■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50
とくばん〜HPシャッフルサバイバルSP〜
- 1 :ゼロ ◆5eqMCHlE :2003/08/04 22:42:31
- このスレは、2003年のシャッフルユニット+αでのバトロワ風サバイバルゲーム小説のスレです。
残酷なシーンとか出てきますので、そういうの嫌いな方は見ないほうがいいです。
それでもいいという方がいれば──
少しの間、私の拙い小説にお付き合いください。
- 101 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/25(木) 23:12
- 学校への帰り道。柴田あゆみはさっきの大谷の態度について考えていた。
しかし、どうしても悪いことばかりにしか結びつかない。
他の2人も同じ事を考えているのか、さっきから3人の間にはなんとなく重い空気が漂っていた。
そんな時、斉藤が口を開いた。
「理由はわからないけど、実際に安倍さんを撃ったのはマサオのようね。」
それの言葉に対し、隣で村田が息を飲むのがわかる。
「でも…、なんで?」柴田は理由を尋ねた。
「直接の理由はわからない。けれど、先に新垣ちゃんが罠によって殺されたのが何かしらの理由には違いないわね。
あの狼狽ぶりからすると、殺すつもりはなかったのじゃないかしら? まあこれは私の希望込みでの話だけど。」
「マサオ大丈夫かなあ?」村田が心配そうに聞く。
「たしかに心配だけど、マサオのことは今はAIRに任せておくしかないね。
……私が心配なのは、AIRは新垣ちゃんをSALTに殺され、SALTは安倍さんをAIRに殺された。
つまり、この2チームに因果関係が生まれてしまったこと。
一度産まれた憎しみは……なかなか消えないでしょうね。
一緒に脱出に協力しようと思っても、お互いに嫌がるでしょうし。
だから早いところ戻ってみんなで対策を考えようと思ってるの。急ごう。」
3人は歩みを速めるのだった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 102 :名無し娘。:2003/09/26(金) 23:44
- まだ2人か・・・
- 103 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/27(土) 00:40
- 一方、石川達と別れた亀井絵里と保田は村役場に到着していた。
そこで2人はパソコンを探す。探している途中で亀井はあることに気付いた。
「保田さん、さっきまで誰かがいたみたいですねー。しかも何か探していたみたいですよー。」
「うん、私もそう思ってたんだ。あ、あった。亀井ぃー、あったよー。」
亀井がかけよると、上に「経理課」と札のかかった一角にたしかに割と新しめのパソコンはあった。
よく見ていると電話線が繋がっている。
「意外と新しいわね…。最近導入したのかしら?」
「それで、インターネットはできそうですか?」
「電話線は繋がっているようだけど、まだわからないわね。とりあえず立ち上げて見るか。」というと保田はパソコンの電源を入れた。
パソコンは「ピコ」と音を立てて、HDが起動する音がする。
やがて、画面に「Windows 2000」の文字が浮かび上がった。
「……2000(ニセン)か……」保田がつぶやいた。
数十秒後、画面は亀井にもどこかで見たことのあるデスクトップの画面になった。
保田は、デスクトップにあるIEのショートカットをダブルクリックする。
IEの画面が広がり、電話線で繋げるか聞いてくる。保田は「接続」のボタンを押した。
ぴーぴろろろろ…
- 104 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/09/27(土) 00:41
- パソコンの後ろあたりから電子音が聞こえた。画面には「接続中」という文字が出ている。
やがて、モデムから電子音がしなくなった。画面には「接続失敗しました。」という文字が出ている。
「んー、やっぱりね。」保田は机に肘を、顎を手にのせた。
「どういうことですか?」
「集会所でも商店でも、ちゃんと電話線は繋がっているのに電話がどこにも通じなかったじゃない?」
「ええ」
「多分、島からの電話をまとめているところでどこにも繋がらないように制御されているのね。
もしかしたらと思ったんだけど……だめだったか。モバイルじゃないとどうしようもないなあ。はぁー。」
「でも、何かしらやってみることは絶対に無駄じゃないと思います。」
「あ、ありがとう。」保田はびっくりしたようだ。
「な、生意気言ってすみません。」亀井はちょっと後悔した。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 105 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:29
- 矢口達WATERの3人と安倍を埋葬したSALTの4人は再び別荘に戻ってきていた。
最初は4人とも居間にいたのだが、小川は「お茶入れてきます。」と小川なりに気をつかい台所に行き、
前田は、「ちょっと2階に行ってくるよ。」と2階にいってしまった。
現在、居間にいるのは松浦亜弥、加護の2人。2人は何も喋らずぼっーっとしている。
「松浦さん、松浦さん。」小声で松浦を呼ぶ声がする。見ると居間の入り口のところで前田が手招きをしている。
松浦はすっと立ち上がると、居間の入り口から玄関のところへ出た。
すると前田が、「ちょっと話があるの。こっちに来て。」と階段を登る。
松浦は後に続いた。2人は階段上がった廊下の奥の部屋に入った。
そこは居住者の夫婦用の寝室らしくベッドが2つあった。奥はベランダになっていて海が見渡せるようだ。
部屋に入った時に、少し部屋が火薬臭いのに松浦は気付いていた。
そしてまたベランダ側のベッドの上に、赤と黒の絵の具を混ぜたような色の模様が飛び散っていた。
(これは…、血?)
「松浦さん、あなたに話さなくてはいけないことがある。」前田は真剣に語り始める。
「あれはみんなで物置を探した時に、私はここの物置で何か変わった機械をみつけたんだ。」
- 106 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:30
- 松浦はふと、物置からいろいろ発見したときに前田がとっさに何か隠したのを思い出した。
「一人になったとき説明書を読むと、それは『光学感知式トラップ』というものだった。
手榴弾と合わせて使うと書いてあったんだ。例として箱にこれと手榴弾を組み合わせて、
箱を開けたら手榴弾が爆発する仕掛けが作れると。私は試しに作ってみたくなったの。
ところがいい箱がこの家にはみつからなかった。だから支給されたナップザックを使ったわ。
作ったのはいいんだけど、持って歩くのは危ないし、とりあえずこの家に置いておく事にしたのよ。
間違って誰か空けるといけないから、2階の目立たないところに置いたつもりだったけど…、
甘かったみたい。誰かがここで開けちゃったんだろうね。ああっ、もっと目立たないところに置いておけば…。
そしてこれを開けたのはおそらくAIRね。それでたぶん、安倍さんのことが信じられなくて撃っちゃったんだと思う。」
前田はそこまで語ると視線を下に落とした。
(なるほど、それでAIRがあんまり友好的ではなかったいうわけね。でも、安倍さん撃つのはやりすぎ思うけど。
前田さん、故意はなかったいうとるけどホンマかな? その辺はようわからへんけどとりあえずは置いておくとしよか。)
- 107 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/01(水) 23:31
- 「前田さん、顔を上げてください。それは事故だったんですよ。
それよりも敵意のない安倍さんを殺してしまうAIRがひどいと思います。」
「ありがとう。」前田はほっとしたようだ。
「それよりもこのこと、下の子らに言いますか?」
「やがては言わなくてはいけないだろうけど、あの子らも今は安倍さんのことでショック受けているから後にしようと思っているわ。」
「それがいいでしょうね。それで、これからなんですけど……WATERのいる学校に行きませんか?」
「え? どうして?」
「私たちって4人になっちゃったじゃないですか。しかも戦えるメンバーは私と前田さんしかいない。
これでは、もしAIRがやけになって私たちを本気で壊滅させようとしたら、私たちは大した抵抗ができないと思います。
そこでWATERと同盟を組むというのはどうでしょうか? そうすれば、11+4で15人になります。
これでAIRに十分立ち向かえるでしょう。」
「なるほど…、たしかに今のままじゃ心配ね。でも、私、WATERとあんまり面識ある人がいないけど?」
「それなら心配ないです。私はミキスケ…藤本さんと、加護ちゃんは辻ちゃんと、まこっちゃんはあさ美ちゃんと仲がいいです。
そしてなにより…」
ここまでまくしたて、松浦は息を整えるために一息置いた。
「安倍さんが、AIRに殺されたとなればリーダーの飯田さんが黙っていないでしょう。」
───────────────────────────────────────────────────────────
- 108 :名無し娘。:2003/10/02(木) 00:38
- すげぇ展開だな。更新乙。期待してます。
- 109 :名無し娘。:2003/10/02(木) 00:53
- AIRは?AIRはどうなるんだろう・・・
- 110 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/04(土) 22:12
- そのころ倉庫に戻ってきたAIRは休憩を取っていた。
稲葉貴子は麦茶を飲むと、あたりを見渡す。倉庫の隅で頭から毛布にくるまってじっとしているのが大谷、
その姿に向かって何か声をかけているのが里田。
部屋の入り口で鞘に入れた日本刀をぷらぷらさせながら、虚空をみつめているのがミカ。
石川と高橋は外で見張りをしている。
稲葉は考えていた。
(チーム同士の殺し合いというバカらしいこのゲームだけど、大谷が安倍さんを撃ってしまったことによって、
円満に脱出というわけにいかなくなってしまったわね。とりあえずSALTがこのまま黙って引き下がるとは思えない。
しかしリーダーを失ったあのチームでイニシアティブを取れるといったら、前田か松浦──どっちにしてもリーダーとしては微妙。
まあ、これはうちのチームにもいえること。
FOODの中澤さんは元モー娘。のリーダー。そしてWATERの飯田さんは現モー娘。のリーダー。
この2チームに比べるとうちの石川は、将来はともかく現時点としては頼りにならない。
石川は別荘の件についても、丘の件についても、どちらもSALTの罠と信じて疑ってないしなあ。
本当に罠だったら、あんな2階の入るか入らないかわからないところに置いておく?
丘の件についても、安倍さんを撃ってしまったから反撃してきたわけで最初からその気ではなかったかもしれない。
2つの件についても私が違うと言ってみたけど、全然聞く様子がなかった。
逆に『稲葉さん、SALTを庇うの?』とまで言われてしまった。まあ、たしかに私はこのメンバーでは浮いているけど…)
- 111 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/04(土) 22:12
- 近くで物音がした。ミカが倉庫の扉から外に出たようだ。
(リーダーがこれでは生き残るのは難しいわね。最年長の私に代わってくれとはいわないけど、
せめてミニモニの現リーダーのミカあたりと変わってくれれば、こっちの意見も聞いてくれそうなんだけど…。)
稲葉は誰かのすすり泣く声に気づく。見ると毛布をかぶった大谷の体が揺れている。側では里田が慌てて何かフォローしている。
(どうやら、何か余計なことを言っちゃったみたいね。ああいう状態の時は、一人にさせておくのが一番なのに。
…このチームはもうダメね。)
───────────────────────────────────────────────────────────
- 112 :名無し娘。:2003/10/04(土) 22:44
- もうダメって稲葉さん・・・
- 113 :名無し娘。:2003/10/05(日) 10:29
- 稲葉が物語を動かすのかな・・・先が楽しみ
- 114 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/06(月) 00:10
- WATERのいる学校──
ここは、島、唯一の学校であり、小学校と中学校を兼ねている。学校の校門をくぐると、小さな昇降口がある。
ここには今、藤本とアヤカが教室から持ち出した椅子に座りながら、見張りの当番をしている。
──見張りといっても、そんなに警戒はしておらず、雑談などしているのだが──
2人の隣には見張り当番ではないが、吉澤がいて2人の会話に加わっている。
その昇降口から学校に上がると廊下にぶつかる。
廊下の右手には各教室が続いており、また左手には手前から保健室、職員室、校長室となっている。
保健室は、先ほどの怪我をした紺野あさ美が寝かされており、
矢口達が診療所から持ってきた救急用具であさみ(カントリー)が手当てをしており、側で辻が心配そうに見ている。
(ちなみにスタッフが持ち去ったのか、保健室にあるはずの治療道具は全部なくなっていた。)
- 115 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/06(月) 00:11
- そして職員室では、メロンの3人の報告を飯田圭織と矢口が聞いていた。
「というわけで、AIRとSALTの両方に因縁が生まれてしまったというあまり良くない状況のようです。」
斉藤がそう言って報告をしめた。
「報告ありがとう。教室でゆっくり休んでいて。」
飯田は瞑っていた目を開いた。矢口たちの報告を聞いた時よりは落ち着いて聞くことができた。
メロンの報告の1時間ほど前に矢口から、安倍の死を聞かされたときは、飯田は頭に血が上り、
「今すぐAIRのところに行く!」と強引に出て行こうとし、他のメンバーに説得されなんとか留まった経緯があった。
メロンの3人が職員室を出て行く。
「新垣が……。」矢口は肩を落としている。
(新垣のことには何も触れず、突然AIRがなっちを撃ったというSALTと、
SALTが新垣を罠に嵌めて殺し、丘でも再び協力するよう呼びかけを使って罠をはり、結果なっちを撃ってしまったというAIRか…。
本当のところはわからないわね。どうしたらいいのかなあ?)
飯田は職員室から窓の外を見た。小さな運動場が見える。
空は、夕方というには少し早いが太陽が大分西の方に来ていた。
(ねえ、本当はどうだったの? なっち。)
───────────────────────────────────────────────────────────
- 116 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/07(火) 23:23
- 集会所──
後藤、中澤、そしてみうなは、保田からの連絡のあと商店に食料品を取りに行っていた。
現在、FOODは6人。他は単独の田中、パソコンを探している保田と亀井である。
つまり、残る全員で食料品を取りに行ったことになる。
まだそんなに警戒をしなくてもよかったのだが、(実際は丘の事件もありそうでもなかったりするが)
やはり1人にするのは問題があるという理由からだ。
持って帰ってきたのは、人参、玉ねぎなど野菜、牛ひき肉、カレー粉、お米など。
つまり、カレーを作ろうというわけである。カレー用の鍋も商店にあった。
皿は、もともと集会所にあるものを使う予定だ。
その時、FOODのトランシーバーから呼び出し音がなる。
「はい。こちら中澤です。」
「─wwヘ√レv…こちら、保田です…v〜…役場でパソコンを見つけました…─wwヘ√レvv〜─」
「あ、ホンマ? で、どうだった?」
「─wwヘ√レv…回線がつながらずダメでした…─wwヘ√レvv〜─」
「……そう。」
「─wwヘ√レv…あと、一つ報告することがあります…─wwヘ√レvv〜─」
「何?」
「─wwヘ√レv…………帰ってから報告します…─wwヘ√レvv〜─」
「あ、うん。気ぃつけて。」
「─wwヘ√レv…はい…─wwヘ√レvv〜─」ガチャ
- 117 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/07(火) 23:23
- 「報告って何かなあ?」後藤が呟く。
「うーん、ここで報告しないところをみると重要な事じゃないのかしら。」中澤はトランシーバーみつめている。
「あと、田中さんに連絡とってみませんか?」今度はみうなだ。
「それもそうね。」中澤は再びトランシーバーを持った。
「もしもし、中澤だけど、田中聞こえる?」
「─wwヘ√レv………………─wwヘ√レvv〜─」
「もしもーし、田中さーんいましたら返事してくださーい。」
「─wwヘ√レv…田中です…─wwヘ√レvv〜─」
「あのー、いつごろ戻られますか?」
「─wwヘ√レv…もうちょっと…─wwヘ√レvv〜─」
「夕食作りますけど食べますか?」
「─wwヘ√レv…はい…─wwヘ√レvv〜─」
「わかりました。」ガチャ
中澤は「あー、あの世代の考えはわからんわ。」と愚痴ると2人に向き直り、
「とりあえず、圭ちゃんと亀井を待ちましょう。」と2人の帰りを待つのだった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 118 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:33
- SALT TEAM'S PHASE──
加護達SALTが学校に到着すると、見張りの藤本とアヤカが無線で飯田と連絡をとり、職員室に来るように言われた。
昇降口から上がる時に藤本に「紺野ちゃん、ちょっと怪我しちゃって今、保健室にいるんだ。よかったら顔を出して行ってよ。」
の言葉に驚いた加護と小川は、前田と松浦の許可をもらいすぐに保健室に向った。
(前田と松浦にしては、飯田への交渉時にはこの2人がいないほうがよかったので問題なかったのだが)
包帯でぐるぐる巻きにされてうなされている紺野を想像し、加護は保健室のドアをあけた。
「こんちゃん、大丈夫!?」
ドアを開けた2人が見たものは、アイスクリームを頬張る辻と紺野の姿だった。
「あ、まこっちゃん。」「あれ、あいぼんどうしたの?」
(なんや、心配して損したわ。)
- 119 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:34
- 数分後、加護と小川もアイスクリームを貰って頬張っていた。近くの民家にあったものらしい。
「勝手に食べていいのかな?」小川が心配する。
「いらなかったら、つぃが食べてあげるよん。」辻が小川のアイスに手を伸ばす。
「あげません。」小川が慌てて口に含む。
「でも、こんちゃんが苦しんだりしているわけじゃないんで安心した。」これは加護の正直な感想だ。
「うん、怪我自体は大したことはなかったんです。どちらかというと銃に撃たれたショックの方が大きかったです。」
紺野はにっこり微笑む。
「ところで、あいぼん達は何をしに来たの?」
「それがなあ、同盟だって。次にAIRが狙うのが加護達だって前田さんが言ってたから、WATERに守ってもらうって言ってた。」
「じゃあ、のの達はあいぼん達と一緒に行動できるの?」辻はきらきらと目を輝かせる。
「ま、そういうことになるかな。」加護が答える。と、そのとき。
「出てって!!」
大きな声が隣の部屋から聞こえてきた。どうやら飯田の声である。
(なんや、なんや? 何があったんや?)
- 120 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/10(金) 23:35
- 「わたしも随分甘くみられたものね。さあ、帰って!」飯田の声が続けて聞こえてくる。
隣のドアが乱暴に開けられる音がした。足音が聞こえてくる。
(こりゃあかんわ。せっかくののと一緒になれるおもうてたのに…。)
保健室のドアが開けられた。「加護ちゃん、まこっちゃん。帰るよ。」松浦が呼びかける。
「え? 一緒に行動するんじゃなかったんですか?」小川が驚く。
「んー、ちょっとね。ダメみたい。」松浦が苦笑する。
「一緒になれなくてごめんな、のの。」
「また、会えるよね?」辻は心配そうだ。
「あたり前だよ。アイスありがと。じゃ、まこっちゃん、行くよ。」
* *
- 121 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/12(日) 19:19
- 加護と小川を保健室に行かせた松浦と前田はそのまま職員室に向った。職員室には、WATERのリーダーの飯田の他に矢口もいた。
まずは、前田熱っぽく喋べって、時々松浦が補足する形をとる。
WATERの二人はそれに口を挟むことなく聞いている。
「……残念ながらAIRはゲームに乗ってしまったようです。私たちは、安倍さんの無念を晴らしてあげたいと思ってます。
そこでWATERの協力が欲しいのです。WATERの人数、そして私たちの武器、これらがあればAIRなんて問題はありません。」
ここで初めて飯田が口を挟む。
「あのさ、あなたちはAIRをどうしたいわけ? 皆殺しにしたいの?」
「そうではありません。改心できればもちろん……。」
「うちのチームの斉藤と村田と柴田──メロンの3人がAIRのいる倉庫へ行ったのね。大谷に会いに。
そこでいろいろ話を聞いたの。そこでこんな話を聞いたんだ。『先に新垣がSALTの卑怯な罠で殺されている。
しかも、丘の件だって罠でなっち以外のメンバーはみんな銃を持って隠れていた。』と。
前田さん、新垣の件については話してくれなかったわよね? この件は本当なの?」
「えっと、それは…。」「新垣ちゃんの件については本当です。」
口ごもる前田に代わって松浦が話し始める。
- 122 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/12(日) 19:20
- 「でも、新垣ちゃんは間違って殺してしまいました。メンバーがある場所に手榴弾を置きっぱなしにしちゃって、
それを新垣ちゃんが間違って暴発させてしまったのです。これに関しては私たちに責任があります。
でも、丘の件については違います。安倍さんは純粋に一緒に脱出しようとして呼びかけたのです。
安倍さんをAIRがいきなり撃って…」
「…出てって!」松浦の言葉を遮って飯田が叫ぶ。「言い訳は十分。つまり、どっちもどっちってことじゃない。」
横では矢口が驚いたように飯田を見る。
「それをさも『なっちの仇うちましょう』とかなっちをだしに使って。
その言葉を使えば私が首を縦に振ると思った? わたしも随分甘くみられたものね。さあ、帰って!」
「いえ、そんなつもりは決して…」飯田はなお、言葉を続けようとする前田を無理矢理、職員室から追い出す。
「さあ、松浦も」続いて松浦も職員室から追い出した。そして「ふぅ」と一息つくと、幾分表情を緩め矢口の方に向く。
「矢口、ゴメン1人にしてもらえる?」「うん、わかった。…何かあったら呼んでね。」
───────────────────────────────────────────────────────────
- 123 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:43
- WATER TEAM'S PHASE──
昇降口からSALTの4人の背中を見ながら、見張りの藤本美貴はSALTがここへ来た理由を彼女なりに考えていた。
(飯田さんに何らかの話を持ってきたのは間違いないところね。でも破談になったみたい。
私でよかったら、亜弥ちゃんの力にはなりたかったところだけど……ん?)
その時、SALTと入れ違いになるように一人の人物が入り口に姿を現した。
「田中? どうしたの?」
「こんばんは。」
「こ、こんばんは。」アヤカは思いも寄らぬ人物の登場に少し戸惑っているようだ。
「あの、飯田さんに会わせてもらえますか?」
このとき、藤本はSALTに対して声を荒げた飯田を思い出した。
「聞いてはみるけど、今はちょっとダメかもしれないよ。」
「お願いします。」
「アヤカさん、ここお願いします。」そう言うと藤本は飯田がいる職員室に移動した。
扉の前に立つと藤本は、慎重に扉をノックする。今は飯田一人のはずだ。
コンコン
- 124 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:44
- 「はい。」飯田がまだ少し怒気が含まれている声で返事が聞こえて来た。
「藤本ですけど、今、田中が来て、飯田さんに会いたいと言ってますが…。」
「……今、そんな気分じゃない。どんな用事が聞いて。」
(これはかなり気分が悪いな…。)
藤本は娘。としては入ったばかりだが、飯田が不機嫌の時には近づかない方がいいということは
他のメンバーからも聞かされていた。
藤本はとりあえず昇降口の方に戻ろうとしたが…
「安倍さんの件です。」すぐ後ろにはいつの間にか田中がいた。
「私は、安倍さんの最期の場にいました。そこで、安倍さんから飯田さんに伝言を頼まれました。
それを伝えにきました。」
それに対する飯田の返答はなかった。かといって田中も立ち去る気配がない。周りの雰囲気がピリピリする。
藤本があまりの緊張感にしびれを切らしかけた時…
「いいわ。入って。」飯田の声が扉の向こうから聞こえてきた。
* *
- 125 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:19
- 正直、飯田はSALTが安倍の名前を使ってWATERを引き込もうとしたことが気にいらず、機嫌が悪かった。
だから、はじめ田中が来た時も、すぐに会おうとは思わなかった。
だが田中の「安倍さんからの伝言」というのが気になった。早く聞かなくちゃいけないと思った。
だから入室を許可した。
入ってきた田中は、まずはナップザックを開けると白い帽子と拡声器を取り出し、飯田にそれを手渡す。
「これは?」
「これは、安倍さんが被っていた帽子と実際に呼びかけのときに使った拡声器です。飯田さんにと思って。」
よくみると両方とも血が付着している。
「うん、ありがとう。…座って。」
田中は座ると、丘での出来事を話し始めた。
- 126 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:21
- 田中の話はこうだ。丘の付近を走っていた田中にも安倍の呼びかけが聞こえたが、丘に近づくと銃声が聞こえたので、
丘の北側の入り口付近で様子を伺った。ちなみにそこには、AIRのミカ、高橋、里田もいた。
やがて銃撃戦がはじまったらしく、田中はまた少し丘から離れた所に移動した。
しばらくすると銃声もやみ、北の入り口からAIRの6人が降りてきた。
田中はちょっと躊躇したが、丘に移動しそこで死に際の安倍を発見したという事らしい。
「安倍さんは、最期に『圭織、みんなをよろしくね。』と。」
その言葉で田中の報告は終了した。
「それでは、私はこれで。」田中は、帽子と拡声器を残し、職員室から出て行った。
飯田はしばらく動けなかった。心にはただ、先ほどの田中の言葉『圭織、みんなをよろしくね。』が
実際に安倍の声になって響いていた。飯田は職員室から学校の小さな校庭に出て、西の空が見えるところまで歩く。
大分傾いた太陽のある空が、丘の稜線で切り取られている。
(なっち…。)
───────────────────────────────────────────────────────────
- 127 :名無し娘。:2003/10/15(水) 01:15
- 更新乙です
飯田は何を思うんだろう
- 128 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:57
- AIR TEAM'S PHASE──
島の西側の港では、赤く染まった夕方の太陽をバックに高橋愛と石川が夕食の材料を探していた。
港なので魚がごろごろ転がっているかと思いきや、全然探しても見つからなかった。
「石川さん、ありませんね。」
「おっかしいなー。さすがに本部の近くにはないということなのかな?」
「あ、あの倉庫ってもしかしたら、冷凍の倉庫じゃありません?」
高橋は、他の倉庫より幾分小さめな倉庫を見つけた。その扉は、まるで冷蔵庫の扉を大きくしたようになっている。
「そうね。…あ、なるほど。あそこに冷凍保存された魚があるかもしれない。そういうことね。」
「はい。」
「そうね。その可能性は高いわね。さっそく行ってみましょう。」
- 129 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:57
- 2人はその冷凍庫の前に立つ。扉に鍵がかかっていたらどうしようもない。
高橋は扉を開けるためについている金属製のバーに手にかけると一息つき、バーを引っ張る。
最初は力を必要としたが、それ以降はさほど苦労せず扉を開けることができた。
中からの冷たい風が2人を震わせた。「さぶっ」隣の石川が思わず呟く。
(こういう時、薄手の衣装は嫌だな…)高橋は他のチームの衣装がうらやましかった。
(そういえば、FOODは揃いのTシャツにGパンだったな。せめてあれぐらいの衣装なら…)
2人は震えながら冷凍庫に入り、手持ちの懐中電灯をオンにする。
生まれた光の輪で冷凍庫の電気のスイッチを探す。寒さに震えながら1分弱でスイッチを見つけ早速ONにする。
冷凍庫内が光で満たされた。気のせいかちょっと寒さが和らいだ気がする。
- 130 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/16(木) 18:58
- 「…ビンゴね。高橋、あれ。」
高橋が石川の指差した方向を見ると、5、6種類の魚が冷凍保存されている。
それは、金目鯛・ムツ・メダイなど、この地方で捕れる魚なのだが、高橋には何の魚だがわからなかった。
「解凍するのがちょっと大変そうですね。」高橋は心配した。
「まあ、とりあえずこの小さな魚を持っていきましょう。」
石川は、アジとイワシを人数分6匹ずつ持って来たビニール袋に入れた。
「商店で、ミカさん達が野菜やお米を見つけたらしいし、今夜は魚料理ね。」石川は心なしかウキウキしている。
だが、高橋には一つ心配事があった。
(うちのチームに魚をおろせる人いるかなあ…)
しかしその疑問も、鼻歌まで歌い始めた石川を見ると言うに言い出せなくなってしまった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 131 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/22(水) 08:54
- FOOD TEAM'S PHASE──
田中と連絡のようなものを取ってから、約20分後に保田と亀井絵里は帰ってきた。
中澤の「報告を聞かせて。」の言葉に促され始まった保田の報告は、その場にいる全員を凍てつかせるには十分だった。
道重の場合は、一方的に主催者側から殺されたものであるが、
新垣の場合は過程はどうあれ他のハロプロメンバーに殺されたのである。
あまりのことに誰も喋れなかった集会所に、昼頃聞いた音楽が鳴り響いた。
ハメて〜、ウ〜ハメて〜、SOMEBADY SOMEBADY SOMEDAY SO ハメて〜
音楽はどうやら、外の古びたポールについている拡声器のようなものから聞こえているようだ。
普段は津波の情報とかを知らせるのだろう。
亀井は咄嗟に壁の時計を見る。午後6時を少し過ぎたところだった。
音楽がだんだん弱くなり、その代わりに彼女らが今一番聞きたくない男の声が聞こえてきた。
- 132 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/22(水) 08:54
- 「あ、あ、マイクテス、マイクテス。みなさん、聞こえていますでしょうか。
6時間ぶりの石橋貴明、石橋貴明でございます。え〜、早速、死亡者の発表に移りたいと思います。
まずは…、SALT5 安倍なつみ。7AIR 新垣里沙。FOOD6 道重さゆみ…は俺が殺したんだっけ。
……大丈夫かあ、6時間もやって死亡者2人だけだぞー。24時間誰も死ななかったら全員の首輪が爆発しちゃうぞー。
と言っても昨日まで普通の仲間だったからしょーがねーよなあ。
そこでだ。あと1時間後から、また1チーム参戦するぞー。こいつらはハロプロメンバーじゃないから、
お前らを容赦なく攻撃するぞー。まあ、これで24時間誰も死ななくなるということはなくなるぞ。
頑張って戦えよー。今度の放送は夜中の0時だからな。バイバイブー。」ガチャ
不快な放送はようやく収まった。放送が終わって口火を切ったのは中澤だった。
「道重と新垣は聞いてたけど、なっちも? 圭ちゃん、どういう事?」保田につめよった。
「いえ、なっつぁんが死んだって事は石川は言ってなかったです。」保田もショックを隠しきれないようだ。
「石川は死んだということを隠していたか、AIRとは別件なのか、銃撃戦で傷つき後で…なのか。
どちらにしても本人に聞くしかないわね。…あと、もう1チームって誰?」
だが、それに答えられる者はいなかった。当たり前だが。
(ハロプロメンバーじゃないらしいし。誰なんだろう。)亀井は心の中で思っていた。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 133 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/25(土) 00:08
- UTABAN'S PHASE──
メンバーがいる島から北東に離れること約20km。ここにも別の小さな島がある。
その島の何かの事務所だったところ。ここには現在様々な放送用機材が置かれている。
とある部屋はモニタールームであり、メンバーがいる島のあちらこちらに取り付けられた無人カメラからの映像を映している。
また別の部屋はメンバーへの定時放送のための部屋であり、石橋はここから放送していた。
石橋は放送を終え、放送室から出る。「お疲れさまでーす。」女性スタッフが声をかけてくる。
まだ若いスタッフだ。最近入ってきたらしい。他にもスタッフはここに10人程いる。
ちなみに、木梨と香取は先に旅館に泊まっている。
「石橋さん、追加チーム入りました。」さっきとは別の男性スタッフに声をかけられた。
「そうか。……中居は?」「先に向ってます。」「そうか。」
石橋は事務所を出て3名のスタッフとともに港の方に歩く。3分ぐらいで港に着く。
港にはクルーザーが泊まっていた。船の入り口には中居が待っている。
「待たせたなぁ。」「うぃーっす。」2人は船に乗り、クルーザーの寝室に入る。
- 134 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/25(土) 00:08
- そこには2人の人物が寝かされていた。
ラジカセを持っていたスタッフがPLAYのスイッチを押す。
ハメて〜、ウ〜ハメて〜、SOMEBADY SOMEBADY SOMEDAY SO ハメて〜
「うるさいなあ、なんだよー。」「何?何が起きているの?」
どうやらとりあえず二人とも起きたようだ。そんな二人を石橋は満足そうに見つめ宣言する。
「ニューチャレンジャー達よ。おはようございまーす。突然ですが、君たちにはこれから殺し合いをしてもらいまーす。
ルール等は中居君から。」
───────────────────────────────────────────────────────────
- 135 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/26(日) 23:23
- AIR TEAM'S PHASE──
里田・石川・ミカは、FOODと同盟を結ぼうと海に沈んで行く太陽をみながら、集会所へ向っていた。
本来ならば、6人で行くはずだったのだが、どうしても大谷が移動を拒絶したため、3−3に分かれたのだ。
港から集会所へ向う道は途中までが砂浜なのだが、途中で大きな崖に当たるため商店の方によらなければならない。
しかし、まだ砂浜を歩いているところだ。
「放送で安倍サンが亡くなってしまったのがFOODにわかってしまいましたね。大丈夫でしょうか?」ミカは石川に聞く。
「あの放送はどういう状況だったのかわからないから大丈夫よ。
私たちも放送で知ったことにしましょう。流れ弾にでもあたったんでしょうって。
まあ、この辺は私に任せといて。話し合わせといてくれればいいから。」石川は歩きながら2人に話す。
「わたしは、残した3人が心配です。」今度は里田である。「大丈夫でしょうか?」
「まあ、急いで帰ってくれば問題ないわよ。SALTも夕食を作っている頃でしょう。」
「そうだといいのですが……。」
(今、普通に動けるのが稲葉さんと愛ちゃんだけ。大谷さんが復活すればいいのだけど)里田はちょっと心配だった。
───────────────────────────────────────────────────────────
- 136 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/29(水) 00:08
- SALT TEAM'S PHASE──
WATERに拒絶されたSALTは本部である別荘に戻ってきていた。
現在は支給された食パンに別荘にあった、ジャムを塗って早めの夕食をとりながら今後の行動を決めているところであった。
小川は、放送によって新垣の死を知り、ひどく悲しんでいた。食べ物もちょっと食べたばかりで何も喋らずぼーっとしていた。
ちなみに、新垣の死の原因については、
「丘での銃撃戦か、それとも全然関係ないことか。私たちにはわからない。」
と松浦も前田も本当のことは話さなかった。
加護亜依の場合は、安倍のように2人とも直接死体を見ていなかったこともあり、安倍の時ほど落ち込んではいないように見えた。
むしろ加護がショックを受けたのは、松浦と前田から、「私たちは飯田さんに見捨てられた。」と聞かされたからだった。
「飯田さんがうちらのこと見捨てた? なんでや?」思わず関西弁が出てしまう。
(飯田さんに限ってそんなこと…。)
「理由はわからない。ちょっと私の言い方が悪かったのかもしれない。」前田は肩を落としている。
「松浦の補足も悪かったです。だからこの件についてはお互い様ということにしましょう。
それよりも…。これからどうするかですが…。倉庫に行って、直接AIRと接触するというのはどうでしょう?」
「え?」加護や小川よりも、前田の反応が一番早かった。
「接触って……。話し合うってこと?」加護には前田が何故か動揺しているように思えた。
「そうです。もともとは私たちは仲間だったんだから、向こうも話し合いに応じてくれるはずです。
だけど今度は、加護ちゃん、まこっちゃん、今度はあなたたちの協力が必要になってくると思う。
協力してもらえる?」松浦は2人に協力を要請する。
「はい。加護にできることがあれば。」「まこっちゃんは?」「わ、わたしももちろん。」
「では、食事が終ったら……そうね。7時ごろになったら出発します。それでいい?」
「「はい。」」加護と小川は元気良く答えた。
* *
- 137 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/31(金) 00:20
- 夕食が終わり、一息ついていた松浦は前田に呼ばれて2階にあがった。今度は廊下の右側にある子供用の寝室に2人は入る。
「松浦さん、話し合うって本気なの? そんなことするとは思えないし、たとえできたとしても、
新垣ちゃんのことがバレちゃうよ。」
「いえいえ、話し合うというのは、加護ちゃんとまこっちゃんを連れて行くための方便に過ぎません。
勿論、私達の目的はAIRの抹殺、ゆくゆくはゲームに生き残って無事に戻ることです。
安倍さんの復讐をする、なんていっても2人は来ないでしょう。かつての『仲間』を手にかけられるとは思えません。
しかし私と前田さんだけで行っても向こうは6人なので敵うはずもありません。残した加護ちゃんとまこっちゃんも心配です。
だから、2人を連れ出すためにああいう言い方をしたわけです。」
「なんだ、そういうこと…。よかった。」
「まあ、話し合うというのもそんなに嘘ではありませんよ。こっちが話し合いの意志を見せたけど、
AIRが全く話し合いに乗ってくれないばかりか、こちらを攻撃しようとしたのでやむなく撃ってしまった。
という事態もありえるわけです。…さて、物置の武器をまた補充しておきましょう。」
そういうと松浦は立ち上がった。
(私は、松浦亜弥。こんなところで死ねない。死んではいけない。)
─────────────────────────────────────────────────────
- 138 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:19
- WATER TEAM'S PHASE──
WATERは全員で夕食を食べていた。ものはやきそばである。
みんなで学校の近くの民家を探したところ、見つかったのがやきそばの麺と鶏肉と人参とキャベツであり、
それでやきそばを作ったのだった。だがしかし、WATERは大所帯であり一人当たり0.7人前ぐらいしかなかった。
辻や紺野などはあきらかに足りないようだった。そんな中……
「みんな聞いて。圭織はなっちと同じようにみんなを集めてこんな馬鹿げたものから脱出したい。
これを見て。」飯田は下に置いてあった拡声器を取り出す。
「なっちはこれでみんなに呼びかけをしたの。だから圭織もなっちの意志を継ぎ、これで人を集めたい。
……でもね、やっぱり一度争ったSALTとAIRを仲直りさせるのは難しいとは思っている。
もし、このゲームを脱出できるいい方法が見つかったら、2チームとも協力してくれると思う。
みんなのなかで何かいい意見はない?」
- 139 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:25
- メンバーは隣の人と話したりして、ざわざわざわつきはじめた。
「はい。」「アヤカ。」アヤカが立ち上がる。
「とりあえず、この首輪をどうにかしなければいけないと思います。さっき、斉藤さんのを見せてもらったんですが、
簡単には外れないようになっているようですし、下手すると爆発するのであまり調べられませんでした。
せめて外された首輪があればそれを調べられるのですが。」
「首輪か…。たしかにやっかいね。外された首輪は、そう簡単には手に入りそうもないわね。」
(生の状態でその辺においてあるわけないし、誰かの首を切って、そこから外すぐらいしか方法はなさそう。)
「圭織。」「ん? 矢口。」
「海に入ったら爆発しちゃうよね。だったら空から脱出っていうのはどう?」
「それは試してみないとどうとも言えないけど、それよりも何で脱出するの?」
「それは、まあ、気球とか、ハングライダーとか、飛行機とか…。」
「それはどこにあるの?」
「大金持ちの家にあったりしないかなあ、なんて。アハハハハハハ。」
(手段はともかく、空か。考えておこう。)
- 140 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/01(土) 22:25
- 「石橋か、中居を人質にとるっていうのはどうですか?」今度は藤本である。
「そうすればスタッフも私たちを脱出させないわけにはいかなくなると思いますけど。」
「その2人をこの島に呼び寄せるのはどうするの?」
「まだ具体的な方法はないんですけど、何か緊急事態になればスタッフごとこの島に来ると思います。」
「なるほど。」
(スタッフが2人を捨て駒として考えていたらダメだけどね。)
「いいらさん!」辻が手を上がる。「のの、何?」
「やきそばお代わり!」
「…………もうないよ。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 141 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/05(水) 00:24
- FOOD TEAM'S PHASE──
集会所では、田中を除くFOODの5人と石川、ミカ、里田の3人が話をしていた。
「なるほどなぁ。そっちの話はわかった。つまり、なっちを撃った自覚はないが、流れ弾で傷つけてしまった可能性が高い。
そういうことなんやな。」FOOD側の代表として中澤が話を進めている。
「はい。あの時は動揺してしまって…。どっちが先に仕掛けたのかも覚えていません。気付いたときには銃撃戦になってました。
SALTはきっとわたし達のこと、憎んでいると思います。あのチームが次に狙ってくるのは私たちでしょう。
ですから、私たちを助けてもらえないでしょうか? 私たちはSALTと和解したいのです。」
「……ふむ。」
(丘の出来事についてはデータが足らないからなんとも言えないわね。
真実はわかりそうもないけど、AIRがSALTと和解するっていうことならば…。)
「ええよ。うちらの願いもここから逃げ出すことやからな。それでどないすればいい?」
「うちのメンバーで移動できない者がいるから、来て頂けたらありがたいのですが…。」
「怪我でもしてるん?」
「そういうわけではないんですが、ちょっと……。」
(SALTが安倍の敵討ちに来て、それに巻き込まれるかもしれへんし、田中も戻ってきてへん。
全員で向こう行くのはちょっと心配やな。うーん。)
「……皆がそっちに行ってしまうと、田中が戻って来た時に田中が困るだろうし、
とりあえず、うちと圭ちゃんが行くわ。それでええか?」
「「「ありがとうございます。」」」AIRの3人は安心したようにお礼を言った。
─────────────────────────────────────────────────────
- 142 :名無し娘。:2003/11/05(水) 01:03
- 更新速度早っ!がんばってくだされ
- 143 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/06(木) 23:44
- ??? TEAM'S PHASE──
「いやーしかし驚いたよ。俺さ、コンビニで立ち読みしてたんだよ。ヤンジャン。そしたらさ、いきなり肩たたかれてさ、
横向くと和田さんなんだよ。『よ、久しぶり。』なんていってさ、車に乗せられて。何のようかって聞いたら、
『目的地着いたら話す』って言われて、いつの間にか寝ちゃったんだけど…。んで起きたら、石橋と中居だろ?
驚いたのなんのって。」
「…………………………………………。」
「んでいきなり『戦え』だなんてびっくりしたよ。ほんとに。……でも優勝したら芸能界復帰できるなんて夢みたいだよな。
しかも、殺した人数×2000万円もらえるんだからさ。2人で山分けしても1人1000万円だぜ。うっはー。
そして、何人殺しても警察に突きつけたりしないと来たもんだ。
キャバクラの件で俺、追放されてしばらくカタギの生活してたんだけど、ダメだね。物足りない。生活に張りがない。
やっぱり俺の場所は芸能界だと思ったね。」
「…………………………………………。」
- 144 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/06(木) 23:45
- 「それで、俺らの武器のある場所はっと。あの灯台か……。船降ろされる時にもらったこの鍵で入り口を開けるっつーことか。
そいや、中居が『お前らの武器はいっぱいあるぞ』って言ってたけどさ、何があるんだろう?
やっぱり銃はあるよな。バッキューンって撃って見たいよなあ。男のロマンだな。」
「…………………………………………。」
「そうそう、お前の芸能活動も見てたけどさ、何? あの裸エプロンとかさ、前ガバッと開いた服とかさあ。
なんか必死でさ。見てて痛々しかったよ。あーでもしなきゃ売れ…」
「黙れ! お前に私の芸能活動を否定される筋合いはない。いい? 私にとってお前は今やパートナーでもなんでもないわけ。
無理矢理組まされたから仕方なくやるだけ。私は死にたくない。殺される前に殺す。ただそれだけ。」
「へいへいへい。ま、何はともあれよろしくな。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 145 :名無し娘。:2003/11/07(金) 00:02
- この二人だったのか・・・
- 146 :名無し娘。:2003/11/07(金) 16:32
- 矢口、松浦と交流ある訴人と後藤の弟であるユウキ…
どんな展開になんだろ…
- 147 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/09(日) 23:51
- AIR TEAM'S PHASE──
石川達が集会所で中澤達と話している時に、高橋と稲葉は漁業組合で夕食の支度をしていた。
倉庫には調理場がなかったためである。
夕食といっても、魚とご飯だけであるが。高橋は稲葉に教わりながらアジと悪戦苦闘していた。
普段、包丁を握ったこともない高橋にとっては冷や冷やの連続だった。
ふと、調理場の窓がノックされる。高橋が窓の外を見ると、2人の人物が並んで夕暮れをバックに懐中電灯で下から光を当てていた。
「ひゃあ〜」高橋は情けない声をあげた。手放した包丁が流し台のシンクにぶつかる。
今度は、2人とも光を正面から当てる。「愛ちゃん、やっほー。」
「加護さん、まこっちゃん。びっくりしたー。」
「ん? SALT? なんでこんなところに…」横にいた稲葉も驚いたようだ。
料理の残りの工程は稲葉がやってくれるということで、稲葉の許可を得て、
高橋は加護と小川を連れて港の桟橋の方に移動した。桟橋には街頭がついており明るい。
- 148 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/09(日) 23:52
- 「夕暮れ綺麗だねー。」加護が目をきらきらさせながら感傷に浸る。
「東京じゃ見られないよねー。」小川も感動しているようだ。
「でも、本当にびっくりしたよ。2人がいきなりくるから。でもよかった。2人に会いたいと思っていたんだ。」
高橋は丘の出来事を思い出していた。といっても階段の下にいた高橋が覚えているのは銃声が鳴り響いていたことぐらいだが。
「うん。前田さんと亜弥ちゃんが仲直りしようって。加護たちの力を貸してくれって。」
「でもみんなFOODの方へ行っちゃって今は高橋と稲葉さんと大谷さんしかいないんだ。」
「ま、しょうがないよ。予告してなかったんだし。」小川が慰める。
「とりあえずきっかけが出来てよかったよかった。」加護が満足そうに頷く。
その時、ジャッポーンと何か飛び込む音が聞こえてきた。
「何? 何の音?」「何かが落ちたよね?」
そのうち、どこかで聞いたことのある電子音が聞こえてきた。
ぴ ぴ ぴ
高橋は懐中電灯を取り出し、音がどこから聞こえてくるか探す。懐中電灯の輪はやがて1人の人物の照らした。
「大谷さん!!」
* *
- 149 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/12(水) 23:23
- 「あなたは安倍さんを殺したひとごろし。」
その声は大谷自身の声かもしれないし、違う気もする。脳の中で響いているのかもしれないし、外から聞こえる気もする。
──でも、あれはしょうがなかった。怖かった撃たれるんじゃないかって
「理由なんて関係ない。あるのはあなたがひとごろしだという事実だけ。」
──…………………
「もし、みんなで無事に戻れたとしても、ひとごろしのあなたを他のメロンのメンバーはどう思うかしら?
そして、安倍さんを殺したあなたのことをモー娘。のメンバーはどう思うかしら?」
──そ、それは…
「表面的には『しょうがない』という態度に出るのでしょう。しかし心の中ではどう思うかしら?
立場を変えて見ましょうか。例えば、村田さんが誰かに殺されたとします。でも、何とか無事に元の暮らしに戻れたとします。
あなたはその人のこと、表面上は普通に接することができても、内面では憎しみなく思えますか?」
──それは、無理……
「それが普通の人の反応です。また、あなたが生き残ってもモー娘。のメンバーはそう思うことでしょう。」
──どうすれば?
「あなたは立派な社会人です。自分のしてしまったことに対する責任を取る必要があります。」
──……責任を取る……
「もし、禁止エリアの海に入れば、首輪が爆発します。それは、おそらく痛みを感じる暇もないでしょう。」
──…………………
- 150 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/12(水) 23:24
- 大谷はすっと立ち上がり、倉庫の扉に向って歩き出す。倉庫の扉を開けると綺麗な夕日が見える。
大谷はその夕日に向けて一歩ずつ歩いていき、やがて波止場に辿りつく。
目の前には、夕日を反射して赤くなっている海が見える。
──天国? ヒトゴロシなのに天国にいけるの?
大谷はためらうことなく、海に飛び込んだ。着衣のままだが、なんの支障もない。
大谷はそのまま沖の方へ泳いでいく。
ぴ ぴ ぴ
どこからか音が聞こえる。
──天国の人たちが歓迎して曲でも流しているの?
ぴ ぴ ぴ
やがて、大谷の顔に光が当てられる。「大谷さん!!」女の子の声が聞こえる。
──ああ、もうここは天国なんだ。…もう悩まなくてすむんだ。
「どうして…」「どこに…んで…か?」「早く…くだ…い!」
2、3人の女の子が大谷に向って何か叫んでいるようだ。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
──みんな、ありがとう。歓迎してくれるんだね。…まずは、安倍さんに謝らな…
パーン
─────────────────────────────────────────────────────
- 151 : :2003/11/14(金) 02:03
- 死んじゃった・・・
- 152 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/15(土) 22:56
- SALT TEAM'S PHASE──
「何か外から声が聞こえない?」
外の異変に先に気付いたのは、前田ではなくて稲葉だった。
前田が耳を澄ますとたしかに港のほうから誰かの叫び声が聞こえる。
「なんだろう? とりあえず行って見よう。」
前田は稲葉を連れ立って漁業組合の建物を出た。
最初、港に出た誰かが間違って海に落ちてしまい、他の人がそれを助けようとしているのかと思ったが…。
叫び声をよく聞くと、「大谷さ〜ん。」と言っているようだ。
(大谷さんが? 倉庫にいるって話じゃ?)
前田と大谷はスピードを上げる。やがて桟橋が見えるところまで来た。
桟橋には、加護、高橋、小川がいた。加護と小川はお互い体を寄せ合い泣いており、
高橋は四つんばいになり海をじっとみつめている。
- 153 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/15(土) 22:58
- 「どうしたの?」前田が声をかける。
泣き顔の顔を充血させた加護が顔を上げる。「前田さん…、大谷さんが、ううう。」
「どういうこと?」後ろから来た稲葉が高橋に聞く。
高橋は黙って自分の懐中電灯をONにし、海を照らす。光の輪は海に浮かぶ何かを照らした。
最初見たとき、前田はそれが何かわからなかった。白いものが何か浮いているとだけはわかった。
目を凝らし、その白いものが人型をしており、周りの海水が赤くなっており、それが血だと理解した瞬間──
「大谷さん?」前田は全てを理解した。高橋は黙って頷く。
「小康状態だったはずなのに。なんで…。」稲葉は驚愕を隠し切れないようだ。
「高橋たちが気付いたときは、もう大谷さんは海の中でした。」
高橋のその言葉を最後に、その場に聞こえる音は、加護と小川の泣き声と波の音だけになった。
そんななか、前田は港の建物の陰から松浦がそっとこっちの様子を伺っているのを発見した。
松浦は……どうやら……うっすらと笑っているように前田には見えた。
大谷雅恵:死亡 【AIR 6人→5人】
─────────────────────────────────────────────────────
- 154 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/17(月) 22:40
- FOOD TEAM'S PHASE──
中澤と保田がAIRと共に去ってから30分後に、田中は集会所に戻ってきた。
ところが、肩から見慣れないカバンを提げている。
田中がカバンをあけると中からノート型PCと金属製の厚さ5ミリくらいのカードが出てきた。
亀井はカードを取り上げて「これな…」とまで言ったところで、
田中が口の前に人差し指を添えているのを見てあわてて口を押さえる。
「あー、おなかすいた。カレーってまだありますか?」と言いつつ洗面所の方に向う。
洗面所に入り、後藤に向けて手招きをする。
後藤は何のことかわからず人差し指を自分のほうに向けて首をかしげる。田中が頷くと、後藤は洗面所の方へ近づいていく。
そこで田中は2枚、Gパンの前ポケットからプリントを取り出し、1枚目を後藤に渡した。
そこにはどこかのプリンターから出力されたらしく、ゴシック体の文字でこう書かれていた。
- 155 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/17(月) 22:43
- 「突然のこのようなメッセージに驚かれたと思いますが、まず言いたい事は、私達は貴方達の味方だと言うことです。
そして注意して欲しいことは、あなた方の会話は全て盗聴されているということです。
この島にはいろんなところに隠しカメラが仕掛けられており、行動も監視されています。
もちろん、トランシーバーによる会話も傍受されています。
ノート型PCだけではなにもできませんが、このカードがあることによってインターネットもできるようになります。
本来は、隠しアイテムはノート型PCだけの予定でした。このカードは私独自に用意したものです。
ですから、主催者にバレると妨害される恐れがあるのでこのカードのことは口に出したり、
不用意に晒したりしないようにしてください。そしてこのセットはPCに詳しい人に渡すようにしてください。」
頭の中が真っ白になった後藤に田中は2枚目のプリントを渡した。それは一見、後藤達が支給された地図のようだが、
よく見てみると、隠しカメラの位置が書いてある。
(ちょ、ちょおっと待って、これってどういうこと? 信じちゃっていいのかなあ? っていうかこの人誰?
まあ、とりあえず、裕ちゃんか圭ちゃんに聞いたみたほうがよさそうだ。)
迷う後藤の方を田中がつつく。見ると、田中はゲームのルールを書いた紙の裏にボールペンで文字を書き、
それを後藤に見せた。
『ということなんで重要な問題は筆談がいいと思います。』後藤は頷く。
- 156 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/17(月) 22:43
- 「後藤さん、パソコンに詳しいのって誰ですか?」
(そうか、PCがあるっていうのはスタッフも知っているから普通に喋っていいんだ。)
「やっぱり圭ちゃんじゃないかなあ。」
「保田さんはどこにいるんですか?」
「今、AIRの3人と倉庫に向っているはずなんだけど…。ちょっと呼び出してみよう。」
「こちら、後藤です。聞こえてますか、どうぞ」
「………。」
「こちら、後藤です。裕ちゃんか圭ちゃん、聞こえてますか?」
「─wwヘ√レv…こちら、保田だけど…v〜…後藤、どうしたの?…─wwヘ√レvv〜─」
「田中が戻ってきて、ノート型パソコン持ってきたんで、圭ちゃんに見てもらいたいなあと思って。」
「─wwヘ√レv…ちょっとね、こっち立て込んじゃってすぐに戻れそうもなさそうなんだ。
後藤もパソコンの立ち上げ方ぐらいはわかるでしょ。…─wwヘ√レvv〜─」
(こういうのは圭ちゃんじゃないとダメなんだけど、盗聴されているらしいから、そこまでは言えないなあ。)
「そう。わかった。とりあえず中身を見てみるよ。でも、早いところ戻ってきてね。」
「─wwヘ√レv…わかった。じゃあね。…─wwヘ√レvv〜─」
(取り込んでいるって何があったんだろう?)
─────────────────────────────────────────────────────
- 157 : :2003/11/18(火) 13:36
- 面白くなって参りました
- 158 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/20(木) 22:46
- AIR TEAM'S PHASE──
「もしもし、こちら……。ちょっと報告が。どうやら明日の集まりに裕ちゃんが仲介として来るみたい。
で、作戦を変更と思って連絡を。……うん。…………………………じゃあ、時間は変わらずに。
こっちは2人にすればいいわけね。わかった。それじゃ明日。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 159 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/23(日) 00:01
- WATER TEAM'S PHASE──
「ふわぁ〜」
昇降口で教室から持ってきた椅子に座り、見張りをしていたあさみ(カントリー娘。)は今日12回目のあくびをした。
時計を見てみる。午前4:30。
見張りを始めてちょうど半分である。ちなみに彼女の当番は3時〜6時までだ。
彼女は昨日の夜のことを、思い出していた。
飯田主催の「どうやったらこのゲームから抜け出せるか?」という会議は食事終了後も、
矢口、斉藤、藤本を交えて夜遅くまで話し合っていたようだ。
ようだというのは、あさみが夜中の見張り番になり早めに就寝したからであった。
2:50頃の起床を予定にしていたのだが、12:00の放送で一度目が覚めてしまった。
今回の放送は、石橋ではなくて中居だった。
「ど〜も〜、中居正広です。えー、今回ゲームーオーバーになってしまったのは、
AIRチーム、大谷雅恵、1人。ということで頑張ってくださーい。」
と、死亡者がたった1人にもかかわらずに怒ったりせず、いやにあっさりしたものだった。たぶん眠かったのだろう。
- 160 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/23(日) 00:01
- あさみはまたカントリー娘。について思い出していた。
1999年7月、戸田鈴音(りんね)・柳原尋美・小林梓の3人がインディーズ・デビューする……はずだった。
ところが、その1週間前に柳原尋美が不幸な交通事故で亡くなってしまい、小林梓もそのショックで脱退してしまう。
りんねは1人になり1年近く、ひとりでカントリー娘。を続けていく。
木村麻美があさみとしてカントリー娘。に入ったのはそんな時だった。
あさみは生来の明るさで盛り上げ、やがて石川が助っ人として登場し、里田が入って軌道に乗ったのだっだ。
「りんねちゃん、何やってるんだろう?」
そこまで考えたところで、あさみは入り口に一人の人物が入ってくるのを確認した。
- 161 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/23(日) 00:02
- 「こんばんは〜、夜遅くすみません。ここ学校ですよね?」
どうやら少年のようである。だが、明かりをバックにしているせいか顔はよくわからない。
「ええ、そうですが。」
「じゃあ、11WATERの皆さんがいるんですよね?」
「え、ええ。」
「やっぱり。それなら良かった。」
「ところで…。あなたはどちら様ですか?」
「へ? 俺? 俺たちは…。」
そのとき、あさみは突然息ができなくなった。首が何か細いもので締め付けられているようで、とても痛い。
「お前達を殺しに来たのさ。」目の前の少年が答える。
あさみは苦しみに悶えながら咄嗟に首を手で確認する。何か細い糸のようなものが首に巻きついているようだ。
苦しくて思わず立ち上がって、懸命に糸のようなものを手で外そうとするが、
息苦しさと喉の痛みと、首から流れ始めた自分の血のせいででうまくつかめない。
「あ゛、あ゛、あ゛…………」
声にならない声を上げつつ、目の前が真っ白になっていく…。
─────────────────────────────────────────────────────
- 162 :名無し娘。:2003/11/23(日) 10:31
- あさみが、あさみが・・・
- 163 : :2003/11/23(日) 18:21
- 作者は一応メンバー全体を知ってるみたいでよかった。
資料ならいくらでも用意するんで見てる人は多いので頑張ってください!
- 164 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/25(火) 23:27
- EE JUMP'S PHASE──
ソニンがあさみの首に巻きつけたのはただの糸ではない。暗殺用の敵の喉仏を切り裂く武器である。
力が決して強いというわけではないソニンが選んだ武器の一つがこれである。
他にも、ブルーノCzモデル75、オリハルコン(ダガー)を持ってきている。
目の前の目を大きく開き首を掻き毟りながら苦悶するあさみを見て、
ソニンは顎でユウキに中に進むよう促す。ユウキはそれに従い校舎を進んでいった。
──────
ソニンとユウキが灯台にたどり着いたのが、夜7時頃。灯台の鍵を開け、中に入ると、
そこには、剣、銃、弓矢などなど、様々な武器があった。
「かっけ〜。」
ユウキは、すぐさまワルサーPPK9ミリと、エクスカリバー(剣)を手に取った。
それを横目にしつつ、ソニンはブルーノとオリハルコンと暗殺用のワイヤーを手に取る
- 165 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/25(火) 23:27
- 「ソニンさあ、最初どこ攻めるの? やっぱり近い倉庫?」
「そうね。最初は…、学校かな。武器も大したことないし、人数も稼げるだろうし。」
「まあ、俺はFOOD以外ならとりあえずいいけどな。よし、じゃあ早速いこうぜ!」
「待って。今はまだ早い。到着してすぐだから向こうも警戒しているかもしれない。
それにこの時間はまだ皆起きているはず。そうだと人数に劣る私たちは不利よ。
だから、ここは夜襲をかける。時間は…4時ぐらいね。」
「そりゃそうだよな〜。やっぱ、お前頭いいわ。」
──────
- 166 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/25(火) 23:27
- あさみの首から流れ出た血は、WATERの衣装を更に赤く染め、地面に血だまりを作り始める。
ソニンは更に力をこめた。鋼線は喉仏を切断し、やがて頚椎をとらえる。
抵抗していたあさみの手はだらしなく下がり、首が前に落ちこんだ。
その時──
「あなた、誰?」
「くそっ!!」ターン
銃声音があたりに響く。
ソニンは自分の予想していなかった事態が起きたと悟った。
あさみ(カントリー娘。):死亡 【AIR 11人→10人】
─────────────────────────────────────────────────────
- 167 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/25(火) 23:29
- いつも応援ありがとうございます。
まあ、のんびりと進めていきますのでよろすく。
- 168 :名無し娘。:2003/11/26(水) 06:30
- ここでソニンとユウキ登場か
他の刺客も楽しみにしてます
- 169 :名無し娘。:2003/11/26(水) 16:00
- >>167
あのー、更新してくださる所悪いのですが・・・
>>166はWATERですよ
- 170 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/26(水) 23:34
- あ、ホントだ。指摘ありがd
以下、166の訂正
- 171 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/26(水) 23:35
- あさみの首から流れ出た血は、WATERの衣装を更に赤く染め、地面に血だまりを作り始める。
ソニンは更に力をこめた。鋼線は喉仏を切断し、やがて頚椎をとらえる。
抵抗していたあさみの手はだらしなく下がり、首が前に落ちこんだ。
その時──
「あなた、誰?」
「くそっ!!」ターン
銃声音があたりに響く。
ソニンは自分の予想していなかった事態が起きたと悟った。
あさみ(カントリー娘。):死亡 【WATER 11人→10人】
- 172 :名無し娘。:2003/11/27(木) 22:55
- (*`_´)とても
(・e・)おもしろい
(●´ー`)だべ
- 173 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/28(金) 23:45
- WATER TEAM'S PHASE──
アヤカは、トイレから出ると自分の見張り場である昇降口に戻ろうとした。
ところが、昇降口の方から1人の人物が歩いてくる。窓から漏れた光に照らされたその姿は、
濃紺のパーカーにジーパン。明らかにWATERの人間ではない。
そのうち、その人物と目が合った。その顔を見てとある人物が思い浮かぶ。だが、
「あなた、誰?」思わず誰何してしまった。
目の前の人物──ユウキは──小さな声で「うわっ」と驚くと、右手に持っていたワルサーを構える。
アヤカは、咄嗟に教室の入り口飛びつく。
「くそっ」ユウキは狙いも定めぬまま、焦ってトリガーを引く。弾はそれて、教室の扉の反対の壁にめり込み、
ユウキ自身は不安定な格好で銃を撃ったせいか、態勢を崩し尻餅をついていた。
- 174 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/11/28(金) 23:45
- それを見たアヤカは、急いで教室の中に入り、教室の明かりを点ける。
ここには、吉澤、辻、紺野、藤本が寝ていた。その中で、藤本は銃声で既に起きており、
アヤカに対し、「今の何の音?」と聞いてくる。
また、吉澤と紺野も目を覚ましており、眠そうに目をこすりながら上半身を起こしていた。
全員の姿を確認しつつ、アヤカは教室の前後の扉に鍵をかける。
(これでとりあえずは、入ってこられないはず。あとは…。)
アヤカはナップザックからトランシーバーを取り出すと、スイッチを押し部屋の全員と、
校長室で寝ている飯田、矢口、職員室で寝ている斉藤、村田、柴田に聞こえるように大声で叫んだ。
「みんなっ!!! 起きてー!!! 敵よー!!!」
* *
- 175 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/01(月) 00:24
- 「みんなっ!!! 起きてー!!! 敵よー!!!」
夢の世界に居た村田めぐみは、その機械を通した声で現実の世界に戻される。
部屋の見渡すと、斉藤も目を覚ましたようだ。
村田は立ち上がり、職員室の明かりをつける。柴田も起き上がる。彼女もまた目が覚めたようだ。
「何があったの?」柴田が村田に聞いてきた。
「わからない。でも、敵が侵入したらしい。私とひとみんでちょっと様子を見てくる。柴ちゃんはここで待ってて」
「気をつけて。」「うん。」
村田はホーリィソード、斉藤はモーニングスターを持ち、村田が職員室の扉をそっと開け外の様子を伺う。
そこにはシーンと静まり返った廊下があるだけだった。
「とりあえず大丈夫みたい。」2人はゆっくりと廊下へと出た。
2人は武器を構えたままとりあえず廊下の様子を探る。
すると、廊下と昇降口と校庭に通じている廊下の交差点に何か白く細長いものが2本見えた。
目を凝らしてみてみると、どうやらそれは誰かの足らしい。
上半身は校庭側の通路にあるらしく、ここからだと死角になって見えない。
- 176 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/01(月) 00:25
- 「誰か仰向けに倒れているみたい。」斉藤は驚く。「とりあえず行ってみよう。」村田が返す。
2人は警戒しながらゆっくりと廊下をすすむ。
近づくにつれわかってきたのだが、廊下の足から昇降口へと足に添って赤いラインが2本ひいてあるようだ。
やがて、2人は足の持ち主がはっきりとわかるところまで来た。
「!!!!!」2人は言葉がでなかった。
持ち主であるあさみの首は何かでざっくり切られたのか、パカっとあいておりそこから血が今だ流れている。
WATERの衣装も自身の血で汚れており、(もともと赤と黒の衣装なのでそんなには目立たないが)
さっきみた赤いラインの正体は血だったのだ。
顔は、口からは舌がだらしなく出ており、目がこれ以上ないくらい飛び出ている。
そしてその生気のない目は、偶然にも村田たちの方を向いている。
- 177 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/01(月) 00:26
- 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
気がつけば横の斉藤が後ずさりをし、大声で叫びながら昇降口の方へ走っていく。
「ひとみん! 待って!」村田は追いかける。
「ああああああああああああ!!!!!!!」もはや言葉にならない叫びを続けながら斉藤は走り続ける。
「待ってよ! 待って!」村田は斉藤を追いかけて昇降口を出、さらに校門を出ようとする。
ところが、校門を走り抜ける瞬間、村田は何かに躓き胸から地面に倒れる。
「うわっ、ててて。ん?」
村田は立ち上がろうとするが、上から誰かに乗りかかられ動けない。
「え? 何? 誰なの?」
顔だけ上げると、斉藤は村田の様子など知る由もなく逃げ続けてようで、だんだん斉藤の背中が小さくなっていく。
村田の後頭部に何か冷たいものが当たった。
ターン
ターン
あたりに2発銃声が響いた。
村田めぐみ(メロン記念日):死亡 【WATER 10人→9人】
─────────────────────────────────────────────────────
- 178 :名無し娘。:2003/12/01(月) 00:52
- また推しメンが1人・・・・・
自分的にユウキとソニンがいつ死ぬか注目したいと思います
(本編の前回優勝者ってわけでもないし最後まで残るかわからんしw)
これからも頑張ってください
- 179 :名無し娘。:2003/12/01(月) 01:42
- 地味な奴から死んでくな
- 180 :死後の世界:2003/12/01(月) 10:24
- ( - Δ-)地味…。
( ;・e・)(●`ー´)大谷さん、なっちを撃つなんてひどいべさ (`_´; )
安倍さん落ち着いて。
从*・ 。.・从<死んでも私ってカワイイ
- 181 :名無し娘。:2003/12/01(月) 14:23
- そういやメロンがすでに二人死んだのか
作者はメロンあんまり好きじゃないみたいだな
- 182 :名無し娘。:2003/12/01(月) 23:05
- >>180
あさみが・・・
- 183 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/01(月) 23:17
- 別にメロンが嫌いというわけではないですよ〜。
- 184 : :2003/12/02(火) 01:53
- >>183
特に気にせず計画にそって不要メンをどんどん頑張ってください
- 185 :名無し娘。:2003/12/02(火) 15:13
- (oTvTo)
↑180に忘れられたあさみ
- 186 :名無し娘。:2003/12/02(火) 16:08
- 作者さん、周りの雑音は気にせずにがんばってくださいね。
いつも楽しみにしてます。
- 187 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/03(水) 23:44
- EE JUMP'S PHASE──
「くそっ」
態勢を崩し尻餅をついていたユウキは、アヤカが教室に入るのを見て、自分も入ろうと立ち上がろうとする。
ところがその肩を誰かに抑えられた。振り返ると…。
「なんだお前か。なんだよ。早くしないと…。」
「おそらく教室の中は仲間がたくさんいる。深追いは禁物だ。それよりも手伝って欲しいことがある。」
そういうソニンの後にユウキは続く。その後ろで教室に電気が入るのがわかった。
2人は昇降口に戻る。血の海の中で首を切られているあさみを見てユウキは少し吐き気がした。
「オエッ」
「ちょっと足のほう持って。移動するから。」
そんなユウキの気持ちを知ってか知らずかソニンはあさみの頭と腕を持つ。
(勘弁してくれよ…。)と思いつつも仕方なしにユウキは足を持ち、二人は移動した。
少しゆれるたびに、あさみのパックリ割れた喉からいろんなものが見えたりしてユウキは気持ち悪かったが、
そんなにソニンの目的地が遠くなく、5mくらいのところだったのでガマンできた。
着いた場所は、教室と職員室などを繋ぐ廊下と昇降口と校庭に通じている廊下の交差点であった。
そこに、校庭側を頭にそして足を交差点に置いたところで明かりの漏れた教室から、
「みんなっ!!! 起きてー!!! 敵よー!!!」
と誰かの声が聞こえた。2人はそれを聞き、素早く校舎をでる。
- 188 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/03(水) 23:44
- ユウキははじめ灯台へ戻ると思い、校門を出て灯台の方へ行きかけたが、
「違う、違う」というソニンの言葉にはっと振り返る。ソニンは校門のところでしゃがんでいた。
「帰るんじゃないの?」ユウキも校門に戻りつつ聞く。
「まだやることがある。…とりあえずしゃがんで。」ソニンはナップザックから懐中時計のようなものを取り出した。
ユウキはそれを覗き込む。
この懐中時計のようなものはレーダーである。灯台の中で見つけたものだ。
各メンバーの首輪とリンクされており、メンバーの位置を把握できる代物である。
ただし、メンバーの固定まではできず。どのチームに属しているかまでしかわからない。
レーダーの探索範囲は4段階調節できる。最大だと島全体をカバーするが、今は学校を収める3番目の広さにしてある。
学校の中に、WATERチームのメンバーであることを示している青い点がいくつもあり、
それぞれ別の部屋にいるらしく点が1、2、2、5でそれぞれ別れている。
校門のところに、EE JUMPのメンバーであることを示している紫の点が2つある。
- 189 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/03(水) 23:46
- その時、校舎の中から誰かの叫び声が聞こえてきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
レーダーを見てみると、ユウキ達に一番近かった2点のうち1点がユウキ達に近づいてくるところだった。
もう1点もそれを追いかけるように付いて来る。
「最初の人物は無視して、私がまず後ろの人物に足を掛けて転ばす。そしたらユウキは背中に乗っかってくれ。」
ソニンが囁き、ユウキは「わかった。」と応えた。
「ああああああああああああ!!!!!!!」「待ってよ! 待って!」
まずは1人目が校門を通り過ぎる。一度見たら忘れられない金髪のパーマ、斉藤瞳。
ソニンは光点に合わせて、校門の陰から足を出す。
「うわっ」
校舎のほうから来た人物はもんどりうって前に倒れこんだ。ユウキは作戦通り上にのしかかる。
「え? 何? 誰なの?」倒れた人物は抵抗する。ソニンがその人物の後頭部にブルーノを押し当てトリガーを引く。
ターン
ターン
- 190 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/03(水) 23:47
- 銃弾は目の前の人物の頭に2つの穴をあけ、その人物を死に至らしめた。
ソニンは動かなくなった人物の前に回り顔をあげその人物を確かめる。
「メロンの村田さんだ。」感情もなく報告する。
ユウキはふと、預かっていたレーダーに目をやる。校舎の中のほとんどの光点が移動し始めた。
「みんな移動しはじめたぜ。どうすんだ?」
「そうね……。」というとソニンは校門から中に入り、
ナップザックから手榴弾を取り出し、安全ピンを口にくわえ、
手榴弾を持っている手を右に引くことによって安全ピンを外しおもむろに校舎の廊下の窓に手榴弾を投げる。
ガシャーン……ドゥーン
派手にガラスの割れる音がし、そして手榴弾が破裂した音が聞こえてきた。
中から何人かの悲鳴が聞こえてくる。
「こんなところね。深追いは禁物。…引き上げるよ。」「へーい。」
─────────────────────────────────────────────────────
- 191 :名無し娘。:2003/12/04(木) 14:44
- ソニンつえー
- 192 :名無し娘。:2003/12/04(木) 19:00
- 被爆で誰か死んだか
- 193 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/08(月) 01:46
- WATER TEAM'S PHASE──
誰かの悲鳴、そして2発連続の銃声、ガラスの割れる音、何かが爆発する音。
これらによってWATER TEAMは混乱のきわみにあった。
校長室で矢口とともに寝ていた飯田も、トランシーバー越しのアヤカの叫び声で飛び起きた。
トランシーバーでアヤカと連絡を取り合ってところに悲鳴から始まる、一連のコンボが彼女らを襲った。
最初にパニクったのは矢口だった。
「に、にげ、逃げなくっちゃ。」そういうと飯田の静止も聞かず一人で校庭へ逃げ出してしまう。
飯田は矢口を追おうかと一瞬思ったが、
状況の把握が先決と思い自分の武器である王者のつるぎを持つと校長室の扉から出る。
- 194 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/08(月) 01:50
- 外は銃声などは聞こえてこなかったが、WATERのメンバーと思われる叫び声や泣き声、廊下を走る音などが聞こえてくる。
(えっと、どうすれば…。)
普段モー娘。のリーダーとして頑張っている飯田だが、さすがにこういう経験はなく動揺していた。
とりあえず隣の職員室を覗いてみる。もう誰もいないようだ。
廊下を進み、昇降口と校庭への通路との交差点に差し掛かる。そこには吉澤がぼーっと突っ立って、何かを見ていた。
「どうしたの? よし…。」
飯田は吉澤に近づく、と同時に吉澤が見ていたものが目に入る。それは…変わり果てたあさみの姿だった。
「!!! これ、どういうことのなの?」飯田は吉澤の腕を掴み、揺らして経緯を尋ねるが、
吉澤は変わらず放心状態で何も答えない。
「そこ動かないでいてよ。」と飯田は言い残し教室へと移動する。
教室に入ると声が聞こえた。「辻ちゃん、しっかりして。」
教室ではアヤカが辻にを起こしているところだった。
目を覚ました辻は、まだ眠そうに目をこすり「あれ? いいらさん? みんなは?」などと暢気である。
こんな状況でもマイペースな辻に対し呆れの感情と安心の感情が同時に起きる。
おかげで少し我にかえる事ができ、一息ついて教室を良く見ると、現在教室にはこの2人しかいない。
- 195 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/08(月) 01:53
- 「みんなは?」飯田はアヤカに聞いてみる。
「悲鳴が上がった後、私と藤本さんと吉澤さんで様子を見に行きました。
そしたら、あさみさんが…。その後、廊下のガラスが割れて爆発音がしました。
吉澤さんは放心状態になり、藤本さんは急いで教室に戻り、
紺野ちゃんを連れて2人でどこかへ…。多分、逃げちゃったんじゃないかと…。
私は辻ちゃんがまだ寝ている事を思い出し、吉澤さんが心配でしたがとりあえず教室に戻りました。
辻ちゃんは起きていましたが、状況が全く飲み込めてないようでした。
そこへ飯田さんが入ってきたというわけです。」アヤカは答える。横で辻が目を白黒させている。
「ありがとう。」
飯田は耳を澄まし当たりの状況を探る。
銃声などは聞こえないが、誰かの泣き声が少し遠くから聞こえてくるようだ。
(あとは、メロンの3人か。)
飯田達3人は教室を出て吉澤の居る場所に戻る。吉澤はまだ放心状態だった。
- 196 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/08(月) 01:53
- 「しっかりして。」飯田は吉澤の頬を張る。
「あ、飯田さん。」叩かれた頬を押さえ、小さい声を出し吉澤が我にかえる。
「とりあえず、銃声はしていないみたい。安全とはいえないけど、とりあえず外を確認してくる。
アヤカ。付いて来てくれる? 吉澤は辻と教室で待っていて。」
「「「はい。」」」吉澤と辻は教室に戻った。
「まずはあの泣き声ね。」飯田とアヤカはゆっくりと昇降口へ向う。
昇降口に付くと、そこから外が見える。空がだいぶ明るい、もうすぐ夜明けかもしれない。
そんなサファイアブルーの空の下、WATERの衣装を纏った人物がおり、泣き声はそこから聞こえていた。
「ううううぅぅぅ、めぐたんまで……。」
飯田とアヤカはそっと近づく。
1人は……多分、村田だろう……うつ伏せで倒れており、頭に銃創と思われる穴があいている。
もう1人、柴田はそんな村田に覆いかぶさりひたすら泣いていた。
飯田とアヤカはそんな柴田にかける言葉が見つからず、立ち尽くすばかりだった。
─────────────────────────────────────────────────────
- 197 :名無し娘。:2003/12/08(月) 02:41
- 斉藤さんは何処
- 198 :名無し娘。:2003/12/08(月) 13:56
- ( ‐ Δ‐)y-~~~ 死んだふりもつらいにぇー
- 199 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/11(木) 22:00
- FOOD TEAM'S PHASE──
亀井はノートPCから目線を外し、部屋の時計を見る。午前5時3分過ぎである。
「ん〜」亀井は大きく伸びをする。
夜は明けたらしく外は明るく、どこかで聞いたことのあるような鳥の鳴き声が聞こえる。
結局、田中が持ってきたPCは、後藤がカメラの見えない部屋に置き一通り調べたが、
イマイチよく分からなかったようだ。亀井も午前4時からここへ来ていろいろ調べていた。
たしかにインターネットができるようにはなるらしいのだが、設定の仕方がわからず、
「解説書.doc」というファイルを開いてみてもなんのことやらさっぱりわからない。
そこへ、田中が部屋に入ってきた。「おいっす。」
「おはよ〜」「どう?」田中が少し期待を込めて聞いてきた。
亀井は黙って首を振る。「そっか。」田中はがっかりしたようだ。
- 200 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/12/11(木) 22:02
- その時、2階からドタドタと誰かが慌てたように降りてくるのが聞こえた。
階段から姿を現したのは、見張りをしているみうなである。ちなみにPCを調べていた後藤は今は寝ている。
「「おはよ〜」」「あ、おはよう。あの、帰ってきたよ。」「誰が?」
「ただいま〜」「おじゃましまーす。」集会所の入り口から誰かの声がした。
3人とも入り口に移動する。そこには…。
「あ、保田さんに里田さんも。おかえりなさいといらっしゃいませ。」亀井はお辞儀をする。
「あれ? 中澤さんは?」みうなは中澤がいないことに気付いた。
「うん、裕ちゃんはね、AIRとSALTの和解の立会いに向っているんだ。6時10分に丘の中央に集合で。
あたしはパソコンが気になったんだけど、ほらこの島って電灯あんまりないじゃない?
道も暗いし、何があるかわからないし、帰ってこられなかったのよ。それで倉庫に泊めてもらったのよ。」
「朝になったんで、保田さんは一人で大丈夫って言ったんだけど、
何があるかわからないし私もついてきたと、そういうわけ。」里田が後を継ぐ。
「んで、パソコンは? え、何、何?」見渡す保田を田中が引っ張って洗面所に連れて行く。亀井も続く。
里田が不思議そうな顔をして付いていこうとしたが、みうなが頷いて引き留める。
499KB
続きを読む
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50