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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜

1 :名無し娘。:2003/09/09(火) 18:55
前スレ

俺と娘。の夢物語
http://teri.2ch.net/mor2/kako/977/977128657.html
俺と娘。の夢物語〜第2章〜
http://teri.2ch.net/mor2/kako/986/986831774.html
俺と娘。の夢物語〜第3章〜
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1004618557/

このスレを狩と共に終わらせてしまうのは、
余りにも惜しい。

845 :てと:2004/10/24(日) 17:54

 出された料理はこの季節に嬉しいクリームシチュー。
 それにサラダが横に顔を並べていた。見た目は大丈夫。さてお味は・・・。

 パクッ。

 「どうですか?」
 
 愛ちゃんは大きな目でじーっと僕の顔を見つめている。
 僕はスプーンで使えない右手の代わりに左手でOKサインを作った。

 「・・よかった〜。」
 「意外と美味しい。」
 「意外は余計ですよ。」

 口の中が空になった所でコメントをすると、愛ちゃんは不満そうに顔を膨らませた。

846 :てと:2004/10/25(月) 20:30

 「お風呂どうぞ。」
 「はいっ!」

 愛ちゃんに先に風呂に入ってもらい、僕は食器を片付けた。
 今日まで3日、同居してるけどどうやら感づかれてはいないらしい。
 小川さんと紺野さんに突っ込まれた時は焦ったけど・・・。
 
 「♪」

 風呂場のほうから気持ちのいい鼻唄が聞こえてくる。
 ・・・言う必要もないか。

 3日目だけどまだ布団に慣れきらない。色々慣れない事が重なってあんまり
 しっかりと睡眠が取れている気がしなかった。今日も寝付けそうにない。

 ごそごそと布団を這い出ると、1本のアコギを拾い上げる。
 眠れない夜は眠らない夢を。僕は静かに旋律を奏でた。すると、

 ―――ひとりぼっちで少し退屈な夜♪
 
 壁越しに聴こえる、小さな歌声。少し驚いたけど、僕はそのまま弾き続けた。

 ―――私だけが淋しいの?Ah Ah♪

 二人きりの静かなセッションは、夜の間ずっと響いた。

847 :てと:2004/10/26(火) 18:36

 「あ〜美味かった。」
 「ホント。」

 よっすぃ〜と晩御飯をいっしょに食べた。二人ゴトでのちょっとした会話が、
 まさか本当に実現するとは思わなかった。僕達はこの間収録のあったお店で
 おなかいっぱい食べると、帰り道も楽しく話しながら歩いた。

 「で、今度さくらの曲が」
 「あ!!!」
 「どしたの急に。」

 さくら、と言われて僕はとんでもない事を思い出した。まずい。
 
 「え、もしかして。」
 「そのもしかして!!」

848 :てと:2004/10/26(火) 18:36
 慌てて駆け出す。全速力で家まで。

 家の前に着くと、そこには誰もいなかった。

 「・・・あれ?」

 鍵穴に鍵を差し込んで開ける。しかし扉は開かなかった。
 
 「?」
 
 もう1回。ガチャッ。確かに鍵が開く音がした。でもドアノブに手をかけた瞬間、
 ガチャッ、という音が聞こえた。・・・・・。

 ピンポーン♪

 『はい。』
 「ごめんなさい、申し訳ございませんでした。』
 『・・・今開けます。』

 どうやら管理人さんに妹だと偽って開けてもらったらしい。
 でも何も知らずに帰ってきて誰もいなかったから愛ちゃんはかなりご立腹。
 結局この日はひたすら誤り倒した。
 
 

849 :名無し娘。:2004/10/27(水) 01:25
誤り倒してますな。

850 :てと:2004/10/27(水) 18:05

 愛ちゃんの家のマンションが復旧した。
 報告が入ったの時にはもう夕食を作っている最中だったから、とりあえず今日までは
 うちに泊まるということで話がまとまった。明日のオフに、愛ちゃんは家に帰る。

 『いただきます』

 家で誰かとご飯を食べるのは久しぶりだったけど、今日で終わり。
 なんかまた寂しくなるな、なんて思いながら僕はカレーを口に運んでいた。
 ふと愛ちゃんを見ると美味しそうにカレーを食べていてくれて、なんだか嬉しかった。

 食事が終わったあと食器を洗い、一段落着いた所で僕達はソファの上でくつろいだ。
 どうでもいい話なんてしながら、リラックスして。そしてある時会話が一瞬、途切れる。
 愛ちゃんはまるでその沈黙を待っていたみたいに僕を見た。

 「あの。」
 「何?」
 「先輩のベッド、どう考えても1人用やないと思うんでけども。」

 遂に気づかれた。いや、遂にではないと思う。きっとずっと気になっていたけど、
 敢えて言わなかったんだろう。
 僕は思わず溜息を着きそうになって、なんとか飲み込んだ。冷静に、話そう。全部。

851 :てと:2004/10/27(水) 18:06

 「昔ね。・・・住んでたんだよ、彼女と。」
 「え・・。」
 「今はもう別れたけどね。あのベッドはずっと、捨てられなくて。」

 あのベッドだけじゃない。捨てても忘れられないのは分かっているから、元カノの
 匂いがするものを僕は捨てる事ができずにいた。未だに、僕の家の中で眠っている。
 愛ちゃんは少しだけ震えながら、ゆっくりとした口調で言った。

 「それって・・・メンバーの誰かですか?」
 「ううん、違うよ。それはない。」

 その言葉を弾みに、ふと頭の中に過去の出来事がよぎる。僕はなんて弱い人間なんだろう。
 回想は僕の涙腺を刺激するには、充分過ぎるものだった。
 僕は顔を落すと、左手の掌で顔を覆った。 

 「・・・・先輩失格だな・・・・後輩の前で・・・涙なんか流しちゃって・・・。」
 「そんなことないですよ。」 

 突然右手にぬくもりを感じた。びっくりして歪んだ視界の中右手に視線を移すと、
 愛ちゃんの両手に優しく包み込まれた右手がそこにはあった。
 少しの間、忘れていた感触。愛ちゃんはもう1度僕を見た。

 「ごめんなさい・・・あたしは思いださせた。だから・・せめて・・・・
  でも・・あたしに出来るのはこれが精一杯です。          」
 「・・・・ありがとう。」


 次の日早朝、朝ご飯を食べた後愛ちゃんは笑顔で出て行った。
 僕は少し腫れて一重になった目を撫でながら、ゆっくりと手を振った。

852 :名無し娘。:2004/10/28(木) 12:00
僕のキャラが立ってきていい感じ

853 :名無し娘。:2004/10/28(木) 19:40
んで、結局高橋とは、やったの?やらなかったの?

854 :てと:2004/10/28(木) 21:37

 「よかったぁ〜・・・。」

 小川さんがそっと胸を撫で下ろすと、少しの雑談の後電話を切った。
 一息つき、少しするとまた電話をかける。その繰り返し。
 一通り電話を終えたのか、小川さんは携帯をしまうとぽかんと口を開けて畳の上に転がった。

 「あ・・・・。」
 「?なんですか?」
 「いや、なんでもない。」
 「?変なの。」

 言おうと思った言葉を飲み込んだ。
 何を言わなくてもみんな想っている。小川さんもそれを知っていると思ったから。
 僕の顔を見て小川さんは少しボーっと考えると、口元が緩んだ。
 
 「ありがとうございまーす。」

 ほら、メンバー同士は見えないけど暖かい何かで繋がっている。

855 :てと:2004/10/29(金) 21:52

 『続いては――』

 ゲストの紹介が行われ、テンションの大して上がらないトークが繰り広げられる中、
 フレームを外れた場所で僕は矢口さんと雑談をしていた。

 「紺野さん頑張りましたね。」
 「緊張してたけどな。よくやったよー。」
 『それでは曲のほうに――』
  
 パチパチパチ・・・・。

 拍手が聞こえて、慌てて拍手をする。

 「あとはファンのみんなの前で」
 『矢口はどうなの?』 
 「え、あ、はい!」
 「ぶっ。」

 急に振られた矢口さんは慌ててマイクを取って、横の僕は思わず笑ってしまった。

 「笑わないでよー。」
 
 矢口さんはそう言って笑いながら、タモリさんに精一杯応対をした。

856 :てと:2004/10/30(土) 18:16

 「こんなのどうですかぁー?」
 「いやいや、先輩はこっちが似合うっちゃ。」
 「こっちの方が絶対可愛いの。」

 3人はそんな事を言いながら、そこら中の商品を持ってきては僕の体に重ね合わせてくる。
 ホント、なんでこんなもん売ってんのかな〜?

 「いやいいから、自分で選ぶよ。」
 「えー、絵里が選ぶんです!」
 「れいなが!」
 「やっぱりこれが一番可愛いの。」

 3人とも「私が私が」と競うように明日のための“ブツ”を選び続ける。
 どれもこれも奇天烈なものばかりでいやになるけど、変なら変なほどウケるのも事実。
 あとはいかに年甲斐性もなく変なものを選べるか、だけど・・・。

 「これにする。」
 『えーー!』

 明日、みんなの反応はいかに。

857 :名無し娘。:2004/10/31(日) 12:09
ハロウィンか。
娘たちの仮装パーティー見たいなあ。

858 :てと:2004/10/31(日) 19:03

 「よし行きましょうか。」

 くじ引きでハロウィン部長となった小川さんを先頭に、怪しい服に身を包んだ軍団は
 静かに楽屋を出た。ただ単に色んな格好をして仮装パーティーをするのもよかったけど、
 今回は楽屋に押しかけてアメリカと同じ様なスタイルで決行することになった。
 『中澤裕子様』と書かれた楽屋の前に立つ。
 
 「行きますよ。」

 小川さんの声を合図にドアを開けると、突入した。

 『trick or treat!!』

 部屋に飛び込むも、誰もいない。みんな呆気にとられて楽屋中を見回した。

 「作戦変更!中に隠れて戻ってくるのを待ちます!」

 その声を聞くと同時に、一人場違いにピンクのフリフリを着た石川さんが(本人曰くシンデレラ)
 衣装ダンスを開けると、

859 :てと:2004/10/31(日) 19:03

 「おらぁぁ!!!」
 『キャーーー!!!』
 
 飛び出してきたノーメイクで骸骨衣装の中澤さんと、吸血鬼の保田さん。
 逆にドッキリをされた僕らは思わず大声を開けて逃げ出した。
 一番ドアに近かった猫耳肉球の田中さんが真っ先にドアを開ける。しかし、

 「わっ!!」
 「あ!後藤さんそれすごく可愛いです!」
 「え?!」
 
 予想外のリアクションに戸惑う声。
 真っ黒い悪魔の格好をしたごっちんがそこには立っていた。
 横にいるのは顔が隠れて誰だかよく分からないけどスクリームの仮面をつけている。
 そして一人遅れて現れた。

 『ジェイソン!!』

 一人姿が見られなかったと思ったらこんなところに。長身のジェイソン。
 迫力のあまり何人か僕にしがみ付き、でもすぐにびっくりして左右に散る。

 『ボブサップ!!』

 もう誰が誰だか分からない。大騒ぎになった楽屋。
 全員ワケも分からず喚き散していると、

 ガチャッ

 「あんたたち、何やってるの!!!!」
 「うわぁぁぁ!!!!」

 顔面にパックをつけて真っ白になっていたマネージャーが、
 『第一回ハロウィン仮装大賞』となった。

860 :てと:2004/11/01(月) 20:49

 「たな・・・か!!」
 「よっ!亀井!!」
 「ほっ!」

 繰り広げられる激しい戦い。でも負ける気はない。よっすぃ〜は確かに強敵だけど、
 負けられない。

 「いい・・・だ!!」
 「おっと!ダニエル!!」

 決まった、そう確信した瞬間、

 「ルル!!」
 「ル〜?!えっと・・・えっと・・・・・あ。」

 つま先の本当に先と激突したボールはよっすぃ〜の方へと飛んだ。
 よっすぃ〜はそれを華麗にインサイドでさばくと、キャッチした。

 「おごりね。」
 「負けたー!!よーし、次のお題はサッカー選手だ!!」
 「これ以上やったらおごりの本数越えるよ?」
 「・・・すみません。」

861 :てと:2004/11/02(火) 18:38

 楽屋でギターの練習をしていると、飯田さんが近づいてきた。
 今楽屋は二人だけ。飯田さんは優しげな笑顔で僕に手を伸ばした。

 「貸して。」
 「どうぞ。」

 慎重にギターを渡すと、飯田さんは肩にかけてゆっくりと弦を弾き始めた。
 しばらくして口ずさみ始めたのは聞き覚えのある曲。でも英語だった。

 「・・・カーペンターズですか。」
 「うん、最近覚えたんだ。」
 「I'm on the top of the world looking♪でしたっけ。」
 「ん、そんなところ。」

 軽やかかつ爽やかなストロークの飯田さんのギターは、聴いていてなんだか癒された。

862 :てと:2004/11/03(水) 17:38

 難しい顔をした大人のあなたは、とても深刻な表情で。
 まるで、人生において重大な局面を迎えているかのように、悩んで。
 それでも誰にも話さずに抱え込んで。
 僕は話しかける以外に選択肢はなかった。

 あなたは僕が差し伸べた手に対しても難しそうな顔をしましたね。
 その顔は本当に辛そうで、見ている僕も辛くて。
 でも遂に、あなたは口を開いた。
 とても言いにくそうに、でもはっきりと。

 「今晩赤ワインと白ワインどっちがええかな?」
 バタンッ!!
 「あ!なんで行くん!待って!待って!!」
 
 姐さん、僕はもう疲れました。

863 :名無しちゃんいい子なのにね:2004/11/04(木) 02:10
>>861

|◇´)つ<「卒業」のほうやろ?

864 :てと:2004/11/04(木) 18:32

 「う〜ん・・・。」

 不意に聞こえてきた声の方向を騒がしい楽屋の中必死に探す。
 声の正体は紺野さんだった。肩を片手で抑え、首を回したりして少しだけ
 辛そうな顔をしている。

 「どうしたの?」
 「なんか肩が凝っちゃって・・・。」
 
 紺野さんの手をどけて肩をもんでみる。
 かなりガチガチに硬くなっていてびっくりした。
 
 「あ、いいですよ先輩!そんなわざわざ。」
 「センターで色々大変だろ。陰で踊ってる先輩に任せなさい。」
 「もう。」
 
 観念して抵抗をやめた紺野さん。
 こんなカチンコチンになってるのを知ったのに見過ごすなんてできない。
 僕はゆっくりとマッサージを開始した。
 肩をゆっくりと揉み解し、首へと移行していく。

 「ホント、すみません。」

 紺野さんは終止謝りっ放しだった。

 マッサージ中ずっと、
 後ろで何故か亀井さんが腕立て伏せをしまくっていたけど、その意図はよく分からなかった。

865 :名無し娘。:2004/11/04(木) 23:34
腕立て伏せワラタ

866 :名無し娘。:2004/11/05(金) 12:46
亀ワラタ

867 :てと:2004/11/05(金) 20:38

 すー、すー。

 静かな寝息が静かな楽屋を流れるように渡っていく。
 年末に向けて少しずつ忙しさが増す中、みんな疲れが溜まっているみたいだ。
 寝息の根源を探そうと一人一人を見ていくと、すぐに誰のものだか分かった。
 
 僕は彼女にゆっくりと近づくと、壁にもたれ掛かって僅かな休み時間の浅い眠りを
 楽しんでいるその姿を見て、少しだけ悪戯をしたくなった。
 
 「(いくつになってもこれだから・・・。)」
 
 自分の事ながらちょっとだけおかしくなる。僕はちょいちょいっと悪戯をすると、
 何食わぬ顔で元いた場所に戻った。

 新垣さんが前髪の変化にものすごくテンパっていたのはその数分後の事だ。

868 :名無し娘。:2004/11/06(土) 12:19
イイネー    

869 :てと:2004/11/06(土) 22:41

 本番前。いつものように手鏡を持って、道重さんが自分の顔を見ていた。
 いつもならこの後「うんっ!今日もかわいい!」って言って石川さんが対抗して・・・
 でも今日はいつもと様子が違った。

 「うん?」

 ガクッ、とその場で道重さんの声を聞いた全員がこけそうになる。

 「どうしたーしげさん、今日は可愛くないのか?」

 矢口さんが問いかける。道重さんはすごい悩んだ顔をして、

 「いや可愛いのは確かなんですけど、ちょっと今日目が2ミリほど腫れてるみたいで・・・。」
 『2ミリ?!』
 「いや分かんないから。」

 呆れながらもツッコミをしっかり入れる藤本さんも藤本さんだ。

870 :名無し娘。:2004/11/07(日) 01:45
顔の2mmは結構影響出るよー

871 :てと:2004/11/07(日) 21:34

 楽屋でメールを打っていたら楽屋に残っているのはいつの間にか僕一人になっていた。
 携帯をしまってバックを取り、いざ帰ろうとしたとき、

 ガシッ

 壁から姿を現した手に足をつかまれた。

 「うわ?!」

 よく見るとそれは幽霊とかじゃなくて、

 「どーもーエリザベスきゃめいでーす。」
 「・・・亀井さん、どうしたの、道重さんと帰ったのかと思った。」
 「ちょっとこっちに来てみる気はありませんか?」

 隙間から紙を一枚、亀井さんは取り出した。そこには何故か『入部届』
 
 「・・・・何部?」
 「隙間部。」
 「・・・・お疲れ様ー。」
 「あ!!先輩待ってください!!隙間部員部員番号3番になってください!」
 「2番いるの?!」

 じゃれ合っているうちに気がつくと時計は7時を告げていた。
 

872 :MONIX ◆h6RjqrC4Ko :2004/11/08(月) 03:00
久しぶりにこのスレ覗いたけど、てとさん
相変わらず高クオリティでがんばってますなぁ〜
これからもこの調子でがんがってください!

873 :てと:2004/11/08(月) 21:28

 ルーレットが当たりを告げると、ジュースがもう一本、出口から顔を出した。

 「お、・・・でもそんな飲みたくないなぁ。」

 2本のジュースを手にスタジオに入ると、ばったりごっちんに会った。

 「あ、ごっちん。おはよー。」
 「おはよー。どうしたのそのジュース。」
 「ああ、これ。当たりだって。・・・そうだ、あげるよこれ。」
 「え、いいの?サンキュー。」

 ごっちんの手に渡すと、ごっちんはニコニコ顔で微笑んだ。すぐに開けて飲もうとすると、

 「あれ、開かない。」
 「貸してみ。」

874 :てと:2004/11/08(月) 21:29
 
 プシュッ。

 気持ちのいい音とともに、少しだけジュースの香りが鼻にかかった。
 
 「ありがとー。あ、そうだ。お金借りてたよね・・・。」

 ごっちんは財布から1000円取り出すと、渡してくれた。

 「じゃ、またね。」
 「うんまたね。」

 お互いに手を振るとそれぞれレッスン場へと歩き出す。でもその時、
 不意にこそこそと内緒話をしている6期3人が視線に飛び込んできた。
 ちょうど進行方向の先だからそのまま歩いていくと、妙な単語が聞こえてきた。

 「絶対ヒモ!!」
 「いいやパシリだっちゃ!」
 「だって缶わざわざ開けてたの。」

 あの〜、みなさん?

875 :てと:2004/11/09(火) 21:05

 「あなたは誰と見ますか?・・・って美貴達だもんね。」
 「あたしはたんと先輩で満足なの!」
 「どうだか。」

 アレグリア2を松浦さんと藤本さんのコンビに誘われて3人で観にいく事になった。
 それにしてもサーカスって、何度見ても人間業とは思えない。
 ただただ舌を巻くばかりだ。

 「しょうがないじゃないですか。観に来たら面白おかしく書かれるに決まってますもん。」
 
 松浦さんはそう言って藤本さんにギュッとくっつく。藤本さんも別にいつものこと、
 といった表情で普通にしていた。

 「でもさ。」
 「なんですか?」
 「俺要らなくない?」
 「いいじゃん、余ったんだから。おお!!」
 『え?・・おお!』

 藤本さんが歓声を上げると、僕と松浦さんは1テンポ遅れて驚いた。

876 :名無し娘。:2004/11/10(水) 11:09
楽しそうだなあ

877 :てと:2004/11/10(水) 23:16

 夜、仕事も終わりベッドの上で特に何をするわけでもなくごろごろと時間を過ごしていると、
 段々と眠くなってきた。目を閉じて寝入りそうになった所で携帯の着信音が僕を
 現実へと連れ戻す。
 メール着信。石川さんからだった。

 「・・・・?」

 明らかにおかしい。メール内容は僕に送ったとは考えづらいものだった。

 『あの、今度もしよかったら一緒にお食事に行きませんか?』

 ありえない。敬語だし・・・でも、
 
 「あ。」

 今度は電話。また石川さんからだった。

 『ごめん今のメール削除して永久に忘れて』
 「誰に送るつもりだったのかな〜?」
 『消して!!』
 「リライトしてー♪」
 『ちょっとぉ!お願いだからぁ!』
 「分かってます。・・・がんばってね。」
 『はーい、って余計なお世話よ!』
 
 ピッ。
 

878 :名無し娘。:2004/11/11(木) 15:50
誰に送ったんだぁあああ

879 :てと:2004/11/11(木) 21:07

 楽屋の畳の部分で仰向けで寝転がっている田中さんの横を、細い糸が通った。
 田中さんはじーーっとそれを睨むような目で見た。少しずつ進んでいく糸。

 田中さんは何を思ったか、手を出してそれに触れてみた。
 まだ姿勢は寝たまま。一度手に触れると手を離し、今度はじゃれるように手を動かす。
 一気に遠くへと跳ねる糸。
 その時田中さんの目が光る。
 体を返し、すごい勢いで糸に飛びついて転がって見せた。
 糸を捕まえた田中さんはすごく満足そうな顔。

 糸から手を離した亀井さんは、満面の笑みで言った。

 「れいな可愛い〜。」
 「はっ!絵里!遊んだっちゃね!」

 立ち上がる田中さん。亀井さんはさっと逃げると、田中さんは獲物を追うような目で
 走り出した。

880 :てと:2004/11/12(金) 21:03

 保田さんがノートパソコンをカタカタといじっている。
 耳にはヘッドフォンが装着されていて、指を動かしながらあーでもないこーでもないと
 試行錯誤していた。

 「何やってるんですか?」
 「作曲。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「何よ。その長い沈黙。」
 「・・・遂に自給自足かぁ。」
 「違うわよ!!!」

 保田さんはいきなりキレると僕の頭を画面の前まで引っ張る。
 画面上にはよく分からないけど長さの様々な黒い棒と赤い棒、青い棒が階段状に並んでいる。
 よく分からないけどどうやら音符を表しているらしい。

 「趣味。遊びみたいなもんよ。あんたもやったら?」
 「・・・作曲か〜。」
 「ギターも弾けるんだからやったら楽しいと思うけど。」
 「う〜ん、考えておきます。あとつんくさんに頼みますよ。」
 「何を?」
 「保田さんに曲を」
 「余計なお世話よ!」
 
 その日の保田さんのツッコミは藤本さんより疾かった。

881 :てと:2004/11/13(土) 18:45

 朝、家を出るとその寒さに少しだけびっくりした。
 いきなりこんなに冷え込むとは夢にも思わなかった。あんまり厚着で来なかったから、
 少し苦痛だった。
 電車の中は暖かくてよかったけど、降りると再びその寒さに身体が縮こまった。
 でもそんな僕とは対照的に平気そうな顔をして歩いてる娘がいた。
  
 「藤本さん、丈夫だね。」
 「北海道はこんなもんじゃないし。寒いの?」
 「・・・情けないけど。」
 「それでも男かよ。」
 「『娘。』ですから。」
 「娘でも男だから!」

 ビシッと突っ込まれたり、ボケたり。笑っているうちに身体が大分暖まって、
 楽屋に着いた頃にはもうぽかぽかだった。

882 :名無し娘。:2004/11/14(日) 00:07
美貴帝最強伝説

883 :てと:2004/11/14(日) 22:41

 矢口さんがさっきからバタバタと楽屋中を走り回っている。
 その顔には余裕の色が全くない。走るたびにパーカーのフードが大きく揺れる。

 「ない!ない!携帯どこ?!」

 誰かに電話してもらえばいいのに、みんな多分同じ事を考えてるけど誰も言わない。
 その慌てっぷりがなんだか可愛いからか、それとも見ていて面白いからか。
 特にそれをニヤニヤと見ていたのは遊びに来ていた辻ちゃんと加護ちゃんだった。
 
 「お前らか!」

 焦った矢口さんはすぐに二人を疑う。

 『違うよー!』

 見事なユニゾン。矢口さんは諦めて走り出す。

 大きなフードの中ではブツが左右に揺れていた。

884 :名無し娘。:2004/11/15(月) 12:27
イイヨイイヨー       

885 :てと:2004/11/15(月) 20:51

 「あ、安倍さんおはようございます。」
 「おはようございます!」

 テレビ局の廊下で安倍さんとバッタリ会った。相変わらず元気そうな顔で、
 この人も寒いのは平気なんだろうか、なんて考えた。
 折角会ったしお互い時間に余裕があったから廊下の端の椅子に腰掛けて色々話した。
 会うなら収録でいくらでも会えるし、この後一緒に収録だけど、なんとなくそう言う時間も欲しかったし。

 「最近寒いですね。」
 「体調管理しっかりしないとダメだよ。」
 「はい、身体が資本、ですよね?」

 僕がそう言うと安倍さんは満足そうに笑顔を見せる。
 
 キッズの子が横を通りかかる。

 「はっくしゅん!」
 「あ・・・。」
 「あはは。」

 思わず二人で笑ってしまった。なんていうか、微笑ましい。
 適当に話した後お互いに背を向けて歩き出す。
 その時後ろから咳をする声が聞こえたけど、聞かなかったことにした。

886 :てと:2004/11/16(火) 23:34

 スポーツフェスティバルの翌日、吉澤さんが楽屋で蹲っていた。

 「あ゛〜・・・誰か助けて〜・・・。」
 
 はしゃぎ過ぎて筋肉痛。グッタリしていてもう動けない、って感じだった。
 吉澤さんは鞄の中からごそごそとブツを取り出すと、足をひょいとズボンから出して
 塗り始めた。
 すぐに匂いが楽屋内を漂う。
 道重さんがそれに耐えかねてか、言い放った。

 「バンテリンは親父くさいですよ。」
 「なぬ?!」

 うろたえる吉澤さん。


 ・・・ごめんなさい、僕も昨日塗りだくりました。

887 :てと:2004/11/17(水) 21:23

 紺野さんとPK対決。ハンデで僕は3m後ろからシュート。
 勝負は接戦。2対2で僕の最後のターン。
 僕は後攻だからこれを決めれば勝ちとなる。

 「決めるよ。」
 「防ぎます。」

 緊張の一瞬。周りの音が何も聞こえなくなったかのような錯覚を覚える。
 外したら延長か・・・。絶対に決めなきゃ。
 僕は軽い助走をつけるとボールへと足を導いた。

 「こらぁぁ!!!スタジオで何やってんの!!」
 『うわぁ!!!』

 いきなりの不意打ちに僕らは二人で逃げ出した。

 「引き分けですね。」
 
 しっかりボールを持ったまま走っている紺野さんは嬉しそうに笑った。

888 :名無し娘。:2004/11/17(水) 23:08
o・∀・)←この口で笑ってそうだな。

889 :てと:2004/11/18(木) 20:45

 ある日の仕事終わり、僕はみんなと一緒に帰らずに一人事務所へと向かった。
 建物に入ったはいいものの、足取りは重い。
 久々の呼び出しだけどその理由はもう分かっている。だからこそ精神的にきつかった。

 「(そりゃいつかは来るけどさ・・・。)」

 決断に迫られてから2ヶ月弱。一日たりともそれについて忘れた事はなかった。
 
 ゆっくりと歩いたのにすぐに部屋の前に着いてしまった。
 僕は息を吐いて気合を入れると、ノックした。

 コンコン
 
 「失礼します。」

 ガチャッ。

890 :てと:2004/11/18(木) 20:45

 ゆっくりとドアを開けると、そこには予想通りつんくさんの姿があった。
 足と手を組んで、くるりと回転する椅子を僕の正面へと回した。

 「ここに呼ばれたっちゅうことは・・・分かっとるわな?」
 「・・・・はい。」
 「どや?決まったか?」
 「・・・・まだ。」
 「ん〜・・・。」

 つんくさんは眉を上に上げて首を傾げると、椅子を1回転、意味もなく回した。
 僕はなんだかその顔を見ていると自分の優柔不断さに腹が立ってしまった。

 「ま、ええわ。」

 すっと、右手の人差し指を立たせる。
 
 「1ヶ月。これ以上は待てん。」
 「・・・はい。」

 ゆっくりと部屋を出る。
 ・・・・もう時間がないらしい。

891 :名無し娘。:2004/11/19(金) 00:29
卒業?

892 :てと:2004/11/19(金) 18:14

 珍しく今度オフをまとめて2日もらえることになった。久しぶりの休みにみんなおおはしゃぎ。
 僕は特に予定もないから家でゆっくりしてようかな、そう考えていたら、
 亀井さんに話しかけられた。

 「先輩。今度のオフ暇ですか?」
 「うん暇だよ。」
 「じゃあ、旅行行きませんか?」
 「うん・・・・ってえ゛?!」
 
 声が上ずる。でも亀井さんはそんな事気づきもせずに話を続ける。

 「さゆとれいなと行くんで、修学旅行の引率の先生みたいな感じに♪」
 「あ、なんだ。」

 思い切り慌てた自分がバカみたいだ。
 ゆっくりしようと思ってたけど、なんだか楽しそうだったから、

 「いいよ。」
 「やった!いいって!」
 「先輩大好きです!」
 「大袈裟だな〜。」
 「実はまだ決まっちょらんのです。」
 「何が?」
 『全部』
 「・・・・・。」
 「せんぱい」
 『よろしくお願いしまーす』

 なんだ、この当たり屋にでもあったような感覚は。
 僕はその日の帰り、旅行代理店に立ち寄って適当にパンフを何枚か拝借して帰った。

893 :てと:2004/11/20(土) 20:53

 マイナス1日目。
 僕は事前に行く準備をしてくるように3人に伝えた。
 楽屋に着くと3人とも旅行用の鞄を持っていて楽屋で話題になっている。
 当然のように僕も聞かれた。

 「あれ、どっか旅行行くの?」
 「え、う」
 「せんぱいはさゆ達と一緒です!」
 『え?!』

 過剰な反応を見せたみなさん。
 僕は速攻で飯田さんに掴まれると、楽屋の反対側まで引きずられた。

 「あんた、何考えてんの。」
 「いや、あの引率を頼まれたんで付き添いを・・・。」
 「何もしない?」
 「当たり前じゃないすか!!」

 何を言い出すのかと思えば。一体飯田さんは僕を何だと・・・。

894 :てと:2004/11/20(土) 20:53

 「後輩っすよ?!手出すなんて」
 「先輩後輩とか、週刊誌はそんな事どうでもいいのよ。」
 「っ。」
 「あんた浮いた話全然出ないでしょ?この間高橋が家いたってばれなかったのは
  マークが少なかったから。でも旅行になってしかも3人いたら違う。
  どうする?他の芸能人に相手にされないから後輩の誰かの気を引こうとしてる、
  なんて書かれたら。」
 「ムカつきますね。」
 「でしょ?」

 飯田さんは真剣な顔つきで、強い目で僕を見た。

 「だから、気をつけていってらっしゃい。」
 「・・・・え?」

 意外だった。てっきり行くな、とかそう言うことを言われるのと思っていたから、
 飯田さんのこの一言の意図を読み取れなかった。

 「今更中止にしても3人が可愛そうでしょ。」
 「・・・飯田さん。」
 「ホントはあたしがいってあげてもよかったけどさ、忙しいのよね。」

 飯田さんは顔をみんなのほうに向けながら、そんな事を小言で言った。

895 :名無し娘。:2004/11/20(土) 23:00
飯田さーん!!(涙)

896 :名無し募集中。。。:2004/11/21(日) 18:55
いい!けど飯田はこういうことはいわないだろうなあ・・・

897 :てと:2004/11/21(日) 20:46

 オフの2日間を最大限に利用したい。
 僕はそう思って前日の新幹線を取って向こうに着いてまず一晩泊まることにした。
 チケットを3人に渡して乗り込む。

 「用意万端だなぁ。」

 引きずるバックがゴロゴロ音を立てて歩く。
 3人は笑顔を隠すように帽子を深く被っている。鞄のほかにもショルダーバックを
 持っていたりして、準備万端なのが伺えた。

 新幹線に乗り込む。
 3席と1席を取ったから3人をまとめて座らせて僕はゆっくりしようと思ってたら、

 「せんぱい、グッパー!」
 「え、3人で座りなよ。」
 「こういう事があったほうが面白いんです!」

 亀井さんに引きずられて参加させられる。そして結果、

 「亀井さん、やっぱ代わる?」
 「・・・いいです。」

 言いだしっぺはハブられる、典型の展開。
 不機嫌そうな亀井さんを見ていると、なんか色々波乱があるかも、
 そんな気がした。

898 :てと:2004/11/21(日) 20:51

 僕は真ん中に座っていた。
 行き先は大阪。
 1時間半くらいの移動だけど、疲れていたのか、僕の端の二人はうとうとし始めた。
 嫌な予感がする。
 予感は的中し、両サイドから頭が僕の肩を襲う。
 ずっしりとした重量感と、良い香り。なんともリアクションしずらい状況だった。

 「亀井さん。」
 「はい?」
 「助けて。」
 「・・・ごゆっくり〜。」

 後ろの亀井さんは拗ねているのか助けてくれない。
 この体勢は大阪到着まで続いた。
 
 道重さんと田中さんはすっきりした顔をして修学旅行の夜のようなテンション。
 それとは対照的な僕に、亀井さんは笑顔で言った。

 「先輩大丈夫ですか?疲れてますけど。」
 「・・・まあね。」

899 :名無し募集中。。。:2004/11/22(月) 11:51
どきどき
これ終わったらソロなのかな?

900 :てと:2004/11/22(月) 19:00

 マイナス1日目の夜。梅田駅内のホテルに僕達4人は素早くチェックインを済ませた。
 もうそれなりに遅い。今日はもう寝るだけだ。
 部屋は当たり前だけど3人と1人分け。でも3人からはブーイングの嵐。

 「しょうがないでしょうが。先生を困らせないように。」
 『はーい。』

 部屋は隣になったから寝る前までは遊ぶことになった。
 適当に遊ぶと、日付がいつの間にか変わっていた。

 「明日それなりに早く出るからそろそろ寝ようか。」
 「よーし、誰が夜這いに行くかじゃんけんだ!」
 「やめい。」
 「あー、今亀井とやめいかけましたよね絶対!石川さんですよ〜!」
 「亀井さん、テンションおかしくない?」

 なんとか宥めて部屋で寝ると、この日は夜這いが来る事はなくてホッとした。

901 :てと:2004/11/23(火) 21:34

 1日目。
 朝ごはんを適当に済ませると、僕達は今回の目玉とも言える場所へ。
 6期はHEY!×3で行った時まだいなかったから、もしかしたら初めての子もいるかもしれない。

 「先輩れいなジョーズ乗りたい。」
 「えーやっぱE.Tだよ〜!」
 「バックトゥーザフューチャー!!これは引けない!」

 やっぱり3人だと収拾がつかない。ちょっとだけ飯田さんの偉大さを感じつつ、
 よく考えたらあの人そんなまとめられてないじゃん、って気づいた。

 「ユニバーサルエクスプレスブックレット使うから順番に行こうか。」

 ユニバーサルエクスプレスブックレットはその名の通りほとんど並ばずに乗れるチケット。
 収録の時は並ぶ事なんかなかったけどこうやって普通の客として来ているだけに、
 こういうのを使って上手く日程をこなさなければならない。
 当たり前なんだけど、なんか違和感を感じた。

 「よし、さゆ、勝負だ。」
 「負けないの。」 
 「じゃ〜んけ〜ん。」
 『ぽん!』

 僕らが買った種類は4種類のアトラクションをすぐに乗れる。でもE.Tとバックトゥーザフューチャーは
 被ってしまい、どっちかにしか使えなかった。
 結果、亀井さん勝利。E.Tは並ぶ事になった。

902 :てと:2004/11/23(火) 21:38

 先に二つ乗れるのを乗ってしまい、E.Tに乗るため並ぶ事に。
 さっきまですいすいと乗れていたのが嘘みたいに混みまくる。
 長時間並んでいても3人は話題が尽きない。ずっと話続けていてこっちが驚いてしまった。

 「こういうのは並ぶんが一番楽しかったりするんです。」

 なるほど、田中さんの言葉には説得力を感じた。

 1時間かけてE.Tを乗り、シュレッグの3Dやらジュラシックパークライドやら、
 最後にスパイダーマンに乗って帰ると、そのまま夕食へ。

 「どこ行く?」
 『お好み焼き!』
 「おお。」

 打ち合わせしたかのように、さっきとは反対に考えが一致。
 あらかじめ調べておいた(というか中澤さん御用達の)美味しいお好み焼き屋さんに行った。
 

903 :てと:2004/11/23(火) 21:44

 お店にはいって適当にお品書きをなぞる。中澤さんに薦められたものを頼むと、
 目の前の鉄板でお好み焼きを焼き始めた。この間の実演販売を何故か思い出した。
 
 「おお!」

 美技。当たり前だけど僕にはあんな風に焼けない。
 ヘラでキレイに四等分されたお好み焼きをお皿に乗せる。えっと確かモダン焼きだっけ。
 中にソバが入った種類の奴ですごく美味しかった。

 「美味しい〜。」
 「せやろ。」
 『え?!』

 横に座ってた金髪の女の人が帽子を取る。なんで店の中で帽子をかぶってたのかと思いきや、
 中澤さんだった。

 「うちも呼べや〜。」
 「ストーカーですか?」
 「なんやと亀井こら!」
 「怒ったー!」

 意外な人物の登場もあってか、お好み焼きもより一層美味しく感じられた。

904 :名無し募集中。。。:2004/11/24(水) 03:09
いい感じ!

905 :名無し娘。:2004/11/24(水) 09:37
修学旅行ってことは・・・

906 :てと:2004/11/24(水) 17:11

 1日目夜。
 トランプやらUNOやら人生ゲームやら、どこから持って来たんだってくらいに3人は
 それぞれの鞄から取り出してみせた。

 「どれやんの?」
 『――――!!』
 「じゃんけんね。」

 意見がバラバラだったのでジャンケンで順番を決め、人生ゲーム→トランプ→UNOの順に。

 「うちも入れて〜なぁ〜。」
 「じゃあ中澤さんには銀行という非常に重要な役職に就いてもらいます。」
 「任せい!」

 道重さんに乗せられて銀行役を買って出た中澤さん。その風景はなんかちょっと悲しい。
 中澤さんは偶然(かどうかは定かではない)にも同じホテルで、明日は朝一で帰るらしいから
 人生ゲームが終わると帰っていった。

 「先輩孤独な一生終えてますね。」
 「そういう亀井さん離婚しすぎ。」
 「えー、子ども産みまくるれーなよりマシですよ!」
 「れいなはさゆよりマシたい。多額の生命保険賭けて死亡事故枠狙って当てたっちゃ。」
 「勝つための手段に過ぎないの。」

 怖・・・。

907 :てと:2004/11/24(水) 17:23

 「じゃあもう寝るぞー。」
 『えー』
 「先生を困らせないで下さい」
 『はーい』

 なんだかんだノリがいい3人を残して僕は部屋へと戻った。
 今日はちょっと振りのチェックをしたかったから、CDを流して何回か練習する。
 男故のソロパートの少なさはダンスでカバーしないと。1回くらいセンターにならないかなぁ、
 なんて思ったこともあったけどそれじゃ「娘。」じゃないよな、と思って考えるのをやめた。
 
 「・・・・・。」

 そのことを思い出すと、自然とつんくさんから受けた宣告を思い出した。
 あと1ヶ月。でも僕にある選択肢は2つではない、1つだ。分かっているけど、離れたくない。
 不安もあるかもしれない。依存してしまっているのかもしれない。
 でも・・・いつまでもここに居ついていいはずもない。いつかは巣立たなきゃいけないんだ。
 まるでピーターパンのような気分がした。

 ピンポーン

 「はい。」

 本当に夜這い来た・・・。誰だろう?確率高いのは亀井さんか道重さんだよな・・・。

 ガチャッ

908 :てと:2004/11/24(水) 17:24

 「・・田中さん?」
 「先輩・・・。」

 その表情はすごく誘うような魅力的なものだったけど、鬼のTシャツで相殺されている。

 「・・・絶対じゃんけんに負けてきたろ。」
 「そぎゃんことなか!!・・・先輩。」

 身を寄せてくる田中さん。絶対罠だ。・・・・・乗ってあげるか。
 僕は田中さんの細い身体に腕を回すと、そっと抱きしめた。
 田中さんの体がビクッと震える。
 髪の毛をそっと撫でながら、ふとドアの方に目を移すと、ドアに挟まりかかったレンズがそこにはあった。
 そしてもうちょっと高い位置からかざされた携帯(おそらく証明)
 亀井さんはさっと顔を出すとニヤニヤしていた。

 「不潔です!!」
 「そう来たか!!でも今時不潔ですは使わないよ。」

 田中さんをそっと離すと、何故かへなへなと地面に崩れ落ちてしまった。
 顔が微妙に赤い。

 「帰ると!」
 「え?れいな?」
 「いいから!」

 なんかいきなり半ギレになった田中さん。二人を引っ張って出て行ってしまった。
 
 「・・・・?」
 
 よく分かんないけど、嵐は去った。

909 :名無し募集中。。。:2004/11/24(水) 17:44
すごくいい感じ!!!!!!

910 :名無し娘。:2004/11/24(水) 21:42
先生余裕あるなあ

911 :名無し娘。:2004/11/25(木) 02:11
1ヶ月って記者会見で卒業発表すらしてもらえないのか・・・

912 :名無し募集中。。。:2004/11/25(木) 02:25
れいあn

913 :てと:2004/11/25(木) 20:55

 2日目朝。起床を告げに部屋のチャイムを鳴らすと、あ゛ーい、と眠たそうな返事が聞こえてきた。
 間もなくしてドアが開く。

 ガチャッ

 「―はよーございます・・・。」

 眠たそうな目をこすりながら田中さんが顔を見せた。
 
 「他の二人は?」
 「絵里もさひゅは寝てます・・・。」
 「起こしますか。」

 僕は部屋の中へとは入っていくと、ベッドの中で熟睡している二人の前に立った。
 田中さんは道重さんの方に行ってくれたから、亀井さんを起こす。

 「亀井さん、朝だよ。」
 「・・・・・・・・。」

 肩をそっと揺する。目を瞑ったまま横向きに寝ている亀井さんの髪がそのたびに僅かに揺れた。

 「亀井さんっ。」
 「・・・・絵里は白雪姫です〜・・・。」
 
 むにゃむにゃ、とワザとらしく呟きながら、亀井さんの口元は緩やかな曲線を描いていた。

914 :名無し募集中。。。:2004/11/26(金) 16:01
ムフー

915 :てと:2004/11/26(金) 18:51

 2日目。
 とりあえず3人とも目を覚ましたみたいだったから、僕は聞いた。

 「どこに行きたい?」

 実は2日目の予定は完全な白紙、3人の行きたい所に連れて行こうと考えていた。
 何も意見がなければ適当にその場で作ろう、そう思って言ったら、3人の意見はここでも合わない。

 「絵里たこ焼き食べたいです!」
 「場所お願い。」
 「異人館村なんか素敵じゃないですか?!」
 「それ神戸だよ。」
 「れいな鴬張りのとこ行きたいです!」
 「京都です。」
 『せんぱいワガママ!!』

 なんで?!僕?僕なのか?
 いきなりワガママ呼ばわりされて困ってしまったけど、とりあえずここを仕切らなきゃいけない。

 「たこ焼きは食べれるとして、異人館村と鴬張りはどっちかしかいけないよ。」

 回ること自体は不可能ではないけど、明日の仕事は朝早い。
 なるべく早く家に帰してあげる事が先輩としての務めというもの。
 道重さんと田中さんは気合の入った顔で拳を握っていた。どうやらじゃんけんをするらしい。

 『じゃんけんぴょん!!』

916 :てと:2004/11/26(金) 18:58

 ピヨピヨピヨピヨ。

 「すごーい!!」

 意外と道重さんが一番はしゃいでたりするから、世の中分からない。逆に田中さんは期待しすぎてたらしい。
 ちょっと不満そうだった。

 「あんま鶯っぽくないと。」
 「まあまあ。」

 道重さんと亀井さんは他人の迷惑も顧みずに走り回っている。ばれたら問題だぞ、これ。

 不意に、一羽の雀が廊下に降り立った。ちゅんちゅん、と鳴きながら歩いている。
 田中さんはそれを見ると、目つきが変わった。慎重に、少しずつ近づく。
 そっと一歩一歩歩き、

 ピヨピヨピヨ

 しかし田中さんの足が奏でた鶯の鳴き声は雀を逃がすには充分だったみたいだ。
 田中さんは飛び去ろうとする雀ににゃぁ、とじゃれたけど届かなかった。

917 :てと:2004/11/26(金) 19:08

 昼までに大阪に戻ると、そこでたこ焼きと明石焼きで有名なお店に入った。
 実はツアー中何度かよっすぃとかと間抜けて来たことのある店だったりする。
 初めて来たときはごっちんもいたな、なんて軽く感慨に耽る。すると、

 「あ!!」
 「頂きまーす♪」

 お箸で持ち上げられたたこ焼きは、あっと言う間に亀井さんの道重さんの中へと納まってしまった。
 
 「あー絵里も絵里も」
 「れいなも」
 「ちょっと待てぃ!!ええい曲者がー!」

 意味不明なノリに3人は喜んでいる。そして喜びながらたこ焼きを次々と自分の陣地?へ。
 
 「あ〜・・・・。」

 既にたこ焼きは半分にまで減らされていた。まだほとんど食べていないのに。
 3人は満足そうな顔で僕に笑いかけた。・・・ま、こんなのもありか。


 帰りの電車も3・1で、今度こそ僕が1に座った。
 出発してから10分ほどしてトイレに行くために席を立つと、3人とも帽子を深くかぶったまま
 眠りに落ちていた。口元しか見えないけれど、安らかなその寝顔を見ると、何故か少しだけ、安心した。

 「・・・お疲れ。」

 僕は口を僅かに動かすと、トイレへと歩き出した。

 きっとあの声は、3人の耳には届いてないだろうけど。それでいい、そう思った。

918 :名無し募集中。。。:2004/11/26(金) 19:54
おお!いいねぇ

919 :名無し娘。:2004/11/27(土) 05:05
朝一の電車で大阪行ってくる!

920 :てと:2004/11/27(土) 20:35

 小川さんが口を半開きにしてぼーーっとしている。その具合は以上で、なんだか眠そう。
 意識がどこか別の世界に飛んでいってしまっているみたいだった。

 遊びに来た辻ちゃんがそれを狙っている。
 その目はまるでどこかの国のスナイパー。
 一定の距離感を保ったままに、慎重に、慎重に、何度も練習をしている。
 そして覚悟を決めたのか。辻ちゃんの腕から、それは放たれた。

 ボンッ!!

 小川さんの目の前で鋭い角度で跳ねたスーパーボールは、見事に小川さんの口の中に突き刺さった。

 「ほご!おごご!!」

 それに気づいた小川さんは口を閉じてしまった。変な声を出してもがいている。
 口の中からボールを出すと、ニコニコ笑っている辻ちゃんに、今まで見たことのないような笑顔を見せた。

 「のんつぁん!!」
 「怒ったー!!!」
  
 なんだか二人とも、すごく楽しそうだった。

921 :てと:2004/11/28(日) 21:13

 中澤さんと飲みにいった。
 旅行から帰ってきてまだ間もないし、そこで中澤さんと会ったからなんか変な感じがする。

 「ついこの間行ったばっかっすよね?」
 「ええやんたまには。ほら、飲み。」

 グラスにお酒を注がれて、仕方なしに口に運ぶ。
 一応まだ未成年だけど、中澤さんはあんまり気にしていない。
 確かにみんな飲んでるし、うちかて飲みまくりやったわぁ、っていう中澤さんの言い分も分かるけど。
 中澤さんのグラスにも御酒を注ぐと、中澤さんはそれをくいっと、飲み干した。

 「あ〜。・・・お前この間の旅行、なんやあれ。」
 「まあ修学旅行みたいなもんですよ。」
 「修学旅行・・・か。」

 どこを見ているのか、よく分からないような顔をしている。
 グラスを軽く揺らすと、中にのお酒は少しだけずれたテンポで揺れ、そのたびに光が少し乱反射する。
 
 「そや・・・。一つ質問してええ?」
 「質問。」
 「心理テストみたいなもんや。」
 「・・・いいですよ。」

 中澤さんの意図がよく読めなかったけど、別に断る理由なんて無い。

922 :てと:2004/11/28(日) 21:21

 「道が―――あるとするやん?」

 中澤さんは手を空中で広げて道を作ってみせた。
 その目こそ据わっているけど、まだ全く酔ってないように思えた。

 「そこをバスが走っとる。乗ってのはお前らや。」
 「はぁ。」
 「そこで!」

 ばーん、と手刀で空中を切裂く。中澤さんはじっと僕の目を見た。

 「道の幅が減った。バスが通るには狭い。いや、通れなくも無いんやけど、乗用車が走るのがちょうどええ。」
 「・・・・。」
 「そこに乗用車が一台、ある。みんなお前に乗れ、言うた。」

 中澤さんはそこでグラスに手を取ると、くいっと残りのお酒を全て飲み干した。
 大きな音を立ててグラスをテーブルに置いた。

 「お前ならどうする?」
 「・・・・・・・。」

 正直、返答に困った。今自分が置かれている状況を、置き換えたような図。
 中澤さんは分かって言っているのか、いないのか。おそらく前者だろう。
 
 「決断の時は、すぐそこまで来とるで。」
 「・・・分かってます。分かってますけど」
 「悩むのは分かるねん。でも・・男なら決めろや。」
 
 中澤さんはコートを片手で強引に椅子から持ち上げ、学生鞄を持つ男子校生のようなポーズで構えた。 
 そしてこっちを見て1回、頷くと、店から出て行った。
 ・・・男なら決めろや、か。

923 :名無し娘。:2004/11/29(月) 21:01

 空き時間に、お昼ご飯を探しにそのとき空いてた新垣さんに誘われてコンビニへと足を運んだ。
 たまにはお弁当以外のものも食べたいな、と思って色々さがすけど、結局パンか
 おにぎりか、ラーメンかあれこれ迷っているうちに弁当で妥協してしまう。
 今日もいつものように弁当を拾い上げるとレジに運んだ。
 
 先にお弁当を買ってお店の外で待っていると、少し遅れて新垣さんが、ちょっと嬉しそうに出てきた。
 
 「どうしたの嬉しそうだけど。」
 「あ、分かります〜?これこれ。」

 新垣さんはコンビニのビニール袋からそれを取り出して見せると、再び笑顔を見せた。
 
 「ホッカイロー!」
 「ドラえもんみたい。」
 「あはは。暖かいですよ〜。もうこれがないといけない季節になっちゃったんだから
  1年って早いですよね〜。」
 「ホント。もう年末だもんね。」
 「紅白まであと1ヶ月ちょっとですよ!」
 「あ・・・そうだね。」
 「?」

 動揺を露骨に出してしまったような気がして、顔を背けてしまった。
 振り返ると新垣さんは僕のことを心配そうな顔をして見ていた。
 
 「どうか・・・しました?」
 「いや、なんでもないよ。俺もホッカイロ欲しいな〜。」
 「あ〜ダメですよ、これは私のですから!残念!」
 「石川さんにだけはならないようにね。」

 冬の風は、頭を冷やすにはちょうどいいみたいだ。

924 :てと:2004/11/30(火) 18:50

 飯田さんのアトリエに連れていってもらった。
 なんでもつい最近絵を描いたみたいで、とりあえず誰でもいいから見せたかったらしい。
 僕はフラフラっと付いていって絵を見ると、その巧さに唸ってしまった。

 「すっげー・・・・。」

 どこだかよく分からないけれど、並木道の紅葉を美しく描いていた。
 赤、オレンジ、黄色が混ざり合い、一つの木を作り上げる。もう散ってしまった葉でさえ
 綺麗に一つ一つ丁寧に描かれていた。

 「大好きな場所。」
 「・・・・・・・・・・・お〜。」
 「あんたが交信してどーすんの。」
 「あ、すんません。でもこれ・・・。」
 
 僕は一つだけ疑問があって、質問した。

 「なんでここに矢口さんがいるんですか?」
 「ああ、ちっちゃいから。」
 「え゛」
 
 飯田さんがなんで矢口さんを選んだのか、結局よく分からなかった。

925 :てと:2004/12/01(水) 21:10

 突然僕らの前に襲い掛かった現実は、驚くほど大きなもので。
 気が動転して一瞬どうすればいいのか、分からなかった。
 
 中澤さんの表情が痛々しい。
 その声はあまりに辛い。でも不幸中の幸いか、今は前を向くしか選択肢がなかった。
 いつも見慣れているモニターも、見たくなんかなかった。

 深く頭を下げる。
 今日の昼、ここで頭を下げていたもう1人のメンバーのことを想って。
 僕達が出来ることなんて、頭を下げることと、歌うことくらいしかない。

 だから、今は全力で歌おう。
 ただただ、ひたむきに。

 だから、今は全力で歌おう。
 全てを忘れて。

926 :てと:2004/12/02(木) 21:23

 午後になって冷え込んできた。テレビ局の外に少し居ただけで身体が大分冷えてしまった。
 冷え切った身体を温めるため、僕は局内の自販機にジュースを買いにいった。
 お金を入れて、コーヒーを買う。
 
 横の椅子に座ろうとすると、ごっちんが缶を持った姿勢を保ったまま壁に寄りかかって寝ていた。
 隣に腰を下ろしてじーっと見つめてみたけど、起きる様子なし。
 僕はコーヒーをそっとごっちんの顔の前に翳すと、そっとほっぺにそれをくっつけた。

 「ふぃっ!・・・ん〜・・あったかいや。」

 驚いて変な声を出したけど、うっすらと目を開けたごっちんは微笑んでくれた。
 でもこっちを向くとすぐに、

 「おりゃ」
 「うあ!」

 冷たい缶を思い切り押し付けられて思わず声を出してしまった。
 ごっちんは満足そうに笑った。

 「お返しお返し。」

927 :てと:2004/12/03(金) 18:16

 携帯をポケットの中にしまうと、視線の先には愛ちゃんと新垣さんがいた。
 新垣さんはコンビニ袋から肉まんをとりだすと頬張っている。
 二人で雑談をしながらおやつタイムといったところだろうか。

 愛ちゃんはあんまんを持っていたらしく、ちぎって新垣さんに渡した。
 新垣さんはそれをおいしそうに食べると、お返しに肉まんをちぎる。

 はい、と愛ちゃんの前に出した瞬間、
 どこからか現れた紺野さんがパクッ、と食べてしまった。
 びっくりする二人。
 もう一回、とちぎって渡すと、
 今度は小川さんが顔を出してきて一口でイン。

 も〜、と言いながら笑う二人。小川さんと紺野さんは満足顔。

 楽屋は今日も平和だ。
 

928 :名無し娘。:2004/12/03(金) 21:35
イイヨイイヨー       

929 :てと:2004/12/04(土) 23:13

 「ドラマ見たよー。」

 石川さんは何の前触れもなく突然僕にそう言った。
 びっくりして何を言っているのかよく分からなかったけど、すぐに思いだす。ああ、最近出たあれか。
 
 最近僕はドラマに出演させて頂いてそれが昨日オンエアーされたらしい。
 石川さんは何を言うのだろう、そう思っていたら口から飛び出した一言はいただけないものだった。

 「相変わらずヘタだね。」
 「?!」
 「もっとこう、なんていうのかなぁ、迫力が足りないんだよね。オーラ?」

 カチンと来て思わず僕は禁じてに即手を出してしまった。 

 「・・・ハイカラさんに言われたくない。」
 「!ちょっと、昔のことを持ち出さないでよ!」
 「いや進歩ないし」
 「何〜?!」

 年甲斐性もなく追いかけっこ。
 
 85年組はなんだかんだまだまだ子どもだよな、自分でも思った。

 「ハイカラさんが通りま〜す♪」
 「も〜う!」

930 :てと:2004/12/05(日) 23:58

 今日の楽屋はチャンピオンずシップで大盛り上がり。
 楽屋は比較的マリノスを応援する人が多かった。
 矢口さんなんかは「真里サポだよ?真里サポ」って自分の名前を主張していた。
 よっすぃ〜は「サントストゥーリオかっけー!絶対日本人じゃないのに日本人かっけー!」
 なんて久々にかっけーを連発。やけに活き活きしていた。

 試合は0−0のままハーフタイム。そこで収録の時間が来てしまった。

 「一発で決めるよ!」

 みんな一致団結したときは強い。本当に一発で撮りを決めてしまった。
 でもだからといって後半開始に間に合うわけではなくて、みんな大急ぎで楽屋に戻った。
 
 楽屋の扉を開けると、付けっ放しだったテレビから大歓声。
 マリノスが1点を先制していた。二つの感情がぶつかり合う楽屋。
 僕は「ウィーアーレッズ!」ってよっすぃ〜と連発してただけに凹んだ。

 試合はマリノスが勝ったけど、レッズサポーターの「ウィーアーレッズ!」が止まらない。
 でも楽屋の中では矢口さんが止まらなかった。

 「勝った勝った勝ったー!!」
 「うっさいうっさいうっさい!矢口さんうっさい!!」

 試合は終わっても、レッズコールが終わっても、楽屋は納まりそうにない。

931 :てと:2004/12/06(月) 20:22

 藤本さんと原宿で適当にふらついていると、サッカーの練習場みたいな場所を見つけた。
 サッカーをしている大学生をじーっと見ていると、藤本さんはいなくなっていた。
 アレ、と思って行方を捜すと、背中に何かを当てられた。

 振り返ると、藤本さんが跳ね返ってきたボールをキャッチして弾ませていた。
 右手で上手くボールをコントロールしてバウンドさせて、足の間を通して左手に移す。
 何回かボールを弄ぶと、そこでキャッチした。

 「どう?ワンオーワン。」
 「・・・どっから持って来たの?」 
 「落ちてた。」
 「・・・やろっか。」
 「よーしやろー!かかってきなさい!」

 

932 :てと:2004/12/06(月) 20:31

 ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ・・・。

 腰を低く保ったままに、ボールは地面と掌を往復運動する。
 左か、右か?

 「ホントさー。」
 「ん?」

 すっと左方向に風を切る感覚。
 あ、と口から出た言葉は白い息だけを残して、藤本さんを掠めた。
 
 「美貴が入ってから、結構経つよね。」

 ふわっと浮き上がるように地面を蹴ると、手首を軽く返すように動かして
 ボールを押し出す。
 黒い放物線を描いたボールは、ボードに当たることなくネットを捉えた。

 「4点リードー。」

 球を両手に持って地面に弾ませながら、笑顔で僕の方を振り向く。
 僕に向かってボールを強く前へと突き出すと、ボールは一直線に僕の胸に届いた。
 鋭いチェストパスを放った藤本さんは、強い目をして言った。

 「まだ、諦めてないから。あんたには負けないよ?」
 
 すっと右手の人差し指を掲げると、

 「もう1本。さあ、来い。次で決めるよ。」

 勝てないな、藤本さんには。

933 :てと:2004/12/07(火) 19:07

 誰かが買ってきたのか、飴玉の袋が机の上に置かれていた。
 みんなそれを取ったりして適当に食べている。段々と少なくなる飴。
 
 僕が食べようと思ったときにはもうほとんど飴は入っていなくて、
 いも味という興味を惹かれるのがラス1だった。

 試しに食べてみよう。
 手を伸ばしてそれを取ろうとすると、誰かの手とぶつかった。
 手を辿って顔までつくと、紺野さんだった。
 目が合う。
 紺野さんは悲しそうな顔をしながら手を引く。

 なんだかものすごい罪悪感に駆られて僕はそれを持ち上げると、紺野さんに差し出した。
 代わりにりんご味の飴を取って食べてみせると、紺野さんはすごく嬉しそうな顔をした。
 
 でも、芋味ってなんだったんだろう。
 すげー気になる・・・。

934 :てと:2004/12/08(水) 18:17

 矢口さんがさっきから大騒ぎ。
 何してんだろう?と思ったら携帯を手に怒ったり喜んだりしていた。
 なんだいつものことか、と思ったけど、いつも僕は気になっていた。

 何を見てるんだ?

 悪口サイト、なんて言ってるのは聞いたことあるし、いつ聞いてもそうとしか答えない。
 個人的に自分も何を言われているのか、興味があったし、今日は勇気を持って覗き込んでみた。

 「みんなよー。」

 矢口さんはそう言いながらも僕が見える範囲でしか隠さない。
 少しだけ見えたその文字を見て、驚いた。

 2ちゃ(ry

 「世の中にはすごいもんがありますからね・・・。」
 「お前なに悟ってんの?!」

 キャハハ、と笑われたけど、なんだか乗る気分じゃなかった。

 いつだっけな、食いまくりとか、はぶられてるとか、書かれたの。

935 :名無し娘。:2004/12/09(木) 13:10
なるほど、「僕」も標的にされたことあるのねw

936 :てと:2004/12/09(木) 19:03

 あそびで、ほんの遊びで曲作りをしていた。
 とは言ったものの、本格的なものとは程遠くて、保田さんのパソコンを使って作った
 ニ曲(くらい作っていた気がする)より全然しょぼい。ギターを使って作っただけ。

 「十分で作ったしな・・・。」

 回音とかそういった装飾音をも使いこなす保田さんは、なんだかんだすごい。
 できの悪いバンドの曲よりもよっぽどいいんじゃないだろうか。

 「終わった〜・・・。」

 わざと大きな声を出して、保田さんが僕に言ってきた。
 リアクションに困る。そういちいち作ったことを自慢してこなくても。
 
 「まずまずかしら。」

 すました顔で保田さんはそう言うけど、すぐに慌て出した。

 「あれ?何よ!!」
  
 ガチャガチャッ!!
 
 キーボードを狂ったように押しまくる保田さん。
 
 「どうしました?」
 「フ・・・フリーズした・・・。」

 ご愁傷様です。

937 :てと:2004/12/10(金) 18:46

 自転車をこいで、今日もコンビニへとお昼ご飯探索。
 掘り出し物を求めて今日はちょっと遠くまで出向いてみた。
 
 テレビ局を出て10分近く走ったところにあるそのコンビニに入ると、
 何故かよっすぃとすれ違った。

 「おお、よっすぃ」
 「おお、珍しいね」
 「たまには遠出しようと思ってさ」

 ニコニコと笑うよっすぃ。
 片手にはコンビニ袋がぶら下がっているけど、多分大した量は入っていない。
  
 「なんかいいのあった?」
 「おにぎりが豊富だよ。」
 「マジで?」
 「マジマジ。ハロプロくらい豊富」
 「どんだけだよ」
 

938 :てと:2004/12/10(金) 18:46
 笑いながらおにぎりを物色しに歩く。
 よっすぃはそのままコンビニの外へと出て行った。

 「あれ、そんなないじゃん」

 ふと外を見ると、よっすぃを目が合う。でも向こうは明らかにまずい、と言った表情。
 
 何故かよっすぃは自転車に跨っていた。

 「あ゛!!」

 よっすぃはなんか言っていたけど硝子越しでよく分からない。
 なんか「ばれちまったらしょうがねぇ」なんて言っているっぽかったけど。

 よっすぃはすっと自転車のキー(スペアキー?)をポケットから取り出してみせると、
 鍵を開けて、一気に足をかけた。

 「おい!!」

 慌ててコンビニの外に出ようと急いだけど、それより速くよっすぃは走り去っていった。

 「……」

 どうしよう、この距離。

939 :名無し娘。:2004/12/11(土) 00:24
スペアキーワロタ。
それにしてもシチュエーション無限だな。感心。

940 :てと:2004/12/11(土) 18:17

 楽屋への道をゆっくりと歩いていると、何か変な声が聞こえた。
 歩けば歩くほど、その声は確実に大きくなる。
 
 「?」

 どこかの楽屋から声が漏れているのかもしれない。
 歩けば歩くほどに近くなるその高い声は、やがてはっきりと聞き取れるようになった。

 辻ちゃんと加護ちゃんだ。

 ゆっくりと楽屋の前に立つと、ドアが開きっぱなしだった。
 閉めておこう、そう思ってそのとき、ちょっとだけのぞきこむと、
 そのとき見えた光景はなんだかひどく現実的だった。

 「せーの、」
 『だぶるゆーでーす』
 「微妙だね」
 「微妙やな。ちょっと被ってないな。まあええや、次はトークの時の打ち合わせや。
  うちが指を1本立たせたら「へぇ〜」で2本は「そうなんですか?」やったな。
  それから・・・・。」

 全部聞くことを、僕の全身が拒んだ。
 そっとドアを閉じると、ちょっとだけ悲しくなった。

941 :てと:2004/12/12(日) 21:09

 「せんぱーい!」
 「何?」

 楽屋に戻ると道重さんがこっちに向かって手を振る。
 僕が聞き返すと同時に道重さんは漫画本を掲げて見せた。

 「ああ、もう読んだの。」
 「面白かったです!」

 たくさんの漫画本を僕に渡す。

 「クリリンのことかー!」
 「うぉ!びっくりした。」
 「だってクリリンをスーパーサイヤ人のダシに使ってるんでもん。
  あと天津飯とヤムチャの弱さ具合もひどいですよ!
  魔人ブウもダラダラしすぎです!」
 「分かった、分かったから道重さん、あのね?」
 「はい?」

 久々に読んだからか興奮し気味だったけどやっと止まってくれた道重さんに、
 僕は言った。

 「何も全巻一気に返すことないよね?」

942 :名無し娘。:2004/12/12(日) 23:08
42巻も貸すなよ

943 :てと:2004/12/13(月) 17:08

 楽屋の空気が重い。
 矢口さんと藤本さんはにらみ合ったまま全く動かなかった。
 石川さんはそれを見て慌てて、声が上ずっている。

 「ちょ、ちょ、ちょっと二人とも!そんなにらみ合わないで楽しく!ね?」

 ♪

 ここ最近よく耳にするようになったあのイントロが何故か室内を流れ出した。
 途端に踊りながら入ってきたのは5,6期の7人。でも顔は泣いている。

 ジャンジャンジャン♪
 
 バンッ!

 ドアが開く。そして出てきたのは、
 
 「おーれーおーれー・・・・」

 ジャガジャガジャンッ♪

 「マツウラサンバー♪おーれーおーれー・・・・」

 ジャガジャガジャンッ♪

 「マツウラサンバーーーーー♪」

 ジャガジャジャンジャンジャジャン♪

 『ボツ』
 「えー絶対ウケますよぉ〜!」

 松浦さんの持ち込みネタは一瞬にして破棄された。

944 :てと:2004/12/14(火) 17:50

 「寒いねー」
 「ホントですよー」

 愛ちゃんと一緒に帰り道を歩く。
 駅までの道のりも段々と寒くなってきて、コートも必須になってきた。
 でも、今日はなんとなく寄り道をした。

 「でもホント変だよ」
 「そんなことないですよ!じゃあ先輩も書いてみて下さい!」

 公園は寒さの割に人が結構いて、子どもが元気そうに駆け回っていた。
 子どもは風の子、なんてよく言ったものだな、なんて考えると年をとった気がする。
 愛ちゃんは走り回る子どもを楽しそうに眺めていた。

945 :てと:2004/12/14(火) 17:50
 あるとき子どもが愛ちゃんと激突した。

 「愛ちゃん大丈夫?」
 「はい。」

 子どもを撫でると、子どもはニコッと笑ってもーにんぐむすめだ!、と指差した。
 一歩遅れてその子どものお母さんと思われる人が慌てて駆け寄ってきた。

 「どうもすみません」
 「ドンウォーリー」
 「・・・・どうもすみません」

 お母さんは子どもを連れるとあっと言う間に離れていってしまった。

 「why?why?why?」

 そ、そりゃぁ、なぁ・・・。Mother本気で引きますよ・・・。

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