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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3

610 :名無し娘。:2007/06/26(火) 20:57

「もう、さゆ」

道重さんの誤解を解いてから、ほどなく。
亀井さんがやってきて、道重さんをたしなめた。

「ごめんなさい、せんぱい。さゆが早とちりで」
「いやいや」
「絵里あとで叱っておきますから」
「いやいやいや」

道重さんが悪いと決めつけるかのように、亀井さん。
案の定、道重さんが不満そうな表情で口を挟んだ。

「でもあれは誰が聞いたって──」
「違う、さゆが──」

…姉妹喧嘩、か。
久しぶりに見るそれは、ちょっと微笑ましくて。
心の中で謝りつつ、やり合う2人を眺めていた。

611 :名無し娘。:2007/06/26(火) 20:57

…しばらくして。

適当すぎた亀井さんの説明と道重さんの早合点。
2人の喧嘩は、両成敗ということでおさまった。
すっかり仲直りして、じゃれ合っている亀井さんと道重さん。

…もう少し、この空気を感じていたい。
そう思った僕は、このまま帰って行きそうな2人を
もう少し引き留めることにした。

「あ、そうだ」
「「はい?」」
「おいしいお菓子あるんだけど、食べない?」
「「食べたーい!」」

…双子みたい。
声をそろえる2人の様子に、また笑みがこぼれた。

「じゃあお茶入れよう」
「あ、さゆみ手伝います」
「絵里もお菓子あるんで。持ってきますね」

道重さんより少しだけ年上の亀井さんが、
そう言い残して自分の楽屋へ戻っていった。

612 :名無し娘。:2007/06/26(火) 20:58

「絵里うれしそう」
「うん」
「せんぱいのおかげですね」
「お菓子の、の間違いじゃない?」
「…違うの」

首を横に振る道重さん。何が違うんだろう。

「これから言うこと、絵里には内緒で」
「あ、うん」
「最近、ちょっと心配してたんです」
「…亀井さんのこと?」
「はい」
「様子がおかしかった?」

道重さんが頷く。

「話してるときは、いつもと変わらなかったんですけど」
「うん」
「1人のときとか。見てると、寂しそうにしてて」
「………」
「何かあったのかな、って」
「………」
「それとなく聞いてみたり、考えてみたりしてたんですけど」
「………」
「結局、分からなくて」
「…そっか」

…道重さん、お姉さんしてるな。
年上の妹を気遣う道重さんの言葉を聞きながら、思った。

613 :名無し娘。:2007/06/26(火) 20:59

「でも、さっき絵里の話をちゃんと聞いて。はっきりしました」
「………」
「せんぱいが、原因だったんですね」
「………」

…そういうことに、なるんだろうか。

「絵里のこと、避けてません?」
「近くにいて欲しい」

亀井さんの言葉が、思い出される。

「…うん、そうかも、しれない」
「そうなんです」
「は、はい。そうです」

断定を避けた僕に、ちょっと不服そうな道重さん。
慌てて表現を修正した。

「せんぱい」
「うん?」
「…あの」
「うん」
「ホントに、絵里には内緒で」

念を押してくる道重さん。
今度は何だろうと思いながら、黙って頷いた。

614 :名無し娘。:2007/06/26(火) 21:00

「絵里の辛そうなとこ見るの、さゆみも辛いから」
「………」
「絵里のこと、ちゃんと見てあげて欲しい、の」
「………」
「お願い、します」

…これも、僕のせいなんだ。
真剣な顔で訴える道重さんを見て、胸が痛んだ。
それと。

…なんか、ちょっと泣きそうかも。
道重さんが、亀井さんを思う気持ちの強さが伝わって。
僕は関係ないけど、でも、とても嬉しかった。
そして。

「分かった…辛くさせちゃって、ごめん」

返す言葉は、これしか思いつかなかった。

615 :名無し娘。:2007/06/26(火) 21:00

「…それと」
「…うん」
「近くにいて欲しいのは、さゆみも同じだってこと」
「………」
「忘れないでいてくれると…嬉しいです」

2つめのお願いをするその口調は、ちょっと控えめだったけど。
亀井さんと同じ気持ちだということ。それは強く伝わった。
さっきの、取り乱した道重さんの姿を頭に浮かべながら。
大丈夫、ちゃんと届いたから、との思いを込めて。

「もちろんだよ」
「…はい」

笑顔で返事をしてくれた道重さんに、僕も笑いかける。
ちょっと潤んだ瞳が、とても印象的だった。

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