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【小説】チープなドラマ感覚で【みたいな】
- 1 :名無し娘。:2006/09/17(日) 19:57
- ハロプロ全般、上から下まで。
予定は未定で確定ではないけれど、書いていこうと思います。
『ヒロインx男』の形が多くなると思うので、好まない方はスルーでお願いします。
下の方でコソコソいきます。
レスしてもらえるなら喜んで受けます。
類似したものを書いてくださる方はどんどん書いてください。
- 578 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34
-
誘われているかのような妖しくみえる微笑。
呆然とそれを見ていると、四つん這いでジリジリとにじり寄ってくるその胸元は大きく開いて谷間とそれを包み込むブラが見え隠れしている。
「ンフフ…」
その指先が膝元に届き、ゆっくりと這い上がってきた。
滑らかな指先は休むことなく、やがて胸から喉元、そしてアゴから唇に達し形をなぞるように動く。
「……しよっか」
いまだ抜けきらないアルコールのせいか、それともこの妖しい魅力のせいなのか。
弾けるようにその手を掴み、一気に引き寄せて唇をあわせた。
「んんっ、ぅ……」
貪るように舌を絡ませ呼吸すら忘れて互いの口内を責め合った。
先に限界に達したのは藤本の方で。
ツーっと淫らに光る糸をひき離れた口で荒い息を吐いた。
「はっ、はぁ…ふぅ」
- 579 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:34
-
息が整いだした頃、フッと笑った藤本は、クルリと向きを変え、ベッドの方へと這いだした。
その姿はパンツルックではあったものの、コートに隠されていない、丸みのあるヒップラインを認識させる。
そしてそれを解って強調するように艶めかしい動きで離れていく。
そのヒップに誘われるように後を這い進み、藤本の上体がベッドへ届いたところでその脚を掴んだ。
「あっ…」
藤本はベッドの縁に背持たれるように振り向き、掴んでいる手ごと招き寄せるみたいに脚を縮める。
脚から手をあげていき、その細い腰をぐっと抱き寄せ首筋に何度もキスを落とす。
「や、んっ……ふふっ」
甘い香りに微かに混ざる汗の匂いに鼻をすり寄せキスを続けると、藤本はくすぐったそうに身を捩り吐息混じりの声で笑った。
キスを続けながらシャツのボタンに手を掛け一つ一つ外していく。
露わになったブラを目で楽しみながらも、そのふくらみの頂上を指先で掻くように刺激をする。
その指先に感じる感覚に合わせてビクリビクリを小さく跳ねる身体が、より一層の刺激を求めようとする動きが艶めかしさを醸し出していた。
吸い込まれるように胸元へ這わせた唇は、布一枚越しに探り当てた突起を舌で、唇で、歯で弄ぶ。
「んぅ、くぅ…はぁ、あぁん」
口で引きちぎるみたいにブラをずらしていきながら、柔らかなヒップを包み込むパンツを少しずつおろしていく。
指先に感じる滑らかな肌の感触と、シルクの感触。
- 580 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
ほぼ同時に、外気に触れてその存在を主張するようにツンと上を向いた乳首を歯をたてた。
「──っ!」
背を反りかえる大きな反応と、声にならない声を上げ、一瞬の間をおいてベッドに沈んでいく身体をなぞるように下へとすべりおりた。
薄いグレーのパンティに僅かな染みを見つけ、そっとなぞるように指先を埋めていく。
ゆっくり侵入していく指と静々大きくなる染みとは対照的に、藤本は息を乱し断続的に身体を震わす。
「はぁ、はぁん、んぅぅ」
その声に急かされるようにパンティを引き下ろそうとする、小さな吐息をつきながら藤本は上体を起こした。
「……美貴だけ?」
薄く微笑みながらの台詞に、あぁと気がつき腰に巻いてあったタオルを取り払った。
のし掛かるみたいに抱きつかれ、歯のぶつかりそうな勢いでキスをされた。
お返しの濃厚な熱いキスの後、スッと身体を滑らせた藤本は既に硬く存在を主張していたペニスを口に含んだ。
熱く熔けそうな口内でより硬度を増していくペニスを刺激しながら嬉しそうな笑顔を見せる。
自身の口内で脈打つペニスを、唾液と、先から出る粘液でねっとりと濡らすと右の手でしごきながら舌先で突き、舐め回す。
- 581 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
想像以上の快感に身を捩りながらも、身体を持ち上げるともつれあうように組み敷き、白い背中をみせる藤本美貴を後ろから貫いた。
「っ! あぁああっ、んっ」
見た目の感じよりも肉付きの良いヒップをしっかりと掴み、奥の奥まで一気につき入れる。
「ひぁっ! んんぅぅ…っ、くぅん」
その身体で侵入してくるペニスを感じながら、なにか堪えるような声を上げる。
少し引き、間髪入れずにまた奥へと突き刺す。
互いに酒気の残る身体を熱を共有するほどに触れ合わせて夢中に絡み合う。
「やっ、も…もっとぉ、突いて…ああぁん」
絡め取り放すまいと蠢く肉襞を感じながら、出し入れを繰り返すピストン運動はその激しさを増していく。
時折キュッと締めつける動きに小さく呻きながらも、パンパンと音が響くほどに挿し入れる。
「ひゃぅ! あぅっん、アタる…そこ、はぁっん、そう、そこ…イイのぉ」
僅かに角度を変えて身体の芯へ、それこそ貫かんばかりに突き上げると、より快楽を得る敏感な点を突いたようで。
今までよりも一つオクターブの上がった声を響かせる。
- 582 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:35
-
丹念に、それでも時折意図的にツボを逸らして幾度も突き上げると、堪えきれないように髪を振り乱して首を振り、合わせるように腰を動かしてくる。
次第に互いの快楽が同調するような感覚と共に昂ぶっていく。
「はぁ、はぁ、んぅあ、っ……ああぁぁん、もう…いきそっ、う」
それは言葉だけでなく。
反り返る身体で、にじむ汗で、乱れる髪で。
そしてなによりも熔かすほど熱く、締めつけを増す肉壷で限界が近いことを物語っていた。
「あっ、あっ、くぅっ…い、くぅ……あぁぁぁ〜っ!!」
一際高く絶叫に近いの声と、時が止まったように全身を張り詰めさせる藤本。
一瞬遅れて込み上げた快感の全てを、その白く汗ばむ背中に解き放った。
力尽きたようにベッドへ崩れ落ちる藤本の横へ、大きく息を吐きながら倒れ込む。
心地良い酩酊感と開放感に身を任せ、眼を閉じて深く沈んでいった。
- 583 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
閉じた瞼越しに感じる陽の光に目を覚ました。
気怠さを自覚しながら上体を起こし大きく一息ついた。
昨晩のことを思い返し、夢か現か混濁した意識の中、ベッドサイドの小さなテーブルの上に目がとまった。
小さなメモが一枚。
手にしてみるそれには携帯らしき番号とメッセージが一行。
気が向いたらでてあげる!
夢じゃなかった。
そう思い自然と笑みが浮かんできた。
どうやら一つの出会いを逃さずにいたらしい。
end.>>542
- 584 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
…………
- 585 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:36
-
己の中の眠っている何を見抜かれたかのように僅かに後退った。
その不思議な笑みと妖しさを秘めた強い目に飲まれ身体が動かなかった。
不意に立ち上がった藤本の予想外に華奢な手に引かれて寝室へ、そしてベッドの上に押し倒される。
そのすらりとした脚をふわりと包み込んでいたパンツを脱ぎ捨て、露わになった下半身にはシャツの隙間から黒いパンティが覗けた。
ペットボトルの水を口に含んだ藤本が薄く微笑みながらその濡れた唇を押しあてて。
舌で割られた口内に流れ込んでくる水と、艶めかしく動く舌にむせ返るような感覚を覚えた。
軽く咳き込む身体の上で藤本美貴は、流麗な身体のラインを強調するように腰を引きながら髪をかき上げる仕草。
「……もうこんなになってる」
クスクスと喉で笑いながら、タオル越しに硬くなりだしているペニスの上で艶めかしく腰をふっている。
たまらずその身体に手を伸ばすが、触れる直前に細い腕でそっと払い除けられた。
「触りたいの? まだダメだよ」
妖しい目で笑いながら、払った手を掴みバンザイの姿勢でベッドに押しつけられた。
そして自らシャツのボタンへ手を掛け、一つ、また一つと焦らすようにゆっくりと外していく。
少しずつ見えてくる白い素肌と、対極の黒いブラ。
視覚での興奮はますます血液を一点に集めていく。
脱いだシャツをゆらゆらと動かし、目隠しをするようにそのまま顔の上に落とした。
- 586 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37
-
白色の甘く芳しいブラインド越しに見えていた世界が唐突に黒く陰る。
何かを言おうと開きかけた口元をポニュっと柔らかく温かい感触が遮った。
血液を下半身へ集める圧迫感は、その柔らかさの中に小さな“しこり”を感じさせる。
陰りの正体に気がつき、不自由な唇で“しこり”をくわえ、ついばみ、舌を伸ばした。
「うぅん…ふふっ……あんっ」
しばらくそんな行為を楽しむと、不意に苦しくも心地良い圧迫感が消える。
すると「うぁ」っと声が上がるほどの、背筋がむず痒くなるような快感が走った。
乳首の辺りにヌメッとしたものが這い回る。
硬くなった先端を避けるように円を描くそれは、なんとも言い難いもどかしさだった。
「あははっ…ビクンビクンって、おもしろーい」
からかうように笑う藤本の声はその行為で自身も感じているかのような喜悦に満ちていた。
爪の先で引っ掻かれると、堪えようとしても堪えきれない反応をしてしまう。
カリッ、カリッと不規則に続く刺激に呻いていると、なんの前触れもなくカチカチに硬くなった己自身が自由にされた。
「もうすっごいことんなっちゃってるじゃん……」
- 587 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37
-
熱く脈打つそれに、ひやりとした手が触れる感触。
そっと撫でるように、根本から這い上がっていく。
カリで一瞬止まった手は、猫の首元へするような柔らかさで愛でるように動く。
先端から洩れ出す汁を塗り広げるようにしごかれ、たまらずまた声を上げる。
「ふ〜ん…気持ちいいんだ」
声を上げた途端に藤本はそう呟くと、同時に手の動きも止まった。
ジリジリと焦らされシャツを払い除け起きあがろうとすると、クスクスと笑う細い腕に阻まれる。
「ちゃんとシテあげるから…ジッとしてて」
不思議な魔力を秘めた声だった。
あれほど焦れていた気分が押さえ付けられたようで、黙って大人しく体を沈めた。
が、続きは乾いた手の感覚ではなく、生温く淫靡な感覚だった。
思わず跳ねるように上体が起き、そそり立つペニスをくわえ込んだ藤本がその視界に入った。
身体なんてものは現金なもので、あの藤本が己のペニスをくわえている。
その意識が一回り大きく膨らませたらしい。
「わっ…まだ大きくなるんだ……」
- 588 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:37
-
藤本は少し荒い息を吐きながらそう言うと、再び先端をくわえ込みながら空いた手で袋を優しく包んだ。
柔らかく揉むように動いたかと思うと、急に締めつけるように強く握る。
そうしながらも休むことなく口は動き続け、クチュクチュと音を立てながら出し入れしては舌でねっとりと舐め回す。
その度にビクッと身体を震わし声を上げてしまった。
その刺激に対する反応は、より一層藤本をも刺激するらしく。
互いの反応が相乗効果となり、どんどんと昂ぶっていく。
「あぁっ…もう我慢出来ないっ」
不意に全ての行為を止めて膝立ちになった藤本は、そう言いながら黒いパンティに手を掛けた。
脱ぎ捨てられたパンティは淫らに湿り気を帯び、ベッドの脇へ放られた。
暖かみのある照明の下でグッショリと濡れ張り付いた茂みと、とテラテラといやらしく光る秘部が露わになる。
身体を跨ぐように再び膝立ちの姿勢に戻ると、ゆっくりと腰を下ろし始めた。
「あっ…熱い……」
ぬぷっと音が聞こえてきそうな感覚と共に亀頭が秘部へと埋まっていく。
「うっ、あぁぁ……はぁ」
パンパンに張り詰めたペニスを奥深くまで飲み込んでいく藤本は、自分の身体を抱きしめながら押し寄せる快楽に身を震わせている。
- 589 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38
-
先端が最深部へ到達するまで腰を沈めると耐えかねたのか、小さく腰を引きながら倒れ込んできた。
「はぁ…ん、はぁ、はぁ……」
一つの波が過ぎ、やや落ちついた様子になった藤本美貴は、ほぅっと溜息をついて耳元で囁いてきた。
「アタシが動くから…ね」
そう囁くとやり場のないままで投げ出していた両手を取り、それでバランスを取るようにしてゆっくりと腰を動かしはじめた。
「ん、んんっ、はぁん、くぅぅ」
腰を前後に揺するたび、切なげな声をあげフルフルと揺れる胸に舌を伸ばそうとするが、意図してなのかそうでないのか、際どいところで届かない。
快楽を貪ることに夢中になっているかのように眼を閉じ、一心に腰を振り続ける藤本美貴はその動きを激しくしていく。
「ああぁん、んっ、んん、いいっ、はあんっ!」
激しい腰の動きに合わせるように秘壷はその圧力を強め、ペニス全体をギュっと締めつける。
激しい動きと締めつけに、たまらず達しそうになると、それを感じ取ったのか、動きが緩やかになった。
「──っ、はぁ…ま、まだ……まだダメ!」
クッと腰を上げたかと思うと、片手で強くペニスの根本を握りしめた。
小さな苦鳴を漏らすのも構わず、込み上げた欲望を押し戻そうとするように強く握られ、昂ぶりを抑えつけられた。
- 590 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38
-
「うふふ…もうちょっとガンバってね」
一旦落ちついたのを確認し、再び腰を下ろし、その感覚楽しむようにペニスを膣内へくわえ込んだ。
「んんっ、うぅっ、ふぅっん…んぅ、っぅうん」
吐き出せなかった欲望を抱え込んだペニスを奥深くで味わうと、ブルっと一つ震えゆっくり腰を揺すりだした。
「ん、きっ、気持ち、いいっ! あぅぅ、あっ、あぁぁぁ!」
夢中に腰を揺すりながらも更なる快楽を求めようと握りあっていた手を自分の胸へと誘った。
小さいけれど形の良い柔らかな胸をほぐすように揉むと、激しくと催促するかのように手を動かされた。
藤本の腰を振るタイミングに合わせて、腰を突き上げてやると一層強い反応が返ってくる。
「ひっっ! ああぅ! あっ! んっ! あっ! も、もう…」
重ねられる快感は藤本の身体を急速に限界へ近づけていく。
それと同じように、一度止められた昂ぶりがこみ上げてくるのが判る。
「だめ、あはぁっ! もぉダメッ …い、いくぅぅぁっ!」
大きく跳ねた声と身体を震わせる藤本。
その体内に熱い液体を撒き散らしながら意識は落ちていく。
最後に感じたものは、どうしようもないほどの満足感と、自分の上に崩れ落ち抱きついてくる柔らかな身体だった。
- 591 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:38
-
閉じた瞼越しに感じる陽の光に目を覚ました。
異常な気怠さを自覚しながら上体を起こし大きく一息ついた。
昨晩のことを思い返し、夢か現か混濁した意識の中、ベッドサイドの小さなテーブルの上に目がとまった。
小さなメモが一枚。
手にしてみるそれにはメッセージが一行。
またドコかで遇ったら……ね
夢じゃなかった。
そう思い自然と笑みが浮かんできた。
何故だかまた逢えるだろうという確信めいたものがあった。
end.>>542
- 592 :『ゲーム』:2006/12/07(木) 20:39
-
GAME OVER
- 593 :名無し娘。:2006/12/08(金) 01:10
- いいねこれ
>>542の人気に嫉妬
- 594 :名無し娘。:2006/12/08(金) 14:42
- 上手いこと作るもんだな
- 595 :名無し娘。:2006/12/08(金) 18:47
- まあ
いやらしい
- 596 :名無し娘。:2006/12/08(金) 21:30
-
昨日書き忘れたことを書こうかな……なーんて思ったら。
早々とレスされててビックリ(^^;;;
これも実はリメイクというか、リファインというか。
だいぶ前に違うヒロインで書いたのを、ハロプロで近しいイメージの人に変えてみました。
名前と、台詞をちょこちょこいじって、バランス崩さない程度に手を入れただけで。
そのときはhtmlだったからリンクはるのが簡単だったんだけどなぁ。
「あ、ここでもできるじゃん」、なんて思ったけど、レスナンバーで指定するのはドキドキしましたw
最初に計算したけど、一個でもズレてたらなんだかワカンなくなるもんねえ。
その昔、プロットたてたときには分岐や文章量で倍ぐらい考えてたんだけど、途中で疲れてきたし飽きた。
>>593
いいっすか? そりゃあいい。
542くらい人気になればいいなあ。いいのかな?
>>594
実は書いたのは二年くらい前だとか。
>>595
さかんにエロが足りない言うてる人に言ってあげてください。
ではまたそのうち。
- 597 :名無し娘。:2006/12/15(金) 22:45
-
>>432の後日談のせまーす。
『OFF』が出てから書いたんだった……気がする。
ショートショート的な。
この後、もう一本、微妙な時期にも書いたんだったと思いだした。
あー結構好きだったんだなぁw
- 598 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:47
-
店を開ける前、準備中の空いた時間にふとした誘惑に駆られて買った本を取り出してみた。
なにかの番組で見たネタを思い出し、妙に期待しながらページを開いた。
………
……ふむぅ
……ほうほう
おぉ……
「……おん?」
これはなかなか……?
「久遠?」
「……え?」
「こんな暗くしたままでなにブツブツ言ってんの?」
「うわっ!?」
肩越しに聞こえた声に現実に引き戻され、それと同時に開いていた本を閉じて背中に隠すようにして振り向いた。
- 599 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:47
-
「そんな驚かなくてもいいじゃん」
「ど、ど、ど──」
「どもりすぎだってば。なに、なに隠したの?」
「いや、なんでもない。仕事上の事で…ってコラ、なんでもないって──」
「嘘つけ〜、おいらの知らないトコでエッチな本見てたんだろっ…寄こせっ♪」
「──危ないから、よせって…ホントに、うわっ──」
「きゃあ!」
無理矢理にでも本を奪おうと、乗りかかるような姿勢になった真里。
そんな状態で支えきれずにバランスを崩して2人もろとも転がり落ちた。
こんな時、自分的に一瞬がスローモーションに感じる。
その瞬間、まず真里を庇うように転がり落ちるトコロは褒められて然るべきじゃあないだろうか。
「いってー……」
「ご、ごめん…大丈夫?」
「俺は平気だけど……そっち──」
「そっか、なら良かった」
「は?」
- 600 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:48
-
狭い空間で痛打した後頭部を押さえながら視線だけを廻らすと、ニンマリした顔つきの真里が起きあがったところだった。
その手に今しがたまで俺が眺めていた本を手にして。
「へぇ〜♪ くお〜ん、こーゆーの見るんだ。へぇ〜♪」
「いや、違う。そうじゃなくって──」
とっさに奪おうと手を出すが、その行動は予測済みだったらしく、伸ばした手の届かないトコロへかざされてしまう。
「なんか恥ずかしいよ〜」
「あのね──」
「でも、言ってくれればいくらでも持ってきたげるのにさ♪」
「いや…だから──」
「やん♪ 久遠の愛を感じちゃう♪」
「………」
自分の写真集を手に、妙なハイテンションっぷりを見せる真里を、倒れ込んだ姿勢のままで半ば呆れてみていた。
なんかクネクネ動いて可愛いようなおかしいような。
- 601 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:49
-
「で? で? どう? どうだった? おいらのナイスバディにクラクラしちゃったり?」
「いや……」
「なに?」
「ベトナムも良さそうなところだな──」
「はぁ? それだけ?」
「あっ」
「そうそう、大事なところでしょ」
「寄せて上げての特殊効果が──」
「もういいっ!」
最後まで言い終えるよりも早く、写真集の角で殴打された。
脳内に響く鈍い音に昏倒しそうになるのを堪え、二激目を振り下ろそうとする手を何とか掴んだ。
「嘘に決まってるじゃん」
「え?」
「すっげぇ可愛くって……綺麗で、魅力的で……こんな素敵な娘と一緒にいられるなんて……
改めて夢でもみてるみたいだって、そう思ったりしてさ」
「………」
「ん? どしたの?」
- 602 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:49
-
写真集を持って振り上げた手を掴まれた、不自然な姿勢のままで硬直したみたいに動かないでいる真里。
その表情ははにかむような、くすぐったいような。
耳まで赤く染めて、喜びを隠しきれずにいるような。
「だってそんな……」
語尾は小さくなり聞き取れないほどだったが、言いたいことは判る。
普段あまり言わないようなことを言っていると自覚はしていたから。
「改めて。あぁ、俺って真里のこと好きなんだなって」
頬を染めている真里の手をそっと下ろして両手を脇に揃えさせ、ギュッを抱きしめた。
小さな身体を包み込むようにして抱きしめて、その首筋に顔を埋めるように真里を感じる。
「もぉ…なんでそんな……久遠」
「ん?」
- 603 :写真集@やぐち:2006/12/15(金) 22:50
-
触れ合う身体から伝わる言葉は甘い吐息のような囁きで。
「……おいらも大好きだよ」
その言葉はそっと身体に染み込んで、全体に震えるような喜びをもたらす力を含んでいた。
「……あっ…ん、く、久遠」
「悪ぃ…本能のなせるワザってヤツで」
余計なところにまで力がいったらしく、真里にも気づかれていた。
「や、ちょっと…こんなトコで!?」
「我慢出来ない…」
「ん…仕事、でしょ…あっ」
「少し遅らせるからイイ」
「やだ…く、くお…ん……あん」
開店時間、ちょっと遅らせても構わないな。
そう思いながら行為に没頭していった。
- 604 :名無し娘。:2006/12/15(金) 22:51
-
あぁ、こんなの書いてたなぁって懐古うpでした。
- 605 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:56
-
「いらっしゃ――、なんだ……」
もう閉めようと思っていた頃、開いたドアに反応した言葉を半端で収めて、あえてぶっきらぼうな言葉に置き換えた。
ドアの隙間からのぞき込んだ顔が、消えたと思ったら滑り込むように入って来た小さな姿。
それがいつもよりも……小さく見えたのは気のせいだろうか。
「なんだってなんだよ…」
「いや、こんな時間にこっちに来るの、あんまりないなって、な」
言いながら看板の照明を落とすスイッチを叩き、カウンターを回り込んでフロアに出る。
「そうだっけ…」
「そうだよ」
挨拶なんか不要な間柄のコイツに、ひらひらと手を振りながら座るように促す。
ドアを背に動こうとせずいる小さな身体の後ろに手を伸ばして鍵を一捻りした。
「いいの? 閉めちゃって」
「いいさ。ちょうど閉めようと思ってたんだから」
「………」
「いつまで立ってんの? 座れよ」
「あ…うん」
手近な椅子に腰を下ろしたのを確認して、カウンターに戻った。
「なんか飲むだろ?」
「……アルコールならなんでもいい、って言ったら怒る?」
「怒りゃあしないけどな、でも却下」
「なんだよ、それ……」
- 606 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:56
-
ロックアイスを落としたグラスにウーロン茶、そしてキンキンに冷やしたタンブラーにビールを注ぐ。
それを両手に近づいていくと、苦笑しながら「自分は飲むのかよ」って文句を言われた。
普段の半分にも満たない、力のない声だった。
「俺はいいんだよ。ほれ、飲め」
「ん…あんがと」
手渡したグラスに口をつけるのを見ながら、バレないように小さくため息をついた。
「で、どうかした?」
「別に…。どうかしなきゃ来ちゃイケないのかよぉ」
「ならそんな景気の悪い顔すんな」
「別にっ、そんなことないってば」
「ふ〜ん」
「………」
「………」
更に言葉を続けようとしたようだったが、それを飲み込むように俯きグラスを見つめていた。
「で、実際なに……別れ話かなぁ?」
「っ!? ……知ってたんじゃん」
それほど意外でも無さそうに、それでも上げた顔に少しだけ驚きの色が見えた。
「ある人から聞いてな」
「全部?」
「全部見たし、全部読んだ」
「……信じる?」
「……どう思う?」
「そんなの……」
- 607 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:57
-
卑怯だなと理解していながらの台詞だった。
案の定、下唇を噛み黙り込まれてしまった。
「信じるよ」
「そう…そっか……」
打ち拉がれたように頭を垂れたその姿に、用意していた言葉を放りだした。
「バッカ…記事じゃないからな」
「え……?」
「此処に来たってコトは、そういうことだろ? なら信じるさ」
「久遠……」
今にも泣き出してしまいそうな表情。
「だから、そんな顔すんなって」
「……う、うん」
無理に作った笑顔。
- 608 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:58
-
「俺はさ、そっちの世界のことなんて知らないけどな……“らしく”ないって位は解るよ。
シンドイだろうって位は解る……」
「……ん」
「あんなコト望んでたんじゃないんだろ?」
「……うん」
「でも…ああするしかなかったんだ」
「…うん」
なにのことを、どれを指しているのかは解っているんだろう。
両手で覆った向こうから漏れてくる小さな肯定。
苦々しい思いをすり替えるようにビールを口に運んで立ち上がった。
「ならいいさ」
「…っ……な、なにが…い、いいんだよぉ」
後ろに回って見る背中は儚いほどに弱々しい。
そっと肩に手を置いて、このキモチが少しでも伝わればいいと、少しでもコイツが楽になればいいと、耳元に口を近づけた。
「やれるだけのことをすりゃあいいよ……ずっと応援してるから」
堪えるように鼻を鳴らして、無理にでも何か言おうとしているらしい、その小さな身体を抱きしめた。
「頑張れ…頑張れ」
「………」
「ずっと側にいるから…我慢ばっかしなくたっていいんだから」
「…ふっ、ぐ……ぅ……」
返事も出来ずに、ただ嗚咽を堪えている耳元で。
なにも出来ずにいる自分の想いを届ける為にささやき続けた。
「頑張れ……」
- 609 :公式発表@やぐち:2006/12/23(土) 20:58
-
end.
- 610 :名無し娘。:2006/12/23(土) 21:00
-
表記通り、例の件での公式発表直後に書いた。
自分の書いたものとの整合性を何とかするためと言い訳をして、まだ大丈夫って言い聞かせた。
今でも応援はしてるけど、もう書けないかなぁ。
- 611 :名無し娘。:2007/01/10(水) 00:41
-
全二回か三回予定で紺野さん。
設定も書いたのも卒業前。
多分、さくら組(安倍さん卒業後)くらいの時期だった。
非狩狩の作者さんと共作したものを、氏の許可も得て、ちょいと手を入れて掲載。
- 612 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:41
-
「気持ちいい?」
作業を中断して、上目遣いで彼女が問う。
「うん、すごく……」
彼女を見下ろし、僕が答える。
僕の答えに、彼女は嬉しそうに微笑んで、作業を再開させた。
愛らしい、ぷっくりした薄桃色の唇に、僕の硬直した肉棒が、飲み込まれていく。
ベッドに腰を下ろした僕と、その目の前に座り込む彼女。
彼女は今、僕の股の間に頭を割り込ませている。
僕は彼女からフェラチオされていた。
彼女のほっぺたの内側が、僕の肉茎に張り付く。
彼女の熱くなった体温が、僕の体温と溶け合う。
彼女の唾液が絡む音が、僕の昂奮を加速させる。
彼女の頭の前後運動が、激しくなる。
いっそ淫猥とさえ思える水音が大きくなり、彼女は羞恥からか、その表情を歪めたようだった。
限界が近い。
「……イきそう……」
- 613 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:42
-
離れるように、という意味で言ったつもりだったが、彼女はさらに舌を激しくうごめかした。
「口に、出ちゃうよ……」
言った瞬間、彼女が舌先で、鈴口をチロチロと刺激する。
苦痛に耐えるように、僕の顔は歪む。
肉茎の根元を握る彼女の細くて、そのくせ柔らかい指が、唇の動きと連携して、激しく擦り上げる。
その刺激のあまりの強さに、僕は思わずのけぞってしまった。それまで堪えてきた発射欲を、解放した。
いや、させられた。
「イ、イクよっ」
彼女の口の中に、精液を放つ。そんなことをしたのは初めてのことだった。
口でされたことすらも、今日が初めてなのだ。
彼女は眉をひそめながらも、僕の精液を口内に受け止めている。
やがて射精の噴出が収まると、彼女は肉棒を口の中から解放した。
彼女の唾液でてらてらと光る自分の肉棒を見ると、若干の昂奮と同時に、どこか後ろめたい気分になる。
「ん〜ん〜」と喉を鳴らすような声に我に返ると、彼女が口元に手をやりおろおろしている。
口の中の精液をどうにかしようとしているんだと察して、ティッシュを数枚取って渡してやる。
涙目で僕を見上げて、何故か少し躊躇した後、ティッシュを受け取り、口の中の精液を吐き出した。
- 614 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:42
-
「大丈夫だった? ごめんね、口に出しちゃって」
彼女が離れなかったのだ、ということは判っているけれど、それでも僕は謝る。
さきほどの後ろめたさから来るもの…だったろうと思う。
彼女はぷるぷると首を横に振って言う。
「いいの、わたしがしてあげたかったんだから。それより…」
上目遣いで僕をうかがい、少し言い淀む。
「ごめんね、その、の、飲めなくて……」
まるで、飲めなかったということが悪いことのような言い様に、僕は、うっと、言葉に詰まる。
僕がイった後おろおろしていたのも、ティッシュをすぐに受け取らなかったのもそのためか……
「そんなこと──」
しなくてもいいのに、そう言おうとした。
だが、それに先んじて彼女が言葉を重ねた。
「今度は、ちゃんと飲むから……」
……何を言っても、無駄なんだなって、そう思う瞬間。
僕はただ、その言葉に頷くだけだった。
- 615 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:43
-
不意に、彼女の携帯が鳴った。
慌てた様子で、彼女が部屋の隅に置いてあった鞄を探る。
「マネージャーから……」
携帯を取り出した彼女が、僕の顔色をうかがうようにその相手を告げる。
軽く頷いてみせると彼女は「ごめんね」と口にしてから部屋を出て行った。
廊下からかすかに、話し声が聞こえる。
一人になってようやく、自分の肉棒の先から精液が垂れているのに気付いて、慌ててティッシュを取って処理した。
カーペットには落ちていないようだ。
脇に畳んでおいた、下着とハーフパンツを履いてしばらく待っていると、戻ってきた彼女の表情が暗いものに変わっていた。
「明日の予定がちょっと変更になったって」
休みになった、という雰囲気ではないようだ。
となれば……あぁ。
「早くなったの?」
「……うん」
彼女は申し訳なさそうに、俯く。
「それで、その……今日は……」
ここまで…ってことだ。
そんなに恐縮することじゃないのに。
- 616 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:44
-
「僕だけ気持ち良くしてもらっちゃったね」
「き、気持ち良かった?」
丸いほっぺた――“頬”と言うより、彼女には似合っている気がする――を、真っ赤に染めながら、彼女に尋ねられる。
褒められた、と思ったのか、少し嬉しそうだ。
彼女の態度に対して、僕はわざと軽そうな笑顔で、ともすれば無神経に受け取れる言葉を選ぶ。
「初めてとは思えないくらい、上手かったよ」
自分の声が、どことなくざらついているように感じる。
鼓膜を紙やすりで、擦られたような不快感。
しかし彼女はそれを感じ取ることはなかったらしい。
俯いたまま、ちらちらとこちらに目を向けて恥ずかしそうに口を開いた。
「ビ、ビデオ、とか見て……その、バ、バナナで……」
彼女は日頃の言動そのままの生真面目さで正直に答える。
「練習したんだ?」
そんな“行為”を練習していたという事実。
それをハッキリと言葉で指摘され、真っ赤になった顔を隠すように頷いた。
「お、男の人って、こういうの好きだって、聞いて、それで……よろ、喜んで、ほしくって」
そんなこと説明しなくても良いだろうに、とも思うのだが。
- 617 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45
-
「ありがとう」
というもの、ちょっとずれた発言かもしれない。
けれど他に、この気持ちを伝える適切な言葉が思いつかなかった。
「あ、あの…」
何か言いたげに口を開いた彼女だったが、それに続く言葉はなんとなく想像が出来た。
だから僕は、あえてそれを遮る為だけの言葉を口にする。
「シャワー、浴びてきたら。もう寝ないと」
「あ。うん……」
弱々しい声で頷いた彼女は、ほんの少しの間、僕を見つめて部屋を出る…寸前、足を止め思いきったように振り向いた。
「ねえ、私のこと…」
躊躇いがちの小さな、でも精一杯の言葉。
「好き?」
「……好きだよ」
- 618 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45
-
予想できた言葉だった。
その彼女の精一杯の言葉に、僕は笑顔を作って……作った笑顔で、当然のように答える。
「当たり前じゃない」
あさ美は安堵した笑顔を返して、バスルームへ向かった。
閉じられた扉の向こうで遠ざかっていく彼女の足音を意識した。
やがてそれが聞こえなくなると、僕は体をベッドに投げ出した。
深く、大きな溜息をつく。
あれはいつだったろう……
付き合い始めてしばらく経ったデートの日、彼女は僕の喜ぶ顔を見るのが好きだと言ってくれた。
そんな彼女の気持ちが、僕は心底嬉かったんだ。
嬉しかったはずなんだ……
それなのに……なんだろう、この胸に絡みつくものは。
靴の中に転がり込んだ小石のような感覚は。
何か違う
何かが、いつからか彼女から、紺野あさ美から向けられる感情は、あの時と違ってきている。
どこかそんな気がしてならなかった。
- 619 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:45
-
僕が起きた時にはすでに、あさ美は朝ご飯の支度を終えていた。
綺麗に整えられた髪と服装で、いつ出かけても大丈夫そうな姿で。
あさ美はウェーブのかかった自分の髪が嫌いらしく、綺麗なストレートになるまで、相当な時間がかかっても必ず手入れをする。
そのお陰で、ただでさえ時間が必要なんだから、ここまでしなくてもいいのにと思う。
「何時に起きたの? 別にこんなにしてくれなくてもいいのに……」
少し眠そうにも見えるあさ美にそう言った。
すると彼女は、笑顔で……さも何でもないことのように言う。
「私がしてあげたかったんだから、大丈夫。……食べたく、なかった?」
小さくなっていく言葉尻は肯定を求めるような色を感じさせた。
僕はそれに、形ばかりの笑顔を作り「そんなことないよ」と返してあげる。
最近、作り笑いがすっかり得意になってしまった自分に気がつきだしていた。
食事中は食べることに集中してしまうあさ美に付き合って、黙々とテーブルの上の料理を片付けていく。
ときおり箸を運ぶ手を休めてあさ美を見つめる。
食事をしている時の彼女の、幸せそうな、ふわりとした表情が好きだった。
あさ美のペースに合わせて食事をすると、三十分近く――時にはそれ以上――かかってしまうが、その間、会話はほとんどない。
だけど、嫌な沈黙ではないのは彼女のまとうその幸せそうな空気故だろうか。
- 620 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:46
-
食事の後片付けは僕がやる。
あさ美はこれもやりたがったのだが、これだけは譲らなかった。
準備の手際がいいのだが、片付けるとなると、なぜか手際が悪いと言うか、要領が悪いと言うか。
一度片付けを終えた後をのぞいいてみたが、食器棚の中が無理矢理押し込めたみたいになっていた。
神経質、とまではいかないと思うが、どちらかと言えば整理整頓にこだわる方なので、こればっかりはどうしても任せられなかった。
慌ただしい朝の時間。
仕事の時間が早まったってのに、ギリギリまでねばるように一緒にいたがったあさ美が、名残惜しげに出かけていった。
一方、講義までも時間があり、バイトも入っていない僕は、ベッドに腰を下ろし、このざらついた不快感の根を探し求めて記憶を辿った。
- 621 :『きみのえがお』:2007/01/10(水) 00:46
-
…………
- 622 :名無し娘。:2007/01/10(水) 00:47
-
ひとまずここまで。
つづきは近日中にでも。
- 623 :名無し娘。:2007/01/29(月) 20:25
- 更新まだーー
- 624 :名無し娘。:2007/02/26(月) 09:15
- 待ってる
- 625 :名無し娘。:2007/02/26(月) 20:49
-
>>622 で大嘘ぶっこきましてごめんなさい。
今度こそ、今週中くらいにはなんとかm(_ _)m
- 626 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:11
-
出会ったのはほんの小さな偶然だったっけ。
前々から“貸し”があったサークルの友人から「借りを返す」と誘われて、出向いていったコンサート。
なんでも相当にレアなチケットだとかで「本当なら返しすぎでお釣りが欲しいくらいだ」とかボヤいていたのを覚えている。
それがモーニング娘。だってことは会場に着いてから知ったんだった。
ましてや最前列だったなんて……
そう、僕等の席は、きっとファンならば垂涎ものだろう、メンバーが至近に見える最前列だった。
まるで興味がないワケじゃあなかったけれど、歌まではよく知らなくて、周囲の熱気に置いてけぼりをくらいながら始まったコンサート。
「あれ? こんなモンだっけ? 人数」
記憶に残っていた大所帯ぶりとはかけ離れている人数に、隣でノリノリになってる友人に問い掛けた。
「あぁ、だって今日は、さくらコンだからね──」
サクラコン……
それ以降、なにやら説明を続ける友人の話を聞き流して記憶を探った。
確かスポーツ紙かなにかで見た覚えがあった。
二つに分かれて別々になんとかかんとか……って。
まぁ、その時は気にしなかったことだし、今でも大した違いではなかっただろう。
なかなかついてはいけないノリではあったけれど、それなりに楽しめばいいことだったんだから。
- 627 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:13
-
ほんの二メートルあるかないかという距離、手を伸ばせば届くようなステージの上で、笑顔を振りまき歌い踊る彼女達は確かに輝いて見えた。
幾分かは少人数になっているとはいえ、個々のダンスにステップを踏みながらのフォーメーション。
なかなかブラウン管を通して観るのとは違う、小さな感動に目を瞠らされていた。
が、そんな最中、視界の隅に捉えた小さなアクシデント。
多分、なにかの間違いで接触でもしたんだろう、メンバーの娘が一人、尻もちをつくように転んでしまっていた。
幸い怪我なんかはなかったようで、すぐに立ち上がって曲に戻ったけれど、動揺しているのか、その動きがぎこちなく見えた。
そして……気のせいかもしれないけど、立ち上がった瞬間のその娘と目があったような気がしたんだ。
ファンなら大喜びで自慢して廻るんだろうか……まぁ、気のせいだと思うことにした。
曲が終わり、衣装替えでもするんだろう一度舞台袖に消えていく彼女達。
しばらく待つと、新しい衣装に身を包んで現れたメンバー。
煌びやかな照明を浴びて何事もなかったかのようにステージは進み出した。
僕もいつの間にかそんなことは忘れて舞台の上の彼女達に集中していった。
その最中、時折妙な感覚に囚われる……なんとはなしに見られているような感覚。
何気なく周囲を見廻してみても当然のように、誰に注視されているわけでもないようだった。
気にはなったけれど、こんな場所でそんなことを気にしても仕方がないと思いなおしてステージに目を向けた。
その後は何事もなく全てのステージが終わり、食事をして友人と別れて家に帰った。
それなりに良かったとは思ったけれど、多分もう見に行くこともないだろうと思った。
せいぜいTVの画面上や雑誌などで見かける程度でしかないだろうと、そう思っていた。
数日後、奇妙な電話を受けるまでは。
- 628 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:14
-
その日、バイトへ向かう為に家を出る、その少し前のことだった。
珍しく携帯の方ではなく固定電話が着信を告げた。
離れて暮らす息子に、やたらと世話を焼きたがる母さんからかなと思いながら取りあげた受話器。
「もしもし?」
『あ……』
「……?」
あ?
「もしもし? どちら様?」
『あ、あの…紺野です。紺野あさ美です』
「……誰?」
『えっと、あの…この前コンサートに来てくれましたよね?』
「……はい?」
『モーニング娘。の紺野あさ美です』
「……イタズラなら切りますよ」
『ま、待って待って…あの、わたし、違いますっ』
……なんなんだ
完全にイタズラ電話だと思い込んでいたんだ。
次の一言を聞くまでは。
- 629 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:15
-
「切るよ」
『あぁ、先輩、待っ──』
耳から離しかけた受話器から微かに届いた単語。
先輩?
「先輩? キミ、誰だって?」
『あ、あの…中学の時に一緒だったんです……』
中学?
「僕の後輩? 北海道の?」
『はいっ、そうなんです』
「で、誰だっけ? 紺野…さん?」
『はい』
そういえば一時期、学校で話題になっていた記憶がある。
確か二個下の学年でアイドルになった娘がいたって。
そうと知った時には、その娘は東京に出てしまったらしくて、そう長く続いた話題ではなかったと思うけど。
それがこの娘だって……?
- 630 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:16
-
「ええっと…」
『あの、この前コンサートに…最前列で──』
「ああっ! もしかして転んだ娘?」
『あっ、あぁ、やっぱり見られてた……恥ずかしいなぁ…あ、えっと、そうです』
「その時、僕と目があった?」
『は、はいっ、気がついてくれてたんですね』
「気のせいかなと思ったんだけど……」
『あの時…一番前にいるのに、なんか静かに見てる人がいるなって…』
「あっ、うん…」
『そう思って見たら……あれ? って……先輩? って気がついて』
「へぇ…」
『それで、ちらちら見てたら…他の娘とぶつかっちゃって』
「そっか。それで転んだんだ……」
『はい…』
「それは解ったけど……なんで? よくこの番号解ったね」
『あ、あの……こっちで知ってる人に会うことなんて無かったんで…友達に聞いて……』
「中学で、僕のこと知ってたの?」
『はいっ。それで……あの、もし良かったらなんですけど』
「うん」
『す、少しお話でも出来たらなって……』
この電話から数日後、僕達は初めて――というのもヘンな話だけど――会ったんだ。
- 631 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:17
-
どこにでもあるようなチェーンの珈琲ショップで待ち合わせ、人混みに紛れるようにして向かい合って座った。
腰を下ろしてから二十分は経って、一杯目の珈琲も空こうというのに、まだ彼女は「おはようございます」と「はい」しか話していない。
仕方なしに呼び出された側の僕から話を振っていった。
「あのさ…」
「はいっ」
反応はいいんだよな……
俯き加減だった顔を上げて、ほんの少し掠れた声で返事をされた。
「中学の時…だったよね。っと…野球部、マネージャー、じゃあないよね?」
「…ちがいます」
「僕は君のこと知ってた? あ、ごめん…」
「い、いえ…全然。覚えてなくて当たり前ですから」
「あ、じゃあ会ったことはあるんだ? ……ホント、ごめん」
「あ、あっ、謝らないでください」
全く覚えていないことを詫びると、彼女はブンブンと手を振って大袈裟にそれを押し止めた。
そして、また少し俯いてゆっくりと、言葉を選ぶようにぽつぽつと話し出した。
- 632 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:18
-
「わたし陸上部で…あの、中学の時…でも、全然大したことはなかったんですけど……」
「一年の時、ロードワークで校外を走ってたら転んじゃって…あの、よく転んだりするんです、わたし」
「あ、あの…それで、転んじゃって…どう転んだか覚えてないんですけど」
「なんでか、こう…けっこう血が出ちゃって、痛くて…『どうしよう』みたいになっちゃて」
「座り込んだままで、膝のところ…血が出てるあたりを押さえてて、少し泣きそうになってて……」
「その時に、後ろから話しかけてきてくれた人がいて……」
そこで彼女は上目遣いでちらっと僕を見た。
あぁと思って自分を指差すと、彼女は嬉しそうに、そのふにっとした頬を少しだけ赤らめて頷いた。
「僕…なにしたっけ?」
「あの…『どうしたの? 大丈夫?』って声をかけてくれて…」
「わたしの膝に気がついてくれて…『うちの学校の子だよね?』って」
「そ、それで……わたしのこと、その…おぶってくれて、保健室まで、連れていってくれて」
「けっこう、離れてたんですけど……全然なんでもないみたいに、学校までおぶってくれて……」
「その時、先輩は野球部の格好だったから……お礼しなきゃって思ってたんですけど…」
「グラウンドで何度も見かけてたんですけど、なんか…あの、恥ずかしくって……」
彼女はそこまで慌てるように言うと、一層深めに、顔を隠すみたいに俯いてモジモジしていた。
全く覚えていない僕もどうかとは思うけど、ともかく、やっと話が繋がった。
- 633 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:19
-
「そっか」
「はい…あ、えっと……あの時はありがとうございました」
「うん? あぁ、いいよ、そんな」
「ずっとお礼がしたくて…でも、わたし、こうなっちゃったから……」
「お礼って言われてもなぁ」
“こう”っていうのは、『モーニング娘。』のことを指しているんだろう。
よくは解らないけど、彼女の人柄の一端に触れた気はした。
それは、間違いなく好感を持たずにはいられないものでもあった。
そして困ったように僕の言葉を待っている表情を可愛らしいとも思った。
別にお礼をしてもらいたかったわけじゃなく、恩に着せてどうしようなんてことじゃあなかったんだけれど。
このままで別れたくなかった。
そう思った僕は一つの簡単な提案をしたんだ。
「じゃあ、今日のところはココでオゴってもらうってのでどう?」
「……え?」
「良かったらまた会いたいな」
「あ、あの……」
「やっぱケータイとか、むやみに教えちゃダメなの?」
「………」
「紺野さん?」
「……あ、はい。…はいっ! あ、大丈夫ですっ」
しばらく硬直したように、なにか考えたい他彼女は、僕が何を言いたいのか、やっと思い至ったみたいな返事を返してくれた。
それから彼女は慌てたように自分の鞄から携帯を取り出し、そっと自分の番号とメールアドレスを教えてくれて。
僕もお返しに自分の携帯番号とアドレスを教えたんだ。
- 634 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:20
-
そうして何度か会って、当時の話をしたり、段々と打ち解けて色々な話をした。
そうしてごく自然に互いに好きなんだって思うようになって。
ごく普通の女の子に言うように、僕の方からこう言ったんだ……
「キミのことが好きなんだ……ちゃんと…付き合ってもらえないかな」
その時の彼女の、照れながらも嬉しげな表情。
それに微かに聞き取れた「はい」って小さな声は忘れられないものだった。
- 635 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:22
-
そして……
そうだ、それから…あの日。
何度目かのデートで、彼女は二度目の遅刻をし、何度もすまなそうに謝っていたっけ。
走ってきた彼女は息を乱して、少し紅潮した顔で「ごめんなさい」って謝ってきた。
「仕事なんだから」って気にしないように言う僕を、今にも泣き出してしまいそうな目で見ていたっけ。
何度も何度もそんなやりとりを繰り返して、やっと何処に行こうかってところまで話が進んだ時。
少し恥ずかしそうに言った彼女の一言をよく覚えている。
「あの、じゃあとりあえず…オナカすきませんか?」
僕は笑いを噛み殺しながらも、その彼女の無邪気さ、純朴さを愛おしく思った。
「うん? そうだね。どこかいいところ知ってるって顔してる」
「はいっ。きっと美味しいって思ってもらえるんじゃないかと…思います」
少し活き活きとしすぎた自分に気がついて、語尾が小さくなっていった。
せっかく元に戻ったと思った頬は、また別の赤みがさしていて、僕の反応をうかがうように目線を向けていた。
「なら、せっかくだから連れていってもらうよ。行こっか」
「は、はいっ」
そして彼女…紺野あさ美に連れられて、乗せられたタクシーの止まった場所。
なかなか、普通の高校生の入るような構えの店でないことは、一目で解った。
「ここです」
そう笑顔で先に店へ入っていく彼女の後ろ姿に、小さく首を振りつつも後に続いた。
- 636 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:23
-
店員に案内されて着いた席で、彼女が数分の間、メニューを見つめて悩んだ末に数品の料理選んでくれた。
しばらくして運ばれてきた料理は、どれも文句つけようがない味わいだった。
「っ……ウマいね、これ」
「良かったぁ……」
思わず顔をほころばせ、口をついて出たありきたりな僕の感想。
それに彼女は胸に手を当てて安堵したように大袈裟なリアクションを見せた。
そういえば、今までにも時々……こんな風にほっとしたような表情を見せることがあった気がする。
「そんな大袈裟な」
「だって…やっと笑ってくれたから…」
意外な言葉を聞いた気がした。
それまでの時間も、ごく普通に笑っていたつもりでいたのに。
- 637 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:25
-
「そう? 笑ってなかった?」
「いえ、その……」
「なに? 教えてよ」
「やぁ、あの…笑ってくれてましたけど……」
「けど?」
「ちょっと違うっていうか……」
「違う? そうかなぁ」
「だから、えっと……。わたし、お礼がしたかったんですよぉ」
不意に話題が変わったようだけど、そうじゃあないらしい。
少しずつ慣れてきて解ったことだけど、彼女は時々話を前後に跳ばすことがある。
この場合もそうと判断して言葉の続きを待った。
「……」
「ずっと、ずっと、そう…思ってて。偶然先輩に会えて……」
もう一つ要領を得ないけれど、なんとなく解ったこともある。
もしかして、と思い、それをそのまま口にしてみたんだ。
「ん、嬉しいな。僕の為にあんなに真剣に選んでくれたんだものね」
それを聞いた彼女は、まるで、ぱぁっと花が開くような笑顔を見せてくれて。
そしてとても弾んだ声でこう言ってくれたんだ。
「わたし、先輩が喜んでくれて嬉しいです。そうやって笑いかけてくれるのが好きで……あっ」
つい口にしてしまった自分の言葉に照れて、また俯いて表情が見えなくなる。
僕はといえば、あまりに真っ直ぐな感情を向けられて嬉しいと思いながらも戸惑って。
戸惑いながらも…こうしてずっとこの娘の隣にいたいと思ったんだ。
- 638 :『きみのえがお』:2007/03/02(金) 21:26
-
…………
- 639 :名無し娘。:2007/03/02(金) 21:30
-
ひとまずここまで。
待っててくれた人、まだ見てたらありがとーです。
ここで、半分……にはちょっといかないか。
また残りはそのうち。
- 640 :名無し娘。:2007/03/08(木) 00:10
-
続きです。
- 641 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:11
-
そう……あの時、間違いなくそう思ったんだ。
それなのに、何故……今、こんなざらついた気持ちが浮かんでくるんだろう。
僕は彼女が好きで、彼女も僕のことを好いてくれている。
僕の気持ち、想いに間違いはない、そう言い切れるだけの自信がある。
彼女が僕のことを想ってくれてるのも、とてもハッキリと感じられるんだ。
それなのになんで……
答えのでないままのループを繰り返しそうな思考を無理矢理に断った。
そして再び記憶の中の何処かにあるだろう“それ”への糸を辿る作業を始める。
- 642 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:12
-
………………
- 643 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:13
-
「先輩の部屋に、遊びに行ってもいいですか?」
そう言われたのは一昨日のことだった。
その時は特に、不思議には思わなかった。
付き合っている男の部屋くらい見てみたいものだろう、と。
けれど、待ち合わせ場所に、五分前に着いた僕を待っていた紺野の、肩から下げた大きなトートバッグを見て、背筋にかすかな緊張が走った。
僕を見つけた紺野が、頬を赤くして、ぎこちなく笑った。
夕飯を作ってくれるという彼女と、近所のスーパーで一緒に、材料を買って家に帰った。
「あんまり、自信ないですけど」
という紺野の手料理だったが、慣れた手つきを見れば、それが謙遜だったことが解る。
素直に美味しい、と伝えると、ほっぺたを赤くしながら、嬉しそうにあの微笑みを浮かべてくれた。
食事を終えて、さすがに緊張のほぐれた紺野と、時が過ぎるのを忘れ、他愛もない話で盛り上がる。
彼女の仕事の事とか、僕の大学の事とか、中学時代の事とか。
喋りすぎて口の中が乾くなんてことを、僕は初めて経験した。
一息ついてコーヒーを飲んだ時、ふっと時計を見る。
外で会う時ならば、もう別れている時間だ。
- 644 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:14
-
「時間、大丈夫?」
うすうす感づいていながら、そんなことを聞いてしまう。
一拍、間を置いて、
「あ。はい?」
紺野の表情に、ほぐされたはずの緊張が戻ってくるのが解る。
「いや、こんな時間だけど……」
「は、え? あ、そうですね……」
時計の針を見て、呟き、俯く。
時間を忘れるほど楽しくて、気がつけばこんな時間に、という反応ではなかった。
となると、やっぱり、そういうことだろうか。
紺野は、“そういう覚悟”で来たのだろうか。
「あ、あの、先輩っ」
緊張に上ずった声で、俯いたままの紺野が僕を呼んだ。
「ん?」
「え、ぃや、あの……きょ、今日は……その」
緊張のせいで、肩が震えている。
流れる髪の隙間から見える耳が、真っ赤になっている。
震える声で、ごにょごにょと何か呟いているが、はっきり聞こえなくても、意味をなすことを喋れていない、と解る。
- 645 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:15
-
「紺野」
「へっ? は、あ、はい?」
突然、名前を呼ばれて、驚いて顔を上げる紺野。
つぶらな瞳が、見開かれている。
まるで自分のものじゃあないみたいに心臓が騒がしく鳴っている。
どうやら自分で思っている以上に、緊張しているみたいだ。
「……今日、泊まってかないか?」
紺野は時間が止まったように、僕の顔を呆然と見詰める。
そのまま十数秒。
冗談みたいな間を置いて、ぼおっと火が噴き出るように赤くなった。
「いや、かな?」
僕が聞くと、完熟トマトみたいに赤くなった顔を俯かせて、首を振った。
「あ、あの、今日は……えっと、その、つもり、でした……」
紺野のようにおとなしい子が、ここまでの決意をするのに、一体どれだけの勇気が必要だったか。
それを思うと、僕は胸が熱くなった。
そう想ってくれる気持ちを大切にしなければいけないんだと、そんなことを思った。
- 646 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:15
-
シャワーを終えて寝室に入る。豆球だけが点いていて、薄暗い橙色の光が、いつもとは違う陰影を浮かび上がらせていた。
ベッドの上で布団から顔半分だけ出した紺野が、こちらを見ている。
僕はベッドに近づくと、出来るだけ音を立てないように、静かに布団の中に入る。
一人分の体温で温められた布団の中に、ほんの少しの違和感……けして悪いものではない違和感を感じた。
隣にいる紺野の体が緊張からだろう、かちかちに強張っているのが判る。
怯えるように震えているのが、狭いベッドのおかげで、触れ合う肩から伝わってくる。
長袖のTシャツと、下はスウェットだろう。
家で使っているものだろうか、それとも新しく買ってきたものだろうか。
そんな、今この場ではどうでもいいことが気になった。
「紺野」
「は、はいっ」
僕の顔を見ず、天井に目を向けたままで、半ば布団に隠れた口がくぐもった返事をする。
「はじめちゃったら、止まらないと思うから。だから、止めるなら、今のうちだよ」
掴んでいた布団の端を握る手に、きゅうっと、力が込められた。
- 647 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:16
-
「先輩っ」
「ん?」
「あの……あの、私のこと、好き、ですか?」
「好きだよ」
僕は間を置かずに、紺野の言葉に答える。
決意してきた、とはいえ、やはり未知の体験に不安を感じているんだろう。
「だい、大丈夫、です。ちゃんと、その……ちゃんと、先輩の彼女に、なりたいんです」
「……解った」
こんなことしなくても、もう“ちゃんとした彼女”なんだけどな。
でも、紺野がそう思うのなら、その気持ちに応えるのが、“ちゃんとした彼”のやるべきことだろう。
僕が覆い被さると、ごくり、と紺野が喉を鳴らすのが解った。
緊張に見開かれた目が、真っ直ぐに僕をとらえている。
さらさらの前髪を撫でてやると、シャンプーの香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。
あ、と、紺野の唇から声が漏れる。
顔を近づけると、ぱちっと瞼を下ろした。
そうするのが当然、というような、機械的な動き。
緊張で震える紺野の唇に、出来るだけ優しく、くちづける。
触れた時以上にゆっくりと離れる。
閉じていた瞼を開けて、目の前に僕の顔を見つけると、何処を見て良いのか判らない様子で、視線を泳がせた。
- 648 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:17
-
今にも泣き出しそうな瞳が、落ち着きなく動いている。
緊張するな、と言う方が無理だけど……なんとか少しでも、落ち着かせてあげることは出来ないだろうか。
僕はいつものように彼女を呼ぼうとして、それを飲み込んだ。
そして、それが彼女を落ちつかせてあげられる呪文であればいい、そんな想いを込めて言葉を紡いだ。
「あさ美」
「……、……え?」
いきなり名前で呼ばれて、表情を無くす。
「せ、先輩、今、名前……」
ようやく理解できたのか、ぼんやりと僕を見つめて、声を漏らした。
僕はそれには答えず、彼女の涙目を見つめて、ありったけの優しさでささやいた。
「あさ美、僕のこと…怖い?」
一瞬、間を置いて、あさ美は首を横に振る。
「僕はあさ美が嫌がることはしないよ」
少し水分の残る髪を、優しく撫でてやる。
緊張で強張っていた表情が、見る見るうちに和らいでいく。
目の端から涙を一筋、溢れさせながらも、嬉しそうに、微笑んだ。
- 649 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:18
-
「ありがとうございます。あの、ご心配おかけしました、もう、大丈夫です」
その必要以上に丁寧な言い回しが、なんだか“らしくて”笑えてくる。
「あの、もう大丈夫ですから、その、──」
あさ美が言葉を続けようとするのを、僕はくちづけで遮った。
ん、と息を漏らすあさ美。
何度も何度も、唇をついばむようにキスを繰り返す。その度にあさ美は素直に反応して、ん、ん、と切なげな息を漏らした。
唇から伝わる感触に、硬さがなくなってきたところで、中断する。
ぽーっと、どこか焦点が定まらない瞳が、僕の顔を茫洋となぞっていく。
「キス……いっぱい……」
伝えようと出たものではなく、ぼんやりしたあさ美の意識から、言葉がこぼれた。
「言ったろ? はじめちゃったら、止まらないって」
「あ……はい」
僕はくちづけを再開する。
瞼を下ろして、それを受け止めるあさ美。
そろりと舌を伸ばして、あさ美の唇を舐めた。
僕の意図を察してくれたのか、合わさっていた唇を、おずおずと開いてくれた。
唇の隙間から、唾液に濡れた舌が、あさ美の口中へ滑り込む。
- 650 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:19
-
「んッ」
受け入れてくれたとはいえ、戸惑いがちに息を漏らす。
口の中を這い回る僕の舌を、あさ美はどう感じているだろうか。
少し不安に思いながらも、あさ美の口中を味わう。
それはとても柔らかくて、熱くて、甘い……気がする。
「ん、んんッ、んぅ」
あさ美の唾液が僕の舌に絡み付いて、淫らに音を立てる。
あさ美の漏らす吐息が、僕の口の中に入り、昂奮させる。
唇は繋がったまま、片手をあさ美の胸に向かわせた。
服の上から、手を乗せた。
余計なことはせず、ただ、乗せただけ。
「んんッ!」
ただそれだけだったけれど、あさ美は驚くほど敏感に反応した。
唇が、きゅっとすぼまり、口の中に入っていた僕の舌を締め付ける。
痛くはなかったけれど、反射的に唇から抜き取る。
「あ、ごめ、ごめんなさいっ」
「いや、大丈夫だけど……痛かった?」
「あ、ちがっ、じゃなくて、その……驚いちゃって……」
「じゃあ、いい?」
「あ……」
こくり、と真っ赤な顔で頷いた。
- 651 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:20
-
乗せただけの掌からでも、充分に伝わってくる感触。布一枚、隔てた感触。
ブラ、つけてない。
出来るだけ優しく、指ではなくて、掌で包むように愛撫する。
「あっ、はぅ……ん、ふぅッ」
自分の声に驚いたあさ美が、慌てた様子で、片手で口元を押える。
両手を使って、それぞれの乳房を刺激していると、その頂点で布を押し上げる突起の感触が、掌に伝わる。
僕はそれを確かめたくなって、Tシャツの裾に手をかける。
「あ、ちょ、待って」
「待てない」
「あの、自分で……」
「脱がせてあげたいんだよ」
そう言うと、有無を言わせず捲り上げる。
うう、と恥かしそうにうめいたけれど、それでも僕に従って両手をあげてくれた。
脱がせたTシャツをベッドの外に、落とす。
橙の弱々しい照明、その上、布団が影を作ってはっきりとは見えないけれど、服の上から見るよりも、ずっと大きく見える。
着やせするタイプみたいだ。
胸の大きさとは反して、引き締まったウエスト。
僕は堪えきれず、その下までも見たくなってしまう。
- 652 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:29
-
「下も、いいかな?」
あさ美の顔が、泣きそうに歪むのが見える。
けれど、それでも、小さく頷いてくれた。
ごくり、と自分の喉が鳴る音が、やけに大きく聞こえた。
スウェットに手をかけると、恥かしいだろうに、少し腰を浮かせるあさ美。
躊躇う間を与えないように、するりと一気に脱がせてしまい、Tシャツ同様、ベッドの下に落とした。
下も、何もつけていなかった。
薄暗くて、ほとんど見えないということは解っているはずだけど、それでも羞恥から目を固く閉じてしまうあさ美。
服の上から感じられた小さな突起を、今度は直接、摘んでやる。
「ふあぅっ!」
手で押えていたはずの口から、強い刺激を堪えられず、声を漏らした。
片方の乳首は摘んだり、指の腹で転がしたりしながら、もう片方の乳首に顔を近づける。
固く尖ったそこを、咥える。
「んあぁっ! や、あ、やあぁっ!」
口に含んだ乳首を、ねぶり、はじき、転がす。
声を押えることも出来なくなったあさ美が、もだえている隙に、空いた手を太腿の間へ移動させた。
- 653 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:30
-
ひゅ、とあさ美の息を飲む声。
脚を閉じようとしたようだけど、それを必死に堪えてくれているように小刻みな震え。
柔らかい恥毛の下は、何者をも受け入れたことのない、閉じ合わさった秘裂。
割れ目に沿って、指を動かす。
「ぃあッ! は、うあんッ、やああぁっ、ん!」
熱く湿った感覚はあるが、それは体温や汗によるところが大きい。
これではまだ、男性器どころか、指だって入らないだろう。
しゃぶりついていた乳首から離れて、乳房を包んでいた手も放し、布団の中に潜り込む。
「え? え?」
異変に気付いたあさ美が、戸惑いの声を漏らす。
脚の間に体を置いたけど、暗くて何も見えないのが残念だった。
手探りで、あさ美の秘裂を見つけて、今度は指だけではなく、舌を這わせた。
「やあぁっ、そ、そんなとこ、なめちゃ、ダメぇっ!」
悲鳴じみた声を上げて、秘所から引き剥がそうと、僕の頭を両手で押さえつける。
それにかまわず、舌先で秘裂を愛撫する。
- 654 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:31
-
「ひあぁっ! あうぅんッ、あ、はああッ! はあうッ!」
湧き上がる未知の刺激に、もだえるあさ美。
無意識のうちにだろうけど、放そうとしていたはずの手は、秘所へとより強く押し付けるようになっていた。
皮膚の奥に隠された粘膜や、その頂点で起き上がった秘核を舐めているうち、自分の唾液とは違う液体で、あさ美の秘所が濡れてくる。
「あ、あんッ! はぁぅ、ふぅッ、うんッ! ん、はあんッ!」
こんなにも素直に反応してくれるあさ美を見ていると、僕の我慢も限界だった。
唾液と愛液で潤った秘裂から口を離して優しくささやいた。
「ちょっと、待ってて」
乱れた呼吸で肩を揺らすあさ美が、少し不安げに、頷いた。
布団から出て、着ているものを手早く脱いでしまう。
僕の昂ぶりを示す肉棒が、力いっぱい持ち上がっていた。
裸になったところでベッドに戻ろうとして、思い出した。
- 655 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:32
-
雑貨が放り込んである棚の中を、慌てて探る。
奥の方に隠してあった小さな箱を取り出し、中身を、コンドームを引っ張り出した。
装着する僕の背中に、あさ美の視線を感じる。
着け終わると、なんとなく照れくさくなって、急いで布団の中に入った。
待っていてくれたあさ美の上に覆い被さると、再び緊張した目が、僕を見つめてくる。
それを紛らわせる為に、鼻の頭にくちづけると、あさ美は少し引きつりながらも、微笑みを返してくれた。
体を寄り添わせたまま、昂ぶった肉棒を、あさ美の秘裂に押し当てる。
薄いゴムを通して、熱く濡れた粘膜を感じる。
あさ美の唇が、きゅっと固く結ばれた。
一線を越える恐怖からか、かすかに震える唇を開け、おずおずと言葉を探すように話し出した。
「あ、あの、あの、わたし、あの、初めてで……」
まさか、気付いてないとでも思ったのか。
一瞬、そう思ったが、そんな雰囲気ではないようだ。
「あの、だから……わたしが痛がっても、その、最後まで、して、ください」
- 656 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:32
-
泣き出しそうな瞳に見つめられ、真剣な決意を受け止める。
その瞳も、言葉も……何に代えることも出来ないほどに愛らしいと思った。
「解った。じゃあ、ちょっと我慢して」
あさ美がこくり、と頷くのを見て、僕は腰を少しだけ、進めた。
肉棒によって広げられた秘壁が、侵入者を押し返そうと圧力を加えてくる。
「あ、くぅっ!」
まだ先端が沈んだだけだというのに、あさ美の表情が苦痛に歪んだ。
あさ美の襞壁は、僕の分身を押し返そうと抵抗する。
それでも僕は、奥へ奥へと進んでいく。
その度に彼女の痛みに耐える声が鼓膜を震わすけれど、それでも僕は止まらなかった。
止まりたくないのも正直な気持ちだったけれど、それ以上に、あさ美の気持ちに応えてあげたい、そう思ったから。
彼女の柔壁に侵入するうち、行き止まりかと思える壁に行き当たった。
「ぁうっ」
あさ美が、小さく、痛みにうめく。
異物の侵入を阻んでいた壁を突き破る為、僕は体重をかけて彼女の中へと押し込む。
- 657 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:35
-
「ひぅ、ぅうああああッ!!」
強固な防壁を突き破って、僕はあさ美の一番深いところに沈み込んだ。
薄いゴムを隔てて、あさ美に包み込まれる。
熱く、柔らかく、そして痛いくらいに締め付けてくる。
「あさ美……」
思わず彼女の名を呼ぶと、額に汗を浮かばせて、喘ぎながらこう言ってくれた。
「……ありがとう、ございます」
「あさ美のセリフじゃないよ……」
なんで、そんな辛そうにしながら、“ありがとう”なんだよ。
憤りにも近い戸惑いが、顔に出たのだろうか。
あさ美はいまだ辛そうな表情のまま、それでも喜びを包み込んだ笑顔を浮かべる。
「だって、ちゃんと、してくれました……」
僕はその言葉に、胸を締め付けられた……それこそ涙が出そうなほどに。
腰は出来るだけ動かさないようにしながら、抱きついて、くちづける。
重ねるだけの、愛情をたっぷり込めたくちづけ。
唇を離すと、汗で濡れたあさ美の表情が、少し固くなっているのが解った。
涙で濡れた目が、僕に訴えかけてくる。
最後まで――
僕はあさ美の背に腕を回して、体を密着させた。
- 658 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:36
-
「ひゃっ」
突然のことに、あさ美は気の抜けた声を漏らした。
あさ美の二つのふくらみが、僕の胸で潰される。
「動くよ?」
「あ……あ、はい」
あさ美の手が僕の背に回り密着感が増す。
僕はあさ美をいたわるように、ゆっくりと腰を前後に動かす。
「うっ、くうぅぅ」
体の中を往復するたび、あさ美は苦しげに息を吐く。
「大丈夫?」
「……大丈夫、です……」
僕のために必死で我慢してくれているあさ美を、とても愛しく思う。
ゆっくりと、ゆっくりとあさ美の中を往復する。
気持ち良すぎて、声が出そうなくらい感じてしまう。
「く、ぅう、ふぅっ……は、あぅっ……ぅぅうっ」
痛みに耐えるあさ美の声。
その声を聞きながらも、肉棒を包み込む熱い感覚に、あっという間に限界に引き上げられる。
「もう少し、だから、我慢して」
「だい、大丈夫っ……へいき、だからっ」
あさ美は背中に回した腕で、力いっぱい僕にしがみつく。
辛そうな呼吸で、言葉を吐き出す。
いつの間にか早くなっていた腰の動きで、肉棒の先端が、あさ美の奥を突いた。
そして、限界を超えた。
- 659 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:37
-
快感の結晶が、肉棒の中を迸る。
放出がなかなか納まらず、冗談みたいな量の精液が吐き出される。
ゴム一枚隔てているとはいえ、あさ美の中で果てた。
それだけのことに、ひどく昂奮している自分がいる。
最後の一滴まで搾り出すように、肉棒が大きく一度、痙攣すると、ようやく理性が帰ってきた。
耳元であさ美の荒い呼吸が聞こえる。
背中に回していた手の力を緩め、あさ美の顔を覗き込む。
涙と汗に濡れた顔が、僕と目が合った途端、ふにゃり、と笑った。
少し引きつってはいたけれど。
「ごめんね、痛い思いさせて」
「そんなこと、ないです……」
「でも……」
「……あの、痛かったです……けど」
こくり、と喉を鳴らして……
「けど、ちゃんと、彼女になれたって思うと、その、嬉しいんです」
あさ美が浮かべた笑顔には、何一つ余分なものなんか混ざっていなかった。
心の底から、嬉しい、と純粋に笑ってくれている。
- 660 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:37
-
僕はたまらず彼女を抱きしめ、自分の全てを伝えたいとささやいた。
「好きだよ」
「嬉しい……」
彼女の声が、鼓膜をくすぐった。
汗で乱れたウェーブのかかった前髪を整え、可愛らしいおでこにキスを落とした。
くすぐったそうに首をすくめる彼女にもう一度「好きだよ」とささやく。
込み上げてくる幸福感を閉じこめておきたいと、寄り添い抱きあって眠った。
- 661 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:43
-
…………
- 662 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:44
-
あれはとても……とても幸せな時間だったんだ。
どんどんと彼女のことを知っていって、彼女への想いを深めていって。
僕といる時の彼女は、いつも嬉しそうな表情を見せてくれていたんだ。
それなのに……
あれはいつだったろう。
もしかしたら、何かが違ってきたのはあれからだったかもしれない。
僕にとっては些細な出来事で、時が経てば泡のように消えてしまうに違いない。
その程度のことだったとしても、もしかしたら彼女にとっては……
あの生真面目で、不器用だけど一所懸命で、それでももう一つ自分に自信を持てない彼女なら……
- 663 :『きみのえがお』:2007/03/08(木) 00:45
-
…………
- 664 :名無し娘。:2007/03/08(木) 00:47
-
眠気MAX!
今日はこのあたりでおやすみなさい(+.+)(-.-)(_ _)…
- 665 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:16
-
新曲のリリースと幾つかの特番への出演。
そんなものが重なると、僕等の逢える機会は少なくなる。
それは仕方のないことで、ちゃんと心得てはいたし納得していた。
それでもどこかで我慢…というかで焦れてもいたのかもしれない。
連絡こそ取っていたけれど、久しぶりに逢えた彼女は、いつもにも増して輝いて見えた。
「少しは時間とれるようになった?」
「あ〜、うん。幾つか収録するのも残ってるけど」
「そっか。元気だった?」
「うん……なんか、何ヶ月も会えなかったみたいだよ」
「ん、それくらいに感じたよ……」
「え、あ、えっと…」
「だから、今日会えたの、すごい嬉しい」
「あ、え、あの……うん、ありがと」
いつまで経ってもこういった言葉に対する耐性をもてないでいる彼女は、頬を染め言葉に詰まりながら俯く。
そんな彼女を愛おしく想い、そっと指先を近づける。
「またこんなにしちゃって……」
「ひぁ! あっ、ちょ、ちょっと……」
朱に染まった頬…ほっぺたを突いた指先から逃れようと、身を捩りながら、小さく抗議の声。
僕はククっと喉をならして笑いながら「ごめん」って謝った。
- 666 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:17
-
「んん、もう…すぐそうやってからかうっ」
「ホント、ごめん」
「もういいっ」
そうやって許してはくれるけれど、ほんの少しだけ拗ねているのが窺える。
それがまたなんとも言えないんだけど……そうしつこくして怒らせたくも――泣かせたく、かな――ない。
「明日はゆっくりで平気なんだよね?」
「うん。お昼からだから…あの、泊まっても……いい?」
「イヤなわけないだろ?」
「よかったぁ」
食事は済ませたと申し訳なさそうに言う彼女に、僕はお腹が減ってないからと嘘をつく。
いや、正しくは嘘でもないのだけど……実際、一人で食事を摂るよりも、ただ彼女との時間が欲しかっただけで。
そうやって同じ時間を過ごしていると、もたげてくるのは“もっと”という想い。
隣り合って座っていれば肩を抱きたいと思い、肩抱いていればキスをしたいと思う。
どこかで足りないと感じていた時間を取り戻そうとするように、膨らんでいくジリジリとした感覚。
一度膨らみだした想いは、抑えることが出来ないほどに僕の中を埋めていく。
- 667 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:18
-
「えっ? うそうそ、そん、や……」
想いに任せて縮めた互いの距離と、腰に廻した手の強さに、あさ美は慌てたように身を逸らそうとした。
けれど、それはただバランスを崩すだけの意味しかなかった。
小さく悲鳴を上げて後ろへ倒れ込んだあさ美に、体重を掛けないように気をかけて身体を重ねた。
「いい?」
「あ、あの…だって、急に……ビックリしちゃ──、んんっ」
これだけ近い距離で見る柔らかな唇に、返事を待つだけの時間すら惜しくなって唇を重ねた。
触れ合った唇が言葉を紡ごうとする動きにあわせるように舌を絡ませた。
「んむぅ、っ…」
一度堰を切ってしまった欲望に突き動かされるように、腰に廻した手で服の上からブラのホックを外す。
空いている手は裾から服の中へとすべり込ませている。
「あ、やだっ──、あんっ……」
おなかの上で滑らせた手を緩んだブラの隙間へもぐり込ませ、彼女のイメージそのままのようなふっくらした胸に手を伸ばした。
唇、耳朶、首筋とキスを落としながらゆっくりと服をせり上げていく。
羞恥からだろうか、弱々しく拒むような身動ぎが、少しずつ、少しずつ消えていく。
- 668 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:19
-
〜♪
いよいよ行為に没頭していくその時に、場違いなリズムが部屋に響いた。
彼女は閉じていた目をうっすらと開き、眠りから覚めるように現実へと戻っていく。
「あっ……」
慌てたように――それでも拒絶と取られないようそっと――僕の胸に手をあてて、目線で行動を懇願される。
「…ごめんなさい」
そう言われてしまって、どうにもやるせない気持ちになり、身体を起こした。
「はぁ……」
「あの…」
「いいよ。出なよ」
申し訳なさそうになにか言いかけた彼女を促した。
「ごめんね」と一言呟いて乱れた服を直してから、急いで自分の鞄から携帯を取り出して部屋を出た。
しばらくして戻ってきた彼女は、とても沈んだ表情をしていて。
両手で携帯を握り、切り出す言葉を探しているように見えた。
「どうかした?」
「あの……」
「なに? 誰からだった?」
少し言葉が強くなってしまっていたのかもしれない。
彼女はどこか怖がるように、少し身を竦ませながらポツポツと口を開いた。
- 669 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:20
-
「あの…マネージャーからで……」
「もしかして?」
「あ、うん…明日、少し早くなったからって」
「…何時?」
「九時には来てくれって……」
知らず知らずに溜息がもれていた。
少しじゃないだろ、とは思いながらも言葉には出せずに、口をついて出たのは別のことだった。
「なら仕方ないよ」
「あの、ほんとにごめんなさ──」
「シャワー浴びた方がいいよ。早めに寝ないと」
意識して彼女の言葉を遮った。
情けなくもあり、大人げないとも思ったけれど……
彼女は少し寂しげに「うん」と一言だけ残してバスルームへ消えていった。
することもなくベッドへ横になり、眼を閉じていた。
しばらくするとドアの音と一緒に小さな声が聞こえる。
「寝ちゃった?」
「……ん、起きてるよ」
目を開けて首だけ動かしてみると、淡いピンクのスウェット姿の彼女が入ってきたところだった。
ベッドの上で身体をずらすように動かして一人分の場所を空ける。
彼女は静かに近づいてくると、そっとベッドに腰を下ろした。
- 670 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:21
-
「あの、ね……」
「大丈夫だよ。気にしてないから。寝ないと明日持たないだろ」
もう少し、場所を空けるフリをして視線を逸らせた。
「……うん」
呟くような声がして、部屋の電気が消される。
寂しそうなあさ美の声に、ちくり、と胸が痛む。
背中越しに彼女が横たわるのが、ベッドの沈み込む感覚で解った。
眠れもしないクセに、意地になったようにしばらく眼を閉じていると、シャツがクイっと引かれる。
「なに?」
「ね…こうしててもいい?」
僅かに向き直って問い返すと、ささやくような言葉と同時にそっと腕を絡ませてきた。
「ダメ?」
よほど機嫌を損ねたと感じているみたいだって思った。
そうさせるような態度を見せた自分に自己嫌悪気味になって、一つため息をついた。
「いいよ」
なるべく優しく聞こえるように注意してそう言ってあげた。
すると彼女は静かに眼を閉じて、まるで仔猫みたいに鼻先を僕の腕にすりよせてきた。
僕は彼女の髪をそっと撫でながら、いつの間にか眠りに落ちていったんだ……
- 671 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:22
-
………
- 672 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:23
-
「……ん?」
微かな気配にふと現実に立ち返らされて、目を凝らして部屋を見遣った。
いつの間にか眠ってしまってたんだろうか、部屋の中は暗く、窓から差し込む間接的な明かりだけが部屋を照らしていた。
夢…を、見ていたのかな
夢だったのかもしれないけれど、あれは確かに現実にあったことでもあった。
そう思いながら、上体を起こそうとしてやっと気がついた。
僕を現実に呼び戻した気配の正体に。
「………」
身体をベッドに預ける姿勢で床に座り込んで、そのまま寝てしまったんだろうか。
彼女は自分の腕を枕に、ベッドに突っ伏してすうすうと寝息をたてていた。
うっすらと笑顔を浮かべているように見えるその寝顔は、奇妙に思えるくらいに僕を落ちつかせてくれた。
「あさ美……」
不思議なほどに満ち足りた気持ちの僕は、夢でしていたようにそっと彼女の髪を撫でる。
幾度かそうしていると、綺麗に整えられた彼女の眉がピクリと動いて、睫毛が微かに揺れた。
慌てて手を浮かせると、かわいらしい唇が小さな吐息を柔らかく漏らして、ゆっくりと目を開いていく。
- 673 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:24
-
「ごめん。起こしちゃったね」
「………」
「おかえり」
「…ただいま」
半ば無意識に返事をしたんだろう。
ぼんやりとした意識を覚醒させるみたいに眼を閉じ、眉根を寄せて、そしてゆっくりと開く。
「あ…あれ?」
「おはよ」
「あっ、ごめんなさい」
幸せな空色だった気分が雨雲に侵食されていく。
そんな切なく淋しい感覚だった。
「なんで謝るの?」
「え? あ、あの……」
「謝られるようなこと、されてないよ?」
「あっ……」
「あのさ──」
〜♪
それが最悪のタイミングだったのか、それとも最悪の事態を救ってくれるタイミングだったのか。
ハッキリと決められないような時に鳴りだしたあさ美の携帯。
「っ……出なよ。マネージャーからかもよ?」
「あっ──、…うん」
何か言いかけたようだったあさ美が、躊躇うように身動ぎをして、それでも、仕方ないというように部屋を出て行った。
「はぁっ…また、なんで……」
足音が遠ざかるのを確認して、深く、重い息をはいた。
掴み損なった温かな時間を惜しむように、掌を見つめて……強く握り、ひらく。
- 674 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:24
-
僕は最近よく考えている。
いつかこの関係に限界がやってくるんじゃないだろうかと。
僕か、それとも彼女か……
どちらになのかは解らないし、その限界というものがどんな形でやってくるのかも解らない。
──けれど…
そう遠くない先に“それ”は待っているような、そんな気がしてならなかった。
そんな先の見えない思い囚われた心を引き戻すように、強く握っていた手に温かな感覚が重なる。
いつの間にか戻ってきたあさ美が、僕の手にその小さな手を重ねて話し出した。
「あの、ね……キライになった?」
「……え?」
「こんなこと言うの、おかしいのかもしれないけど……
嫌われたくないの……わたしのこと、好き?」
泣きそうなあさ美の表情。
すがるような、救いを求めるような、そんな表情。
「…好きだよ」
記憶の世界と現実の狭間にいた僕は、あさ美の言葉に無意識の言葉を返す。
そこでやっと問われた言葉の内容に気がついて、俯いていた顔を上げる。
- 675 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:26
-
「……嬉しい」
見慣れたはずの彼女の顔が、忘れかけていた表情を浮かべていた。
僕は息をするのも忘れて、その表情を見つめていた。
出会った頃より、ずっと大好きだよ――
そう言いたかったはずなのに、その言葉は出てきてくれなかった。
あの頃より大きくなった“好き”という気持ちと一緒に、僕の心の中に膨らんだものが、その言葉を、押し留めてしまった。
「あの、ねっ……」
「……え? なに?」
「ハ、ハズかしいの…そ、そんなにジッと見られると」
「あっ、ごめん」
「もぉ……」
柔らかなほっぺたを朱に染めて、困ったように俯きながら文句にもならない言葉を呟いている。
そんな彼女がさっき浮かべた表情は……
間違えるはずもない「僕の喜ぶ顔を見るのが好き」だって、そう言ってくれた、あの表情だった。
なぜまたあの表情を見せてくれたのか、僕には解らない。
きっと彼女自身もそんなこと意識してのことではないだろう。
それに、その笑顔を取り戻すよりも“終わり”が来る方が早いのかもしれない。
でも……
それでも。
僕はもう一度、あの表情を見たいと心から思うんだ。
もう一度……
……もう一度……
- 676 :『きみのえがお』:2007/03/09(金) 22:26
-
end.
- 677 :名無し娘。:2007/03/09(金) 22:37
-
途中いろいろあって時間がかかったけれど、まずこんな感じです。
容量は…まだなんか書けますね。
さてどうしようかな。
- 678 :名無し娘。:2007/03/16(金) 20:22
-
もう時期外れもいいとこですが来年まで寝かすのもなんなんで。
お正月に書いた話。
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