないわね。
嘘か本当か即断は禁物か。)
- 95 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:39
- 「ですから、保田さんもSALTには気をつけてくださいね。」
「ああ、気をつけるわ。石川達はどうするの?」
「とりあえず倉庫に戻ろうと思います。保田さんは?」
「ちょっと村役場に……。じゃあ、また。」
「あ、保田さん、待ってください。」去ろうとする保田に石川は声をかける。
「何?」
「あの…、道重ちゃんは本当に殺されちゃったんですか?」
「!! え、ええ。でも何で石川が知っているの?」
「えっと、倉庫にTVがあって、映されて、ま、した…」
怒気を帯び始めた保田に圧倒され石川の語尾が弱くなる。
「……。」
「えと、で、では。」石川は逃げるようにその場を去った。
(みせしめ、というわけね。)保田は集会所での出来事を思い出し、なんともやりきれない思いになった。
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- 96 :名無し娘。:2003/09/22(月) 06:25
- 色んな思惑が交差してるなぁ・・・・
- 97 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:02
- 時はまたしても少し戻る──
里田の投げた煙玉で、丘から退却したSALTとAIR。丘には、1人の人物が残されたのみだった。
もしそこに誰かが残っていたら、顔の辺りが少し動いているのがわかっただろう。
そう、大谷に撃たれた安倍なつみだったが、実は即死ではなかったのだ。
とはいうものの、彼女の命の灯火は残りわずかだった。
そして安倍は泣いていた。
それは、大谷に撃たれたから? SALTが自分の安否を確認せずさっさと退却してしまったから?
それとも、確実に迫りつつある死の影に怯えて?
たしかに迫りつつある死に恐怖がなかったといえば嘘だろう。
しかし彼女が泣いていた1番の理由は、自分の力不足で、SALTとAIRが争うことになってしまったからだ。
(やぱりはじめから5人で呼びかければよかったのかな?)
その時、近くに人の気配を感じた。
「だ、誰かいる、の?」安倍は搾り出すように声を出した。人が近づいてくる気配がある。
その人物は安倍の目の前に来た。らしい。残念ながら安倍の視界は出血多量のため、ほとんどないに等しかった。
- 98 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:03
- 「…………………」目の前の人物が何か喋ったようだ。だが、
「……ごめん、ね。もう、ほとんど、何も、聞こえ、ないし、何も、見え、ないの。」
安倍の手が、誰かの手に握られるのを感じた。(よかった。まだ触覚はあるみたいべさ。)
「圭織に、伝えて、欲しい、ことが、あるの。頼まれて、もらえる、かな? よかったら、手を、握って。」
再び手を強く握られる感触があった。
「あのね、…………」安倍は最後の力を振り絞って目の前の人物に自分の伝えたいことを伝えた。
数分後、安倍の最期を看取った人物は、心にしっかりとメッセージを刻み込み、安倍の手を組ませると、
安倍の形見にと、帽子と拡声器を持ち、ローラーシューズを再び履き、北側から丘を出て行った。
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- 99 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:16
- 怒りを滾らせる保田から逃げるように立ち去った7AIR。
彼女らが倉庫に戻ると、そこにはとある3人の人物が待っていた。
「大谷さん、あれは斉藤さん達ですよ!」
里田まいは、さっきから下を向いている大谷に説明する。大谷はハッとして、顔を上げる。
(WATERが何の用かな?)
向こうもこっちに気付いたようだ。手を振って斉藤が微笑んだが、どこか不自然な笑顔だった。
「あら、メロンの皆さん、どうしたの?」石川が聞く。
「ん? ちょっとね。ところで……。」斉藤は一息つく。彼女は真顔になる。
「さっき、飯田さんから島の中央の丘であなたたちとSALTの間でいざこざが……
というよりあなたたちが安倍さんを撃ったと聞いたんだけど、それは本当?」
横では村田が斉藤の衣装のひじの部分を引っ張っている。「ちょっと、そんなはっきりと……。」
「ああああああああああああああああああああっ!!」突然の叫び声に稲葉は驚く。
見ると大谷が首を激しく横に振っていた。
「ちがうのちがうのちがうのちがうのちがうのちがうの……。」
「大谷さん、落ち着いて。大丈夫だから。」何が大丈夫かわからなかったが里田は大谷を落ち着かせようとした。
「ううっ、ううっ。グスッ…。」大谷は泣き始めていた。
- 100 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:17
- とここで石川がそんな大谷を隠すように前に出る。
「ええ、それは本当よ。でもね、先にうちの新垣がSALTの卑怯な罠で殺されているの。
しかも、丘の件だって罠だったのよ。安倍さん以外のメンバーはみんな銃を持って隠れていたし。
だから、本当に悪いのはSALT。むしろ私たちは被害者ってわけ。帰って飯田さんにそう伝えて。」
しばらく斉藤と石川は喋ることなく互いに凝視していた。
斉藤は石川の発言の真偽を推し量り、石川は自分の言葉が本当であることを主張しているようだった。
30秒ほどその状態が続いただろうか、斉藤が少し表情を緩めた。
「なるほどね。わかった。とりあえず伝えとくよ。」
斉藤はそういうと、東の方に歩いていく。
その後に村田と柴田が大谷を心配そうに見ながら斉藤の後に続いていった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 101 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/25(木) 23:12
- 学校への帰り道。柴田あゆみはさっきの大谷の態度について考えていた。
しかし、どうしても悪いことばかりにしか結びつかない。
他の2人も同じ事を考えているのか、さっきから3人の間にはなんとなく重い空気が漂っていた。
そんな時、斉藤が口を開いた。
「理由はわからないけど、実際に安倍さんを撃ったのはマサオのようね。」
それの言葉に対し、隣で村田が息を飲むのがわかる。
「でも…、なんで?」柴田は理由を尋ねた。
「直接の理由はわからない。けれど、先に新垣ちゃんが罠によって殺されたのが何かしらの理由には違いないわね。
あの狼狽ぶりからすると、殺すつもりはなかったのじゃないかしら? まあこれは私の希望込みでの話だけど。」
「マサオ大丈夫かなあ?」村田が心配そうに聞く。
「たしかに心配だけど、マサオのことは今はAIRに任せておくしかないね。
……私が心配なのは、AIRは新垣ちゃんをSALTに殺され、SALTは安倍さんをAIRに殺された。
つまり、この2チームに因果関係が生まれてしまったこと。
一度産まれた憎しみは……なかなか消えないでしょうね。
一緒に脱出に協力しようと思っても、お互いに嫌がるでしょうし。
だから早いところ戻ってみんなで対策を考えようと思ってるの。急ごう。」
3人は歩みを速めるのだった。
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- 102 :名無し娘。:2003/09/26(金) 23:44
- まだ2人か・・・
- 103 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/27(土) 00:40
- 一方、石川達と別れた亀井絵里と保田は村役場に到着していた。
そこで2人はパソコンを探す。探している途中で亀井はあることに気付いた。
「保田さん、さっきまで誰かがいたみたいですねー。しかも何か探していたみたいですよー。」
「うん、私もそう思ってたんだ。あ、あった。亀井ぃー、あったよー。」
亀井がかけよると、上に「経理課」と札のかかった一角にたしかに割と新しめのパソコンはあった。
よく見ていると電話線が繋がっている。
「意外と新しいわね…。最近導入したのかしら?」
「それで、インターネットはできそうですか?」
「電話線は繋がっているようだけど、まだわからないわね。とりあえず立ち上げて見るか。」というと保田はパソコンの電源を入れた。
パソコンは「ピコ」と音を立てて、HDが起動する音がする。
やがて、画面に「Windows 2000」の文字が浮かび上がった。
「……2000(ニセン)か……」保田がつぶやいた。
数十秒後、画面は亀井にもどこかで見たことのあるデスクトップの画面になった。
保田は、デスクトップにあるIEのショートカットをダブルクリックする。
IEの画面が広がり、電話線で繋げるか聞いてくる。保田は「接続」のボタンを押した。
ぴーぴろろろろ…
- 104 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/27(土) 00:41
- パソコンの後ろあたりから電子音が聞こえた。画面には「接続中」という文字が出ている。
やがて、モデムから電子音がしなくなった。画面には「接続失敗しました。」という文字が出ている。
「んー、やっぱりね。」保田は机に肘を、顎を手にのせた。
「どういうことですか?」
「集会所でも商店でも、ちゃんと電話線は繋がっているのに電話がどこにも通じなかったじゃない?」
「ええ」
「多分、島からの電話をまとめているところでどこにも繋がらないように制御されているのね。
もしかしたらと思ったんだけど……だめだったか。モバイルじゃないとどうしようもないなあ。はぁー。」
「でも、何かしらやってみることは絶対に無駄じゃないと思います。」
「あ、ありがとう。」保田はびっくりしたようだ。
「な、生意気言ってすみません。」亀井はちょっと後悔した。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 105 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:29
- 矢口達WATERの3人と安倍を埋葬したSALTの4人は再び別荘に戻ってきていた。
最初は4人とも居間にいたのだが、小川は「お茶入れてきます。」と小川なりに気をつかい台所に行き、
前田は、「ちょっと2階に行ってくるよ。」と2階にいってしまった。
現在、居間にいるのは松浦亜弥、加護の2人。2人は何も喋らずぼっーっとしている。
「松浦さん、松浦さん。」小声で松浦を呼ぶ声がする。見ると居間の入り口のところで前田が手招きをしている。
松浦はすっと立ち上がると、居間の入り口から玄関のところへ出た。
すると前田が、「ちょっと話があるの。こっちに来て。」と階段を登る。
松浦は後に続いた。2人は階段上がった廊下の奥の部屋に入った。
そこは居住者の夫婦用の寝室らしくベッドが2つあった。奥はベランダになっていて海が見渡せるようだ。
部屋に入った時に、少し部屋が火薬臭いのに松浦は気付いていた。
そしてまたベランダ側のベッドの上に、赤と黒の絵の具を混ぜたような色の模様が飛び散っていた。
(これは…、血?)
「松浦さん、あなたに話さなくてはいけないことがある。」前田は真剣に語り始める。
「あれはみんなで物置を探した時に、私はここの物置で何か変わった機械をみつけたんだ。」
- 106 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:30
- 松浦はふと、物置からいろいろ発見したときに前田がとっさに何か隠したのを思い出した。
「一人になったとき説明書を読むと、それは『光学感知式トラップ』というものだった。
手榴弾と合わせて使うと書いてあったんだ。例として箱にこれと手榴弾を組み合わせて、
箱を開けたら手榴弾が爆発する仕掛けが作れると。私は試しに作ってみたくなったの。
ところがいい箱がこの家にはみつからなかった。だから支給されたナップザックを使ったわ。
作ったのはいいんだけど、持って歩くのは危ないし、とりあえずこの家に置いておく事にしたのよ。
間違って誰か空けるといけないから、2階の目立たないところに置いたつもりだったけど…、
甘かったみたい。誰かがここで開けちゃったんだろうね。ああっ、もっと目立たないところに置いておけば…。
そしてこれを開けたのはおそらくAIRね。それでたぶん、安倍さんのことが信じられなくて撃っちゃったんだと思う。」
前田はそこまで語ると視線を下に落とした。
(なるほど、それでAIRがあんまり友好的ではなかったいうわけね。でも、安倍さん撃つのはやりすぎ思うけど。
前田さん、故意はなかったいうとるけどホンマかな? その辺はようわからへんけどとりあえずは置いておくとしよか。)
- 107 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:31
- 「前田さん、顔を上げてください。それは事故だったんですよ。
それよりも敵意のない安倍さんを殺してしまうAIRがひどいと思います。」
「ありがとう。」前田はほっとしたようだ。
「それよりもこのこと、下の子らに言いますか?」
「やがては言わなくてはいけないだろうけど、あの子らも今は安倍さんのことでショック受けているから後にしようと思っているわ。」
「それがいいでしょうね。それで、これからなんですけど……WATERのいる学校に行きませんか?」
「え? どうして?」
「私たちって4人になっちゃったじゃないですか。しかも戦えるメンバーは私と前田さんしかいない。
これでは、もしAIRがやけになって私たちを本気で壊滅させようとしたら、私たちは大した抵抗ができないと思います。
そこでWATERと同盟を組むというのはどうでしょうか? そうすれば、11+4で15人になります。
これでAIRに十分立ち向かえるでしょう。」
「なるほど…、たしかに今のままじゃ心配ね。でも、私、WATERとあんまり面識ある人がいないけど?」
「それなら心配ないです。私はミキスケ…藤本さんと、加護ちゃんは辻ちゃんと、まこっちゃんはあさ美ちゃんと仲がいいです。
そしてなにより…」
ここまでまくしたて、松浦は息を整えるために一息置いた。
「安倍さんが、AIRに殺されたとなればリーダーの飯田さんが黙っていないでしょう。」
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- 108 :名無し娘。:2003/10/02(木) 00:38
- すげぇ展開だな。更新乙。期待してます。
- 109 :名無し娘。:2003/10/02(木) 00:53
- AIRは?AIRはどうなるんだろう・・・
- 110 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/04(土) 22:12
- そのころ倉庫に戻ってきたAIRは休憩を取っていた。
稲葉貴子は麦茶を飲むと、あたりを見渡す。倉庫の隅で頭から毛布にくるまってじっとしているのが大谷、
その姿に向かって何か声をかけているのが里田。
部屋の入り口で鞘に入れた日本刀をぷらぷらさせながら、虚空をみつめているのがミカ。
石川と高橋は外で見張りをしている。
稲葉は考えていた。
(チーム同士の殺し合いというバカらしいこのゲームだけど、大谷が安倍さんを撃ってしまったことによって、
円満に脱出というわけにいかなくなってしまったわね。とりあえずSALTがこのまま黙って引き下がるとは思えない。
しかしリーダーを失ったあのチームでイニシアティブを取れるといったら、前田か松浦──どっちにしてもリーダーとしては微妙。
まあ、これはうちのチームにもいえること。
FOODの中澤さんは元モー娘。のリーダー。そしてWATERの飯田さんは現モー娘。のリーダー。
この2チームに比べるとうちの石川は、将来はともかく現時点としては頼りにならない。
石川は別荘の件についても、丘の件についても、どちらもSALTの罠と信じて疑ってないしなあ。
本当に罠だったら、あんな2階の入るか入らないかわからないところに置いておく?
丘の件についても、安倍さんを撃ってしまったから反撃してきたわけで最初からその気ではなかったかもしれない。
2つの件についても私が違うと言ってみたけど、全然聞く様子がなかった。
逆に『稲葉さん、SALTを庇うの?』とまで言われてしまった。まあ、たしかに私はこのメンバーでは浮いているけど…)
- 111 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/04(土) 22:12
- 近くで物音がした。ミカが倉庫の扉から外に出たようだ。
(リーダーがこれでは生き残るのは難しいわね。最年長の私に代わってくれとはいわないけど、
せめてミニモニの現リーダーのミカあたりと変わってくれれば、こっちの意見も聞いてくれそうなんだけど…。)
稲葉は誰かのすすり泣く声に気づく。見ると毛布をかぶった大谷の体が揺れている。側では里田が慌てて何かフォローしている。
(どうやら、何か余計なことを言っちゃったみたいね。ああいう状態の時は、一人にさせておくのが一番なのに。
…このチームはもうダメね。)
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- 112 :名無し娘。:2003/10/04(土) 22:44
- もうダメって稲葉さん・・・
- 113 :名無し娘。:2003/10/05(日) 10:29
- 稲葉が物語を動かすのかな・・・先が楽しみ
- 114 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/06(月) 00:10
- WATERのいる学校──
ここは、島、唯一の学校であり、小学校と中学校を兼ねている。学校の校門をくぐると、小さな昇降口がある。
ここには今、藤本とアヤカが教室から持ち出した椅子に座りながら、見張りの当番をしている。
──見張りといっても、そんなに警戒はしておらず、雑談などしているのだが──
2人の隣には見張り当番ではないが、吉澤がいて2人の会話に加わっている。
その昇降口から学校に上がると廊下にぶつかる。
廊下の右手には各教室が続いており、また左手には手前から保健室、職員室、校長室となっている。
保健室は、先ほどの怪我をした紺野あさ美が寝かされており、
矢口達が診療所から持ってきた救急用具であさみ(カントリー)が手当てをしており、側で辻が心配そうに見ている。
(ちなみにスタッフが持ち去ったのか、保健室にあるはずの治療道具は全部なくなっていた。)
- 115 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/06(月) 00:11
- そして職員室では、メロンの3人の報告を飯田圭織と矢口が聞いていた。
「というわけで、AIRとSALTの両方に因縁が生まれてしまったというあまり良くない状況のようです。」
斉藤がそう言って報告をしめた。
「報告ありがとう。教室でゆっくり休んでいて。」
飯田は瞑っていた目を開いた。矢口たちの報告を聞いた時よりは落ち着いて聞くことができた。
メロンの報告の1時間ほど前に矢口から、安倍の死を聞かされたときは、飯田は頭に血が上り、
「今すぐAIRのところに行く!」と強引に出て行こうとし、他のメンバーに説得されなんとか留まった経緯があった。
メロンの3人が職員室を出て行く。
「新垣が……。」矢口は肩を落としている。
(新垣のことには何も触れず、突然AIRがなっちを撃ったというSALTと、
SALTが新垣を罠に嵌めて殺し、丘でも再び協力するよう呼びかけを使って罠をはり、結果なっちを撃ってしまったというAIRか…。
本当のところはわからないわね。どうしたらいいのかなあ?)
飯田は職員室から窓の外を見た。小さな運動場が見える。
空は、夕方というには少し早いが太陽が大分西の方に来ていた。
(ねえ、本当はどうだったの? なっち。)
───────────────────────────────────────────────────────────
- 116 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/07(火) 23:23
- 集会所──
後藤、中澤、そしてみうなは、保田からの連絡のあと商店に食料品を取りに行っていた。
現在、FOODは6人。他は単独の田中、パソコンを探している保田と亀井である。
つまり、残る全員で食料品を取りに行ったことになる。
まだそんなに警戒をしなくてもよかったのだが、(実際は丘の事件もありそうでもなかったりするが)
やはり1人にするのは問題があるという理由からだ。
持って帰ってきたのは、人参、玉ねぎなど野菜、牛ひき肉、カレー粉、お米など。
つまり、カレーを作ろうというわけである。カレー用の鍋も商店にあった。
皿は、もともと集会所にあるものを使う予定だ。
その時、FOODのトランシーバーから呼び出し音がなる。
「はい。こちら中澤です。」
「─wwヘ√レv…こちら、保田です…v〜…役場でパソコンを見つけました…─wwヘ√レvv〜─」
「あ、ホンマ? で、どうだった?」
「─wwヘ√レv…回線がつながらずダメでした…─wwヘ√レvv〜─」
「……そう。」
「─wwヘ√レv…あと、一つ報告することがあります…─wwヘ√レvv〜─」
「何?」
「─wwヘ√レv…………帰ってから報告します…─wwヘ√レvv〜─」
「あ、うん。気ぃつけて。」
「─wwヘ√レv…はい…─wwヘ√レvv〜─」ガチャ
- 117 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/07(火) 23:23
- 「報告って何かなあ?」後藤が呟く。
「うーん、ここで報告しないところをみると重要な事じゃないのかしら。」中澤はトランシーバーみつめている。
「あと、田中さんに連絡とってみませんか?」今度はみうなだ。
「それもそうね。」中澤は再びトランシーバーを持った。
「もしもし、中澤だけど、田中聞こえる?」
「─wwヘ√レv………………─wwヘ√レvv〜─」
「もしもーし、田中さーんいましたら返事してくださーい。」
「─wwヘ√レv…田中です…─wwヘ√レvv〜─」
「あのー、いつごろ戻られますか?」
「─wwヘ√レv…もうちょっと…─wwヘ√レvv〜─」
「夕食作りますけど食べますか?」
「─wwヘ√レv…はい…─wwヘ√レvv〜─」
「わかりました。」ガチャ
中澤は「あー、あの世代の考えはわからんわ。」と愚痴ると2人に向き直り、
「とりあえず、圭ちゃんと亀井を待ちましょう。」と2人の帰りを待つのだった。
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- 118 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:33
- SALT TEAM'S PHASE──
加護達SALTが学校に到着すると、見張りの藤本とアヤカが無線で飯田と連絡をとり、職員室に来るように言われた。
昇降口から上がる時に藤本に「紺野ちゃん、ちょっと怪我しちゃって今、保健室にいるんだ。よかったら顔を出して行ってよ。」
の言葉に驚いた加護と小川は、前田と松浦の許可をもらいすぐに保健室に向った。
(前田と松浦にしては、飯田への交渉時にはこの2人がいないほうがよかったので問題なかったのだが)
包帯でぐるぐる巻きにされてうなされている紺野を想像し、加護は保健室のドアをあけた。
「こんちゃん、大丈夫!?」
ドアを開けた2人が見たものは、アイスクリームを頬張る辻と紺野の姿だった。
「あ、まこっちゃん。」「あれ、あいぼんどうしたの?」
(なんや、心配して損したわ。)
- 119 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:34
- 数分後、加護と小川もアイスクリームを貰って頬張っていた。近くの民家にあったものらしい。
「勝手に食べていいのかな?」小川が心配する。
「いらなかったら、つぃが食べてあげるよん。」辻が小川のアイスに手を伸ばす。
「あげません。」小川が慌てて口に含む。
「でも、こんちゃんが苦しんだりしているわけじゃないんで安心した。」これは加護の正直な感想だ。
「うん、怪我自体は大したことはなかったんです。どちらかというと銃に撃たれたショックの方が大きかったです。」
紺野はにっこり微笑む。
「ところで、あいぼん達は何をしに来たの?」
「それがなあ、同盟だって。次にAIRが狙うのが加護達だって前田さんが言ってたから、WATERに守ってもらうって言ってた。」
「じゃあ、のの達はあいぼん達と一緒に行動できるの?」辻はきらきらと目を輝かせる。
「ま、そういうことになるかな。」加護が答える。と、そのとき。
「出てって!!」
大きな声が隣の部屋から聞こえてきた。どうやら飯田の声である。
(なんや、なんや? 何があったんや?)
- 120 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:35
- 「わたしも随分甘くみられたものね。さあ、帰って!」飯田の声が続けて聞こえてくる。
隣のドアが乱暴に開けられる音がした。足音が聞こえてくる。
(こりゃあかんわ。せっかくののと一緒になれるおもうてたのに…。)
保健室のドアが開けられた。「加護ちゃん、まこっちゃん。帰るよ。」松浦が呼びかける。
「え? 一緒に行動するんじゃなかったんですか?」小川が驚く。
「んー、ちょっとね。ダメみたい。」松浦が苦笑する。
「一緒になれなくてごめんな、のの。」
「また、会えるよね?」辻は心配そうだ。
「あたり前だよ。アイスありがと。じゃ、まこっちゃん、行くよ。」
* *
- 121 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/12(日) 19:19
- 加護と小川を保健室に行かせた松浦と前田はそのまま職員室に向った。職員室には、WATERのリーダーの飯田の他に矢口もいた。
まずは、前田熱っぽく喋べって、時々松浦が補足する形をとる。
WATERの二人はそれに口を挟むことなく聞いている。
「……残念ながらAIRはゲームに乗ってしまったようです。私たちは、安倍さんの無念を晴らしてあげたいと思ってます。
そこでWATERの協力が欲しいのです。WATERの人数、そして私たちの武器、これらがあればAIRなんて問題はありません。」
ここで初めて飯田が口を挟む。
「あのさ、あなたちはAIRをどうしたいわけ? 皆殺しにしたいの?」
「そうではありません。改心できればもちろん……。」
「うちのチームの斉藤と村田と柴田──メロンの3人がAIRのいる倉庫へ行ったのね。大谷に会いに。
そこでいろいろ話を聞いたの。そこでこんな話を聞いたんだ。『先に新垣がSALTの卑怯な罠で殺されている。
しかも、丘の件だって罠でなっち以外のメンバーはみんな銃を持って隠れていた。』と。
前田さん、新垣の件については話してくれなかったわよね? この件は本当なの?」
「えっと、それは…。」「新垣ちゃんの件については本当です。」
口ごもる前田に代わって松浦が話し始める。
- 122 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/12(日) 19:20
- 「でも、新垣ちゃんは間違って殺してしまいました。メンバーがある場所に手榴弾を置きっぱなしにしちゃって、
それを新垣ちゃんが間違って暴発させてしまったのです。これに関しては私たちに責任があります。
でも、丘の件については違います。安倍さんは純粋に一緒に脱出しようとして呼びかけたのです。
安倍さんをAIRがいきなり撃って…」
「…出てって!」松浦の言葉を遮って飯田が叫ぶ。「言い訳は十分。つまり、どっちもどっちってことじゃない。」
横では矢口が驚いたように飯田を見る。
「それをさも『なっちの仇うちましょう』とかなっちをだしに使って。
その言葉を使えば私が首を縦に振ると思った? わたしも随分甘くみられたものね。さあ、帰って!」
「いえ、そんなつもりは決して…」飯田はなお、言葉を続けようとする前田を無理矢理、職員室から追い出す。
「さあ、松浦も」続いて松浦も職員室から追い出した。そして「ふぅ」と一息つくと、幾分表情を緩め矢口の方に向く。
「矢口、ゴメン1人にしてもらえる?」「うん、わかった。…何かあったら呼んでね。」
───────────────────────────────────────────────────────────
- 123 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:43
- WATER TEAM'S PHASE──
昇降口からSALTの4人の背中を見ながら、見張りの藤本美貴はSALTがここへ来た理由を彼女なりに考えていた。
(飯田さんに何らかの話を持ってきたのは間違いないところね。でも破談になったみたい。
私でよかったら、亜弥ちゃんの力にはなりたかったところだけど……ん?)
その時、SALTと入れ違いになるように一人の人物が入り口に姿を現した。
「田中? どうしたの?」
「こんばんは。」
「こ、こんばんは。」アヤカは思いも寄らぬ人物の登場に少し戸惑っているようだ。
「あの、飯田さんに会わせてもらえますか?」
このとき、藤本はSALTに対して声を荒げた飯田を思い出した。
「聞いてはみるけど、今はちょっとダメかもしれないよ。」
「お願いします。」
「アヤカさん、ここお願いします。」そう言うと藤本は飯田がいる職員室に移動した。
扉の前に立つと藤本は、慎重に扉をノックする。今は飯田一人のはずだ。
コンコン
- 124 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:44
- 「はい。」飯田がまだ少し怒気が含まれている声で返事が聞こえて来た。
「藤本ですけど、今、田中が来て、飯田さんに会いたいと言ってますが…。」
「……今、そんな気分じゃない。どんな用事が聞いて。」
(これはかなり気分が悪いな…。)
藤本は娘。としては入ったばかりだが、飯田が不機嫌の時には近づかない方がいいということは
他のメンバーからも聞かされていた。
藤本はとりあえず昇降口の方に戻ろうとしたが…
「安倍さんの件です。」すぐ後ろにはいつの間にか田中がいた。
「私は、安倍さんの最期の場にいました。そこで、安倍さんから飯田さんに伝言を頼まれました。
それを伝えにきました。」
それに対する飯田の返答はなかった。かといって田中も立ち去る気配がない。周りの雰囲気がピリピリする。
藤本があまりの緊張感にしびれを切らしかけた時…
「いいわ。入って。」飯田の声が扉の向こうから聞こえてきた。
* *
- 125 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:19
- 正直、飯田はSALTが安倍の名前を使ってWATERを引き込もうとしたことが気にいらず、機嫌が悪かった。
だから、はじめ田中が来た時も、すぐに会おうとは思わなかった。
だが田中の「安倍さんからの伝言」というのが気になった。早く聞かなくちゃいけないと思った。
だから入室を許可した。
入ってきた田中は、まずはナップザックを開けると白い帽子と拡声器を取り出し、飯田にそれを手渡す。
「これは?」
「これは、安倍さんが被っていた帽子と実際に呼びかけのときに使った拡声器です。飯田さんにと思って。」
よくみると両方とも血が付着している。
「うん、ありがとう。…座って。」
田中は座ると、丘での出来事を話し始めた。
- 126 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:21
- 田中の話はこうだ。丘の付近を走っていた田中にも安倍の呼びかけが聞こえたが、丘に近づくと銃声が聞こえたので、
丘の北側の入り口付近で様子を伺った。ちなみにそこには、AIRのミカ、高橋、里田もいた。
やがて銃撃戦がはじまったらしく、田中はまた少し丘から離れた所に移動した。
しばらくすると銃声もやみ、北の入り口からAIRの6人が降りてきた。
田中はちょっと躊躇したが、丘に移動しそこで死に際の安倍を発見したという事らしい。
「安倍さんは、最期に『圭織、みんなをよろしくね。』と。」
その言葉で田中の報告は終了した。
「それでは、私はこれで。」田中は、帽子と拡声器を残し、職員室から出て行った。
飯田はしばらく動けなかった。心にはただ、先ほどの田中の言葉『圭織、みんなをよろしくね。』が
実際に安倍の声になって響いていた。飯田は職員室から学校の小さな校庭に出て、西の空が見えるところまで歩く。
大分傾いた太陽のある空が、丘の稜線で切り取られている。
(なっち…。)
───────────────────────────────────────────────────────────
- 127 :名無し娘。:2003/10/15(水) 01:15
- 更新乙です
飯田は何を思うんだろう
- 128 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:57
- AIR TEAM'S PHASE──
島の西側の港では、赤く染まった夕方の太陽をバックに高橋愛と石川が夕食の材料を探していた。
港なので魚がごろごろ転がっているかと思いきや、全然探しても見つからなかった。
「石川さん、ありませんね。」
「おっかしいなー。さすがに本部の近くにはないということなのかな?」
「あ、あの倉庫ってもしかしたら、冷凍の倉庫じゃありません?」
高橋は、他の倉庫より幾分小さめな倉庫を見つけた。その扉は、まるで冷蔵庫の扉を大きくしたようになっている。
「そうね。…あ、なるほど。あそこに冷凍保存された魚があるかもしれない。そういうことね。」
「はい。」
「そうね。その可能性は高いわね。さっそく行ってみましょう。」
- 129 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:57
- 2人はその冷凍庫の前に立つ。扉に鍵がかかっていたらどうしようもない。
高橋は扉を開けるためについている金属製のバーに手にかけると一息つき、バーを引っ張る。
最初は力を必要としたが、それ以降はさほど苦労せず扉を開けることができた。
中からの冷たい風が2人を震わせた。「さぶっ」隣の石川が思わず呟く。
(こういう時、薄手の衣装は嫌だな…)高橋は他のチームの衣装がうらやましかった。
(そういえば、FOODは揃いのTシャツにGパンだったな。せめてあれぐらいの衣装なら…)
2人は震えながら冷凍庫に入り、手持ちの懐中電灯をオンにする。
生まれた光の輪で冷凍庫の電気のスイッチを探す。寒さに震えながら1分弱でスイッチを見つけ早速ONにする。
冷凍庫内が光で満たされた。気のせいかちょっと寒さが和らいだ気がする。
- 130 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:58
- 「…ビンゴね。高橋、あれ。」
高橋が石川の指差した方向を見ると、5、6種類の魚が冷凍保存されている。
それは、金目鯛・ムツ・メダイなど、この地方で捕れる魚なのだが、高橋には何の魚だがわからなかった。
「解凍するのがちょっと大変そうですね。」高橋は心配した。
「まあ、とりあえずこの小さな魚を持っていきましょう。」
石川は、アジとイワシを人数分6匹ずつ持って来たビニール袋に入れた。
「商店で、ミカさん達が野菜やお米を見つけたらしいし、今夜は魚料理ね。」石川は心なしかウキウキしている。
だが、高橋には一つ心配事があった。
(うちのチームに魚をおろせる人いるかなあ…)
しかしその疑問も、鼻歌まで歌い始めた石川を見ると言うに言い出せなくなってしまった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 131 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/22(水) 08:54
- FOOD TEAM'S PHASE──
田中と連絡のようなものを取ってから、約20分後に保田と亀井絵里は帰ってきた。
中澤の「報告を聞かせて。」の言葉に促され始まった保田の報告は、その場にいる全員を凍てつかせるには十分だった。
道重の場合は、一方的に主催者側から殺されたものであるが、
新垣の場合は過程はどうあれ他のハロプロメンバーに殺されたのである。
あまりのことに誰も喋れなかった集会所に、昼頃聞いた音楽が鳴り響いた。
ハメて〜、ウ〜ハメて〜、SOMEBADY SOMEBADY SOMEDAY SO ハメて〜
音楽はどうやら、外の古びたポールについている拡声器のようなものから聞こえているようだ。
普段は津波の情報とかを知らせるのだろう。
亀井は咄嗟に壁の時計を見る。午後6時を少し過ぎたところだった。
音楽がだんだん弱くなり、その代わりに彼女らが今一番聞きたくない男の声が聞こえてきた。
- 132 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/22(水) 08:54
- 「あ、あ、マイクテス、マイクテス。みなさん、聞こえていますでしょうか。
6時間ぶりの石橋貴明、石橋貴明でございます。え〜、早速、死亡者の発表に移りたいと思います。
まずは…、SALT5 安倍なつみ。7AIR 新垣里沙。FOOD6 道重さゆみ…は俺が殺したんだっけ。
……大丈夫かあ、6時間もやって死亡者2人だけだぞー。24時間誰も死ななかったら全員の首輪が爆発しちゃうぞー。
と言っても昨日まで普通の仲間だったからしょーがねーよなあ。
そこでだ。あと1時間後から、また1チーム参戦するぞー。こいつらはハロプロメンバーじゃないから、
お前らを容赦なく攻撃するぞー。まあ、これで24時間誰も死ななくなるということはなくなるぞ。
頑張って戦えよー。今度の放送は夜中の0時だからな。バイバイブー。」ガチャ
不快な放送はようやく収まった。放送が終わって口火を切ったのは中澤だった。
「道重と新垣は聞いてたけど、なっちも? 圭ちゃん、どういう事?」保田につめよった。
「いえ、なっつぁんが死んだって事は石川は言ってなかったです。」保田もショックを隠しきれないようだ。
「石川は死んだということを隠していたか、AIRとは別件なのか、銃撃戦で傷つき後で…なのか。
どちらにしても本人に聞くしかないわね。…あと、もう1チームって誰?」
だが、それに答えられる者はいなかった。当たり前だが。
(ハロプロメンバーじゃないらしいし。誰なんだろう。)亀井は心の中で思っていた。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 133 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/25(土) 00:08
- UTABAN'S PHASE──
メンバーがいる島から北東に離れること約20km。ここにも別の小さな島がある。
その島の何かの事務所だったところ。ここには現在様々な放送用機材が置かれている。
とある部屋はモニタールームであり、メンバーがいる島のあちらこちらに取り付けられた無人カメラからの映像を映している。
また別の部屋はメンバーへの定時放送のための部屋であり、石橋はここから放送していた。
石橋は放送を終え、放送室から出る。「お疲れさまでーす。」女性スタッフが声をかけてくる。
まだ若いスタッフだ。最近入ってきたらしい。他にもスタッフはここに10人程いる。
ちなみに、木梨と香取は先に旅館に泊まっている。
「石橋さん、追加チーム入りました。」さっきとは別の男性スタッフに声をかけられた。
「そうか。……中居は?」「先に向ってます。」「そうか。」
石橋は事務所を出て3名のスタッフとともに港の方に歩く。3分ぐらいで港に着く。
港にはクルーザーが泊まっていた。船の入り口には中居が待っている。
「待たせたなぁ。」「うぃーっす。」2人は船に乗り、クルーザーの寝室に入る。
- 134 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/25(土) 00:08
- そこには2人の人物が寝かされていた。
ラジカセを持っていたスタッフがPLAYのスイッチを押す。
ハメて〜、ウ〜ハメて〜、SOMEBADY SOMEBADY SOMEDAY SO ハメて〜
「うるさいなあ、なんだよー。」「何?何が起きているの?」
どうやらとりあえず二人とも起きたようだ。そんな二人を石橋は満足そうに見つめ宣言する。
「ニューチャレンジャー達よ。おはようございまーす。突然ですが、君たちにはこれから殺し合いをしてもらいまーす。
ルール等は中居君から。」
───────────────────────────────────────────────────────────
- 135 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/26(日) 23:23
- AIR TEAM'S PHASE──
里田・石川・ミカは、FOODと同盟を結ぼうと海に沈んで行く太陽をみながら、集会所へ向っていた。
本来ならば、6人で行くはずだったのだが、どうしても大谷が移動を拒絶したため、3−3に分かれたのだ。
港から集会所へ向う道は途中までが砂浜なのだが、途中で大きな崖に当たるため商店の方によらなければならない。
しかし、まだ砂浜を歩いているところだ。
「放送で安倍サンが亡くなってしまったのがFOODにわかってしまいましたね。大丈夫でしょうか?」ミカは石川に聞く。
「あの放送はどういう状況だったのかわからないから大丈夫よ。
私たちも放送で知ったことにしましょう。流れ弾にでもあたったんでしょうって。
まあ、この辺は私に任せといて。話し合わせといてくれればいいから。」石川は歩きながら2人に話す。
「わたしは、残した3人が心配です。」今度は里田である。「大丈夫でしょうか?」
「まあ、急いで帰ってくれば問題ないわよ。SALTも夕食を作っている頃でしょう。」
「そうだといいのですが……。」
(今、普通に動けるのが稲葉さんと愛ちゃんだけ。大谷さんが復活すればいいのだけど)里田はちょっと心配だった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 136 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/29(水) 00:08
- SALT TEAM'S PHASE──
WATERに拒絶されたSALTは本部である別荘に戻ってきていた。
現在は支給された食パンに別荘にあった、ジャムを塗って早めの夕食をとりながら今後の行動を決めているところであった。
小川は、放送によって新垣の死を知り、ひどく悲しんでいた。食べ物もちょっと食べたばかりで何も喋らずぼーっとしていた。
ちなみに、新垣の死の原因については、
「丘での銃撃戦か、それとも全然関係ないことか。私たちにはわからない。」
と松浦も前田も本当のことは話さなかった。
加護亜依の場合は、安倍のように2人とも直接死体を見ていなかったこともあり、安倍の時ほど落ち込んではいないように見えた。
むしろ加護がショックを受けたのは、松浦と前田から、「私たちは飯田さんに見捨てられた。」と聞かされたからだった。
「飯田さんがうちらのこと見捨てた? なんでや?」思わず関西弁が出てしまう。
(飯田さんに限ってそんなこと…。)
「理由はわからない。ちょっと私の言い方が悪かったのかもしれない。」前田は肩を落としている。
「松浦の補足も悪かったです。だからこの件についてはお互い様ということにしましょう。
それよりも…。これからどうするかですが…。倉庫に行って、直接AIRと接触するというのはどうでしょう?」
「え?」加護や小川よりも、前田の反応が一番早かった。
「接触って……。話し合うってこと?」加護には前田が何故か動揺しているように思えた。
「そうです。もともとは私たちは仲間だったんだから、向こうも話し合いに応じてくれるはずです。
だけど今度は、加護ちゃん、まこっちゃん、今度はあなたたちの協力が必要になってくると思う。
協力してもらえる?」松浦は2人に協力を要請する。
「はい。加護にできることがあれば。」「まこっちゃんは?」「わ、わたしももちろん。」
「では、食事が終ったら……そうね。7時ごろになったら出発します。それでいい?」
「「はい。」」加護と小川は元気良く答えた。
* *
- 137 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/31(金) 00:20
- 夕食が終わり、一息ついていた松浦は前田に呼ばれて2階にあがった。今度は廊下の右側にある子供用の寝室に2人は入る。
「松浦さん、話し合うって本気なの? そんなことするとは思えないし、たとえできたとしても、
新垣ちゃんのことがバレちゃうよ。」
「いえいえ、話し合うというのは、加護ちゃんとまこっちゃんを連れて行くための方便に過ぎません。
勿論、私達の目的はAIRの抹殺、ゆくゆくはゲームに生き残って無事に戻ることです。
安倍さんの復讐をする、なんていっても2人は来ないでしょう。かつての『仲間』を手にかけられるとは思えません。
しかし私と前田さんだけで行っても向こうは6人なので敵うはずもありません。残した加護ちゃんとまこっちゃんも心配です。
だから、2人を連れ出すためにああいう言い方をしたわけです。」
「なんだ、そういうこと…。よかった。」
「まあ、話し合うというのもそんなに嘘ではありませんよ。こっちが話し合いの意志を見せたけど、
AIRが全く話し合いに乗ってくれないばかりか、こちらを攻撃しようとしたのでやむなく撃ってしまった。
という事態もありえるわけです。…さて、物置の武器をまた補充しておきましょう。」
そういうと松浦は立ち上がった。
(私は、松浦亜弥。こんなところで死ねない。死んではいけない。)
─────────────────────────────────────────────────────
- 138 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:19
- WATER TEAM'S PHASE──
WATERは全員で夕食を食べていた。ものはやきそばである。
みんなで学校の近くの民家を探したところ、見つかったのがやきそばの麺と鶏肉と人参とキャベツであり、
それでやきそばを作ったのだった。だがしかし、WATERは大所帯であり一人当たり0.7人前ぐらいしかなかった。
辻や紺野などはあきらかに足りないようだった。そんな中……
「みんな聞いて。圭織はなっちと同じようにみんなを集めてこんな馬鹿げたものから脱出したい。
これを見て。」飯田は下に置いてあった拡声器を取り出す。
「なっちはこれでみんなに呼びかけをしたの。だから圭織もなっちの意志を継ぎ、これで人を集めたい。
……でもね、やっぱり一度争ったSALTとAIRを仲直りさせるのは難しいとは思っている。
もし、このゲームを脱出できるいい方法が見つかったら、2チームとも協力してくれると思う。
みんなのなかで何かいい意見はない?」
- 139 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:25
- メンバーは隣の人と話したりして、ざわざわざわつきはじめた。
「はい。」「アヤカ。」アヤカが立ち上がる。
「とりあえず、この首輪をどうにかしなければいけないと思います。さっき、斉藤さんのを見せてもらったんですが、
簡単には外れないようになっているようですし、下手すると爆発するのであまり調べられませんでした。
せめて外された首輪があればそれを調べられるのですが。」
「首輪か…。たしかにやっかいね。外された首輪は、そう簡単には手に入りそうもないわね。」
(生の状態でその辺においてあるわけないし、誰かの首を切って、そこから外すぐらいしか方法はなさそう。)
「圭織。」「ん? 矢口。」
「海に入ったら爆発しちゃうよね。だったら空から脱出っていうのはどう?」
「それは試してみないとどうとも言えないけど、それよりも何で脱出するの?」
「それは、まあ、気球とか、ハングライダーとか、飛行機とか…。」
「それはどこにあるの?」
「大金持ちの家にあったりしないかなあ、なんて。アハハハハハハ。」
(手段はともかく、空か。考えておこう。)
- 140 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:25
- 「石橋か、中居を人質にとるっていうのはどうですか?」今度は藤本である。
「そうすればスタッフも私たちを脱出させないわけにはいかなくなると思いますけど。」
「その2人をこの島に呼び寄せるのはどうするの?」
「まだ具体的な方法はないんですけど、何か緊急事態になればスタッフごとこの島に来ると思います。」
「なるほど。」
(スタッフが2人を捨て駒として考えていたらダメだけどね。)
「いいらさん!」辻が手を上がる。「のの、何?」
「やきそばお代わり!」
「…………もうないよ。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 141 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/05(水) 00:24
- FOOD TEAM'S PHASE──
集会所では、田中を除くFOODの5人と石川、ミカ、里田の3人が話をしていた。
「なるほどなぁ。そっちの話はわかった。つまり、なっちを撃った自覚はないが、流れ弾で傷つけてしまった可能性が高い。
そういうことなんやな。」FOOD側の代表として中澤が話を進めている。
「はい。あの時は動揺してしまって…。どっちが先に仕掛けたのかも覚えていません。気付いたときには銃撃戦になってました。
SALTはきっとわたし達のこと、憎んでいると思います。あのチームが次に狙ってくるのは私たちでしょう。
ですから、私たちを助けてもらえないでしょうか? 私たちはSALTと和解したいのです。」
「……ふむ。」
(丘の出来事についてはデータが足らないからなんとも言えないわね。
真実はわかりそうもないけど、AIRがSALTと和解するっていうことならば…。)
「ええよ。うちらの願いもここから逃げ出すことやからな。それでどないすればいい?」
「うちのメンバーで移動できない者がいるから、来て頂けたらありがたいのですが…。」
「怪我でもしてるん?」
「そういうわけではないんですが、ちょっと……。」
(SALTが安倍の敵討ちに来て、それに巻き込まれるかもしれへんし、田中も戻ってきてへん。
全員で向こう行くのはちょっと心配やな。うーん。)
「……皆がそっちに行ってしまうと、田中が戻って来た時に田中が困るだろうし、
とりあえず、うちと圭ちゃんが行くわ。それでええか?」
「「「ありがとうございます。」」」AIRの3人は安心したようにお礼を言った。
─────────────────────────────────────────────────────
- 142 :名無し娘。:2003/11/05(水) 01:03
- 更新速度早っ!がんばってくだされ
- 143 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/06(木) 23:44
- ??? TEAM'S PHASE──
「いやーしかし驚いたよ。俺さ、コンビニで立ち読みしてたんだよ。ヤンジャン。そしたらさ、いきなり肩たたかれてさ、
横向くと和田さんなんだよ。『よ、久しぶり。』なんていってさ、車に乗せられて。何のようかって聞いたら、
『目的地着いたら話す』って言われて、いつの間にか寝ちゃったんだけど…。んで起きたら、石橋と中居だろ?
驚いたのなんのって。」
「…………………………………………。」
「んでいきなり『戦え』だなんてびっくりしたよ。ほんとに。……でも優勝したら芸能界復帰できるなんて夢みたいだよな。
しかも、殺した人数×2000万円もらえるんだからさ。2人で山分けしても1人1000万円だぜ。うっはー。
そして、何人殺しても警察に突きつけたりしないと来たもんだ。
キャバクラの件で俺、追放されてしばらくカタギの生活してたんだけど、ダメだね。物足りない。生活に張りがない。
やっぱり俺の場所は芸能界だと思ったね。」
「…………………………………………。」
- 144 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/06(木) 23:45
- 「それで、俺らの武器のある場所はっと。あの灯台か……。船降ろされる時にもらったこの鍵で入り口を開けるっつーことか。
そいや、中居が『お前らの武器はいっぱいあるぞ』って言ってたけどさ、何があるんだろう?
やっぱり銃はあるよな。バッキューンって撃って見たいよなあ。男のロマンだな。」
「…………………………………………。」
「そうそう、お前の芸能活動も見てたけどさ、何? あの裸エプロンとかさ、前ガバッと開いた服とかさあ。
なんか必死でさ。見てて痛々しかったよ。あーでもしなきゃ売れ…」
「黙れ! お前に私の芸能活動を否定される筋合いはない。いい? 私にとってお前は今やパートナーでもなんでもないわけ。
無理矢理組まされたから仕方なくやるだけ。私は死にたくない。殺される前に殺す。ただそれだけ。」
「へいへいへい。ま、何はともあれよろしくな。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 145 :名無し娘。:2003/11/07(金) 00:02
- この二人だったのか・・・
- 146 :名無し娘。:2003/11/07(金) 16:32
- 矢口、松浦と交流ある訴人と後藤の弟であるユウキ…
どんな展開になんだろ…
- 147 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/09(日) 23:51
- AIR TEAM'S PHASE──
石川達が集会所で中澤達と話している時に、高橋と稲葉は漁業組合で夕食の支度をしていた。
倉庫には調理場がなかったためである。
夕食といっても、魚とご飯だけであるが。高橋は稲葉に教わりながらアジと悪戦苦闘していた。
普段、包丁を握ったこともない高橋にとっては冷や冷やの連続だった。
ふと、調理場の窓がノックされる。高橋が窓の外を見ると、2人の人物が並んで夕暮れをバックに懐中電灯で下から光を当てていた。
「ひゃあ〜」高橋は情けない声をあげた。手放した包丁が流し台のシンクにぶつかる。
今度は、2人とも光を正面から当てる。「愛ちゃん、やっほー。」
「加護さん、まこっちゃん。びっくりしたー。」
「ん? SALT? なんでこんなところに…」横にいた稲葉も驚いたようだ。
料理の残りの工程は稲葉がやってくれるということで、稲葉の許可を得て、
高橋は加護と小川を連れて港の桟橋の方に移動した。桟橋には街頭がついており明るい。
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