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小説?『娘。戦記』
- 1 :名無し狩人:2003/09/08(月) 17:51
- 【ご挨拶】
どうもです。名無し狩人と申します。
羊で小説もどきをやっておりました。
誰でも参加OKと言う管理人さんのご厚意に甘え
こちらで一つ始めさせていただきたいと思います。
管理人様、及び狩狩板の皆様。よろしくお願いいたします。
- 401 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:32
- >>400
( `_´)<石川さんが来ると思ったら後藤さんでしたか。頑張ります。
「あー、ビールでも飲みてーなぁー」
大谷記者が呟く。この国はイラスラ教の国である。
イラスラ教はアルコールを禁じているのだ。
大谷記者は私より早くからこの地方に来ていた。
ドンシャリバン滞在中も酒は飲めなかった様だ。
「この際禁酒でもしたらどうですか?」
「はははは・・・氏ね!酒が無くて何が喜びか!
いざ飲まん!酒は朋友の徳あり!酒は百薬の長!」
大谷記者はそう言うと右手を掲げた。
「取材が終わるまでの我慢ですね・・・そうだ!」
私はそう言うと車のバックから箱を取り出した。
「代わりにこれでも飲んで下さい」
そう言ってジンジャーエールのミニ缶を大谷記者に渡した。
- 402 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:32
- 「こんなもんどっから持って来たんだ?」
「来る途中の免税店でみつけて・・・」
「なるほど、ジンジャーエールか。まさに禁酒時代だな」
そう言いながらも大谷記者は缶を受け取るとプルタブを開けた。
「ほら、乾杯だ!運ちゃんとノノンにも渡せ!」
缶は5本あった。私が運ちゃんとノノンにも缶を渡すと
「この取材の成功を祈って!乾杯!」
と叫ぶ!
その行動は各国共通なのだろうか?
ノノンはもちろん運ちゃんも何も説明しなかったのにそれに続いた。
- 403 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:33
- 食事が終わると再び決死の行軍である。
道は緩やかになってきたがまだ登りであった。
「ちょ、ちょっとSTOP!」
外を見ていた私は叫んだ。運ちゃんが車を止める。
「なんだいきなり?どうしたんだ?」
「あれ!爆弾みたいなやつ!」
私は道端に無造作に放置された爆弾の様な物を指差した。
「ああ、ありゃ不発弾だな。この辺じゃそれほど珍しくないぞ!」
大谷記者は当たり前の様に言ってのける。
珍しくないって・・・なんでやねん!
- 404 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:33
- 「ほら、覚えてないかロスイラのアスガン進行。
あの時ロスイラはこの辺りまで攻めて来たんだ。
この不発弾はその時の遺品だよ」
「何で?どうしてこんな所に平気で放置してあるんですか?」
「回収しなかったからだろ?」
「そりゃそうですけど・・・・」
「ほら、写真撮らないのか?その為に止めたんだろ?」
大谷記者に言われ私は急いでその風景をカメラに収めた。
やはりここは戦闘地域なのだ。爆弾が平気で放置されているのである。
ロスイラ進行、内戦、カメリア進行・・・・この国に銃声が無かった事はない。
ここにいる運ちゃんも・・・そしてノノンも皆戦争に慣れている。
日本が平和ボケならこの国は戦争ボケなのかもしれない・・・
- 405 :名無し娘。:2004/01/29(木) 03:20
- ▽^)つ( ´ Д `)
( ^▽^)<お面つけさせてもらってたのよ♪
- 406 :名無し狩人:2004/01/29(木) 23:50
- ( `_´)<ありゃ、お面とは・・・気がつかなかった。
更に道無き道を行く。ついに頂上到着する。
「だいぶ日も落ちてますね。どうします?今日はここで一泊しますか?」
山道の頂上はキャンプには丁度良い広さの場所があり
既に数チームの同業者がテントを設営していた。
「そうだな、だいぶ疲れも溜まってるだろう。
何しろ運ちゃんが大変だろうから今日はここで休もう」
大谷記者はそう言うと昨日と同じ様に簡易テントを組み立て始めた。
私はと言うとここから眺める絶景にしばし見とれてた。
夕日が山々を照らし、幻想的な風景を作りあげている。
三脚を取り出すと愛機を固定し風景の撮影を始める。すると
「珍しいな。お前が風景写真を撮ってる所は初めて見た。
いつもは他のカメラマンに押しつぶされて鬼の形相なのに・・・・
ははは・・・良い顔してるじゃないか」
いつの間にか大谷記者が後ろに立っていてこんな事を言われた。
- 407 :名無し狩人:2004/01/29(木) 23:50
- 「からかわないで下さいよ。恥ずかしいじゃないですか」
「からかってなんかないよ。思った事を言っただけだ。なあノノン」
大谷記者がそう言うとこれまたいつの間にか後ろにいたノノンが頷いた。
そんなにいつもとは違う顔をしていたのだろうか?
もっとも、取材現場が報道カメラマンの戦場である。
戦場で穏やかな顔をしているやつなんていない筈だ。
「ここはここ、現場は現場、矢口の違う一面に惚れ直しましたか?」
「そうだな、あと5・6年したら付き合ってくれ」
「はい?5・6年て・・・・微妙な・・・・」
「ははは・・・命短し恋せよ乙女ってやつだ。
相手が見つからなかったら貰ってやるよ」
「結構です!おいらだって彼氏の1人や2人すぐ見つけますよ」
「おう、頑張れよ」
大谷記者から見れば私はまだまだガキって事なのだろうか?
確か歳はそれ程違わない筈だったと思っていたのだが・・・・
「HEY!マサオ!」
そんな事を考えていた時、不意に違うチームから大谷記者を呼ぶ声が聞こえた。
大谷記者は振り返ると手を振っている。どうやら知り合いのジャーナリストらしい。
- 408 :名無し狩人:2004/01/31(土) 23:38
- 「マサオ、やはりお前も来てたのか」
どこの国の人であろうか。男性が大谷記者に近づいて来た。
「よう、ダニエルか久しぶりだな。まだ生きてたのか?
ははは、相変わらず現場に女連れとはいい度胸だな」
ダニエルと呼ばれたその男性の後ろに女の人がいる。
私はその人も取材クルーだと思っていたのだがどうやら違うらしい。
戦場に来るのに女連れとは本当に良い度胸である。
「マサオも女連れじゃないか・・・ん?子供か?」
私とノノンを見たダニエルはそう言うと肩をすくめる。
子供とは・・・非常に失礼な奴である。
- 409 :名無し狩人:2004/01/31(土) 23:39
- 「ははは・・・べーギル人から見ればこいつは子供に見えるかな。
おい矢口、何か言ってやれ!」
どうやらダニエルはヨーロッパはべーギルから取材に来ている様だ。
こんなナンパ野郎にどうして良い取材が出来ようか・・・?
「初めまして、マリ・ヤグチと申します。ダニエルさんでしたか
失礼ですがこう見えても私は二十歳はこえております」
「これは失礼マドマゼル!私はダニエル、お見知りおきを・・・」
「はあ・・・・」
やはりいけ好かない奴である。目が完全に馬鹿にしているではないか!!
この時私はこんな奴らと運命を共にするとは夢にも思っていなかった。
- 410 :名無し狩人:2004/02/02(月) 21:01
- 「マサオ、こいつ知ってるか?日本ではかなり有名なジャーナリストだって
聞いたことある名前だったから途中で少し情報交換したんだが信用して良いのか?」
ダニエルはそう言うと一枚の名刺を大谷記者に差し出した。
私が横から覗き込むとなんとそこには大物の名前が・・・
「中井・・・・?あれ、おかしいな中井記者はここには来ていない筈だが・・・」
中井記者とは日本でも戦場レポーターとして有名な人でTTSとかの
ニュース番組に良く登場しているあの人だ。
「・・・そうか、ダニエルそいつは偽者だぞ」
「偽者・・・?」
「そうだ、俺らの間じゃ偽中井って呼んでる」
「ちくしょう、騙されたのか!」
「いや・・・たぶん交換した情報は本物だ。何処から仕入れてくるのか知らないが
あいつの情報はしっかりしている。だから情報自体は信じて良いと思う」
「でも、人の名前を騙りやがったぞ!」
「ははは・・ジャーナリストなんて詐欺師と紙一重の所もあるんじゃないのか?
それに聞いたことも無い名前の日本人とお前だったら情報交換するか?」
「・・・・いや・・・しないな」
「そうだろう、だからあいつはいつも中井記者を語るんだ。だから偽中井」
- 411 :名無し狩人:2004/02/02(月) 21:01
- 大谷記者の話を聞きながら私はみょうに納得してしまった。
取材は情報が命である。私だって得体の知れない外国人に情報など教えないだろう。
そこに少しでも名の知れた人間を騙った奴が来たらどうなるだろうか。
たぶん情報交換なら応じてしまうかも知れない。
偽中井・・・・大したつわものもいたもんだ。
「大谷さん、おいらあいつなんか気に入らないよ。
仕事現場に彼女なんか連れてきてさ、何考えてんだ?」
ダニエルと別れた後私は大谷記者に言った。
「ははは、ダニエルもそんな悪い奴じゃないぞ。
それに彼女のチェルシーだって腕利きのジャーナリストだ。
戦場取材だってお前なんかとは腕も経験も格段に上だ」
「うそ・・・・て事は彼女もある意味スタッフなんだ」
「ああ、俺だって一緒に行動するならお前よりチェルシーの方が
何かと頼りになって良いと思うしな」
「そーですか!それは至りませんで申し訳ないですね」
私が怒ってそう言うと大谷記者はポンと私の頭を叩いた。
- 412 :名無狩人:2004/02/03(火) 23:00
- 「ご飯にするれす」
むくれる私の手をノノンが引っ張る。
それを見たらなんだか怒っているのがアホらしくなって来た。
私はノノンと一緒に食事の準備を始めた。
「また缶詰だけど良い?」
「OKれす」
私は何となく気分が良かったのでとっておきの缶詰を開ける。
それは・・・パンの缶詰であった。
今やパンも缶詰で売っている時代なのである。
ノノンはそれを興味深そうにのぞいていた。
- 413 :名無し狩人:2004/02/03(火) 23:44
- 一晩をここで過ごし夜が明ける。
私達は出発の準備を済ませると車に乗り込んだ。
今日は早く仕度した事もあり他のチームの車と一緒のスタートである。
数台の車がキャラバンを組み山道を下り始めた。
「なんだか前に車がいると安心しますね」
私は大谷記者に言った。
「そうだな。結局は人は群れをなしたがる習性があるんじゃないか?
自分だけじゃ何かと不安な事も穂かに仲間がいれば
安心できる事もあるだろうし、前の車、お前が嫌ってる
ダニエル達のチームだぞ。そんな奴でも一緒にいる方が安心だろう?」
ありゃ、前の車はあいつ等だったのか・・・
でも確かに大谷記者の言う通りではあった。
嫌な奴でもこんな場所では一緒にいた方が安心できる。
人間とは不思議なものである。
- 414 :名無し狩人:2004/02/03(火) 23:45
- しばらく走ると突然前の車が止まった。何かあったのだろうか?
良く見ると止まっているのはダニエルのチームだけはない。
その前、更に前・・・今朝一緒にスタートした車が全て止まっているのだ。
「何かあったのか・・・・・」
大谷記者はそう言うと車を降りる。
私も気になって外に出ようとした。すると
「矢口!車の中にいろ!」
大谷記者の叫び声が聞こえて来た。
私は訳の解らぬまま言われた通り車の中に戻った。
中から前を見るとダニエルと大谷記者が話をしているのが見える。
いったい、何があったのだろうか?
- 415 :名無し狩人:2004/02/05(木) 21:32
- 少しすると大谷記者が戻って来た。なにやらかなり深刻な顔をしている。
「この車列の一番先頭の所で車が一台止まってる。
それも滅茶苦茶にされてだ・・・・この意味解るな」
大谷記者の言っている事がいまいち理解できない私は首を横に振った。
すると大谷記者は呆れた様な表情を浮かべ言う。
「話は簡単。恐らくは昨日の夜、ここを通ろうとした連中が
山賊と化したガルーダの兵士に襲われたんだろう。
連中はまだこの辺りにいるかもしれない。
車には銃弾の痕もあった。かなりヤバイな」
やはりここは戦場であった。もし昨日あそこで休まないでこの場所を通っていたら
私達がやらていたかも知れないのだ。
「今、他の車の連中と話をしてきた。ジャボシラに着くまではこのキャラバンを
崩すことなく進む。とりあえずそれまでは協力して行こうってな。
矢口、お前もじゅうぶん注意するんだぞ!」
- 416 :名無し狩人:2004/02/05(木) 21:32
- 大谷記者にそう言われたがどうすれば良いのやら。
だいいち連中が持っている銃で撃たれたらこんな車ひとたまりも無いではないか。
しかし何もしないよりはした方が良いだろう。
私とノノンは出来るだけシートの真ん中に座りその両脇を
カメラバックや缶詰など弾避けになりそうな物で固めた。まあ気休めではあるが・・
更に私はバックを開けると中から日本出発前にドンキホーテで買って来た
警棒と唐辛子スプレーを取り出し腰に装備する。
こちらも気休めの武装でしかないのだが無いよりは良いだろう。
他のチームも準備が終わった様だ。車列がゆっくりと走り出す。
少しすると襲われた車の横を通り過ぎた。
一瞬にして言葉を失う。酷い・・・・その一言である。
車体にくっきりと残った弾痕、窓ガラスは全て割られていて
シートにはくっきりと血痕が残っている。
車内の緊張感は先程とはうって変わって高まっていた。
- 417 :名無し狩人:2004/02/12(木) 22:44
- 峠道も半分を通り越した。本来であればこのままジャボシラまでまっしぐら
と、行きたい所であったが、戦場に「本来」なんて言葉がないのである。
細心の注意をはらい、車は進むのである。
「矢口しゃん、大丈夫?」
私の顔は緊張で引きつっていた様だ。心配したノノンが話しかけて来た。
「ん、大丈夫だよ。怖くないって言えば嘘だけど・・・・大丈夫。
それよりノノンは大丈夫なの?怖くないの?」
私がそう聞くとノノンはただ笑って見せた。
そうだ、この子はこの国の人間なのだ。
「ははは・・・ノノンは強いね。それに比べておいらは・・・・」
私がそう言うとノノンは首を横に振る。
「ノノン怖い。でもお仕事。矢口しゃんお手伝いする約束した。」
私はこの言葉を聞いてハッとした。そうなのである。
いくら戦争ばかりの国の人間であっても怖い物は怖いのである。
ノノンは私の不安が増えないように笑って見せたのだ。
- 418 :名無し狩人:2004/02/12(木) 22:45
- 「矢口、お前ここに来た事今更後悔してるんじゃないだろうな?
もう後戻りは出来ないんだぞ。覚悟は決めとけよ」
私とノノンの話を聞いて大谷記者が呆れた様に言う。
これで何回目であろうか?大谷記者に注意されるのは・・・・
このままでは大谷記者の足も引っ張る事になる。
私は気合を入れなおした。
「大丈夫です。おいらだって報道カメラマンの端くれですよ。
今のノノンの言葉を聞いて覚悟は出来ました。
もう迷いません。怖いけど・・・・はい、覚悟を決めました」
そんな私の言葉に大谷記者は頷くとじっと前を見つめた。
私とノノンも周りを見ながら警戒を怠らないようにするのであった。
- 419 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:47
- ここまで読んだ。
- 420 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:01
- 何事もなく車は進んでいた。しかし、突然車列が停止したのだ。
思わず私は身構える。前の方を見ると銃を持った連中が
前方の車を囲んでいた。
「うそ・・・お、大谷さん・・・・」
ビビル私にノノンが言う。
「チェックポイントれす」
「チャックポイント・・・?」
実はこの辺りはアスガンでも、ガルーダとは違う連中が支配しているのである。
その名も「北方連合」アスガンの北部に住む民族の集まりである。
私がドンシャリバンで入った大使館も、正確にはこの北方連合の
大使館なのである。彼らはここを通る車を監視していたのだ。
「なんだ・・・・よかったぁ・・・おいらはまたガルーダの連中かと・・・」
「ははは・・・気張りすぎだよ。それより矢口、ビザとか書類用意しとけよ」
「あっ、はい・・・」
ここは一種の検問所である。私は大谷記者に言われ書類を取り出す。
少しすると奴らは私達の車にもやって来た。
マドを開けた大谷記者に何やら話し掛けている。
- 421 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:02
- 「ビザとプレスカード・・・取材許可証出せ言ってるれす」
ノノンの言葉に私は固まった・・・・
許可証・・・・?ビザとプレスカードは貰ったでも許可証なんて・・・・
私はノノンの小声で話し掛ける。
「ノノン・・・おいら許可証なんて貰ってないよ・・・・」
「矢口しゃんそれ駄目れす・・・・・どうしよう・・・・」
困っていると検問所の兄ちゃんは大谷記者の書類を持って車を離れた。
その隙に私は大谷記者に事情を話した。
「大谷さん、おいら許可証なんて貰ってないよぅ・・・・」
「おい、嘘だろ?プレスカード一緒に貰っただろう?」
「プレスカードと一緒に・・・・・?あっ!まさかあの落書きみたいな・・・」
「そうだ、早く出せ!」
「・・・・・捨てちゃった・・・・・だって・・・・」
「馬鹿野郎!どうすんだよ?」
そんなやり取りをしていると運ちゃんがノノンに何やら話し掛けていた。
話が終わると運ちゃんの表情が固くなる。どうやら事態を飲み込んだ様だ。
流石に私を乗せているとマズイのかも知れない。
そんな中検問所の兄ちゃんが戻って来た。万事休すである。
兄ちゃんは大谷記者に書類を手渡すと私達を指差して何やら聞いている。
もう駄目だ・・・・そう思った時であった。運ちゃんが何やら兄ちゃんに
説明をしている。その話を聞いていたノノンの表情がパッと明るくなる。
運ちゃんの話に頷くと兄ちゃんは行ってしまい、車は動き出した。
- 422 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:03
- 「ノノン、なんて言ってる?」
「・・・・・・何がどうなったの・・・・?」
何故か検問所を通過できた私はノノン聞く。
「ノノンと矢口しゃん運ちゃんの子供」
「はい?」
ノノンから詳しく話を聞いた私と大谷記者は驚いた。
なんとあの時運ちゃんは、後ろの2人は自分の娘で、大谷記者の手伝いで
一緒に乗っていると説明してくれていたのだ。
確かにノノンは通訳をしていたし、私も取材用の機材を抱えていた。
私の格好も出発前にマーケットで仕入れた服を着ていたので
どうやら兄ちゃんには本当にそう見えたようであっさりとOKが出たのだ。
「取材の時は現地で優秀なガイドを雇いなさい」
日本を出る前に木村さはそう私に言った。
ノノンと運ちゃん、この2人は間違いなく当たりの人材であった。
- 423 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:51
- ついに山越えも終了した。車が進むにつれて文明の匂いがしてくる。
道端にある人家、道も整備された物になってきてついに・・・
「お店だ!」
私が叫ぶと運ちゃんがびっくりして車を止めた。
「なんだよ矢口、びっくりするじゃねーか!」
「いや・・・すいません。お店が見えたんで、つい嬉しくなっちゃって・・・」
「ははは・・・まあな。止まったついでだ。寄ってくか」
大谷記者はそう言うと車を降りる。見ると前の車も止まっていた。
「マリ!プレゼントだ!」
私が車を降りるとダニエルが缶を投げてよこした。
それはだいぶ擦れてはいたが間違いなくコーラの缶であった。
- 424 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:51
- 「これどうしたの?」
「そこで売ってるよ。ほれ、これも」
ダニエルはそう言って袋いっぱいのピーナッツもくれた。
やっと文明圏にやってきたのだ。たかだか2・3日の山越えであったが
なぜか非常に懐かしい。
コーラをくれたダニエルがいい奴に見えて来た。
「さて、どうやら俺達はここでお別れの様だな」
ダニエルはそう言うとその先の検問所を指差した。
ここから先はみんなバラバラに取材を始めるのである。
「じゃあ、生きてたらまた会おう」
ダニエル達のチームはそう言うと一足先に検問所を目指し行ってしまった。
「さて、俺達も行くか」
大谷記者はそう言うと買って来たコーラをノノンと運ちゃんに渡し車に乗り込んだ。
- 425 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:52
- 「さてと、おい矢口。いつまでも運ちゃんの娘って訳にはいかないだろう。
ここの検問所で許可証貰える様に頼んでみよう」
「はい、ノノン頼んだよ」
「大丈夫れす」
車は検問所目がけて一気に進む。
しかし途中で何故かダニエル達の車が戻ってきた。
「あれ?どうしたんだ?」
大谷記者が不思議そうに見つめていると車は何事も無かった様に
私達の車とすれ違った。見るとダニエル達が乗っていない。
訳がわからないまま私達は検問所に向かった。
- 426 :名無し娘。:2004/03/01(月) 05:39
- どうなるんだろう
- 427 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:42
- 検問所に着くと早速検査が始まる。
私と大谷記者はノノンを連れて交渉を始めた。
「ノノン頼りにしてるよ」
「OKれす」
ノノンはそう言うと検問所の責任者の所に臆する事も無く向かって行った。
すぐに交渉は始まった。一体どんな会話をしているのだろうか?
最初は難しい顔をしていた責任者の表情が徐々に変わって行く。
逆にノノンの顔が厳しくなって行く、しかし
遂には両者笑顔になって頷いた。どうやら交渉は上手く行った様だ。
「矢口しゃん、100ドルれす」
「はい?」
「証明書100ドルれす」
どうやら証明書の再発行に100ドルを要求された様だ。
「なんだよまた金取んのかよ!」
「我慢れす。これでもプライスダウンしたのれす」
あの時ノノンの表情が厳しくなったのはこれが原因の様だ。
しかなく100ドルを払う。ここでゴネてせっかくのノノンの努力を
無駄には出来ない。
- 428 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:43
- 「さてこれで大腕を振って取材が出来るぞ」
私がそう言うと大谷記者に怒られた。
「アホ!元はと言えばお前が悪いんだろ!まったく・・・・」
ノノンに笑われながらも私達は車に乗り込んだ。
しかしそこで問題が発生したのである。
出発しようとしようとした車が再び止められた。どうしたのか?
「ノノンどうしたの?」
車を止める兵士にノノンが事情を聞く。
するとノノンは驚き、悲しそうな表情を浮かべたのだ。
「何?何があったの?」
「運ちゃん・・・・ここでお別れ・・・」
「どうして?」
「ここから先、車チェンジなのれす・・・・」
訳が解らない。ノノンはその後も必死になって話をしている。
しかし、途中で運ちゃんがそれを遮った。
すると今度はノノンが運ちゃんに何か話をしている。
しかし運ちゃんは首を横に振るだけである。
少しするとノノンは諦めた様に小さく頷いた。
- 429 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:43
- 「ノノン悪いけど解る様に説明してくれない?」
私の言葉にノノンは説明を始める。詳細はこうだ。
あの峠を超えてやってきた車はここから先には進めない。
ここから先は車を変えないといけないのである。
理由としてはここで運ちゃんと同じ商売をしている人の仕事が
なくなってしまうかららしいが、実際はここの検問所の連中が
ここでそう言った商売をしている人達から売上の一部をピンはねしている様だ。
だからこそ無理やりここで止められるのである。
だからさっきダニエル達の車も帰って行ったのだ。
「残念だけどここでお別れですね」
ノノンにお別れは残念だと伝えて貰う。
すると運ちゃんは約束の場所まで行っていないので料金は
1000ドルで良いと言ってくれた。
しかし大谷記者は1500を渡す。
「貴方には色々と助けて貰った。だから約束の料金は払う」
運ちゃんはそれを受け取ると100ドルを私に差し出し何か言っている。
「証明書の料金は運ちゃんが出すって、言ってるのれす」
「どうして?いらないよ!」
すると運ちゃんはまたしても何か言っている。
- 430 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:44
- 「運ちゃん女の子供がいるのれす。仕事で会えない事が多いから
矢口しゃんと一緒、楽しかったと言ってるれす」
「そんな・・・だったらその子にこれでお土産買ってあげてよ」
だが運ちゃんは首を振る。
「しばらくは会えないのれす。だから・・・」
「じゃあさ、おいら何か変わりにあげるよ。欲しい物ある?」
私の言葉をノノンが運ちゃんに伝えると運ちゃんは
私のカメラバックについていたぬいぐるみを指差した。
「へ?こんなんでいいの?だったらこれも・・・・」
私はそう言うとカメラバックからもう一つぬいぐるみを取り出した。
このぬいぐるみは私がお守り代わりにいつも持ち歩いている物である。
ここからのお守りはこの100ドルだ。
運ちゃんはその事を伝えると、嬉しそうに二つのぬいぐるみを受け取り
握手を求めて来た。
「ありがとう。ほんとうにありがとう・・・・ここでお別れだけど元気でね・・・」
運ちゃんはその後すぐに帰って行った。あの厳しい山道をまた戻るのだ。
私達は寂しさを押し殺し新しい車を探すのであった。
- 431 :名無し狩人:2004/03/14(日) 23:23
- 次の車はすぐに見つかった。この辺りにはそんな連中がウロウロしていたからだ。
次の車で遂に私達はタベミールに到着する。ここからは本当の戦場である。
戦場・・・・それは想像を絶する物であった。
飛び交うミサイル、あちこちで聞こえる銃声・・・・
逃げ惑いながらも何とか取材を行う。
大谷記者も私も必死である。そんな中ノノンは頑張ってくれた。
私たちの無茶にも必死について来て仕事をこなしてくれた。
そして帰国の日・・・・
「ノノン、今日まで本当にありがとうね」
「矢口しゃん、また来るのれす」
「うん、約束するよ。戦争中は来れないと思うけど・・・・
絶対・・・戦争が終わったら取材に来るよ。この国の復興を・・・・
それからノノン達の頑張ってる姿を取材しにね」
「約束れす」
「うん」
それから二日後私は機上の人となっていた。
そして途中の中継地ロスイラで戦争の終結を知る。
なんと私達がアスガンを出国してすぐにカメリアが首都を制圧していたのだ。
あと二日・・・・あそこにいれば終結も取材出来たのに・・・・
それから数ヶ月が経っていた。
その日私は再び機上の人になっている。それも自衛隊の機体である。
私は復興支援の人達の取材団に紛れ込む事が出来たのだ。
アスガンに到着したら目指すはフェイサンハバダである。
ノノンが待つあの街へ・・・私はカメラを握る手に気合が入るのが解った・・・・
娘。戦記
「矢口真里の戦場レポート」
ザ・エンド!
- 432 :名無し娘。:2004/03/15(月) 00:15
- お疲れ様でした。たった今読み終えたところでしたが楽しませていただきました。
- 433 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:02
- 人◎∀◎)つ<ネタバトルに勝利! それはおいといて
マルスの続編の構想がまとまりましたので始めます。
- 434 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:04
- 宇宙に蔓延るならず者の脅威となるべく国際政府の軍部は
新造艦にそんな軍神「マルス」の名をつけた。
迫りくる環境破壊の波。もはや国家レベルで対応できる問題では無かった。
22世紀初頭、「人類皆兄弟」を謳い文句に設立された「国際連邦」。
国際連邦が発表した環境対応策は人類の「宇宙移住計画」。
人類は一度地球から離れ、地球環境を改善する。
この計画の主だった目的である。
スペースコロニー、月面都市。人類の生活圏は既に宇宙になっていた。
娘。戦記
【スペースマルス2】
地球から調査の為に派遣されたアンドロイド・ユリシーズ。
このアンドロイドの反乱も連邦軍戦闘艦「スペースマルス」の活躍で終結。
これはそれから数年後のお話である。
「お久しぶりです。お変わりありませんか?」
「おう、紗耶香も元気だった?」
「はい、おかげさまで。平家さんいい時に来ましたよ。
昨日美味しいチョコレートが手に入ったんですよ」
「マジ?そら楽しみやね」
「はい、それから・・・・・・」
「ん?紗耶香・・・?おい、紗耶香!どうした・・・・?」
土星軌道上にある防衛宇宙ステーション「CBC」
今ここに航路監視隊の訓練艦「プロポーズ」が到着して
その連絡をしている最中であった。
- 435 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:04
- 「あっちゃん。どうなっての?」
「オカシイなぁ。通信回路は正常やで。向こうから応答信号も出とるし」
プロポーズの艦長は平家みちよ。かつては連邦軍を離れ
ジャンク屋を営んでいた平家は稲葉と共に再び軍に戻っていた。
一方、平家と話をしていたのは市井紗耶香。
元スペースマルス艦載機隊レッドのパイロットであるが
現在はこの防衛宇宙ステーション「CBC」の警備隊長をやっている。
「CBC応答せよ!こちら訓練艦プロポーズ。CBC?メリットありますか?」
途中で途絶えたCBCからの連絡に
プロポーズの副長稲葉が呼びかけるが応答がない。
「おかしい・・・・何かあったのか?こうなったら強行入港だ。ルル!行ける?」
平家は航海班長のルルに船の強行入港を指示する。
「駄目です。ゲートが閉まってる」
「駄目か・・・ん?アレは・・・?」
強行を諦めた平家はステーションの外壁に
比較的大きな出入り口があるのを見つけた。
- 436 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:05
- 「あれは・・・・ステーショントレインの出入り口じゃないですか?」
ルルが言う。ステーショントレインとは宇宙ステーションの外壁を走る
いわばモノレールの様なものである。
「あそこからなら入れるかな・・・?のの、行ける?」
「うん、大丈夫!バトルポットなら入れるよ」
「じゃあ、行って様子見てきてくれないかな?」
「了解!」
そう言ってブリッジを出て行ったのは辻希美。
これまた元スペースマルスの一員であったが今はこの訓練艦の教官である。
辻はパイロット候補生のマーサ・スドーを引きつれ二機のバトルポットで
ステーション内部へと入って行った。
因みにバトルポットとは小型の戦闘用の機体である。
辻がステーションに入ってからしばらくすると通信が入った。
- 437 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:06
- 「へーけさん・・・・みんな・・・・みんな死んでる!」
「何?」
「いちーちゃんも・・・・みんなも・・・・眠ってるみたいだけど冷たいの・・・」
「何があったんや?」
「解らない・・・でもみんな・・・・動かないんだよぉ〜!!」
「のの・・・落ち着いて!パイロットスーツは脱いでないよね?」
「うん・・・」
「ステーションの管制システムは生きてるの?」
「うん、ステーションのシステムは正常みたい」
「よし、とにかく港のゲートを開けて・・・・出来るよね」
「了解・・・」
少しするとステーションのゲートが開き、プロポーズが港に入った。
「へーけさーん!」
船から下りた平家達の所に辻とマーサが走って来る。
平家達もコスモスーツを着用していた。
本来ならこの港ではスーツなど必要ないのだが安全の為に
稲葉がスーツ着用指示を乗員にしていたのだ。
- 438 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:06
- 「へーけさんみんなが・・・・いちーちゃんが・・・・」
「うん、すぐに調査しよう」
こうしてプロポーズの乗組員によってCBCの調査が始まった。
テロの可能性。あらゆる毒物・細菌兵器の調査など。
しかし、瞬時にステーションの人間全員が死亡する原因は見つからなかった。
「みんな、苦しんでる様子もない・・・・紗耶香笑ってるよ・・・・」
「きっと楽しみだったんだね。私達が来るの・・・・私だって楽しみにしてた・・・
久しぶりにいちーちゃんに会えると思ってたのにこんなのって・・・・」
平家や辻、稲葉など市井を知るメンバーは悲痛の表情を浮かべている。
もちろん他のメンバーの表情も暗い。
「とにかく戻って報告せんとアカンな」
「でも・・・みんなをこのままには出来ないよ」
「しかし連れて行く訳にもイカンやろ?原因が解らんのやし
未知の病原体の可能性だって充分に考えられるんやで」
稲葉の言葉に平家は頷く。
- 439 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:07
- 「・・・て事は私たちもヤバイの?」
「さあてね。どうやろうな?けど基地に戻ってもすぐには入れてはくれんやろなぁ」
「だよね・・・・だいいちこのまま無事に戻れるかもあやしいんだよ」
辻の言葉に稲葉や平家は最悪の事も覚悟するようにメンバーに言った。
「ピースドライブ準備!」
艦内に平家の声が響く。
調査を終えた平家達は事態の報告の為、訓練を中止して
近くの拠点となる軍事基地を目指しピースドライブに入った。
- 440 :名無し狩人:2004/03/28(日) 23:00
- ハローエンジンが開発されてから数年が経っている現在では
その航続距離も飛躍的に伸びていた。
フリージアのハローエンジンに比べるともう別の物と言っても過言ではない。
地球軌道上から土星軌道上までなら、その時の惑星の位置にもよるが
大体一週間以内に行き来出来るようになったのである。
そしてこのプロポーズにもその新型エンジンが搭載されている。
今現在の位置から一番近いのは木星軌道上に浮かぶ
「サウザン・ジュピター」である。
「サウザンジュピターへ。こちらは訓練艦プロポーズ艦長平家です。
至急マコード司令に連絡したい事があります」
サウザン・ジュピターから少し離れた所でピースドライブを終えた
平家はすぐに司令官のマコードに連絡を入れようとしたのである。
「マコードだ。平家か。どうした?お前達は天王星軌道まで
訓練航海じゃなかったのか?」
「そうなのですが、至急准将にお伝えしたい事がありまして・・・」
平家がそう言うとプロポーズのメインモニターに映った
マコードの表情が曇る。
- 441 :名無し狩人:2004/03/28(日) 23:01
- 「みっちゃん、マコード司令は今、小将やで!」
隣にいた稲葉が慌てて平家に言う。
「・・・・申し訳ありません。小将・・・・」
「いや、構わんよ。で何があった?」
平家は数時間前の出来事をマコードに伝える。
報告を受けたマコードは意外にもプロポーズに基地への入港を指示した。
「このままの入港はマズイのでは?」
平家はマコードに問い掛ける。
「いや、大丈夫だ。だが隔離ポートに入って貰うぞ。そこで検査を行う」
「了解!よろしくお願いいたします」
指示があってからすぐにプロポーズはサウザンジュピターに入った。
この基地にやってくる船はいわゆる宇宙線などを浴びた船も入港する為
こう言った場合の施設も完備されているのである。
「チェック完了!基地内への進入を許可します」
船及び搭乗員の検査が終わり平家達は基地内の出入りを許可された。
早速詳しい報告をする為、全員司令室に向かうのであった。
- 442 :みゅん八先生:2004/04/05(月) 22:14
- 「状況は解った。後は調査隊を送れば詳しい事は解るだろう」
平家の報告を受けたマコードはすぐさま調査隊をCBCに派遣する。
一方、プロポーズはこの基地で一時待機の命令が下された。
「一体何がどうなってるの?」
「解らん。調査隊の報告待ちやな」
「へーけさん、私達はどうなるんですかね?」
「どうって?」
「訓練は中止ですか?」
「どうだろうなぁ・・・命令がどう来るか解んないや」
プロポーズのクルーは基地内のロビーで話をしていた。すると
「お久しぶり」
作業服を着た女性がメンバーに近づいて来た。
「おう、村さんやないか。ここやったっけか?」
そう言って稲葉が話し掛けたのは村田めぐみ。
元スペースマルスメカニックである。
- 443 :名無し狩人:2004/04/05(月) 22:15
- またまちげーた!
「話聞いたよ。市井ちゃん・・・・本当なの?」
「ああ・・・残念やけどな。この目で確認してきたわ」
「・・・・・・」
稲葉の言葉に村田は絶句する。何を言ったら良いのか。
言葉にならずただ涙がこぼれ落ちた。
「あの・・・これ・・・」
涙を拭きながら村田はファイルを平家に手渡す。
「なにこれ・・・?ん?カリワカC?」
村田の持って来たファイルには「カリワカC」と記されている。
何かの資料の様だ。
「ふむ・・・・成る程。で、今回のCBCの件はこれが原因なの?」
「解りません。でも平家さん達のデータを考えるとこれじゃないかって柴田が・・・」
「マコード司令には話したの?」
「はい、柴田から資料が来てすぐに持って行ったら平家さんに見せろって」
「そうか・・・」
平家はそう言うとファイルをメンバーに見せた。
- 444 :名無し狩人:2004/04/05(月) 22:15
- 「イマイチ解らないよ。村さん、このカリワカCってなんなの?」
「辻ちゃんは解りにくいかな。専門用語も多いしね。
このカリワカCって言うのはね、簡単に言うと人間の脳細胞を破壊する物なの」
「脳細胞?」
「そう、宇宙線・・・いや、超音波みたいな物かな?
とにかくそれを浴びた人間は脳内物質のドーパミンだかエンドルフィンだか
そんなのが異常に分泌されて最悪の場合には死亡。
良くても脳に後遺症が残って記憶障害とかあるらしいんだ」
「それじゃあ、いちーちゃんは・・・」
「まだ解らないよ。柴田も自信はないって言ってたし」
そう言うと村田は辻の横に腰をおろしす。久しぶりの再会であったが
素直には喜べない何やら微妙な空気が漂っていた。
- 445 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:53
- 平家達がこの基地に到着してから丸一日が経とうとしている。
プロポーズのクルーはマコードに呼ばれミーティングルームに集まっていた。
「調査隊から報告があった。結果から言おう・・・CBCの件はテロだ!」
「テロ?」
「何者かがCBCでカリワカCを使ったと思われる。
更に亜空間レーダーにお前達が調査を始めた頃にCBCから
発進したと思われる機体の記録も残っていた」
マコードも説明にメンバーは顔を見合わせる。そんな奴等を確認していないからだ。
「お前達の言いたい事は解る。だが実際の所はこれが真相だろう。
お前達の調査が甘かったんじゃない。相手が悪かったんだ。
しかし、お前達が一つだけ相手に勝っていた所もある」
マコードはそう言うとマーサを見た。
「マーサが何か?」
平家がそう言うとマコードは薄笑いを浮かべ話し始める。
- 446 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:53
- 「犯人の目的も正体も現在は解らない。しかしこれがテロだあることは
ほぼ断定できる。それを決定付けたのはマーサ、お前だ」
マコードの説明によるとこうだ。
犯人達はプロポーズ入港の隙をついてCBC内でカリワカCを使用する。
その際、基地の機能をダウンさせた。
これは自分達の存在の記録を残さない為であった。
プロポーズはすぐに異常に気が付く筈であるが
CBC内にメンバーが入るまでに十分脱出する時間はあると考えていた。
そして実際脱出は成功。後は逃げるだけである。
しかしここで犯人達には予想もしない誤算があったのだ。
プロポーズがCBC内に入る際、犯人達は辻がゲートの非常開閉装置を
使用すると考えていたのである。実際辻もそうしようとしていた。
しかし、辻と一緒にCBCに入ったマーサがCBCのシステムを
短時間で復帰させた為、辻は通常の操作でゲートを開けていたのだ。
「それとテロであるとの関連付けは?」
「マーサが機能を復帰させたお陰で亜空間レーダーも復帰した。
そしてやつらが逃げた形跡をギリギリながらレーダーが捕らえた訳だな」
マコードの説明に辻は不思議そうな表情を浮かべていた。
- 447 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:54
- 「だったら犯人はシステムを壊しちゃえば・・・」
「それだとテロだってすぐに解っちゃうでしょ。逃げる時間を稼ぐ為に
私達に考える時間を持たせたかったんじゃない?
けど予想外にCBCの機能が早く復帰した。
犯人は逃げる事には成功したけど足跡を残してる訳だね。
それに気が付いているかは解んないけどさ」
平家の言葉に辻は納得するとマーサの肩に手を乗せた。
「少なくともマーサのお陰で敵の足跡は残ったんだ。
手掛かりはゼロじゃない。いちーちゃんの仇を討てるチャンスが残ってる。
マーサ、ありがとう!」
辻の言葉にマーサは照れくさそうに笑う。
それを見ていたマコードも頷くと言った。
「辻の言う通りだ。足跡が残っている以上犯人特定の可能性はゼロじゃない。
それでだ、お前達には訓練を中止して新しい任務に就いて貰う」
マコードの言葉にメンバーは大きく頷いた。
これからマコードが出す指令の内容は誰もが瞬時に分かっていたからである。
- 448 :名無し娘。:2004/04/12(月) 06:51
- 小ネタ満載だねw イイヨーイイヨー
- 449 :名無し娘。:2004/04/12(月) 20:36
- 「総員出撃に備えて準備!明日には出発だ!」
平家の言葉にメンバーが頷く。
「訓練生はここに残って貰う。すぐに迎えも来るからそれまでは待機!」
「艦長、私も連れてってください!」
平家の指示ににマーサはこう言う。
「マーサ、気持ちは解るけどこれは訓練やないんや。
場合によっては実戦になる。お前はまだまだ訓練不足や
そんな所で優秀なお前を失う訳にはイカンからな」
稲葉はそう言うとマーサの肩に手をおいた。
「大尉・・・・どうしても駄目でしょうか?」
「ああ、アカン。お前らはこれからの軍の大切な人材や。解るな?」
「はい・・・・では皆さんご無事で・・・」
「ん、ありがとう。大丈夫や、きっと無事に戻って来る」
稲葉にそう言われたマーサはミーティングルームを出て行く。
それを見送った残りのメンバーは出撃準備の為プロポーズに向かった。
- 450 :名無し娘。:2004/04/12(月) 20:36
- 「さて・・・カッコ良いこと言ったはエエけど補充の人員はどうなってるん?」
「少将が何とかするって言ってたけど・・・」
プロポーズに出された新たな任務とは勿論CBC事件の犯人の追跡である。
敵はピースドライブを使える船を持っていることは亜空間レーダーの反応で
既に解っている事である。
そして訓練艦プロポーズにはその亜空間レーダーが装備されている。
本来であればこの亜空間レーダーは艦隊の旗艦など
数少ない艦艇にしか装備されていない。そして訓練艦であるプロポーズは
その数少ない艦艇の一隻なのである。
「さし当たってはメカニッククルーとパイロットやな」
「メカは村さんのチームが乗ってくれるって言ってたよ」
稲葉の独り言に辻が答えた。
そしてパイロットの話になった時に平家が難しそうな顔をしてやって来た。
「どうや?パイロットは?」
「それが・・・この基地の人間だと手一杯らしくて・・・」
「アホな・・・んじゃどないすんねんな?」
「参ったなぁ・・・・」
マコードは人員を用意すると約束していたが上層部の意見で
それが出来ないと言ってきたのだ。
しかしプロポーズの任務はそのまま実行との命令もあり
平家はどうすることも出来ないでいたのである。
- 451 :名無し狩人:2004/04/12(月) 20:37
- 「こうなったらマーサ達を連れて行くしかないかなぁ?」
「それは無茶やで。賛成はできひんな」
「だよね。そなると・・・・」
そんな話を2人がしている所に一隻の船が入って来た。
「なんや?・・・・輸送船か?」
その船は輸送船オネーモであった。この基地に定期的に物資を運搬してるのである。
平家と稲葉はただ何となくその船を見つめていた。
すると乗員と思われる一団が次々に降りて来る。そしてそこには・・・
「おい、みっちゃん。あいつ等・・・」
「うん。どうしてあの船に乗ってるんだろう?」
「どう見ても護衛の任務には見えんな。まあエエ、
飛んで火にいる何とやらってやつや・・・」
稲葉と平家は顔を見合わせるとその一団に近づいて行った。
- 452 :名無し狩人:2004/04/12(月) 20:37
- 「おう、お前らどうしてここにおるんや?」
稲葉は一団の中にいた数人に話し掛けた。
「あっ!稲葉さん、それに平家さんも・・・お久しぶりです」
「護衛には見えんけど・・・」
「えっ?ああ、休暇ですよ。土星の輸送船団の護衛で二ヶ月の任務でしたから
そこで人員の交代があったんです。それでジュピトリスリゾートで
ゆっくりしようと思って・・・」
ジュピトリスリゾートとは木星の衛星に作られた保養施設であり
軍人は勿論一般の観光客も訪れる場所である。
「そうか・・・でいつまでなん?」
「一応一ヶ月・・・次の船団が来るまでは・・・・って、どうしてですか?」
「そうか・・・なるほどねぇ・・・そら結構なお話やなぁ・・・」
「稲葉さん・・・?何か企んでません・・・?勘弁して下さいよ
久しぶりの長期休暇なのに・・・」
「なあに、大した事やない。ちょっとうちらに付き合ってくれればエエんや。
悪いようにはせんから・・・なあ田中ちゃん・・・」
不幸にも稲葉達に捕まったのは、田中、道重、亀井の3人。
いずれも元スペースマルスの艦載機パイロットである。
- 453 :名無し狩人:2004/04/19(月) 22:55
- 「稲葉さん・・・?冗談ですよね?」
「いんや本気やで」
「だって・・せっかくの休暇なのに・・・」
「そんなんええやん、それとも田中は市井が仲間やない言うんか?」
「は?何の事ですか?」
「えっ・・・・?ああ、悪い悪い。まだ説明しとらんかったな・・・」
そう言うと稲葉は田中達3人に事情を説明する。
CBCでの事件の事。そして自分達の任務とクルーが足りない事など・・・
「うそ・・・ですよね。そんな事じゃ騙されませんよ」
「アホ!嘘でこんな事言えるか!」
「じゃあ・・・」
田中は平家を見た。すると平家は黙って頷く。
「そんな・・・私約束したのに!今度会ったらとっておきの技教えてくれるって・・・」
話を黙って聞いていた亀井が叫ぶ。道重はただ呆然としていた。
田中は平家の頷きをみるとその場に座り込むそして・・・・
- 454 :名無し狩人:2004/04/19(月) 22:56
- 「みんな・・・・そう言う訳なんだ。力を貸してくれないかな?」
平家が3人に言った瞬間
「勿論です。こちらからお願いしますよ」
「私もやります。平家さんよろしくお願いします」
「私も・・・・あっでも一ヵ月後はどうしよう・・・?」
士気が上がる3人の中で道重は一ヵ月後の任務を気にしている。
勿論この作戦には参加するつもりではいるが自分の任務に穴をあけるのが嫌らしい。
「大丈夫それは私から少将にお願いしとくよ。じゃあ決まりって事で良いね」
平家の言葉に3人は大きく頷いた。
田中達は早速予定を変更するとプロポーズの乗艦準備を始めた。
「さて、オペレーターとかはもうすぐ柴田と斉藤が来てくれるけど
パイロットが辻を入れても4人か・・・・せめてもう一人ほしいね」
「そうやねぇ。かと言って他にあてがある訳でも無し・・・こうなると・・・」
「うん」
「あいつしかおらんか・・・けど引き受けてくれるん?」
「大丈夫でしょ。あの子は元々紗耶香の同期だし」
「だな」
こんな会話があった翌日直前に到着した柴田と斉藤を乗せ
プロポーズは一路土星軌道を目指し出航した。
目的地は勿論CBC。そしてもう一つ・・・
- 455 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:30
- 「こちら特務艦プロポーズ、オペレーター斉藤です。CBC応答願います」
「CBCです。任務お疲れ様です」
「その後変わったことはありませんか?」
「はい、我々が任務についてからは特に無いです」
「了解しました」
CBCに到着したプロポーズは連絡を取っただけでCBCに入港せず進路を変えた。
「目標、タイタンコロニー」
「了解!」
犯人の追跡は亜空間レーダーからおおよその進路は特定できている。
そして何処に向かったのかも大体の見当はついていた。
本来であればそちらに直行するのであるがプロポーズにはまだやる事があった。
そう、人員の確保である。
- 456 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:31
- 土星衛星タイタン・・・・この衛星にはコロニーが存在する。
その名もタイタンコロニー。ここは地球圏を離れ
自由気ままに暮らす人々が集まった場所である。
老後をゆっくりと過ごす人。更には金持ちで悠悠自適な人。
はたまたヒトヤマ当てて気ままに暮らす人など地球人の憧れの場所でもある。
そんな人々の中に平家達が探す人物はいるのである。
「こちらタイタンコロニー管理局です。貴艦の所属と航行目的を知らせて下さい。
貴艦は当コロニーの防衛ラインに侵入しています」
タイタンコロニーにやって来たプロポーズに予想もしない通信が飛び込んで来た。
「何これ?失礼なやつらだなぁ」
通信を受けた柴田がムッとした表情を見せる。
「本当になんだろうね。今までこんな事無かったのに。
でもまあ柴田とりあえず喧嘩してもしょうがないし
答えられる範囲で返信して」
「了解!」
平家の指示に柴田は怒りながらも返信をした。
- 457 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:31
- 「こちらは連邦軍訓練艦プロポーズです。これより識別コードを送信します。
航行目的は軍機によりお応えできませんが入港の許可をお願いします」
柴田はそう言うと識別コードを送信した。それからすぐに返事が返ってくる。
「コード確認。失礼致しました入港を許可します。誘導ビームに乗ってください」
コロニー側からそう連絡があると港のゲートが開き、誘導ビームが現れる。
ルルが誘導ビームにしたがって艦を操り、プロポーズはコロニーに入港した。
「タイタンコロニー駐留軍責任者のケンコバー大尉であります。
先程は大変失礼いたしました。実はCBCの方で何かあったらしいとの
連絡を受けまして警戒をしている所でして・・・・平家少佐でいらっしゃいますね?
CBCの事は何かご存知でいらっしゃいますか?」
平家達が艦から降りるとコロニー警備担当のケンコバー大尉が出迎えた。
ケンコバーの質問に平家は首を横に振るだけである。
- 458 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「大尉、私からは何も答えらる事はありません。しかしこの態勢は続けて下さい。
じきに軍の方からも正式に連絡があるでしょう」
「はっ。やはり何かあった様ですね。解りました、それでは連絡を待ちます」
「お願いします」
平家はそう言うと稲葉、辻、柴田を連れてコロニーの中の街に繰り出した。
この街は緑豊かな別荘地をイメージして作られた為かなりのんびりしている。
そんな街をしばらく車で走ると現れるのが巨大なショッピングモール。
ここには食料、衣料、日用雑貨から美容、医療施設など生活に必要な
施設がほとんど揃っているのである。
そんなモールの横にそびえる一軒のホテル。平家達はそのホテルの駐車場に
車を止めるとフロントに向かった。
「いらっしゃいませ。ようこそ!フロントまでご案内します」
入り口でべルボーイが丁寧に4人を迎えてくれた。
フロントに着くと稲葉が開口一番こう言った。
「オーナーおる?」
「は?お客様本日はどういったご用件で・・・?」
宿泊客だと思って対応に出たフロントの担当者は驚いた様に言う。
- 459 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「そやからオーナーに会いに来たんや。おるの?おらんの?」
「申し訳ございません。オーナーはただ今外出しておりまして・・・」
「そうなん。じゃあ待たせて貰うわ」
そう言うと稲葉はロビーの椅子に座る。
あっけに取られていた3人もそれに従った。
そんな4人の所に少しすると一人近づいて来る。そして・・・・
「お客様、失礼ですがオーナーは外出しておりますので
よろしければ支配人の私がご用件をお伺いいたします」
そう言う声に4人は聞き覚えがあった。
そしてその人物を見た瞬間、4人は笑い出した。
「わはははは・・・・なんやその格好・・・」
「あははは・・・・ホントどうしちゃったの?」
「はははは・・・・全然にあってないよ・・・・圭ちゃん」
支配人と名乗って現れた女性は保田圭、彼女も元スペースマルスクルーである。
- 460 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「あれ!みんなどしたの?休暇?」
久しぶりの再会に保田は驚いているが当の4人は笑い続けている。
「何だよ〜。そんなに笑う事ないだろう!」
先程までの態度とはコロッと変わり素が出てきた様な保田に
「ほらほら・・・支配人がそんな言葉づかいじゃアカンて・・・それにしても・・・」
「ごめんごめん、圭ちゃんがいるなんて思ってもいなかったから」
「圭ちゃん・・・どうしてここにいるの?」
保田はユリシーズとの戦いが終わって少しすると軍を辞めていた。
普通の女の子になる。そう言って軍を去っていったのである。
「ホテルの支配人だって普通の女の子の仕事だよ!
女の子はおしとやかにして・・・・戦闘機なんて乗らないの!」
そう保田が言うとやっと4人の笑いが収まった。
保田は呆れた様な表情を浮かべながら4人を事務所に案内した。
- 461 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:33
- 「で?今日は何しに来たの?」
「何しにて、言うたやろ?親分に用があって来たんや」
「そうなの?でも・・・ごめんね今出かけてていないないんだよ。
二時間位前に電話があっていきなり飛び出して行っちゃったらしんだけど・・・」
「なんや圭ちゃんはそん時おらんかったんか?」
「うん」
そんな話をしていると事務所の電話が鳴った。
「はい、保田です。・・・ああ丁度良かった今平家さん達が来てるんだけど・・・えっ?」
話をしている保田の顔色が急に蒼ざめて行くのが4人には解った。
電話の相手は・・・・恐らく探している人物である。
「うん・・・・うん・・・解った。待ってる様に行っとく・・・じゃあ・・・」
受話器を置いた保田は振り返ると4人をじっと見つめた。
「本当なの・・・?」
「紗耶香?」
「うん」
「私達が第一発見者だよ。残念だけど本当なんだよ。
紗耶香笑ってたよ。笑いながら眠ってた・・・・」
「そう・・・・」
保田はそう言うと椅子に座り込み4人にここにいるように告げた。
- 462 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:24
- 「紗耶香は確かCBCだったよね?何があったの?・・・って言っても答えられないか」
「ごめんね。いくら圭ちゃんでも今はまだ・・・・」
「だよね。それにしても・・・信じられないよ・・・・」
市井の事を知った保田は落ち込んでいるが比較的冷静な表情を浮かべている。
「で?親分は何処行ってるの?」
「良く解んないけど・・・話の感じからすると紗耶香の家族と連絡取ってるみたい」
「家族・・・?何や?どうして家族から・・・・」
「解んないけど、この前紗耶香が家族連れて来たんだ。
そん時元同僚だって話したから・・・それで連絡があったのかも」
「そうか・・・いくら軍機とは言え、家族には連絡するからなぁ」
そんな話をしているとまたしても事務所の電話がなった。
「はい保田・・・・ああ・・・今何処にいるの?・・・・タイタン?
タイタンのスペースポートだね。・・・・うん・・・お葬式?・・・うん・・・」
保田はしばらく話をすると再び受話器を置いて言った。
- 463 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:24
- 「あのね。今紗耶香の家族がタイタンにいるんだって・・・
いろいろ話があるから今日は戻れないって・・・・」
「マジか?参ったな・・・・」
「そうか・・・・どうしよう・・・?」
保田の言葉に稲葉と平家が困惑していると
「あの・・・保田さんじゃ駄目なんですか?」
柴田が2人に言った。
「へ?圭ちゃん・・・・?」
「そうか!そうだよね!」
平家が思い出した様に言う。
「何・・・?一体何なの?」
「ごめん・・・実は矢口に頼みごとしようと思ったんだけど・・・
うん圭ちゃんでも良いんだよ。あのね・・・・」
平家はそう言うと事件の経緯、そして任務に当たってのパイロットが
足りない事を保田に話した。
- 464 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「・・・・そうか・・・・紗耶香はそれで・・・・って事はこれは敵討ちだね。
パイロットか・・・・うん解った。引き受けるよ。
でも大丈夫なの?私はもう軍の人間じゃないんだよ」
「それは問題なし!マコード司令に許可は貰ってあるの。
民間人の一時的な起用を申請してあるから・・・・」
「そんな制度あったっけ?」
「今回の特例。元軍人で身元はしっかりしてるし、本当は矢口で申請したんだけど
圭ちゃんでも立場は同じだし問題無いでしょ」
平家がそう言うと保田は早速親分・・・つまりこのホテルのオーナーであり
雇い主の矢口に連絡を入れた。
矢口とは・・・そう、これまた元スペースマルス隊の一員である矢口真里の事である。
矢口はユリシーズとの戦いが終わってしばらくすると、突然大金持ちになっていた。
これはまだ人類が地球で暮らしていた頃に「月の土地の権利」と言う物が
シャレで販売されていたのだ。その時に矢口の数代前の先祖がその権利を
シャレで買っていたのだが、なんとその権利が現在実際に認められていて
そんな事など知らない矢口の元に「月開発公社」より突然連絡があり
土地を買い取りたいと言われ、その土地を売ったお金でこのホテルを
始めていたのだが、その時に矢口は軍を辞めており
現在は保田と同じ民間人なのである。
- 465 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「矢口驚いてたよ。でも出張扱いにしてくれるって・・・・
本当なら自分が行きたいって言ってた。でも今は・・・・」
「解っとるよ。矢口の仕事は敵討ち以上に大切な仕事や。
家族直々の頼みじゃしゃーないやん」
元スペースマルス艦載機隊レッドのリーダー保田圭が新たにクルーとして
プロポーズに加わった。
これ以上の時間は無駄に出来ない為、保田が乗り込むとプロポーズは
すぐに出航した。
「目標、天王星!ピースドライブ準備!」
亜空間レーダーの痕跡から敵は土星よりも外宇宙に移動した事が解っていた。
そして、このところ太陽系を騒がせている反連邦組織の拠点も
この辺りにあるのでないかとも予測されていた為、平家の出した答えが
天王星だったのである。
「それで?向こうに着いたらどうするの?」
「どうって?」
「ただ闇雲に探す訳じゃないでしょ?」
「目星はついてるの。実はね今回の訓練もそれを探るって言う
意味もあったんだよね」
「ホンマか?聞いとらんでそんなん!」
ブリッジで話をする保田と平家の会話に稲葉が入って来た。
- 466 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「みっちゃん、そう言うんはうちにも言っといてもらわんとなぁ」
「いや、これはあくまで私と和田中将の推測だから・・・・
だから正式なミッションじゃなかったんだ」
「けどやなぁ・・・」
「ごめん。これからは言うよ」
そんな話が終わりかけると
「ピースドライブ終了・・・・現在地、天王星まで6万ミニモ」
柴田の声が聞こえて来た。
ミニモとは宇宙単位で、宇宙を航行する船舶などが使用する距離を表す単位である。
「さて、ここからが本番だよ」
「作戦は?」
遂にプロポーズは作戦空域に入った。ここからは決して気を抜けないのである。
- 467 :名無し狩人:2004/04/27(火) 00:58
- 平家はルルに天王星に向かう様に指示を出す。
作戦はとにかく敵をおびき出すと言う無謀とも言える物であった。
「天王星に敵の根拠地があるの?」
辻の問いにメンバーは笑い出した。
「ははは・・・辻さん。天王星は主成分が水素とヘリュウムの
ガスで覆われた惑星ですよ」
「え?」
「お前、良くそんなんで軍の入隊試験に通ったね」
田中と保田の言葉に辻はまだ不思議そうな顔をしていた。
「こらこら、笑っとる場合やないで。可能性としてはあるかも解らんのやから」
「そうなの?」
「そりゃそうやろ。全部がガスな訳やないんやし・・・なぁ、みっちゃん」
稲葉の言葉に平家は首を横に振る。
- 468 :名無し狩人:2004/04/27(火) 00:59
- 「可能性はゼロじゃないけど・・・・」
「目星はついとるんか?」
「ミランダ・・・・」
平家は言う。ミランダとは天王星の衛星の一つで
地表に大きな溝を持ち、ゲリラの隠れ家に丁度良い場所でもあるのだ。
「そこまで解っててなんで今まで何もしなかったの?」
保田の問いに
「今の連邦軍は荒廃しきってるからね」
平家は寂しそうに答える。
反連邦組織は別に今プロポーズが追っている組織だけはない。
ただどれも大きな組織ではない為、軍はあまり重視していないのである。
その為、何か事件があってもその場しのぎの対応しかせず
今回の様に調査隊が出ることは稀であった。
- 469 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:06
- 「ミランダまで5000ミニモ。エネルギー反応キャッチ!」
柴田の声に平家が動いた。
「総員戦闘配備!ミネルバシステム作動!」
艦内に警報が鳴り響く。保田達艦載機チームは素早くカタパルトに行くと
戦闘機に乗り込んだ。
柴田と斉藤はミネルバシステムを作動させる。
「ミネルバシステム」とは自動迎撃システムの事で
ユリシーズとの戦いがあった頃に、スペースマルス隊のメカニックであった
大谷雅恵が開発した「オートコンバットシステム」を原型とし
それを発展させシステムである。
因みに名前の由来はギリシャ神話に登場する英雄「ペルセウス」に
盾を送った女神「アテナ」のローマ名から来ているのだが
これは数世紀昔にあった「イージスシステム」のからの名残であるとも言われている。
- 470 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:07
- 「前方より艦艇3隻接近!セレス級戦闘艦です!」
「識別は?」
「識別コード・・・あれ?」
「どうした?」
「イダとマチルダ・・・それにガスプラになってます」
「アホな・・・」
プロポーズに接近する戦闘艦の識別コードは、火星衛星基地「アレス」に
籍を置く戦闘艦のコードであった。
しかしながらこの場所にその三隻が存在する筈など無い事は
プロポーズのメンバーなら誰でも知っている事である。
なぜならクルーのほとんどがかつてアレスにいた者ばかりだからである。
「斉藤・・・・」
平家が斉藤を見る。
「間違いなく偽物です。あの三隻は今改修中です」
斉藤は言った。オペレーターの斉藤瞳は今でもアレスに籍を置いている。
その斉藤はこのプロポーズに乗り込む為、アレスからやって来た。
そして出発前に、今目の前にいる三隻の改修を行っていた大谷に
声をかけて来たのだ。
- 471 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:07
- 「柴田、コンタクト取れる?」
「やってみます・・・・ガスプラ応答願います・・・・」
柴田が現れた戦闘艦に通信を試みた。
「・・・ガスプラです」
「こちらは連邦軍訓練艦のプロポーズです。貴艦隊の航行目的を知らせて下さい」
「申し訳ありませんが軍機によりお答えできません」
「了解しました。私はプロポーズ艦長の平家です。貴艦の艦長をお願いします」
「は?」
平家はガスプラの艦長と話がしたいと申し出た。
ガスプラの艦長・・・もしガスプラが本物であれば
アレスのカドー大尉が指揮を取っている筈である。
「・・・・艦長はただ今休憩中です・・・」
「休憩中?ほう・・・いい根性やな!上官の呼び出しをシカトかい!」
平家がそう言うと相手の通信が途絶えた。
「作戦開始!」
平家の声が艦内に響き渡った。
と同時に保田達艦載機チームが飛び出してゆく。
- 472 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:08
- 「レーザーカノン三連速射!右舷対艦ミサイル開け!」
プロポーズは先制攻撃を仕掛けた。
思わぬ攻撃に敵艦隊は混乱しているようだ。
「レッドリーダーより各機へ!私達は偽マチルダを叩くよ!」
「圭ちゃん・・・」
「何?」
攻撃を仕掛けようとした保田に辻が言う。
「私、レッド隊じゃないよ」
「あっ・・・・しまった。ブリーフィングしとけば良かったね・・・基本だったのに・・・
ごめん、じゃあ昔のコールサインで行くよ。みんな良い?」
「レスラッテ+了解!」 「ノギーメタンア了解!」
「キースギテック了解!」 「サーユナルシス了解!」
「いいねえ、その調子!んじゃ改めて・・・ケメンダヤスより各機へ・・・
指示は・・・さっきの通り!行くよ!」
保田は軍を離れてかなり経つ。
今回は久々の戦闘であった為、つい昔の癖が出てしまったのだ。
保田はかつてのスペースマルスレッド隊のリーダーであるが
辻はイエロー隊であり、他の3人はホワイト隊である。
それに今の辻達には現在の所属の部隊があり
それぞれのコールサインを持っている。
なので混乱を避けるため保田は昔のコールサインで指示を出したのである。
- 473 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:08
- 「敵艦、艦載機を出してきました」
「とうとう化けの皮をはいだか・・・・」
攻撃を始めた敵艦から艦載機が発艦してプロポーズに襲い掛かってくる。
するとミネルバシステムが自動的に応戦を開始した。
「戦闘も楽になったな。まったく大谷はエライもん作ったもんやで」
ミネルバシステムの働きに稲葉は感心をしていた。
それ程このシステムは画期的だったのである。
「亜空間レーダーに反応あり!」
斉藤の声がするとプロポーズの後方に艦隊が現れた。
「・・・・・所属不明艦多数・・・・・識別にありません・・・」
「えっ?・・・・・・・」
柴田の声に平家は絶句する。すると
「敵艦隊沈黙!軽い軽い!」
保田の声が通信機から聞こえて来た。
しかしそれに答える者は誰もいない。
- 474 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「ケメンダヤスよりプロポーズへ。どうしたの?」
「圭ちゃん・・・まずいよ・・・」
異変に気がついた辻はプロポーズの後方に展開する艦隊に気がついた。
「なんだあいつ等・・・」
「うそ・・・保田さんあいつ等ウィラポーンです!」
田中はそう言ったが保田はそれが何なのか知らなかった。
反連邦組織「ウィラポーン」田中は過去に戦った経験があった。
「田中。ウィラポーンってどんな連中なの?」
「かなり戦いには慣れていると思います。まえに一度戦った事があります」
「その時の状況は・・・?」
「決着は付かなかったですが・・・・正直あのままだったら負けてたかも・・・」
田中は現在物資輸送船団の護衛部隊にいる。
そしてその船団の護衛中に突然現れたのがウィラーポーンであった。
田中は出撃する間もなく一隻の僚艦が目の前で撃沈された。
そして田中が出撃した時には既に消えていたのだ。
- 475 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「あいつら・・・・あの時には解らなかった・・・でもその後犯行声明が出て・・・」
「ニュースには無かったね・・・」
「上は大した問題じゃないって・・・・」
田中の言葉からその時の悔しさが伝わってきた。
保田はすぐに機首を反転させた。
「みんな行くよ!」
そうして艦載機隊が攻撃に出ようとすると
「やめなさい!圭ちゃん・・・勝てないよ」
平家が止めた。
「逃げるの!」
「あたりまえでしょ。早く戻って」
「でも・・・・紗耶香の仇だよ」
「自分がやられたら意味無いでしょ!」
平家の指示に保田は従うしかなかった。
普通に考えれば今は勝てる状況ではない。
敵艦隊は五隻。それも先程叩いた旧式の戦闘艦とは訳が違うのである。
- 476 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「敵艦隊が攻撃開始しました」
「艦載機隊収容急げ!」
敵の攻撃を何とか迎撃しながらプロポーズは保田達を収容する。
「全速転進!離脱急げ!」
敵の攻撃を掻い潜り何とか逃げようとするプロポーズ。
「駄目です。逃げ切れません」
柴田の叫び声が響く。
「諦めるな!爆雷散布!」
何とかして離脱を図るプロポーズだったが敵の追撃も厳しい。
「第二ブースター被弾!速度低下・・・」
逃げるプロポーズにこの被弾は致命的であった。
- 477 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:10
- 「ピースドライブ準備!」
「無茶です!こんな状態で!」
「他に方法はない!」
敵の追撃をかわすにはもうピースドライブしか方法は無かった。
しかしながら高速移動中のピースドライブはあまりにも危険なのである。
そんな中、平家は決断をした。無茶でもやるしかない・・・だが
「ハローエンジン出力低下・・・どこか被弾した様です」
最後の策であるピースドライブもハローエンジン被弾により出来なくなった。
「くそ!こうなったら・・・攻撃だ!」
逃げ切れないと判断した平家は戦いを挑む覚悟を決めた。
メンバーもまたその覚悟が固まっている様だ。
「みんな・・・やれるだけやるよ」
「了解!」
保田達は再び出撃して行った。その後に稲葉と村田が続く。
- 478 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:10
- 「戦闘機は多いほうがええやろ。指揮は・・・圭ちゃん任せたで!」
「了解!ケメンダヤスより各機、敵機を一機もプロポーズに近づけるな!」
「了解!」
艦載機7機はプロポーズの正面に陣取った。
迫り来る敵艦載機を迎え撃つ為である。
「対艦ミサイル多数接近!」
「打ち落とせ!」
プロポーズの艦橋も既に修羅場と化していた。
死をも覚悟したメンバーが必死になっていたのである。
「第一、第二カタパルト被弾!」
「ミネルバシステム使用不能」
被害状況が続々と報告される。
「ほらほら・・・どんどんきやがれ!」
迎え撃つ保田は次々に敵機を叩いて行った。
しかし
- 479 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「主砲使用不能・・・・レーザーカノン・・・消滅・・・」
「これ以上応戦は不能です!」
斉藤は平家を見た。
「総員退艦急げ!」
「えっ?」
「早くしろ!」
「平家さんは?」
「私は・・・・残るよ・・・」
プロポーズは既に撃沈寸前であった。
クルーに退艦を指示した平家は艦長席に座ったままである。
「みんな早く!」
柴田が指示を出し脱出用の小型艇にクルーは乗り込んで行く。
「馬鹿な事言ってないで行くよ!艦と運命を共にする艦長なんて
時代遅れもいいとこだよ!」
斉藤はそう言うと平家の右手を引っ張った。
- 480 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「・・・・・」
動こうとしない平家、すると
「ほら!みちよ!行くぞ」
柴田が平家の背中を叩いた。
「痛いな〜・・・何すんだよ!」
思わず立ち上がる平家。
その瞬間ここぞとばかりに斉藤が平家を引っ張った。
「こら!放しなさい!」
斉藤と柴田の2人がかりで引きずられる平家が叫んでいる。
- 481 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「はいはい、脱出艇に着いたら離しますからね。
それまではおとなしくしてましょうね」
まるで子供をあやすかのような口調で言う斉藤。
それでも平家はもがいていた。
「お待たせ!ルル良いよ!」
やっとの思いで脱出艇に平家を引きずり込んだ斉藤が
操縦席に座るルルに叫んだ。
「出ます!」
既にあちこちが火を吹いているプロポーズから
何とか脱出艇は飛び出して行った。
- 482 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:08
- 平家達が脱出してから少しすると遂にプロポーズが大爆発を起こした。
「ああっ・・・」
消え行くプロポーズをメンバーが呆然と見ていると
「ちくしょー!これで終わりだと思うなよ!」
柴田はそう言うとルルの隣のシートに滑り込んだ。
すると斉藤もそれに従い動きだす。
「フリージア2よりケメンダヤスへ。作戦続行!」
柴田はそう言うとボーっとしているメカニックメンバーに叫んだ。
「何やってんの?後ろにバトルポッドがあるからさっさと行って来い!」
この脱出艇は見かけの割には中が狭かった。
みると後ろの方に扉が見える。
- 483 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:09
- 「ちょっと柴田。解る様に説明してよ」
訳の解らない平家は柴田に聞く。
元々この脱出艇は柴田と斉藤がアレスから持って来た物である。
そして名前がフリージア2。そうこの機体はアレスにある訓練艇フリージアの
後継機なのである。小型ながらその戦闘能力は航路監視隊の警備艇に匹敵し
後部の格納庫にはバトルポッドも搭載している。
「諦めないで行きましょう。まだ終わってませんよ」
柴田の説明が終わると平家は頷く。
「バトルポッド隊出撃!簡単にやられるな!」
その言葉にフリージア2のバトルポッド隊6機が飛び出して行く。
保田達に合流すると戦闘を開始した。
「こっちも負けてられないよ。攻撃開始!」
斉藤はそう言うとミサイル攻撃を開始する。
更にはフリージア2の機体内部に収納されていたレーザーカノンが姿を現す。
- 484 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:09
- 「目標補足・・・・発射!」
レーザーカノンが敵艦に向かって放たれる。
「・・・駄目か・・・・あまり効果はないみたいだね」
残念ながらフリージア2のレーザーでは敵艦に致命的なダメージを
与える事が出来なかった。
「レスラッテ+よりフリージア、補給は・・・無理・・・?」
「辻ちゃんごめん。余裕はないよ」
辻の連絡に斉藤が悔しそうに答える。
「解った。まだ何とかなるけど・・・うん頑張ってみるよ」
「お願い」
辻の言葉はそのまま戦闘機に乗っているメンバーの言葉でもあった。
敵の艦載機こそかなり叩いてはいるが肝心の戦闘艦の方には
まったくと言ってほど攻撃ができていない。
こちらは消耗するばかりである。
言葉には出さないでいたが攻撃手段がなくなるのは時間の問題である。
- 485 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:10
- 「・・・・・逃げると言ってもこれじゃあね・・・・・」
平家は考えた。この状況を打破できる策はないのか・・・・
こちらは消耗するばかりだ。フリージア2も被弾こそしていないが
いつやられるか解らない状況である。
みんなで無事に生きて帰る方法悩む平家・・・そんな時である。
フリージア2のレーダに反応があった。
「レーダに反応・・・・ピースドライブを終えた艦艇が現れたようです」
「新手か・・・」
「・・・いえ・・・・平家さん!マルス2とガスプラです!」
そこに現れたのは連邦軍戦闘艦マルス2。
そして本物の戦闘艦ガスプラであった。
- 486 :名無し狩人:2004/04/28(水) 23:08
- 「ピースドライブテスト終了。現在地天王星付近」
マルス2オペレーター石川梨華がテストの終了を告げる。
「コンディションオールグリーン。航海に問題なし!」
航海班の前田有紀は船体に問題が無い事を告げた。
「これでテストは終了だね。連続でのピースドライブも問題無いみたいね」
マルス2艦長の安倍なつみは安心した様に呟いた。すると
「レーダーに反応。三時の方向・・・・戦闘中の艦艇があります」
「総員戦闘準備!梨華ちゃん。情報収集急いで!」
「了解!」
火星衛星基地アレスの戦闘艦マルス2とガスプラは
新しく搭載されたハローエンジンの性能を確かめる為
連続でのピースドライブテストを行っていた。
そしてテスト終了と共に平家達が戦っている空域に姿を現したのである。
これは偶然の一致なのであろうか?
「戦闘中の艦艇の識別が確認出来ました。一方はまったくの所属不明ですが
もう一方は・・・・大変!フリージア2ですよ!」
石川の報告に安倍は慌てて指示を出した。
- 487 :名無し狩人:2004/04/28(水) 23:09
- 「砲門開け!目標所属不明艦隊!当艦はこれよりフリージア2の援護を開始する」
安倍の声にブリッジに緊張が走った。
「レッド隊順次発艦して下さい。攻撃目標は所属不明艦隊です」
「レッドリーダー了解!」
石川の指示に答えたのは後藤真希。後藤は保田がいなくなってから
レッド隊のリーダーを任されているのである。
「レッドリーダーより各機へ。味方機を攻撃するなよ!」
「ケッカー了解!」 「スコロンダ了解!」 「ゴロMAX了解!」
後藤率いるレッド隊は素早く戦闘空域に斬り込んで行く。
「フリージア2より、マルス2へ。ありがとう、助けに来てくれたんだね」
マルス2に平家から通信が入った。
「マルス2よりフリージア2へ、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。プロポーズやられちゃったよ」
平家の言葉に石川の表情が曇った。プロポーズと言えば戦力は
マルス2とさほど変わらない。むしろマルス2より性能は上の筈である。
「安倍です。平家さん敵の戦力は?」
「解らないよ。1対5であっという間にやられちゃったから」
敵の戦力はまったくの未知数。しかも数はこちらより多い。
テスト航海でいきなり戦闘に巻き込まれた安倍の脳裏に不安がよぎっていた。
- 488 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:48
- 「シルバーリーダーよりマルス2、フリージアの艦載機隊は何機?」
ガスプラ艦載機隊リーダーの福田から通信が入る。
「すいません。えーと・・・フリージアのバトルポットは6機です・・・
それから・・・プロポーズの艦載機が・・・・現在7機・・・計13機です。
リーダーは・・・・え?ケメンダヤス・・・・何これ?」
石川は現場に保田がいることなど当然知らない。
更には田中、道重、亀井、村田、予想もしていないメンバーの
識別コードが飛び交い混乱している。
「ちょっと梨華ちゃんしっかりしてよ!プロポーズ隊のリーダーは?」
シルバー隊リーダー福田明日香は混乱している石川に喝を入れた。
「ごめんなさい・・・・えーと・・はい大丈夫です。
プロポーズ艦載機隊はよく解んないですけど保田さんが指揮してる様です」
「シルバーリーダー了解!」
情報が交錯する中なんとか石川は全てを把握し始めた。
現在の状況その他諸々・・・・
- 489 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:49
- 「マルス2よりケメンダヤスへ、保田さんですよね?ここにいる理由は後で聞きます。
今はレッド隊と合流して敵艦に攻撃をお願いします」
「ケメンダヤス了解!石川・・・成長したね」
「ありがとうございます。えーと・・・稲葉さん聞こえますか?」
「あいよ」
「石川です。稲葉さんはプロポーズ隊の指揮をお願いします。
これからガスプラのシルバー隊がそちらに向かいます。
到着次第レッド、シルバー両隊のバックアップをお願いします」
「了解や!」
マルス2の参戦により艦載機隊は陣形を組みなおすと
新たな攻撃隊形を作り始めた。
「敵艦載機フリージアに接近!」
マルス2の大木がフリージアへの敵機の接近を知らせる。
「グリーン隊、フリージアのバックアップをお願いします」
「グリーン3了解!」 「グリーン4了解!」
マルス隊の自艦防衛部隊グリーン隊。
里田まい搭乗のノンクラクション、そして斎藤美海搭乗ホカノドーガ。
二機の戦闘機はフリージアを護衛すべく出撃する。
- 490 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:49
- 「マックゴルドよりケメンダヤスへ。攻撃の指示を願います」
「・・・・自分で考えなさい」
「えっ?」
レッド隊と合流した保田に、レッドリーダー後藤は昔の様に指示を仰ぐ。
しかし保田の答えは「自分で考えろ」であった。
「後藤、もう私はあなたの上官じゃないんだよ。今のレッドリーダーは後藤でしょ。
だったら私が従うよ。レッドリーダー、指示をお願いします」
「・・・・・レッドリーダーよりレッド隊各機へ、Wフォーメーション!」
保田の言葉に後藤が出した指示は、「Wフォーメーション」
この陣形はリーダー保田時代からレッド隊が得意とする
必殺のフォーメーションである。
- 491 :名無し娘。:2004/05/02(日) 01:11
- 更新お疲れ様です。前のもそうだったけど艦隊戦は特に好き。
- 492 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:17
- 「レッドリーダーよりシルバーリーダーへ、援護をお願いします」
「シルバーリーダー了解!」
既に敵艦隊を射程圏内に捕らえていたレッド隊は
攻撃の為、更に敵に接近する。
「レッドリーダーより前衛三機へ、攻撃開始!」
後藤の指示で吉澤のケッカー、アヤカのスコロンダ、小川のゴロMAXが
突破口を開く為、敵艦隊の護衛機に襲い掛かる。
「レッドリーダーよりケメンダヤスへ、突っ込むよ」
「了解!」
吉澤達が作った突破口から後藤と保田が敵艦隊に襲いかかった。
「ロックンロール!」
後藤と保田はほぼ同時にこう叫ぶと、対艦ミサイルを放つ。
ミサイルは敵艦隊で一番前に出ていた戦闘艦の艦橋を破壊した。
- 493 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:17
- 「各機、全速反転離脱する!」
後藤の声にレッド隊のメンバーは機首を反転させると敵艦隊の前から
一気に飛び去って行った。
「シルバーリーダーより各機、攻撃開始!」
レッド隊からすぐに、間髪を入れず福田のシルバー隊が攻撃を開始する。
「うちらはバックアップやで。ええか?」
稲葉を先頭にプロポーズ艦載機隊が敵艦載機隊に襲い掛かる。
田中、道重、亀井、村田は敵艦隊の弾幕をぬって次々に敵機を叩いて行った。
「レッドリーダーよりマルス2へ、これより補給の為帰艦する」
「マルス2了解!」
敵艦隊に最初に攻撃を仕掛けたレッド隊はかなりの消耗をしていた。
残弾も残り少ない為マルス2に補給の為、戻るのである。
「至急補給お願いします。すぐに出ます!」
マルス2に帰艦した後藤はカタパルトデッキにいたメカニック
大谷雅恵に声をかけた。
- 494 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:18
- 「OK、すぐにやるから・・・」
大谷はそう言うとメカスタッフに指示を送る。そこに保田がやってきた。
「大谷ちゃん、元気だった?」
「保田さん!どうしたんですか?」
予想もしていなかった保田の登場に大谷は驚きを隠せない。
一瞬固まっていたが保田の簡単な説明で現状を理解した様である。
「事情は解りましたけど・・・保田さん大丈夫なんですか?」
「何が?」
「だって、しばらく戦闘はやってないでしょ?ブランクもあるだろうし」
大谷はしばらく軍から離れていた保田を心配している。
- 495 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:18
- 「大丈夫だよ。戦闘はしてなかったけど、腕は鈍ってないよ」
「そうですか。なら良いですけど」
「それより大谷さあ、このSF−22って乗りにくくない?」
「そんなこと無いですよ。SF−22は軍の主力戦闘機ですよ」
「でもしっくり来ないんだよね」
「うーん・・・機体との相性なのかなぁ・・・・あっ!そうだ!」
大谷は何かを思い出した様に1人のメカスタッフに声をかける。
「7号リフト下ろせ!」
大谷がそう言うとデッキの奥にあるリフトが動き出した。
ゆっくりと動くリフト。見ると戦闘機が一機乗っている。
連邦軍型式SF−14S。SF−14戦闘機の強化タイプである。
そしてその機体の機首にはローマ字の「K」を象ったエンブレムが
「大谷!」
今度は保田が驚きの声をあげる番である。
「K」のエンブレムが描かれたSF−14Sと言えば連邦軍ではたった一機しかない。
旧レッドリーダー「レッドワン」
そうこの機体こそ正真正銘の保田の愛機「ケメンダヤス」なのである。
- 496 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:46
- 「またこいつに乗れるなんて思ってもみなかったよ」
懐かしい愛機のコクピットに座る保田は笑った。
「何もかも昔のままですよ。それじゃあ行ってらっしゃい!」
補給が終わり再び出撃するレッド隊。
保田は愛機の操縦桿を握ると言った。
「ケメンダヤス出ます!」
マルス2より飛び出したレッド隊。
「攻撃目標セットアップ完了・・・」
機体を乗り換えた保田は全てのデータの入力を終える。
そして
「レッドリーダーより各機、まずは近くにいる敵機を叩く。
それが終わり次第シルバー隊のバックアップに入る」
保田の突然の指示に本来のリーダーである後藤は一瞬躊躇ったが
何も言わずに指示に従う。
- 497 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:47
- それは他のメンバー同じであった。保田が先程後藤に言った事に
あえて突っ込みを入れる事もなく指示通り動き始めた。
一方こちらは敵艦隊の旗艦の中・・・・
「連邦軍もなかなかやるな・・・どこの部隊だ?」
そう言ったのは「キオナ・ザワーショ」・・ウィラポーンの総帥である。
「あれはマルス2とガスプラ・・・・アレスの戦闘艦の様です」
「ガスプラ・・・?なんとも良いタイミングで現れたな。
それにマルス2か・・・すると連中は例のアンドロイドの・・・」
「はい、ユリシーズを叩いた連中です」
「そうか・・・そうなると面倒だな」
キオナは表情を変えず淡々と話をしている。
しかしその言葉からはマルス隊が簡単な相手では無いと言う
認識を持っている事がうかがい知れた。
「今の戦力なら奴等を叩く事は出来るか・・・しかしこちらもただでは済むまい」
「撤退しますか?」
「そうだな・・・・」
キナオはそう言うと全艦に撤退命令を下す。
同時にあれだけいた艦載機隊が一気に引き上げて行く。
- 498 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:47
- 「なんだ?どうしたんだ?」
目の前の敵が急に引き返して行き保田は驚いている。
福田は突然の事に警戒しシルバー隊及びプロポーズ隊を敵艦隊から離脱させた。
そしてシルバー隊とプロポーズ隊が引き返した時である
ウィラポーン艦隊が保田達が叩いた一隻を残しピースドライブを開始した。
「敵艦隊ピースドライブに入ります!」
「えっ?急にどうしたんだろう・・・?」
突然の敵艦隊の撤退にマルス2のクルーは驚きの表情を浮かべる。
「一隻残ってますね・・・」
石川は敵艦が一隻残っている事に疑問を抱く。
だが安倍は躊躇いも無く主砲発射の指示を出した。
「発射!」
合図と共に放たれた主砲のエネルギー弾は残っていた敵艦を消し去る。
これによって特に問題が発生する事は無かった。
「急にどうしたんだろう・・・?」
「さあ・・・・」
明らかに劣勢の状況であったが敵艦隊は撤退をして行った。
いったい何故敵は撤退したのか・・・・
彼女達がその理由を解る筈も無かった。
- 499 :名無し娘。:2004/05/08(土) 18:02
- 良い感じだね
- 500 :名無し娘。:2004/05/09(日) 17:07
- 500
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