■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 最新50
小説?『娘。戦記』
- 1 :名無し狩人:2003/09/08(月) 17:51
- 【ご挨拶】
どうもです。名無し狩人と申します。
羊で小説もどきをやっておりました。
誰でも参加OKと言う管理人さんのご厚意に甘え
こちらで一つ始めさせていただきたいと思います。
管理人様、及び狩狩板の皆様。よろしくお願いいたします。
- 313 :名無し娘。:2003/11/26(水) 19:19
- 「馬鹿め」か・・・何もかも懐かしい・・・
- 314 :名無し狩人:2003/11/26(水) 22:56
- ( `_´)<間違いハケーン!!
「斉藤、ガニメデに返信や」は「斉藤、エウロパに返信や」です。
( `_´)<ついでにレス
>>302
・・・・?ごめんなさい。何だか解りません!
一応ダイモスアタックの元ネタはアルカディア号の衝角戦です。
>>312
こんな感じで出てみますた・・・えっ?違う?
>>313
本当に懐かしい・・・って歳がバレますよ(w
- 315 :名無し狩人:2003/11/27(木) 00:11
- 「エウロパよりマルスへ・・・「馬鹿め」か・・・中澤らしいな。
転進・・いや、逃げるのも立派な戦術の一つだと思って欲しい・・
我々にもやらねばならない事があるからな・・・・
今は貴艦の健闘と祈る・・・・死ぬなよ・・・・」
そう通信してきたのはエウロパの艦長、マコード准将であった。
マコードは和田やダスマンと同じく、中澤達を良く知る人物で
逃げないと言う中澤達の言葉に反対をする事は無かったのだ。
「ありがとうございます。准将もご無事で・・・・」
中澤がそう言って通信を終えるとエウロパは方向転換をして
動き始め、次の瞬間、超空間に消えて行った。
「たいしたインターバルも無くピースドライブが使えるのか・・・
流石は第三艦隊の戦艦やな・・・」
中澤が感心した様にそう言った時、敵艦三隻が超空間に消えて行った。
「敵艦三隻、ピースドライブに入った模様です」
「エウロパを追って行ったか・・・まあそう簡単にはやられはしないやろ」
こちらに残ったのは大型艦ともう一隻の二隻の敵艦である。
スペースマルスは再び艦載機隊を出した。
- 316 :名無し狩人:2003/11/27(木) 00:11
- 「マルスより各艦載機へ・・・・これと言った指示はもはやない。
各リーダーの指示に従って行動せよ!」
艦載機隊に対する中澤の指示はこれだけある。
一撃で僚艦を消し去った敵に対してはもはや小細工など
何も必要ないと考えていたのであろう。
「対艦ミサイルをありったけ打ち込め!敵に攻撃する隙を与えるな!」
一瞬の睨みあいで先に動いたのはスペースマルスであった。
巨大艦目掛けて一気にミサイル攻撃を始めたのである。
「レッドリーダーよりレッド隊各機へ、マルスのミサイル攻撃に乗って
できるだけ敵艦に接近する・・・・くれぐれも味方の攻撃にやられるなよ!」
保田の指示でレッド隊が最初に動いた。
「ホワイトリーダーより各機へ、私達はもう一隻を攻撃するよ」
ホワイト隊はデイオウルを戦闘にマルスが攻撃を行っているのとは違う
敵艦に向かって行った。
「イエローリーダーより各機へ、おいら達はレッド隊に続く、
手持ちのミサイルを全部おみまいしてやれ!」
「グリーンリーダーより各機、ホワイト隊の援護だよ。
ミサイルポッドは出来るだけ敵艦に近づいたら使用する様に!」
イエロー、グリーン両隊も動き出す。
敵の激しい攻撃の中を各艦載機隊は決死の覚悟で飛び込んで行った。
- 317 :名無し娘。:2003/11/27(木) 18:16
- >>314
>>302はVガンネタ
艦首にビームラム(衝角)装備した戦艦
- 318 :名無し狩人:2003/11/30(日) 00:26
- 「敵艦ミサイルを発射しました」
「弾幕をはれ!全て撃ち落とすんや!」
迫り来る敵艦のミサイルに対しマルスは機関砲で応戦する。
「レッドリーダーよりマルスへ、敵艦を射程圏内に捕らえた。
これより攻撃を開始します!」
「マルス了解!気をつけて!」
普段「気をつけて」などと口にしない斉藤が保田に対してこう言った。
何気なく出た言葉であろうが、それだけ事態は緊迫していたのである。
「ホワイト隊、敵艦に攻撃を開始しました」
「あっちは圭織とりんねに任せよう。うちらはあの旗艦を叩く!」
「了解!」
マルスは攻撃を敵を、旗艦と思われる巨大艦に絞った。
隣にいる巡洋艦クラスの敵戦艦はホワイト隊とグリーン隊に任せたのだ。
「敵のミサイル多数接近!!」
「弾幕薄いぞ!」
敵艦から放たれた多数のミサイルがマルスを襲う。
ほとんどが弾幕により打ち落とされたが、数発撃ち損じてしまった。
- 319 :名無し狩人:2003/11/30(日) 00:27
- 次の瞬間、激しいショックと振動がスペースをマルスを襲った。
「第一、第二カタパルト被弾!!」
「メカ班大丈夫か?」
二発の敵ミサイルがマルスの第一、第二カタパルトを襲った。
破壊されたカタパルトには数名のメカスタッフがいた筈である。
「おい!返事しろ!・・・村田!聞こえるか?」
「・・・・・・こちら村田、第一、第二カタパルト使用不能・・・
三名が重傷です!」
「了解や!みんな第三、第四カタパルトに移動しろ!」
「了解!」
被弾したカタパルトでは死者こそ出なかったが三名が負傷していた。
これを受けて中澤はある決断を行った。
「これからどうなるか解らんからな、動きにくいかも知れんけど・・・
斉藤、全員にコスモスーツの着用を指示や」
「了解!・・・総員に告ぐコスモスーツを着用せよ」
- 320 :名無し狩人:2003/11/30(日) 00:27
- 中澤の指示は乗員の宇宙服の着用であった。
そもそも負傷したメカスタッフが重傷で助かったのも
宇宙服を着用していたからなのだ。
「こっちもお返しや!ミサイル攻撃を続けろ!」
スペースマルスも負けじとミサイルを連続で放つ。
敵の艦載機は途中でイエロー隊が相手をしていたので
攻撃される事は無かったが敵艦の放つミサイルは時々
マルスの船体を破壊してたのである。
「くっ・・・・このままじゃまずいな・・・・」
戦況は不利な状態にあった。
こちらの攻撃が敵にあまり当たっていないのである。
敵旗艦に対する有効的な攻撃はレッド隊の対艦ミサイル攻撃だけで
しかしそれも敵艦の弾幕でまともに攻撃出来ない状態であった。
- 321 :名無し狩人:2003/11/30(日) 00:27
- 「あれ?・・・・・本艦後方より小型艦が接近中です」
北上がそう言うと
「また新手か・・・・」
中澤の表情が曇った。
「いえ・・・・地球の船ですね・・・・小型戦闘艇です」
「識別は・・・?」
「・・・該当なしです・・・」
そう北上が言いかけると、大木が言う。
「この識別コード旧コードじゃない?」
連邦軍の識別コードは数年前に新しくなっている。
大木のその言葉を聞いた北上はキーボードを叩いた。
「えっ・・・・?すぐに照会します・・・・出ました。
えーっ・・・ムーンベースの突撃艇ムラサキシキブになってます」
「・・・うそやろ・・・?マジかいな・・・」
ムラサキシキブと聞いた中澤の表情は一瞬にして変わっていた。
- 322 :名無し娘。:2003/11/30(日) 23:02
- 連邦軍の突撃艇はムーンベース防衛用に開発されたミサイル艇である。
四発の大型ミサイルを船体に抱え、そのミサイルを敵に打ち込んで
攻撃をする機体なのだが、出来るだけ敵に近づいてから攻撃を
しかけないといけない為、かなりの危険性が伴う機体でもあった。
さらにその航行距離は短く、本来であればここまでやってくるなど
到底無理な事なのである。
「ムラサキシキブやて・・・しかもこんなとこまで・・・」
「でも、識別コードはそうなってます」
中澤の言葉に北上が答える。
「斉藤、連絡や・・・多分パイロットはあいつや・・・」
中澤がそう言うと斉藤は通信を試みた。
「スペースマルスよりムラサキシキブへ、応答してください」
「はーい、こちらムラサキシキブ。お待たせしましたぁ」
中澤にとって懐かしい声である。
- 323 :名無し娘。:2003/11/30(日) 23:02
- 「アホ!誰も呼んでなんかおらん」
「なんだよー、じゃあ帰る!」
「あー、うそ、うそ。それにしても・・みっちゃんどうやってここまで?」
ムラサキシキブのパイロットは中澤の親友、平家であった。
今は連邦軍から放れている平家がなぜ、しかも軍の機体で
どうやってここまでやってきたのか中澤は聞いた。
「へ?どうやってって・・・あれ・・・・?」
平家がそう言った時大木が叫ぶ。
「フリージアが戻ってきましたぁ」
見るとレーダーにフリージアの機影が映っている。
「あいつら・・・・何考えとるんや・・・たいして時間もおかないで
ピースドライブ使いやがって・・・・」
中澤は知らなかった、これがフリージア本日三回目の
ピースドライブであった事を。
- 324 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:16
- 「中澤さん、平家さん連れてきましたよ」
柴田の声が聞こえて来る。
「ご苦労・・・と言いたい所やけど、もうみっちゃんは民間人やで。
それにピースドライブ・・・大した時間も空けんと二回目なんて・・・」
「・・・いえ・・三回目です・・・ってか四回かな?こっちに戻る時は
本当に連続だったから・・・それに平家さんは自分で来るって・・・」
「・・・・まあええ、なっちに戻る様に言ってくれ」
「あ、安倍さんとお豆はあっちに残りました。アレスも・・・って言うか
太陽系全体で戦闘が始まってるみたいで・・・」
「・・・・マジでか?最悪や・・・・」
柴田の報告は中澤の予想を上回っていた。
ここで敵を食い止めていればなんとかなるそう考えていたからだ。
「とにかく今は目の前の敵に集中しましょう」
斉藤の声に中澤は我に返ると平家に言う。
- 325 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:16
- 「みっちゃん、何考えてんねん」
「スペースマルスの事は明日香から聞いてたから・・・だから
ムーンベースでタイ−ゼ中将に無理言ってこれ借りてきたんだよ。
それでアレス付近まで送ってもらってたら戦闘が始まって、
途中で切り離されちゃってさ・・・どうしようか考えてたら
なっちの声が聞こえて来たから話をしたら、じゃあフリージアを使えって」
「あー、もうええ、とにかくや。フリージアは圭織達の援護。
さっさと行ってあのちっさい方を沈めて来ぃや。
みっちゃんは指示があるまでここで待機!ええな!」
「フリージア了解!」
「ムラサキシキブ了解!」
中澤の指示が出るとフリージアは敵巡洋艦タイプ目掛けて突進する。
既にホワイト、グリーン両隊の攻撃で目的の敵艦も消耗していた。
「よっしゃ!フリージアよりホワイト・グリーン両隊へ・・・どけ!」
大谷はそう言うとミサイルを一気に放つ。そして
「キャノン砲準備・・・・いっけー!!」
すぐさまキャノン砲も放たれた。
- 326 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:16
- 「敵艦一隻沈黙・・・・」
斉藤の言葉に
「みっちゃん、出番やで。グリーン隊!ムラサキシキブの援護や」
敵巡洋艦タイプを叩いたホワイト隊はすぐさま敵旗艦に向かって行った。
グリーン隊は中澤の指示でムラサキシキブの援護につく。
「敵艦を射程圏内に捕らえた!」
平家の声が聞こえるとムラサキシキブから信号弾が上がった。
それを見た中澤が叫ぶ
「斉藤・・・・」
「全艦対閃光防御!」
中澤の指示が出る前に斉藤は叫ぶ。更に
「各員対閃光シールド降ろせ!」
各艦載機リーダーが指示を出すのが聞こえて来た。
- 327 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:17
- 「発射!」
平家の声が聞こえるとムラサキシキブから二発のミサイルが
敵旗艦に向かって放たれる。
しかしそのミサイルも敵の弾幕によって破壊された。だが次の瞬間
強烈な閃光が戦場に走る。
平家が放ったのは閃光弾で破壊されると同時に
強烈な閃光を放つ物であった。最初に放った信号弾は
それを味方に知らせる為の物で中澤はその信号を見て慌てて
指示を出したのだがなぜか主要メンバーはその事を知っていた様だ。
そして
「今や!総攻撃!!」
中澤の声をきっかけに各艦載機隊、フリージアそしてムラサキシキブが
一気に残っていたミサイルを放つ。
視界を奪われてた敵旗艦はマルス隊の接近を簡単にゆるした。
その為ミサイル攻撃をまともに喰らっていた。
攻撃機が一斉に敵艦から離れるそして・・・・
大爆発が起こった。
- 328 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:17
- 「・・・・・やった・・・・やったで!!」
沈む敵旗艦の姿を確認した中澤が叫ぶ!
「ワー!!」「っしゃあ!!」「キャー!!」
あちこちから歓声が上がる。
スペースマルスは目の前の敵艦を全て倒す事に成功したのである。
それと同じ頃・・・・アレスでは・・・・
「敵艦隊の様子がおかしいな・・・・・」
戦闘の様子を見ていたダスマンが呟く。
「統制が・・・・取れなくなった・・・・?みたいですね」
傍にいた副官が言う。
「とにかく絶好の機会だ・・・・全艦隊総攻撃!!」
- 329 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:18
- 突然様子の変わった敵艦隊の隙をダスマンは見逃さなかった。
一気に総攻撃に出たアレス艦隊は簡単に敵艦隊を殲滅させる。
そしてそれは他の戦場でも同じであった。
ほぼ同時期に敵艦隊の指揮系統の乱れが確認され
同じ様に連邦軍の勝利に終わったのだ。
「さてと・・・・ここはこれで終わりやね・・・でも・・・
先に進むにも戻るにもこれじゃピースドライブも使えんし・・・」
先の戦闘でかなり破壊されたスペースマルスは
通常航法は行えるものの、ピースドライブを使える状態ではなかった。
「各艦載機隊は戻って下さい。お疲れ様でした」
斉藤の声が伝わると艦載機隊は次々に着艦を開始する。
「村田です、すいません、格納庫がいっぱいで・・・」
第一、第二カタパルトを破壊された為全艦載機の収容が
スペースマルスには出来なかった。
- 330 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:18
- 「ちょっと、どうしたらいいんだよ!」
矢口の声が聞こえて来る。
「参ったなぁどうしよう・・・?」
そんな事をしているうちに大きなエネルギー反応をレーダーが捕らえた。
「エネルギー反応確認・・・・・」
「何や?また敵か?」
「・・・いえ・・・あっ、アポロンです」
現れたのは第三艦隊旗艦アポロンである。
その後アポロンから現在の状況を聞いた中澤は
戦いが終わった事を知る。
「おそらくお前達が叩いたのがユリシーズの旗艦だったのだろう」
マルスのモニターにはアポロン艦長の和田が映し出されている。
- 331 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:18
- 「そんな筈は・・・だって護衛は一隻だけですよ」
「甘くみたんだろ。だからやられた」
「そうですか・・・・とにかくお疲れ様でした」
自分達が敵の総指揮艦を倒したと言う実感が中澤には無かった。
いやそれはスペースマルス隊全員の思いでもある。
「とにかく帰りましょう」
「そうやね、もうどうでもええわ」
収容しきれなった艦載機はアポロンに任せスペースマルスは帰路につく。
これからまたアレスまで長い旅が始まるのである・・・・・・
娘。戦記
【スペースマルス】
終了!
- 332 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:40
- 【大谷さんのメカニック講座】最終回!
(;`_´)<最終回て・・・・まだ二回目だぞ!
( `_´)<どうも、大谷です。【スペースマルス】は
楽しんでいただけたでしょうか?
今回は皆さんの想像にお任せしていたメカニックのモデルを
紹介したいと思います。
( `_´)<書き人の頭の中にあったのは次の通りです。
「スペースマルス」・・・・ドゴスギア(Zガンダム)
「マルス1・2」・・・・ラーディッシュ(Zガンダム)
「フリージア」・・・・Gフォートレス(ZZガンダム)
「アポロン」・・・・アンドロメダ(宇宙戦艦ヤマト)
「エウロパ」・・・・スペースアーク(ガンダムF91)
「ガスプラ」・・・・マゼラン(ガンダム)
「ピーチ−」・・・・チベ(ガンダム)
「ムラサキシキブ」・・・・パブリク(ガンダム)
- 333 :名無し狩人:2003/12/01(月) 15:50
- ( `_´)<艦載機は実在の戦闘機です。
イーグル・トムキャット・ホーネット
ファイティングファルコンなど・・・・
( `_´)<詳しく書いてるメンバーとそうでないメンバーがいますが・・・
そこまでは考えていません。
因みに敵艦はまったくモデルなし。
唯一マシューの船がムサイ(ガンダム)くらいでしょうか
( `_´)<ナノニイーコ号は「ヤマトよ永遠に」で古代が最初の方で
乗っていた連絡艇みたいなやつですが・・・
マイナーすぎてわかならいかもですね。
( `_´)<以上で終わりですが・・・・・
( `_´)<えー、読んでいただいた皆さん。ありがとうございます。
【スペースマルス】は終了ですが
娘。戦記は続きます。次回もよろしくです。
- 334 :名無し娘。:2003/12/01(月) 16:25
- パブリクかよ!
- 335 :名無し狩人:2003/12/01(月) 22:24
- ( `_´)<>>334ジッコよりはいいでしょ?
(;`_´)<では「娘。戦記」新編です。前にやっていたお話の続編ですが
知らない人にも解る様に努力いたします。
訳の解らない事があれがドンドン質問してください。
( `_´)ノ<それではどうぞ!!
- 336 :名無し狩人:2003/12/01(月) 22:25
- 妖怪・化け物・魑魅魍魎・・・・・恨み・つらみ・妬み・・・・・
この世に蔓延る邪悪と戦う者達・・・・その名を「M刑事」といふ・・・
警察省特務部には「妖魔対策室」と呼ばれる部署がある。
妖魔と呼ばれるモノ達が引き起こす事件を担当する専門のチームである。
「M刑事」と呼ばれるそのチームは特殊な能力を持つ人間が集められていた。
娘。戦記
【邪悪狩人M刑事・頃の章】
初めまして、そしてお久しぶりです。さてあなたはどちらですか?
M刑事捜査課の「紺野あさ美」です。
「主天童子」との戦いも終わりM刑事は変わりました。
今回はその後のお話をしたいと思います。
まずはその前に「主天童子とM刑事の戦い」を知らない人達に説明をしましょう。
私達M刑事は警察省特務部の妖魔対策室と呼ばれる所で働いています。
簡単に言うと怪物と戦う事が仕事です。
少し前の事ですがある時期から怪物達が引き起こす事件が多発しました。
それを追っていた私達がたどりつたのが主天童子と呼ばれる鬼だったのです。
その頃のM刑事は「退魔師・能力者」と呼ばれる昔から妖魔と戦っている
人達が作る「連合」と呼ばれる組織に邪魔をされ活動を休止されていたのです。
ですがその時に出会った連合に属さない退魔師集団「虚空山」の
協力を得て、私達は自分達の能力を向上させる事に成功していました。
それと同じ頃、京都で主天童子と戦った連合が敗北し
私達は、虚空山、そして連合を離れた少数の能力者と共に
主天童子との決戦に挑んだのです。結果は私達の勝利!!
その後連合はなくなりM刑事は活動拠点を増やし、現在に至ります。
説明が長くなりましたね、ごめんなさい。
まあ、そんな事があり、今回はその後に配属となった
私の後輩達の活躍をお話したいと思います。
- 337 :名無し:2003/12/02(火) 10:18
- 作者さん
前にやってた話って、どこかで読めますか?
是非、読んでみたいんですが
- 338 :名無し狩人:2003/12/02(火) 21:26
- >>337
(;`_´)<さて、どうしたものか・・・うPできるほどの知識も無く・・・
ttp://tv2.2ch.net/ainotane/kako/1033/10334/1033425565.html
途中までならここで読めますが続きは羊の倉庫の奥深く・・・・
htmlなど期待出来ないですからねぇ。
●をお持ちなら「邪悪狩人M刑事」で続きは読めますが・・・・
(;`_´)<ごめんなさい。
- 339 :名無し娘。:2003/12/02(火) 22:45
- >>338
「邪悪狩人M刑事」うpスマスタ
ttp://f22.aaacafe.ne.jp/~honeypie/pakapaka/img/ahya0022.lzh
1047550726.dat:2ちゃん形式DAT(かちゅのログからコンバート)
1047550726.html:HTML形式(↑からコンバート)
かちゅ\1047550726.dat:かちゅのログ
かちゅ\1047550726.idx:同
その他の2ちゃんねるビューアの場合は、適当にコンバートしてください
注)
aaacafeなので、上記URLでは落とせないかもしれません。
その場合は、
ttp://f22.aaacafe.ne.jp/~honeypie/pakapaka/img/ahya0022
を落としてから.lzhにリネームしてください。
- 340 :名無し娘。:2003/12/03(水) 00:04
- 一応
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1047550726/
html化はされてないですね
- 341 :名無し狩人:2003/12/03(水) 00:08
- >>339-340
( `_´)<どうもです。一応自分では保存はしていますが
いかんせん知識が無い物で助かります。
それでは続きです。
M刑事の新人は大体半年から一年の見習い期間があります。
その期間は先輩のM刑事と一緒に行動して仕事を覚える訳ですが
その日は私が後輩と組んで行動する事になったのです。
「紺野さん、今回の捜査はどんな内容ですか?」
「なんかこの辺で狐に憑かれたとか言う話があるらしいんだけど・・・」
私と行動を共にしていたのは新人の「田中れいな」
他にも捜査課の新人は2人いて私の同期が同じ様に行動を共にしていました。
「狐・・・ですか?昔話みたいですね」
「こらこら、そう言う事を言わないの!些細な事が
大事件になる事だってあるんだから・・・」
「すいません」
田中ちゃんは、3人の新人の中では結構活発な方だと私は思います。
普段から訓練も怠らないし、これは他の2人にも言える事ですが
なんと言ったら良いか・・・私が新人の頃に比べると・・・・
これ以上は・・・言うまでもないかな。
- 342 :名無し狩人:2003/12/03(水) 00:09
- 私達2人は情報があった地域を自転車で回っていました。
先輩達は車やバイクで行動する人もいますが私達は運転免許を持っていません。
そんな訳で自転車なのですが、これがまた・・・LOOK?チネリ?
何でも有名なメーカーの自転車らしく無駄にカッコ良いので結構目立ちます。
「レーダー反応しませんね」
「そうだね。でもそうそう反応されても正直困るよ」
私達M刑事は妖魔をみつける為常に妖魔専用のレーダーを持ち歩いています。
基本的にはそのレーダーを頼りに目標を捜す訳です。
私達は手掛かりもないまま近くの公園で休憩する事にしました。
「私、何か飲み物買ってきます。紺野さん何が良いですか?」
「スポーツドリンク」
「はい」
田中ちゃんがコンビニに行った後、私は近くを捜査している
同期のメンバーに連絡を取ってみました。
他の子達は何か手掛かりを掴んでいるかも知れないと思ったからです。
「はぁ〜い、紺野です。がきさんそっちは何か掴めた?」
「いやぁ、特に何もないねぇ。そっちはどうなの?」
「まったく反応ナシ!どうしようか?」
「さっきまこっちゃんから連絡があって向こうも手掛かりナシだって
こうなったら愛ちゃんの情報が頼りだなぁ」
私が話をしている相手は「新垣里沙」通称「がきさん」私と同期のM刑事で
彼女は田中ちゃんの同期の「亀井絵里」ちゃんと行動しています。
更にがきさんの言った「まっこちゃん」とは同じく私の同期の「小川麻琴」
彼女は田中ちゃんの同期「道重さゆみ」ちゃんと行動を共にしていました
- 343 :名無し狩人:2003/12/03(水) 00:10
- 「あとは愛ちゃん達が頼りか・・・・」
私ががきさんとの通信を終え独り言を言っていると
「こっちも手掛かりナシやよ」
そう言って話し掛ける声が聞こえて来ました。
振り返るとそこには愛ちゃんこと「高橋愛」が立っています。
私達4人の同期の最後の1人で彼女は私達とは別行動を取っていたのです。
「MMKの情報網にも引っかからないの?ガセかな?」
「どうやろ?なんとも言えんね。今他の3人の連絡待ちやからね」
そう言って愛ちゃんが私の隣に座った時、田中ちゃんが戻って来ました。
「あれ?高橋さんも一緒だったんですか?良かったぁ」
田中ちゃんはそう言うとなぜかペットボトルを3本持っていました。
彼女がM刑事に選ばれた理由の一つにはこの勘の鋭さがあります。
話によるとコンビニでなぜか3本買って行こうと思ったらしいのです。
「さすが田中ちゃんやね。ありがとう」
愛ちゃんはそう言うと嬉しそうにペットボトルを受け取ると
そうとう喉が渇いていた様でキャップをあけると一気に飲んでいました。
- 344 :名無し娘。:2003/12/03(水) 00:20
- 念のため。
2ちゃんねるのex系鯖は、隔離鯖のため、一生HTML化されません。
- 345 :名無し狩人:2003/12/04(木) 22:50
- 「さて、じゃあ私はもう一回り行ってくるよ」
愛ちゃんはそう言うと立ち上がります。
「他のMMKのみんなからの連絡を待ってるんじゃないの?」
「そうも言ってられんわ。だいいち、中澤さんがこれだけの人数で
捜査させてる訳なんやから、それなりに考えんといかんよ。
うちらMMKだけやなく、あさ美ちゃん、まこっちゃん、里沙ちゃん
それに田中、道重、亀井、全部で十人やよ」
「そうだけど、手掛かりも見つかんない訳だし・・・」
「あさ美ちゃん・・・まさかガセなんて考えておらんよね?」
「もちろん、そんな事はないけど・・・」
「だったら頑張ろう。とにかく行動せんといかんわ」
「うん」
そう言って愛ちゃんは町に消えて行きます。
私と田中ちゃんも休憩を終えると行動を開始しました。
- 346 :名無し狩人:2003/12/04(木) 22:50
- 本来M刑事の捜査は個人行動が基本なのですが
今回の様にチームで捜査にあたる事もあります。
特に愛ちゃんが所属する「MMK」は常にチームで行動しているのです。
MMKとは「ミニM刑事」を意味します。
簡単に言うと子供からの情報を集め捜査にあたるチームで人数は4人。
大人と子供の感覚は違い、大人が感じ取れないモノを子供の観点から
見つけ出そうと結成されたM刑事でも特殊なチームなのです。
「高橋さんて、不思議な人ですね」
「どうして?」
「なんて言うか・・・・こう・・・・」
「気合が空回りしてるって言いたいんでしょ?」
「解ります?」
「愛ちゃんはそれでいいの、って言うかMMKはみんなあんな感じだよ」
私の言葉に田中ちゃんは不思議そうな顔をしています。
私はただ笑っていると通信機に連絡が入りました。
「紺野、聞こえる?大谷だよ。今どこ?」
「荒川の・・・例の公園です」
「そう、じゃあ今からさそこに行くからちょっと待ってって・・五分で着く!」
「解りました」
連絡は車輌課の大谷さんからです。車輌課とはM刑事の使用する
車輌は勿論、通信機、レーダー、その他・・・M刑事で使用する
機械全般を担当する課で、メンバーは大谷さんの他3名程いるのです。
- 347 :337:2003/12/05(金) 00:04
- >>339
ありがとうございました
作者さん、これから前作から読ませていただきます
頑張って下さい
- 348 :名無し狩人:2003/12/08(月) 21:45
- >>347
( `_´)<どうもです。よろしくです。
それでは続きなど・・・
連絡があってから約五分後、大谷さんが姿を現しました。
「お待たせ。ほい、これ!」
そう言って大谷さんから手渡されたのは「Mアナライザー」
これは温度や湿度、地磁気、電波と言った現場の色々なデータを集める機械です。
「あの、これで何をしたら良いんですか?」
「ん?ああ、聞き込みとか、色々やってるんでしょ?だったらついでに
その場所のデータも欲しいんだよ。後で資料課と一緒に分析するからさ」
大谷さんはそう言うと他のメンバーにもMアナライザーを渡すからと
さっさと行ってしまいました。
「データ取って分析か・・・・私もやるんだろうなぁ・・・」
私は今、資料課の手伝いもやっています。
M刑事の資料課とは妖魔の資料は勿論、現場の地図やその他諸々
M刑事が行動するにあたって必要な資料を集める課なのです。
因みに人数は3人、それに捜査課のメンバーが時々手伝いにはいります。
- 349 :名無し狩人:2003/12/08(月) 21:45
- 私と田中ちゃんはその日一日あちこち回って夕方に本部に戻りました。
「ただ今戻りました〜!」
「はい、お疲れさんね。収穫はあったん?」
私達が戻った時には部屋には中澤さんしかいませんでした。
中澤さんは、この「妖魔対策室」の寺田室長に次ぐNO・2で
実質M刑事の全てを取りまとめている人物なのです。
「ごめんなさい、これと言って収穫はありませんでした」
「そうかぁ、まあしゃあないな。もっとも田中の指導も兼ねてるから
無駄ではないんやし、また頑張りぃ」
「はい!」
中澤さんはそう言うと、私達に休む様に言ってくれます。
私と田中ちゃんは休憩室に行くとみんなの帰りを待つことにしました。
- 350 :名無し狩人:2003/12/09(火) 22:51
- しばらくすると他のみんなも帰って来たので
お互いの情報交換をすることにしました。すると
「おっ、みんな戻ってきたね。じゃあこれ持ってくよ」
大谷さんがやってきてみんなが持っていたMアナライザーを
持って部屋を出て行きます。
「収穫はなかったけど良かったのかなぁ?」
大谷さんが出て行った後、まこっちゃんが呟くと
「あっちには何か考えがあるんだよ。それより情報交換しよ」
がきさんがそう言ったので私達は情報交換を始めました。
それから少し時間が経つと
「毎度!山王軒です。チャーハン2つに味噌ラーメンと中華丼お持ちしました」
M刑事本部ご用達のラーメン屋さん「山王軒」の三夫さんが出前にやってきました。
「誰か頼んだ?」
私がそう聞くとみんな首を横に振ります。
- 351 :名無し狩人:2003/12/09(火) 22:51
- 「三夫さん、私達じゃないですよ」
「あれ・・・?ああ、すいません斉藤さんの注文だ。
てことは、下に持って行った方がいいかなぁ・・・」
三夫さんがそう言うと
「待ってください、今確認しますから・・・」
亀井ちゃんが内線電話で車輌課に確認を入れます。
「もしもし、亀井です。今、山王軒さんがみえられて・・・・はい・・・・はい・・・
解りました。そう伝えます」
亀井ちゃんは電話を切ると斉藤さんがこっちにくる事を伝えます。
三夫さんは頷くと道重ちゃんが用意した椅子に座り話を始めました。
「そう言えばみんなオカルトとか好きだったよな」
「はい」
「実は最近、近所の人が狐に憑かれたなんて噂があってさ・・・」
「本当ですか!!」
思わず身を乗り出す私達に三夫さんは驚きながら話を続けてくれました。
もっとも三夫さんが驚くのは無理もありません。
彼は私達が単なる警察の事務の仕事をしていると思っているからです。
この妖魔対策室の表の看板には経理課と書いてあります。
つまりM刑事はその存在を世間には公表していないのです。
- 352 :名無し狩人:2003/12/09(火) 22:51
- 「・・・そんなに興味あるのか・・・?まあいいけどね。
でさ、 誰とは言えないんだけど最近その人の様子が変だって話でな
狐に憑かれたなんて言い出す人がいたりして、
ちょっとした騒ぎになってるって話だぜ」
「場所は・・・・その場所って何処ですか?」
「うちの近所だよ。でも何処の誰だかは言えないぞ」
「近所って山王軒の?」
「違う違う、俺のアパート」
「ああ、そっちか」
三夫さんのアパートはここから少し離れた場所にあり
ちょうど今日、私と田中ちゃんで回っていた範囲の中にあります。
どうして私がそんな事を知っているのか?
それは私達の寮がすぐ近くにあるからです。
しかし寮の近くとは盲点でした。私達はそんな噂を聞いた事も無かったからです。
- 353 :名無し狩人。:2003/12/21(日) 00:03
- 「どうする?」
「どうするって・・・調べるしかないでしょう」
「だね・・・」
私達は三夫さんの話を聞いた後に相談して、寮の周りを調べる事にしました。
正直言ってあまりアテにならない情報だとは思いましたが、他にアテもなく・・・
とりあえず今日は私と、まこっちゃん、田中ちゃん、道重ちゃん、亀井ちゃんの
5人で調査する事になり、夕食を済ませると早速行動を開始しました。
「センサーは感度を最大に、周りにも充分注意してね」
まこっちゃんがリーダーになり、指揮を取ります。
私達は、マルチカムを装備すると5人バラバラに散って行きました。
因みにマルチカムとはM刑事自慢の通信システムです。
捜査を開始して30分、
「こちら小川、異常なし」 「こちら田中、異常なし」
「こちら亀井、異常ありません」 「道重です、こっちも問題なしです」
四人が連絡を入れて来ました。
- 354 :名無し狩人。:2003/12/21(日) 00:03
- 「こちら紺野、こっちも異常なし」
私が通信を終えると
「・・・・道重です、センサーに反応がありました!」
道重ちゃんか連絡が入ります。
「こちら小川、道重、気を付けな!すぐそっちに行くから」
道重ちゃんの一番近くにいたのはまこっちゃんでした。
まこっちゃんに続き、私もすぐに駆けつけます。
「こっちです!」
私が現場に行くと既にみんな集まっていて、そこは公園の入り口でした。
「センサーの反応がどんどん強くなってるよ。しかも一体だけじゃない」
センサーの反応を見ていたまこっちゃんが呟きます。
そう言われると確かに、私が手にしているセンサーも強く反応していました。
- 355 :名無し狩人。:2003/12/21(日) 00:04
- 「行くよ!」
センサーの反応は明らかに何かが、その公園にいる事を示しています。
まこっちゃんの合図で私達5人は公園の中に突入しました。
公園に入ると常夜灯の下に数人の男の人が集まっているのがみえました。
「えっ?人間?」
田中ちゃんの声に
「見かけで判断しちゃ駄目!センサーが反応してるのは
間違いなくあの人達だよ」
私は諭すように言ったのです。
「しかし困ったぞ!こう言った場合はどうしたら良いんだ?
どう見てもあの人達は人間だし、でも・・・・」
まこっちゃんがそう言った時、目の前の男の人達が私達に気がつきました。
しかし、その人達は私達など眼中に無い様です。
- 356 :名無し狩人。:2003/12/21(日) 00:04
- 「あれ・・・・なんですか?」
その男の人達を見つめている亀井ちゃんが聞きます。
見るとその男の人達は、意味不明の言葉を発したり
不思議な行動をとっているのです。
「確かにあれじゃ、狐憑きですね」
田中ちゃんがそう言った時
「正体を見極めないと・・・・」
私はその人達に憑いているモノが何なのか考えていました。
- 357 :名無し狩人。:2003/12/21(日) 00:04
- 「どうしようか・・・・」
まこっちゃんも困っている様でした。
とにかく何が憑いているにしても、あの人達からそれを
切り離す事が先決です。しかしそれには敵の正体を見極めなければなりません。
「あの・・・・私、やってみます・・・・」
そう道重ちゃんが言います。
「やってみるって・・・どうやって?」
「この鏡で・・・・この鏡は化け物を映し出す事が出来る鏡だと言われています。
だからきっと、この鏡にあの人達を映せば・・・・」
そう言って道重ちゃんは古い鏡を取り出しました。
- 358 :名無し娘。:2003/12/21(日) 08:43
- やはり鏡使いがここにもいたか
- 359 :名無し娘。:2003/12/22(月) 19:50
- >>344
うそだといってくれ
- 360 :名無し狩人:2003/12/23(火) 23:32
- 「ミネルバの鏡よ!悪しきモノを映し出せ!」
道重ちゃんはそう言うと鏡を男の人達に向けました。
「ミネルバ」とは、ギリシャ神話の女神「アテナ」から来ています。
アテナの別名がミネルバであり、その「ミネルバの鏡」とは
メデゥーサ退治の時にアテナがペルセウスに送った鏡なのです。
道重ちゃんの持つ鏡はその鏡の能力を受け継ぐ物と言った感じなのでしょう。
「やった、映りました・・・・これは・・・・」
みんなで鏡を覗き込むと、そこには数体の怪物が映し出されています。
「こいつは・・・飯綱・・・それに犬神、おさき狐、おとら狐・・・・」
飯綱(いづな)、犬神(いぬがみ)、おさき狐(おさききつね)、おとら狐(おとらきつね)
この四体の怪物は、いずれも人にとり憑く妖怪の様なモノで
いずれもとり憑かれた人は、訳の解らない言葉を発したり
奇妙な行動を取ったりと、俗に言う「狐憑き」と呼ばれる状態になるのです。
- 361 :名無し狩人:2003/12/23(火) 23:33
- 「相手は解ったけど・・・でも、どうしてこいつらが
しかも四体も同時に現れるなんて、考えなれないよ」
がきさんはそう言うと考え込んだ表情を浮かべていました。
確かにがきさんの言う通り、地方によっては同じモノとされている
怪物達ですが、実際には違うモノであり、今回の様に
同時に現れた記録は、私の知る限りではありませんでした。
「考えられなくても現実に起こってる事でしょ。
それより今はあの人達からどうやって妖魔を引き離すかだよ」
「そうか、そうだよね。御祓いみたいな・・・・ん?」
私の言葉にがきさんが同調した時、私達はある事に気がついたのです。
「ちょっと待って・・・・御祓いったってどうするの?」
まこっちゃんいいます。
私達が気がついた事・・・・それは、M刑事で今回の様な事件に
対応できる人がいないと言う事です。
実際はまあ、何とか今回の様な事件の場合、上手く引き離していたのですが
少なくとも今いるメンバーの中でそう言った能力のある人間がいないのです。
いや、私がいないと思っていました。
- 362 :名無し狩人:2003/12/23(火) 23:33
- 「どうしよう?誰か応援呼ぶ?」
まこっちゃんの言葉に
「誰かって誰?こう言う場合の適任って誰?」
がきさんがこたえ、それに
「誰だろう・・・?矢口さん?加護ちゃん?」
私がこたえましたが矢口さんも、加護ちゃんも、ちょっと違う気がしました。
「あの・・・要するに、この飯綱とか言う妖魔を、あの人達から
引き離せば良いわけですよね?だったら私できるかもしれません」
そう言って名乗り出たのは亀井ちゃんでした。
- 363 :名無し狩人:2003/12/29(月) 00:46
- 「大空に輝きし六連星よ、その大いなる力を我に貸し与えよ。昴、来来降臨!
六字結界展開!」
亀井ちゃんの言葉と共に男の人達の頭上に六角形の光が現れ
その光が彼らを包みこみます。
「悪しきモノよその姿を現せ!」
亀井ちゃんが叫ぶと光は輝きを増しそこから四体の妖魔が姿を現したのです。
「よし!成功だ!こうなればこっちのもんだ、亀井、道重はあの人達を介抱して
あさみちゃん、がきさん、田中、行くよ!」
まこっちゃんはそう言うと、妖魔に向かって走り出しました。
「お前たち!聞こえるか?我らはM刑事。この場所はお前達のいる場所ではない。
素直に消えるか、それとも封印されるか、もしくは・・・我らと戦うか・・・」
私がそう言い終わらない内に、飯綱が襲い掛かってきます。
- 364 :名無し狩人:2003/12/29(月) 00:47
- 「上等!ならば清めるだけ!」
がきさんはそう言うと構えます。
「鷹爪針!」
がきさんの武器「鷹爪針」は書いて字の如く細身の針の様な武器で
それを敵に投げつけます。
「チェーンカッター!」
続いてまっこちゃんが攻撃をしかけます。
まこっちゃんの武器は特殊なチェーンでそれをカッターの様にして
相手を切り裂くのです。
「百手刀殺!」
私の武器は鉤爪。それを装備した拳で無数の突きを繰り出し
敵にダメージをあたえます。
そして田中ちゃんは・・・・・
「光よ!刃となれ!」
私は田中ちゃんが戦う姿を初めて見ました。
と言うより、この新人の能力を今日始めて目にしたのです
- 365 :名無し狩人:2003/12/29(月) 00:47
- 「光刃衝破!」
「光刃衝破」(こうじんしょうは)。田中ちゃんが見せた技は光の刃でした。
この刃がいくつかに別れ、敵を切り裂きます。
「凄い!田中ちゃん凄いよ!」
攻撃を見たがきさんがそう言うと、田中ちゃんは照れくさそうに笑いました。そこに
「ほら!よそ見しない!」
一瞬の隙をついた犬神に田中ちゃんがやられそうになると
それをまこっちゃんがフォローしました。
「ごめんなさい。ありがとうございます」
「いいから!ほら、来るよ!」
まこっちゃん、田中ちゃんが構える所に犬神と飯綱が突っ込みます
しかし2人がそれをかわすと、その二体は空中に逃げました。
「あー、こら逃げるな卑怯だぞ!」
いつの間にか他の二体も空に逃げています。
それは私達の攻撃が届かない高さでした。
- 366 :名無し狩人:2004/01/02(金) 00:38
- 人◎∀◎)つ<あけオメ&ことヨロ〜!!ついでに辻さん加護さん世界記録オメ!
それでは新年一発目でございます。
攻撃が出来ない高さに逃げた敵・・・しかし奴らは知らなかったのです。
M刑事は空でも戦える事を・・・・
「ガルーダ飛行呪!」
敵が空に逃げた事を確認するとすぐにがきさんがそう叫びます。
虚空山の迦楼羅さん直伝「ガルーダ飛行呪」
これはがきさんの得意技の一つで独特の印を結ぶ事により
身体を空に浮かび上がらせる事ができるのです。
「がきさん、頼んだよ!」
「了解!任せなさい!」
まこっちゃんの声にがきさんは応えると、敵に向かって行きます。
「うわー・・・新垣さんは凄いですね」
傍にいた新人の3人は感心したように見上げています。
確かにこの飛行術はM刑事だとがきさんの他は、
資料課の里田さんしか使えません。3人が感心するのも解る様な気がしました。
なぜなら私だって使える様になりたいですからね。
- 367 :名無し狩人:2004/01/02(金) 00:38
- 「鷹嘴破!」
空中でがきさんが叫ぶと身体から気の塊が飛び出します。
その攻撃は飯綱に襲い掛かりましたが飯綱は素早くかわします。
しかしがきさんも負けてはいません。
「転!」
そう一言言うと、気の塊は反転してまたしても飯綱に襲い掛かりました。
その時です。
「光槍飛天衝!」
田中ちゃんの声が聞こえました。
見ると田中ちゃんの右腕から光の槍の様な物が空に向かって飛び出します。
それはがきさんの背後から襲い掛かる「おとら狐」に向かって行きました。
ドーン!! バシュ!!
2人の攻撃は、ほぼ同時にそれぞれの妖魔を捕らえます。
飯綱は消え去り、おとら狐は地上に落ちてきました。
- 368 :名無しkariudo:2004/01/06(火) 02:11
- 「トドメだ」
私はそう言うと手にした武器で、おとら狐にとどめを刺します。
その直後、またしても上から声が聞こえてきました。
「鷹爪針乱れ撃ち!」
がきさんが手にした武器・鷹爪針を素早く敵に向かって投げつけ
投げつけた鷹爪針はおさき狐を見事に捕らえました。
「喰らえ!チェーンランス!」
がきさんに打ち落とされたおさき狐を、まこっちゃんのチェーンが襲います。
まこっちゃんの腕に装着されたチェーンは槍の様になり
おさき狐を貫きました。
- 369 :名無し狩人:2004/01/06(火) 02:13
- 人◎∀◎)つ<名前変換ミス!スマソ!
- 370 :名無し狩人:2004/01/06(火) 21:39
- 人;◎∀◎)つ<しまった・・・読み返したらここにはがきさんが
いないことになってるぞ!とりあえず途中で合流した事に・・・
「残るは・・・・犬神か」
私は空を見上げました。空中ではがきさんと犬神が睨みあっています。
「まこっちゃん、こいつ実体がない!」
既に一度攻撃を仕掛けていたのでしょう。がきさんが言いました。
私とまこっちゃんは顔を見合わせ、辺りを見回します。
飯綱、おとら狐、おさき狐、そして犬神。
いずれも人にとり憑き奇怪な行動をさせる妖魔。そして実体の無い犬神。
どうやらこの事件には黒幕がいるようです。それも私達のすぐ近くに・・・・
「あはははは・・・・・あはははは・・・・」
何処からか笑い声が聞こえてきました。
すると
- 371 :名無し狩人:2004/01/06(火) 21:39
- 「そこだ!」
まこっちゃんが私達の後ろにある木に向かって、ナイフを投げつけます。
「あははははは・・・・M刑事・・・やっと気がついた様だね・・・」
見ると木の陰から不気味な女の人が姿を現しました。
「お前は・・・・妖術師か・・・・?」
私はその女に向かって言います。すると
「M刑事、これは警告だよ!あんた達は気がついていない様だからねぇ。
もうすぐ新たな敵がやって来るんだ・・・・いやもう既に来てるかも知れない。
我らが犬神一族は鼻が利くんだよ。奴らは強敵だ・・・・」
訳の解らない言葉に亀井ちゃんが言いました。
「奴ら・・・・?どう言う事?何が来るの?あなたはいったい・・・・?」
亀井ちゃんの質問に女は答えます
- 372 :名無し狩人:2004/01/06(火) 21:40
- 「奴らは、海の向こうからやって来る。そう・・・外敵だ・・・・
我々日本の妖魔ですら太刀打ちできるかどうか・・・・・
お前達が倒した主天童子が奴らの防波堤だった・・・・・
だがそれが無くなり奴らは動き出した・・・・もうすぐやって来るぞ
お前達にそれが止められるか?今日のはお前達の腕試しさ。
だがその程度腕では奴らに勝てはしない・・・・M刑事どうする?」
女はそう言うとまたしても笑います。
「・・・・何がおかしい!だいたいお前は何者だ?
それに・・・・敵が来るって、いったい何のつもりだ?」
まこっちゃんはそう言うと攻撃をするべく構えました。
「気が短い子だね・・・まったく・・・私は、犬神凶子。誇り高き犬神一族。
そして奴らとは、海外の妖魔の事さ。奴らがこの日本にやって来る。
私を信じるかどうかはお前達の自由。私の役目はそれだけだ。
それでは、またお会いしましょう。ごきげんよう・・・・」
「あっ、待てぇぇぇ!」
がきさんが叫んだ時には犬神を名乗る女は消えていました。
いったい何が何やら、訳の解らない内に事件は終わったのです。
- 373 :名無し狩人:2004/01/11(日) 23:42
- 事件も終わり帰ろうとした時の事でした。
「こら、あんたたち!こんな所で何してるん?」
何処からか声が聞こえます。
「い・・稲葉さん・・・」
道重ちゃんが驚いた顔をして見つめる視線の先には・・・
M刑事本部司令室の稲葉さんが立っていました。
「あんたら寮に帰ったんちゃうの?」
稲葉さんは明らかに怒っています。
それもその筈、私達は本当なら今は寮で寝ている筈だったからです。
「まったく勝手しよってからに・・・しかも6人も・・・
小川!紺野!新垣!あんたらは今後輩の指導してるんやろ?
そやったら、ルールーは守ってもらわんと・・・」
そうなのです。私達は上司の許可を取らないで動いていたのです。
三夫さんの話を聞いた後勤務の交代があり、私達は非番になりました。
本来ならこの捜査は引継ぎするべき事だったのです。
- 374 :名無し狩人:2004/01/11(日) 23:42
- 「ごめんなさい・・・まさかこんな事になるとは思ってもいなかったから・・・」
私がそう言うと
「どうであろうと本来なら怒る所やな・・・・せやけど、うん今回は見逃したる。
ずっと見てたで、なかなかやるやないか」
稲葉さんはそう言うと笑い出しました。
「稲葉さん、笑ってる場合じゃないですよ。大変なんです!」
笑っている稲葉さんにまこっちゃんが慌てた様に言いました。
「どないしたんや?」
「実はさっき、犬神って人が外国の妖魔が攻めてくるって・・・・」
「あはははは、その事か、それやったら聞いてたわ。ずっと見てた言うたやろ?
犬神凶子か・・・・相変わらず訳の解らんやっちゃで・・・」
稲葉さんはまるで先程の犬神さんを知っている様な口調で言います。
- 375 :名無し狩人:2004/01/11(日) 23:43
- 「知ってるんですか?」
「まあね、けどあいつの言ってる事もあながち嘘じゃないみたいやね」
「どう言う事ですか?」
「これ見てみい!」
稲葉さんはそう言うと数枚の写真を取り出しました。
「これは・・・・?」
見ると見たこともない様な、妖魔が写っています。
「一枚目は今日圭織が仕留めた奴や、二枚目は石川が、
それから他のは虚空山から送られて来たもんや!」
「こいつらは何ですか?見た事ないのばっかりですけど」
がきさんは不思議そうに写真を見つめていました。
写真に写っている妖魔は確かに今までに見たり戦ったり
もしくは資料で見た事あったりするモノとはまったく違っています。
「それが恐らく犬神の言った外敵言うやつやろ。もう既に来とるみたいやね」
稲葉さんの言葉に私は驚いていました。
- 376 :名無し娘。:2004/01/15(木) 21:02
- 「これからどうなるんですか?」
道重ちゃんは不安そうな顔で稲葉さんを見つめます。
そんな道重ちゃんに稲葉さんは言いました。
「そら悪さすれば戦うしかないやろな。現に今日も圭織と石川が戦った訳やし」
「でも犬神さんは私達じゃ勝てないって・・・」
「はははは・・・道重あんたおもろいな、こう言っちゃ失礼かも解らんけど
小川・紺野・新垣と本気で戦ったってうちは負けるつもりは無いで」
流石にこの言葉にはカチンと来ましたが、確かに3人が束になった所で
稲葉さんに勝てるかどうか・・・自信はありませんでした。
「まあ、そう言う事だ。道重ちゃん、M刑事は負けないよ」
まこっちゃんは先程の稲葉さんの言葉を気にしていない様で笑っています。
道重ちゃんも頷くと笑顔に戻りました。
「さてと、うちはあんたらを迎えに来たんや。スマンけど本部に戻るで」
稲葉さんはそう言うとさっさと行ってしまいます。
理由の説明もないまま私達は本部に戻りました。
- 377 :名無し娘。:2004/01/15(木) 21:02
- 「やっと来たか・・・まったく携帯の電源位入れとけや!」
本部に戻るなり、中澤さんのお説教が始まります。
今回は私達の勝手な行動だったので何も言えませんでした。
「お説教はこのくらいにしてやな、本題に入るで。もうみんな知っとるとは
思うけど、何や訳の解らん連中が我国に侵入しつつある。
これが人間やったらええんやけど、どうもうちらが取り締まらな
アカン連中みたいやねん。外国の妖魔が日本を攻めるて・・・
まったく鬼太郎やないんやから勘弁して欲しい所やけどそうもイカン。
よってこれより特別体制でこれに当たる事になった。
M刑事各分室及び、虚空山との連携になるとは思うけど
みんなには頑張って欲しい。以上や!」
これからまた新たな戦いがはじまりそうです。
その事についてはまた今度お話したいと思います。
娘。戦記
【邪悪狩人M刑事・頃の章】 終了!
- 378 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:06
- 人◎∀◎)つ<娘。戦記 新章です
http://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1062147283/344-354
人◎∀◎)つ<まずは上記のプロローグをご覧下さい。
- 379 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:06
- 娘。戦記
「矢口真里の戦場レポート」
私の名は矢口真里。孤高のフリージャーナリストである・・・
と言えば格好は良いが、平たく言えば貧乏カメラマンなのだ。
今、私は中東の国アスガラフタン、通称アスガンにいる。
半年前の豪華客船「プレジデントワトソン」爆破事件の報復として
軍事大国カメリアがこの国に戦争を仕掛け、その取材に来ているのだ。
正直言って戦争の取材は、今回が初めてである。
こんな素人にも近い私は、無謀にも単身でこの取材に挑もうとしていた。
そしてこの考えはあまりにも無謀であった事は、充分身に染みて解った。
もしあのまま1人でいたら今頃私は、良くて無一文、悪くて砂漠の砂に消えていたであろう。
そんな私がなぜ今まで無事でいられたのか、それは約二週間前の出会いがあったからだ。
この国に潜入する前に、私はお隣の国タジギリスンのドンシャリバンにいた。
このドンシャリバンにあるアスガン大使館の前で、偶然にも過去の戦友である
アニバーサル通信の大谷マサオ記者に出会ったのだ。
大谷記者の名はTVなどで、見たり聞いたりした事がある人もいるかもしれない。
アニバーサル通信と言えば、世界各国に支局を置く日本でも有数の通信社である。
その大谷記者に、今回の私の計画がいかに無謀であったかを思い知らされた。
しかし、それ位で諦める私ではない。大谷記者を持っていたタバコで買収し
見事に助手の座に納まったのである。・・・・しかしこれは後に後悔にもなった・・・
そしてスッタモンダの挙句にやっとアスガンに潜入した私と大谷記者は
アスガンの北の町、フェイサンバハダに来ていた。
- 380 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:07
- 「ここからは陸路で首都タベミールを目指す」
大谷記者はそう言うと車とガイドを捜し始めた。
「タベミールまでどれ位なんですか?」
「アホ!それ位調べてから来い!どれ位かかるかなんて解るか!」
大谷記者はそう言うと地図を投げてよこした。
私は渡された地図を広げると絶句した。
大谷記者がつけたのであろうルートの記しをたどると
途中で等高線がやたら込み合っている。その標高ざっと4000M。
富士山より高い所を進もうと言うのか・・・・
私は地図を返すと黙って大谷記者の後について行った。
「車はやっぱり日本製が良いな・・・おっ!」
大谷記者はそう呟くと一台の車に走って行く。
そこにはTOYOTAのハイラックスが止まっている。
大谷記者は傍にいた運ちゃんらしき人物と交渉を始めていた。
少しすると大谷記者が手招きをする。私が走って行くと
「駄目だ、いまいち話が通じない。矢口、どっかで通訳見つけて来い!」
大谷記者の命令は絶対である。なにせ助手と言う名のしもべなのだから・・・
- 381 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:07
- 通訳と言われてもどうしたら良いのか・・・
優秀な通訳など、トウの昔に売り切れである。
後に残っているのは中学生程度の英語が出来る奴らだけである。
そのくせ奴らは一日100ドルよこせなどと戯けた事をぬかし
イライラが募るばかりであった。そんな時である・・・
「お姉しゃん、通訳探すれすか?」
なんと片言ではあるが、日本語で話し掛ける奴が現れた。
見た目は中学生位であろうか?しかも女の子である。
「あなた日本語解るの?」
「少し解るれす」
「英語は?」
「OKれす」
話を聞くとガイド料を含め、料金は300ドルで良いとの事。
しかも一日ではなく、別れるまでの料金だと言う。
話は決まった。私はこの少女を連れ、大谷記者の所に戻った。
- 382 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:08
- 「大谷さん、ガイド見つかったよ!」
「お、早かったな・・・ってなんだそのガキは?」
「なんだって・・・ガイドですよ。見た目は子供だけど日本語も解るって・・・」
大谷さんは疑いの視線を投げかけながらも、その少女に交渉を任せた。
「何処行くれすか?」
「!?・・・・ジャボシラ・・・・」
少女の日本語に大谷さんは驚きながらも目的地を伝える。
ジャボシラはここから山脈を越えて最初の大きな町である。
少女はその言葉を聞くと運ちゃんと話を始めた。
「・・・・ジャボシラ、1500ドルれす!」
「もっと安くならない?」
「安く・・・・?」
「プライスダウン」
少女は頷くとまた話をしている。しかし運ちゃんは首を横に振った。
その意味は世界各国何処でもほぼ同じであろう。
私は安くはならないと思った。
- 383 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:08
- 「・・・ダウン駄目れす。オール1500ドルれす」
どうやら運ちゃん達の間で談合でも行われているのであろう。
誰を雇っても1500ドルは変わらないとの事であった。
「仕方ないな・・・矢口お前500ドル出せよ」
大谷記者の言葉に私は素直に頷く。1000ドルは大谷記者持ちである。
「でもそれだけじゃ悪いですから、おいらこの子のガイド代も出しますよ」
「当たり前だろ、お前が雇ったんだから・・・」
「えっ・・・・?」
大谷記者はそう言って笑った。どうやらこいつは最初からガイド代を
私に出させるつもりでいたらしい・・・・
「んじゃ、荷物積み込んで・・・・そうだ!あなた名前は?」
「ノノンれす」
- 384 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:09
- 少女はノノンと名乗った。この国ではこの位の女の子でも
働かないといけないらしい。しかもこれから何日かかるか解らない行程を
私達と一緒に行くのである。それを考えると少し寂しかった。
荷物を積み終え、いざ出発と思っていたら、運ちゃんがまだ必要な物があると
出かけて行った。少し空き時間の出来た私はノノンと買い物に出かける。
マーケットで帽子とスカーフを買う。
いくらかでも砂埃の対策になればと思っての事だ。
ノノンは防寒服とやはり帽子を買っていた。
ガイド料の一部を先に渡していたので、それで買ったらしい。
私は大谷記者に止められていたが、スカーフを彼女に買ってあげた。
「大谷さんには内緒だぞ!」
「どうもれす」
ノノンは嬉しそうにスカーフを首に巻く。
マーケットの帰り道、ノノンに色々聞いた。
- 385 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:09
- 「あなた何処で日本語覚えたの?」
「前、来たお姉しゃん・・・レクチャーれす」
「・・・?ああ、前に来た誰かに習ったのね。名前覚えてる?」
「・・・アヤカしゃん」
「!?・・・アヤカ・・・女の人?カメラマンの・・」
「YESれす。また来る、ノノン待ってた。アヤカしゃん来ない。
来ないから矢口しゃん手伝う」
なんと、ノノンは木村さんから日本語を習っていた様である。
前回何が目的で来たのかは解らないが、滞在時間は長くなかった筈である。
その間にノノンはこれだけの言葉を覚えたのだ。凄い・・・・
運ちゃんが戻って来た。いよいよ出発である。
ノノンは助手席に乗り込み。私と大谷記者は後ろに座る。
しかし今回は運が良いと言えるだろう。車はハイラックスサーフ。
荷物も車内に収まる車である。
本当ならランクル辺りが一番良いがこの際もんくは言わないでおく。
なぜなら一緒に出発した他の国のジャーナリスト達がチャーターした車は
良くてハイラックスのピックアップ、酷いのになると何処製かも解らない
怪しげな4WDなのである。
私達のサーフは快調に走り出した。
まだそれ程古くないのか、調子は良さそうだ。
しかしよく見ると走行距離は15万キロ、インパネにオートバックスのシールが・・・
明らかに出所の良くない車に思えた。しかしこうして今私達の役に立っている。
日本の被害者も自分の車がこうして日本人の役に立っているのなら
まだ諦めが・・・つかないか・・・・
- 386 :名無し狩人:2004/01/18(日) 21:09
- 「矢口、お前高い山とか大丈夫か?」
大谷記者が聞いて来た。
「へ・・?富士山には登った事ありますけどそれ程酷くはならなかったです」
「そうか・・・でもこれから行く所はそれ以上の標高だぞ。
恐らく酸素も薄くなる。頑張れよ」
頑張れよと言われても、何を頑張ったら良いのやら・・・・
とにかく私は頷いて見せた。
暫く車で走ると大きな湖が見えて来た。
何とものどかな光景である。車内から景色を眺め、しばしの気休めだ。
湖が見えなくなるとそこからは頂上まで上りである。
車は道では無い様な場所を進む。
車内で荷物があばれ、大谷記者は天井に頭をぶつけていた。
幸い、私とノノンは背が低いのでゆれてもそこまではいかない。
大谷記者の恨めしそうな視線が面白かった。
- 387 :名無し狩人:2004/01/19(月) 22:58
- 人◎∀◎)つ<石川さんオメ〜!!
車内の皆がほぼ無言で車は進む。喋ったら間違いなく舌をかむ。
車道・・とはとても呼べた代物ではない道である。
更にすぐ脇は断崖絶壁とでも言ったら良いのか・・・深い谷が続く・・・
砂埃が車のラジエータを襲う。ほぼローギアで進む車はたちまち水温が上がった。
オーバーヒートを防ぐ為に、車を定期的に休ませる。なのでちとっも進まない。
止まるたびに運ちゃんは黙々とラジエータに水を足し、コアを掃除する。
更に時々エアクリーナを開けると物凄い誇りが舞った。
マーケットでスカーフを買ってきて正解であった。
砂避けのマスクとして大いに役に立ったのである。
「矢口しゃん、何処で寝るれすか?」
「そうだなぁ・・・大谷さんどうします?」
「ホテルなんて・・・・ないよなぁ・・・ノノン何処か休める所はあるのか?」
既に大分日も落ちて来ていた。
ノノンが今日の宿はどうするのか聞いてくる。
しかしこんな所にホテルなんてある訳が無い。
大谷記者が聞くとノノンは運ちゃんと話を始めた。
- 388 :名無し狩人:2004/01/19(月) 22:58
- 「この先、村があるれす」
「あとどの位?」
ノノンが運ちゃんを見る。運ちゃんは指を4本立てた。
「四時間れす」
「マジで・・?参ったなぁ・・・」
「仕方ないさ、矢口ここまで来たら運ちゃんに任せよう。
運ちゃんを信じるしかないからな」
大谷記者がそう言うと運ちゃんが合図をした。
整備が終わった様だ。大谷記者はノノンに後ろに乗るように言った。
助手席に乗り込んだ大谷記者は、シートベルトをするとシートを倒し横になった。
「これで頭もぶつけないだろう。あまり無茶したらはげるからな・・・」
大谷記者は頭を撫でながらこう言った。
道無き道を進む。既に車は悲鳴を上げているに違いない。
さっきの場所から少し走った所でまたしても車は止まった。
- 389 :名無し狩人:2004/01/19(月) 22:59
- 「今度はなに?」
車から降りると私は聞いた。運ちゃんは黙ってボンネットを開ける。
何やらゴムの焼けた匂いが漂ってきた。
見るとファンベルトがズタズタになっている。更に右前タイヤがパンクをしていた。
「あちゃー・・・こりゃ大変だなぁ・・・・」
さてどうしたものか・・・ファンベルトが切れてしまっては
どうにもならないではないか・・・・私が焦っていると
「おい、矢口邪魔だ!」
大谷記者がジャッキとレンチを持って立っていた。
「タイヤ交換するから手伝え!」
大谷記者はそう言うと荷台を指差す。
見ると運ちゃんがファンベルトとスペアタイヤを降ろしている所であった。
- 390 :名無し狩人:2004/01/19(月) 22:59
- 「随分用意が良いんだなぁ・・・」
「感心してないでタイヤ持って来い!」
「了解!」
こうして運ちゃんはベルト交換、私達はタイヤ交換・・・・
こんな所に整備工場などあるはずも無い。
整備は全て自分達の手でやらなければならないのである。
「適当な石をリヤタイヤの後ろに置いて輪留めだ!・・・
クソッ・・・このボルト・・・緩まねーじゃねーか!」
大谷記者の指示で私とノノンは手頃な大きさの石で輪留めをした。
大谷記者がエンジンルームで作業している運ちゃんに何やら言っている。
「おいノノン、運ちゃんにジャッキUPするって言ってくれ!」
ノノンが運ちゃんの所に行って話をすると運ちゃんが頷く。
「・・・・場所が悪いな・・・・慎重に・・・・」
運ちゃんは比較的平らな場所に車を止めていたのだが多少の傾斜があった。
ジャッキUPは慎重にやらなくては車体のバランスが崩れる。
そんな中でも大谷記者は手際良くタイヤを交換していた。
更に暫くすると運ちゃんの方の作業も終わった様だ。
これでやっと出発できる。辺りは既に暗くなっていた
- 391 :名無し狩人:2004/01/21(水) 23:51
- 標高もだいぶ高くなって来た様である。多少息苦しい。
日が落ちた途端に気温が一気に下がる。車のヒーターが壊れているのか
車内もそれ程暖かくはない。
「ノノン、まだ着かないの?」
「あと少しれす」
ノノンがそう言ってから暫くすると、ヘッドライトの光が数台の車を映し出した。
「やっと着いたか、今日はここで一泊だね」
村に着くと数件の小屋の様な物が並んでいた。
どうやらここの住人の家の様だ。
車を停め外に出ると寒さが一気に体温を奪う。
「うわ、寒っ!」
外気は氷点下に近いのであろう。問題はどうやって眠るかである
- 392 :名無し狩人:2004/01/21(水) 23:52
- 「どっか泊めてくれるとこないですかね」
「ある訳ないだろ。今夜はお前達は車の中で寝るんだ。俺は外に寝る」
大谷記者はそう言うと荷物の中から簡易テントを取り出した。
よく周りを見渡せばいくつかテントらしき物が見えた。
ここまでたどり着いた同業者達が設営した物であろう。
「食事、どうします?」
「何か食う物持ってないのか?」
「缶詰でいいですか?」
「ああ・・・」
大谷記者はそう言うとテント設営のを始めた。
私は荷物の中から缶詰と、乾パンを取り出すと食事の準備をする。
「ノノンは・・・食べる物なんか持ってないよね?」
その言葉にノノンは頷く。仕方がない、私は自分と大谷記者の分の他に
ノノンと運ちゃんの分の食事も準備した。
- 393 :名無し狩人:2004/01/21(水) 23:52
- 「ごめんなさい、ノノン何も持ってない。矢口しゃん大丈夫?」
缶詰と乾パンを手渡すとノノンがすまなそうな顔で言う。
「大丈夫だよ。それにノノンが元気じゃないとこっちが困るからね」
そう言って私は笑う。その後運ちゃんにも食べ物を渡したのだが
運ちゃんは何も言わずに受け取ると黙ってそれを口に運んだ。
それにしてもこのおっさんは、まったく無愛想である。
必要以外の事は一言も口をきかないのである。
食事が終わると一気に疲れが出てきた。
私は寝袋を出すとリヤシートに広げる。背が低いとこんな所で便利なのだ。
大谷記者は寝袋を持ってさっさとテントに歩いて行った。
流石の大谷記者も疲れている様子である。
ノノンと運ちゃんも前の席でシートを倒すと横になった。
運ちゃんとノノンに持っていたブランケットを渡す。
2人ともそれを身体にかけると眠りに就いた。
私も疲れきっていた様だ。それ以降の事は覚えていなかった。
- 394 :名無し狩人:2004/01/22(木) 22:46
- 人の話し声で目が覚めた。寝袋から出ると寒さが身に凍みる。
車のドアを開け外に出ると寒いが非常に気持ちが良かった。
昨日はあった目眩の様な物が今日はない。高さにも身体が慣れた様だ。
「さて、今日も一日頑張りますか」
気合を入れて大谷記者を起こしに行った。
「おはようございますぅ」
テントの中に呼びかけると、眠そうな声で答えが返って来た。
昨日ここに泊まった他の連中も動き始めている。
既に出発の仕度を整えているチームもあった。
ここでふと疑問が生じた。皆起きるとさっさと身支度をして
出発しようとしているのだ。近くには小さな小川が流れている。
誰か1人くらい顔を洗うなりの行動を取っても良さそうな物である。
そう思いながら私は小川の水に手を突っ込んだ。
次の瞬間、身体に衝撃が走る。冷たいなんて物ではない。
冷たいを通り越して痛いのである。
「お前、何してんの?」
後ろから大谷記者が声をかけて来た。
- 395 :名無し狩人:2004/01/22(木) 22:47
- 「顔でも洗おうかと思って・・・・」
「ここの水で・・・?お前は修行僧か?」
あまりにも冷たい水は顔を洗う気力を無くさせる。
なるほど、誰も水を使わないわけだ。
「なんか食べます?」
「んー・・・今はいいだろう。それより出発の準備だ。
ノノンも運ちゃんも起きたぞ。お前も仕度しろ」
大谷記者はそう言うとテントの撤収を始めた。
私も寝袋とブランケットをしまうと大谷記者を手伝った。
「さて、それじゃ行きますか」
出発の準備も終わり、私達のチームも出発する。
既に他のチームは出発していて、私達のチームが一番最後であった。
再び山道をひた走る。頂上までまだまだかかりそうだ。
私はバックからチョコレートを取り出すと口に入れる。
大谷記者、ノノン、そして運ちゃんにも配る。朝食はこの程度であった。
ところでこの山道は時々牛車の様な物とすれ違う事がある。
何処かのどかな風景でもあるが、一体彼らは何を運んでいるのだろうか?
そして何よりどうやってこの山中で夜を過ごしているのか?
昨日の夜はかなり寒かった。そんな中どうやって・・・・
考えればこの国は戦争中である。住人が何故これほど平和に見えるのか?
確かにこの辺りはアスガンでも穏健な民族が住んでいる場所である。
過激派ガルーダの人間が首都に近い場所にいるとはいえ、
これほどのどかなのは何だか不思議であった。
- 396 :名無し娘。:2004/01/23(金) 00:34
- おお新しい話が始まってる!
どういう話になるか分かんないんで楽しみ
- 397 :名無し狩人:2004/01/26(月) 17:34
- 頂上に近づくにつれて道の傾斜も厳しくなる。車もとうとう限界を迎えた。
「矢口、降りて押すぞ!ノノン、お前も手伝えるか?」
大谷記者がそう言うと私とノノンは頷き、3人で車を降りる。
唸りを上げる車の後ろを3人で押すが、あまり前に進まない。
それでも必死になって車を押す。すぐに息が上がってきた。
慣れたとは言えやはり空気が薄いのだ、少しでも身体を動かすと辛いのである。
「頑張れ!もう少しだ!」
大谷記者の声に前を見ると道の傾斜が緩くなっている。
運ちゃんの話によれば、あそこまで行けばなんとかなるらしい。
「矢口しゃん、頑張る!」
ノノンは小さい身体ながらも結構力がある様だ。
更に地元なので高地にも強い。本当に頼りになるやつだ。
やっとの思いで車を押し上げる。私はその瞬間地べたに座り込んでしまった。
- 398 :名無し狩人:2004/01/26(月) 17:35
- 「お疲れ!大丈夫か?」
大谷記者も肩で息をしている。相当辛いのだろう。
それに比べてノノンは元気だった。水筒を持って水を汲みに行ってくれたのだ。
「矢口しゃん、水!」
ノノンに差し出された水を一気に飲み干す。
冷たい雪解け水が身体に染み渡る。本物のミネラルウォーターだ。
「ありがとう。だいぶ楽になったよ」
私はノノンそう言うと立ち上がった。
「ここらで何か食べるか・・・」
既に時間は昼を過ぎている。大谷記者がバックから食べ物を出してきた。
- 399 :名無し狩人:2004/01/26(月) 17:35
- 「おい、ノノン、運ちゃん呼んで来い。一緒に食べよう」
大谷記者がそう言うとノノンが運ちゃんを連れて来た。
そこで私は運ちゃんの様子がおかしい事に気が付く。
元々厳しい表情が余計に厳しくなっている。
「ねえ、ノノン、運ちゃんどうかしたの?」
私の横でビスケットを頬張っていたノノンは運ちゃんを見た。
「運ちゃん変?解らない。聞く」
少し離れた所で食事をしていた運ちゃんにノノンが駆け寄る。
2人は何かを話していた。そして暫くするとノノンは運ちゃんと
こちらにやって来た。
「矢口しゃん、大丈夫運ちゃんに説明する」
ノノンはそう言うと説明を始めた。どうやら運ちゃんは私や大谷記者の
行動を疑っていた様なのだ。前に同じ様にジャーナリストを乗せ
この道を進んだ時に、彼は今回と同じ様に食べ物を雇い主から
分けて貰っていた。しかし、現場に着くと約束の金額が貰えず
問いただすと、途中で渡した食料分を引いたと言われたらしい。
まったくクズは何処にでもいるの物だ。
私は運ちゃんにちゃんと約束のお金を払う事を伝えた。
今渡した食べ物はサービスであるとも言ったのだ。
ノノンがその事を伝えると運ちゃんは黙って頷き
今度は近くに腰を下ろして食事の続きを口に運んでいた。
- 400 :名無し娘。:2004/01/27(火) 17:18
- ( ´ Д `)<400・・・がんばってねぇ
- 401 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:32
- >>400
( `_´)<石川さんが来ると思ったら後藤さんでしたか。頑張ります。
「あー、ビールでも飲みてーなぁー」
大谷記者が呟く。この国はイラスラ教の国である。
イラスラ教はアルコールを禁じているのだ。
大谷記者は私より早くからこの地方に来ていた。
ドンシャリバン滞在中も酒は飲めなかった様だ。
「この際禁酒でもしたらどうですか?」
「はははは・・・氏ね!酒が無くて何が喜びか!
いざ飲まん!酒は朋友の徳あり!酒は百薬の長!」
大谷記者はそう言うと右手を掲げた。
「取材が終わるまでの我慢ですね・・・そうだ!」
私はそう言うと車のバックから箱を取り出した。
「代わりにこれでも飲んで下さい」
そう言ってジンジャーエールのミニ缶を大谷記者に渡した。
- 402 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:32
- 「こんなもんどっから持って来たんだ?」
「来る途中の免税店でみつけて・・・」
「なるほど、ジンジャーエールか。まさに禁酒時代だな」
そう言いながらも大谷記者は缶を受け取るとプルタブを開けた。
「ほら、乾杯だ!運ちゃんとノノンにも渡せ!」
缶は5本あった。私が運ちゃんとノノンにも缶を渡すと
「この取材の成功を祈って!乾杯!」
と叫ぶ!
その行動は各国共通なのだろうか?
ノノンはもちろん運ちゃんも何も説明しなかったのにそれに続いた。
- 403 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:33
- 食事が終わると再び決死の行軍である。
道は緩やかになってきたがまだ登りであった。
「ちょ、ちょっとSTOP!」
外を見ていた私は叫んだ。運ちゃんが車を止める。
「なんだいきなり?どうしたんだ?」
「あれ!爆弾みたいなやつ!」
私は道端に無造作に放置された爆弾の様な物を指差した。
「ああ、ありゃ不発弾だな。この辺じゃそれほど珍しくないぞ!」
大谷記者は当たり前の様に言ってのける。
珍しくないって・・・なんでやねん!
- 404 :名無し狩人:2004/01/28(水) 13:33
- 「ほら、覚えてないかロスイラのアスガン進行。
あの時ロスイラはこの辺りまで攻めて来たんだ。
この不発弾はその時の遺品だよ」
「何で?どうしてこんな所に平気で放置してあるんですか?」
「回収しなかったからだろ?」
「そりゃそうですけど・・・・」
「ほら、写真撮らないのか?その為に止めたんだろ?」
大谷記者に言われ私は急いでその風景をカメラに収めた。
やはりここは戦闘地域なのだ。爆弾が平気で放置されているのである。
ロスイラ進行、内戦、カメリア進行・・・・この国に銃声が無かった事はない。
ここにいる運ちゃんも・・・そしてノノンも皆戦争に慣れている。
日本が平和ボケならこの国は戦争ボケなのかもしれない・・・
- 405 :名無し娘。:2004/01/29(木) 03:20
- ▽^)つ( ´ Д `)
( ^▽^)<お面つけさせてもらってたのよ♪
- 406 :名無し狩人:2004/01/29(木) 23:50
- ( `_´)<ありゃ、お面とは・・・気がつかなかった。
更に道無き道を行く。ついに頂上到着する。
「だいぶ日も落ちてますね。どうします?今日はここで一泊しますか?」
山道の頂上はキャンプには丁度良い広さの場所があり
既に数チームの同業者がテントを設営していた。
「そうだな、だいぶ疲れも溜まってるだろう。
何しろ運ちゃんが大変だろうから今日はここで休もう」
大谷記者はそう言うと昨日と同じ様に簡易テントを組み立て始めた。
私はと言うとここから眺める絶景にしばし見とれてた。
夕日が山々を照らし、幻想的な風景を作りあげている。
三脚を取り出すと愛機を固定し風景の撮影を始める。すると
「珍しいな。お前が風景写真を撮ってる所は初めて見た。
いつもは他のカメラマンに押しつぶされて鬼の形相なのに・・・・
ははは・・・良い顔してるじゃないか」
いつの間にか大谷記者が後ろに立っていてこんな事を言われた。
- 407 :名無し狩人:2004/01/29(木) 23:50
- 「からかわないで下さいよ。恥ずかしいじゃないですか」
「からかってなんかないよ。思った事を言っただけだ。なあノノン」
大谷記者がそう言うとこれまたいつの間にか後ろにいたノノンが頷いた。
そんなにいつもとは違う顔をしていたのだろうか?
もっとも、取材現場が報道カメラマンの戦場である。
戦場で穏やかな顔をしているやつなんていない筈だ。
「ここはここ、現場は現場、矢口の違う一面に惚れ直しましたか?」
「そうだな、あと5・6年したら付き合ってくれ」
「はい?5・6年て・・・・微妙な・・・・」
「ははは・・・命短し恋せよ乙女ってやつだ。
相手が見つからなかったら貰ってやるよ」
「結構です!おいらだって彼氏の1人や2人すぐ見つけますよ」
「おう、頑張れよ」
大谷記者から見れば私はまだまだガキって事なのだろうか?
確か歳はそれ程違わない筈だったと思っていたのだが・・・・
「HEY!マサオ!」
そんな事を考えていた時、不意に違うチームから大谷記者を呼ぶ声が聞こえた。
大谷記者は振り返ると手を振っている。どうやら知り合いのジャーナリストらしい。
- 408 :名無し狩人:2004/01/31(土) 23:38
- 「マサオ、やはりお前も来てたのか」
どこの国の人であろうか。男性が大谷記者に近づいて来た。
「よう、ダニエルか久しぶりだな。まだ生きてたのか?
ははは、相変わらず現場に女連れとはいい度胸だな」
ダニエルと呼ばれたその男性の後ろに女の人がいる。
私はその人も取材クルーだと思っていたのだがどうやら違うらしい。
戦場に来るのに女連れとは本当に良い度胸である。
「マサオも女連れじゃないか・・・ん?子供か?」
私とノノンを見たダニエルはそう言うと肩をすくめる。
子供とは・・・非常に失礼な奴である。
- 409 :名無し狩人:2004/01/31(土) 23:39
- 「ははは・・・べーギル人から見ればこいつは子供に見えるかな。
おい矢口、何か言ってやれ!」
どうやらダニエルはヨーロッパはべーギルから取材に来ている様だ。
こんなナンパ野郎にどうして良い取材が出来ようか・・・?
「初めまして、マリ・ヤグチと申します。ダニエルさんでしたか
失礼ですがこう見えても私は二十歳はこえております」
「これは失礼マドマゼル!私はダニエル、お見知りおきを・・・」
「はあ・・・・」
やはりいけ好かない奴である。目が完全に馬鹿にしているではないか!!
この時私はこんな奴らと運命を共にするとは夢にも思っていなかった。
- 410 :名無し狩人:2004/02/02(月) 21:01
- 「マサオ、こいつ知ってるか?日本ではかなり有名なジャーナリストだって
聞いたことある名前だったから途中で少し情報交換したんだが信用して良いのか?」
ダニエルはそう言うと一枚の名刺を大谷記者に差し出した。
私が横から覗き込むとなんとそこには大物の名前が・・・
「中井・・・・?あれ、おかしいな中井記者はここには来ていない筈だが・・・」
中井記者とは日本でも戦場レポーターとして有名な人でTTSとかの
ニュース番組に良く登場しているあの人だ。
「・・・そうか、ダニエルそいつは偽者だぞ」
「偽者・・・?」
「そうだ、俺らの間じゃ偽中井って呼んでる」
「ちくしょう、騙されたのか!」
「いや・・・たぶん交換した情報は本物だ。何処から仕入れてくるのか知らないが
あいつの情報はしっかりしている。だから情報自体は信じて良いと思う」
「でも、人の名前を騙りやがったぞ!」
「ははは・・ジャーナリストなんて詐欺師と紙一重の所もあるんじゃないのか?
それに聞いたことも無い名前の日本人とお前だったら情報交換するか?」
「・・・・いや・・・しないな」
「そうだろう、だからあいつはいつも中井記者を語るんだ。だから偽中井」
- 411 :名無し狩人:2004/02/02(月) 21:01
- 大谷記者の話を聞きながら私はみょうに納得してしまった。
取材は情報が命である。私だって得体の知れない外国人に情報など教えないだろう。
そこに少しでも名の知れた人間を騙った奴が来たらどうなるだろうか。
たぶん情報交換なら応じてしまうかも知れない。
偽中井・・・・大したつわものもいたもんだ。
「大谷さん、おいらあいつなんか気に入らないよ。
仕事現場に彼女なんか連れてきてさ、何考えてんだ?」
ダニエルと別れた後私は大谷記者に言った。
「ははは、ダニエルもそんな悪い奴じゃないぞ。
それに彼女のチェルシーだって腕利きのジャーナリストだ。
戦場取材だってお前なんかとは腕も経験も格段に上だ」
「うそ・・・・て事は彼女もある意味スタッフなんだ」
「ああ、俺だって一緒に行動するならお前よりチェルシーの方が
何かと頼りになって良いと思うしな」
「そーですか!それは至りませんで申し訳ないですね」
私が怒ってそう言うと大谷記者はポンと私の頭を叩いた。
- 412 :名無狩人:2004/02/03(火) 23:00
- 「ご飯にするれす」
むくれる私の手をノノンが引っ張る。
それを見たらなんだか怒っているのがアホらしくなって来た。
私はノノンと一緒に食事の準備を始めた。
「また缶詰だけど良い?」
「OKれす」
私は何となく気分が良かったのでとっておきの缶詰を開ける。
それは・・・パンの缶詰であった。
今やパンも缶詰で売っている時代なのである。
ノノンはそれを興味深そうにのぞいていた。
- 413 :名無し狩人:2004/02/03(火) 23:44
- 一晩をここで過ごし夜が明ける。
私達は出発の準備を済ませると車に乗り込んだ。
今日は早く仕度した事もあり他のチームの車と一緒のスタートである。
数台の車がキャラバンを組み山道を下り始めた。
「なんだか前に車がいると安心しますね」
私は大谷記者に言った。
「そうだな。結局は人は群れをなしたがる習性があるんじゃないか?
自分だけじゃ何かと不安な事も穂かに仲間がいれば
安心できる事もあるだろうし、前の車、お前が嫌ってる
ダニエル達のチームだぞ。そんな奴でも一緒にいる方が安心だろう?」
ありゃ、前の車はあいつ等だったのか・・・
でも確かに大谷記者の言う通りではあった。
嫌な奴でもこんな場所では一緒にいた方が安心できる。
人間とは不思議なものである。
- 414 :名無し狩人:2004/02/03(火) 23:45
- しばらく走ると突然前の車が止まった。何かあったのだろうか?
良く見ると止まっているのはダニエルのチームだけはない。
その前、更に前・・・今朝一緒にスタートした車が全て止まっているのだ。
「何かあったのか・・・・・」
大谷記者はそう言うと車を降りる。
私も気になって外に出ようとした。すると
「矢口!車の中にいろ!」
大谷記者の叫び声が聞こえて来た。
私は訳の解らぬまま言われた通り車の中に戻った。
中から前を見るとダニエルと大谷記者が話をしているのが見える。
いったい、何があったのだろうか?
- 415 :名無し狩人:2004/02/05(木) 21:32
- 少しすると大谷記者が戻って来た。なにやらかなり深刻な顔をしている。
「この車列の一番先頭の所で車が一台止まってる。
それも滅茶苦茶にされてだ・・・・この意味解るな」
大谷記者の言っている事がいまいち理解できない私は首を横に振った。
すると大谷記者は呆れた様な表情を浮かべ言う。
「話は簡単。恐らくは昨日の夜、ここを通ろうとした連中が
山賊と化したガルーダの兵士に襲われたんだろう。
連中はまだこの辺りにいるかもしれない。
車には銃弾の痕もあった。かなりヤバイな」
やはりここは戦場であった。もし昨日あそこで休まないでこの場所を通っていたら
私達がやらていたかも知れないのだ。
「今、他の車の連中と話をしてきた。ジャボシラに着くまではこのキャラバンを
崩すことなく進む。とりあえずそれまでは協力して行こうってな。
矢口、お前もじゅうぶん注意するんだぞ!」
- 416 :名無し狩人:2004/02/05(木) 21:32
- 大谷記者にそう言われたがどうすれば良いのやら。
だいいち連中が持っている銃で撃たれたらこんな車ひとたまりも無いではないか。
しかし何もしないよりはした方が良いだろう。
私とノノンは出来るだけシートの真ん中に座りその両脇を
カメラバックや缶詰など弾避けになりそうな物で固めた。まあ気休めではあるが・・
更に私はバックを開けると中から日本出発前にドンキホーテで買って来た
警棒と唐辛子スプレーを取り出し腰に装備する。
こちらも気休めの武装でしかないのだが無いよりは良いだろう。
他のチームも準備が終わった様だ。車列がゆっくりと走り出す。
少しすると襲われた車の横を通り過ぎた。
一瞬にして言葉を失う。酷い・・・・その一言である。
車体にくっきりと残った弾痕、窓ガラスは全て割られていて
シートにはくっきりと血痕が残っている。
車内の緊張感は先程とはうって変わって高まっていた。
- 417 :名無し狩人:2004/02/12(木) 22:44
- 峠道も半分を通り越した。本来であればこのままジャボシラまでまっしぐら
と、行きたい所であったが、戦場に「本来」なんて言葉がないのである。
細心の注意をはらい、車は進むのである。
「矢口しゃん、大丈夫?」
私の顔は緊張で引きつっていた様だ。心配したノノンが話しかけて来た。
「ん、大丈夫だよ。怖くないって言えば嘘だけど・・・・大丈夫。
それよりノノンは大丈夫なの?怖くないの?」
私がそう聞くとノノンはただ笑って見せた。
そうだ、この子はこの国の人間なのだ。
「ははは・・・ノノンは強いね。それに比べておいらは・・・・」
私がそう言うとノノンは首を横に振る。
「ノノン怖い。でもお仕事。矢口しゃんお手伝いする約束した。」
私はこの言葉を聞いてハッとした。そうなのである。
いくら戦争ばかりの国の人間であっても怖い物は怖いのである。
ノノンは私の不安が増えないように笑って見せたのだ。
- 418 :名無し狩人:2004/02/12(木) 22:45
- 「矢口、お前ここに来た事今更後悔してるんじゃないだろうな?
もう後戻りは出来ないんだぞ。覚悟は決めとけよ」
私とノノンの話を聞いて大谷記者が呆れた様に言う。
これで何回目であろうか?大谷記者に注意されるのは・・・・
このままでは大谷記者の足も引っ張る事になる。
私は気合を入れなおした。
「大丈夫です。おいらだって報道カメラマンの端くれですよ。
今のノノンの言葉を聞いて覚悟は出来ました。
もう迷いません。怖いけど・・・・はい、覚悟を決めました」
そんな私の言葉に大谷記者は頷くとじっと前を見つめた。
私とノノンも周りを見ながら警戒を怠らないようにするのであった。
- 419 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:47
- ここまで読んだ。
- 420 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:01
- 何事もなく車は進んでいた。しかし、突然車列が停止したのだ。
思わず私は身構える。前の方を見ると銃を持った連中が
前方の車を囲んでいた。
「うそ・・・お、大谷さん・・・・」
ビビル私にノノンが言う。
「チェックポイントれす」
「チャックポイント・・・?」
実はこの辺りはアスガンでも、ガルーダとは違う連中が支配しているのである。
その名も「北方連合」アスガンの北部に住む民族の集まりである。
私がドンシャリバンで入った大使館も、正確にはこの北方連合の
大使館なのである。彼らはここを通る車を監視していたのだ。
「なんだ・・・・よかったぁ・・・おいらはまたガルーダの連中かと・・・」
「ははは・・・気張りすぎだよ。それより矢口、ビザとか書類用意しとけよ」
「あっ、はい・・・」
ここは一種の検問所である。私は大谷記者に言われ書類を取り出す。
少しすると奴らは私達の車にもやって来た。
マドを開けた大谷記者に何やら話し掛けている。
- 421 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:02
- 「ビザとプレスカード・・・取材許可証出せ言ってるれす」
ノノンの言葉に私は固まった・・・・
許可証・・・・?ビザとプレスカードは貰ったでも許可証なんて・・・・
私はノノンの小声で話し掛ける。
「ノノン・・・おいら許可証なんて貰ってないよ・・・・」
「矢口しゃんそれ駄目れす・・・・・どうしよう・・・・」
困っていると検問所の兄ちゃんは大谷記者の書類を持って車を離れた。
その隙に私は大谷記者に事情を話した。
「大谷さん、おいら許可証なんて貰ってないよぅ・・・・」
「おい、嘘だろ?プレスカード一緒に貰っただろう?」
「プレスカードと一緒に・・・・・?あっ!まさかあの落書きみたいな・・・」
「そうだ、早く出せ!」
「・・・・・捨てちゃった・・・・・だって・・・・」
「馬鹿野郎!どうすんだよ?」
そんなやり取りをしていると運ちゃんがノノンに何やら話し掛けていた。
話が終わると運ちゃんの表情が固くなる。どうやら事態を飲み込んだ様だ。
流石に私を乗せているとマズイのかも知れない。
そんな中検問所の兄ちゃんが戻って来た。万事休すである。
兄ちゃんは大谷記者に書類を手渡すと私達を指差して何やら聞いている。
もう駄目だ・・・・そう思った時であった。運ちゃんが何やら兄ちゃんに
説明をしている。その話を聞いていたノノンの表情がパッと明るくなる。
運ちゃんの話に頷くと兄ちゃんは行ってしまい、車は動き出した。
- 422 :名無し狩人:2004/02/15(日) 18:03
- 「ノノン、なんて言ってる?」
「・・・・・・何がどうなったの・・・・?」
何故か検問所を通過できた私はノノン聞く。
「ノノンと矢口しゃん運ちゃんの子供」
「はい?」
ノノンから詳しく話を聞いた私と大谷記者は驚いた。
なんとあの時運ちゃんは、後ろの2人は自分の娘で、大谷記者の手伝いで
一緒に乗っていると説明してくれていたのだ。
確かにノノンは通訳をしていたし、私も取材用の機材を抱えていた。
私の格好も出発前にマーケットで仕入れた服を着ていたので
どうやら兄ちゃんには本当にそう見えたようであっさりとOKが出たのだ。
「取材の時は現地で優秀なガイドを雇いなさい」
日本を出る前に木村さはそう私に言った。
ノノンと運ちゃん、この2人は間違いなく当たりの人材であった。
- 423 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:51
- ついに山越えも終了した。車が進むにつれて文明の匂いがしてくる。
道端にある人家、道も整備された物になってきてついに・・・
「お店だ!」
私が叫ぶと運ちゃんがびっくりして車を止めた。
「なんだよ矢口、びっくりするじゃねーか!」
「いや・・・すいません。お店が見えたんで、つい嬉しくなっちゃって・・・」
「ははは・・・まあな。止まったついでだ。寄ってくか」
大谷記者はそう言うと車を降りる。見ると前の車も止まっていた。
「マリ!プレゼントだ!」
私が車を降りるとダニエルが缶を投げてよこした。
それはだいぶ擦れてはいたが間違いなくコーラの缶であった。
- 424 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:51
- 「これどうしたの?」
「そこで売ってるよ。ほれ、これも」
ダニエルはそう言って袋いっぱいのピーナッツもくれた。
やっと文明圏にやってきたのだ。たかだか2・3日の山越えであったが
なぜか非常に懐かしい。
コーラをくれたダニエルがいい奴に見えて来た。
「さて、どうやら俺達はここでお別れの様だな」
ダニエルはそう言うとその先の検問所を指差した。
ここから先はみんなバラバラに取材を始めるのである。
「じゃあ、生きてたらまた会おう」
ダニエル達のチームはそう言うと一足先に検問所を目指し行ってしまった。
「さて、俺達も行くか」
大谷記者はそう言うと買って来たコーラをノノンと運ちゃんに渡し車に乗り込んだ。
- 425 :名無し狩人:2004/03/01(月) 00:52
- 「さてと、おい矢口。いつまでも運ちゃんの娘って訳にはいかないだろう。
ここの検問所で許可証貰える様に頼んでみよう」
「はい、ノノン頼んだよ」
「大丈夫れす」
車は検問所目がけて一気に進む。
しかし途中で何故かダニエル達の車が戻ってきた。
「あれ?どうしたんだ?」
大谷記者が不思議そうに見つめていると車は何事も無かった様に
私達の車とすれ違った。見るとダニエル達が乗っていない。
訳がわからないまま私達は検問所に向かった。
- 426 :名無し娘。:2004/03/01(月) 05:39
- どうなるんだろう
- 427 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:42
- 検問所に着くと早速検査が始まる。
私と大谷記者はノノンを連れて交渉を始めた。
「ノノン頼りにしてるよ」
「OKれす」
ノノンはそう言うと検問所の責任者の所に臆する事も無く向かって行った。
すぐに交渉は始まった。一体どんな会話をしているのだろうか?
最初は難しい顔をしていた責任者の表情が徐々に変わって行く。
逆にノノンの顔が厳しくなって行く、しかし
遂には両者笑顔になって頷いた。どうやら交渉は上手く行った様だ。
「矢口しゃん、100ドルれす」
「はい?」
「証明書100ドルれす」
どうやら証明書の再発行に100ドルを要求された様だ。
「なんだよまた金取んのかよ!」
「我慢れす。これでもプライスダウンしたのれす」
あの時ノノンの表情が厳しくなったのはこれが原因の様だ。
しかなく100ドルを払う。ここでゴネてせっかくのノノンの努力を
無駄には出来ない。
- 428 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:43
- 「さてこれで大腕を振って取材が出来るぞ」
私がそう言うと大谷記者に怒られた。
「アホ!元はと言えばお前が悪いんだろ!まったく・・・・」
ノノンに笑われながらも私達は車に乗り込んだ。
しかしそこで問題が発生したのである。
出発しようとしようとした車が再び止められた。どうしたのか?
「ノノンどうしたの?」
車を止める兵士にノノンが事情を聞く。
するとノノンは驚き、悲しそうな表情を浮かべたのだ。
「何?何があったの?」
「運ちゃん・・・・ここでお別れ・・・」
「どうして?」
「ここから先、車チェンジなのれす・・・・」
訳が解らない。ノノンはその後も必死になって話をしている。
しかし、途中で運ちゃんがそれを遮った。
すると今度はノノンが運ちゃんに何か話をしている。
しかし運ちゃんは首を横に振るだけである。
少しするとノノンは諦めた様に小さく頷いた。
- 429 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:43
- 「ノノン悪いけど解る様に説明してくれない?」
私の言葉にノノンは説明を始める。詳細はこうだ。
あの峠を超えてやってきた車はここから先には進めない。
ここから先は車を変えないといけないのである。
理由としてはここで運ちゃんと同じ商売をしている人の仕事が
なくなってしまうかららしいが、実際はここの検問所の連中が
ここでそう言った商売をしている人達から売上の一部をピンはねしている様だ。
だからこそ無理やりここで止められるのである。
だからさっきダニエル達の車も帰って行ったのだ。
「残念だけどここでお別れですね」
ノノンにお別れは残念だと伝えて貰う。
すると運ちゃんは約束の場所まで行っていないので料金は
1000ドルで良いと言ってくれた。
しかし大谷記者は1500を渡す。
「貴方には色々と助けて貰った。だから約束の料金は払う」
運ちゃんはそれを受け取ると100ドルを私に差し出し何か言っている。
「証明書の料金は運ちゃんが出すって、言ってるのれす」
「どうして?いらないよ!」
すると運ちゃんはまたしても何か言っている。
- 430 :名無し狩人:2004/03/08(月) 21:44
- 「運ちゃん女の子供がいるのれす。仕事で会えない事が多いから
矢口しゃんと一緒、楽しかったと言ってるれす」
「そんな・・・だったらその子にこれでお土産買ってあげてよ」
だが運ちゃんは首を振る。
「しばらくは会えないのれす。だから・・・」
「じゃあさ、おいら何か変わりにあげるよ。欲しい物ある?」
私の言葉をノノンが運ちゃんに伝えると運ちゃんは
私のカメラバックについていたぬいぐるみを指差した。
「へ?こんなんでいいの?だったらこれも・・・・」
私はそう言うとカメラバックからもう一つぬいぐるみを取り出した。
このぬいぐるみは私がお守り代わりにいつも持ち歩いている物である。
ここからのお守りはこの100ドルだ。
運ちゃんはその事を伝えると、嬉しそうに二つのぬいぐるみを受け取り
握手を求めて来た。
「ありがとう。ほんとうにありがとう・・・・ここでお別れだけど元気でね・・・」
運ちゃんはその後すぐに帰って行った。あの厳しい山道をまた戻るのだ。
私達は寂しさを押し殺し新しい車を探すのであった。
- 431 :名無し狩人:2004/03/14(日) 23:23
- 次の車はすぐに見つかった。この辺りにはそんな連中がウロウロしていたからだ。
次の車で遂に私達はタベミールに到着する。ここからは本当の戦場である。
戦場・・・・それは想像を絶する物であった。
飛び交うミサイル、あちこちで聞こえる銃声・・・・
逃げ惑いながらも何とか取材を行う。
大谷記者も私も必死である。そんな中ノノンは頑張ってくれた。
私たちの無茶にも必死について来て仕事をこなしてくれた。
そして帰国の日・・・・
「ノノン、今日まで本当にありがとうね」
「矢口しゃん、また来るのれす」
「うん、約束するよ。戦争中は来れないと思うけど・・・・
絶対・・・戦争が終わったら取材に来るよ。この国の復興を・・・・
それからノノン達の頑張ってる姿を取材しにね」
「約束れす」
「うん」
それから二日後私は機上の人となっていた。
そして途中の中継地ロスイラで戦争の終結を知る。
なんと私達がアスガンを出国してすぐにカメリアが首都を制圧していたのだ。
あと二日・・・・あそこにいれば終結も取材出来たのに・・・・
それから数ヶ月が経っていた。
その日私は再び機上の人になっている。それも自衛隊の機体である。
私は復興支援の人達の取材団に紛れ込む事が出来たのだ。
アスガンに到着したら目指すはフェイサンハバダである。
ノノンが待つあの街へ・・・私はカメラを握る手に気合が入るのが解った・・・・
娘。戦記
「矢口真里の戦場レポート」
ザ・エンド!
- 432 :名無し娘。:2004/03/15(月) 00:15
- お疲れ様でした。たった今読み終えたところでしたが楽しませていただきました。
- 433 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:02
- 人◎∀◎)つ<ネタバトルに勝利! それはおいといて
マルスの続編の構想がまとまりましたので始めます。
- 434 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:04
- 宇宙に蔓延るならず者の脅威となるべく国際政府の軍部は
新造艦にそんな軍神「マルス」の名をつけた。
迫りくる環境破壊の波。もはや国家レベルで対応できる問題では無かった。
22世紀初頭、「人類皆兄弟」を謳い文句に設立された「国際連邦」。
国際連邦が発表した環境対応策は人類の「宇宙移住計画」。
人類は一度地球から離れ、地球環境を改善する。
この計画の主だった目的である。
スペースコロニー、月面都市。人類の生活圏は既に宇宙になっていた。
娘。戦記
【スペースマルス2】
地球から調査の為に派遣されたアンドロイド・ユリシーズ。
このアンドロイドの反乱も連邦軍戦闘艦「スペースマルス」の活躍で終結。
これはそれから数年後のお話である。
「お久しぶりです。お変わりありませんか?」
「おう、紗耶香も元気だった?」
「はい、おかげさまで。平家さんいい時に来ましたよ。
昨日美味しいチョコレートが手に入ったんですよ」
「マジ?そら楽しみやね」
「はい、それから・・・・・・」
「ん?紗耶香・・・?おい、紗耶香!どうした・・・・?」
土星軌道上にある防衛宇宙ステーション「CBC」
今ここに航路監視隊の訓練艦「プロポーズ」が到着して
その連絡をしている最中であった。
- 435 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:04
- 「あっちゃん。どうなっての?」
「オカシイなぁ。通信回路は正常やで。向こうから応答信号も出とるし」
プロポーズの艦長は平家みちよ。かつては連邦軍を離れ
ジャンク屋を営んでいた平家は稲葉と共に再び軍に戻っていた。
一方、平家と話をしていたのは市井紗耶香。
元スペースマルス艦載機隊レッドのパイロットであるが
現在はこの防衛宇宙ステーション「CBC」の警備隊長をやっている。
「CBC応答せよ!こちら訓練艦プロポーズ。CBC?メリットありますか?」
途中で途絶えたCBCからの連絡に
プロポーズの副長稲葉が呼びかけるが応答がない。
「おかしい・・・・何かあったのか?こうなったら強行入港だ。ルル!行ける?」
平家は航海班長のルルに船の強行入港を指示する。
「駄目です。ゲートが閉まってる」
「駄目か・・・ん?アレは・・・?」
強行を諦めた平家はステーションの外壁に
比較的大きな出入り口があるのを見つけた。
- 436 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:05
- 「あれは・・・・ステーショントレインの出入り口じゃないですか?」
ルルが言う。ステーショントレインとは宇宙ステーションの外壁を走る
いわばモノレールの様なものである。
「あそこからなら入れるかな・・・?のの、行ける?」
「うん、大丈夫!バトルポットなら入れるよ」
「じゃあ、行って様子見てきてくれないかな?」
「了解!」
そう言ってブリッジを出て行ったのは辻希美。
これまた元スペースマルスの一員であったが今はこの訓練艦の教官である。
辻はパイロット候補生のマーサ・スドーを引きつれ二機のバトルポットで
ステーション内部へと入って行った。
因みにバトルポットとは小型の戦闘用の機体である。
辻がステーションに入ってからしばらくすると通信が入った。
- 437 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:06
- 「へーけさん・・・・みんな・・・・みんな死んでる!」
「何?」
「いちーちゃんも・・・・みんなも・・・・眠ってるみたいだけど冷たいの・・・」
「何があったんや?」
「解らない・・・でもみんな・・・・動かないんだよぉ〜!!」
「のの・・・落ち着いて!パイロットスーツは脱いでないよね?」
「うん・・・」
「ステーションの管制システムは生きてるの?」
「うん、ステーションのシステムは正常みたい」
「よし、とにかく港のゲートを開けて・・・・出来るよね」
「了解・・・」
少しするとステーションのゲートが開き、プロポーズが港に入った。
「へーけさーん!」
船から下りた平家達の所に辻とマーサが走って来る。
平家達もコスモスーツを着用していた。
本来ならこの港ではスーツなど必要ないのだが安全の為に
稲葉がスーツ着用指示を乗員にしていたのだ。
- 438 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:06
- 「へーけさんみんなが・・・・いちーちゃんが・・・・」
「うん、すぐに調査しよう」
こうしてプロポーズの乗組員によってCBCの調査が始まった。
テロの可能性。あらゆる毒物・細菌兵器の調査など。
しかし、瞬時にステーションの人間全員が死亡する原因は見つからなかった。
「みんな、苦しんでる様子もない・・・・紗耶香笑ってるよ・・・・」
「きっと楽しみだったんだね。私達が来るの・・・・私だって楽しみにしてた・・・
久しぶりにいちーちゃんに会えると思ってたのにこんなのって・・・・」
平家や辻、稲葉など市井を知るメンバーは悲痛の表情を浮かべている。
もちろん他のメンバーの表情も暗い。
「とにかく戻って報告せんとアカンな」
「でも・・・みんなをこのままには出来ないよ」
「しかし連れて行く訳にもイカンやろ?原因が解らんのやし
未知の病原体の可能性だって充分に考えられるんやで」
稲葉の言葉に平家は頷く。
- 439 :名無し狩人。:2004/03/22(月) 22:07
- 「・・・て事は私たちもヤバイの?」
「さあてね。どうやろうな?けど基地に戻ってもすぐには入れてはくれんやろなぁ」
「だよね・・・・だいいちこのまま無事に戻れるかもあやしいんだよ」
辻の言葉に稲葉や平家は最悪の事も覚悟するようにメンバーに言った。
「ピースドライブ準備!」
艦内に平家の声が響く。
調査を終えた平家達は事態の報告の為、訓練を中止して
近くの拠点となる軍事基地を目指しピースドライブに入った。
- 440 :名無し狩人:2004/03/28(日) 23:00
- ハローエンジンが開発されてから数年が経っている現在では
その航続距離も飛躍的に伸びていた。
フリージアのハローエンジンに比べるともう別の物と言っても過言ではない。
地球軌道上から土星軌道上までなら、その時の惑星の位置にもよるが
大体一週間以内に行き来出来るようになったのである。
そしてこのプロポーズにもその新型エンジンが搭載されている。
今現在の位置から一番近いのは木星軌道上に浮かぶ
「サウザン・ジュピター」である。
「サウザンジュピターへ。こちらは訓練艦プロポーズ艦長平家です。
至急マコード司令に連絡したい事があります」
サウザン・ジュピターから少し離れた所でピースドライブを終えた
平家はすぐに司令官のマコードに連絡を入れようとしたのである。
「マコードだ。平家か。どうした?お前達は天王星軌道まで
訓練航海じゃなかったのか?」
「そうなのですが、至急准将にお伝えしたい事がありまして・・・」
平家がそう言うとプロポーズのメインモニターに映った
マコードの表情が曇る。
- 441 :名無し狩人:2004/03/28(日) 23:01
- 「みっちゃん、マコード司令は今、小将やで!」
隣にいた稲葉が慌てて平家に言う。
「・・・・申し訳ありません。小将・・・・」
「いや、構わんよ。で何があった?」
平家は数時間前の出来事をマコードに伝える。
報告を受けたマコードは意外にもプロポーズに基地への入港を指示した。
「このままの入港はマズイのでは?」
平家はマコードに問い掛ける。
「いや、大丈夫だ。だが隔離ポートに入って貰うぞ。そこで検査を行う」
「了解!よろしくお願いいたします」
指示があってからすぐにプロポーズはサウザンジュピターに入った。
この基地にやってくる船はいわゆる宇宙線などを浴びた船も入港する為
こう言った場合の施設も完備されているのである。
「チェック完了!基地内への進入を許可します」
船及び搭乗員の検査が終わり平家達は基地内の出入りを許可された。
早速詳しい報告をする為、全員司令室に向かうのであった。
- 442 :みゅん八先生:2004/04/05(月) 22:14
- 「状況は解った。後は調査隊を送れば詳しい事は解るだろう」
平家の報告を受けたマコードはすぐさま調査隊をCBCに派遣する。
一方、プロポーズはこの基地で一時待機の命令が下された。
「一体何がどうなってるの?」
「解らん。調査隊の報告待ちやな」
「へーけさん、私達はどうなるんですかね?」
「どうって?」
「訓練は中止ですか?」
「どうだろうなぁ・・・命令がどう来るか解んないや」
プロポーズのクルーは基地内のロビーで話をしていた。すると
「お久しぶり」
作業服を着た女性がメンバーに近づいて来た。
「おう、村さんやないか。ここやったっけか?」
そう言って稲葉が話し掛けたのは村田めぐみ。
元スペースマルスメカニックである。
- 443 :名無し狩人:2004/04/05(月) 22:15
- またまちげーた!
「話聞いたよ。市井ちゃん・・・・本当なの?」
「ああ・・・残念やけどな。この目で確認してきたわ」
「・・・・・・」
稲葉の言葉に村田は絶句する。何を言ったら良いのか。
言葉にならずただ涙がこぼれ落ちた。
「あの・・・これ・・・」
涙を拭きながら村田はファイルを平家に手渡す。
「なにこれ・・・?ん?カリワカC?」
村田の持って来たファイルには「カリワカC」と記されている。
何かの資料の様だ。
「ふむ・・・・成る程。で、今回のCBCの件はこれが原因なの?」
「解りません。でも平家さん達のデータを考えるとこれじゃないかって柴田が・・・」
「マコード司令には話したの?」
「はい、柴田から資料が来てすぐに持って行ったら平家さんに見せろって」
「そうか・・・」
平家はそう言うとファイルをメンバーに見せた。
- 444 :名無し狩人:2004/04/05(月) 22:15
- 「イマイチ解らないよ。村さん、このカリワカCってなんなの?」
「辻ちゃんは解りにくいかな。専門用語も多いしね。
このカリワカCって言うのはね、簡単に言うと人間の脳細胞を破壊する物なの」
「脳細胞?」
「そう、宇宙線・・・いや、超音波みたいな物かな?
とにかくそれを浴びた人間は脳内物質のドーパミンだかエンドルフィンだか
そんなのが異常に分泌されて最悪の場合には死亡。
良くても脳に後遺症が残って記憶障害とかあるらしいんだ」
「それじゃあ、いちーちゃんは・・・」
「まだ解らないよ。柴田も自信はないって言ってたし」
そう言うと村田は辻の横に腰をおろしす。久しぶりの再会であったが
素直には喜べない何やら微妙な空気が漂っていた。
- 445 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:53
- 平家達がこの基地に到着してから丸一日が経とうとしている。
プロポーズのクルーはマコードに呼ばれミーティングルームに集まっていた。
「調査隊から報告があった。結果から言おう・・・CBCの件はテロだ!」
「テロ?」
「何者かがCBCでカリワカCを使ったと思われる。
更に亜空間レーダーにお前達が調査を始めた頃にCBCから
発進したと思われる機体の記録も残っていた」
マコードも説明にメンバーは顔を見合わせる。そんな奴等を確認していないからだ。
「お前達の言いたい事は解る。だが実際の所はこれが真相だろう。
お前達の調査が甘かったんじゃない。相手が悪かったんだ。
しかし、お前達が一つだけ相手に勝っていた所もある」
マコードはそう言うとマーサを見た。
「マーサが何か?」
平家がそう言うとマコードは薄笑いを浮かべ話し始める。
- 446 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:53
- 「犯人の目的も正体も現在は解らない。しかしこれがテロだあることは
ほぼ断定できる。それを決定付けたのはマーサ、お前だ」
マコードの説明によるとこうだ。
犯人達はプロポーズ入港の隙をついてCBC内でカリワカCを使用する。
その際、基地の機能をダウンさせた。
これは自分達の存在の記録を残さない為であった。
プロポーズはすぐに異常に気が付く筈であるが
CBC内にメンバーが入るまでに十分脱出する時間はあると考えていた。
そして実際脱出は成功。後は逃げるだけである。
しかしここで犯人達には予想もしない誤算があったのだ。
プロポーズがCBC内に入る際、犯人達は辻がゲートの非常開閉装置を
使用すると考えていたのである。実際辻もそうしようとしていた。
しかし、辻と一緒にCBCに入ったマーサがCBCのシステムを
短時間で復帰させた為、辻は通常の操作でゲートを開けていたのだ。
「それとテロであるとの関連付けは?」
「マーサが機能を復帰させたお陰で亜空間レーダーも復帰した。
そしてやつらが逃げた形跡をギリギリながらレーダーが捕らえた訳だな」
マコードの説明に辻は不思議そうな表情を浮かべていた。
- 447 :名無し狩人:2004/04/11(日) 22:54
- 「だったら犯人はシステムを壊しちゃえば・・・」
「それだとテロだってすぐに解っちゃうでしょ。逃げる時間を稼ぐ為に
私達に考える時間を持たせたかったんじゃない?
けど予想外にCBCの機能が早く復帰した。
犯人は逃げる事には成功したけど足跡を残してる訳だね。
それに気が付いているかは解んないけどさ」
平家の言葉に辻は納得するとマーサの肩に手を乗せた。
「少なくともマーサのお陰で敵の足跡は残ったんだ。
手掛かりはゼロじゃない。いちーちゃんの仇を討てるチャンスが残ってる。
マーサ、ありがとう!」
辻の言葉にマーサは照れくさそうに笑う。
それを見ていたマコードも頷くと言った。
「辻の言う通りだ。足跡が残っている以上犯人特定の可能性はゼロじゃない。
それでだ、お前達には訓練を中止して新しい任務に就いて貰う」
マコードの言葉にメンバーは大きく頷いた。
これからマコードが出す指令の内容は誰もが瞬時に分かっていたからである。
- 448 :名無し娘。:2004/04/12(月) 06:51
- 小ネタ満載だねw イイヨーイイヨー
- 449 :名無し娘。:2004/04/12(月) 20:36
- 「総員出撃に備えて準備!明日には出発だ!」
平家の言葉にメンバーが頷く。
「訓練生はここに残って貰う。すぐに迎えも来るからそれまでは待機!」
「艦長、私も連れてってください!」
平家の指示ににマーサはこう言う。
「マーサ、気持ちは解るけどこれは訓練やないんや。
場合によっては実戦になる。お前はまだまだ訓練不足や
そんな所で優秀なお前を失う訳にはイカンからな」
稲葉はそう言うとマーサの肩に手をおいた。
「大尉・・・・どうしても駄目でしょうか?」
「ああ、アカン。お前らはこれからの軍の大切な人材や。解るな?」
「はい・・・・では皆さんご無事で・・・」
「ん、ありがとう。大丈夫や、きっと無事に戻って来る」
稲葉にそう言われたマーサはミーティングルームを出て行く。
それを見送った残りのメンバーは出撃準備の為プロポーズに向かった。
- 450 :名無し娘。:2004/04/12(月) 20:36
- 「さて・・・カッコ良いこと言ったはエエけど補充の人員はどうなってるん?」
「少将が何とかするって言ってたけど・・・」
プロポーズに出された新たな任務とは勿論CBC事件の犯人の追跡である。
敵はピースドライブを使える船を持っていることは亜空間レーダーの反応で
既に解っている事である。
そして訓練艦プロポーズにはその亜空間レーダーが装備されている。
本来であればこの亜空間レーダーは艦隊の旗艦など
数少ない艦艇にしか装備されていない。そして訓練艦であるプロポーズは
その数少ない艦艇の一隻なのである。
「さし当たってはメカニッククルーとパイロットやな」
「メカは村さんのチームが乗ってくれるって言ってたよ」
稲葉の独り言に辻が答えた。
そしてパイロットの話になった時に平家が難しそうな顔をしてやって来た。
「どうや?パイロットは?」
「それが・・・この基地の人間だと手一杯らしくて・・・」
「アホな・・・んじゃどないすんねんな?」
「参ったなぁ・・・・」
マコードは人員を用意すると約束していたが上層部の意見で
それが出来ないと言ってきたのだ。
しかしプロポーズの任務はそのまま実行との命令もあり
平家はどうすることも出来ないでいたのである。
- 451 :名無し狩人:2004/04/12(月) 20:37
- 「こうなったらマーサ達を連れて行くしかないかなぁ?」
「それは無茶やで。賛成はできひんな」
「だよね。そなると・・・・」
そんな話を2人がしている所に一隻の船が入って来た。
「なんや?・・・・輸送船か?」
その船は輸送船オネーモであった。この基地に定期的に物資を運搬してるのである。
平家と稲葉はただ何となくその船を見つめていた。
すると乗員と思われる一団が次々に降りて来る。そしてそこには・・・
「おい、みっちゃん。あいつ等・・・」
「うん。どうしてあの船に乗ってるんだろう?」
「どう見ても護衛の任務には見えんな。まあエエ、
飛んで火にいる何とやらってやつや・・・」
稲葉と平家は顔を見合わせるとその一団に近づいて行った。
- 452 :名無し狩人:2004/04/12(月) 20:37
- 「おう、お前らどうしてここにおるんや?」
稲葉は一団の中にいた数人に話し掛けた。
「あっ!稲葉さん、それに平家さんも・・・お久しぶりです」
「護衛には見えんけど・・・」
「えっ?ああ、休暇ですよ。土星の輸送船団の護衛で二ヶ月の任務でしたから
そこで人員の交代があったんです。それでジュピトリスリゾートで
ゆっくりしようと思って・・・」
ジュピトリスリゾートとは木星の衛星に作られた保養施設であり
軍人は勿論一般の観光客も訪れる場所である。
「そうか・・・でいつまでなん?」
「一応一ヶ月・・・次の船団が来るまでは・・・・って、どうしてですか?」
「そうか・・・なるほどねぇ・・・そら結構なお話やなぁ・・・」
「稲葉さん・・・?何か企んでません・・・?勘弁して下さいよ
久しぶりの長期休暇なのに・・・」
「なあに、大した事やない。ちょっとうちらに付き合ってくれればエエんや。
悪いようにはせんから・・・なあ田中ちゃん・・・」
不幸にも稲葉達に捕まったのは、田中、道重、亀井の3人。
いずれも元スペースマルスの艦載機パイロットである。
- 453 :名無し狩人:2004/04/19(月) 22:55
- 「稲葉さん・・・?冗談ですよね?」
「いんや本気やで」
「だって・・せっかくの休暇なのに・・・」
「そんなんええやん、それとも田中は市井が仲間やない言うんか?」
「は?何の事ですか?」
「えっ・・・・?ああ、悪い悪い。まだ説明しとらんかったな・・・」
そう言うと稲葉は田中達3人に事情を説明する。
CBCでの事件の事。そして自分達の任務とクルーが足りない事など・・・
「うそ・・・ですよね。そんな事じゃ騙されませんよ」
「アホ!嘘でこんな事言えるか!」
「じゃあ・・・」
田中は平家を見た。すると平家は黙って頷く。
「そんな・・・私約束したのに!今度会ったらとっておきの技教えてくれるって・・・」
話を黙って聞いていた亀井が叫ぶ。道重はただ呆然としていた。
田中は平家の頷きをみるとその場に座り込むそして・・・・
- 454 :名無し狩人:2004/04/19(月) 22:56
- 「みんな・・・・そう言う訳なんだ。力を貸してくれないかな?」
平家が3人に言った瞬間
「勿論です。こちらからお願いしますよ」
「私もやります。平家さんよろしくお願いします」
「私も・・・・あっでも一ヵ月後はどうしよう・・・?」
士気が上がる3人の中で道重は一ヵ月後の任務を気にしている。
勿論この作戦には参加するつもりではいるが自分の任務に穴をあけるのが嫌らしい。
「大丈夫それは私から少将にお願いしとくよ。じゃあ決まりって事で良いね」
平家の言葉に3人は大きく頷いた。
田中達は早速予定を変更するとプロポーズの乗艦準備を始めた。
「さて、オペレーターとかはもうすぐ柴田と斉藤が来てくれるけど
パイロットが辻を入れても4人か・・・・せめてもう一人ほしいね」
「そうやねぇ。かと言って他にあてがある訳でも無し・・・こうなると・・・」
「うん」
「あいつしかおらんか・・・けど引き受けてくれるん?」
「大丈夫でしょ。あの子は元々紗耶香の同期だし」
「だな」
こんな会話があった翌日直前に到着した柴田と斉藤を乗せ
プロポーズは一路土星軌道を目指し出航した。
目的地は勿論CBC。そしてもう一つ・・・
- 455 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:30
- 「こちら特務艦プロポーズ、オペレーター斉藤です。CBC応答願います」
「CBCです。任務お疲れ様です」
「その後変わったことはありませんか?」
「はい、我々が任務についてからは特に無いです」
「了解しました」
CBCに到着したプロポーズは連絡を取っただけでCBCに入港せず進路を変えた。
「目標、タイタンコロニー」
「了解!」
犯人の追跡は亜空間レーダーからおおよその進路は特定できている。
そして何処に向かったのかも大体の見当はついていた。
本来であればそちらに直行するのであるがプロポーズにはまだやる事があった。
そう、人員の確保である。
- 456 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:31
- 土星衛星タイタン・・・・この衛星にはコロニーが存在する。
その名もタイタンコロニー。ここは地球圏を離れ
自由気ままに暮らす人々が集まった場所である。
老後をゆっくりと過ごす人。更には金持ちで悠悠自適な人。
はたまたヒトヤマ当てて気ままに暮らす人など地球人の憧れの場所でもある。
そんな人々の中に平家達が探す人物はいるのである。
「こちらタイタンコロニー管理局です。貴艦の所属と航行目的を知らせて下さい。
貴艦は当コロニーの防衛ラインに侵入しています」
タイタンコロニーにやって来たプロポーズに予想もしない通信が飛び込んで来た。
「何これ?失礼なやつらだなぁ」
通信を受けた柴田がムッとした表情を見せる。
「本当になんだろうね。今までこんな事無かったのに。
でもまあ柴田とりあえず喧嘩してもしょうがないし
答えられる範囲で返信して」
「了解!」
平家の指示に柴田は怒りながらも返信をした。
- 457 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:31
- 「こちらは連邦軍訓練艦プロポーズです。これより識別コードを送信します。
航行目的は軍機によりお応えできませんが入港の許可をお願いします」
柴田はそう言うと識別コードを送信した。それからすぐに返事が返ってくる。
「コード確認。失礼致しました入港を許可します。誘導ビームに乗ってください」
コロニー側からそう連絡があると港のゲートが開き、誘導ビームが現れる。
ルルが誘導ビームにしたがって艦を操り、プロポーズはコロニーに入港した。
「タイタンコロニー駐留軍責任者のケンコバー大尉であります。
先程は大変失礼いたしました。実はCBCの方で何かあったらしいとの
連絡を受けまして警戒をしている所でして・・・・平家少佐でいらっしゃいますね?
CBCの事は何かご存知でいらっしゃいますか?」
平家達が艦から降りるとコロニー警備担当のケンコバー大尉が出迎えた。
ケンコバーの質問に平家は首を横に振るだけである。
- 458 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「大尉、私からは何も答えらる事はありません。しかしこの態勢は続けて下さい。
じきに軍の方からも正式に連絡があるでしょう」
「はっ。やはり何かあった様ですね。解りました、それでは連絡を待ちます」
「お願いします」
平家はそう言うと稲葉、辻、柴田を連れてコロニーの中の街に繰り出した。
この街は緑豊かな別荘地をイメージして作られた為かなりのんびりしている。
そんな街をしばらく車で走ると現れるのが巨大なショッピングモール。
ここには食料、衣料、日用雑貨から美容、医療施設など生活に必要な
施設がほとんど揃っているのである。
そんなモールの横にそびえる一軒のホテル。平家達はそのホテルの駐車場に
車を止めるとフロントに向かった。
「いらっしゃいませ。ようこそ!フロントまでご案内します」
入り口でべルボーイが丁寧に4人を迎えてくれた。
フロントに着くと稲葉が開口一番こう言った。
「オーナーおる?」
「は?お客様本日はどういったご用件で・・・?」
宿泊客だと思って対応に出たフロントの担当者は驚いた様に言う。
- 459 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「そやからオーナーに会いに来たんや。おるの?おらんの?」
「申し訳ございません。オーナーはただ今外出しておりまして・・・」
「そうなん。じゃあ待たせて貰うわ」
そう言うと稲葉はロビーの椅子に座る。
あっけに取られていた3人もそれに従った。
そんな4人の所に少しすると一人近づいて来る。そして・・・・
「お客様、失礼ですがオーナーは外出しておりますので
よろしければ支配人の私がご用件をお伺いいたします」
そう言う声に4人は聞き覚えがあった。
そしてその人物を見た瞬間、4人は笑い出した。
「わはははは・・・・なんやその格好・・・」
「あははは・・・・ホントどうしちゃったの?」
「はははは・・・・全然にあってないよ・・・・圭ちゃん」
支配人と名乗って現れた女性は保田圭、彼女も元スペースマルスクルーである。
- 460 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:32
- 「あれ!みんなどしたの?休暇?」
久しぶりの再会に保田は驚いているが当の4人は笑い続けている。
「何だよ〜。そんなに笑う事ないだろう!」
先程までの態度とはコロッと変わり素が出てきた様な保田に
「ほらほら・・・支配人がそんな言葉づかいじゃアカンて・・・それにしても・・・」
「ごめんごめん、圭ちゃんがいるなんて思ってもいなかったから」
「圭ちゃん・・・どうしてここにいるの?」
保田はユリシーズとの戦いが終わって少しすると軍を辞めていた。
普通の女の子になる。そう言って軍を去っていったのである。
「ホテルの支配人だって普通の女の子の仕事だよ!
女の子はおしとやかにして・・・・戦闘機なんて乗らないの!」
そう保田が言うとやっと4人の笑いが収まった。
保田は呆れた様な表情を浮かべながら4人を事務所に案内した。
- 461 :名無し狩人:2004/04/20(火) 22:33
- 「で?今日は何しに来たの?」
「何しにて、言うたやろ?親分に用があって来たんや」
「そうなの?でも・・・ごめんね今出かけてていないないんだよ。
二時間位前に電話があっていきなり飛び出して行っちゃったらしんだけど・・・」
「なんや圭ちゃんはそん時おらんかったんか?」
「うん」
そんな話をしていると事務所の電話が鳴った。
「はい、保田です。・・・ああ丁度良かった今平家さん達が来てるんだけど・・・えっ?」
話をしている保田の顔色が急に蒼ざめて行くのが4人には解った。
電話の相手は・・・・恐らく探している人物である。
「うん・・・・うん・・・解った。待ってる様に行っとく・・・じゃあ・・・」
受話器を置いた保田は振り返ると4人をじっと見つめた。
「本当なの・・・?」
「紗耶香?」
「うん」
「私達が第一発見者だよ。残念だけど本当なんだよ。
紗耶香笑ってたよ。笑いながら眠ってた・・・・」
「そう・・・・」
保田はそう言うと椅子に座り込み4人にここにいるように告げた。
- 462 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:24
- 「紗耶香は確かCBCだったよね?何があったの?・・・って言っても答えられないか」
「ごめんね。いくら圭ちゃんでも今はまだ・・・・」
「だよね。それにしても・・・信じられないよ・・・・」
市井の事を知った保田は落ち込んでいるが比較的冷静な表情を浮かべている。
「で?親分は何処行ってるの?」
「良く解んないけど・・・話の感じからすると紗耶香の家族と連絡取ってるみたい」
「家族・・・?何や?どうして家族から・・・・」
「解んないけど、この前紗耶香が家族連れて来たんだ。
そん時元同僚だって話したから・・・それで連絡があったのかも」
「そうか・・・いくら軍機とは言え、家族には連絡するからなぁ」
そんな話をしているとまたしても事務所の電話がなった。
「はい保田・・・・ああ・・・今何処にいるの?・・・・タイタン?
タイタンのスペースポートだね。・・・・うん・・・お葬式?・・・うん・・・」
保田はしばらく話をすると再び受話器を置いて言った。
- 463 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:24
- 「あのね。今紗耶香の家族がタイタンにいるんだって・・・
いろいろ話があるから今日は戻れないって・・・・」
「マジか?参ったな・・・・」
「そうか・・・・どうしよう・・・?」
保田の言葉に稲葉と平家が困惑していると
「あの・・・保田さんじゃ駄目なんですか?」
柴田が2人に言った。
「へ?圭ちゃん・・・・?」
「そうか!そうだよね!」
平家が思い出した様に言う。
「何・・・?一体何なの?」
「ごめん・・・実は矢口に頼みごとしようと思ったんだけど・・・
うん圭ちゃんでも良いんだよ。あのね・・・・」
平家はそう言うと事件の経緯、そして任務に当たってのパイロットが
足りない事を保田に話した。
- 464 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「・・・・そうか・・・・紗耶香はそれで・・・・って事はこれは敵討ちだね。
パイロットか・・・・うん解った。引き受けるよ。
でも大丈夫なの?私はもう軍の人間じゃないんだよ」
「それは問題なし!マコード司令に許可は貰ってあるの。
民間人の一時的な起用を申請してあるから・・・・」
「そんな制度あったっけ?」
「今回の特例。元軍人で身元はしっかりしてるし、本当は矢口で申請したんだけど
圭ちゃんでも立場は同じだし問題無いでしょ」
平家がそう言うと保田は早速親分・・・つまりこのホテルのオーナーであり
雇い主の矢口に連絡を入れた。
矢口とは・・・そう、これまた元スペースマルス隊の一員である矢口真里の事である。
矢口はユリシーズとの戦いが終わってしばらくすると、突然大金持ちになっていた。
これはまだ人類が地球で暮らしていた頃に「月の土地の権利」と言う物が
シャレで販売されていたのだ。その時に矢口の数代前の先祖がその権利を
シャレで買っていたのだが、なんとその権利が現在実際に認められていて
そんな事など知らない矢口の元に「月開発公社」より突然連絡があり
土地を買い取りたいと言われ、その土地を売ったお金でこのホテルを
始めていたのだが、その時に矢口は軍を辞めており
現在は保田と同じ民間人なのである。
- 465 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「矢口驚いてたよ。でも出張扱いにしてくれるって・・・・
本当なら自分が行きたいって言ってた。でも今は・・・・」
「解っとるよ。矢口の仕事は敵討ち以上に大切な仕事や。
家族直々の頼みじゃしゃーないやん」
元スペースマルス艦載機隊レッドのリーダー保田圭が新たにクルーとして
プロポーズに加わった。
これ以上の時間は無駄に出来ない為、保田が乗り込むとプロポーズは
すぐに出航した。
「目標、天王星!ピースドライブ準備!」
亜空間レーダーの痕跡から敵は土星よりも外宇宙に移動した事が解っていた。
そして、このところ太陽系を騒がせている反連邦組織の拠点も
この辺りにあるのでないかとも予測されていた為、平家の出した答えが
天王星だったのである。
「それで?向こうに着いたらどうするの?」
「どうって?」
「ただ闇雲に探す訳じゃないでしょ?」
「目星はついてるの。実はね今回の訓練もそれを探るって言う
意味もあったんだよね」
「ホンマか?聞いとらんでそんなん!」
ブリッジで話をする保田と平家の会話に稲葉が入って来た。
- 466 :名無し狩人:2004/04/22(木) 22:25
- 「みっちゃん、そう言うんはうちにも言っといてもらわんとなぁ」
「いや、これはあくまで私と和田中将の推測だから・・・・
だから正式なミッションじゃなかったんだ」
「けどやなぁ・・・」
「ごめん。これからは言うよ」
そんな話が終わりかけると
「ピースドライブ終了・・・・現在地、天王星まで6万ミニモ」
柴田の声が聞こえて来た。
ミニモとは宇宙単位で、宇宙を航行する船舶などが使用する距離を表す単位である。
「さて、ここからが本番だよ」
「作戦は?」
遂にプロポーズは作戦空域に入った。ここからは決して気を抜けないのである。
- 467 :名無し狩人:2004/04/27(火) 00:58
- 平家はルルに天王星に向かう様に指示を出す。
作戦はとにかく敵をおびき出すと言う無謀とも言える物であった。
「天王星に敵の根拠地があるの?」
辻の問いにメンバーは笑い出した。
「ははは・・・辻さん。天王星は主成分が水素とヘリュウムの
ガスで覆われた惑星ですよ」
「え?」
「お前、良くそんなんで軍の入隊試験に通ったね」
田中と保田の言葉に辻はまだ不思議そうな顔をしていた。
「こらこら、笑っとる場合やないで。可能性としてはあるかも解らんのやから」
「そうなの?」
「そりゃそうやろ。全部がガスな訳やないんやし・・・なぁ、みっちゃん」
稲葉の言葉に平家は首を横に振る。
- 468 :名無し狩人:2004/04/27(火) 00:59
- 「可能性はゼロじゃないけど・・・・」
「目星はついとるんか?」
「ミランダ・・・・」
平家は言う。ミランダとは天王星の衛星の一つで
地表に大きな溝を持ち、ゲリラの隠れ家に丁度良い場所でもあるのだ。
「そこまで解っててなんで今まで何もしなかったの?」
保田の問いに
「今の連邦軍は荒廃しきってるからね」
平家は寂しそうに答える。
反連邦組織は別に今プロポーズが追っている組織だけはない。
ただどれも大きな組織ではない為、軍はあまり重視していないのである。
その為、何か事件があってもその場しのぎの対応しかせず
今回の様に調査隊が出ることは稀であった。
- 469 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:06
- 「ミランダまで5000ミニモ。エネルギー反応キャッチ!」
柴田の声に平家が動いた。
「総員戦闘配備!ミネルバシステム作動!」
艦内に警報が鳴り響く。保田達艦載機チームは素早くカタパルトに行くと
戦闘機に乗り込んだ。
柴田と斉藤はミネルバシステムを作動させる。
「ミネルバシステム」とは自動迎撃システムの事で
ユリシーズとの戦いがあった頃に、スペースマルス隊のメカニックであった
大谷雅恵が開発した「オートコンバットシステム」を原型とし
それを発展させシステムである。
因みに名前の由来はギリシャ神話に登場する英雄「ペルセウス」に
盾を送った女神「アテナ」のローマ名から来ているのだが
これは数世紀昔にあった「イージスシステム」のからの名残であるとも言われている。
- 470 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:07
- 「前方より艦艇3隻接近!セレス級戦闘艦です!」
「識別は?」
「識別コード・・・あれ?」
「どうした?」
「イダとマチルダ・・・それにガスプラになってます」
「アホな・・・」
プロポーズに接近する戦闘艦の識別コードは、火星衛星基地「アレス」に
籍を置く戦闘艦のコードであった。
しかしながらこの場所にその三隻が存在する筈など無い事は
プロポーズのメンバーなら誰でも知っている事である。
なぜならクルーのほとんどがかつてアレスにいた者ばかりだからである。
「斉藤・・・・」
平家が斉藤を見る。
「間違いなく偽物です。あの三隻は今改修中です」
斉藤は言った。オペレーターの斉藤瞳は今でもアレスに籍を置いている。
その斉藤はこのプロポーズに乗り込む為、アレスからやって来た。
そして出発前に、今目の前にいる三隻の改修を行っていた大谷に
声をかけて来たのだ。
- 471 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:07
- 「柴田、コンタクト取れる?」
「やってみます・・・・ガスプラ応答願います・・・・」
柴田が現れた戦闘艦に通信を試みた。
「・・・ガスプラです」
「こちらは連邦軍訓練艦のプロポーズです。貴艦隊の航行目的を知らせて下さい」
「申し訳ありませんが軍機によりお答えできません」
「了解しました。私はプロポーズ艦長の平家です。貴艦の艦長をお願いします」
「は?」
平家はガスプラの艦長と話がしたいと申し出た。
ガスプラの艦長・・・もしガスプラが本物であれば
アレスのカドー大尉が指揮を取っている筈である。
「・・・・艦長はただ今休憩中です・・・」
「休憩中?ほう・・・いい根性やな!上官の呼び出しをシカトかい!」
平家がそう言うと相手の通信が途絶えた。
「作戦開始!」
平家の声が艦内に響き渡った。
と同時に保田達艦載機チームが飛び出してゆく。
- 472 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:08
- 「レーザーカノン三連速射!右舷対艦ミサイル開け!」
プロポーズは先制攻撃を仕掛けた。
思わぬ攻撃に敵艦隊は混乱しているようだ。
「レッドリーダーより各機へ!私達は偽マチルダを叩くよ!」
「圭ちゃん・・・」
「何?」
攻撃を仕掛けようとした保田に辻が言う。
「私、レッド隊じゃないよ」
「あっ・・・・しまった。ブリーフィングしとけば良かったね・・・基本だったのに・・・
ごめん、じゃあ昔のコールサインで行くよ。みんな良い?」
「レスラッテ+了解!」 「ノギーメタンア了解!」
「キースギテック了解!」 「サーユナルシス了解!」
「いいねえ、その調子!んじゃ改めて・・・ケメンダヤスより各機へ・・・
指示は・・・さっきの通り!行くよ!」
保田は軍を離れてかなり経つ。
今回は久々の戦闘であった為、つい昔の癖が出てしまったのだ。
保田はかつてのスペースマルスレッド隊のリーダーであるが
辻はイエロー隊であり、他の3人はホワイト隊である。
それに今の辻達には現在の所属の部隊があり
それぞれのコールサインを持っている。
なので混乱を避けるため保田は昔のコールサインで指示を出したのである。
- 473 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:08
- 「敵艦、艦載機を出してきました」
「とうとう化けの皮をはいだか・・・・」
攻撃を始めた敵艦から艦載機が発艦してプロポーズに襲い掛かってくる。
するとミネルバシステムが自動的に応戦を開始した。
「戦闘も楽になったな。まったく大谷はエライもん作ったもんやで」
ミネルバシステムの働きに稲葉は感心をしていた。
それ程このシステムは画期的だったのである。
「亜空間レーダーに反応あり!」
斉藤の声がするとプロポーズの後方に艦隊が現れた。
「・・・・・所属不明艦多数・・・・・識別にありません・・・」
「えっ?・・・・・・・」
柴田の声に平家は絶句する。すると
「敵艦隊沈黙!軽い軽い!」
保田の声が通信機から聞こえて来た。
しかしそれに答える者は誰もいない。
- 474 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「ケメンダヤスよりプロポーズへ。どうしたの?」
「圭ちゃん・・・まずいよ・・・」
異変に気がついた辻はプロポーズの後方に展開する艦隊に気がついた。
「なんだあいつ等・・・」
「うそ・・・保田さんあいつ等ウィラポーンです!」
田中はそう言ったが保田はそれが何なのか知らなかった。
反連邦組織「ウィラポーン」田中は過去に戦った経験があった。
「田中。ウィラポーンってどんな連中なの?」
「かなり戦いには慣れていると思います。まえに一度戦った事があります」
「その時の状況は・・・?」
「決着は付かなかったですが・・・・正直あのままだったら負けてたかも・・・」
田中は現在物資輸送船団の護衛部隊にいる。
そしてその船団の護衛中に突然現れたのがウィラーポーンであった。
田中は出撃する間もなく一隻の僚艦が目の前で撃沈された。
そして田中が出撃した時には既に消えていたのだ。
- 475 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「あいつら・・・・あの時には解らなかった・・・でもその後犯行声明が出て・・・」
「ニュースには無かったね・・・」
「上は大した問題じゃないって・・・・」
田中の言葉からその時の悔しさが伝わってきた。
保田はすぐに機首を反転させた。
「みんな行くよ!」
そうして艦載機隊が攻撃に出ようとすると
「やめなさい!圭ちゃん・・・勝てないよ」
平家が止めた。
「逃げるの!」
「あたりまえでしょ。早く戻って」
「でも・・・・紗耶香の仇だよ」
「自分がやられたら意味無いでしょ!」
平家の指示に保田は従うしかなかった。
普通に考えれば今は勝てる状況ではない。
敵艦隊は五隻。それも先程叩いた旧式の戦闘艦とは訳が違うのである。
- 476 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:09
- 「敵艦隊が攻撃開始しました」
「艦載機隊収容急げ!」
敵の攻撃を何とか迎撃しながらプロポーズは保田達を収容する。
「全速転進!離脱急げ!」
敵の攻撃を掻い潜り何とか逃げようとするプロポーズ。
「駄目です。逃げ切れません」
柴田の叫び声が響く。
「諦めるな!爆雷散布!」
何とかして離脱を図るプロポーズだったが敵の追撃も厳しい。
「第二ブースター被弾!速度低下・・・」
逃げるプロポーズにこの被弾は致命的であった。
- 477 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:10
- 「ピースドライブ準備!」
「無茶です!こんな状態で!」
「他に方法はない!」
敵の追撃をかわすにはもうピースドライブしか方法は無かった。
しかしながら高速移動中のピースドライブはあまりにも危険なのである。
そんな中、平家は決断をした。無茶でもやるしかない・・・だが
「ハローエンジン出力低下・・・どこか被弾した様です」
最後の策であるピースドライブもハローエンジン被弾により出来なくなった。
「くそ!こうなったら・・・攻撃だ!」
逃げ切れないと判断した平家は戦いを挑む覚悟を決めた。
メンバーもまたその覚悟が固まっている様だ。
「みんな・・・やれるだけやるよ」
「了解!」
保田達は再び出撃して行った。その後に稲葉と村田が続く。
- 478 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:10
- 「戦闘機は多いほうがええやろ。指揮は・・・圭ちゃん任せたで!」
「了解!ケメンダヤスより各機、敵機を一機もプロポーズに近づけるな!」
「了解!」
艦載機7機はプロポーズの正面に陣取った。
迫り来る敵艦載機を迎え撃つ為である。
「対艦ミサイル多数接近!」
「打ち落とせ!」
プロポーズの艦橋も既に修羅場と化していた。
死をも覚悟したメンバーが必死になっていたのである。
「第一、第二カタパルト被弾!」
「ミネルバシステム使用不能」
被害状況が続々と報告される。
「ほらほら・・・どんどんきやがれ!」
迎え撃つ保田は次々に敵機を叩いて行った。
しかし
- 479 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「主砲使用不能・・・・レーザーカノン・・・消滅・・・」
「これ以上応戦は不能です!」
斉藤は平家を見た。
「総員退艦急げ!」
「えっ?」
「早くしろ!」
「平家さんは?」
「私は・・・・残るよ・・・」
プロポーズは既に撃沈寸前であった。
クルーに退艦を指示した平家は艦長席に座ったままである。
「みんな早く!」
柴田が指示を出し脱出用の小型艇にクルーは乗り込んで行く。
「馬鹿な事言ってないで行くよ!艦と運命を共にする艦長なんて
時代遅れもいいとこだよ!」
斉藤はそう言うと平家の右手を引っ張った。
- 480 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「・・・・・」
動こうとしない平家、すると
「ほら!みちよ!行くぞ」
柴田が平家の背中を叩いた。
「痛いな〜・・・何すんだよ!」
思わず立ち上がる平家。
その瞬間ここぞとばかりに斉藤が平家を引っ張った。
「こら!放しなさい!」
斉藤と柴田の2人がかりで引きずられる平家が叫んでいる。
- 481 :名無し狩人:2004/04/28(水) 18:11
- 「はいはい、脱出艇に着いたら離しますからね。
それまではおとなしくしてましょうね」
まるで子供をあやすかのような口調で言う斉藤。
それでも平家はもがいていた。
「お待たせ!ルル良いよ!」
やっとの思いで脱出艇に平家を引きずり込んだ斉藤が
操縦席に座るルルに叫んだ。
「出ます!」
既にあちこちが火を吹いているプロポーズから
何とか脱出艇は飛び出して行った。
- 482 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:08
- 平家達が脱出してから少しすると遂にプロポーズが大爆発を起こした。
「ああっ・・・」
消え行くプロポーズをメンバーが呆然と見ていると
「ちくしょー!これで終わりだと思うなよ!」
柴田はそう言うとルルの隣のシートに滑り込んだ。
すると斉藤もそれに従い動きだす。
「フリージア2よりケメンダヤスへ。作戦続行!」
柴田はそう言うとボーっとしているメカニックメンバーに叫んだ。
「何やってんの?後ろにバトルポッドがあるからさっさと行って来い!」
この脱出艇は見かけの割には中が狭かった。
みると後ろの方に扉が見える。
- 483 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:09
- 「ちょっと柴田。解る様に説明してよ」
訳の解らない平家は柴田に聞く。
元々この脱出艇は柴田と斉藤がアレスから持って来た物である。
そして名前がフリージア2。そうこの機体はアレスにある訓練艇フリージアの
後継機なのである。小型ながらその戦闘能力は航路監視隊の警備艇に匹敵し
後部の格納庫にはバトルポッドも搭載している。
「諦めないで行きましょう。まだ終わってませんよ」
柴田の説明が終わると平家は頷く。
「バトルポッド隊出撃!簡単にやられるな!」
その言葉にフリージア2のバトルポッド隊6機が飛び出して行く。
保田達に合流すると戦闘を開始した。
「こっちも負けてられないよ。攻撃開始!」
斉藤はそう言うとミサイル攻撃を開始する。
更にはフリージア2の機体内部に収納されていたレーザーカノンが姿を現す。
- 484 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:09
- 「目標補足・・・・発射!」
レーザーカノンが敵艦に向かって放たれる。
「・・・駄目か・・・・あまり効果はないみたいだね」
残念ながらフリージア2のレーザーでは敵艦に致命的なダメージを
与える事が出来なかった。
「レスラッテ+よりフリージア、補給は・・・無理・・・?」
「辻ちゃんごめん。余裕はないよ」
辻の連絡に斉藤が悔しそうに答える。
「解った。まだ何とかなるけど・・・うん頑張ってみるよ」
「お願い」
辻の言葉はそのまま戦闘機に乗っているメンバーの言葉でもあった。
敵の艦載機こそかなり叩いてはいるが肝心の戦闘艦の方には
まったくと言ってほど攻撃ができていない。
こちらは消耗するばかりである。
言葉には出さないでいたが攻撃手段がなくなるのは時間の問題である。
- 485 :名無し狩人:2004/04/28(水) 21:10
- 「・・・・・逃げると言ってもこれじゃあね・・・・・」
平家は考えた。この状況を打破できる策はないのか・・・・
こちらは消耗するばかりだ。フリージア2も被弾こそしていないが
いつやられるか解らない状況である。
みんなで無事に生きて帰る方法悩む平家・・・そんな時である。
フリージア2のレーダに反応があった。
「レーダに反応・・・・ピースドライブを終えた艦艇が現れたようです」
「新手か・・・」
「・・・いえ・・・・平家さん!マルス2とガスプラです!」
そこに現れたのは連邦軍戦闘艦マルス2。
そして本物の戦闘艦ガスプラであった。
- 486 :名無し狩人:2004/04/28(水) 23:08
- 「ピースドライブテスト終了。現在地天王星付近」
マルス2オペレーター石川梨華がテストの終了を告げる。
「コンディションオールグリーン。航海に問題なし!」
航海班の前田有紀は船体に問題が無い事を告げた。
「これでテストは終了だね。連続でのピースドライブも問題無いみたいね」
マルス2艦長の安倍なつみは安心した様に呟いた。すると
「レーダーに反応。三時の方向・・・・戦闘中の艦艇があります」
「総員戦闘準備!梨華ちゃん。情報収集急いで!」
「了解!」
火星衛星基地アレスの戦闘艦マルス2とガスプラは
新しく搭載されたハローエンジンの性能を確かめる為
連続でのピースドライブテストを行っていた。
そしてテスト終了と共に平家達が戦っている空域に姿を現したのである。
これは偶然の一致なのであろうか?
「戦闘中の艦艇の識別が確認出来ました。一方はまったくの所属不明ですが
もう一方は・・・・大変!フリージア2ですよ!」
石川の報告に安倍は慌てて指示を出した。
- 487 :名無し狩人:2004/04/28(水) 23:09
- 「砲門開け!目標所属不明艦隊!当艦はこれよりフリージア2の援護を開始する」
安倍の声にブリッジに緊張が走った。
「レッド隊順次発艦して下さい。攻撃目標は所属不明艦隊です」
「レッドリーダー了解!」
石川の指示に答えたのは後藤真希。後藤は保田がいなくなってから
レッド隊のリーダーを任されているのである。
「レッドリーダーより各機へ。味方機を攻撃するなよ!」
「ケッカー了解!」 「スコロンダ了解!」 「ゴロMAX了解!」
後藤率いるレッド隊は素早く戦闘空域に斬り込んで行く。
「フリージア2より、マルス2へ。ありがとう、助けに来てくれたんだね」
マルス2に平家から通信が入った。
「マルス2よりフリージア2へ、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。プロポーズやられちゃったよ」
平家の言葉に石川の表情が曇った。プロポーズと言えば戦力は
マルス2とさほど変わらない。むしろマルス2より性能は上の筈である。
「安倍です。平家さん敵の戦力は?」
「解らないよ。1対5であっという間にやられちゃったから」
敵の戦力はまったくの未知数。しかも数はこちらより多い。
テスト航海でいきなり戦闘に巻き込まれた安倍の脳裏に不安がよぎっていた。
- 488 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:48
- 「シルバーリーダーよりマルス2、フリージアの艦載機隊は何機?」
ガスプラ艦載機隊リーダーの福田から通信が入る。
「すいません。えーと・・・フリージアのバトルポットは6機です・・・
それから・・・プロポーズの艦載機が・・・・現在7機・・・計13機です。
リーダーは・・・・え?ケメンダヤス・・・・何これ?」
石川は現場に保田がいることなど当然知らない。
更には田中、道重、亀井、村田、予想もしていないメンバーの
識別コードが飛び交い混乱している。
「ちょっと梨華ちゃんしっかりしてよ!プロポーズ隊のリーダーは?」
シルバー隊リーダー福田明日香は混乱している石川に喝を入れた。
「ごめんなさい・・・・えーと・・はい大丈夫です。
プロポーズ艦載機隊はよく解んないですけど保田さんが指揮してる様です」
「シルバーリーダー了解!」
情報が交錯する中なんとか石川は全てを把握し始めた。
現在の状況その他諸々・・・・
- 489 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:49
- 「マルス2よりケメンダヤスへ、保田さんですよね?ここにいる理由は後で聞きます。
今はレッド隊と合流して敵艦に攻撃をお願いします」
「ケメンダヤス了解!石川・・・成長したね」
「ありがとうございます。えーと・・・稲葉さん聞こえますか?」
「あいよ」
「石川です。稲葉さんはプロポーズ隊の指揮をお願いします。
これからガスプラのシルバー隊がそちらに向かいます。
到着次第レッド、シルバー両隊のバックアップをお願いします」
「了解や!」
マルス2の参戦により艦載機隊は陣形を組みなおすと
新たな攻撃隊形を作り始めた。
「敵艦載機フリージアに接近!」
マルス2の大木がフリージアへの敵機の接近を知らせる。
「グリーン隊、フリージアのバックアップをお願いします」
「グリーン3了解!」 「グリーン4了解!」
マルス隊の自艦防衛部隊グリーン隊。
里田まい搭乗のノンクラクション、そして斎藤美海搭乗ホカノドーガ。
二機の戦闘機はフリージアを護衛すべく出撃する。
- 490 :名無し狩人:2004/05/02(日) 00:49
- 「マックゴルドよりケメンダヤスへ。攻撃の指示を願います」
「・・・・自分で考えなさい」
「えっ?」
レッド隊と合流した保田に、レッドリーダー後藤は昔の様に指示を仰ぐ。
しかし保田の答えは「自分で考えろ」であった。
「後藤、もう私はあなたの上官じゃないんだよ。今のレッドリーダーは後藤でしょ。
だったら私が従うよ。レッドリーダー、指示をお願いします」
「・・・・・レッドリーダーよりレッド隊各機へ、Wフォーメーション!」
保田の言葉に後藤が出した指示は、「Wフォーメーション」
この陣形はリーダー保田時代からレッド隊が得意とする
必殺のフォーメーションである。
- 491 :名無し娘。:2004/05/02(日) 01:11
- 更新お疲れ様です。前のもそうだったけど艦隊戦は特に好き。
- 492 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:17
- 「レッドリーダーよりシルバーリーダーへ、援護をお願いします」
「シルバーリーダー了解!」
既に敵艦隊を射程圏内に捕らえていたレッド隊は
攻撃の為、更に敵に接近する。
「レッドリーダーより前衛三機へ、攻撃開始!」
後藤の指示で吉澤のケッカー、アヤカのスコロンダ、小川のゴロMAXが
突破口を開く為、敵艦隊の護衛機に襲い掛かる。
「レッドリーダーよりケメンダヤスへ、突っ込むよ」
「了解!」
吉澤達が作った突破口から後藤と保田が敵艦隊に襲いかかった。
「ロックンロール!」
後藤と保田はほぼ同時にこう叫ぶと、対艦ミサイルを放つ。
ミサイルは敵艦隊で一番前に出ていた戦闘艦の艦橋を破壊した。
- 493 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:17
- 「各機、全速反転離脱する!」
後藤の声にレッド隊のメンバーは機首を反転させると敵艦隊の前から
一気に飛び去って行った。
「シルバーリーダーより各機、攻撃開始!」
レッド隊からすぐに、間髪を入れず福田のシルバー隊が攻撃を開始する。
「うちらはバックアップやで。ええか?」
稲葉を先頭にプロポーズ艦載機隊が敵艦載機隊に襲い掛かる。
田中、道重、亀井、村田は敵艦隊の弾幕をぬって次々に敵機を叩いて行った。
「レッドリーダーよりマルス2へ、これより補給の為帰艦する」
「マルス2了解!」
敵艦隊に最初に攻撃を仕掛けたレッド隊はかなりの消耗をしていた。
残弾も残り少ない為マルス2に補給の為、戻るのである。
「至急補給お願いします。すぐに出ます!」
マルス2に帰艦した後藤はカタパルトデッキにいたメカニック
大谷雅恵に声をかけた。
- 494 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:18
- 「OK、すぐにやるから・・・」
大谷はそう言うとメカスタッフに指示を送る。そこに保田がやってきた。
「大谷ちゃん、元気だった?」
「保田さん!どうしたんですか?」
予想もしていなかった保田の登場に大谷は驚きを隠せない。
一瞬固まっていたが保田の簡単な説明で現状を理解した様である。
「事情は解りましたけど・・・保田さん大丈夫なんですか?」
「何が?」
「だって、しばらく戦闘はやってないでしょ?ブランクもあるだろうし」
大谷はしばらく軍から離れていた保田を心配している。
- 495 :名無し狩人:2004/05/04(火) 02:18
- 「大丈夫だよ。戦闘はしてなかったけど、腕は鈍ってないよ」
「そうですか。なら良いですけど」
「それより大谷さあ、このSF−22って乗りにくくない?」
「そんなこと無いですよ。SF−22は軍の主力戦闘機ですよ」
「でもしっくり来ないんだよね」
「うーん・・・機体との相性なのかなぁ・・・・あっ!そうだ!」
大谷は何かを思い出した様に1人のメカスタッフに声をかける。
「7号リフト下ろせ!」
大谷がそう言うとデッキの奥にあるリフトが動き出した。
ゆっくりと動くリフト。見ると戦闘機が一機乗っている。
連邦軍型式SF−14S。SF−14戦闘機の強化タイプである。
そしてその機体の機首にはローマ字の「K」を象ったエンブレムが
「大谷!」
今度は保田が驚きの声をあげる番である。
「K」のエンブレムが描かれたSF−14Sと言えば連邦軍ではたった一機しかない。
旧レッドリーダー「レッドワン」
そうこの機体こそ正真正銘の保田の愛機「ケメンダヤス」なのである。
- 496 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:46
- 「またこいつに乗れるなんて思ってもみなかったよ」
懐かしい愛機のコクピットに座る保田は笑った。
「何もかも昔のままですよ。それじゃあ行ってらっしゃい!」
補給が終わり再び出撃するレッド隊。
保田は愛機の操縦桿を握ると言った。
「ケメンダヤス出ます!」
マルス2より飛び出したレッド隊。
「攻撃目標セットアップ完了・・・」
機体を乗り換えた保田は全てのデータの入力を終える。
そして
「レッドリーダーより各機、まずは近くにいる敵機を叩く。
それが終わり次第シルバー隊のバックアップに入る」
保田の突然の指示に本来のリーダーである後藤は一瞬躊躇ったが
何も言わずに指示に従う。
- 497 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:47
- それは他のメンバー同じであった。保田が先程後藤に言った事に
あえて突っ込みを入れる事もなく指示通り動き始めた。
一方こちらは敵艦隊の旗艦の中・・・・
「連邦軍もなかなかやるな・・・どこの部隊だ?」
そう言ったのは「キオナ・ザワーショ」・・ウィラポーンの総帥である。
「あれはマルス2とガスプラ・・・・アレスの戦闘艦の様です」
「ガスプラ・・・?なんとも良いタイミングで現れたな。
それにマルス2か・・・すると連中は例のアンドロイドの・・・」
「はい、ユリシーズを叩いた連中です」
「そうか・・・そうなると面倒だな」
キオナは表情を変えず淡々と話をしている。
しかしその言葉からはマルス隊が簡単な相手では無いと言う
認識を持っている事がうかがい知れた。
「今の戦力なら奴等を叩く事は出来るか・・・しかしこちらもただでは済むまい」
「撤退しますか?」
「そうだな・・・・」
キナオはそう言うと全艦に撤退命令を下す。
同時にあれだけいた艦載機隊が一気に引き上げて行く。
- 498 :名無し狩人:2004/05/05(水) 22:47
- 「なんだ?どうしたんだ?」
目の前の敵が急に引き返して行き保田は驚いている。
福田は突然の事に警戒しシルバー隊及びプロポーズ隊を敵艦隊から離脱させた。
そしてシルバー隊とプロポーズ隊が引き返した時である
ウィラポーン艦隊が保田達が叩いた一隻を残しピースドライブを開始した。
「敵艦隊ピースドライブに入ります!」
「えっ?急にどうしたんだろう・・・?」
突然の敵艦隊の撤退にマルス2のクルーは驚きの表情を浮かべる。
「一隻残ってますね・・・」
石川は敵艦が一隻残っている事に疑問を抱く。
だが安倍は躊躇いも無く主砲発射の指示を出した。
「発射!」
合図と共に放たれた主砲のエネルギー弾は残っていた敵艦を消し去る。
これによって特に問題が発生する事は無かった。
「急にどうしたんだろう・・・?」
「さあ・・・・」
明らかに劣勢の状況であったが敵艦隊は撤退をして行った。
いったい何故敵は撤退したのか・・・・
彼女達がその理由を解る筈も無かった。
- 499 :名無し娘。:2004/05/08(土) 18:02
- 良い感じだね
- 500 :名無し娘。:2004/05/09(日) 17:07
- 500
- 501 :名無し狩人:2004/05/10(月) 22:55
- 申し訳。ここで一旦切ります。
再開は・・・なんとも・・・はい・・・。
スマソ。
331KB
新着レスの表示
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50