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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜
1 :
名無し娘。
:2003/09/09(火) 18:55
前スレ
俺と娘。の夢物語
http://teri.2ch.net/mor2/kako/977/977128657.html
俺と娘。の夢物語〜第2章〜
http://teri.2ch.net/mor2/kako/986/986831774.html
俺と娘。の夢物語〜第3章〜
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1004618557/
このスレを狩と共に終わらせてしまうのは、
余りにも惜しい。
945 :
てと
:2004/12/14(火) 17:50
あるとき子どもが愛ちゃんと激突した。
「愛ちゃん大丈夫?」
「はい。」
子どもを撫でると、子どもはニコッと笑ってもーにんぐむすめだ!、と指差した。
一歩遅れてその子どものお母さんと思われる人が慌てて駆け寄ってきた。
「どうもすみません」
「ドンウォーリー」
「・・・・どうもすみません」
お母さんは子どもを連れるとあっと言う間に離れていってしまった。
「why?why?why?」
そ、そりゃぁ、なぁ・・・。Mother本気で引きますよ・・・。
946 :
てと
:2004/12/15(水) 18:30
前回赤点だったけん、と田中さんは教科書片手に必死に勉強をしていた。
こういうときの楽屋にいる先輩メンバーの心中は一つ。
こっち来るな・・・。
答えられる保証がない、というより分かるはずがない。
勉強もせずに仕事ばかりしているメンバーがほとんどの中、
しっかりと学校に通っている亀井さんは珍しいくらいで。
田中さんも義務教育から解き放たれたらどうするのだろう。
「先輩」
ビクッと身体が反応する。勿論僕を含めて。
誰に聞く?誰に聞く?
不安が走る。
田中さんは教科書とノートを手に、僕の前に立った。
「分からないんで教えてください」
947 :
てと
:2004/12/15(水) 18:36
藤本さんと石川さんがハイタッチを交わすのが見えた。
矢口さんは僕を見てウケまくっている。
僕はとりあえず教科書を見てみることにした。
もしかしたら分かるかもしれないし・・・。
しかし生憎田中さんが聞いてきたのは僕にとって完全に欠落している部分だった。
デビュー後上京して、学校に入るまでにブランクが少しあった。
そのため義務教育のはずなのに習ってない単元があった。
そして田中さんの質問と偶然それは合致。どうしろと。
「あ〜、なんていうか〜」
「やめとけやめとけ、そいつこー見えてバカだからさぁ」
「よっすぃが言うな。」
「れいないい?」
フラフラと近づいてきた亀井さんは、教科書をチェックすると、ささっと解いた。
ポカンとする田中さん、笑う亀井さん。
亀井さんはニコニコしながら道重さんの横に戻った。
ここで紺野さんがコンビニから戻ってきた。
それを見た瞬間、先輩メンバーが一斉に紺野さんを取り囲んだ。
『なんで早く帰ってこなかったんだよ!』
「へ?」
948 :
てと
:2004/12/16(木) 19:12
一人での仕事が終わって帰ろうとすると、
同局で別の撮影をしていた亀井さんとばったり会った。
適当に話をすると、
「あ、そうだ!」
亀井さんは思い出したように鞄の中からたくさんの写真を取り出した。
それを僕に渡すと、旅行のやつです、と笑った。
「おお〜、よく撮れてるねー。全員が写ってるのほとんどホテル内だけど。」
「アハハ・・・。しょうがないですよぉ、下手に頼めないし。」
いっそのことお店でお店の皆さんと仲良く写真とってサイン書いてもよかったのかな、
そんなことを思いながら一枚一枚写真を眺めていく。
「うぉ、中澤さんの顔すごいことになってる」
「ホントだー!すごいですよこれ。」
「あ、これで終わりか。・・・ん?なんか足りなくない?」
「え、気のせいですよ。じゃあ絵里は仕事がまだあるんで行きますね」
「あ、うん。じゃあね、お疲れ様」
「お疲れ様でーす」
去り行く背中を見つめながら、撮られたはずがなくなっていた写真を思い出して、
思わず笑った。
田中さんが持ってるのかな?
949 :
てと
:2004/12/17(金) 17:49
――これ誰のかな?
――分かんな〜い
声が聞こえる。でも僕はそれに興味を示す気にはなれなかった。
眠い。今はただ寝たかった。
――あ、愛ちゃんこれ誰のか分かる?
――ん〜?知らんよ?
――誰のだろう。
なんの話をしているのか、
少しだけ気になったけどそれよりも眠気が僕の頭を支配していた。
今度こそ深い眠りに。
――なにそれ
――あ、美貴ちゃん。かけてかけて。
――え?いいけど。
かける?かけるってなんだ?眠いから脳が動かない。
――wow wow wow 青春♪
――色々あるさぁ〜♪
――人で遊ばない。
――はーい。
ああ、なるほど。
なんのことだか分かった瞬間、こめかみ辺りに圧迫感を感じた。
「ん?」
『おおー』
「インテリインテリ」
「イケメンイケメン」
フレーム越しに爆笑するメンバーの嬉しそうな顔が見えた。
950 :
てと
:2004/12/19(日) 00:18
ついさっきまで秋だったような気がするのに、もうこんなに寒い。
ぎりぎりの生活を送り続けてきて1年の積もり積もった疲労感がやばかった。
からだはきついけどみんなも一緒なんだろう。今年ももう終わりだし、あと一分張りだ。
「らいねんもがんばりましょーね。」
らくそうな顔をしている愛ちゃん。ちょっと目を疑ってしまう。
すいすいと歩いていくその姿は力強かった。
とうとうつんくさんに言われた1ヶ月が終わってしまう時が来た。
1ヶ月、悩み悩んだ結果を、明日伝えに行く。でも、今までやってきたことから
0になって、再スタートするというのは少し怖くも感じた。
回想する癖が、最近出るようになった。加入当初から今までのことを何故か思い出す。
デビューして、ぎこちない空気が和らいで、後輩ができて、頑張って。
すいすいと、今の愛ちゃんの歩く姿のようには行かないけれど、なんとかやってきた。
「どうしたんですかボーっとして、来年も頑張らなきゃいかんのですから!」
「え、あ、うん!」
気合を入れられると、二人で駅までゆっくりと歩いた。
951 :
名無し娘。
:2004/12/19(日) 13:15
いよいよか・・・
952 :
てと
:2004/12/19(日) 19:04
そっとドアに手をかける。遂に約束の期日が訪れてしまった。
この日まで何度悩み、苦しんできただろうか。
時間の進みがこんなにも早く感じた事はなかった。
「失礼します。」
「来たな。」
つんくさんは待ってましたと真剣な顔をして言うと、
機材を弄る手を休めて僕の方へと身体を向けた。スタジオ備え付けの椅子を拾うと、向かい合う。
「どや、決心はついたか?」
「・・・はい。」
僕の回答の仕方が不満だったのか、
「なんや釈然とせぇへんなぁ。でもお前かて分かっとるやろこの現状を。
この判断はお前の将来、いやハロプロの将来を決める言う手も大袈裟ではない。」
953 :
てと
:2004/12/19(日) 19:04
確かにそうかもしれない。
話題に乏しい、いや逆に言えば話題を作ってもメディアの煽りが減った今、
加入当初過去最高の反響を呼んだといわれる僕を動かすのは定石といえるかもしれない。
逆に言えばそれに手を出さなければならないほどに苦しい状況だという裏返しかもしれないけど。
「そう・・・ですね。分かりました、やります。」
「よし、そーと決まったら曲作るで!男の曲は久々かもしれんな〜。」
つんくさんは一人嬉しそうな笑顔を見せている。
僕は曖昧な作り笑顔でしかそれを返せなかった。
「お前ギター弾けるんやし、一緒に作るか?」
「・・・それ笑えないっすよ。」
「せやなぁ。」
954 :
てと
:2004/12/20(月) 21:45
それから仕事が終わった後時間が早ければつんくさんのスタジオまで行って
お互いに曲についてひたすら試行錯誤を続けた。
真面目に、商品としての作曲は初めてだったから楽しかったけれど、
胸がすっきりしないのも確かだった。
みんなには半分伝えた。
ソロデビューするという事。
それだけを伝えて、卒業については一切話さなかった。
それが僕の胸に重く圧し掛かっているのかもしれない。
『今日元気がなかった気がするんですけど、どうかしました?』
愛ちゃんからのメールは、僕を悩ます原因の一つだった。
愛ちゃんだけじゃない。他のメンバーからも似たようなメールを幾つか受信した。
そのうち何人が、感づいているのか・・・。
「隠せないな、メンバーには」
「ん?どないした」
「いや、なんでもないです」
葛藤の中、僕は今人生において最も苦しい経験をしているかもしれない。
955 :
名無し娘。
:2004/12/21(火) 10:53
揺れてるな
956 :
名無し募集中。。。
:2004/12/21(火) 11:17
おお!佳境にはいってきたね!
いい感じだ
957 :
てと
:2004/12/21(火) 20:13
僕がモーニング娘。に入って以来、たくさんの時間をメンバーと共にしてきた。
仕事以外でも様々な時を共に過ごし、喜怒哀楽して。
彼女達のことを僕は本当の家族のように思っているし、彼女達を思ってくれていると思う。
そんな家族に隠し事をするという行為は、自分にとって耐えられない事だった。
「つんくさん。」
「なんや。」
「メンバーに明かします。」
これが僕の答えだった。
彼女達を騙しているという罪悪感は辛すぎる。
「待て、まだ早い。」
「様子がおかしいらしくてみんなに心配かけてしまって・・・。
それにみんなに隠し事なんてしたくないんですよ。」
「あかん、まだ早い。」
「どうしてですか!みんなに知らせないことで一体なにが」
「遅かれ早かれ。」
つんくさんは僕の言葉を遮った。
「そうなるんやから同じやろ?」
「・・・・っ。」
「お、おい!待ちぃ!」
その場にいられなくなった僕は、気づいたらドアを開けて外へと飛び出していた。
958 :
てと
:2004/12/22(水) 20:48
飛び出したはいいけれどどうしよう。
気づくと僕はスタジオからかなり離れた位置まで走っていた。
建物からは出ていないけれど、つんくさんといた部屋とは全然違う位置にいた。
僕は間違っているのだろうか。
僕はただ、嘘をつきたくないだけなのに。
かけがえのない家族に、本当のことを話したいだけなのに。
ソファに座る。顔が上げられずに僕は俯いたまま動けなかった。
目を閉じる。
目の前に広がるのは当たり前だけれど暗闇だ。
分からない。どうすればいいのか。分からない。
そんなときだった。
「どうした?下なんか向いて。」
中澤さんがそんな僕に気づいてくれたのは。
959 :
てと
:2004/12/22(水) 20:55
それは今にもほどけてしまいそうな糸を解くには充分すぎるきっかけだった。
僕は糸が切れてしまったみたいに全部、中澤さんに話してしまった。
ソロデビュー、卒業、メンバーに明かしていないこと、つんくさんに言われた言葉。
全部、隈なく話した。
中澤さんはそれを聞いて随分急やな〜、と困ったような顔をした。
「なにもかもそうなんです。」
「・・・でもな?裏を返せばそれだけお前に賭けとるっちゅうことならへんか?」
「・・・・!」
中澤さんは僕の横にどかっと腰掛けると、背中をさすってきた。
「みんなに言わずに隠すのはお前の性格やときついやろな。
せやけどあんたは耐えなあかん。」
「なんで」
「・・・カオリなんか正直な話、いつ卒業するかなんかファン以外気づかんで?
それに予定を割り込んで、しかも発表の場が発表の場やしな。
元々お前がモーニングでも卒業して一番大きく騒がれるやろうし。
久々に話題を作れるかも分からん。」
はぁ、と中澤さんは溜息をつくと、続けた。
「残念な事に余裕がないからな。うちらは。
すっと漏れてしまう可能性を少しでも抑えたい気持ちは分かるわ。
発表の場にポイントがあるわけやし。」
「・・・そうですね。耐えるしか、ない・・・。」
「力になれなくてすまんな。」
中澤さんはそう言って立ち上がると去っていったけれど、
力になれなくて、なんてそんなこと、全然ないですよ?
960 :
名無し募集中。。。
:2004/12/23(木) 08:32
どうなるどうなる!!
961 :
てと
:2004/12/23(木) 20:26
僕のソロデビューCDのリリース日は娘。の新曲1週間後に決定した。
曲の初披露はミュージックステーションのスペシャル。
そこで歌う直前にいきなり卒業のことを宣言しろ、とつんくさんに言われた。
確かに上手いやり方だ、と思う。
ゲストも豪華だから普段より視聴率が高い。
みんな後半に畳み掛ける大物を待っているのに対して、
僕達は18歳未満のメンバーがいるから序盤には出番が終わる。視聴率は高いだろう。
ここまでは良かった。納得したし。
でもメンバーに卒業を伝えるタイミング。一体いつ言えばいいのか。
「もう明日やし、お前のタイミングでええ。」
とつんくさんは言ってくれた。
でもここまでずっと話せなかった罪悪感が、僕の口を重くした。
もう金曜日は目の前まで来ている。
でもファンの人達、一般の人達と同時の発表だけはできない。
それは一種の裏切り行為にも思えた。
悩み悩んで彷徨っている間に、金曜日はもう目の前まで来ていた。
962 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 01:00
構成力の凄さに脱帽です。リアルとアンリアルを
本当に上手く絡めてますなぁ
963 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 03:31
うめえょ・・ホントにすごく主人公?に引き込まれるよ・・・
次は終に!!!!あぁ・・更新が待ち遠しいよ
964 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 11:06
主人公が娘。を卒業したあとも書けるんだったら
書いてほすぃなぁ
965 :
名無し娘。
:2004/12/24(金) 13:41
他の人が書いてくれればいいよ
続ける気がないから終わらせようとしてるんだし
966 :
てと
:2004/12/24(金) 18:57
番組が始まる直前の楽屋は少しだけ静かだった。
遂にここまで来てしまった。今言わないともう、間に合わない。
でも遅くなればなるほどに硬く閉ざされた僕の口元は、本当に臆病で。
本番が近づくことによる緊張よりも、
言わなきゃいけないという自分自身へのプレッシャーが僕を硬くしていた。
時間は刻一刻と近づいている。もうスタンバイはすぐだ。
そのとき、横にいた藤本さんが、僕の耳元で囁いた。
「もう時間だよ。」
「え、まさか。」
まさか、藤本さん知ってる?
小さな声で返すと、藤本さんは頷いた。
「みんなね。」
「え?!」
小声ではいられない衝撃を受けた。思わず声を上げてしまう。
藤本さんは極めて冷静な顔で――いや、装っているのだろう――続けた。
967 :
てと
:2004/12/24(金) 18:57
「愛ちゃんなんか、泣いたんだから。」
「・・・・。」
そう言われて愛ちゃんの方をそっと覗く。心なしか、目が少しだけ赤く思えた。
藤本さんは勤めてか、終始冗談っぽい口調で話していた。
「愛ちゃんの涙は高いよ?あんたもしっかりしないと。ほら。」
「うん、分かった。」
胸の中で鞭を打つ。競馬で馬にスパートをかけるように、強く叩く。
そうでもしないと動いてくれそうになかった。
「因みに誰が聞いたの?」
「え、美貴。うじうじしてて言えそうになかったから言っちゃった。」
「言っちゃったって・・・。」
「ほら、もう始まるよ。」
「うん。言うわ。」
全部知っているみんなに、僕は全部話した。
968 :
名無し娘。
:2004/12/24(金) 22:05
イイヨー。感情移入しながら読んでるよ。
969 :
名無し募集中。。。
:2004/12/25(土) 12:10
続き!続き!
主人公イイヨ!
970 :
てと
:2004/12/25(土) 20:25
「こいつ、やっと言いやがった。」
そういう矢口さんの目に溜まったものを見ると心苦しかった。
僕の告白に、みんな少しも怒らずに最後まで聞いてくれた。
むしろ今までなんで言わなかったんだよ、と怒ってもらいたいくらいの気持ちだったのに、
みんな優しすぎると思う。
「そんなんで俺抜けても大丈夫か?」
「何言ってるの〜!それより私より先に卒業ってどういうこと??」
「ん〜、ごめんとしか言いようがない・・・。」
「謝んなよ!!」
藤本さんだった。
強く鋭い目をして、僕の事をじっと見て。
でもすぐに笑顔になった。
「そんなんでソロやれないよ。もっと胸を張って。」
「藤本さん・・・」
「そうですよ!頑張って下さいよ!!!」
リアクションは十人十色だった。
激励してくれる娘もいれば、冗談っぽく引き止める娘もいて。
泣き付くような娘はいなかったけれど、
何人か明らかに目が赤くて潤んでいたのが見えてしまって、辛かった。
本当、ごめんとしか言いようがない。
今まで言えなくて、そして、いきなり消えて。
971 :
てと
:2004/12/25(土) 20:33
舞台裏に移動して、僕達の登場を待つ。
立っている時、服の袖を掴まれる様な感覚を覚えた。
そしてその正体にすぐ気づく。
「・・・愛ちゃん?」
「・・・すみません。来年も、がんばろうって・・・」
本当に、謝ることしかできない。
僕は口を開こうとしたけれど、口元を押さえ込まれた。
愛ちゃんは目を軽く拭うと、言った。
「何も言わないでください・・・。そんで、一つだけお願い、聞いてくれます?」
「・・・うん。」
愛ちゃんは僕の手に指を絡めた。
ぎゅっと握られる手。
「もう謝らないで下さい。」
言われて気づいた。
僕は謝る事で、逃げていたのかもしれない。
一人勝手に謝って、全部を済ませた気になって。
みんな納得しているはずなんて、ないのに。
だから僕は愛ちゃんに言われたように、謝ることを辞めよう。
現実と向かい合って、逃げないで。
今の僕にはまだ、ちょっと難しい事かもしれないけれど。
「うん。」
握られた手を、僕は強く握り返した。
972 :
名無し募集中。。。
:2004/12/26(日) 14:59
うわーん、いいよ!!!
佳境!!!
973 :
名無し娘。
:2004/12/26(日) 17:03
高橋かわいいな・・・
974 :
てと
:2004/12/26(日) 23:39
「お〜」
ここが僕が娘。でいられる最後のステージ。
そう思うと少しだけ不思議な気持ちになる。
今日は誰よりも早く来たかった。誰よりも長く居たかった。
一秒一秒、一曲一曲を噛み締めたいから。
急遽卒業コンサを行うことになったから人が来るのかどうか、正直すごく不安だった。
僕なんかが卒業しても、誰も来てくれないんじゃないかって。
こんなこと考えるのも変なのかもしれないけれど、
それが僕が「娘。」でいれたどうかの証になると思うから。
リハを済ましてあとは始まりの時間を待つだけ。
すごい緊張が僕を襲う。
こんなに緊張したのは加入当時初めてテレビに映ったとき以来かもしれない。
ボンッと肩に手を乗せられた。
後ろを振り向くと、飯田さんだった。
「カオリより先に卒業しやがって」
笑った。そう言って笑うと、飯田さんは今度は僕の背中を2回、叩いた。
「ビシッと決めなよ」
「・・・はい!」
975 :
てと
:2004/12/26(日) 23:45
ステージ上へと飛び出すと、歓声の大きさに一瞬たじろいだ。
そこにはがら空きの客席なんてどこにもなくて、大勢のファン。
みんな、来てくれたんだ。
オープニングから快調に飛ばす。
一曲一曲を、大事に。
僕にとっても、みんなにとっても、忘れられない夜にしてやる、そう思いながら。
コンサでは恒例となった浪漫のギターソロ。
下手くそかもしれないけれど精一杯弾く。いつもよりうねりすぎて、みんな笑っていたけど。
ギターソロを終えると不思議と拍手が沸き起こって、僕達を盛り立てた。
「ありがとう!!」
大声で叫ぶと、みんなが返してくれる。
これだから、コンサはやめられないんだ。
976 :
名無し募集中。。。
:2004/12/27(月) 06:08
いいのぉ
977 :
名無し募集中。。。
:2004/12/27(月) 10:21
なけるよ
978 :
てと
:2004/12/27(月) 20:51
コンサート、アンコールも順調に済ますと、
あとは卒業セレモニーを残すのみとなった。
会場は静まり返って、僕の事を見ている。巨大のモニターには僕が映し出されている。
マイクを持つ手が、震えていた。
目を閉じて、鋭く息を吐く。
胸に手を置いて摩ると、僕はマイクを口元に向けた。
『今日は、本当に僕のために、かどうかは分からないけど来てくれてありがとう』
茶化す様に言うと客席が軽く沸く。
でもメンバーは誰一人として笑っていなかった。それがちょっと辛い。
『なんで僕がモーニング娘。に入ることが出来たのか、疑問でならないけれど、
今はただつんくさんに感謝したいです。
だって、こうやってみんなと同じ時を共に出来たんだから。』
ドッと湧く観客。嬉しくてたまらなかった。
チラッと客席から涙を覗かせている人を見て、ちょっとだけ泣きそうになりながら。
僕は続けた。
979 :
てと
:2004/12/27(月) 20:59
『そして、もう一つ。つんくさんに感謝したい事があります』
ここでまた、一息つく。
胸がきゅーっとしめつけられる様な感覚を覚えるのは、何故だろう。
僕は顔をみんなの方へと向けた。顔はもうよく見えない。
視界が開けるのを邪魔する何かが、僕の目の前に広がって、空間を歪ませていた。
『みんなと、モーニング娘。のみんなと、
ハロプロのみんなと、出会えて良かった。心からそう思う。』
大きな歓声が聞こえた。でもそれを確認できる目は今の僕にはない。
鼻を啜る。
目頭がすごく熱かった。
でも今日は、拭っちゃいけない。そう思った。
『ホント、情けない。泣かないって決めてたのに。』
頑張れ。
そんな声が次々と耳に飛び込んでくる。
うん頑張る。頑張るけど・・・今の、その一言はちょっと痛すぎるよ。
980 :
てと
:2004/12/27(月) 21:12
『最後に、本当に最後になりますが・・・。』
心を、出来るだけ落ち着かせる。
精一杯、精一杯気丈でいたいから。
メンバーにこれ以上、情けない姿を見せたら、ちゃんと卒業できないから。
『これから僕は、一人で活動していくことになりますが、
どうか、これからもずっと、
モーニング娘。を、ずっと応援してやってください。』
目から雫が零れ落ちると、視界が少しだけ開けた。
メンバーの顔が映って、少し驚いた顔をしているのが確認できた。
何人も涙を流している。
僕のために涙を流すなんて、そんな安い涙流しちゃダメだよ。
それに、まだ話は終わってないよ。
『みんなの、がんばってる姿を、
ずっとその目で、その心で、見続けてあげてください。
これがモーニング娘。の僕からの、みんなへの最後のお願いです』
大歓声がステージ上の僕達を包む。もうダメ、ごめん。
涙が止まらなかった。
981 :
てと
:2004/12/27(月) 21:21
僕の涙がひかないうちに、みんなのスピーチが始まった。
5、6期は一番年長の愛ちゃん、亀井さんが代表になって、
4期以前は全員一言ずつくれるという段取りだったけど、
何を言うのか、リハで触れなかったから知らなかった。
「先輩、卒業おめでとうございます!」
元気一杯の声が飛びこんできて、安心したのも束の間。
亀井さんの方へと視線を移すと、肩が震えていたのが目に入った。
「先輩の分まで、絵里達頑張りますから!心配しなくて、いいんですよ?」
意地悪だな、まだ泣かせたいの?
胸の奥から目まで何かが繋がって、一気に熱くなるような、そんな感じがした。
「世界一可愛い後輩を持って、先輩は幸せですよ!!
以上!!エ・リ・ザ・ベ・ス・キャメイでしたぁ!!」
ワッとみんなが僕達を包む。涙を隠してくれるかのように。
982 :
てと
:2004/12/27(月) 21:30
「先輩。」
愛ちゃんは、精一杯気丈に振舞おうとしているのがよく分かった。
震えているのに、体が震えているのにグッと力を入れて、無理矢理抑え込んで。
それだけで、言葉は要らないくらいだった。
だってこれ以上話されてしまうと、また涙が出てしまう。
「卒業、おめでとうございます。
あたし達5期は、入ったばっかんときに先輩に大分迷惑をかけたり、
お世話になったりしました。ホントに、感謝して、ます。」
途切れ途切れになる言葉達が、逆に僕の胸にじわじわと響く。
今はどんな言葉を聞いても、もしかしたら泣いてしまうのかも。
「ごめんなさい、泣きそーで、大したこと言えません・・・。
お互い成長して、これからも頑張りましょう・・・。」
大きく一礼した愛ちゃんの背中はやっぱり震えていて、僕の体も気づいたら震えていた。
983 :
てと
:2004/12/27(月) 21:39
藤本さんは6期とは何故か別枠でここに入った。
マイクを持つその手の先、目はやっぱりどこか睨んでいるようで。
でも精一杯笑ってくれた。
「卒業オメデト。」
ワザと軽いノリを装ってくれているのが、嬉しかった。
これ以上泣かせるような一言が続くと、壊れてしまう。
「美貴より先にソロになってんじゃねぇよ!!」
客席大爆笑。
さっきまで泣いていたメンバーさえも笑っていた。
藤本さん自身も笑っている。
ちょっと笑えないけれど、思わず笑ってしまった。
ま、これで涙も拭けたでしょう。そんな顔をしている藤本さん。
アイコンタクトで返すと、笑ってくれた。
「待ってろよ。」
984 :
てと
:2004/12/27(月) 21:39
「卒業おめでとう。」
よっすぃ〜はあくまで冷静。
涙を見せる様子もなく、むしろ笑顔を見せてくれた。
この方が、僕も楽かもしれない。
「入ったばっかのとき、おどおどしてるあんた、可愛かったよ。でも・・・。」
お客さんもこの時ばかりは少しだけ笑った。
でも、そのあとの一言はやっぱりよしこの上手さだ。
「カッコよくなりやがって。かっけーよ、今のお前。」
思わず少し笑ってしまった。
ありがとう、聞こえないように呟く。
でもよっすぃ〜の方が、かっけーよ。
「じゃあ、あばよ!」
大きな盛り上がりを見せる客席。やっぱ、すごい。
985 :
てと
:2004/12/27(月) 21:48
僕のフライングで追い抜かれる形となった石川さんは、
ちょっとだけ複雑な表情でマイクを持っていた。
でも、マイクを口元に向けると、パッと笑顔が咲く。
「卒業おめでとう。」
ありがとう、そう返したくなるような言い方だった。
「あなたが入ってきたとき最初、男の子ってこともあって、
あんまり話せなかったよね。今でも覚えてる。」
加入当初、僕はあまりみんなと話すことが出来なかった。
それまでテレビの向こう側にいた人達が、というのもあるし。
僕を避けてた石川さんに気づいてしまったのもあるし。
でも、
「でもいつだったかな。私が熱出しちゃったとき。
お薬が切れちゃっていて。
北海道で、
冬なのに雪の中スタッフよりも誰よりも先にお薬探しに行ってくれて。
あそこから打ち解けたよね、あのときはありがとう。」
改めてお礼を言われると照れくさい。
でも、僕が追い抜かしたことを一言も口にしない石川さんを見ているだけで、
ちょっと瞼の裏が忙しいことになっていた。
「寂しくなるけど、なやみがあったらいつでもお姉さんに相談しなさいよ。」
あのときの約束、覚えていたんだ。
くすっと笑う石川さん。大歓声。その影で、静かに頬を伝う何かを隠した。
986 :
てと
:2004/12/27(月) 21:53
矢口さんが、小さい体を少しみんなより前に出して立つ。
マイクを両手で抱えていたけど、左手を離すと右手で持った。
「卒業おめでとう。」
笑顔はない。何もかもが突然だったから、無理もないのかもしれないけど。
僕はまた一息深く吐き出すと、矢口さんのほうに目を向けた。
「最初入ったときは、ホントどうしようかと思ったけど、
すぐにそんな心配がないって分かったよ。これだけ大きくなっちまったしな。」
ここで始めて笑顔を見せてくれた。目が合って、僕も笑い返す。
笑顔になっているか、自信ないけど。
「これから色々大変だと思うけど、自分の力を信じて、根性で乗り切れ。
ここまで来れた、その持ち前の根性でさ。」
「・・・はい!」
思わず返事をする。マイクは手にない。
ただ、精一杯声を張り上げた。
987 :
てと
:2004/12/27(月) 21:58
最後の一人である飯田さんが、ゆっくりと僕に近づく。
何歩か歩み寄った所で、その足を止めた。
「卒業おめでとう。」
その大きな目は確実に僕の目を捉えている。
その瞳を見つめ返すと、吸い込まれそうな、そんな錯覚を覚える。
「モーニング娘。としては今日が最後だけど、
これからは一人のソロアーティストとしての人生が始まるんだよ。」
「・・・はい。」
ファンの人に見てもらう、ということを忘れてしまったみたいに、
僕達はお互い目をあわせて話した。
「長く長くて、険しくて険しい人生になると思うけど。がんばってよ。
人生ってのはさ、ホント素晴らしいもんなんだから。」
観客からざわめきが起こり始める。僕も気がついた。
この曲で、締める、モーニング娘。としての僕。悪くないかもしれない。
「ソロアーティストとして、しっかり大成できるように祈りを込めて、」
飯田さんはマイクをファンのみんなへと向ける。
矢口さんが横に立つと、合図をかける。
「せーの!!」
『I wish!!!』
やめてよこんな演出。
また涙が出てきちゃったじゃないですか。
988 :
名無し募集中。。。
:2004/12/28(火) 01:31
いやはや、最高ですな
てとさん素晴らしいです
989 :
名無し募集中。。。
:2004/12/28(火) 07:57
うーーん!!
とてもよいですよ・・・
あとはメンバーとの絡みかな
990 :
名無し娘。
:2004/12/28(火) 20:22
1000が先か500kが先か
991 :
てと
:2004/12/28(火) 21:58
誰もいなくなった会場の静けさは、祭りの後の静けさと同じ。
この静かな空間で、今日という日を一人、振り返った。
目を瞑ると何の音もない、何もない、ただの闇。
なんとなく感慨に耽っていると、後ろからちょんと肩を叩かれた。振り向くと指がほっぺに当たる。
「なにしてんですか?」
「終わったな、って思って」
愛ちゃんだった。
「これからは一人でこの会場を埋めなきゃ。みんななし、自分の力で」
「…本当に卒業しちゃうんですよね」
「うん」
ゆっくりとステージの真ん中へと、二人で歩く。
こんなに広いステージを、一人で駆け回る。少しだけ怖い気もした。
992 :
てと
:2004/12/28(火) 21:59
「やめないで、なんて言いません」
愛ちゃんは精一杯、と思える笑顔をみせてくれた。
「言ったってどうしよもないし、それに…」
「それに?」
「…やっぱいいです」
「え」
愛ちゃんの目は、セレモニー中と同じくらいに潤んでいた。見るだけで、涙腺を刺激される。
愛ちゃんはさっきよりもニコッと笑うと、
「ソロアーティストとして活躍する先輩、楽しみにしてます」
「……」
やばい、涙が出てきた。でも、ここで僕がすべき事は、泣くことじゃない。
僕は愛ちゃんと同じように、グッと引き締めると、
「ありがとう」
今僕の出来る、最高の笑顔で返した。
てとの『僕と娘。の夢物語』終わり。
993 :
てと
:2004/12/28(火) 22:05
容量の最後を自分で埋めてしまいそうですが、あとがきをさせてください。
書き始めた当初、夢見さんの言葉を信じて繋ぎを出来ればと思って書き出しました。でも僕の書き込み速度が上がるにつれ、
僕以外の職人さんの書き込みが減って乗っ取りみたいになってしまって、すごい罪悪感を覚えました。
このスレは本来参加型のスレ。僕一人の行動で他の人達が書き込めないのだとしたら…そう思うと辛いです。
遂に小説スレで紹介されるようになってから、もはや参加型のスレの空気は完全に亡き者にされ、正直色んなものに押しつぶされそうになりました。
だから僕はこのスレを持って身を引かせてください。僕が書いたものをなかったものとして、夢物語を続けてください。
我侭で、身勝手なのは分かってます。調子乗ってんじゃねぇと言われても仕方ありません。
でももし、書いてもいいと言う声があるなら…その時は書かせて頂きたいと思います。読みたい方が、もしいるのなら。
でもその時は、こんな風に毎日書く、なんて事は自粛します。
以上、長々と書きましたが僕の拙い文章を読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。
てと。
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