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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3

618 :『リピート』:2007/06/28(木) 23:03

飛び抜けてインパクトのある声でもない。
言葉に説得力を持たせることもできない。
自分に足りないものが多いのは解ってる。
だから、今の僕にできるのは、その言葉に命を吹き込んであげることだけだった。
届けるべき相手へ、精一杯の心を込めて。

「ずっと…できるだけ一緒にいよう」
「せんぱいっ!」

619 :『リピート』:2007/06/28(木) 23:03

 ――え?

「あれ……?」
「こ、小春ちゃん……?」
「いま……? あのー」
「はい?」
「せんぱい、お一人ですかあ?」
「他に誰もいないでしょ?」

僕は突然飛び込んできた小春ちゃんへ、広いとはいえない楽屋を指し示す。
小春ちゃんはキョトンとした顔で、僕の手を追いかけるように右へ左へと特徴のある大きな目をキョロキョロさせる。

「ですよね。アハッ、アハハ……」

笑い声が尻すぼみに小さく乾いたものへ変わっていった。

「大好きだ。って、聞こえた?」
「あ〜……、そのお、……はい」

その目に動揺をありありと映しだして、どうするか迷った末にという風に認めた。

620 :『リピート』:2007/06/28(木) 23:04

「なにか勘違いしたわけね。これだよ」

テーブルの上へポイと放りだした薄っぺらい冊子。

「らじお、どらま……」
「単発だけど、やらせてもらえるなら頑張ろうと思ったからね」
「本読み、してたんですか」
「してたんです」
「小春はー……お邪魔しちゃいました?」
「そんなことないけど。ちょっと集中してたとこだったからさ」
「あっ、なら小春がお手伝いします!」
「え?」

これは名案だと。
心からそう考えていると表情が教えてくれる。

「こう見えても小春、声優さんもやってますからっ」
「そ、そうだね」
「せんぱいはもうセリフ覚えちゃってるんですか?」
「一応」
「じゃあ、これは小春が」

放りだした台本を手にした小春ちゃんはやる気満々なようで。
キラキラと瞳を輝かせてページをめくっていく。

621 :『リピート』:2007/06/28(木) 23:04

「はいっ、じゃあここからいきましょう」

ここから?
頭からやるんじゃないのって、そう尋ねようとした。
けれど。

「あっ」
「え?」

小春ちゃんの声に反応した僕の声。
なにか待ってる様子の小春ちゃんと目が合う。

「もう、せんぱい?」
「はい?」
「ここに、『男、女を抱き締める』って書いてありますけど」
「あぁ……。いや、ラジオだから、ね」
「ちぇっ。じゃあ、いいや。もう一回いきますよ」

残念そうにそう呟く小春ちゃんが、さっきと同じように「あっ」っと小さく声をあげる。
少しばかり心の中で『やれやれ』と零しながらも、なるようになれと覚えた台詞を口にする。

622 :『リピート』:2007/06/28(木) 23:05

「嫌なら振り解けばいい。そうじゃなけりゃ……」
「イヤじゃない。イヤじゃないよ」
「いいの? 私、好きでいいの?」
「ずっと、そうでいてくれればいいな」
「ごめんね。ありがとぉ。大好き」

拙いながらも互いに気持ちを乗せた台詞を交わし合う。
どこか悪戯めいたところを感じた小春ちゃんの台詞も真剣なそれに聞こえてきていた。

「俺も。一時メチャクチャなくらいに腹立ったけど……それって、それだけ好きってことだって。
 意地にならないで認めちゃえば、こんな……泣かせなくてもよかったのにって」

どちらからともなく“間”を取って、最後の台詞へ気持ちを昂める。

「もしかしたら、喧嘩もするかもしれないけど……それでもずっとお前がいいな」
「…うん、あたしも」
「ずっと…できるだけ一緒にいよう」
「せんぱいっ!!」

 ――え?

「絵里とゆーものがありながら――、小春とそんな……、あれ?」

今夜の本番に間に合うんだろうか……。

623 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/06/28(木) 23:08

ちょっとした悪戯をしてみたりして。
まあ誰も気がつかないでしょうからいいでしょ(笑)

>>610-615
確かに含みを持たせて終わらせましたが、拾ってもらえたのは嬉しい限り。
今回もごちそうさまでした。
影響……悪影響かもしれませんが(^_^;)

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