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とくばん〜HPシャッフルサバイバルSP〜

123 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:43
WATER TEAM'S PHASE──

昇降口からSALTの4人の背中を見ながら、見張りの藤本美貴はSALTがここへ来た理由を彼女なりに考えていた。
(飯田さんに何らかの話を持ってきたのは間違いないところね。でも破談になったみたい。
 私でよかったら、亜弥ちゃんの力にはなりたかったところだけど……ん?)
その時、SALTと入れ違いになるように一人の人物が入り口に姿を現した。

「田中? どうしたの?」
「こんばんは。」
「こ、こんばんは。」アヤカは思いも寄らぬ人物の登場に少し戸惑っているようだ。
「あの、飯田さんに会わせてもらえますか?」
このとき、藤本はSALTに対して声を荒げた飯田を思い出した。
「聞いてはみるけど、今はちょっとダメかもしれないよ。」
「お願いします。」
「アヤカさん、ここお願いします。」そう言うと藤本は飯田がいる職員室に移動した。
扉の前に立つと藤本は、慎重に扉をノックする。今は飯田一人のはずだ。

コンコン

124 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/13(月) 22:44
「はい。」飯田がまだ少し怒気が含まれている声で返事が聞こえて来た。
「藤本ですけど、今、田中が来て、飯田さんに会いたいと言ってますが…。」
「……今、そんな気分じゃない。どんな用事が聞いて。」
(これはかなり気分が悪いな…。)
藤本は娘。としては入ったばかりだが、飯田が不機嫌の時には近づかない方がいいということは
他のメンバーからも聞かされていた。
藤本はとりあえず昇降口の方に戻ろうとしたが…

「安倍さんの件です。」すぐ後ろにはいつの間にか田中がいた。
「私は、安倍さんの最期の場にいました。そこで、安倍さんから飯田さんに伝言を頼まれました。
 それを伝えにきました。」

それに対する飯田の返答はなかった。かといって田中も立ち去る気配がない。周りの雰囲気がピリピリする。
藤本があまりの緊張感にしびれを切らしかけた時…

「いいわ。入って。」飯田の声が扉の向こうから聞こえてきた。

                   *            *

125 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:19
正直、飯田はSALTが安倍の名前を使ってWATERを引き込もうとしたことが気にいらず、機嫌が悪かった。
だから、はじめ田中が来た時も、すぐに会おうとは思わなかった。
だが田中の「安倍さんからの伝言」というのが気になった。早く聞かなくちゃいけないと思った。
だから入室を許可した。

入ってきた田中は、まずはナップザックを開けると白い帽子と拡声器を取り出し、飯田にそれを手渡す。
「これは?」
「これは、安倍さんが被っていた帽子と実際に呼びかけのときに使った拡声器です。飯田さんにと思って。」
よくみると両方とも血が付着している。
「うん、ありがとう。…座って。」
田中は座ると、丘での出来事を話し始めた。

126 :ゼロ ◆ZERO/PNu7I :2003/10/14(火) 22:21
田中の話はこうだ。丘の付近を走っていた田中にも安倍の呼びかけが聞こえたが、丘に近づくと銃声が聞こえたので、
丘の北側の入り口付近で様子を伺った。ちなみにそこには、AIRのミカ、高橋、里田もいた。
やがて銃撃戦がはじまったらしく、田中はまた少し丘から離れた所に移動した。
しばらくすると銃声もやみ、北の入り口からAIRの6人が降りてきた。
田中はちょっと躊躇したが、丘に移動しそこで死に際の安倍を発見したという事らしい。

「安倍さんは、最期に『圭織、みんなをよろしくね。』と。」
その言葉で田中の報告は終了した。
「それでは、私はこれで。」田中は、帽子と拡声器を残し、職員室から出て行った。

飯田はしばらく動けなかった。心にはただ、先ほどの田中の言葉『圭織、みんなをよろしくね。』が
実際に安倍の声になって響いていた。飯田は職員室から学校の小さな校庭に出て、西の空が見えるところまで歩く。
大分傾いた太陽のある空が、丘の稜線で切り取られている。

(なっち…。)

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