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【小説】チープなドラマ感覚で【みたいな】
- 1 :名無し娘。:2006/09/17(日) 19:57
- ハロプロ全般、上から下まで。
予定は未定で確定ではないけれど、書いていこうと思います。
『ヒロインx男』の形が多くなると思うので、好まない方はスルーでお願いします。
下の方でコソコソいきます。
レスしてもらえるなら喜んで受けます。
類似したものを書いてくださる方はどんどん書いてください。
- 158 :名無し娘。:2006/10/03(火) 21:01
- 寸止めきたこれ
- 159 :名無し娘。:2006/10/04(水) 21:39
- おお。意外と読んでくれてる人いるのねえ。
>>157
なくもないですよ。
相変わらず品質保証はないですけど。
>>158
寸止めしてみた。
やるならやれよって感じ? 多分そのうち。ヒロインは違うかも。
- 160 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:12
-
某番組の収録前、専用の静かな楽屋の中で、鏡の前に座る女性にメイクをしている。
「なぁ、あたしホントにコレでいいと思う?」
メイクの途中、シャドウを塗られる為、軽く瞼を閉じながら彼女が聞いてきた。
俺は目を閉じた彼女に、薄く丁寧にシャドウを重ねていきながら聞き返した。
「はい? 何がですか? このシャドウ気に入らないです?」
「ちゃうちゃう。だからなぁ、あたしの現状の事に決まっとるやん。
付き合い長いんやから、それ位察しぃや! それと、なんでまたそんなかったい言葉遣いなん?」
「いや、今は仕事中ですから。こっちも一応プロですからね。
プライベートでメイクやらせてもらってるわけじゃないんで、公私のケジメってヤツですね」
意図的にいつもの仕事時よりも、他人行儀に事務的な口調で答えてみた。
返ってくる答えは予想できるんだけど、これも手順の一つってものだろうと思う。
- 161 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:13
-
彼女との付き合いは結構長く、やっとこの仕事になれてきた頃のこと。
彼女等がデビューして間もない頃、メイクを担当する機会があったのが初めての対面だった。
その後も幾つかの偶然と僅かな必然でメイクを担当する機会があり、少しずつ色々な話をするくらいの仲になっていった。
一度だけだがツアー時のメイクとして帯同させてもらったこともある。
「そんなん構へんやん。相変わらず変なトコで堅いんやから……
二人しかおらん時は普通に喋ってくれん? っていうか普通に喋れ」
あまりにも予想通りの返事に笑いだしそうになったけど、コレもいつものことだ。
「め、命令ですか? ……まぁ、いいか。じゃあ普通にやらせてもらうわ。
で、なんだっけ、中澤の現状? あ、次は唇やるんでちょっと喋らないでな」
言いながら、彼女の唇へ口紅を塗り始める。
「んぁ、答えろや!」
「はいはい、やりながら話すから……はみ出すっ! 動くなってば」
- 162 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:13
-
初めて会った頃から変わらぬ、時々出てくる子供っぽさに、ついつい苦笑いを浮かべてしまう。
口紅を塗る手は休めず、逆に自分の思うことを問いかけてみる。
「悪くはないんじゃないの? そりゃあ昔みたいに忙しない時間じゃないだろうけどな。
でもまだ歌えてる。だろ? 不満かもしれんけど、らしく頑張ってりゃ大丈夫だと信じろよ。
それとも……不満じゃなくて不安か?」
唇を仕上げながら彼女の表情へ目をやると、その言葉が当を得ていたことが明白なようでいて、
彼女の仲で確信があるわけではない、そんな微妙な表情を浮かべていた。
「ふむ……はいOKね。 で、そんな感じあるの?」
「ふ〜ん、やっぱプロなんやね、自分でやるのと仕上がりちゃうわぁ」
「ど〜も」
「…………」
「どしたね?」
彼女は黙り込んだまま眉間に皺を寄せ考え込むような、
それでいて自分の心の奥にある何かと向き合うかのような表情で話し出した。
「不安? うん、自分でもなぁ……よぉわからへんのよ……ホンマんトコ。
そりゃああんな忙しさはありえへんのは解ってるしなぁ。でも……」
- 163 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:14
-
そこで言葉を切り、俯いた。
どうしてそんな気持ちになるのか、何処に原因があるのかどうしても答えにたどり着かずにいて。
そんな自分が…自分の事が解らないことがもどかしくて困惑しているようだった。
「……でも? 」
「……はははっ…なんやろなぁ」
沈みがちな雰囲気を振り払いたいのか、声を出して笑ってはいたが、その笑いは無理に作られたものであることは、あまりにも明らかで。
なんと声を掛けたらいいのか迷っていたとき、楽屋の扉がノックされた。
「中澤さん、本番お願いしまーすっ!」
言われた彼女は気持ちを切り替えるためか、両手を組み大きく伸びをする。
- 164 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:14
-
「ん〜〜〜! ほな行ってくるわ。今のは忘れてな」
――忘れてって言われてもな……
「なぁ、今日何時終わり?」
「ん? あ〜、ちょっと遅くなる思うけど?」
「ま、何時でもいいわ、終わったら電話くれ。ちっと酒付き合え」
「なんやねんな、それ…」
「いいだろが、なんだって。待ってっからな、じゃ俺も次行くから」
無理矢理に約束をして楽屋の扉を開け通路へ出る。
中で何かブツブツ言ってるようだが、聞こえない振りをして出てきた。
- 165 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:15
-
…………
- 166 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:15
-
『今終わったわ。 で、どうするん?』
「おう…って、ホントに遅いのな。今から飲める店だと…」
『ほんならウチきたらええやん?』
「ん〜、そうすっかなぁ」
『散らかってるけど、別に構へん?』
「ああ、全然。じゃあ今からそっち行くわ」
- 167 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:15
-
…………
- 168 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:16
-
「「乾杯〜」」
互いに缶ビールを一気に呷って一息ついた。
どこから話そうか考えている間に、彼女の方から切り出してきた。
「で、なんか話あるんやろ。わざわざ遅くまで待ってくれて…何やの?」
「何って……今日の話の続きだわ、すっきりしてないっしょ?
っていうより、俺の方がすっきりしてないんだな」
「はぁ、やっぱりそれなん? なんで? もぉいいって…忘れて言うたやんか」
言いながら二本目に手を伸ばす。
どう考えても気を遣って言ってるようにしか見えない。
そんな気を遣われても、あんな表情見せられて納得いくわけがない。
「ふざけんなっつーの、あんな顔して話されて忘れろって?
無理だね、そんなん。ほれ、諦めて言え、お互いにすっきりすんぞ!」
- 169 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:16
-
顰めっ面していたのが苦笑いに変わり、観念したかのような溜息と共に彼女は話し出した。
「だから言うたやん、自分でもよくわからないんやって。わからんもん、どうしようもないやん?」
「でも不安なんだろ?」
「……多分、そうなんやと思うけど」
互いに新しいビールを開けながらも話し続ける。
俺は何となくだが、彼女の不安の理由に気が付き始めていた。
「あのな、あの後しばらく考えててさ。
中澤に会う前…だから八年か九年くらい前だと思うんだけど、ちょっと似たような話聞いたことあるんだわ。
詳しくは言わんけどアイドルさんのメイク担当したのさ。
その時、歳が近かったせいか、割とよく話してなー、その娘も今の中澤みたいなこと言ってた」
彼女はビールを飲む手を休め、神妙な顔で俺の話を聞いていた。
- 170 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:16
-
「その娘と色々話したときには、その不安の原因は『ファン』だったらしいよ」
「ファン? 自分の?」
「そうその娘のファン……本当に『自分』を見ているのかどうかに自信がもてなくなったって。
その娘も元グループでやってた娘で、TV出ててもライブしてても自分を見るファンの眼に
グループだった自分を見てるような気がしてどうにもならないんだと、どう思う?」
「どうって……」
そう言ったきり、彼女は俯いてしまう。
まだ彼女の中にある核心には触れてない。触れたからといって、それがなんになるのか。
結果がどうなるかに自信があったわけではなかったが、切り込んでみなければ解らないこともあるだろう。
「ひょっとして中澤にもそんな感じあるんじゃないかなっと思ってさ」
「…………」
「あるんだ?」
「もしもそうなんだったら、どうしたらいい? その娘はどうやって解決したん?」
- 171 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:17
-
――やっぱりソレ聞かれるよな……
そう聞かれるであろう事は解っていたが、話し出してしまった以上続けなければならないだろう。
「……しばらくしてから、アイドルである自分を全然知らない男と結婚した」
「やめてもうたん?」
「ああ、やめたよ」
はっきりと言いきった俺の言葉に、彼女はまた俯き聞き返してきた。
その声に僅かながら何かの感情を押し殺してるような気配が感じられた。
「あたしにもやめろって言いたいんかなぁ?」
「そんなん言わないよ、俺がそんな事言うわけないだろ。中澤が歌うの好きかも知ってるし……俺は…」
最後まで言い切る前に彼女が言い返してくる。
その声が僅かに震えていた。
「せやけど、その娘はそうやって解決したんやろ?」
- 172 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:18
-
少しばかり感情的になってきてる彼女の声に、引きずれないように視線を落とし極力優しく聞こえるように話す。
「その娘と中澤じゃ違うと思うんだ」
「どう違うん? 同じだと思うたからその話したんやろっ?」
「俺は『似たような』って言ったんだ。似てるだけで同じだなんて言ってない」
抑えていた感情が積み重なって、少しずつ溢れてきているように、声のトーンが上がってきている。
視線を上げて顔を見つめるとブラウンの瞳がにじんで揺れていた。
それを見てしまった俺は、より一層心を抑える努力をした……が。
「違わへんよぉ……うちも心ん中で『娘。』だった頃引きずってるのかもしれんやん。
自分でそう思ってるくらいやもん、うちの事好いてくれるファンの子らかて、そう思ってるに決まってるやん」
「…………」
「なんで黙ってるん? なんか言ったらええやん」
「だから……中澤のファンなんだから、そりゃあモーニングん頃から好きなファンだっているだろうし。
逆にソロになって好きになってくれたファンだっているだろ? ……俺だってそうだわ、ファン歴長いぞ。
でも、ちゃあんと娘。を卒業したソロ・中澤裕子として好きだしな」
- 173 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:18
-
本人を目の前にしてこんなこと言う羽目になるのは気恥ずかしかった。
照れ隠しに落としていた視線をそっと上げて彼女の反応を見てみた。
掴んだ缶に視線を落としたままで、ジッとしたままなんの反応も見えない。
ホンの少しだけ下から覗けるように体勢を変えてみる。
そこから覗える顔に赤みが差してるのは酒のせいだけではなさそうだった。
「…………」
「なんか言えよ。 二人で赤くなってどうすんだよ」
「だって……今までそんな事言うたことなかったやん」
「言えなかったんだよ、んな……照れくさくって」
「……何時から?」
「仕事で初めて会った時から」
「ず〜っと? 今も?」
「ああ、ず〜っと。今も好きじゃなきゃ、それこそ言わんわっ!」
「……好き? …………ただのファンとしてだけなん?」
- 174 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:19
-
小さな声で、答えを聞くことを怖がるかのように彼女はささやいた。
そこまで言われてからやっと、俺は最後の一線まで踏み込む決心をした。
「ん、中澤裕子って芸能人じゃなく、一人の女性としても………好きだ」
「……そっか」
彼女は眼を閉じて俯き、そっと一つ息を吐いた。
そしてゆっくり瞬きをしながら顔を上げ、俺の眼を見つめた。
しばらく見つめ合った後、そのままの姿勢で再びそっと瞼を閉じた。
「裕子……」
俺は初めて彼女を下の名で呼び、そっと抱きしめて……唇を重ねた。
- 175 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:19
-
彼女が感じている不安を少しずつ取り払っていくように、慎重に…優しく。
互いの唇が触れるだけの、ソフトなキス。
時間を掛けて徐々に彼女の中へと舌を絡ませていく。
「ん……ふぅ…」
ゆっくりと身体を傾けて、彼女を仰向けに寝かせながらキスを続けていく。
服の上から彼女の華奢な身体のラインをなぞると、微かに身じろぎするような反応が返ってくる。
背中に廻した手を細い首筋へ、そして決して大きくはないが、柔らかい胸へと手を下ろし優しく揉みしだく。
「んぁ……んん……」
彼女の反応を確かめつつ、右手で胸を揉みながら、左手で服のボタンを外していく。
ボタンを外した左手をブラの中へと滑り込ませる。先端の突起を避けるようにして。
「あぁん、くっ……ん……」
- 176 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:20
-
固くなったその部分に触れるか触れないか微妙ところを刺激し続ける。
「ぁん! ……ねぇ……はぁ……」
焦れてるような恨めしそうな眼で訴えてくる。
解っているけど、その仕草が可愛くて苛めたくなり聞き返した。
「なに? どうして欲しいの?」
「……ん、もぉ、わかってやってるくせに……んんっ!」
「うん、わかってる……苛めてみたかったんだ」
「あぁ……もぉ……ねぇ」
「ごめんごめん」
一瞬だけ先端を掠めて、また遠ざける。
「くぅん……そんなん…あ、あんっ……」
- 177 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:20
-
空いてる手でブラをずらし、舌での刺激も加えてみる。
そして脇から腰をなぞり、意外にふっくらしたお尻を撫でる。
「んぁぁ――、はぁ……もぉ……苛めんでぇ…………お願いぃ!」
指で軽くつまむと同時に、反対の乳首も口に含み舌で転がす。
「あはぁっ! んんーーっ! ……くうっ! 」
焦らされた分、過剰なまでの反応で身体全体がビクッっと跳ねる。
「あ…あん……いや…う…、くぅ、もう……」
「いや? もう?」
片手で胸を刺激しながら、舌を胸から少しずつ舌へと這わせていく。
腰から足まで、ピッタリしたラインに沿って伸びているズボンのボタンを外しパンティーを露出させる。
もう、すっかりソコは濡れていた…ともすればパンティーの上からでも、その形が解るくらいに。
スゥーっとソコをなぞるように指を動かす……不意に強く擦りつける。
「やっっ……あっっ! はぁんんっっ!!」
- 178 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:20
-
突然の激しい刺激に彼女は軽く達したようだった。
少しふわついた感じになっている彼女の腰から、そっとパンティーをおろしていき、舌でそのラインをなぞるみたいに小刻みなリズムで刺激し始めた。
「ああっ、あっ、あ――――っ、あっあああん、ああん…」
その舌先が、一番敏感な突起に触れるたびに彼女の腰が跳ね上がる。
紅玉みたいに大切な宝石を、唇で挟み舌先で軽く突く。
「んんぁぁ! ……お、お願い……もぉ…」
「……仕方ないなぁ」
とは言いつつも、彼女同様こっちも我慢しきれなくはなっているのも事実。
要望に応える振りをして一気に貫くことにさせてもらった。
自分の先端を彼女の秘所にあてがって、ささやくように問いかける。
「いくよ?」
「あん、は、早く……」
- 179 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:21
-
期待通りの反応が嬉しくて、それでもゆっくりと……浅めに挿入していく。
「はぁっ、はぁぁんんぅ……あぁ、んっ!」
浅いところでゆっくり出し入れを繰り返す……
「はぁん……あぁぁ」
不意に深く押し込んでみる。
「ひぁん、んんー、イ、イイ、もっと……してぇ」
浅く浅く……リズムが単調にならないようにしながら時に深く……
「うああっ、くうぅ‥‥お、奥に当たって‥‥はあんっ!」
そうしているうちに彼女の中の締め付けが、かなり激しくなってきた。
- 180 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:23
-
彼女の全てを感じるように奥へと入り、弧を描くように動かしては、深く突く。
「くっ! そろそろヤバイかも……」
そう言いながら腰を引こうとすると、拒むように強く締め付けられ、細い腕が俺の背中へ廻された。
「あ、ん……中で……あふぅ……だ、大丈夫だから……」
言われて彼女の目を見つめる……本気、のようだった。
「ん、わかった」
「あ! はぁ……あ、あたしも……もう……あああっ! い、一緒に……」
「ああ、一緒に」
彼女の細い身体を抱きしめながら、一層激しく突いていく。
「はっん……あぅ……ん、イッ‥‥」
「んっ‥俺も‥‥イきそう」
「ダメ……も、もぉ、…んあああぁぁぁ〜〜〜!!」
- 181 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:23
-
…………
- 182 :『Make-up』:2006/10/04(水) 23:24
-
「ふふふっ……」
「なにが可笑しいんだよ」
「……裕子やて」
「いいじゃんよ、そう呼びたくなったんだからさ」
「裕子なんて呼ばれたの久しぶりやわぁ」
「……そうなの?」
「うん、え〜っとなぁ……矢口以来」
言ってから、裕子は自分の言葉にさも可笑しそうに笑った。
「やぐっちゃん? ……俺はあんな小っちゃくないぞ」
「せやね、確かに小っちゃなかったわ」
「……何がだよ」
「……ナニがやろ〜ね?」
言ってから裕子は小さく笑った。
……なんて事言いやがるんだ。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
そして二人揃って少し赤い顔して笑い合った。
どうやら、これからはプライベートでも彼女のメイクを担当することができそうだった。
- 183 :名無し娘。:2006/10/04(水) 23:26
-
エロ。
昔書いたのをチョロッと焼き直しただけだけど。
こんなんでもいいのかな。
書いたのは卒業して少しした頃だったなぁ……懐かしい。
激しい拒絶とかなければ、またそのうち。
ではでは。
- 184 :名無し娘。:2006/10/05(木) 12:31
- コテハンつけないの?
- 185 :名無し娘。:2006/10/05(木) 12:36
- これまだ続くのかな?
- 186 :名無し娘。:2006/10/05(木) 19:41
-
……連投?(違)
>>184
コテハン? ……実はコテハンも持ってるんだけど。
なんとなくコッソリやってみてた。
>>185
「あるよ」
なかざーさんの続き。需要あるのかな?
- 187 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:48
-
久しぶりに逢ったってのに……今日こそと思っていたのに。
なんでこんな事になったんだろう。
憎たらしくなる程に丈夫そうなマンションの扉を前に、頭を抱えながらそんな事を考えた。
- 188 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:48
-
…………
- 189 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:48
-
互いのスケジュールがなかなか合わず、顔を合わすことすらも久しぶりだった。
仕事上の付き合いから友人に、そしてそういう関係になってからも変わらない距離感。
二人の間にさして変化は生じず、今でも半ば飲み友達のような間柄のままでいた。
その日は通い慣れた静かなバーで、軽く喉を潤してから裕子──中澤裕子──のマンションで俺が食事を作る。
それからゆっくり飲み直して……。
そんな予定だったんだが……。
カウンター席に並んで腰掛けて、裕子はビールをグイグイと。
俺は車で来ているため、最初の一口だけは付き合って、後はアイスコーヒーで我慢している。
裕子が化粧室へ立ったとき、何気なく見回した店の片隅で、一人の女がジッとこっちを見ているのに気がついた。
見覚えが……あった。
が、しかし、それは今この場所では思い出さない方がいい、あまり好ましくない記憶だった。
- 190 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:49
-
こちらが思い出したことに気づいたらしく、女が席を立ち、ゆっくりと歩み寄ってきた。
思わず心の中で舌打ちする。
その女が近づいてくるにつれ、強い化粧の匂いが鼻を刺激する。
女を意識しすぎた表情で妖しく微笑みながら肩に置かれた手の先で、センスの良くないネイルが光っていた。
俺の肩口に顔をよせ、しばらく一方的に囁いた後、チラッと視線を移した。
そうかと思ったら、ぐっとすり寄るようにしてから身体を離しざま媚びるような口調の言葉を残していった。
「またお店の方に顔出して下さいね。前の分もサービスしますから」
その去り際の態度は妙に意図的なモノを感じた。
ハッとして離れていく後ろ姿に目を遣ると、その向こうに裕子の姿があった。
- 191 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:49
-
──やられた……
裕子の両眼がスゥッと細められたのが解った。
聞き逃してくれてればとの淡い期待は、その瞬間に粉々に砕け散る。
立ち去る女の後ろ姿に一瞥くれるように首を巡らせた裕子の表情がどうなっているのか、想像して背筋に冷たいものが走った。
俯き加減にゆっくりと戻ってくる裕子は、わざとらしい咳払いを一つして椅子に座った。
「誰?」
顔を上げた笑顔の裕子が短く一言発した中に、底知れない恐怖を感じるのは俺だけじゃあないはずだ。
そこから逃げるように――意図せずに――わずかにカウンター側に首を動かしてしまう。
「顔見て話ししよか」
あきらかに感情を抑えた一言。
救いを求めるようにカウンター越しに目をやると、グラスを拭きながらも様子を窺っていた視線が逃げていくところだった。
- 192 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:50
-
「で。誰?」
同じ問いをもう一度されてしまい、もう逃げられない……そう思った。
気のせいだろうが横を向き直った首が、軋むような音を立てた気がした。
「あ〜……」
「正直に言ってみよか」
崖っぷちにジリジリと追い立てられている気分だった。
「少し前、仲間に誘われて……」
「誘われて?」
「いや、待て。断ったんだぞ。俺はイヤだって……」
「どこ行ったん?」
「え〜……」
嘘をついても逃げ切れる自信がない。
しかし正直に言えば、まず逆鱗に触れること請け合いだ。
本当のことを言って、信じてくれる状況にもないように思える。
- 193 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:50
-
「ん?」
……急かされた。
「ふ……」
「ふ?」
「……某風俗店へ」
「ほうほう。行ったんや」
「……行きました。いや、でもあれだ! なにもしてないぞ? 信じられないかもしれんが、本当に」
「へぇ〜……」
なんて重い『へぇ』なんだ……TVではあんなに連呼されてるってのに、この『へぇ』ときたら。
「信じて、ないな?」
「別に〜。アンタが何しようがアタシに関係ないしぃ」
「ま、待て。本当だって――」
「まぁまぁ。ええやん。とりあえず飲んだら」
「うっ……」
口調の気安さが、逆に俺の気を重くさせてくれたもんだ。
- 194 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:51
-
沈黙に包まれながら、アイスコーヒーを一口含むと、隣でダンッとグラスを置く音が響く。
「さっ、帰る」
グラスを置いた裕子は、俺をちらりと見たっきり、待とうという気も見せずに歩き出した。
小さくため息をついた俺は、財布を取り出して会計を済ませた。
「……じゃあ、また来るわ」
「はい。あー、頑張ってくださいね」
「同情するくらいなら助けてくれ」
「そう言われても……謝ってご機嫌取るしかないんじゃないですか」
「悪いことしてないんだけどな……ま、仕方ない。じゃあな」
「ありがとうございました」
店を出て停めてあった車に近づくと、それでも一応、一緒に帰る気はあるらしい裕子が車の左側にもたれていた。
キーを差し込み恭しくドアを開いてやると、「ありがとうございますぅ」とわざとらしくも仰せられた。
無言のままで車を走らせる緊張感に耐えきれず、ステレオのスイッチに手を伸ばしたが、何が流れたかも解らないうちに切られてしまう。
裕子のマンションへ向かう道中、俺が憂悶しどおしだったことはいうまでもないだろう……。
- 195 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:51
-
マンションの手前で裕子を降ろし、俺はマンションを素通りして少し離れた場所に車を停めて歩く。
いつもの手順、いつもの調子、いつもの……
が、開くはずのドアはいつまで待っても開く気配をみせない。
帰れということなのかとも思うが、それでも裕子の部屋のナンバーをコールする。
返事もないままにロックのはずれる音が聞こえた。
――……どうしたもんだ?
そう思いつつも帰るわけにもいかず、迷宮へ脚を踏み込む冒険者のような足取りで目的の地へ向かった。
頭の中でいくつもの言い訳をひねり出しながらエレベーターを降りると、左手にはすぐ目的の場所。
厚く閉ざされた鋼の扉が行く手を阻んでいる……。
などとRPGきどりで、いつまでもグズグズしてても仕方がない。
思い切ってインターフォンを押したが、しばらく待っていても返事が返ってこない。
- 196 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:52
-
ため息をつき、もう一度と腕を上げたそのとき、最後の扉が開かれた。
「なにしにきたん?」
「いや、とりあえず話を……謝ろうかな、と思ってみたんだが」
「別に謝られる覚えなんてあらへんよ?」
目も合わせようとしない。
参ったな……
「じゃあ」
「お、おいっ――」
無情にも閉ざされた扉は、俺の言葉を虚しく跳ね返してくれた。
しばしばらく考えて、もう一度インターフォンを押したが、もう反応する気もないようだ。
- 197 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:52
-
――さてどうしたもんか、よく考えろよ?
このまま帰るって選択肢は……今の時点ではあり得んな。
帰ってしまってもどうなるもんでもない。より悪くなるだけだろう。
インターフォンを押し続ける……ここに黙って居続ける……携帯で……ふむ。
もう一度インターフォンを押し、やはり反応のないことを確かめて、ポケットから携帯を取りだした。
アドレスからワンプッシュでコールするが、虚しく鳴り響くだけの発信音に電話を切った。
情けなくも嘆息し、メールに切り替えて文面を考える。
『とりあえず入れてくれ。ちゃんと話そう』
送信。
一つ思い出して、もう一度メールを打つ。
『入れてくれるまで帰らねぇ!』
送信。
さて、根比べなんざするつもりはないが……待ってみなけりゃどうにもならん。
現在……十一時過ぎか。
この踊りで岩戸が開くまで、話すべきことを考えよう。
- 198 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:53
-
…………
- 199 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:53
-
腕の時計に目をやると、時刻はすでに十二時になっていた。
座り込んだままで様子を窺うように腕を差し上げてインターフォンを押した。
目の上にかかった髪を払って一つため息をついた。
- 200 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:53
-
…………
- 201 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:54
-
どれくらい過ぎたろうと再び腕時計に目をやった。
そろそろ……一時になる頃だ。
のっそりと上げた腕でインターフォンを押そうとした。
――ん?
扉の向こうに微かな気配を感じた。
その瞬間、大きく開かれた扉に、危うく叩かれそうになるところだった。
開かれた扉の向こうで仁王立ちの裕子がぽつりと言った。
「近所迷惑やん。入りっ」
「あっ、おう」
さっさと室内へ消えていく裕子について部屋へと上がり込んだ。
- 202 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:54
-
さてどうしようかとリビングまでついて行くと、ローテーブルの上に数本の空き缶が転がっているのが眼に入る。
キッチンから姿を現した裕子は、転がっているのと同じ缶を手にしていた。
冷蔵庫から取り出してきた缶ビールを勢いよく開けた裕子の手から、冷えた泡を吹いた缶を奪い取ってやった。
「なにす――」
五百ミリの缶を一気に傾けてゴクゴクと飲み下していく。
捲し立てようと口を開いていた裕子が呆けたように俺を見ている前で、空けてしまった缶を握りつぶして勢いよくテーブルに置いた。
「っはぁ〜……悪かった。なにもしてないけど。怒らせたのは謝る。でも今日は話がしたかったんだ」
「……聞かん」
キッチンへ消えていく裕子の後を追うと、新たに取り出したんだろう缶ビール。
もう一度奪い取った。何度でもやってやる。
「あんなぁ……」
「聞けっ! 今日は……なぁ」
自分に勢いをつけるようにか、それともこの苛立ちを抑えるためにか、奪い取った缶を開けて一息に飲み干していく。
- 203 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:55
-
改めて口を開こうとしたとき、すっと伸びてきた裕子の手が俺の胸に当てられた。
意図が読めなかった俺がもう一度口を開くよりも早く、押し当てられた手に力がこもるのが解った。
バランスを崩して後ろに倒れ込むところ、なんとか頭を打つまいと力を込めたが、尻と背中を痛打した直後、頭の後ろでベコリと音が聞こえた。
「っつぅ〜」
痛みを自覚しながらも、音の正体が空き缶だったと気がついた瞬間、上から裕子が“降ってきた”。
細い方だとはいえ倒れ込むように覆い被されて、意図せずに口から呻きが漏れた。
「ぐふっ……っつう〜。なん――」
『なんだってんだよ』、そう言おうと開いた口は、最後まで音を出し切ることなく塞がれた。
淡いブラウンで彩られた裕子の唇で。
- 204 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:55
-
「んむっ……」
たっぷり一分ほども熱い吐息すら漏らす間もないほどに唇を重ね、言葉を交わすよりも濃密に舌を絡め合って意思を伝えあう。
やがて唇を離し、俺の上で馬乗りになるように身体を起こした裕子は、すぅっと目を細め唇を舐めて薄く笑った。
「アホぉ」
色とりどりの気持ちが入った虹のような罵りだった。
「でも好きやで」
なんて甘美な告白なのか……その言葉は痺れるように俺の中へ浸みてきた。
- 205 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:57
-
好きだと言い返そうと開きかけた口を、そっと塞いだ裕子は伸ばした両手でゆっくりと俺のシャツを脱がしていく。
脱がせたシャツを放り投げた裕子は、半立ちのままで後ずさると半ば硬くなったモノを、意図して刺激するように俺のズボンを膝まで引き下ろした。
俺の腿の上、不自由な体勢でワンピースタイプの服を脱ぎ、下着姿になった裕子は鼻にシワを寄せるような“らしさ”で笑った。
「こういうん、して欲しかったんやろ……」
熱く脈打つモノを握った裕子は、細い指を艶めかしく動かしながら滑るようにトランクスの中へ潜り込ませてきた。
そっと撫でるように触れたと思うと、ふいに締め付けるように握られる。
「っ、そうだけど……いやしかし」
「好きやないよ。でもして欲しいんやろ? 風俗行かなならんほど」
「いや、だからそれは――」
「解ってるわ」
そう笑った裕子は身体を倒してキスをしてきた。
- 206 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:57
-
唇を重ねながらも、トランクスの中の手は動き続け、次第に固さを増していくモノを刺激し続けた。
キスを終えて離れる唇は絡んだ唾液が糸を引き、いやらしく光っていた。
やがてトランクスも引き下ろされ、顕わになったモノは先端に先走る汁が洩れ出していて、裕子はクスッと笑いそれをを塗り広げるように動かした。
「他でやられるくらいならアタシがするわ」
「だからやってないし、やらね――ぅ」
言いながらも俺の上から降りた裕子の、艶やかな唇からチロリと出した舌で亀頭の先端を刺激した。
チョロチョロと掠めるような舌先を感じるたびに、ぞくりとした快感が背筋に抜けていく。
「ふふっ…なんか可愛らしいやん」
「うるせっ、誰のせい、うぁ……」
くわえ込むようにして軽く歯をたてられ、言い終えることも出来ずに小さくうめいた。
含んだ口の中でねっとりと動く舌の感触に、痺れるような感覚が広がっていく。
顔を上げて包み込むように握った手を上下に動かすが、もう一つなめらかにはいかない。
- 207 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:58
-
「んー……ちょっと足りひんなぁ」
過剰な昂奮がアルコールに力を貸しているのか、多少怪しい呂律で呟いた裕子がすぼめた口から唾液を垂らした。
上下に動かした手の動きの滑らかさに納得したように、裕子は喉をならして笑った。
手の動きは休まることなく、その上でカリから先をアイスでも舐めるように舌を這わせてくる。
「くぅっ」
「気持ちいいんや? ふうん……こんなんは?」
俺の反応を楽しむように一度離した口でそう言うと、今度は口一杯に飲み込むみたいに硬くなったモノを包み込んでいく。
「んんっ……」
喉の奥まで触れるほど深くくわえ込んだそれを、頭を動かして刺激し始めた。
ジュプジュプと音を立てて大きく揺れる髪に触れながら、こみ上げてくる快感に時折うめくような声を上げさせられる。
不意に激しく吸い込むように刺激をされ、同時に口内で舌が暴れる。
- 208 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:58
-
「うぁ…ヤバイ……」
「――っと」
唐突にイチモツへの刺激がやみ、細い指でキュッと締め上げられ、行き場のなくなった解放感が抑え込まれた。
「まだアカンよ」
「っ……なんてこと――」
「こんなんどう?」
からかうみたいに笑うと、再び俺のモノにいたずらなキスをして、裏筋をなぞるように舌を這わせてきた。
一度抑え込まれた快感が、徐々にぶり返してくるのが解る。
モノ全体を這いまわっていた舌がカリから亀頭へ上がってきて、もう一度キスをしてから軽く噛むように口内へ収まっていく。
ねっとりと熱い感覚に包まれ、次第に上下への動きが早まっていく。
- 209 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:59
-
「ゆ、裕子……」
「んっ……ふぅ、んんっ」
鼻をならすように甘くとろけた目で見つめられる。
それがなにかの合図のようだと霞のかかった頭で考えた、そのとき。
まったく違う部分での電気が走るような感覚。
背筋が痺れるような快感と同時に、抑えられていた精を一気にはき出した。
後ろの穴に中指を差し込んだ裕子が微笑みながら、くわえ込んだ口の中に熱く白濁した液体を受け止めていく。
「ぅ……」
「んふぅ…、んんむ……」
溜まっていた全てをはき出し終えると、裕子は喉を鳴らしてそれを飲み下した。
最後の一絞りまでを俺のモノから吸い出して、顔を上げるとペロリと一つ舌なめずり。
- 210 :『Lip』:2006/10/06(金) 21:59
-
惚けたような僅かな時間の後、一つ深い息をついて口を開いた。
「お、お前……どこでそんなことを」
「んん? んっふふ……あっちゃんに聞いた」
「……お前ら」
「気持ちよかったん?」
「…………」
「ほれ、素直に言うてみ?」
「……良かった」
言うと同時に裕子に抱きついて、一息に押し倒す。
突然のことに声も出せずに組み敷かれた裕子に覆い被さるようにして唇を重ねた。
一気に空けたビールのアルコールと、先ほどの行為でドロドロになった頭で、ただ互いに求め合い舌を絡ませる。
一つに熔けてしまいそうな唇を離すと、すぐに裕子に触れたくて目蓋へ、額へとキスを落としていく。
唇が耳元へ移り、赤く熱を持った耳朶を冷ますように軽く息を吹きかけて、唇で挟み込んだ。
「んあっ、ふっ……耳、ち、ちょっと待ってっ」
「んま? まふぁなひ」
- 211 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:00
-
待つつもりもなければ、待てるような理性など残っていなかった。
耳朶から舌を滑らせて小さな穴に潜り込ませると、きゅっと首を縮め、直後にビクビクと身体を反らせた。
腰を抱いていた手を伸ばしていくと、下着越しにも解るほどにハッキリと濡れていた。
確かめるように下着をくぐらせた手で、湿った恥毛をかきわけて、グッショリと濡れた秘所へ指を這わせる。
「んんっ、はあぁっ!あ、あっ、ああんっ!」
柔らかなヒダをなぞりながら、ゆっくりと奥へ入り込んでいく指を、小刻みに動かしてやる。
「ふぁぁっ! くっ! あんっ、あっ、んんぅ、や、ああっっ!」
指の動きを強くすると、それにあわせて裕子の声のトーンが跳ね上がる。
その声にのせられるように、より奥へ、大きく、早く動かしていく。
「ああああっ! やっ、あ、あかん、もうぅぁ! はああん! あああっ、いいっ、イクぅっ! あああ〜っ!!」
- 212 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:01
-
存分に昂ぶっていた裕子の身体は、思ったよりも早く絶頂を迎えて、それでいてより深い刺激を求めるように腰を上げ、紅潮した身体を震わせた。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
脱力したようにグッタリとした裕子から指を抜き、荒い呼吸を繰り返す力の入っていない身体を俯せにして腰を持ち上げる。
太ももまでグショグショにするほどいやらしく濡れた秘所が灯りの下に晒され、我慢しきれなくなったモノを一息に挿入した。
「んくぅっ!」
奥まで突き入れると、呻くような声、グッタリしていた背中に力が入るのが解る。
膣内の感触を楽しむように、小さく腰を回すと、焦れたような声を上げながら肘で支えた背中を反り返らせる。
間近に見るその背はなめらかで、朱みを帯びた肌にしっとりと汗が浮かんで妙に艶めかしく感じる。
- 213 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:01
-
まだそのままになっていたブラのホックに指をかけ、パチンと外してやる。
ブラを脱がせながら、支えるように伸ばした手で裕子の胸の柔らかさを満喫するように揉みしだく。
「んんっ、いぃ、気持ち、いい……もっと、っ、強く……」
求められるままに強く、硬くしこった乳首を指で刺激しながら揉み続ける。
「んぅあっ、くうッ! ふうぅ、あっ、あぁぁっ!」
敏感に反応するあえぎにあわせてゆっくりと腰を引き、同じようにゆっくりと差し入れる。
膣内の肉襞が絡みつくように締め付けてくる。
腰を引くときには逃がすまいとするかのように。
押し込むときにはより深く導くように。
「はぁ、あっ、はぅん、ふあぁぁっ、くぅ、ぁあああん」
キュッと締めてくる快感に耐えながら、それでも焦らすようにゆっくりと、ゆっくりと腰を動かしていく。
- 214 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:02
-
「う…ああぁ…ゆっくり、せぇへんで…もっとぉ…もうちょっ…んんぅっ…は、速く…強く、して」
「ダメ」
「そっ、そんなっ…あはぁん! はん、やんっ!」
「して欲しい?」
「あっ、あぁぁっ……し、して、ぇ、ほしい……」
「……っ、ふ、どうするかなぁ」
「ああぁ、んっ、お、お願いぃ、やから…してぇ……」
もとよりこちらも堪えきれなくなりだしていた。
が、“お願い”に乗じて「解ったよ」などと優位に立った立場を崩さないようにささやいた。
柔らかな腰を両手で掴み、引いた腰を叩きつけるように激しく押しつけた。
「あぁぁ、うっあぁぁ、や、ふうっ、くっ、はあんっ! あぁぁぁぁぁぁん!!」
- 215 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:02
-
パンパンと音がするほど深く、強く、出し入れされるモノから。
そしてそれに呼応して大きくなる裕子のあえぎが身体中を満たしていく。
「もう、っくぅ、いく、イク、イッちゃうぅぅぅぅぅ!」
「っっ……お、俺も、もう、すぐ……」
「い、一緒に、一緒にっ、いいいっ、ああ、あああっ!」
激しく動かしていた腰を、リズムを合わせるように微妙に変化をつける。
次第に重なってくる呼吸が互いの限界が近いことを教えてくれた。
僅かに変えた姿勢で、突き上げるように腰を打ちつけると、それが合図だったように、同時に限界を迎えた。
「ああぅ、あんっあんっあっ・・・い、いいっ、いい、やっ、うぁ、あああぁぁぁぁぁあああぁあぁあああーーーっ!」
ひときわ高く、大きなあえぎと同時に、引き抜いたモノから白濁した精を裕子の尻にぶちまけた。
裕子の身体に手を回しながら崩れるように落ちていく感覚に包まれていく……
- 216 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:02
-
…………
- 217 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:03
-
ベッドで目が覚めた俺は、隣の存在に気がついて昨日のことを思い返した。
そうか、結局ベッドに移って……なんだかな、ドロドロだな。
隣で規則正しい呼吸を繰り返す裕子の髪に手を伸ばしてみた。
派手にいじっているにしては艶のある細い髪は、見かけや言動よりも繊細なんだってことを教えてくれる。
少しだけ上体を起こして彼女の顔をのぞき込む。
だいぶ派手に飲んだせいもあるんだろう、よく寝てるようだった。
「裕子……結婚しよう」
寝ている彼女に練習がてら呟いてみた。
なにか伝わりきらない気がして、改めて考えてみる。
「一緒の墓に……」
縁起でもない。こういう言い方は好かないだろう。
「名字変えてみない? ……なんかうまくねぇな」
いざ考えてみると、うまい言葉なんて浮かばないもんだってことがよく解る。
「俺もハナたちと一緒に暮らしたいな」
ペット扱いされちまいそうだ……。
- 218 :『Lip』:2006/10/06(金) 22:03
-
「いっそありきたりだが、裕子の作ったみそ汁が……いや、ダメだ。料理は俺が作った方が――」
「ぷっ――」
一瞬、裕子の剥き出しになった細い肩が揺れたように思えた。
そっと手を伸ばして肩に触れると、微妙に、不規則にふるえているような……
「ぷはっ、あっはははっ……あ、アンタ…オモロすぎるわぁ」
シーツを胸元まで引き上げて、起きあがった裕子は爆笑しながら指先で目元を拭っていた。
涙ぐむほど笑われるとは……なんてこったい。
「後な、みそ汁ぐらい作れるわっ」
「いや、知ってるけど。俺が作った方がうまいだろ」
「否定はせぇへんけど……にしても」
「あ?」
「一区切りつくまで待って」
薄く微笑みながら、引き締めた口元がゆっくりと言葉を紡いだ。
すぐに“それ”がなにを指すのか思い至った俺は、呆れているとみえるように笑った。
「なるほど。そりゃあしゃーないわな。ゆっくり待つとするか」
「もう、そう先のことやない思うから」
「……かもな」
「ん。でも、ありがと」
そう言った裕子は、喜びの中に寂しさの微粒子を含ませた笑顔で、俺に口づけてくれた。
確かにそれは少し寂しいけれど、俺たちがそうなるのはそう先のことじゃないかもしれないと思った。
end.
- 219 :名無し娘。:2006/10/06(金) 22:07
-
続きさらしてみた。
これも前に書いたものの焼き直しだけどねえ。
あ、先に言っとこ。この後は「ないよ」ですw
さて、ストックが無くなってきたな。
ストックが無くなる前になんか新しいの書くかな。
ではでは。
- 220 :名無し娘。:2006/10/07(土) 08:09
- 全部さらしてくれ
- 221 :名無し娘。:2006/10/07(土) 09:39
- なぜ中澤なんだ
- 222 :名無し娘。:2006/10/07(土) 11:01
-
おふぁようごずぁいます・・ゴシゴシ(-_\)ゴシゴシ(/_-)
>>220
他の更新とバランス取りながらあげるですー。
>>221
なぜ……?
結構好き。歳が歳なだけにエロを書くことに抵抗が少なかった。
一番推しじゃないんで練習がてらw
- 223 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:54
-
微エロ、エロ、エロと続いたんで、そうじゃないものを。
100%エロ無し、キッズ長編。
ピュアな感じで。
- 224 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 20:55
-
1
二人が出会ったのは梨沙子が小学校へ入学する年。
孝之が小学校の六年になる年でした。
幼かった梨沙子にとって、隣家に越してきた五つも年上の男の子。
当初、梨沙子にとってその男の子は、とても微妙な存在でした。
引っ越しの挨拶にと梨沙子の家を訪れた夫婦、その背に隠れた少年。
その姿を、彼と同じように、親の背中から垣間見た梨沙子は思いました。
少し不機嫌そうに俯いたその少年は、自分とは合わないのではないかと。
その表情は子供心に自分の“味方”ではない、そんな印象を梨沙子に抱かせたのでした。
- 225 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:56
-
ですが親同士の親交が深まるにつれ、そんな二人が一緒にいる時間も増えていきます。
出会ってから二ヶ月が過ぎた頃、いまだ微妙な二人の感情にも気づかない両家の親たちに、留守を任される機会がありました。
梨沙子の面倒を見るように言いつけられた孝之も、大人しく言うことを聞くように言いつけられた梨沙子も。
互いに言葉少なく、ぎこちなさを残したままで過ぎていく春の夕暮れ時でした。
二人は菅谷家の居間、同じ空間にいながらも、距離を置いて座りほとんど会話を交わすこともなく時間を過ごしていました。
春とはいえど、傾いた陽が落ちるのは早いもので、梨沙子はガラスの向こうに沈んでいく夕陽を見ながら小さく溜息をもらしました。
孝之も同じように、時折梨沙子の様子をみては、また目線を逸らし溜息をついていました。
- 226 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:56
-
どちらも同じように、気まずい時間を過ごしていたその時、不意に孝之の耳に飛び込んできた梨沙子の声。
「きゃあ!」
おそらく、二人きりになってから初めて聞いたその声は小さな悲鳴でした。
孝之は転がり落ちそうな勢いで椅子から立ち上がり、慌てて梨沙子に問い掛けます。
「ど、どうしたの?」
「だれか、いたの……」
か細い声で庭先を指差す梨沙子に、孝之は走り出し居間を出て行ってしまいました。
独りが心細くなった梨沙子が、どうしたものだろうかと考え出す、ほんの少し前に、孝之は戻ってきました。
その手に玄関にさしてあったであろう大ぶりの傘を持って。
「ボ、ボクがみてくる」
- 227 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:57
-
今まで敬遠し、敬遠されていると思っていた孝之の意外な言葉に、梨沙子は驚きつつも表現しがたい気持ちが浮かんでくるのでした。
そして、その言葉と行動によって、今まで二人の間に感じていた壁が崩れていくような、そんな感覚を覚えながら梨沙子が口を開きます。
「でも…あぶないよぉ」
「だ、だいじょぶだよ。りさこちゃんはかくれてて!」
そう言って梨沙子をキッチンの方へ押しやり、孝之は庭先へ続くガラス戸に手を掛け大きく深呼吸を一つ。
ちらりと後ろに離れた梨沙子を見やり、勢いよくガラス戸を引き開け叫びました。
「だれだっ!」
その声に応えるように庭の隅でガサガサと音がします。
震える腕に力を込めて、握りしめた傘を音のした方へ向けてゆっくりと孝之は近づいていきます。
すっかり陽の落ちた薄暗い庭を、音の出所へジリジリと近づく孝之のシャツが後ろへ引かれました。
振り返った先で梨沙子と目が合い、口を開きかけはしたものの、服の裾を握る梨沙子の不安そうな表情に何も言えず、再び音の聞こえた方へ向き直る孝之。
- 228 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:57
-
その時でした。
先程までよりも大きな音が聞こえた、そう二人が気がついた瞬間、暗闇から影が飛びかかってきたのです。
悲鳴も上げられず倒れ込んだ二人。
しばらくして、混乱から立ち直った梨沙子がそっと目を開くと、そこには孝之のシャツの胸元しか映りませんでした。
そして梨沙子は気がつきました。
庭に倒れたはずの自分が、なんの衝撃も受けなかったことに。
理路整然と導かれる結論ではありませんでした。
けれどなんとなく、梨沙子は理解したのです。
「あっ!」
そう思い至った時、慌てて這いずるように梨沙子の下から身を起こした孝之。
- 229 :名無し娘。:2006/10/10(火) 20:57
-
遅れて起きあがった梨沙子の眼前に、差し出されたのはまだ小さな茶虎柄の猫。
「あ…」
「これだったみたい」
「……かわいーね」
「え? うん、そーだね」
子猫を抱きかかえ笑う孝之の腕が、泥に汚れてうっすら血が滲んでいるのを見つけた梨沙子。
難しいことは解りませんでしたが、それでも梨沙子はなんとなく思ったのです。
“守ってもらった”んだって。
それ以来、二人の関係に小さな変化が生じます。
その変化は、子猫が成長するのと同じように、二人にとって大きなものになっていくのにさほどの時間はかかりませんでした。
- 230 :名無し娘。:2006/10/10(火) 21:03
-
こんな感じで……うぎゃ!?
最初以外名前欄変えんの忘れたorz
次から気をつけよう。
で、こんな感じで結構続きますけどいいかな?
『夏だね』の倍くらい。
キライじゃない人だけでもお付き合いくださいませ。
- 231 :名無し娘。:2006/10/10(火) 21:21
- >>222
他の更新って他にも小説を書いてるの?
- 232 :名無し娘。:2006/10/10(火) 21:28
- 早っ!?
>>231
小説っていうか……狩狩で書いてますよ。
そのイメージだとエロはどうかなあと思ったので、名無しで立てたんだけど。
読んでくれる人にしてみれば気にするようなことでもないのかな。
- 233 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 23:03
-
2
翌年、梨沙子は二年生になり、孝之は中学生になりました。
あの日を境に一緒に通うようになった学校でしたが、同じ学校に通うわけではなくなり、通学路を共に歩く時間はごく短いものになってしまいました。
半年以上の間一緒に歩いた通学路は、その道程の半ばで梨沙子の小学校と、孝之の中学校を隔ててしまいます。
それでも孝之は、時間の許す限り梨沙子を小学校まで送り届け、その後走って自分の中学校へ通いました。
幼い梨沙子は、孝之が小学校まで来てくれることを不思議だと思ってはいましたが、そうしてくれることが嬉しかったのです。
だから下校時には、どうやっても先に授業の終わってしまう自分を寂しく思い、なにかにつけて時間を引き延ばします。
出来るだけ長く学校に居残り、教師に帰るように言われると、ゆっくりと中学校へ分岐するT字路までの道程を歩くのでした。
- 234 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 23:04
-
母親に持たされている携帯電話で時間を確認した梨沙子は、T字路の見えるところまで来て立ち止まりました。
意味もなくメールのチェックをしたり、登録されている数少ないアドレスを眺めたりします。
梨沙子は知っていたのです。
孝之がどれくらいの時間になるとこの道を通るのかを。
勿論、最初はそんなこと知りませんでした。
ほんのちょっとした偶然。
それは梨沙子が学校に、忘れ物を取りに戻った日のことでした。
- 235 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 23:04
-
傾きかけている日射しの中、小学校へ戻り、体操着の収められた巾着袋を取って、再び家路についたその途中。
沈んでいく太陽に急かされるように足早になる帰り道でした。
その途中、見通しのいい通りの遥か先に見える曲がり角の陰から、見知った横顔が姿を現したのです。
遠目ながらも間違いないと確信を持てた梨沙子は、駆け足でその姿を追いかけました。
段々と荒くなってくる呼吸の中で、少しずつ近づく後ろ姿に励まされて走る梨沙子。
その距離が十数メートルにまで近づいた時、前を歩く孝之が不意に振り返りました。
「あれ? りさちゃん」
孝之の声が聞こえました。
梨沙子は目一杯まで頑張っていた脚を徐々に緩め、最後には歩きになって、やっと孝之に追いつけました。
- 236 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 23:04
-
「はあっ、はあっ……ケホッ」
「そんなに急いで…どうしたの? 大丈夫?」
かがみ込むようにして様子を窺う孝之に、大丈夫、と言おうとした梨沙子でしたが、乱れた呼吸が邪魔をします。
額にうっすらと汗を浮かべながら、一つ大きく深呼吸をして、言葉の代わりにニッコリと笑ってみせたのでした。
その笑顔をみた孝之も、同じように笑ってみせて、それに梨沙子は「えへへ」と声に出して返しました。
「落ちついた? もう平気?」
「うん。もうだいじょーぶ」
「せっかくだから一緒にかえろうか」
いざ追いつきはしたけれど、自分から言い出せずにいた梨沙子はとても嬉しく思ったのです。
「うん♪」
「よしっ、いこう」
- 237 :『小さな恋の……』:2006/10/10(火) 23:05
-
あまり離れないように、数歩後ろを歩く梨沙子を気遣いながら歩く孝之。
その少し後ろから見える孝之の顔を見ながら、梨沙子は笑顔でとてとてと歩くのでした。
そして、それ以来、梨沙子はなるべくこの時間にあわせて帰ってくるようになったのです。
最初の一週間ほどは、なかなか時間があわず、すれ違っては肩を落として帰宅していました。
けれどいつからか、おおまかな時間が解ってくるようになったのです。
早い時は曲がり角で、すぐ目の前を。
遅い時でも十分〜二十分程で、あの曲がり角から孝之が帰ってくると解りました。
ですが、梨沙子は一つだけ、知らなかった……気がつかなかったことがあります。
それは、最初の一日。
その日以降、孝之も同じように“時間”を探していたのだということを。
自分よりも早く帰るなら、それは構わない……というか、仕方がないと思っていた孝之でした。
けれど、自分と同じくらいになってしまうなら、少し日の傾きかけた帰り道を行くのなら。
ならば自分が送って行かなければと、そう孝之が考えたことを、梨沙子は知りませんでした。
二人は、お互いの幼い考え、淡い気持ちも気がつかずに、今日も二人で数歩分の距離を保って歩くのでした。
- 238 :名無し娘。:2006/10/10(火) 23:07
-
ちょっと時間が空いたんでもう一話分。
一日二話なら二週間くらいで終わるなあ。
毎日くればだけど。
ではでは。
- 239 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 20:58
-
3
ある日のことでした。
いつもの場所、いつもの時間。
携帯で時間を確認した梨沙子は困ったように周囲を見廻していました。
しばらくそうしていた梨沙子が再び携帯に目を遣って……そして「うん」と小さく、自分を励ますように呟いて歩き出しました。
件のT字路を、家の方向でも、小学校の方向でもない方へと向かって。
「わぁ……」
きょろきょろと辺りを見ながら、しばらく歩いた梨沙子が小さな感嘆の声をあげました。
初めて歩く道、新鮮な光景の中を一人で歩くことの昂揚感。
そんなワクワクしつつもドキドキした気持ちで歩いていた梨沙子は、分岐路で聞いた道を中学校へ向かって歩いている……つもりでした。
ですが、ふわふわとした昂揚感のままに歩いてきた梨沙子は、自分が目印を見失ったことに気がついていませんでした。
- 240 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 20:58
-
「……?」
そろそろ中学校が見えてもいい頃だと思っていたのに、いつの間にか目の前には公園が見えていたのです。
それは、青々とした木々に囲まれた、そう大きくはない公園でした。
けれど、小さな梨沙子の目には、初めてくるその公園はとても大きく素敵な場所だと映ったのです。
公園の入り口になっている林道めいた小道から、その素敵な世界へ目を遣った梨沙子があるものに気がつきました。
「あーっ、わんちゃん!」
それは首輪をしていない小さな白毛の犬でした。
きっとこの公園に居着いているらしいその子犬は、野良犬にしては人懐こい様子で、近寄る梨沙子から逃げようともしません。
「おいで? わんちゃん」
しゃがみ込んだ梨沙子の側に寄ってきた子犬。
その子犬に、少しおっかなびっくり手を伸ばした梨沙子。
伸ばした手をペロペロとなめる子犬を、梨沙子は空いてる方の手で撫でていました。
- 241 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 20:58
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「かぁいぃね〜」
両手を脇に添えるように子犬を抱き上げると、ジタバタと暴れながら、その小さな身体からは思いも寄らないほどの大きな声で泣き出しました。
ビックリした梨沙子は、相応に大きな悲鳴を上げて子犬を解放しました。
「うあぁ、ごめんね、わんちゃん」
その時、梨沙子から数メートル離れた辺りで、木々の下生えがガサガサと音を立てました。
子犬がそちらに向かって走っていくのと同時に、その数倍……それこそ梨沙子ほどもある白い犬が姿を現しました。
- 242 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 20:59
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「……ぁ、うぅ」
怖くなった梨沙子はゆっくり立ち上がると、そのままの姿勢で後退りました。
少し離れた位置にいる犬も、離れずに距離を詰めてきます。
その口からは大きな牙がのぞき、低い唸り声をたてながら少しずつ近づいてくるのでした。
怖さに耐えきれなくなった梨沙子は大きな悲鳴を上げ、振り向いて走り出しました。
後ろでは「ハァハァ」と犬の荒い息と砂を蹴る足音が聞こえます。
梨沙子は公園の出口へ、後ろも振り向かずに必死で走りました。
後ろの音はどんどんと近づいてきて、もうものの数歩分で掴まえられてしまうほどです。
梨沙子は『あぁ、自分は食べられちゃうんだ』と思い、走りながらも、つい眼を閉じてしまいました。
- 243 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 21:00
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その瞬間、梨沙子の小さな身体に衝撃が加わりました。
梨沙子は自分の脚がふわりと浮くのを感じ、転んじゃうんだと思ったのです。
ところが、ふわりと浮いた梨沙子の身体は、腰の辺りを軸にくるっと廻ったと思うと、その勢いを殺すようにぽんと地に降り立ちました。
それでも恐怖からぎゅっと閉じていた眼を開けられずにいた梨沙子の肩に、ぽんと置かれた温かい感触。
「りさちゃん」
掛けられた声にふっと目を開けると、梨沙子の頭上に孝之の顔があったのです。
何がなんだか解らないでいる梨沙子の腰を抱き上げるようにして立たせる孝之。
「もういっちゃったから、大丈夫だよ」
「たかちゃん……?」
スカートに付いた砂をぽんぽんと払い落としながら、笑顔でそう教えた孝之の顔を、不思議そうに見つめる梨沙子。
辺りを見ると、いつの間にかさっきの犬は何処かへ行ってしまっているようでした。
- 244 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 21:00
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「どこもケガなんかしてない?」
「……うん」
「どうしてこんなとこに……。一人できちゃ危ないよ?」
「あのね、たかちゃんが……」
そこまで言いかけて梨沙子が気がつきました。
孝之の左手に赤い絵の具のようなものが流れていることに。
「たかちゃん。……ち?」
「……ん? あっ…大丈夫だよ、そんなに深く噛まれたんじゃないから」
「でも、たかちゃんっ」
「ん、……こうしてれば平気だから。帰ろう? お母さん達心配するよ」
ポケットから引っぱり出したハンカチをグルグルと巻き付けて、少ししかめた表情を笑顔に戻して孝之が言います。
- 245 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 21:01
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ぽろぽろと涙を零している梨沙子の頭を、孝之は怪我していない方の手でそっと撫でました。
そして膝をついて梨沙子と目線を合わせて、頭を撫でながらゆっくりと孝之が話し出しました。
「大丈夫だから。ね? 泣かないで。……このことは誰にもいっちゃダメだよ?」
「だって…、だってぇ……」
「お願いだから。誰にもいわないって……約束」
差し出された小指を、くしゃくしゃに泣きながらもジッと見つめる梨沙子。
目の前の小指がふにふにと動き、「ね?」と念を押すように孝之が言うと、梨沙子はおずおずと自分の小指を絡めました。
「よしっ、指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。……二人だけの約束だよ?」
「……ぅん」
泣きながら約束した梨沙子にそっと手を差し出す孝之が「帰ろっか」と優しく言います。
まだぼろぼろと涙を流している梨沙子はどうしたらいいのか解らないようにその手を見ていました。
孝之は、差し出したその手で、ぽんぽんと梨沙子の頭を優しく叩き、そして梨沙子の手を握って、再び促しました。
「さ、帰ろう」
「……ん…ぅん」
- 246 :『小さな恋の……』:2006/10/11(水) 21:01
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家の前までついた二人は、玄関先で立ち話をしていた母親達に見咎められ、怪我について問い質されました。
孝之は「これは自分のせいだ」と言い、梨沙子は心の中で約束、約束と唱えながら、涙を滲ませた目でじっとそれを見ていました。
母親に連れられて近所の病院へ向かう孝之の背中をジッと見つめている梨沙子に、梨沙子の母親が問い掛けました。
「りーちゃん? 孝之くんの言ったことは本当なのかしら?」
「………」
梨沙子は意地になったように小さくなる背を見つめながら口を引き結んでいました。
そうしていないと声をあげて泣き出してしまいそうだったから。
「そっか。解りました。……孝之くんとずっと仲良くしてもらうのよ?」
梨沙子の母親は、そう言いながらぽんぽんと梨沙子の背を叩き、家へ連れ入りました。
一週間が過ぎて、包帯の解かれた孝之の左手に、小さく残った傷跡。
梨沙子はその傷跡と、そして二人の約束を、ずっと忘れないでいるんだと心に決めたのです。
- 247 :名無し娘。:2006/10/11(水) 21:02
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ちょびちょび進めていこ。
また明日……か明後日に。
ではでは。
- 248 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:54
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4
それは日射しも暖かなとある日曜のことでした。
梨沙子が孝之の家のチャイムを独特のリズムで鳴らし、来訪者が誰だか解っている孝之が玄関を開ける。
すでにこれは、二人の……というよりも孝之の家では誰もが馴染んでしまったこと。
でしたが、いつものことであるはずの孝之は少し驚いた顔で、出迎えられた梨沙子は満面の笑みで、孝之の顔を見て言いました。
「こーえんいこっ」
「こーえん? あぁ、うん、いいけど」
「たかちゃんは持ってない?」
「あるよ。僕も?」
「うん。おしえて♪」
そう楽しそうに話す梨沙子は、Tシャツの上に半袖の上着を羽織り、下はショートパンツ姿に……ローラースケート。
- 249 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:55
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孝之は困ったように梨沙子の姿を見やり、そしてポツリと呟きました。
「それ、履いて行くの?」
「うん♪」
「……そっか。じゃあちょっと待っててね」
「うん♪」
とても楽しそうに話す梨沙子に、なにも言えなくなった孝之は、仕方なさそうにそう言い残して家の中に姿を消しました。
梨沙子がしばらく玄関の前で待っていると、ガチャリと玄関が開き、孝之が戻ってきました。
その手には、使い込まれたローラースケートと幾つかのプロテクターを持ち、先程までのTシャツ姿の上にGジャンを羽織って。
「これだけ付けて行こうね」
「りーの?」
「そう、念のためね」
目の前のそれを見て、小首を傾げて自分を指差しながら言う梨沙子。
そんな梨沙子に、真面目な表情を作った孝之が言います。
- 250 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:55
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「う〜……」
「ヤならやめる?」
少し不満げに眉根を寄せて、差し出されたプロテクターを見つめました。
けれど孝之にそう言われ、どうするかを量りにかけたように考え、やがてポツリと言いました。
「…つける」
「うん。じゃあ手だして?」
すっと差し出された細い腕の、肘の部分へあてがわれるプロテクター。
そしてかがみ込んだ孝之が膝へ付けるプロテクター。
それをされるがままに見ながら、梨沙子はこう思い、感じました。
こんなの付けなくてもいいのに、と少しだけ不満に。
でも、孝之に心配されて、世話を焼かれるのはほわほわとする。
そんなくすぐったいような不思議な気持ちで、どうしてか自然と笑顔が浮かんできました。
- 251 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:55
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「はい。出来たよ。……? りさちゃん?」
「ふぁぃ!? あ、うん」
「なに?」
「なんでもなーいよぉ」
「ふーん……」
孝之は、そんな梨沙子の様子を見上げて、訝しく思いながらも無理矢理に納得した風で呟きました。
そして屈んだままの姿勢で、自分のローラースケートを履いていた孝之が、なにかに気がついたように口を開きました。
「これ……おろしたて?」
「おろ…? ……うん、きれーでしょ」
「もしかして、初めて?」
「うん」
当たり前だよと言わんがばかりの梨沙子の口調に、何かを考えるように立ち上がる孝之。
履き替えた自分の靴を玄関に放り込み、ドアを閉めると、その様子を見つめている梨沙子を尻目に、カチャカチャと数歩移動して道路へ出ました。
- 252 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:56
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「ここまで来れる?」
もと来た方を振り返り、そう言いながら手を差し伸べる孝之。
梨沙子は少し考えて、「う〜」と困惑したような声をもらして歩き出しました。
「うわ、わわっ……やあっ」
奇妙な声をあげながら、それはそれはぎこちない、おっかなびっくりバランスを取りながらの動作。
孝之は笑いを堪えながらも、梨沙子の方へ近づいて、パタパタともがくように動くその手を取りました。
- 253 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:56
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「っ……うぁ、ふぅ」
「あんまり大丈夫じゃないね」
「だ、だからおしえてっていったのに……」
孝之に支えられながらも、拗ねた風にアヒル口の梨沙子。
「とりあえず、この辺じゃあ危ないから公園まで行こっか。動かないでね」
「うん。えっ? あっ、わわわわっ」
返事を返しながらも、『動かないで』という言葉の意味が解らなかった梨沙子が、おかしく思った時でした。
少し荒れた地面を跳ねるように転がり出すスケート。
孝之の手に引かれ自分の意志とは別のところで移動を始める梨沙子は、ただ小さな悲鳴を上げながら一所懸命にバランスを取ります。
次第にそんな状況にも慣れ、後ろ手に梨沙子の手を取り、時折振り返る孝之を見つめていて。
手から伝わる温かさと、流れる空気を感じて、「えへへ」と小さく笑みを浮かべるのでした。
- 254 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:57
-
5
孝之に手を引かれ、梨沙子はニコニコとその背を見ていました。
なにがこんなに嬉しくさせるのか、自分でも解ってなどいないままで公園への道程を楽しんでいたのです。
「はい。到着っ」
「え? うわっ、あ゙ぁっ!?」
前を行く孝之が、不意に止まってそう言いました。
が、梨沙子は気がつかず──気づいても止まり方を知らなかったのですが──、勢いそのままに孝之の肩へぶつかってしまったのです。
「っ!?」
支えようと踏ん張りかけた孝之でしたが、力を込めても無情に廻るローラーが邪魔をしました。
「う〜……」
「っ、てぇ……」
辛うじて大転倒とはならなかったものの、思いっ切り尻もちをつき、繋いでいた手に引っ張られた梨沙子が、その上に倒れ込みました。
- 255 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:58
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「あぃた〜……」
「りさちゃん……?」
「はぁい?」
「重いからどかない?」
「えぇ!? りー、おもくないもん!」
孝之の言葉に飛び跳ねるようにして脇に降りた梨沙子が言いました。
まっ白な頬を少しばかり朱に染めて言う梨沙子に、身体を起こしながら孝之が笑いかけました。
「そうだね。りさちゃん細いもんなぁ……ほらっ」
先に立ち上がった孝之の両手が梨沙子の脇に添えられて、小さなかけ声に合わせてひょいと持ち上げられました。
「……う〜〜っ、おろしてぇ」
「うわっ!? ははっ、ごめんごめん」
一瞬何をされたのか解らなかった梨沙子が、顔を真っ赤にしてバタバタすると、孝之はすとんと足から梨沙子を下ろしてあげました。
- 256 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:58
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子供だとからかわれたように感じた梨沙子は頬を膨らませて背を向けてしまいました。
「たかちゃん、きらいっ」
そんな梨沙子を微笑ましく思いながらも、機嫌を直そうと四苦八苦する孝之でした。
やがて梨沙子にも笑顔が戻り、丁寧なスケートのレッスンが始まります。
初めはバランスを取ることだけで精一杯だった梨沙子も、意外な勘の良さをみせ、次第に上達していきます。
時に転びそうになると、すぐ横で教えている孝之が手を差し伸べて支えます。
あまりにゆっくりで、これはと思う時には転び方すらも教えるように、手を出さずにいることもありました。
そんな時、黙って口をとがらせ「なんで?」という目で見る梨沙子に、孝之は「転ぶことも覚えなきゃ」と言うのです。
なお不満顔の梨沙子へ「それくらいなら、子供じゃないなら痛くないでしょ?」と重ねて。
すると梨沙子は、口を尖らせたままで「うん」と頷くのでした。
そんなレッスンも二時間ほども過ぎた頃、孝之が飲み物を買いに梨沙子の元を離れました。
両手にオレンジジュースの缶を握り、元いた場所へ戻ってきた孝之でしたが、梨沙子の姿が見あたりません。
「りさちゃん……?」
きょろきょろと辺りを見廻した孝之は、きた道とは反対の方向に滑っていく梨沙子の背中を見つけました。
- 257 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 19:59
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後を追おうと動き出し掛けて、ある事に気がついた孝之は握っていた缶を置くことも忘れ、全力で滑り出しました。
「りさちゃんっ!」
近づく勢いはそのままに、大きな声で呼びかけると、上体だけで振り向いた梨沙子が手を振ってきました。
足は止まっていましたが、ゆっくりと回り続けるローラーはそのままに。
「たかちゃーん。みてみてっ♪」
「っ……止まって!」
「? ……え? わっ!?」
そこで梨沙子はやっと気がつきました。
自分がなだらかな下り道にいたことに。
そしてその勾配が徐々に急になっていることに。
「ふわわっ……た、たかちゃん」
「りさちゃん!」
段々と上がっていくスピードと、坂の向こうに見える光景に身をすくませ、転ぶことも出来ず孝之の名を呼ぶ梨沙子。
孝之は手に持っていた缶を放り出して、坂の向こうを往来する車のことを考え、必死に後を追いました。
- 258 :『小さな恋の……』:2006/10/13(金) 20:00
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目前に迫る道路に、恐怖感で一杯になった梨沙子が眼を閉じ、身体を硬くした数秒の後。
車にはねられたと感じた大きな衝撃。
梨沙子が気がつき目を開けた時、そこは道路から僅か一メートル程の場所でした。
「たか、ちゃ──っつ」
隣で倒れている孝之に気づき、手を伸ばそうとした時、上腕に鈍い痛みを感じて動きを止めました。
「はっ! りさちゃん!?」
遅れて気がついた孝之が梨沙子を見ると、痛みを堪えるように表情を歪ませ、ブラウンの瞳一杯に涙を浮かべて。
それでもなぜだか笑顔を作ろうとしている梨沙子がいました。
「りさちゃん、どっか痛い? 大丈夫?」
「ちょっとだけ、いたい。けど……こどもじゃないからへーきだもん」
額にうっすらと汗を浮かせながら、無理に作った笑顔で話す梨沙子。
そんな梨沙子を見た孝之は、理由も解らないままに泣き出してしまいそうになりました。
それは悔い、憤り、哀しみ、哀れみ、様々な感情の表れでした。
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