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とくばん〜HPシャッフルサバイバルSP〜

1 :ゼロ ◆5eqMCHlE :2003/08/04 22:42:31
このスレは、2003年のシャッフルユニット+αでのバトロワ風サバイバルゲーム小説のスレです。
残酷なシーンとか出てきますので、そういうの嫌いな方は見ないほうがいいです。
それでもいいという方がいれば──
少しの間、私の拙い小説にお付き合いください。


2 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/04 22:45:55
ここは遠い南の国の海岸。
加護亜依(モーニング娘。)は辻希美(モーニング娘。)と一緒に
アイスを食べながら至福のときを過ごしていた。周りには食べきれないほどのアイスの山。
(ああ、うちは幸せもんや。)
「さん…、ごさん…」
どこからか声がする。
(なんや、今食べてるとこやのに。)
「加護さん、加護さん、起きてくださいよ。ねえ、加護さん。」
その声はどうやら外から聞こえるようだ。ん? この声はまこっちゃん?

そこで加護の意識は急速に現実に戻された。
(なんや、夢だったんかいな。)
目の前には不安そうな小川麻琴(モーニング娘。)の姿があった。
「まこっちゃん、どうしたの?」
「おかしいんです。楽屋じゃないんです。」
加護は徐々に記憶を取り戻す。たしか、「うたばん」でシャッフルの歌の収録を終え、
次はトーク部分の撮影のはずだった。みんなで楽屋にいたところまでは覚えている…けど…
「ここはどこ?」小川に聞いてみる。
「それがわからないんです。私が目覚めた時にはSALT5のみんなも寝ていて、ほら」
加護は周りを見渡す。たしかに、小川の他にはSALT5の衣装を着た、安倍なつみ(モーニング娘。) と
前田有紀、そして松浦亜弥が床に寝かされていた。ふと、松浦亜弥まで見た時に加護はあることに気付く。
(亜弥ちゃんの首筋、銀色の首輪?)
よくみればみんな同じような首輪をしている。
加護はとっさに自分の首に手を回す…やはり冷たい感触が手を刺激する。
「これ何?」冷たいものに触りながら小川に聞く。
「わ、わかりません。」気のせいか、小川の不安がさっきよりも増している気がする。


3 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/04 22:47:28
加護は今度は部屋を見渡してみる。どこかの家の居間のようだ。
加護の左手にある窓の外からは、綺麗な青い海が見える。太陽はまだ高そうだ。
その時、突如、部屋に大きな音楽が響いた。

ハメて〜、ウ〜ハメて〜、SOMEBADY SOMEBADY SOMEDAY SO ハメて〜

「この恥ずかしい音楽は『うたばん』?」加護は気付く。
大音量に、どうやら眠っていた残りの3人も目を覚ましたようだ。
「ん? 何、この音楽?」「なんだべ?」「どこ、ここ?」
始まった時と同様に突然音楽が終わり、部屋の前の扉から何人か人が入ってきた。
「みんな、ちゃんと起きたかー。寝坊はダメだぞー。」
(この声、聞き覚えがある──。もしかして、)
「中居さん?」声の主はうたばんの司会者、中居正広(SMAP)だった。
彼の後に、カメラマンとADが2人が続く。カメラマンは録画を開始し、ADは島の地図を5人に見えるように貼った。
「私がSALT5担当の中居正広でーす。早速ですがみんなにはこれから『うたばん』のゲームをしてもらうぞー。」
中居は普段と変わらない口調で説明をはじめた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


4 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/04 22:50:24
「早速ですが、みなさんにこれから『うたばん』のゲームをしてもらいます。」
木梨憲武(とんねるず)の言葉に石川梨華(モーニング娘。) は、「うたばん」なのに木梨が出てきた事より驚いた。

石川達、7AIRのメンバーもSALT5と同様に眠らされていたところを音楽に起こされたのである。
しかし7AIRがSALT5と違うところは、眠らされていた場所が倉庫であったことである。
その倉庫の中には窓が上の方に一つしかなく外の様子はわからなかったが、
潮の匂いがすることから海が近いのが分かった。
ここで石川は1つ気になることがあった。それはSALT5と同じように
(それは石川がまだ知らないことではあったのだが)7AIR全員につけられていた金属製の首輪。
(よっすぃーに借りたDVDで見たことがある。これは、もしかして『バトルロワイヤル』の首輪?)

そんな石川の思いをよそに、木梨は、地図に指し棒で指しながら説明する。
「最終的な目標は、自分達の武器で他のチームを全滅させたら君達7AIRの勝ち、
 先に自分達が全滅したら7AIRの負け。ルールはたったこれだけ。
 ちなみに優勝者には豪華商品をプレゼント!」
「つまり、シャッフルチーム対抗でサバイバルゲームをするということですか?」
ミカ(ココナッツ娘。)が聞いた。(さすがは、アメリカンね。)石川はよくわからない感心をした。
「お、そうそう。わかりやすくいうとサバイバルゲーム。まさにそんな感じ。」


5 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/04 22:52:14
そのあと、自分達のいる場所の説明があった。
まず、ここは伊豆諸島のとある島でほぼ円に近い形をしていること。
住民には立ち退いてもらい自分達しかいないこと。
自分達7AIRは島の西側の港の倉庫にいること。
SALT5は島の北側の一般市民の別荘として使われている民家にいること。
11WATERは島の東側の学校にいること。そして──。

「そしてもう1チーム、FOOD7があ、島の南の島の集会所にいます。」
 
突然の発表に、まだ言葉の意味を理解しきれていない石川が唖然としていると、
後ろから今度は高橋愛(モーニング娘。)が木梨に質問した。
「FOOD7ってどんなチームなんですか?」
「といっても俺も初めて聞いたからなあ、どんなチームなのか…。」そんな木梨の元にADが1人近づき、木梨に耳打ちする。
「えー、そのFOOD7のところにいる貴明から、チームの紹介があるそうです。」
というと、木梨は横にあるTVの電源を着けチャンネルを6に合わせた。
古いTVなのでなかなか最初は映像がはっきりしなかったが、徐々に映像が鮮明になり、
やがて画面は、石橋貴明(とんねるず)を映し出した。


6 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/04 22:53:27
「みなさん、こんにちは。えー、これからですね。ハロプロシャッフル史上最大のゲームがはじまるわけですが、
 まあ、せっかくだから4チームにしようというわけで、急遽、つんく♂に作ってもらったFOOD7。
 このチームを今から担当の私が紹介しようと思います。まずは、じゃじゃん。」
といって画面は中澤裕子を映し出した。
「中澤裕子!」
「まだまだ、あんたらには負けへんから。」中澤は腕を組み下目遣いで挑発するようにこちらを睨んでいた。
「こわっ。えー続いては後藤真希。」今度は後藤にカメラがパンした。「後藤〜、会いたかったよー。」
画面の端から石橋が口を尖らせて後藤にチューしようと近づく。
「もー、貴さんたら!」後藤は笑顔で石橋を避ける。「うちとは扱いが違うわ。」中澤のぼやきが横から聞こえる。
「次、みうな。カントリーの新人さんやね。」「よろしくお願いします。」みうな(カントリー娘。)はお辞儀をした。
「んで、亀井絵里(モーニング娘。)。」「皆さんの足を引っ張らないように頑張ります。」「初々しいねー。」
「田中れいな(モーニング娘。)。」「いえーい!」「お、元気いいねー。」
「ややおもさゆみ(モーニング娘。)!」「…道重です。」「ゴメン、読めなかったよー。」
「そして、最後は保田!」「よ・ろ・し・く・ね。チュッ。」保田圭はしなを作って投げキスをする。
「おえー。」カメラは石橋に戻る。後藤の笑い声が聞こえる。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


7 :名無しさん:2003/08/05 20:28:28
( ^▽^)<LF+Rロワイヤルみたい

8 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/05 22:29:01
(ごっちんにけいちゃんかあ。何だかうれしくなっちゃうなあ。私もあっち行きたいなあ。)
吉澤ひとみ(モーニング娘。)は懐かしさで胸が詰まった。

11WATERも前述の2チームと同様の経緯を持って今に至っている。
ただし、彼女らが眠らされていた場所は、島で唯一の学校だそうだ。
11WATERにも、そしてFOOD7にも(TV越しだが)ついていた首輪については、吉澤は演出の一部という意味でのアクセサリーという認識しかなく、
(この首輪、カッケー! 終わったらもらえないかな。)としか考えていなかった。

吉澤がそんなことを思っていると、ADが台車でいくつかのナップザックを運んできた。
中にはすでに何か入っているらしく重量感が感じられる。

11WATER担当の香取慎吾(SMAP)は、ナップザックの1つを開ける。中から出てきたのは、食パン1斤とトランシーバー、懐中電灯、そして島の地図。
それらを確認すると、香取は支給物質の説明を始めた。
「えー、まずこのナップザックは人数分あります。後ほど配布します。中身は、まずは食料。おなかが減っては楽しくゲームができないからね。
 とりあえず1人当たり乾パン1缶。普通の食料が食べたい人は、この島のどこかにあるんで探してみてください。」


9 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/05 22:34:07
そこで、吉澤は不意に肩をつつかれる。隣を見るとそこには辻希美(モーニング娘。)。
「よっすぃー、収録何時間だっけ?」
辻に言われて吉澤は1つ気が付いたことがあった。
それは、どう考えてもこのゲームが2、3時間で終わらないことである。
「今日の予定はたしか『うたばん』しかなったから、
 結構かかるんじゃないかな。まあ、明日になることはないと思うけどね。」

香取の説明は続いている。
「次にトランシーバーです。ゲーム中は他のチームメンバーとこれで連絡を取り合ってください。
 簡単な使いかただけざっと説明しておくと、ここのボタンを押して話し掛けると他のメンバーと会話ができます。
 ちなみにここのつまみで音量を調節します。詳しい機能については、えー、説明書があるので読んでください。
 あとは、暗いところで使う懐中電灯です。夜は足元に注意してください。
 そして島の地図です。これはここに貼ってあるものの縮小版です。」


10 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/05 22:50:24
「質問があるんですけど…。」おずおずと手を挙げたのは柴田あゆみ(メロン記念日)だ。「はい、どうぞ。」
「サバイバルゲームって人数による有利不利があると思うんですけど…。 私達って11人で、他のチームより多いんですけど、いいんですか?」
香取はその質問を受けて、手元の資料を見ながら答える。
「えっと……、その辺は支給される武器によって補われる、そうです。具体的には…、人数の少ないSALT5は、
 武器がしっかりしていて、11WATERは逆にちょっとショボイというわけだそうです。こんな説明でいいですか?」
「わかりました。」柴田は大人しく座る。


11 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/05 22:51:21
「それでは、武器の一部を支給をします。」香取はそういうとスタッフの一人から何かを受け取り、
11WATERのリーダーである飯田圭織(モーニング娘。)のに机の上にそれを置いた。
飯田は銃の形をしているそれを手に取って観察する。モデルガンだろうか? 
真中にくるくる回転する物体がついている。
(これ、なんていうんだっけ? 映画とかのロシアンルーレットする時にくるくる回すんだよね、たしか。)
その時、後ろから「飯田さん、貸してください。」と辻の声がした。「いいよ。」飯田は手渡した。
辻は銃を手にとると構え、隣の吉澤に向け「バーン」と銃声の真似をする。「な、なんじゃこりゃー。ガクッ。」吉澤は死んだふりをした。
(なんで、よっすぃーは松田優作をしっているのかしら?)と思いつつも、「何、バカなことしてるの?」とたしなめる。
「そうそう、リーダーの言うとおり、暴発したら大変です。中には既に実弾が詰まってますからね。
 しかも、それはリボルバーものなんで安全装置はありません。
 まあ、説明書をよく読んで、取扱いには注意しましょう。」
香取がさらっといいのける。焦った辻は持っていた銃から慌てて手を放つ。
銃はリボルバーを中心に床の上をくるくる回転した。


12 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/07 00:20:49
「へ?」村田めぐみ(メロン記念日)が変な声をあげた。
「キャハハ、香取さん、何言ってるんですか、もー。」矢口真里(モーニング娘。)は本気にはしていない。
「…簡単に手に…」「…あるいはフェイク…」
紺野あさ美(モーニング娘。)と藤本美貴(モーニング娘。)は何か話し合っている。
他にもいろんなところからささやき声が聞こえていた。
辻が放った銃をアヤカ(ココナッツ娘。)が拾い上げ、観察する。
「これはデリンジャー!? 正確にはアメリカンデリンジャー・ハイスタンダードモデル。
 アメリカでみたことがある。モデルガンなんかじゃありません。これ本物です。」
アヤカは驚いたように声をあげた。
「だから、本物って言ったんですよ。」香取は少し飽きれたようだった。
すかさず飯田が立ち上がった。「じゃ、じゃあ、私達に殺しあえというんですか?」
「ええ、そうですよ。だから最初に言ったじゃないですか。これは『サバイバルゲーム』だってね。」
飯田は力なく座った。
香取のその宣告によって、教室内は水を打ったように静まりかえった。ただ、TVの音を除いては。

「なんで、あたしらが殺し合いせんとあかんねん。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


13 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/07 23:10:03
「なんで、あたしらが殺し合いせんとあかんねん。」

いつも中澤裕子は普通の顔をしながら怒っていることもあるが、今は本気で怒っていた。
新しい「娘。」の3人、いや、あのカントリーの新人でさえ中澤が怒っているとわかっていることだろう。
後藤真希はそう思った。そしてその理由も…。
(いきなり殺しあえっていわれれば、そりゃねえ。)
と思い中澤の目の前においてある1丁の銃(コルト・ガバメント)を見やった。
異変を感じ取ったのか、銃を持った外国の兵士が数人集会所に入ってきた。
(随分、お金かかってるんだ。)後藤はつまらないことを思った。

それに対し、石橋は右手を上げると、手を上下に振り中澤をなだめた。
「あのさー、もう、君たちでは普通のことしても数字取れないんだよー。
 まあ、うちの局も慈善事業やっているわけじゃないからさー。
 この辺でなんとかしないと、ハロプロのメンバー呼べないわけよ。
 そこで、考えたのがこの『ハロプロ・シャッフル・サバイバル・バトル』。略して、HSSB。
 シャッフルで戦ってもらって、それをSP番組で見せれば視聴率もググンと、もう20%も目じゃない。
 でもさー、普通のモデルガンだと緊張感が足らないし、お遊びになっちゃうでしょ?
 だからモノホンを使って、リアル感を出すっと。あ、やばいシーンはCGで処理するから今日は安心日。
 ちなみに、つんく♂や山崎会長も了承済みだから。」


14 :名無そうそう:2003/08/08 10:33:29
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1027178643/l33

↑の類似品ではないのか?

15 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/08 22:37:51
>14
それはそうなんですが、まー、6期面が加わっていること、
チーム戦であることというプラス要素があるということで。

16 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/08 22:38:45
あまりのことに唖然とする中澤だったが、気をとりなおすとくるりと石橋に背を向けると集会所の出口へ歩いていく。
「おい、中澤ー、どこへ…」
「保田! 後藤! みんな! 帰るわよ! 付き合ってられない。」
「チッ」石橋はそれまでのちょっとおちゃらけた態度から、冷静な態度に変わった。
「なあ、中澤。おまえさ、『バトルロワイヤル』っていう小説か映画か。見たことあるか?」
出口付近まで来ていた中澤が振り返る。「ないけど、それが?」
「後藤は見たことがある?」後藤は首を縦に振る。「よっすぃーに小説借りたことがある。」
「じゃあ、皆の首についている首輪に見覚えはあるだろう?」後藤は黙って再び頷いた。
そう、みんなの首についているものは『バトルロワイヤル』で登場した首輪にそっくりだった。
後藤は、かいつまんでその首輪のことを中澤に説明する。
中澤は眉を顰めながら後藤の話を聞いていたが、後藤が話し終わると「フン」と鼻で笑った。
「どうせ、この首輪、本物じゃないんでしょ? この平和な国でそんな物騒なものどこの企業が作るっていうの?
 本物なら、あたしの首、爆破してみなさいよ?」
石橋は目を閉じるとため息をもらした。
「平和ボケも甚だしいな。中澤。別に日本で作ったとは限らないだろう?」
「能書きはいいから、やれるものならやってみい?」
「…その言葉、後悔するなよ。」
石橋は、再びテンションをおちゃらけモードにすると、
みうな、亀井、田中、道重に次々と指差し、呪文のようなものを唱える。
「ど の こ に し よ う か な 
 て ん の か み さ ま の ゆ う と お…」


17 :名無し娘。:2003/08/10 02:42:07
>>14
まぁ面白そうだし暖かく見守ろうや。
娘のバトロワっては昔からいっぱいあったんだし。

ちなみにそこはオリジナルではない。

18 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/10 18:01:36
「り」のところで指差していた人物は、道重だった。
石橋はやおら、ポケットからリモコンのようなものを出すと、
リモコンを道重の方にかざし、いくつかあるボタンのうち1つを押した。「ポチっとな。」



どこからか電子音が聞こえた。



それはどうやら道重のしている首輪から聞こえるようだ。

ぴぴ

中澤は呆然としている。

ぴぴ

みうなはあたふたしている。

ぴぴぴ

後藤は頭の中でこの次に起こる事態を必死に否定している。


19 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/10 18:02:25
ぴぴぴ

石橋は我関せずという顔をしている。

ぴぴぴぴぴぴ

亀井は下唇を噛み、道重の手をギュッと握り締める。

ぴぴぴぴ

田中は驚いた様子で、「さゆ?」と呼びかける。

ぴぴぴぴぴ

当の道重は状況がよくわかっていないらしく、「え? え?」と戸惑っている。

ぴぴぴぴぴぴぴ

保田は、あと数秒で消えてしまうかもしれない若い命を前に何もできない自分がひどくもどかしかった。

ぴぴぴぴぴぴぴぴ

電子音がけたたましく響く中、亀井が道重に何か囁いた。「……だからね。」「う、うん。」


20 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/10 18:05:48
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ

ぱんっという破裂音のあと、道重の首が……弾けた。亀井の顔が返り血で真っ赤になる。
亀井に手を握られたまま道重はゆっくり前に倒れる。
数秒間、集会所は静寂につつまれた。

「な、なんで、うちやないんや?」中澤は声を絞り出した。
「バーカ、お前だったら、死んでそんでおしまいだからだよ。お前がリーダーだってのもある。
 とりあえず逆らったらこうなることをみせしめだ。
 つまり、あいつはお前のせいで死んだんだ。でも、本当に死んじゃうもんだな。へへっ。」
石橋は何も悪びれることなく感心した。
「あたしが、ころした?」うわごとのようにつぶやく中澤の横を一陣の風を通り抜けた。

田中が石橋の胸倉をつかむ。兵士達の銃口が一斉に田中の方へ向いた。
「…離せよ。」ドスを聞かせた石橋の声があたりを支配する。
今にも石橋に殴りかかろうとする田中を間一髪、保田が羽交い絞めにし止める。
「だめよ、だめ。」
「このあんぽすが、ぱり倒したるけん、さゆをかいせ!」田中はじたばたしながら叫びつづける。
「気持ちはわかるけど、ここは我慢して。」

「ケホケホ、さすがは保田。ナイスフォロー!
 もう3秒遅ければ今度はそいつの首が爆発するところだった。」
石橋は咳き込みながら保田を褒めた。
「別にあなたをフォローしたつもりはないけど。」保田は石橋を睨みつけていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


21 :レクイエム ◆REQU/2yA :2003/08/10 22:59:26
更新お疲れ様です。
色々なジャンルの中でもやっぱりバトロワ小説が一番好きです。
ご執筆大変だとは思いますが、これからも頑張ってください。
自分もバトロワ小説を書き始めた頃は、ちょうどバトロワものが
溢れていた頃らしく、「類似もの」だとか、「この手の小説はもういらない」
とか散々言われました。自分は同じジャンルのものがいくつあっても
いいんじゃないかと思っています。
それぞれに違う作者さんがいて、それぞれ異なった世界が生まれるからです。
 (段々文がワケ分からなくなってきました)
長くなってしまってすみません。
それではこれからもご執筆頑張ってください。
 
 
 

22 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/12 14:33:27
>>17
ありがとうございます。オリジナルについては、羊の「デットオアアライブ」さんが
執筆していたものだったと記憶しております。

>>21
私も、ハリプロ、ジャイアンツ、三国、FFDQなど2chのいろんなバトロワリレーを見ておりまして、
そこから自分でも書いてみたく思いました。
実はそちらのスレもROMっております。お互い頑張りましょう。

23 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/12 14:33:39
道重の様子は図らずも、別荘、倉庫、学校に中継されていた。

別荘のSALT5は、事態を把握しきれていないというのもあったが、誰も動けなかった。
そんな中、中居が冷静に解説する。
「えー、番組に逆らったりすると、このように首輪が爆発します。
 海などの進入禁止の場所に入っても同じく爆発します。
 ……前田、無理矢理外そうとしても爆発するぞ。
 あと24時間、死亡者が出なかったら、全員の首輪が爆発するから気をつけろー。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

倉庫の7AIRは、まず高橋愛の「よ、よくできたCGですね。」という言葉から始まり、
先ほどの出来事を疑う雰囲気が支配していた。
「CGなんですか?」石川梨華が木梨に聞く。
「いや、おそらく本当の出来事だ。くそっ、貴明の奴、先走りやがって。」
石川の耳に新垣里沙の嗚咽する声が聞こえてきた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


24 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/13 23:12:44
学校の11WATERは、道重の首輪が爆発した瞬間、まず矢口真里が悲鳴をあげ、それにつられるように、
悲鳴をあげたり、嗚咽したり、逃げ出そうとする人がいたりと、混沌があたりを支配した。
「おい、お前ら席に着け! ちっ、しょうがないなあ。」
香取は手をあげると、前の入口から入ってきていた兵士達は一斉に床に向けて威嚇射撃をする。
尋常ではない轟音とともに、学校の床が削られ、破片が宙に舞う。
その迫力の前に、泣き叫んでいた娘達の動きが一瞬にして止まった。
そして、威嚇射撃が終わる数秒前 ―― 床を跳ね返された弾の一発が、紺野あさ美の右腿をかすめた。
「キャッ!」紺野がその場にうずくまる。弾がかすめたと思われる場所から血が流れていた。
藤本美貴は自分のハンカチを取り出し、紺野の傷口を押さえる。「動ける?」
痛みよりも精神的なショックが大きいのか頷くのがやっとだった。
「……私につかまって。」
紺野が藤本につかまりながら席に戻るのを見て、他のメンバーも席についた。
(これは、ゲームじゃない本気ね。)藤本は確信した。
「今度は、近距離武器の支給にうつります。」香取は何事もなかったように説明を続けた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『一応の』冷静さを取り戻した集会所では石橋によるその他の武器についての説明がされていた。
亀井は顔を洗い、道重は他のメンバーによって教室の隅に寝かされていた。(さすがにこれは石橋も許可した。)
「まー、さすがに銃だけじゃ心もとないんで、他の武器も一応外の物置に保存してあるわけだ。」
石橋はそういうとポケットから鍵を取り出し、メンバーにみせる。
「これが物置の鍵だが、これは俺がこの島から出るときに渡すぞ。
 そうしないと支給された武器でいっぺんに襲われたらかなわないからな。
 中には銃がもう3丁と、それの銃弾。そして近接用武器──まあ剣とかだな──が入ってる。
 さて、俺からの説明はこれまでだ。時計が12時なったら俺たち司会者はこの島を離れる。
 そしてゲームスタートだ。優勝目指して頑張れよ、FOOD6!」
こうして狂気のゲームはスタートしたのだった。


25 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/14 23:44:18
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
SALT5(担当:中居正広)
安倍なつみ(モーニング娘。)、加護亜依(モーニング娘。)、小川麻琴(モーニング娘。)、松浦亜弥
前田有紀

7AIR(担当:木梨憲武)
石川梨華(モーニング娘。) 、高橋愛(モーニング娘。)、新垣里沙(モーニング娘。)、稲葉貴子
ミカ(ココナッツ娘。)、里田まい(カントリー娘。)、大谷雅恵(メロン記念日)

11WATER(担当:香取慎吾)
飯田圭織(モーニング娘。)、矢口真里(モーニング娘。)、吉澤ひとみ(モーニング娘。)
辻希美(モーニング娘。) 、紺野あさ美(モーニング娘。)、藤本美貴(モーニング娘。)
アヤカ(ココナッツ娘。)、あさみ(カントリー娘。)、村田めぐみ(メロン記念日)
斉藤 瞳(メロン記念日)、柴田あゆみ(メロン記念日)

FOOD6(担当:石橋貴明)
中澤裕子、後藤真希、保田圭、みうな(カントリー娘。)、
亀井絵里(モーニング娘。)、田中れいな(モーニング娘。)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


26 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/16 23:03:00
「はー。」
遠ざかる中居とスタッフと兵士達を乗せた船に向って、松浦亜弥はため息をついた。
(これからどうなっちゃうんだろう?)
隣を見ると、前田有紀は思いっきり中指を突きたてていた。
「ちっ、沈没して死んじまえ!」
「そんな下品なこといっちゃダメだよ。」安倍なつみが注意する。
「フン。」前田は不貞腐れる。
「そ、そんなことより物置をあけましょうよ。」小川はとりなすように提案した。

その提案にしたがい、SALT5は別荘に戻り物置の鍵を開けた。
中に入っていたものは――銃、手榴弾、ナイフ、催涙弾――つまりいろんな武器。
銃のうちの1種類は、家で中居から安倍に渡された銃──デザートイーグルという名前らしい──
と同じものであった。それが4丁。(つまり、人数分ね。用意がいいこと。)
次に出てきたのが、さっきのデザートイーグルとは別種類と思われる銃が5丁。
銃把が銃身の中心付近についていて、銃身の先に細い筒がある。
「イングラムM11マシンガンだって。」加護亜依が説明書の文字を読み上げた。
(戦争をしろってわけね。……ん?)
他のメンバーがそのほかにも予備の銃弾、手榴弾、ナイフ等を整理しているとき、
隙を見て前田が倉庫から自分の後ろに何か隠した……ような気がした。
(きっと、私の見間違いね。)


27 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/17 20:56:11
その後、武器の配布が始まった。
とりあえずデザートイーグルは人数分あるのでそれぞれ持つことにしたが…

「なっちはこんなあぶなっかしいものいらない。だって使わないべさ。」
リーダーである安倍が受け取りを拒否したのだ。
「それはそうかも知れませんが、一応持っておいてください。」
前田が説得にかかる。
「じゃあ、前田さんはこれで誰か撃ったりする?」
「相手が襲い掛かってきたら撃たざるを得ないでしょう?」
「襲い掛かる人なんていないよ。だって私たち仲間じゃない。」
前田はまだ何か言いたげだったが、とりあえず諦めたようだった。
(気持ちはわからなくもないけど、安倍さんは甘いな。)

次にイングラムだが、体格の関係で重火器が使えそうもない加護と、
前述の理由により安倍を除外した3人、松浦・小川・前田が持つことにした。
手榴弾はとりあえず、前田がもつことになった。


28 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/17 20:56:38
最後に5つあったアーミーナイフ。これにも最初は安倍が拒絶反応を示したが、松浦の
「安倍さん、何も武器としてじゃなくて、道具として持っておけばいいじゃないですか。」
という説得が効いたのか、最終的には持ってくれたのだった。

「安倍さん、これからどうしますか?」身の回りの整理が終わる頃、松浦は安倍に今後の方針を尋ねた。
「そうね。とりあえず、欲しいものがあるの。えっと、あれなんていったっけ? 
 えっと、こういうふうにもって」と安倍は右手で拳を作り、自分の顎の前に置く。
「それで声を出すと声が大きくなってあたりに響く機械。」
「あ、拡声器ですか?」
「そう、それ! 拡声器! それが欲しい。なっち、拡声器は学校か村役場にあると思うんだけど。」
松浦は地図を見る。現在SALT5がいる家は北端にある。11WATERがいる学校は東側、
そして、村役場は島の中央からやや北西にある。距離的には村役場の方が近い。
そのことを安倍に報告する。
「それじゃ、とりあえず村役場に行くべさ。」
安倍はみんなに呼びかけにいった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


29 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/18 23:15:31
石川梨華が木梨から帰り際に貰った鍵は、漁業組合のとある部屋の鍵だった。
その部屋にあったのは、倉庫で石川が木梨から渡された銃と同じものが3丁(シグ/ザウェルP230:合計で4丁)、
とその予備銃弾、そして、近接戦闘用として、日本刀、脇差、薙刀、戟、弓、手裏剣などなど。
(太秦の撮影所じゃないんだから。まあ、行った事ないけど。)
4丁ある銃は、リーダーである石川、射撃練習をしたことがあるミカ、あとは年齢順で、
稲葉貴子、大谷雅恵(メロン記念日)が持つこととなった。
近接戦闘用武器は、量が十分にあるので、それぞれ体格にあわせたものを持つことになった。

里田まい(カントリー娘。)は、自分に支給された「正宗」と銘うたれてある刀を観察していた。
その刃は、太陽を反射して鋭い光を放っていた。
(本物よね…。多分…。)
里田はまた、煙玉も持たされていた。
説明書をよむと、「投げると玉から煙幕がふき出しあたりの敵を行動不能にする。」とある。
(つまり、煙幕弾ね。)
最後に、吹き矢。フッと吹いて矢を敵に命中させるらしい。
矢には何種類かあって、しばらく動けなくさせるものから、即死させるものまでいろいろある。
(スポーツ吹き矢ってあるけど。まさか私がやることになるとはね。)

その後の話し合いによって、7AIRはどうするにしても仲間を増やすことに決まった。
白羽の矢が立ったのは、チームの中でも最少人数のSALT5。
7AIRはSALT5と交渉するため北の別荘へ向うことになった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


30 :名無し:2003/08/19 02:44:18
どうなるんだろう…楽しみだな…更新期待sage

31 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/19 22:49:15
辻希美は、左手にうろこの盾、右手に鋼鉄の剣を持ち、地面の見えない敵と戦っていた。
「ばしゅ! 勇者『のぞみ』は、スライムに85のダメージ。スライムを倒した!」
「ちゃららら、ちゃっちゃっちゃっちゃー。」デーモンスピアを持った吉澤ひとみは合いの手を入れる。
「あ、LVあがった。ばんざーい!」
「辻、吉澤。馬鹿なことばっかりしているとおいていくよー。」
2人の引率(?)の矢口真里は、遊んでいる辻と吉澤を注意した。
「はーい。」「はーい。」
その矢口は、毒蛾のナイフとデリンジャーをナップザックに入れていた。
この3人は、紺野の治療用具を得るために、学校の北西にある診療所に向っているところである。
(でもまあ、武器もこんな感じだし、沈んでいるよりはいいっちゃ、いいかもね。)



32 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/19 22:49:49
学校の校長室を香取から貰った鍵で開けた11WATERを待っていたものは、銃器はデリンジャーただ1丁だけだった。
しかし、非銃器はかなり豊富で、剣、槍、ブーメラン、鉤爪、盾などなど。ゲームに出てきそうな武器ばかり。
ただし、ナイフなどのもともと小型なものを除くと、女性用ということで原寸の2/3の大きさらしい。
その中には「ロトの剣」などの有名なものもあったのだが、同封された説明書にはこう書いてあった。
「レプリカですので、使用しても特別な効果はありません。ただ、切れ味は保証しますので、普通の剣としてご使用下さい。」

(…それは、そうと。)
矢口は別行動しているもう1チームを少し心配した。
(メロンの3人は大谷に会うため、倉庫に行くって行ってたけど島の反対側じゃん。どーやっていくんだろう?)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


33 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/20 22:18:36
「えー、ではこれからどうするかってことなんだけど、その前に…。」
南の集会所では、保田圭が中心となって今度の方針について検討していた。
会議に参加しているメンバーば、保田、後藤真希、みうな、それに亀井絵里。
ここにいないメンバーのうちの1人、
中澤裕子は、自分の挑発によって1人の命を失ってしまったためか、「しばらく一人にさせて。」
と言って、外に出て行った。おそらく海を見ているだろう。

そしてもう1人…。
「あれ? 田中は?」
「えっと、れいなは…。」亀井がおずおずと説明しはじめた。

時は10分ほど前に戻る。石橋から鍵を受け取り、集会所の物置から武器を得て、
(ちなみに物置に入っていたのは、コルト・ガバメントがもう1丁、暗視スコープ付ブレーザーR93が2丁、
 ──暗殺でもしろっていうのかい?──
 残りは、青龍偃月刀、蛇矛、方天画戟、弩、弓などの古代中国風な武器だった。
 これも、もともと女性用なものを除くと、原寸の2/3の大きさらしい。 )
集会所の花壇の側にあったスコップで穴を掘り、道重を埋葬したあとの出来事であった。


34 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/20 22:29:16
玄関でローラーブレードを履いている田中を発見したのは、
みんなが会議を前に冷蔵庫にあった麦茶で休憩しているときだった。
「れいな。どこいくん?」
「あ、絵里か。……さゆの仇ばとらんとね。」
「さゆの仇って。……なにか当てはあるの?」
「それは……、今から探すばい。島のどこかにヒントぐらいはあると思うとね。」
「なら、わたしを連れて行って。」
そこで田中は困った顔をした。しばらく亀井をみつめ、空白の時が過ぎる。やがて…。
「…それはできんと。」
「なんで? わたしだってさゆの仇を討ちたいよ。」
「絵里までここを抜けたら、ここには4人しかいなくなってしまうけん。
 絵里には、ここに残って中澤さん達のサポートをしてほしか。」


35 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/20 22:30:10
再び空白の時が流れる。
「…………………うん。」かすかな言葉とともに亀井は頷いた。
「うちはきっと戻ってくるから。」
「約束だよ。」
「うん。……あの時の約束も、うちは忘れなか。」
「私も、ううん、さゆもきっと。」
「中澤さんに、うちがローラーブレードとこの『倚天の剣』と弩を持っていくって伝えといてほしか。」
「うん、わかった。」
「やあね。」田中はまるで近所のコンビニに買い物をしにいく時のように普通に入り口から出て行った。


36 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/22 22:45:09
亀井は報告すると(あの時の約束うんぬんは言わなかったが。)一息ついた。
保田はしばらく窓の外の海に視線を移動させていたが、フッとため息をつくと自分のナップザックからトランシーバーを取り出した。
窓際へ移動しアンテナを伸ばす。
「田中ぁ、保田だけど必ず戻ってくるのよ。」
そういうと保田はトランシーバーを再びナップザックの中にしまった。
「さて、これからなんだけど、私ちょっと手に入れたい物があるの。」保田は仕切り直した。
「圭ちゃん、手に入れたいものって?」後藤が尋ねる。
「パソコン。できれば、ネットにつなぎたいところね。助けを求める…というのは無理かもしれないけど、
 せめて情報収集ぐらいはしときたいかな。……それでありそうなところなんだけど、目星はつけてあるの。
 まずは別荘。おそらくオーナーはお金持ちだろうし、もしかしたらそこにあるかな?
 じゃなければ、村役場にはあると思う。」
「こっからだとどっちも島の中央にある山の反対側ですね。でもちょっとだけ村役場の方が近いかもしれません。」
みうなは地図を確認する。
「ついでに途中にある商店をよってみるわ。後藤はここで裕ちゃんをお願い。
 亀井、一緒についてきてくれる? もしかしたら田中に会えるかもしれない。」
「わかりました。では準備します。」「うん、10分後に玄関でね。私は裕ちゃんに報告してくる。」
保田の言葉を最後に会議は幕を閉じた。

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37 :名無し娘。:2003/08/23 00:48:25
更新乙!期待させて待たせてもらうよ!

38 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/23 23:30:30
村役場への道を前田有紀と松浦亜弥は歩いていた。
SALT5の残りの安倍なつみ、加護亜依、小川麻琴はもうすでに村役場についているのではないだろうか?
何故、2人だけ遅れているのか? それは、いざ出発する時に前田が忘れ物をしたらしく、
安倍達3人に先にいってもらうようお願いしたからである。

「あれ? ナップザックどうしたんですか?」
松浦は、前田がナップザックではなくリュックサックを背負っていることに気付いた。
「これ? 支給されたやつ、穴があいてたんで、あの家に元からあったものを貰ったのよ。……ところで。」
ここで前田は一息つく。
「もし、私たちSALT5が生き残って優勝したらどうなると思う、松浦さん?」
「え? それは豪華商品が…」
「いえ、その後よ。まあ、すごく運が良くて他のチーム同士が戦って
 私たちが何もせずに勝ち残るということがあるかもしれない。でも、そんなことはまずありえないわ。
 基本的に生き残って優勝するということは……。」
そこでまた前田は数秒の間をおいた。
「……誰かを殺すということだと思う。」
「……。」


39 :名無し娘。:2003/08/25 00:56:36
移転しても続けてくれ!
一読者としてマジレス。

40 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/25 01:16:42
「普通なら殺人罪で警察に捕まってしまうわ。でも、あいつら『やばいところはCGで編集』っていってたじゃない。」
「……うん。」
「ということは、ここであったことは一般には公開はされない、ということになると思う。
 知りえるのは、石橋達とうたばんスタッフとつんくと山崎くらいかしら。
 まさか、うたばんが『実はサバイバルゲームじゃなくて本物の殺し合いでした。』なんていうはずがないわ。
 だってそうしたら、あの番組、いや局に非難が集中し、TV局自体がなくなってしまうから。
 だからここでの本当の事は隠蔽されるわね。結局何がいいたいのかといえば、ここで何をしても
 ──生き残った時に人を何人殺していても罪には問われないという事。
 こう考える人はおそらく他にもいるはずよ。もし私達が接触した人がそういう人だったら……どうなるかしら?」
「!!」
「松浦さん、あなたはここで死にたい? 私はまだ死にたくない。私は貴方やモー娘。ほど派手に活躍しているわけではないけどね。」
「それは……わたしも死にたくありません。」
(私は……松浦亜弥。)
上り道を上がりきったところで、村役場らしい建物の入り口からこっちに手を振っている加護の姿が見えた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


41 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/25 01:17:30
応援ありがとうございます。
狩がなくなったら、どこか外部板に移動しようと思います。


42 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/25 23:40:35
SALT5が再び合流するころ、7AIRは別荘に到着していた。
倉庫の周りは島のちょっとした港らしく、その港から別荘のある方へ北東に歩いていった。
途中は砂浜が続いていて、途中には灯台もみかけた。30分くらい歩いただろうか、砂浜が終わるところに別荘はあった。
(へー、結構大きいんだ。)普通の家を想像していた石川梨華は少し驚いた。

リーダーの石川を先頭に門に近づく。どこの家庭でもあるようなインターフォンを石川は押してみる。

ピンポーン

………………

ピンポーン

返事はない。

ピンポーン

やはり返事はない。


43 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/25 23:43:11
「お邪魔しまーす。」石川は門を開けた。門はきいっと音を立てた。
玄関に近づき、ドアに手をかける抵抗なく開けられる。
(鍵をかけていないなんて無用心だなあ。)石川は玄関の扉を開けて呼びかける。
「こんにちは〜、安倍さーん、あいぼーん、おがわー、誰かいませんかー?」

………………

やはり返事はない。

「石川さん、留守のようですが、どうしますか?」石川の側にいた高橋が聞いてくる。
(まあ、ここまで来たんだし。それに、せっかく鍵も開いているし……。)
「そうね……。中で待たせてもらおうかな? お邪魔しまーす。」
ガチャと扉はスムースに開いた。扉を開けて右は二階への階段、正面には通路、そして左手前には扉がある。
石川はその左手前扉をあけた。
そこはどうやら居間らしい、かなり広くソファやTVなどがあった。
「とりあえずここで待ちましょう。」石川の言葉によってSALT5が戻ってくるまで一時解散となった。


44 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/26 22:30:47
解散となると同時に、この家に興味があった高橋は居間を離れる。
みると、新垣里沙も同じようにどこかへ行こうとしていた。
「一応人の家だから、あんまりいじっちゃだめよー。」という石川の声が後ろからかかった。
居間から出たところで新垣は玄関前の階段から2階にあがっていく。
「のぉのぉ、里沙ちゃん、どこに行くん?」
「んー、ちょっと。」と言うと新垣はトントンと階段を上がっていくが、途中で下を振り返った。
「もしかしたら、愛ちゃんにあとでいいもの見せてあげられるかもしれない。」
「…期待しないで待っとるよ。」
高橋は廊下の奥へと進んでいった。


45 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/26 22:33:05
新垣は2階に上がると廊下をすすみ奥のドアをあける。
どうやらそこは、夫婦の寝室らしく大人用のベッドが2つおいてあった。
(私の計算によれば、この奥は必ずっ!)
彼女は胸をときめかせながら、ベッドには目もくれず、奥のサッシを開けベランダに出る。

するとそこには楽園があった。
新垣の目の前に広がる色は空と海の青と、雲と波の白の二色。
(へー、海ってこんな透明なんだ!)
海をみれば底まで見え、目をこらせば魚も見える。
それは海といえば東京湾のすこし濁ったものと連想する彼女に衝撃を与えた。
そして、彼女はカモメの鳴き声をBGMにしばらくその楽園に浸った。



46 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/28 21:55:48
「あ、愛ちゃん呼んで来よう!」
新垣はこの楽園を共有したいと思う相手を思い出し、ベランダを出る。
部屋に戻り、さらに扉に向う途中に彼女の視界にどこかで見たことがあるモノが入った。
そのモノは、2つのベッドの間に挟まるように置いてあった。
(行く時は景色が気になって気付かなかったけど、これは…。)
それは自分が番組から貰ったのと同じナップザックだった。
(誰か忘れちゃったのかなあ? まこっちゃんかな?)
試しにそれを振ってみる。コロコロ。中に何か入っているようだ。
(どうしよっかなあ…。)
『一応人の家だから、あんまりいじっちゃだめよー。』
さっきの石川の言葉が頭に響く。しばし彼女の頭の中では、ハロプロのコントよろしく天使と悪魔が戦っていた。
(うーん、ちょっと覗くだけだし、いいかな。)
好奇心が勝ったらしく、片方のベッドに座り、ナップザックのチャックを開けた。


47 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/28 21:56:44
ピッ…シュッ

なにやら電子音と、何かが抜けた音がした。
(ん?)
中に入っていたのは、何かの機械とゴツゴツとして濃い緑色の金属製のものと……リング付きのピン。
(これってたしかしゅr……)

ドゥーン

2階から聞こえてきた爆発音に驚き、一番初めに寝室に来た高橋を待っていたのは楽園などではなく、
手榴弾によってもはや上半身がバラバラになった新垣里沙の姿だった。

                                        (7AIR→6AIR)



48 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/29 22:15:13
狩がなくなったら、狩狩の世話になろうと思ってます。

49 :名無し娘。:2003/08/29 23:43:41
狩狩で続けてくれるならこんなに嬉しいことはない

50 :名無し娘。:2003/08/29 23:44:18
sage忘れた・・・・マジスマソ・・・  _| ̄|○

51 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/29 23:49:49
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

11WATERの村田めぐみ、斉藤 瞳、柴田あゆみは、大谷雅恵のいる7AIRと交渉するため、倉庫へと歩いていた。
現在彼女らは、島の中央にある山(というより、せいぜい小高い丘だが)の東屋を右手に見つつ歩いているところだ。
ちなみに現在、右方向は切り立った崖であり、その展望台に行くには東側から回り込まなければいけないのだが。

「島の反対側だとやっぱり遠いね。しかも微妙に山道だし。」柴田がため息をつく。
「ちょっと遠回りでも、島の周りを歩いて行った方が良かったかな?」村田は地図を見ている。
「でもまあ、北回りにしろ南回りにしろ、誰かと遭遇する可能性が中央を突っ切るルートより高いしね。
 そこで平和的に通してくればいいんだけど、その遭遇したチームがもし戦う気になっていたら、
 武器の乏しい私達じゃ逃げ切れるかわからないからね。まあ、諦めてよ。」斉藤が2人をなだめる。
「武器かあ、銃ないのはきっついねー。2丁ある銃は、飯田さんと矢口さんがそれぞれ持ってるしなあ。」
柴田は羨ましがる。
「それはしょうがないでしょー。私達が持っていっちゃったら本部が何かという時に困るしね。クロスボウで我慢っと。
 ま、要は、銃なんていらないような展開になればいいのよ。」
斎藤は柴田をなだめた。


52 :名無し娘。:2003/08/29 23:52:00
いつも扱いヒドイから毎回ハロプロロワイヤルで期待してるキャラが死んだよ・・・

53 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 00:12:03
11WATERに支給された銃は2丁のデリンジャーであったが、1丁は矢口が持っていった。
もう1丁は、はじめは飯田は斎藤達に持たせようとしたが、「大丈夫。使い方もわからないし。」と理由で断ったのだった。
銃器こそ持ってこなかったものの、近接用武器はそれぞれ1つずつ持ってきている。
斎藤は「モーニングスター」。(これを手にした時、藤本に「メロン記念日なのに、モーニング?」とつっこまれた。)
村田は「ホーリィソード」という名前の西洋剣。(説明書には、「スターオーシャン3のフェイトの武器」らしい。)
柴田は「クロスボウ」。3人の唯一の飛び道具である。

その時3人の歩いていた50m程前を、少女がすーっと滑るように通って行った。
「あれは、たしか田中れいなだよね?」村田が聞き、斉藤は頷く。
柴田は、昼前の道重の首輪の爆発シーンを思い出し少し青くなった。
「どうする? 呼び止める?」「いや、いいでしょ。…それよりも。」斉藤は田中が出てきた方を指差す。
「あそこにほら穴があるわね。あの娘はあそこから出てきたんじゃない? どうする調べてみる?」
「……たしかにどうなってるか興味あるね。」「いいと思うけど、とりあえず本部に連絡しようよ。」2人は賛成する。
「そうだね。」斉藤はトランシーバーを取り出す。
「もしもし、こちらメロンですが、現在島の中央にてほら穴を見つけました。これからそこを調べてみます。どうぞ?」
「─wwヘ√レv…こちら、飯田…v〜…十分気をつけて…─wwヘ√レvv〜─」
「わかりました。(ガチャ)」


54 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 00:12:46
3人はほら穴の中に入った。高さは3mくらい、幅は3人並ぶと歩きにくいくらいの大きさである。
ただ、奥行きはそれほどでもなく7,8mくらいしかなかった。
「ん?」「どうしたの?」「あれを見て。」斉藤が懐中電灯で照らした先には、海外旅行などで使うトランクケースが置いてあった。
そして、トランクケースの表には紙が貼ってあり、「宝箱」と大きな字で書いてある。
「怪しい……。」柴田は訝しがる。
「うーん、でもおそらくは……」何の躊躇もなく、斉藤はトランクケースを開けた。
中は………………………カラだった。
「やっぱりね。おそらくあの子が、この中身を持って行ったんでしょう。」
「そうすると、この島のほかの場所にも同じのがあるのかもしれないね。」
「そうね。でもまあ、今はとりあえず、目的地に急ぎましょう。」3人は再び倉庫へ向った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


55 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 23:58:34
一方その頃、保田圭と亀井絵里は、商店に到着していた。
(さすがは、商店ね。いろんなものがある。)
商店には、食べ物をはじめ、鍋や箒まで売っていた。そこに店の人がいてもおかしくないラインナップである。
亀井は、ためしに食パンを手にとって製造年月日を見てみる。昨日作られたものだ。
食べ物は他にも、レトルトカレーやら、ポッキーやら、カップラーメンやら……。
「うーん、さすがにパソコンは売ってないみたいですね。」亀井は保田のところに向った。


56 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/08/31 23:59:57
店の奥の住居を探していた保田だが、亀井が来たときにはスーツケース
(これはメロンの3人がみつけたものと同じものだが、もちろん彼女らがそれを知るはずもない)
を前に腕を組んでいた。よく見ると、スーツケースはあけられていて、中には鞭がおいてある。
「これなんですか?」
「んー、ここにスーツケースが置いてあってさ、開けてみたら中身これなのよ。」
「へぇー。…中に一緒に紙が入ってますよ。」
亀井は、説明書を広げて見る。
「なになに…、『これは、ファイナルファンタジー7のキスティスの最強武器のセイブ・ザ・クイーンです。
 しかし特別な効果はなく普通の鞭なので普通にお使いください』だそうです。」
「これをどうしようっかなあと思ってさ。……とりあえず持って行こうかな。
 あとは、食料品ね。これから村役場までいかなきゃいけないから、重いもの持つと歩きにくいしなあ。」
「本部の人に取りに来てもらったらどうですか?」
「やっぱりそれしかないかあ。そうだね、とりあえず連絡しよう。」


57 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/01 23:48:51
「えーこちら、保田。本部聞こえますか、どうぞ。」
「─wwヘ√レv…こちら、本部の中澤です…v〜…聞こえてます、どうぞ…─wwヘ√レvv〜─」
「裕ちゃん、もう大丈夫?」
「─wwヘ√レv…まあ、あたしもいつまで落ち込んでられないからね。…─wwヘ√レvv〜─」
「うん。…………あ、現在、商店にいます。ここに結構食べ物があるんですけど、
 私たちは今から、パソコン探しに村役場の方へ行くので誰かしらここに取りに来て貰えると助かります。」
「─wwヘ√レv…わかりました。誰かしら行かせます。…─wwヘ√レvv〜─」
「じゃあ、よろしく。」ガチャ

「ふう、それじゃあ、村役場に向いましょうか。」
「はい。」

保田と亀井が外に出て村役場の方へしばらく歩いたとき、
何か機械を通したような感じの安倍の声が聞こえてきた。
「みんなー、聞こえてるー? 聞こえてたら山頂に集まってー。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


58 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/03 23:54:16
「みんなー、聞こえてるー? 聞こえてたら山頂に集まってー。」

現在、SALT5は島の中央部の小高い丘にいる。
丘の上は学校の体育館ぐらいの広さはあり、入り口は2つある。まずは、石の階段で大抵の人が使う北側と、
舗装されていない土の小道で裏道として使われている東南だ。
東と西は林になっていて木がたくさん生えている。そして、景色が広がっている南側に展望台はあるのだが、
(展望台といっても東屋にベンチが2台あるのみ。)
安倍は、一人でその展望台から拡声器で呼びかけている。
他の4人はいうと、松浦・加護、前田・小川と2組に分かれ、展望台より少し離れた木の影に隠れている。


59 :名無し娘。:2003/09/04 15:50:38
期待sage

60 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/05 00:07:41
前田有紀は、村役場でのやりとりを思い出していた。
前田と松浦が村役場に到着し、みんなで役場を引っかきまわして探し、ようやく拡声器をみつけた後、
安倍は宣言した。「なっち、これでみんなに呼びかけるんだ。」
「呼びかけてどうするんです?」前田は尋ねる。
「そりゃ、決まっているべさ。みんなで集まってここを脱出するんだ。」
「脱出するって…この首輪があるのにどうするんですか?」松浦が自分の首輪をさす。
「それは……、まだわからないけど、みんな集まればいい案が出てくるよ。」安倍はあっけらかんとしている。
「何度でも言います。危険だと思います。モーニング娘。だけならとにかく。」前田はあくまでも反対だ。
「やってみなければわからないと思う。もし、やってみて誰も来なければその時はその時に考るよ。」
「そういう問題じゃなくて、もし来た人がゲームに乗っている人だったらどうするかってことなんです。
 撃たれていっかんの終わりです。」
「乗っている人なんていないと思うよ。」
「はぁ……。とりあえず、呼びかけるなら私は少し離れたところで見ています。一緒には呼びかけはしませんよ。」
「安倍さん、悪いんですけど私も離れたところにいます。」松浦も慎重派だ。
「加護は……安倍さんと一緒に呼びかける。」「わ、私も。」加護と小川は安倍側につく。が、
「2人とも大丈夫。なっち1人で大丈夫だから。ね。」
安倍は2人にウインクしてみせた。


61 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/06 20:16:59
それは、安倍が5、6回目の呼びかけをした時のことだった。
「みんな集まれば……」

パーン

破裂音が前田の耳に入っていた。前田達が隠れている木の上に止まっていた鳥がぎゃあぎゃあ騒いで飛び立っていく。
安倍の方をふとみる。驚いているようだが無事のようだ。本気であてるつもりだったのか威嚇だったのか。
少し経つと安倍は気を取り直したようで、拡声器を再び手に持つ。

「み、みんな集まればきっとここから脱出できるべさー。」
その時、広場の北側に人影が見えた。あの薄手の衣装は……7AIR。
といっても全員ではなく、石川、稲葉、大谷の3人。
しかし、一緒に脱出しようという雰囲気は彼女達からは感じられなかった。
前田は何かイヤな予感がした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


62 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:14:46
東屋の前にいる安倍は、石川達を見つけると一瞬驚いた表情になったが、すぐ笑顔に戻った。

「あ、梨華ちゃーん。よく来てくれたよー。」拡声器を通した声があたりに響く。
「安倍さん。他の人たちは?」石川は普通に聞いたが、
「ごめーん、遠くてよく聞こえないんだ。近づいて貰っていいかなー。」安倍には声が届かないようだ。
石川は手でメガホンを作り、大声を張り上げる。
「安倍さんが近づいてくださーい。」
「わかったー。」安倍は拡声器を持って、石川のいる北側に近づいてくる。
やがて2人の距離は10m弱ぐらいに縮まったところで安倍は拡声器を地面に置いた。
「本当によくきてくれたよ。なっち、うれしい。」


63 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:21:09
新垣を埋葬した後、AIRは別荘を離れ丘に向っていた。その理由は島を見渡すことと、SALT5の探索だった。
ある程度近づくと安倍の呼びかける声が響いてきた。
新垣の死はAIRに深い悲しみとSALT5に対する疑念を生んだ。
手榴弾の罠は、SALTが意図的に置いておいたのではないのかということだ。
それで正直、石川は安倍の呼びかけは本当の呼びかけか、それとも罠か判断がつかなかった。
とりあえず、ミカに銃を空に向けて撃つよう頼んだ。
これは、もし安倍の呼びかけが本物だったら銃声にもめげずに呼びかけを続けるだろう。
しかし、もし誰かを誘い込むための罠だったら、作戦がバレていると思い、
SALT5が丘から立ち去るのではないかと思った。
結果は……呼びかけは続けられた。とりあえずは3人で安倍に話してみようということになった。

丘に来たとき、そこにいたのは安倍1人だった。
一応、大谷と稲葉は、安倍には向けていないものの利き手にシグ/ザウェルを握っている。
(他の4人はどこ? もしかして近づいた瞬間に攻撃するの?)
だから安倍にこっちに来てもらうよう要請した。もし罠なら何か理由をつけてこないはず。
しかし、安倍はいつもの調子で来て、拡声器を地面に置いた。ということは……いや判断するのはまだはやい。
彼女には聞きたいことがある。それは──


64 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:22:17
「安倍さん、新垣里沙が死にました。」石川は新垣のことをわざとフルネームで話した。
「ええっ、り、里沙ちゃんが? な、なして?」安倍は目を大きくして驚く。
その表情は演技とは思えなかった。しかし──
(単にその被害者が新垣で驚いているのかもしれない。)
「誰かしらの手榴弾の罠に嵌りました。」石川の中で疑惑は薄まることない。
「わ、罠? 誰の?」
「安倍さんはご存知ないですか?」
「いや、今はじめて聞いたよ。酷い人がいるなあ。なっち信じられない。」
(その酷い人はSALTの誰かなのよ。)
「やっぱり、一刻も早くここを脱出するべさ。」
「安倍さんは何か案があるんですか?」
「それは、まだだけど、みんなが集まればきっといい案が思いつくよー。」
(大したポジティブシンキングね。とりあえず他の4人を確認しないと。)
「まあ、いいでしょう。ところで、他の4人はどこですか?」
「……えっと、近くにいるよ。」
「呼んで下さい。」
「う、うん、いいけど、そっちの他の3人は?」
「そっちがでてきたらこっちも呼びます。」
「……わかった。」
といいつつ、やおら自分の背負っているナップザックを開け、中から何か取り出そうとした。
(あれ? 拡声器で呼べばいいのに……)と思ったその瞬間──


65 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/07 22:23:47
パーン

破裂音があたりの空気を刺激する。
左胸に穴が穿った安倍が──刑事ドラマのように──スローモーに後ろに倒れる。
それは、ほんの数秒のことかもしれない。しかし、石川には30秒にも1分にも感じられた。
倒れた安倍の右手には──トランシーバーが握られていた。
石川は驚き、銃声が聞こえてきた方向を振り返る。
そこには──シグ/ザウェルを持って立ちすくむ大谷がいた。

「ち、違う違うの。」

大谷は首を激しく振っていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


66 :名無し娘。:2003/09/09 00:52:30
なっち南無

67 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:43:18
石川が安倍に近づくように求め、安倍が近づくことにより、結果小川麻琴達がいるところから遠ざかり、
小川達には安倍と石川が何を喋っているのか全然聞こえなくなった。
ただ、途中で安倍が「ええっ、り、里沙ちゃんが? な、なして?」と驚いたのだけは聞こえた。
(里沙ちゃんがどうしたんだろう?)
しかしその他はほとんど聞こえなかった。また特に言い争いしている感じにも見えなかった。
しばらくその状態が続き、やがて安倍が自分のナップザックを空けて調べていると、

パーン

突然、銃声が響いた。安倍は後ろに倒れる。
「あ、安倍さん?」聞こえないのはわかっていたが、小川は安倍の名前を呼んだ。
「い、いきなり!?」隣を見ると前田は驚いていたが、「まこちゃん、ここで待っていて」
というと木の影を伝って石川達に近づきながらナップザックを開け、石川達に向かってデザートイーグルを撃つ。

パン


68 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:44:47
すいません、67のはじめに次の一行を入れてください

時は少し遡る──


69 :ゼロ ◆RO/PNu7I :2003/09/09 22:46:18
その銃声がまるでビデオの再生ボタンを押したかのように、
石川達3人は動き始め、銃声のした方向とは反対側の林に慌てて隠れ反撃する。

パン、パパン、パーン、パラララララ

何回かの銃声のやり取りがあった後、丘の北側の入り口からミカが現れ、前田を狙う。
(前田さんっ、ど、どうしよう?)
そんな小川の心を知ってか、小川から広場を挟んで反対側に林に隠れていた松浦が、
前田を狙うミカを牽制するように、デザートイーグルで援護し始めた。
(わ、私も援護しなくちゃ)
小川は慌ててデザートイーグルを取り出し、誰にも当たらないような方向へ向けて撃とうとするが、

カチッ、カチッ

(あ、あれ? どうして…? そうだ、安全装置!!)
小川は安全装置を外そうとするが、まさかこういう事態になるとは思っていなかったから、
どこをどうしたら安全装置が外れるのかわからず、あたふたしていた。


70 :名無し娘。:2003/09/10 04:18:50
更新乙。移動はいつするんですか?
個人的に不定期の少なめより定期の大量更新期待。

71 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/11(木) 21:00
そんな中でも、銃声は絶えずいろんな方向から響いてくる。
小川があたふたしていたが、そのうち広場の様子がおかしいのに気づいた。
見ると、広場全体が黒い煙で覆われている。小川がびっくりしていると、
「まこちゃん、今のうち逃げるよ。」
目の前には前田が戻ってきていた。良く見れば前田の左上腕の衣装が破れ、血がでている。
「前田さん、その怪我…」
「ああ、ちょっとしくじったよ。そんなことより早く。」前田は小川の手を引っ張る。
「は、はい。」
小川と前田は、黒々とした煙の中をつっきり、反対側の林に飛び込む。
反対側には、突然の煙の発生に驚いた松浦と加護がいたが、前田の「2人とも今のうちに逃げるよ。」という声に促されて、
東南の小道を下って“戦場”から脱出した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

72 :名無し娘。:2003/09/11(木) 22:46
初めて読んだけどすげぇ・・・引き込まれるわ
それにしてもバトロワの団体戦って初めてかも

73 :名無し娘。:2003/09/12(金) 13:01
>>11-12
たしかデリンジャーはリボルバーではなく、
さりとてマガジンがあるわけでもなく、
バレルに直接弾を込める形の銃だったかと。
しかも装弾数は二発。

、、、ピンチだ! 11WATER!!

74 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/13(土) 23:16
>70
移転しますた。大量更新については、その方向でいきたいと思います。
チーム単位で更新できればと。
定期については・・・、できればやりたいなあと。むむむ。

>72
ありがとうございます。

>73
ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!

武器に対してのつっこみ
キタヽ(^◇^〜)ノ (◇^〜ノ) ヽ(  )ノ (ヽ〜^◇) ヽ(〜^◇^)ノーーーーーー!!!!

ううう、銃器の知識がないものですみませんぬ。
えと、「次元が持っているようなリボルバーに6発弾を詰められる銃」のことです。
「うたばんスタッフが名前を間違えた。アヤカも勘違い。」と脳内フォローしてくださいまし。
よろしくおねがします。

75 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/14(日) 19:46
自分なりに落ち着いていた石川だったが、自分の後ろにいる人間の精神状態までは把握できていなかった。

丘にいたのが安倍一人だったことから、いや新垣のあの死に様を見たときから、
大谷の何かがおかしくなっていたのだろう。
冷静を装っていたが、いつ自分があのように殺されるかという恐怖に怯えていた。

そしてそれは、丘で石川が安倍と交渉しているときも、いつ横から他のSALTが、いやWATERやFOODまでもでてきて、
銃で大谷を蜂の巣にするか…、表には冷や汗としてぐらいにしか出ていなかったが、
精神的にリーチがかかっている状態だった。よって、石川と安倍の交渉にも耳に届いていなかった。
そんな中、安倍がナップザックを開け何かを探している様子が大谷の目に映る。

安倍が中からマシンガン取り出し、笑顔のまま大谷へ向けそのままトリガーをひく。

そんな光景が大谷の脳裏に焼きついた。
(死にたくないよ。しにたくない。シニタクナイ…。)
大谷はゆっくりとした動作で、安全装置をはずしてあるシグ/ザウェルを上げ、銃口を安倍に向ける。
ナップザックを探している安倍、そんな安倍を注目している石川と稲葉。大谷の異変に気付くものはいない。
大谷はゆっくりトリガーを弾いた。

76 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/14(日) 19:48
パーン

大谷はどこを狙ったわけでもなかった。むしろ狙っていたら外れていたかもしれない。
銃弾は安倍の左胸に吸い込まれた。安倍がビデオのスロー再生のように後ろに倒れる。
倒れた安倍の右手には──トランシーバーを持っていた。
(え? トランシーバー?)

石川が大谷の方に振り向いた。大谷がシグ/ザウェルを構えているのを知ると驚愕の表情を浮かべる。

「ち、違う違うの。」

大谷は首を激しく振った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

77 :73:2003/09/14(日) 22:03
更新乙です。
何かやる気を削ぐようなレス入れちゃってスマソ。
楽しみにしてるんで頑張ってください

78 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:16
ミカ・高橋・里田の3人は、丘の北の入り口の階段のところで待機していた。
もし上にいる3人に何かあったら、階段の3人で救助したり、最悪でも3人だけでも残るという石川の配慮からだ。

その中で、ミカは階段の上のほうで丘の様子を伺っていた。
「ミカさーん、上の様子どうですか?」下にいる高橋が聞いてくる。
「うーん、安倍サンと石川サンが何か話しているよ。内容まではちょっとわからないけど…。」
その時、安倍が何かナップザックの中を探しはじめた。その途中で──

パーン

突然、銃声が響いた。安倍は何かを片手にばったりと倒れる。
石川が後ろを向き、驚愕の表情を浮かべている。後ろからなので撃ったのが稲葉なのか大谷なのかわからない。
3人とも、いやミカさえも動けないでいた。しかし、

パン

79 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:18
ミカから向って右側の林から銃声が聞こえてきた。その音に弾かれるように広場の3人は反対側の林へと姿を隠す。
(はっきりとは見えなかったけど、体型からするとあれは前田サン…。)
「な、何があったんですか?」今度は里田が怯えながら聞いてくる。「うん、大丈夫、とりあえずは…。」
(まさか、安倍サンが撃たれたなんて言えない…。)そうこうしているうちに右側の林と左側の林で銃撃戦が始まった。

パン、パパン、パーン

「アイ! マイ! 危ないからちょっとここで待っててね。」「は、はい。」「わかりました…。」
(サポートしなくては…。)
ミカは1人、シグ/ザウェルを取り出し、安全装置を外し階段の最上段から伏せながら前田を狙う。
(まさか、本気で使うことになるとは…。)
ミカは、前田を牽制することによってしばらく石川達をサポートしていたが──

キュン

80 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/15(月) 20:19
ミカの頭上を銃弾が通り過ぎていく、被っていた帽子が後ろに飛ばされた。
シグ/ザウェルを握っている手が汗ばんだ。仕方なく、銃弾が飛んできたほうに応戦する。
その状態がどれくらい続いただろうか、ふと小さなボールのようなものがミカの横を通り過ぎ、広場に落ちた。
それは落ちると、真っ黒な煙を吐き出した。ミカが驚いて右後方を見ると──

里田が2個目の煙玉を投げるところだった。2個目、3個目──
そこで広場は煙で覆われた。トランシーバーでは聞こえないだろうと判断したミカは、
銃声がまだ聞こえていたが、危険を承知で石川達に近づく。
見ると、石川達もこっちに来るところだった。先頭の石川はミカを見ると安心し、ほっとした表情になった。

「まだ、油断はいけません。早いところ逃げましょう。」
7AIRはミカを先頭に北の階段から“戦場”を脱出した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

81 :名無し娘。:2003/09/15(月) 21:29
更新乙です     ドキドキしっぱなしです

82 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:49
診療所にいた辻希美は、安倍の声を聞くといてもたってもいられず、矢口の静止を振り切って丘に向った。
(安倍さん……。)
安倍は、辻にとってモーニング娘。内での「お姉さん」ともいえる存在だった。
ミニモニがまだ結成される前の、4期の他のメンバーがプッチやたんぽぽに配属され活躍し、
それを横目に一人いじけていて、レッスンにも身が入らず先生に怒られてばかりだった辻に優しくしてくれたのが、
どこのユニットにも属していなかった安倍だった。

ある時、安倍は気晴らしにとパスタ屋に辻を連れて行った。
「ここ、あんまり有名じゃないけど、おいしんだー。」
そして、辻が何も喋らずカルボナーラを食べていると、
「ねえ、のの。たとえ今、あんまり活躍できなくても、のののこと見てくれている人は必ずいるからさ、
 一緒に頑張るべさ。」
とたらこスパののりが歯についた顔でニッコリ微笑んでくれた。
その言葉を胸に、再びレッスンに真面目に取り組み、矢口がそれを見ていたかどうかはわからないが、
後にミニモニ。で辻は大活躍するようになる。

83 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:50
辻が急いでいると、目指す丘から銃声が1発聞こえてきた。
しばらくして、今度は銃声が何発も響いてくる。
それでも丘へ向おうとした辻だったが、強い力で後ろから引っ張られ前に進めない。
「ダメだよ、のの。危ないよ。」
辻が振り返ると心配そうな顔をした吉澤がいた。
「で、でも、安倍さんが……。」
「うん、言いたい事はわかるよ。だから」ここで吉澤は辻の前に出る。
「吉澤が前に出るよ。ののは後ろから着いてきて。」
「う、うん。わかった。」辻は頷く。

デーモンスピアを構えた吉澤が慎重に前を行き、剣を持った辻が後から続く。
(盾は診療所に置いてきてしまった。)
銃声はしばらくは響いていたが、そのうちしなくなった。
やがて、2人は丘の方向から降りてくる4人の人影を発見する。
咄嗟に隠れた2人だったが、4人のうち1人が辻にとって親友だったので、姿を現し彼女の元へと駆けていく。

84 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:50
「あいぼーん!!」
「の、のの…。」

加護は辻の姿を見るとポロポロと泣き出した。
加護が泣き出したこと、前田が左腕を負傷していたこと、そして安倍がそこにいはいないこと。
これらによって安倍がどうなったかなんとなく辻にはわかってしまった。わかりたくはなかったが。

───────────────────────────────────────────────────────────

85 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/17(水) 22:51
>77
いえいえ、お気になさらずに。

>81
ありがとうございます。

86 :名無し娘。:2003/09/17(水) 23:14
更新乙。

87 :名無し娘。:2003/09/18(木) 06:07
安倍が早くも脱落か・・・・先が全く読めない

88 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/20(土) 21:53
矢口真里は、松浦の話を聞き終わると「はぁー」とため息をもらした。
「まさか、石川達が何で安倍さんを……。おいら信じられないよ。」

矢口、松浦、小川、前田は、前田の左腕の応急処置をするために診療所に来ていた。
今は、矢口が丘での出来事を松浦から聞いるところだった。隣の部屋では小川が前田の怪我の応急処置をしている。
「信じられないかもしれませんがこれが真実です。ですから、AIRに会ったら注意してください。」
「う〜ん、とりあえず心に留めておくよ。」

「戻りました。」玄関の方で吉澤の声がする。「おかえり。」矢口は迎えにいった。
吉澤、辻、加護の3人は丘の様子を見に行っていのだ。
「ひぐっひぐっ。おやびーん。なっちさんがー、うぇーん。」
最初に入ってきた辻は、矢口の元に駆け寄り大声でなく。
次に入ってきた加護は、顔を真っ赤にし、今にも泣きそうだった。
最後に入ってきた吉澤は、いつもの陽気さは微塵も見せずに落ち込んでいるようだった。
そして、その吉澤の背中には安倍が──もう冷たくなっていたが──背負われていた。
「野ざらしのままじゃしのびなくて…。」
吉澤は診療所のベッドに安倍を寝かせる。
矢口が観察してみると胸に銃創があり、そこから出る血で衣装は真っ赤だったが、他は怪我もなく綺麗だった。
顔もこころなしか笑っているように見える。

89 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/20(土) 21:53
「最後まで笑顔か…。なっちさんらしいな。」矢口は呟いた。
「ええ、私が見つけた時から笑顔でした。」吉澤が後に続く。

「あ、あの。矢口さん。」
「ん? どうしたあいぼん?」
「安倍さんの手が前で組まれてたんですよ。あと、帽子と拡声器が近くにありませんでした。」
「手が組まれていたのって最初からじゃないの?」
「松浦達が立ち去る時は煙でよく見えなかったのでわからなかったです。
 あと、帽子は……風で飛ばされたのかもしれませんね。拡声器は……AIRが持っていったのでしょう。」
松浦が割り込む。
「あの……、風はほとんど吹いていなかったような気がしますが……。」
「たしかに、そういう気もするね。」
治療の終わったらしい小川が前田とともに戻ってきた。

(拡声器を持っていったのはAIRじゃない気がする…)
矢口は何故かそう思った。

───────────────────────────────────────────────────────────

90 :名無し娘。:2003/09/21(日) 00:54
ヤグの「安倍さん」・「なっちさん」は、違和感が…

91 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 11:24
>>90
ΣΣ(゚Д゚;)
こちらの調査不足です。すみませぬ。
調べてこよう。

92 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 11:35
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Piano/9409/kosyou3.html

そうか、「なっち」もしくは「なっつぁん」なのか。
えと88-89は死に動揺してたということでお願いします。

93 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:38
安倍の呼びかけに亀井が出て行きそうになったが、保田圭はそれを制した。
「まあ、そう焦らないで。」
保田の脳裏に浮かんだのは、矢口から借りたDVD「バトルロワイヤル」。
そこでは、今の安倍と同じように説得にあたった生徒2人が、ゲームに乗った生徒に銃殺されるシーンがある。
保田はそれを思い出したのだ。
そんな保田に浮かんだシーンをなぞるように、丘の方角から銃撃戦が聞こえてきた。
「保田さん、これは?」亀井が不安そうに聞いてくる。
「おそらく、あまりよくない事態のようね。」眉を顰め、保田は正直に答える。

数分後、銃声がやんだ。気のせいか、丘の方が煙っている気もする。
やがて丘の方角何かに追われるように6人の人物が逃げてきた。
「あれは、石川? ということは7AIR…。」
(おそらくは、あの銃撃戦に関係があるのは疑いもないわね。さて……。)
「亀井」
「はい?」
「私、ちょっと話を聞いてくる。大丈夫だと思うけど、万が一の場合は集会所に逃げて。
 場所はわかるわね?」
「え? それって…」
いまいち保田の発言の意図がわかっていない亀井を置いていき、保田はAIRに近づく。

94 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:38
「石川!」保田が呼びかけると、石川はビクッとなり、慌ててシグ/ザウェルを構える。
「そんな物騒なものしまいなさいよ。久しぶりね。とはいっても、実際にはそんなには経ってはないけど、ね。」
石川は銃を下げると少し安心したような表情になった。「保田さん……。」
「……新垣は? あと、丘から銃声が聞こえたけど?」

それから石川は保田に今までのことを話した。途中でミカなり、稲葉にフォローしてもらいながら。
ふと、保田は大谷の様子がおかしいことに気付く。寒くもないのに震えているようだ。
だがしかし、今は石川の話を聞いていた。

「というとあのなっつぁんの呼びかけは罠だった。ということね?」
「ええ、他のメンバーが周りの木に隠れていて、近づいたらいきなり撃ってきました。」
「……。」
(自分達のいたところに罠を張り新垣を殺し、しかも呼びかけまでもが罠……。
 なっつぁんがそんなことをするとは思えないけど、他のメンバーが勝手にしたのかもしれないわね。
 嘘か本当か即断は禁物か。)

95 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/21(日) 21:39
「ですから、保田さんもSALTには気をつけてくださいね。」
「ああ、気をつけるわ。石川達はどうするの?」
「とりあえず倉庫に戻ろうと思います。保田さんは?」
「ちょっと村役場に……。じゃあ、また。」
「あ、保田さん、待ってください。」去ろうとする保田に石川は声をかける。
「何?」
「あの…、道重ちゃんは本当に殺されちゃったんですか?」
「!! え、ええ。でも何で石川が知っているの?」
「えっと、倉庫にTVがあって、映されて、ま、した…」
怒気を帯び始めた保田に圧倒され石川の語尾が弱くなる。
「……。」
「えと、で、では。」石川は逃げるようにその場を去った。
(みせしめ、というわけね。)保田は集会所での出来事を思い出し、なんともやりきれない思いになった。

───────────────────────────────────────────────────────────

96 :名無し娘。:2003/09/22(月) 06:25
色んな思惑が交差してるなぁ・・・・

97 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:02
時はまたしても少し戻る──

里田の投げた煙玉で、丘から退却したSALTとAIR。丘には、1人の人物が残されたのみだった。
もしそこに誰かが残っていたら、顔の辺りが少し動いているのがわかっただろう。

そう、大谷に撃たれた安倍なつみだったが、実は即死ではなかったのだ。
とはいうものの、彼女の命の灯火は残りわずかだった。
そして安倍は泣いていた。

それは、大谷に撃たれたから? SALTが自分の安否を確認せずさっさと退却してしまったから?
それとも、確実に迫りつつある死の影に怯えて?
たしかに迫りつつある死に恐怖がなかったといえば嘘だろう。
しかし彼女が泣いていた1番の理由は、自分の力不足で、SALTとAIRが争うことになってしまったからだ。
(やぱりはじめから5人で呼びかければよかったのかな?)
その時、近くに人の気配を感じた。
「だ、誰かいる、の?」安倍は搾り出すように声を出した。人が近づいてくる気配がある。
その人物は安倍の目の前に来た。らしい。残念ながら安倍の視界は出血多量のため、ほとんどないに等しかった。

98 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:03
「…………………」目の前の人物が何か喋ったようだ。だが、
「……ごめん、ね。もう、ほとんど、何も、聞こえ、ないし、何も、見え、ないの。」
安倍の手が、誰かの手に握られるのを感じた。(よかった。まだ触覚はあるみたいべさ。)
「圭織に、伝えて、欲しい、ことが、あるの。頼まれて、もらえる、かな? よかったら、手を、握って。」
再び手を強く握られる感触があった。
「あのね、…………」安倍は最後の力を振り絞って目の前の人物に自分の伝えたいことを伝えた。

数分後、安倍の最期を看取った人物は、心にしっかりとメッセージを刻み込み、安倍の手を組ませると、
安倍の形見にと、帽子と拡声器を持ち、ローラーシューズを再び履き、北側から丘を出て行った。

───────────────────────────────────────────────────────────

99 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:16
怒りを滾らせる保田から逃げるように立ち去った7AIR。
彼女らが倉庫に戻ると、そこにはとある3人の人物が待っていた。

「大谷さん、あれは斉藤さん達ですよ!」
里田まいは、さっきから下を向いている大谷に説明する。大谷はハッとして、顔を上げる。
(WATERが何の用かな?)
向こうもこっちに気付いたようだ。手を振って斉藤が微笑んだが、どこか不自然な笑顔だった。
「あら、メロンの皆さん、どうしたの?」石川が聞く。
「ん? ちょっとね。ところで……。」斉藤は一息つく。彼女は真顔になる。
「さっき、飯田さんから島の中央の丘であなたたちとSALTの間でいざこざが……
 というよりあなたたちが安倍さんを撃ったと聞いたんだけど、それは本当?」
横では村田が斉藤の衣装のひじの部分を引っ張っている。「ちょっと、そんなはっきりと……。」

「ああああああああああああああああああああっ!!」突然の叫び声に稲葉は驚く。
見ると大谷が首を激しく横に振っていた。
「ちがうのちがうのちがうのちがうのちがうのちがうの……。」
「大谷さん、落ち着いて。大丈夫だから。」何が大丈夫かわからなかったが里田は大谷を落ち着かせようとした。
「ううっ、ううっ。グスッ…。」大谷は泣き始めていた。

100 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/23(火) 17:17
とここで石川がそんな大谷を隠すように前に出る。
「ええ、それは本当よ。でもね、先にうちの新垣がSALTの卑怯な罠で殺されているの。
 しかも、丘の件だって罠だったのよ。安倍さん以外のメンバーはみんな銃を持って隠れていたし。
 だから、本当に悪いのはSALT。むしろ私たちは被害者ってわけ。帰って飯田さんにそう伝えて。」
しばらく斉藤と石川は喋ることなく互いに凝視していた。
斉藤は石川の発言の真偽を推し量り、石川は自分の言葉が本当であることを主張しているようだった。
30秒ほどその状態が続いただろうか、斉藤が少し表情を緩めた。
「なるほどね。わかった。とりあえず伝えとくよ。」
斉藤はそういうと、東の方に歩いていく。
その後に村田と柴田が大谷を心配そうに見ながら斉藤の後に続いていった。

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