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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜
1 :
名無し娘。
:2003/09/09(火) 18:55
前スレ
俺と娘。の夢物語
http://teri.2ch.net/mor2/kako/977/977128657.html
俺と娘。の夢物語〜第2章〜
http://teri.2ch.net/mor2/kako/986/986831774.html
俺と娘。の夢物語〜第3章〜
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1004618557/
このスレを狩と共に終わらせてしまうのは、
余りにも惜しい。
807 :
名無し娘。
:2004/09/30(木) 01:00
確か5期には漢検2級の人がいたような
808 :
名無し娘。
:2004/09/30(木) 01:35
川o・-・)<…3級です……
809 :
名無し娘。
:2004/09/30(木) 08:33
>>807
オレオレ
810 :
てと
:2004/09/30(木) 21:32
今日の仕事が始まるまでの、ほんのささやかな談笑の時間。
僕はよっすぃ〜と石川さんと3人でバカな事を色々話していた。
「あはは!お前バカだろ!」
バシッ
「いてー!よっすぃ〜叩きすぎだから!」
「やっちゃえー!」
思えば加入当初、この円の中には後二人いたような気がする。
別に常にじゃないけど、固まって一緒に話すことがあった。
「マジで?!」
「梨華ちゃん無理するな。」
「嘘じゃないもん!」
最近じゃこの組み合わせも少し珍しくなってきて。
よっすぃ〜はしょっちゅう他の楽屋に遊びに行くし、
石川さんも昔ほどよっすぃ〜にべったりじゃなくなった。
でも最近少しだけ、前のような仲の良さが戻った気がする。
「ほらやったうそじゃん!」
「なんで〜?!」
「梨華ちゃん寒い。」
まるでそれは何かのカウントダウンのように。
永遠にそのときを保ったまま時を止めてしまうのは不可能だ。
こうなるのは自然な事なのかもしれない。
だからこの時間を、僕達は大切に胸に刻み付けていく。
「そろそろ行くよー。」
『はーい。』
大切に、大切に。
811 :
名無し娘。
:2004/10/01(金) 01:03
・゚・(ノД`)・゚・
812 :
名無し娘。
:2004/10/01(金) 06:22
てとに初めて泣かされたんで不貞寝します ・゜・(ノД`)・゜・
813 :
てと
:2004/10/01(金) 23:32
ガチャッ。
「ちーす。」
暇だったからごっちんの楽屋にお邪魔してみた。
中に入るとごっちんはちょうどここからは反対方向を向いていて、
椅子に座っていた。
近づいていくとどうやらその手には本が握られているようだ。
「おお、読書の秋?」
反応はない。よほど本に集中してるのかな?
更に近づいて、横の床に腰を下ろす。
なんの本を読んでいるのか覗き込むと、
「・・・。」
立ち上がると、ドアの方向へと歩き出す。
どうやらお邪魔をしてはいけないらしい。
「昼寝の秋・・・か。らしいな。」
814 :
てと
:2004/10/03(日) 22:26
「お・・・・・重い。」
「あ、これもお願いします♪」
亀井さんと一緒に買い物、基、荷物運び。
男という理由でよく色んなメンバーから誘われ、その度に荷物を持たされている。
飯田さんが言うにはメンバーと親交を深めるいい機会らしい。
加入当初、まだか細い僕をよく連れ回したのはもう忘れた。
「あ、これ可愛くないですか?」
「え?ああ、可愛いじゃん。」
「あ、でもこれもいいな〜・・・。」
亀井さんはバックを二つ、持ち上げてあれこれ考え出した。
どっちを買うのか決めかねているらしい。
「じゃあ〜・・・先輩決めてくださいっ!」
「え?!」
「どっちの方が可愛いですか?」
これもよくあるパターンで、こうなった時は必ずお決まりの台詞がある。
「どっちを選んでも、持つ本人が可愛いから大丈夫だよ。」
「それ・・・本気にしますよ?」
「え」
「嘘です♪じゃあこっちで。」
・・・また遊ばれた。威厳ないなぁ、僕。
亀井さんはニコニコしながらレジの方へと消えていき、帰って来たときには
袋を何故か3つも持ってきた。
815 :
てと
:2004/10/04(月) 18:39
『よっすぃと××』
吉澤:やけにうれしそうじゃない?
××:だってさ〜ずっと出してもらえなかったんだよ?
吉澤:ああそうだね。一人でしか出てなかったよね確か。
××:なんでもあんまし仲いいと誤解されるからってストップかかっちゃってさ。
吉澤:え〜それはない!誤解とか絶対しないから!
××:だよね?でもみんな出てるのに俺だけ出ないなんて凹むし。
吉澤:あはは、凹む凹む。
××:もう誰でもいいから出させてください!って頼みまくったら
『じゃあ吉澤ならボーイッシュで売っているから大丈夫だ。』
ってなって
吉澤:え、あたしの理由ってそんなんなの?
××:・・・・・いやいやいやいや!
吉澤:うわ〜、なんだよそれ〜。
××:まあさっきのは冗談だから。
吉澤:それっぽく聞こえないし。
××:見逃して。
吉澤:あとでジュースね
××:はーい。
816 :
名無し娘。
:2004/10/04(月) 21:35
いいねこれ。うまいね
817 :
てと
:2004/10/05(火) 17:26
吉澤:でもさぁ
××:うん?
吉澤:初め入ってこられた時は意味わかんなかったよ。
××:あはは。そうだろうな〜。いきなり男だもんな〜。
吉澤:うちら娘。っすよ?なんで息子だよ!いきなり連れて来たし
××:あはは、オーディションなかったもんね。
吉澤:ね!妹のバックでコーラスとかやっちゃってさあんた。
『あ、妹よりこっちのが可愛いやん』なんて言ったんだよつんくさん!
××:ちょっと!見てるからそれ言っちゃだめ!
吉澤:でもいくら可愛いからって男は入れないだろ〜!みんな戸惑ったんだよ?
××:ごめん。
吉澤:いや、顔が笑ってるから。
××:うっ。
吉澤:最初男の子入ってくるからってみんな見栄張っちゃってさ。
掃除し出したりして。
××:そういえば初日だけ楽屋きれいだったような。
吉澤:だけは要らないから。
××:ごめん。
吉澤:また笑ってる。
××:ぶっ。
818 :
てと
:2004/10/06(水) 20:41
××:でもこっちだって大変だったんだよ?
吉澤:うん。
××:好きだったモーニング娘。っていうグループの一員になってさ
吉澤:うん。
××:男なのに。
吉澤:うん。
××:楽屋入ったら憧れてた人とかが普通な顔しているんだよ?
吉澤:まあ、そうだねー。
××:よっすぃ〜なんかかなり顔作ってたけど。
吉澤:えぇ?!そんなことないって!
××:いやあるって!すげーすましてたもん!
吉澤:まあそりゃ男の子が入ってくるからすましたりするよ。
××:そうなのかな?でさ、どこ見てもどこ見ても誰かしらいるし、
なんか緊張しちゃうし。こっちが意味分かんない!みたいな。
吉澤:じゃあなんで入ったんだよ。
××:それ言われちゃおしまいでっせダンナ。
819 :
てと
:2004/10/07(木) 20:57
吉澤:最初大変だったよね。
××:うん。みんなにも沢山迷惑かけた。
吉澤:ソロパートとか最初ゼロだっけ?
××:だってファンの人と一緒に叫ぶわけにもいかないし。
吉澤:あはは、そりゃそうだ。
××:じゃんけんぴょーん!
吉澤:キモいから。
××:ごめん。
吉澤:ダンスもひどかったよね、マジこいつ才能ねぇって思った。
××:まあ今もひどいけどね。
吉澤:自分で言わない。
××:はい。
吉澤:歌ももっぱらコーラスだったよね。
××:うん、それで入ったよーなもんだし。
でも無理やり俺のソロを入れるのもどうなのかな、って悩んだ時もあったよ。
吉澤:悩んだといえば身長!
××:お互い様。
吉澤:まあね。あんたちっちゃかったな〜。可愛かった。
××:でっかくなったら卒業だとか言われて毎晩眠れぬ夜を過ごしましたよ。
吉澤:あはは、かわいいー。
××:うるさいな〜。
820 :
てと
:2004/10/08(金) 17:18
吉澤:これから大変だよね。
××:よっすぃ〜サブリーダーだもんな。
吉澤:ないようなもんだし。
××:副キャプテン。
吉澤:部活みたい。
××:俺達ある意味部活みたいなもんだからな
吉澤:だよね〜。
さくらおとめがクラス、新メンバーが新入生、
美貴ちゃんは転校生、あんたは忍び込んできた他校の生徒
××:なんか俺だけひどいな。でもうまい。
吉澤:あたしと矢口さんは留年生(笑
××:すみませんここまずそうなんでカットを
スタッフ:(笑)
吉澤:こんなに二人で話したのはじめてかもね。
××:そうだね。こんな長時間は二人で話さない。
吉澤:二人きりでどっか行くのだって稀だもん。
××:てかあったっけ?
吉澤:・・・・・ないかも。
××:あはは、まあ今度またどっか食べに行こうよ。
吉澤:ここ来る?
××:ここかい!
二人ゴト。『よっすぃと××』終わり
821 :
名無し娘。
:2004/10/09(土) 12:08
二人ゴト面白かったよ
メンバー情報のリークとか、いくらでも話を続けられそう
822 :
てと
:2004/10/09(土) 18:28
楽屋の前で二人ほど騒いでいる人がいた。
矢口さんと保田さんが色々話している。とりあえず、そのせいで通りにくい。
「う〜ん、それもなんか違うよ〜。」
「そうかな〜。じゃあ矢口もなんか意見出してよ。」
なんの話をしているのだろう。耳を傾けると、矢口さんが手を叩いて、
「スポーツの秋!」
「よし!」
二人がそんな意見で合致するとは思わなかった。
なんだか二人とも笑いながら楽屋に入った。多分ボールを取りに入ったのだろう。
なんとなく入りにくかったから、二人が出てくるまで待った。
でも暫く待っても出てこないから、しょうがなく僕はドアを開けた。
ガチャッ
『わ!!』
「うわ!!!」
いきなり驚かされて僕は後ろにこけてしまった。それを見てゲラゲラ笑う二人。
「ドッキリの秋〜♪」
「そ・・・。」
『そ?』
「そんな秋あるかー!!!」
「マジギレの秋〜♪」
そのあとの追いかけっこで、次の日保田さんだけ筋肉痛になったという。
823 :
てと
:2004/10/10(日) 20:50
「あ〜〜!!このために生きてるっちゅうか〜♪」
「もっと飲むべぇぇ〜!」
「わらしらってりーらーたいへんらったのよ〜!」
「あの〜・・・皆さん。」
なんていうか、置いていかないでください。
中澤さんと安倍さんと飯田さんのいわゆるオリメンの人達と帰り道
たまたま会って無理やり引っ張られて2時間。
まさかこんなに豹変されるとは思いもしなかった。
しかも僕は一応まだ未成年だから公共の場でお酒を飲むわけにもいかない。
トランスした3人に酒を飲まされかけては止め、飲まされかけては止め、
その繰り返しのループ。
「ほらほら〜たまにははめを外すもんだべ〜♪」
「いや、まずいです。」
「ええねんええねん心配せんで。」
「え?」
中澤さんの言う事がいまいち分からず、聞き返す。
でもすぐに聞き返した事を後悔した。
「どーせお前の年齢がいくつとか、知っとる一般人なんかおらんもん。」
その日の夜、分かっていながら枕を少し塗らしそうになった。
_| ̄|○
824 :
てと
:2004/10/11(月) 18:57
「あれ?ない!」
いきなり大声を上げたのは紺野さん。すごい形相で楽屋内をうろついている。
その体から発せられる殺気で誰も近寄れない。
まずいな、と感じた僕は勇気をもって話しかけた。
「ど・・どうしたの?」
「ケーキが無いんです!机の置いておいたのに!」
そりゃ、この部室でケーキなんか置きっぱなしにしてたら・・ねぇ?
紺野さんは少し黙り込んだ後、思いついたような表情で辺りを見回し、
「まこっちゃん、口にクリームついてる。」
「え?!そんなはずは」
「犯人!」
「あ!!」
紺野さん上手いな・・・。
でも小川さんも簡単に引っかかりすぎ。
825 :
てと
:2004/10/12(火) 21:17
「ホットマンいいよね〜。」
「ああ面白いですよね〜。」
矢口さんとドラマ談義。
各クール最初になるとみんなでこれがどーだとか色々話したりしている。
メンバーやハロプロの誰かが出たりすればとりあえず1話から見て色々話す。
「主題歌またEXILEですよね。」
「そーそー。Together良かった〜。」
「あれはいい曲ですよね。」
「よーし、おいらもEXILEみたいなユニットを新しく作るかー!」
「え?!」
「ダンスと歌の融合ってーかな?今ユニットないしー。」
「え、でもZY」
「何か言った?」
「いえ、何も言ってません。すみませんでした。」
826 :
てと
:2004/10/13(水) 18:30
ぴたっ。
さっきまで勢いよく走っていた鉛筆の音が消える。
そして間もなくして唸るような声が楽屋中を駆け巡る。
「どうしたの?」
たまらずに聞くと、道重さんは首をかしげて、
「ここなんですけど〜、分かりますか?」
「えっと・・・。」
道重さんが指差したのは数学の問題集の1ページ。
少し寒気がした。どうやら二次方程式のようで、記憶を必死に手繰り寄せる。
「えーーー、・・・ごめんわかんない。」
「えーーー!」
「どうしたんれすか?」
遊びに来てた辻ちゃんが覗き込んでくる。あの、無駄だと思うんだけど・・・。
「ああこれはここをこーして・・・・こうなのれす。」
『・・・・合ってる』
「じゃあね〜。」
帰っていく辻ちゃんの背中には「奇跡」の二文字が浮かんで見えた。
827 :
名無し娘。
:2004/10/14(木) 17:14
さすがののさん。数学は得意なんだよな
828 :
てと
:2004/10/14(木) 21:13
今日のスタジオ入りはかなり早朝で、そのせいで外も結構寒かった。
僕はそれなりに厚着をして家を出た。
電車を降りてスタジオまで歩く。その途中で愛ちゃんと会った。
「愛ちゃんおはよう・・・どうしたの?」
「極寒ですわ〜・・・。」
体をぶるぶると震わせて、でもこれと言った厚着をしていないためかなり寒そう。
でもそのリアクションは少しオーバーに感じられた。
「大袈裟だよ。」
「軽く暖房つけて寝たつもりが冷房で切りタイマー押し忘れました・・・。」
もう暖房って・・・。なんてことはどうでもよかった。
あまりに寒そうな顔をしている愛ちゃんを見殺しにするほど僕はひどい先輩じゃない。
着ていたコートを脱ぐと、愛ちゃんの肩にかけた。
「え、いや、いいですよ!!」
「俺そんな寒くな・・ハクシュンッ。」
「あはは、ほら〜。」
「ははは。」
なんだか笑っているうちに体がぽかぽかと暖まって、なんとかスタジオにたどり着けた。
829 :
てと
:2004/10/15(金) 22:58
疲れたとき、僕はいつも深呼吸をするようにしている。
深く息を吸って吐くと、なんとなくストレスが抜けていくような感覚がして気持ちがいい。
しかしこの日は、
「な〜にため息ついてんだべ?」
「え?」
「この曲聴いたらそんな気はなくなりますっ!」
「え?え?」
「まあとりあえず聞いてよ。」
後浦なつみの襲撃。その片手にはヘッドフォン。
無理やり僕の頭に押し付け、流す。
「ちょっ、やめ、別にため息じゃなく・・・・て。」
やっぱり改めて聞くとインパクトがある。3人の表情を見て、
「あ、そのなんかすみませんでした。」
830 :
てと
:2004/10/16(土) 20:17
すー、すー、と鉛筆で何かを描いているような音が聞こえてきた。
滑らかなその音の主を探ると、一人の画伯が目に入った。
「亀井さん。」
「はい。」
「絵描いてるの?」
「はい!」
話しながら、こっちと度々目を合わせつつも大体は紙を見ていた。
何を描いているのだろう。気になって覗き込もうとしたけど、
「・・・何?」
「これは絵里にだけ分かればいいんです!」
何故か笑顔で答える亀井さん。そのまま作業に戻った。
やっぱりちらちらと視線を感じたけど、気のせいかもしれない。
831 :
てと
:2004/10/17(日) 21:33
夕ご飯、小川さんと紺野さんは今日もガツガツと食べていく。
その量は他のみんなと比べて明らかに多くて、
僕よりも多いくらいだ。
「食べるねぇ。」
「源ですから!」
紺野さんはそう答えた。
「動力源です!」
小川さんはそう答えた。
「ガソリン入れすぎで膨張。」
「藤本さんそのツッコミえぐい!」
832 :
てと
:2004/10/18(月) 21:13
寒い風が道を吹き抜けてゆく。体の震えを感じた。
「寒ぅ〜・・・。」
手を擦り合わせてどうにか暖めようとするも、全然暖かくなる気配がない。
風は止まない。
身を震わせながらも手を擦り続ける僕を見て、安倍さんはしょうがないな、と笑顔を浮かべると、
「ちょっとあげるべ。」
安倍さんは僕に飲みかけのコーヒーを差し出した。
「え、いいんですか?」
「そんな寒がってる後輩を放っておけないっしょ。」
「じゃあありがたくいただきまーす。」
缶コーヒーを手に持つとそれだけで充分暖かかった。
安倍さんの優しさとぬくもりも詰まっている気がして嬉しかったけど、
「あ、でも間接キ」
サッ。
「あ!!」
「はいもう時間は終わりだべー。」
「まだ飲んでません!」
「ゴクゴクゴクゴク・・・・・ぷはー。」
「あー!!!」
一気飲みした安倍さんは少しだけむせると、少しだけ赤みの帯びた頬を隠すように
マフラーを巻き直した。
833 :
てと
:2004/10/19(火) 18:50
「(『CAROLS』だよきっと)」
よっすぃ〜が聞こえないくらいの声で囁く。
僕は首を傾げると答えた。
「(え〜、『Swallowtail butterfly』っぽいっすよ。)」
「(なんだっけそれ)」
「(愛の唄。YEN TOWN BUND。charaさんが歌ってた)」
「(あーあれか。)」
僕らが議論しているのは、石川さんが今MDを聴きながら歌ってる鼻歌。
普通に考えて最近の『CAROLS』が有力だけど、どうだろう。音が安定してなくて、
どっちとも近いし遠い。
「(あれ、転調した)」
「(こんな展開じゃないよね?)」
混乱してると、石川さんがいきなりこっちを向いた。
「浪漫!!」
『え?!』
ありえねぇ、僕もよっすぃ〜も固まったまましばらく動けなかった。
834 :
てと
:2004/10/20(水) 21:36
久しぶりのこの味、この感触。でも今は味わっている暇がない。
ただひたすら掻き込む、それだけ。
横のチャンピオンは圧倒的なスピードの持ち主だ。想像を絶する速さで、
あっと言う間に体の中へと消していく。
彼女の胃袋は宇宙なんだろうか。
考える暇があったら食べろ、脳が体に命令して、僕はまたスピードを上げた。
でもチャンピオンは強かった。
僕が残りあとわずかのというところで箸をおくと、爪楊枝を器用に使って
歯を掃除していた。
「はい、390円。さっさと出すのれす。」
「はい・・・。」
僕は辻ちゃんに指定された額のお金を渡すと、二人で松屋をあとにした。
835 :
名無し娘。
:2004/10/20(水) 22:20
辻ちゃんの口調があれだが……ワロタ
836 :
てと
:2004/10/21(木) 21:51
保田さんが鏡の前で色んな表情を造っている。
「お化け屋敷でも始めたんですか?」
「違うわよ!失礼ね!演技力向上のためにいろんな顔してんの。」
「へぇ〜。」
色々やってんだなぁ、と感心していると、
「やってみる?」
「じゃあせっかくなんで。」
メイク室、たくさん並ぶ鏡の前に座る。喜怒哀楽を順に表現するように、
色々な顔を・・。
「ぷっ。」
「笑わないでくださいよ。」
意外と難しいもんだ、特に喜と楽なんかあまり瞬間的には作りにくい。
台本があって、その流れに沿って感情移入はできてもこういうのはきついかもしれない。
メイク室にメンバーの一人が入ってきた。僕の横に座ると、鏡に映る僕を見た。
少し考えるようなそぶりを見せると、横で思い切り顔を潰した。
「ぶっ!」
「勝ったー!ってあれ?」
「石川!あんたなんなのよ!」
「なによなんなのよ!、ってじゃなくって、福笑いじゃないんですかぁ?」
『違うから!』
僕らは思わず石川さんを『怒』のトレーニング材料にした。
不覚にも石川さんに笑わされたからでは決してない。
837 :
てと
:2004/10/22(金) 21:39
仕事が終わりいざ帰ろう、という時に愛ちゃんに声をかけられた。
帰りの電車も途中まで同じだから一緒に帰ろうということなのだろう。
でも愛ちゃんの様子はいつもと違っていた。
「あの、その〜・・・。」
「?」
何か言おうとしているんだけど、言えない。そんな感じがすごく伝わってきた。
電車の中でもいつまでもそんな様子で、もじもじしていたから、
「どうかしたの?」
「え?!あの〜、ちょっと〜、・・・・すごく言いにくいんですけど。」
「何?言ってみてよ。」
「う〜んと・・・・これ見て何か気づきません?」
高橋さんは足の間に置いてあった鞄をドンと膝の上に乗せた。かなり大きい。
僕の勘が悪いのか、それが意味するものが分からなかった。
838 :
てと
:2004/10/22(金) 21:39
「先日の、台風23号で・・・上の部屋の人が窓開けっ放しでどっか旅行行ってたみたいで
部屋に水が大量に入り込んでうちの部屋の天上から水がいっぱい垂れてきて
復旧作業中で住めないんで泊めてください! 」
一度口が動き出すと早い。僕は高橋さんの言葉を全て理解するのに少しだけ時間がかかった。
「・・・・うちに?」
「はい。だって一人暮らしなのに部屋多いじゃないですか。」
「まあ・・そうだけどさ。」
他のメンバーと比べて僕の部屋は大きい。人一人寝るための場所は充分すぎるほどあるけど・・・。
「ホテルは?」
「お父さんとお母さんはホテルです。ただし福井の」
「いやそうじゃなくて・・・」
「長くなるとお金たくさんかかるやないですか。」
「・・・分かった。いいよ。おいで」
「やったー!」
なんか何言っても無駄そうな気がした。色々と問題があると思うけど・・・。
まあ数日間だけだし、ね?
839 :
名無し娘。
:2004/10/22(金) 23:38
友達のとこに泊まりなさい
840 :
名無し娘。
:2004/10/22(金) 23:46
つづけ!
841 :
てと
:2004/10/23(土) 18:39
「か、帰ろうか。」
「はいっ!」
慣れない。当たり前だけど慣れない。
昨晩はベッドを明け渡して僕は隣の部屋に布団を敷いて寝たけどどうも落ち着かなかった。
普段寝ない所で、ってのもあるし、久しぶりに・・・ってのもある。
仕事に行きやすい距離、充分なスペース、僕の家は確かに止まるにはもってこいなんだろうけど、
色々問題があるような気がする。
帰り道、すぐに背後に気配を感じた。後ろを振り返るとそこにいたのは他の5期メン。
「なんでいるの?」
「愛ちゃんが広いって言ったから。」
「あ・・・そう。」
それは否定しない。確かに広めだ。
842 :
てと
:2004/10/23(土) 18:39
「一人暮らしなのに部屋多いですよね〜。」
口を開けてぽかんとする小川さん。キョロキョロ部屋中を舐める様に見ては
移動を繰り返している。
「2LDK・・・確かに多いですね。」
「愛ちゃんは先輩の部屋使ってるんですか〜。」
「片方の部屋はギターとか置いてあるんだよ。」
僕の説明に3人は興奮して、今の僕の寝どこへ。
『おお!』
自分で買ったもの、頂き物など、たくさんのギターを前に3人は目を丸くした。
「これが初めて買ったやつ、これが始めての給料で買ったやつ、
これがつんくさんにもらったやつ・・・・・。」
「なんか弾いてくださいよ!」
「え?」
843 :
てと
:2004/10/23(土) 18:39
新垣さんにいきなり不意打ちを食らった。
「何を?」
「えっと〜・・・君はぁ〜もう♪忘れたかしら〜♪」
「やだよ。」
『うわ!』
突然の地震で全員バランスを崩す。愛ちゃんはボーっとしてたのか転んでしまったみたいで、
僕は近寄ると手を差し伸べた。
「すみません・・・。」
「帰れって言ってるみたいだよ、地球が。」
『えー!』
「危ないから帰れません!」
「帰っちゃだめって言ってるんですよ!」
「ていうかいっそ泊めて下さい!」
『え?!』
結局負けてこの日は泊めることになった。愛ちゃんの服を借りたりで無理やりやりくり。
・・・俺の寝場所は?
844 :
てと
:2004/10/24(日) 17:54
オフの日の晩御飯。基本的に作ったりコンビニで済ませたり、だけど流石に
コンビニで済ますのもまずそうだ。
「何作ろうかな。」
冷蔵庫を漁っていると、部屋から出てきた愛ちゃんと目が合う。
「あ、あたしが作ります!」
「大丈夫?」
「最近練習してるんで!」
「じゃあお願いしちゃおうかな。何がどこに入ってるか分からなかったら言ってね」
「はい!」
愛ちゃんはいそいそとキッチンへと向かっていき、僕は入れ違いで外へと出る。
ついでにその時エプロンを渡す。
これぞ愛のエプ・・・寒いな。
「熱っ!」
お湯が少し触れたのか、指をくわえている。大丈夫かな・・・。
845 :
てと
:2004/10/24(日) 17:54
出された料理はこの季節に嬉しいクリームシチュー。
それにサラダが横に顔を並べていた。見た目は大丈夫。さてお味は・・・。
パクッ。
「どうですか?」
愛ちゃんは大きな目でじーっと僕の顔を見つめている。
僕はスプーンで使えない右手の代わりに左手でOKサインを作った。
「・・よかった〜。」
「意外と美味しい。」
「意外は余計ですよ。」
口の中が空になった所でコメントをすると、愛ちゃんは不満そうに顔を膨らませた。
846 :
てと
:2004/10/25(月) 20:30
「お風呂どうぞ。」
「はいっ!」
愛ちゃんに先に風呂に入ってもらい、僕は食器を片付けた。
今日まで3日、同居してるけどどうやら感づかれてはいないらしい。
小川さんと紺野さんに突っ込まれた時は焦ったけど・・・。
「♪」
風呂場のほうから気持ちのいい鼻唄が聞こえてくる。
・・・言う必要もないか。
3日目だけどまだ布団に慣れきらない。色々慣れない事が重なってあんまり
しっかりと睡眠が取れている気がしなかった。今日も寝付けそうにない。
ごそごそと布団を這い出ると、1本のアコギを拾い上げる。
眠れない夜は眠らない夢を。僕は静かに旋律を奏でた。すると、
―――ひとりぼっちで少し退屈な夜♪
壁越しに聴こえる、小さな歌声。少し驚いたけど、僕はそのまま弾き続けた。
―――私だけが淋しいの?Ah Ah♪
二人きりの静かなセッションは、夜の間ずっと響いた。
847 :
てと
:2004/10/26(火) 18:36
「あ〜美味かった。」
「ホント。」
よっすぃ〜と晩御飯をいっしょに食べた。二人ゴトでのちょっとした会話が、
まさか本当に実現するとは思わなかった。僕達はこの間収録のあったお店で
おなかいっぱい食べると、帰り道も楽しく話しながら歩いた。
「で、今度さくらの曲が」
「あ!!!」
「どしたの急に。」
さくら、と言われて僕はとんでもない事を思い出した。まずい。
「え、もしかして。」
「そのもしかして!!」
848 :
てと
:2004/10/26(火) 18:36
慌てて駆け出す。全速力で家まで。
家の前に着くと、そこには誰もいなかった。
「・・・あれ?」
鍵穴に鍵を差し込んで開ける。しかし扉は開かなかった。
「?」
もう1回。ガチャッ。確かに鍵が開く音がした。でもドアノブに手をかけた瞬間、
ガチャッ、という音が聞こえた。・・・・・。
ピンポーン♪
『はい。』
「ごめんなさい、申し訳ございませんでした。』
『・・・今開けます。』
どうやら管理人さんに妹だと偽って開けてもらったらしい。
でも何も知らずに帰ってきて誰もいなかったから愛ちゃんはかなりご立腹。
結局この日はひたすら誤り倒した。
849 :
名無し娘。
:2004/10/27(水) 01:25
誤り倒してますな。
850 :
てと
:2004/10/27(水) 18:05
愛ちゃんの家のマンションが復旧した。
報告が入ったの時にはもう夕食を作っている最中だったから、とりあえず今日までは
うちに泊まるということで話がまとまった。明日のオフに、愛ちゃんは家に帰る。
『いただきます』
家で誰かとご飯を食べるのは久しぶりだったけど、今日で終わり。
なんかまた寂しくなるな、なんて思いながら僕はカレーを口に運んでいた。
ふと愛ちゃんを見ると美味しそうにカレーを食べていてくれて、なんだか嬉しかった。
食事が終わったあと食器を洗い、一段落着いた所で僕達はソファの上でくつろいだ。
どうでもいい話なんてしながら、リラックスして。そしてある時会話が一瞬、途切れる。
愛ちゃんはまるでその沈黙を待っていたみたいに僕を見た。
「あの。」
「何?」
「先輩のベッド、どう考えても1人用やないと思うんでけども。」
遂に気づかれた。いや、遂にではないと思う。きっとずっと気になっていたけど、
敢えて言わなかったんだろう。
僕は思わず溜息を着きそうになって、なんとか飲み込んだ。冷静に、話そう。全部。
851 :
てと
:2004/10/27(水) 18:06
「昔ね。・・・住んでたんだよ、彼女と。」
「え・・。」
「今はもう別れたけどね。あのベッドはずっと、捨てられなくて。」
あのベッドだけじゃない。捨てても忘れられないのは分かっているから、元カノの
匂いがするものを僕は捨てる事ができずにいた。未だに、僕の家の中で眠っている。
愛ちゃんは少しだけ震えながら、ゆっくりとした口調で言った。
「それって・・・メンバーの誰かですか?」
「ううん、違うよ。それはない。」
その言葉を弾みに、ふと頭の中に過去の出来事がよぎる。僕はなんて弱い人間なんだろう。
回想は僕の涙腺を刺激するには、充分過ぎるものだった。
僕は顔を落すと、左手の掌で顔を覆った。
「・・・・先輩失格だな・・・・後輩の前で・・・涙なんか流しちゃって・・・。」
「そんなことないですよ。」
突然右手にぬくもりを感じた。びっくりして歪んだ視界の中右手に視線を移すと、
愛ちゃんの両手に優しく包み込まれた右手がそこにはあった。
少しの間、忘れていた感触。愛ちゃんはもう1度僕を見た。
「ごめんなさい・・・あたしは思いださせた。だから・・せめて・・・・
でも・・あたしに出来るのはこれが精一杯です。 」
「・・・・ありがとう。」
次の日早朝、朝ご飯を食べた後愛ちゃんは笑顔で出て行った。
僕は少し腫れて一重になった目を撫でながら、ゆっくりと手を振った。
852 :
名無し娘。
:2004/10/28(木) 12:00
僕のキャラが立ってきていい感じ
853 :
名無し娘。
:2004/10/28(木) 19:40
んで、結局高橋とは、やったの?やらなかったの?
854 :
てと
:2004/10/28(木) 21:37
「よかったぁ〜・・・。」
小川さんがそっと胸を撫で下ろすと、少しの雑談の後電話を切った。
一息つき、少しするとまた電話をかける。その繰り返し。
一通り電話を終えたのか、小川さんは携帯をしまうとぽかんと口を開けて畳の上に転がった。
「あ・・・・。」
「?なんですか?」
「いや、なんでもない。」
「?変なの。」
言おうと思った言葉を飲み込んだ。
何を言わなくてもみんな想っている。小川さんもそれを知っていると思ったから。
僕の顔を見て小川さんは少しボーっと考えると、口元が緩んだ。
「ありがとうございまーす。」
ほら、メンバー同士は見えないけど暖かい何かで繋がっている。
855 :
てと
:2004/10/29(金) 21:52
『続いては――』
ゲストの紹介が行われ、テンションの大して上がらないトークが繰り広げられる中、
フレームを外れた場所で僕は矢口さんと雑談をしていた。
「紺野さん頑張りましたね。」
「緊張してたけどな。よくやったよー。」
『それでは曲のほうに――』
パチパチパチ・・・・。
拍手が聞こえて、慌てて拍手をする。
「あとはファンのみんなの前で」
『矢口はどうなの?』
「え、あ、はい!」
「ぶっ。」
急に振られた矢口さんは慌ててマイクを取って、横の僕は思わず笑ってしまった。
「笑わないでよー。」
矢口さんはそう言って笑いながら、タモリさんに精一杯応対をした。
856 :
てと
:2004/10/30(土) 18:16
「こんなのどうですかぁー?」
「いやいや、先輩はこっちが似合うっちゃ。」
「こっちの方が絶対可愛いの。」
3人はそんな事を言いながら、そこら中の商品を持ってきては僕の体に重ね合わせてくる。
ホント、なんでこんなもん売ってんのかな〜?
「いやいいから、自分で選ぶよ。」
「えー、絵里が選ぶんです!」
「れいなが!」
「やっぱりこれが一番可愛いの。」
3人とも「私が私が」と競うように明日のための“ブツ”を選び続ける。
どれもこれも奇天烈なものばかりでいやになるけど、変なら変なほどウケるのも事実。
あとはいかに年甲斐性もなく変なものを選べるか、だけど・・・。
「これにする。」
『えーー!』
明日、みんなの反応はいかに。
857 :
名無し娘。
:2004/10/31(日) 12:09
ハロウィンか。
娘たちの仮装パーティー見たいなあ。
858 :
てと
:2004/10/31(日) 19:03
「よし行きましょうか。」
くじ引きでハロウィン部長となった小川さんを先頭に、怪しい服に身を包んだ軍団は
静かに楽屋を出た。ただ単に色んな格好をして仮装パーティーをするのもよかったけど、
今回は楽屋に押しかけてアメリカと同じ様なスタイルで決行することになった。
『中澤裕子様』と書かれた楽屋の前に立つ。
「行きますよ。」
小川さんの声を合図にドアを開けると、突入した。
『trick or treat!!』
部屋に飛び込むも、誰もいない。みんな呆気にとられて楽屋中を見回した。
「作戦変更!中に隠れて戻ってくるのを待ちます!」
その声を聞くと同時に、一人場違いにピンクのフリフリを着た石川さんが(本人曰くシンデレラ)
衣装ダンスを開けると、
859 :
てと
:2004/10/31(日) 19:03
「おらぁぁ!!!」
『キャーーー!!!』
飛び出してきたノーメイクで骸骨衣装の中澤さんと、吸血鬼の保田さん。
逆にドッキリをされた僕らは思わず大声を開けて逃げ出した。
一番ドアに近かった猫耳肉球の田中さんが真っ先にドアを開ける。しかし、
「わっ!!」
「あ!後藤さんそれすごく可愛いです!」
「え?!」
予想外のリアクションに戸惑う声。
真っ黒い悪魔の格好をしたごっちんがそこには立っていた。
横にいるのは顔が隠れて誰だかよく分からないけどスクリームの仮面をつけている。
そして一人遅れて現れた。
『ジェイソン!!』
一人姿が見られなかったと思ったらこんなところに。長身のジェイソン。
迫力のあまり何人か僕にしがみ付き、でもすぐにびっくりして左右に散る。
『ボブサップ!!』
もう誰が誰だか分からない。大騒ぎになった楽屋。
全員ワケも分からず喚き散していると、
ガチャッ
「あんたたち、何やってるの!!!!」
「うわぁぁぁ!!!!」
顔面にパックをつけて真っ白になっていたマネージャーが、
『第一回ハロウィン仮装大賞』となった。
860 :
てと
:2004/11/01(月) 20:49
「たな・・・か!!」
「よっ!亀井!!」
「ほっ!」
繰り広げられる激しい戦い。でも負ける気はない。よっすぃ〜は確かに強敵だけど、
負けられない。
「いい・・・だ!!」
「おっと!ダニエル!!」
決まった、そう確信した瞬間、
「ルル!!」
「ル〜?!えっと・・・えっと・・・・・あ。」
つま先の本当に先と激突したボールはよっすぃ〜の方へと飛んだ。
よっすぃ〜はそれを華麗にインサイドでさばくと、キャッチした。
「おごりね。」
「負けたー!!よーし、次のお題はサッカー選手だ!!」
「これ以上やったらおごりの本数越えるよ?」
「・・・すみません。」
861 :
てと
:2004/11/02(火) 18:38
楽屋でギターの練習をしていると、飯田さんが近づいてきた。
今楽屋は二人だけ。飯田さんは優しげな笑顔で僕に手を伸ばした。
「貸して。」
「どうぞ。」
慎重にギターを渡すと、飯田さんは肩にかけてゆっくりと弦を弾き始めた。
しばらくして口ずさみ始めたのは聞き覚えのある曲。でも英語だった。
「・・・カーペンターズですか。」
「うん、最近覚えたんだ。」
「I'm on the top of the world looking♪でしたっけ。」
「ん、そんなところ。」
軽やかかつ爽やかなストロークの飯田さんのギターは、聴いていてなんだか癒された。
862 :
てと
:2004/11/03(水) 17:38
難しい顔をした大人のあなたは、とても深刻な表情で。
まるで、人生において重大な局面を迎えているかのように、悩んで。
それでも誰にも話さずに抱え込んで。
僕は話しかける以外に選択肢はなかった。
あなたは僕が差し伸べた手に対しても難しそうな顔をしましたね。
その顔は本当に辛そうで、見ている僕も辛くて。
でも遂に、あなたは口を開いた。
とても言いにくそうに、でもはっきりと。
「今晩赤ワインと白ワインどっちがええかな?」
バタンッ!!
「あ!なんで行くん!待って!待って!!」
姐さん、僕はもう疲れました。
863 :
名無しちゃんいい子なのにね
:2004/11/04(木) 02:10
>>861
|◇´)つ<「卒業」のほうやろ?
864 :
てと
:2004/11/04(木) 18:32
「う〜ん・・・。」
不意に聞こえてきた声の方向を騒がしい楽屋の中必死に探す。
声の正体は紺野さんだった。肩を片手で抑え、首を回したりして少しだけ
辛そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「なんか肩が凝っちゃって・・・。」
紺野さんの手をどけて肩をもんでみる。
かなりガチガチに硬くなっていてびっくりした。
「あ、いいですよ先輩!そんなわざわざ。」
「センターで色々大変だろ。陰で踊ってる先輩に任せなさい。」
「もう。」
観念して抵抗をやめた紺野さん。
こんなカチンコチンになってるのを知ったのに見過ごすなんてできない。
僕はゆっくりとマッサージを開始した。
肩をゆっくりと揉み解し、首へと移行していく。
「ホント、すみません。」
紺野さんは終止謝りっ放しだった。
マッサージ中ずっと、
後ろで何故か亀井さんが腕立て伏せをしまくっていたけど、その意図はよく分からなかった。
865 :
名無し娘。
:2004/11/04(木) 23:34
腕立て伏せワラタ
866 :
名無し娘。
:2004/11/05(金) 12:46
亀ワラタ
867 :
てと
:2004/11/05(金) 20:38
すー、すー。
静かな寝息が静かな楽屋を流れるように渡っていく。
年末に向けて少しずつ忙しさが増す中、みんな疲れが溜まっているみたいだ。
寝息の根源を探そうと一人一人を見ていくと、すぐに誰のものだか分かった。
僕は彼女にゆっくりと近づくと、壁にもたれ掛かって僅かな休み時間の浅い眠りを
楽しんでいるその姿を見て、少しだけ悪戯をしたくなった。
「(いくつになってもこれだから・・・。)」
自分の事ながらちょっとだけおかしくなる。僕はちょいちょいっと悪戯をすると、
何食わぬ顔で元いた場所に戻った。
新垣さんが前髪の変化にものすごくテンパっていたのはその数分後の事だ。
868 :
名無し娘。
:2004/11/06(土) 12:19
イイネー
869 :
てと
:2004/11/06(土) 22:41
本番前。いつものように手鏡を持って、道重さんが自分の顔を見ていた。
いつもならこの後「うんっ!今日もかわいい!」って言って石川さんが対抗して・・・
でも今日はいつもと様子が違った。
「うん?」
ガクッ、とその場で道重さんの声を聞いた全員がこけそうになる。
「どうしたーしげさん、今日は可愛くないのか?」
矢口さんが問いかける。道重さんはすごい悩んだ顔をして、
「いや可愛いのは確かなんですけど、ちょっと今日目が2ミリほど腫れてるみたいで・・・。」
『2ミリ?!』
「いや分かんないから。」
呆れながらもツッコミをしっかり入れる藤本さんも藤本さんだ。
870 :
名無し娘。
:2004/11/07(日) 01:45
顔の2mmは結構影響出るよー
871 :
てと
:2004/11/07(日) 21:34
楽屋でメールを打っていたら楽屋に残っているのはいつの間にか僕一人になっていた。
携帯をしまってバックを取り、いざ帰ろうとしたとき、
ガシッ
壁から姿を現した手に足をつかまれた。
「うわ?!」
よく見るとそれは幽霊とかじゃなくて、
「どーもーエリザベスきゃめいでーす。」
「・・・亀井さん、どうしたの、道重さんと帰ったのかと思った。」
「ちょっとこっちに来てみる気はありませんか?」
隙間から紙を一枚、亀井さんは取り出した。そこには何故か『入部届』
「・・・・何部?」
「隙間部。」
「・・・・お疲れ様ー。」
「あ!!先輩待ってください!!隙間部員部員番号3番になってください!」
「2番いるの?!」
じゃれ合っているうちに気がつくと時計は7時を告げていた。
872 :
MONIX
◆h6RjqrC4Ko
:2004/11/08(月) 03:00
久しぶりにこのスレ覗いたけど、てとさん
相変わらず高クオリティでがんばってますなぁ〜
これからもこの調子でがんがってください!
873 :
てと
:2004/11/08(月) 21:28
ルーレットが当たりを告げると、ジュースがもう一本、出口から顔を出した。
「お、・・・でもそんな飲みたくないなぁ。」
2本のジュースを手にスタジオに入ると、ばったりごっちんに会った。
「あ、ごっちん。おはよー。」
「おはよー。どうしたのそのジュース。」
「ああ、これ。当たりだって。・・・そうだ、あげるよこれ。」
「え、いいの?サンキュー。」
ごっちんの手に渡すと、ごっちんはニコニコ顔で微笑んだ。すぐに開けて飲もうとすると、
「あれ、開かない。」
「貸してみ。」
874 :
てと
:2004/11/08(月) 21:29
プシュッ。
気持ちのいい音とともに、少しだけジュースの香りが鼻にかかった。
「ありがとー。あ、そうだ。お金借りてたよね・・・。」
ごっちんは財布から1000円取り出すと、渡してくれた。
「じゃ、またね。」
「うんまたね。」
お互いに手を振るとそれぞれレッスン場へと歩き出す。でもその時、
不意にこそこそと内緒話をしている6期3人が視線に飛び込んできた。
ちょうど進行方向の先だからそのまま歩いていくと、妙な単語が聞こえてきた。
「絶対ヒモ!!」
「いいやパシリだっちゃ!」
「だって缶わざわざ開けてたの。」
あの〜、みなさん?
875 :
てと
:2004/11/09(火) 21:05
「あなたは誰と見ますか?・・・って美貴達だもんね。」
「あたしはたんと先輩で満足なの!」
「どうだか。」
アレグリア2を松浦さんと藤本さんのコンビに誘われて3人で観にいく事になった。
それにしてもサーカスって、何度見ても人間業とは思えない。
ただただ舌を巻くばかりだ。
「しょうがないじゃないですか。観に来たら面白おかしく書かれるに決まってますもん。」
松浦さんはそう言って藤本さんにギュッとくっつく。藤本さんも別にいつものこと、
といった表情で普通にしていた。
「でもさ。」
「なんですか?」
「俺要らなくない?」
「いいじゃん、余ったんだから。おお!!」
『え?・・おお!』
藤本さんが歓声を上げると、僕と松浦さんは1テンポ遅れて驚いた。
876 :
名無し娘。
:2004/11/10(水) 11:09
楽しそうだなあ
877 :
てと
:2004/11/10(水) 23:16
夜、仕事も終わりベッドの上で特に何をするわけでもなくごろごろと時間を過ごしていると、
段々と眠くなってきた。目を閉じて寝入りそうになった所で携帯の着信音が僕を
現実へと連れ戻す。
メール着信。石川さんからだった。
「・・・・?」
明らかにおかしい。メール内容は僕に送ったとは考えづらいものだった。
『あの、今度もしよかったら一緒にお食事に行きませんか?』
ありえない。敬語だし・・・でも、
「あ。」
今度は電話。また石川さんからだった。
『ごめん今のメール削除して永久に忘れて』
「誰に送るつもりだったのかな〜?」
『消して!!』
「リライトしてー♪」
『ちょっとぉ!お願いだからぁ!』
「分かってます。・・・がんばってね。」
『はーい、って余計なお世話よ!』
ピッ。
878 :
名無し娘。
:2004/11/11(木) 15:50
誰に送ったんだぁあああ
879 :
てと
:2004/11/11(木) 21:07
楽屋の畳の部分で仰向けで寝転がっている田中さんの横を、細い糸が通った。
田中さんはじーーっとそれを睨むような目で見た。少しずつ進んでいく糸。
田中さんは何を思ったか、手を出してそれに触れてみた。
まだ姿勢は寝たまま。一度手に触れると手を離し、今度はじゃれるように手を動かす。
一気に遠くへと跳ねる糸。
その時田中さんの目が光る。
体を返し、すごい勢いで糸に飛びついて転がって見せた。
糸を捕まえた田中さんはすごく満足そうな顔。
糸から手を離した亀井さんは、満面の笑みで言った。
「れいな可愛い〜。」
「はっ!絵里!遊んだっちゃね!」
立ち上がる田中さん。亀井さんはさっと逃げると、田中さんは獲物を追うような目で
走り出した。
880 :
てと
:2004/11/12(金) 21:03
保田さんがノートパソコンをカタカタといじっている。
耳にはヘッドフォンが装着されていて、指を動かしながらあーでもないこーでもないと
試行錯誤していた。
「何やってるんですか?」
「作曲。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何よ。その長い沈黙。」
「・・・遂に自給自足かぁ。」
「違うわよ!!!」
保田さんはいきなりキレると僕の頭を画面の前まで引っ張る。
画面上にはよく分からないけど長さの様々な黒い棒と赤い棒、青い棒が階段状に並んでいる。
よく分からないけどどうやら音符を表しているらしい。
「趣味。遊びみたいなもんよ。あんたもやったら?」
「・・・作曲か〜。」
「ギターも弾けるんだからやったら楽しいと思うけど。」
「う〜ん、考えておきます。あとつんくさんに頼みますよ。」
「何を?」
「保田さんに曲を」
「余計なお世話よ!」
その日の保田さんのツッコミは藤本さんより疾かった。
881 :
てと
:2004/11/13(土) 18:45
朝、家を出るとその寒さに少しだけびっくりした。
いきなりこんなに冷え込むとは夢にも思わなかった。あんまり厚着で来なかったから、
少し苦痛だった。
電車の中は暖かくてよかったけど、降りると再びその寒さに身体が縮こまった。
でもそんな僕とは対照的に平気そうな顔をして歩いてる娘がいた。
「藤本さん、丈夫だね。」
「北海道はこんなもんじゃないし。寒いの?」
「・・・情けないけど。」
「それでも男かよ。」
「『娘。』ですから。」
「娘でも男だから!」
ビシッと突っ込まれたり、ボケたり。笑っているうちに身体が大分暖まって、
楽屋に着いた頃にはもうぽかぽかだった。
882 :
名無し娘。
:2004/11/14(日) 00:07
美貴帝最強伝説
883 :
てと
:2004/11/14(日) 22:41
矢口さんがさっきからバタバタと楽屋中を走り回っている。
その顔には余裕の色が全くない。走るたびにパーカーのフードが大きく揺れる。
「ない!ない!携帯どこ?!」
誰かに電話してもらえばいいのに、みんな多分同じ事を考えてるけど誰も言わない。
その慌てっぷりがなんだか可愛いからか、それとも見ていて面白いからか。
特にそれをニヤニヤと見ていたのは遊びに来ていた辻ちゃんと加護ちゃんだった。
「お前らか!」
焦った矢口さんはすぐに二人を疑う。
『違うよー!』
見事なユニゾン。矢口さんは諦めて走り出す。
大きなフードの中ではブツが左右に揺れていた。
884 :
名無し娘。
:2004/11/15(月) 12:27
イイヨイイヨー
885 :
てと
:2004/11/15(月) 20:51
「あ、安倍さんおはようございます。」
「おはようございます!」
テレビ局の廊下で安倍さんとバッタリ会った。相変わらず元気そうな顔で、
この人も寒いのは平気なんだろうか、なんて考えた。
折角会ったしお互い時間に余裕があったから廊下の端の椅子に腰掛けて色々話した。
会うなら収録でいくらでも会えるし、この後一緒に収録だけど、なんとなくそう言う時間も欲しかったし。
「最近寒いですね。」
「体調管理しっかりしないとダメだよ。」
「はい、身体が資本、ですよね?」
僕がそう言うと安倍さんは満足そうに笑顔を見せる。
キッズの子が横を通りかかる。
「はっくしゅん!」
「あ・・・。」
「あはは。」
思わず二人で笑ってしまった。なんていうか、微笑ましい。
適当に話した後お互いに背を向けて歩き出す。
その時後ろから咳をする声が聞こえたけど、聞かなかったことにした。
886 :
てと
:2004/11/16(火) 23:34
スポーツフェスティバルの翌日、吉澤さんが楽屋で蹲っていた。
「あ゛〜・・・誰か助けて〜・・・。」
はしゃぎ過ぎて筋肉痛。グッタリしていてもう動けない、って感じだった。
吉澤さんは鞄の中からごそごそとブツを取り出すと、足をひょいとズボンから出して
塗り始めた。
すぐに匂いが楽屋内を漂う。
道重さんがそれに耐えかねてか、言い放った。
「バンテリンは親父くさいですよ。」
「なぬ?!」
うろたえる吉澤さん。
・・・ごめんなさい、僕も昨日塗りだくりました。
887 :
てと
:2004/11/17(水) 21:23
紺野さんとPK対決。ハンデで僕は3m後ろからシュート。
勝負は接戦。2対2で僕の最後のターン。
僕は後攻だからこれを決めれば勝ちとなる。
「決めるよ。」
「防ぎます。」
緊張の一瞬。周りの音が何も聞こえなくなったかのような錯覚を覚える。
外したら延長か・・・。絶対に決めなきゃ。
僕は軽い助走をつけるとボールへと足を導いた。
「こらぁぁ!!!スタジオで何やってんの!!」
『うわぁ!!!』
いきなりの不意打ちに僕らは二人で逃げ出した。
「引き分けですね。」
しっかりボールを持ったまま走っている紺野さんは嬉しそうに笑った。
888 :
名無し娘。
:2004/11/17(水) 23:08
o・∀・)←この口で笑ってそうだな。
889 :
てと
:2004/11/18(木) 20:45
ある日の仕事終わり、僕はみんなと一緒に帰らずに一人事務所へと向かった。
建物に入ったはいいものの、足取りは重い。
久々の呼び出しだけどその理由はもう分かっている。だからこそ精神的にきつかった。
「(そりゃいつかは来るけどさ・・・。)」
決断に迫られてから2ヶ月弱。一日たりともそれについて忘れた事はなかった。
ゆっくりと歩いたのにすぐに部屋の前に着いてしまった。
僕は息を吐いて気合を入れると、ノックした。
コンコン
「失礼します。」
ガチャッ。
890 :
てと
:2004/11/18(木) 20:45
ゆっくりとドアを開けると、そこには予想通りつんくさんの姿があった。
足と手を組んで、くるりと回転する椅子を僕の正面へと回した。
「ここに呼ばれたっちゅうことは・・・分かっとるわな?」
「・・・・はい。」
「どや?決まったか?」
「・・・・まだ。」
「ん〜・・・。」
つんくさんは眉を上に上げて首を傾げると、椅子を1回転、意味もなく回した。
僕はなんだかその顔を見ていると自分の優柔不断さに腹が立ってしまった。
「ま、ええわ。」
すっと、右手の人差し指を立たせる。
「1ヶ月。これ以上は待てん。」
「・・・はい。」
ゆっくりと部屋を出る。
・・・・もう時間がないらしい。
891 :
名無し娘。
:2004/11/19(金) 00:29
卒業?
892 :
てと
:2004/11/19(金) 18:14
珍しく今度オフをまとめて2日もらえることになった。久しぶりの休みにみんなおおはしゃぎ。
僕は特に予定もないから家でゆっくりしてようかな、そう考えていたら、
亀井さんに話しかけられた。
「先輩。今度のオフ暇ですか?」
「うん暇だよ。」
「じゃあ、旅行行きませんか?」
「うん・・・・ってえ゛?!」
声が上ずる。でも亀井さんはそんな事気づきもせずに話を続ける。
「さゆとれいなと行くんで、修学旅行の引率の先生みたいな感じに♪」
「あ、なんだ。」
思い切り慌てた自分がバカみたいだ。
ゆっくりしようと思ってたけど、なんだか楽しそうだったから、
「いいよ。」
「やった!いいって!」
「先輩大好きです!」
「大袈裟だな〜。」
「実はまだ決まっちょらんのです。」
「何が?」
『全部』
「・・・・・。」
「せんぱい」
『よろしくお願いしまーす』
なんだ、この当たり屋にでもあったような感覚は。
僕はその日の帰り、旅行代理店に立ち寄って適当にパンフを何枚か拝借して帰った。
893 :
てと
:2004/11/20(土) 20:53
マイナス1日目。
僕は事前に行く準備をしてくるように3人に伝えた。
楽屋に着くと3人とも旅行用の鞄を持っていて楽屋で話題になっている。
当然のように僕も聞かれた。
「あれ、どっか旅行行くの?」
「え、う」
「せんぱいはさゆ達と一緒です!」
『え?!』
過剰な反応を見せたみなさん。
僕は速攻で飯田さんに掴まれると、楽屋の反対側まで引きずられた。
「あんた、何考えてんの。」
「いや、あの引率を頼まれたんで付き添いを・・・。」
「何もしない?」
「当たり前じゃないすか!!」
何を言い出すのかと思えば。一体飯田さんは僕を何だと・・・。
894 :
てと
:2004/11/20(土) 20:53
「後輩っすよ?!手出すなんて」
「先輩後輩とか、週刊誌はそんな事どうでもいいのよ。」
「っ。」
「あんた浮いた話全然出ないでしょ?この間高橋が家いたってばれなかったのは
マークが少なかったから。でも旅行になってしかも3人いたら違う。
どうする?他の芸能人に相手にされないから後輩の誰かの気を引こうとしてる、
なんて書かれたら。」
「ムカつきますね。」
「でしょ?」
飯田さんは真剣な顔つきで、強い目で僕を見た。
「だから、気をつけていってらっしゃい。」
「・・・・え?」
意外だった。てっきり行くな、とかそう言うことを言われるのと思っていたから、
飯田さんのこの一言の意図を読み取れなかった。
「今更中止にしても3人が可愛そうでしょ。」
「・・・飯田さん。」
「ホントはあたしがいってあげてもよかったけどさ、忙しいのよね。」
飯田さんは顔をみんなのほうに向けながら、そんな事を小言で言った。
895 :
名無し娘。
:2004/11/20(土) 23:00
飯田さーん!!(涙)
896 :
名無し募集中。。。
:2004/11/21(日) 18:55
いい!けど飯田はこういうことはいわないだろうなあ・・・
897 :
てと
:2004/11/21(日) 20:46
オフの2日間を最大限に利用したい。
僕はそう思って前日の新幹線を取って向こうに着いてまず一晩泊まることにした。
チケットを3人に渡して乗り込む。
「用意万端だなぁ。」
引きずるバックがゴロゴロ音を立てて歩く。
3人は笑顔を隠すように帽子を深く被っている。鞄のほかにもショルダーバックを
持っていたりして、準備万端なのが伺えた。
新幹線に乗り込む。
3席と1席を取ったから3人をまとめて座らせて僕はゆっくりしようと思ってたら、
「せんぱい、グッパー!」
「え、3人で座りなよ。」
「こういう事があったほうが面白いんです!」
亀井さんに引きずられて参加させられる。そして結果、
「亀井さん、やっぱ代わる?」
「・・・いいです。」
言いだしっぺはハブられる、典型の展開。
不機嫌そうな亀井さんを見ていると、なんか色々波乱があるかも、
そんな気がした。
898 :
てと
:2004/11/21(日) 20:51
僕は真ん中に座っていた。
行き先は大阪。
1時間半くらいの移動だけど、疲れていたのか、僕の端の二人はうとうとし始めた。
嫌な予感がする。
予感は的中し、両サイドから頭が僕の肩を襲う。
ずっしりとした重量感と、良い香り。なんともリアクションしずらい状況だった。
「亀井さん。」
「はい?」
「助けて。」
「・・・ごゆっくり〜。」
後ろの亀井さんは拗ねているのか助けてくれない。
この体勢は大阪到着まで続いた。
道重さんと田中さんはすっきりした顔をして修学旅行の夜のようなテンション。
それとは対照的な僕に、亀井さんは笑顔で言った。
「先輩大丈夫ですか?疲れてますけど。」
「・・・まあね。」
899 :
名無し募集中。。。
:2004/11/22(月) 11:51
どきどき
これ終わったらソロなのかな?
900 :
てと
:2004/11/22(月) 19:00
マイナス1日目の夜。梅田駅内のホテルに僕達4人は素早くチェックインを済ませた。
もうそれなりに遅い。今日はもう寝るだけだ。
部屋は当たり前だけど3人と1人分け。でも3人からはブーイングの嵐。
「しょうがないでしょうが。先生を困らせないように。」
『はーい。』
部屋は隣になったから寝る前までは遊ぶことになった。
適当に遊ぶと、日付がいつの間にか変わっていた。
「明日それなりに早く出るからそろそろ寝ようか。」
「よーし、誰が夜這いに行くかじゃんけんだ!」
「やめい。」
「あー、今亀井とやめいかけましたよね絶対!石川さんですよ〜!」
「亀井さん、テンションおかしくない?」
なんとか宥めて部屋で寝ると、この日は夜這いが来る事はなくてホッとした。
901 :
てと
:2004/11/23(火) 21:34
1日目。
朝ごはんを適当に済ませると、僕達は今回の目玉とも言える場所へ。
6期はHEY!×3で行った時まだいなかったから、もしかしたら初めての子もいるかもしれない。
「先輩れいなジョーズ乗りたい。」
「えーやっぱE.Tだよ〜!」
「バックトゥーザフューチャー!!これは引けない!」
やっぱり3人だと収拾がつかない。ちょっとだけ飯田さんの偉大さを感じつつ、
よく考えたらあの人そんなまとめられてないじゃん、って気づいた。
「ユニバーサルエクスプレスブックレット使うから順番に行こうか。」
ユニバーサルエクスプレスブックレットはその名の通りほとんど並ばずに乗れるチケット。
収録の時は並ぶ事なんかなかったけどこうやって普通の客として来ているだけに、
こういうのを使って上手く日程をこなさなければならない。
当たり前なんだけど、なんか違和感を感じた。
「よし、さゆ、勝負だ。」
「負けないの。」
「じゃ〜んけ〜ん。」
『ぽん!』
僕らが買った種類は4種類のアトラクションをすぐに乗れる。でもE.Tとバックトゥーザフューチャーは
被ってしまい、どっちかにしか使えなかった。
結果、亀井さん勝利。E.Tは並ぶ事になった。
902 :
てと
:2004/11/23(火) 21:38
先に二つ乗れるのを乗ってしまい、E.Tに乗るため並ぶ事に。
さっきまですいすいと乗れていたのが嘘みたいに混みまくる。
長時間並んでいても3人は話題が尽きない。ずっと話続けていてこっちが驚いてしまった。
「こういうのは並ぶんが一番楽しかったりするんです。」
なるほど、田中さんの言葉には説得力を感じた。
1時間かけてE.Tを乗り、シュレッグの3Dやらジュラシックパークライドやら、
最後にスパイダーマンに乗って帰ると、そのまま夕食へ。
「どこ行く?」
『お好み焼き!』
「おお。」
打ち合わせしたかのように、さっきとは反対に考えが一致。
あらかじめ調べておいた(というか中澤さん御用達の)美味しいお好み焼き屋さんに行った。
903 :
てと
:2004/11/23(火) 21:44
お店にはいって適当にお品書きをなぞる。中澤さんに薦められたものを頼むと、
目の前の鉄板でお好み焼きを焼き始めた。この間の実演販売を何故か思い出した。
「おお!」
美技。当たり前だけど僕にはあんな風に焼けない。
ヘラでキレイに四等分されたお好み焼きをお皿に乗せる。えっと確かモダン焼きだっけ。
中にソバが入った種類の奴ですごく美味しかった。
「美味しい〜。」
「せやろ。」
『え?!』
横に座ってた金髪の女の人が帽子を取る。なんで店の中で帽子をかぶってたのかと思いきや、
中澤さんだった。
「うちも呼べや〜。」
「ストーカーですか?」
「なんやと亀井こら!」
「怒ったー!」
意外な人物の登場もあってか、お好み焼きもより一層美味しく感じられた。
904 :
名無し募集中。。。
:2004/11/24(水) 03:09
いい感じ!
905 :
名無し娘。
:2004/11/24(水) 09:37
修学旅行ってことは・・・
906 :
てと
:2004/11/24(水) 17:11
1日目夜。
トランプやらUNOやら人生ゲームやら、どこから持って来たんだってくらいに3人は
それぞれの鞄から取り出してみせた。
「どれやんの?」
『――――!!』
「じゃんけんね。」
意見がバラバラだったのでジャンケンで順番を決め、人生ゲーム→トランプ→UNOの順に。
「うちも入れて〜なぁ〜。」
「じゃあ中澤さんには銀行という非常に重要な役職に就いてもらいます。」
「任せい!」
道重さんに乗せられて銀行役を買って出た中澤さん。その風景はなんかちょっと悲しい。
中澤さんは偶然(かどうかは定かではない)にも同じホテルで、明日は朝一で帰るらしいから
人生ゲームが終わると帰っていった。
「先輩孤独な一生終えてますね。」
「そういう亀井さん離婚しすぎ。」
「えー、子ども産みまくるれーなよりマシですよ!」
「れいなはさゆよりマシたい。多額の生命保険賭けて死亡事故枠狙って当てたっちゃ。」
「勝つための手段に過ぎないの。」
怖・・・。
907 :
てと
:2004/11/24(水) 17:23
「じゃあもう寝るぞー。」
『えー』
「先生を困らせないで下さい」
『はーい』
なんだかんだノリがいい3人を残して僕は部屋へと戻った。
今日はちょっと振りのチェックをしたかったから、CDを流して何回か練習する。
男故のソロパートの少なさはダンスでカバーしないと。1回くらいセンターにならないかなぁ、
なんて思ったこともあったけどそれじゃ「娘。」じゃないよな、と思って考えるのをやめた。
「・・・・・。」
そのことを思い出すと、自然とつんくさんから受けた宣告を思い出した。
あと1ヶ月。でも僕にある選択肢は2つではない、1つだ。分かっているけど、離れたくない。
不安もあるかもしれない。依存してしまっているのかもしれない。
でも・・・いつまでもここに居ついていいはずもない。いつかは巣立たなきゃいけないんだ。
まるでピーターパンのような気分がした。
ピンポーン
「はい。」
本当に夜這い来た・・・。誰だろう?確率高いのは亀井さんか道重さんだよな・・・。
ガチャッ
908 :
てと
:2004/11/24(水) 17:24
「・・田中さん?」
「先輩・・・。」
その表情はすごく誘うような魅力的なものだったけど、鬼のTシャツで相殺されている。
「・・・絶対じゃんけんに負けてきたろ。」
「そぎゃんことなか!!・・・先輩。」
身を寄せてくる田中さん。絶対罠だ。・・・・・乗ってあげるか。
僕は田中さんの細い身体に腕を回すと、そっと抱きしめた。
田中さんの体がビクッと震える。
髪の毛をそっと撫でながら、ふとドアの方に目を移すと、ドアに挟まりかかったレンズがそこにはあった。
そしてもうちょっと高い位置からかざされた携帯(おそらく証明)
亀井さんはさっと顔を出すとニヤニヤしていた。
「不潔です!!」
「そう来たか!!でも今時不潔ですは使わないよ。」
田中さんをそっと離すと、何故かへなへなと地面に崩れ落ちてしまった。
顔が微妙に赤い。
「帰ると!」
「え?れいな?」
「いいから!」
なんかいきなり半ギレになった田中さん。二人を引っ張って出て行ってしまった。
「・・・・?」
よく分かんないけど、嵐は去った。
909 :
名無し募集中。。。
:2004/11/24(水) 17:44
すごくいい感じ!!!!!!
910 :
名無し娘。
:2004/11/24(水) 21:42
先生余裕あるなあ
911 :
名無し娘。
:2004/11/25(木) 02:11
1ヶ月って記者会見で卒業発表すらしてもらえないのか・・・
912 :
名無し募集中。。。
:2004/11/25(木) 02:25
れいあn
913 :
てと
:2004/11/25(木) 20:55
2日目朝。起床を告げに部屋のチャイムを鳴らすと、あ゛ーい、と眠たそうな返事が聞こえてきた。
間もなくしてドアが開く。
ガチャッ
「―はよーございます・・・。」
眠たそうな目をこすりながら田中さんが顔を見せた。
「他の二人は?」
「絵里もさひゅは寝てます・・・。」
「起こしますか。」
僕は部屋の中へとは入っていくと、ベッドの中で熟睡している二人の前に立った。
田中さんは道重さんの方に行ってくれたから、亀井さんを起こす。
「亀井さん、朝だよ。」
「・・・・・・・・。」
肩をそっと揺する。目を瞑ったまま横向きに寝ている亀井さんの髪がそのたびに僅かに揺れた。
「亀井さんっ。」
「・・・・絵里は白雪姫です〜・・・。」
むにゃむにゃ、とワザとらしく呟きながら、亀井さんの口元は緩やかな曲線を描いていた。
914 :
名無し募集中。。。
:2004/11/26(金) 16:01
ムフー
915 :
てと
:2004/11/26(金) 18:51
2日目。
とりあえず3人とも目を覚ましたみたいだったから、僕は聞いた。
「どこに行きたい?」
実は2日目の予定は完全な白紙、3人の行きたい所に連れて行こうと考えていた。
何も意見がなければ適当にその場で作ろう、そう思って言ったら、3人の意見はここでも合わない。
「絵里たこ焼き食べたいです!」
「場所お願い。」
「異人館村なんか素敵じゃないですか?!」
「それ神戸だよ。」
「れいな鴬張りのとこ行きたいです!」
「京都です。」
『せんぱいワガママ!!』
なんで?!僕?僕なのか?
いきなりワガママ呼ばわりされて困ってしまったけど、とりあえずここを仕切らなきゃいけない。
「たこ焼きは食べれるとして、異人館村と鴬張りはどっちかしかいけないよ。」
回ること自体は不可能ではないけど、明日の仕事は朝早い。
なるべく早く家に帰してあげる事が先輩としての務めというもの。
道重さんと田中さんは気合の入った顔で拳を握っていた。どうやらじゃんけんをするらしい。
『じゃんけんぴょん!!』
916 :
てと
:2004/11/26(金) 18:58
ピヨピヨピヨピヨ。
「すごーい!!」
意外と道重さんが一番はしゃいでたりするから、世の中分からない。逆に田中さんは期待しすぎてたらしい。
ちょっと不満そうだった。
「あんま鶯っぽくないと。」
「まあまあ。」
道重さんと亀井さんは他人の迷惑も顧みずに走り回っている。ばれたら問題だぞ、これ。
不意に、一羽の雀が廊下に降り立った。ちゅんちゅん、と鳴きながら歩いている。
田中さんはそれを見ると、目つきが変わった。慎重に、少しずつ近づく。
そっと一歩一歩歩き、
ピヨピヨピヨ
しかし田中さんの足が奏でた鶯の鳴き声は雀を逃がすには充分だったみたいだ。
田中さんは飛び去ろうとする雀ににゃぁ、とじゃれたけど届かなかった。
917 :
てと
:2004/11/26(金) 19:08
昼までに大阪に戻ると、そこでたこ焼きと明石焼きで有名なお店に入った。
実はツアー中何度かよっすぃとかと間抜けて来たことのある店だったりする。
初めて来たときはごっちんもいたな、なんて軽く感慨に耽る。すると、
「あ!!」
「頂きまーす♪」
お箸で持ち上げられたたこ焼きは、あっと言う間に亀井さんの道重さんの中へと納まってしまった。
「あー絵里も絵里も」
「れいなも」
「ちょっと待てぃ!!ええい曲者がー!」
意味不明なノリに3人は喜んでいる。そして喜びながらたこ焼きを次々と自分の陣地?へ。
「あ〜・・・・。」
既にたこ焼きは半分にまで減らされていた。まだほとんど食べていないのに。
3人は満足そうな顔で僕に笑いかけた。・・・ま、こんなのもありか。
帰りの電車も3・1で、今度こそ僕が1に座った。
出発してから10分ほどしてトイレに行くために席を立つと、3人とも帽子を深くかぶったまま
眠りに落ちていた。口元しか見えないけれど、安らかなその寝顔を見ると、何故か少しだけ、安心した。
「・・・お疲れ。」
僕は口を僅かに動かすと、トイレへと歩き出した。
きっとあの声は、3人の耳には届いてないだろうけど。それでいい、そう思った。
918 :
名無し募集中。。。
:2004/11/26(金) 19:54
おお!いいねぇ
919 :
名無し娘。
:2004/11/27(土) 05:05
朝一の電車で大阪行ってくる!
920 :
てと
:2004/11/27(土) 20:35
小川さんが口を半開きにしてぼーーっとしている。その具合は以上で、なんだか眠そう。
意識がどこか別の世界に飛んでいってしまっているみたいだった。
遊びに来た辻ちゃんがそれを狙っている。
その目はまるでどこかの国のスナイパー。
一定の距離感を保ったままに、慎重に、慎重に、何度も練習をしている。
そして覚悟を決めたのか。辻ちゃんの腕から、それは放たれた。
ボンッ!!
小川さんの目の前で鋭い角度で跳ねたスーパーボールは、見事に小川さんの口の中に突き刺さった。
「ほご!おごご!!」
それに気づいた小川さんは口を閉じてしまった。変な声を出してもがいている。
口の中からボールを出すと、ニコニコ笑っている辻ちゃんに、今まで見たことのないような笑顔を見せた。
「のんつぁん!!」
「怒ったー!!!」
なんだか二人とも、すごく楽しそうだった。
921 :
てと
:2004/11/28(日) 21:13
中澤さんと飲みにいった。
旅行から帰ってきてまだ間もないし、そこで中澤さんと会ったからなんか変な感じがする。
「ついこの間行ったばっかっすよね?」
「ええやんたまには。ほら、飲み。」
グラスにお酒を注がれて、仕方なしに口に運ぶ。
一応まだ未成年だけど、中澤さんはあんまり気にしていない。
確かにみんな飲んでるし、うちかて飲みまくりやったわぁ、っていう中澤さんの言い分も分かるけど。
中澤さんのグラスにも御酒を注ぐと、中澤さんはそれをくいっと、飲み干した。
「あ〜。・・・お前この間の旅行、なんやあれ。」
「まあ修学旅行みたいなもんですよ。」
「修学旅行・・・か。」
どこを見ているのか、よく分からないような顔をしている。
グラスを軽く揺らすと、中にのお酒は少しだけずれたテンポで揺れ、そのたびに光が少し乱反射する。
「そや・・・。一つ質問してええ?」
「質問。」
「心理テストみたいなもんや。」
「・・・いいですよ。」
中澤さんの意図がよく読めなかったけど、別に断る理由なんて無い。
922 :
てと
:2004/11/28(日) 21:21
「道が―――あるとするやん?」
中澤さんは手を空中で広げて道を作ってみせた。
その目こそ据わっているけど、まだ全く酔ってないように思えた。
「そこをバスが走っとる。乗ってのはお前らや。」
「はぁ。」
「そこで!」
ばーん、と手刀で空中を切裂く。中澤さんはじっと僕の目を見た。
「道の幅が減った。バスが通るには狭い。いや、通れなくも無いんやけど、乗用車が走るのがちょうどええ。」
「・・・・。」
「そこに乗用車が一台、ある。みんなお前に乗れ、言うた。」
中澤さんはそこでグラスに手を取ると、くいっと残りのお酒を全て飲み干した。
大きな音を立ててグラスをテーブルに置いた。
「お前ならどうする?」
「・・・・・・・。」
正直、返答に困った。今自分が置かれている状況を、置き換えたような図。
中澤さんは分かって言っているのか、いないのか。おそらく前者だろう。
「決断の時は、すぐそこまで来とるで。」
「・・・分かってます。分かってますけど」
「悩むのは分かるねん。でも・・男なら決めろや。」
中澤さんはコートを片手で強引に椅子から持ち上げ、学生鞄を持つ男子校生のようなポーズで構えた。
そしてこっちを見て1回、頷くと、店から出て行った。
・・・男なら決めろや、か。
923 :
名無し娘。
:2004/11/29(月) 21:01
空き時間に、お昼ご飯を探しにそのとき空いてた新垣さんに誘われてコンビニへと足を運んだ。
たまにはお弁当以外のものも食べたいな、と思って色々さがすけど、結局パンか
おにぎりか、ラーメンかあれこれ迷っているうちに弁当で妥協してしまう。
今日もいつものように弁当を拾い上げるとレジに運んだ。
先にお弁当を買ってお店の外で待っていると、少し遅れて新垣さんが、ちょっと嬉しそうに出てきた。
「どうしたの嬉しそうだけど。」
「あ、分かります〜?これこれ。」
新垣さんはコンビニのビニール袋からそれを取り出して見せると、再び笑顔を見せた。
「ホッカイロー!」
「ドラえもんみたい。」
「あはは。暖かいですよ〜。もうこれがないといけない季節になっちゃったんだから
1年って早いですよね〜。」
「ホント。もう年末だもんね。」
「紅白まであと1ヶ月ちょっとですよ!」
「あ・・・そうだね。」
「?」
動揺を露骨に出してしまったような気がして、顔を背けてしまった。
振り返ると新垣さんは僕のことを心配そうな顔をして見ていた。
「どうか・・・しました?」
「いや、なんでもないよ。俺もホッカイロ欲しいな〜。」
「あ〜ダメですよ、これは私のですから!残念!」
「石川さんにだけはならないようにね。」
冬の風は、頭を冷やすにはちょうどいいみたいだ。
924 :
てと
:2004/11/30(火) 18:50
飯田さんのアトリエに連れていってもらった。
なんでもつい最近絵を描いたみたいで、とりあえず誰でもいいから見せたかったらしい。
僕はフラフラっと付いていって絵を見ると、その巧さに唸ってしまった。
「すっげー・・・・。」
どこだかよく分からないけれど、並木道の紅葉を美しく描いていた。
赤、オレンジ、黄色が混ざり合い、一つの木を作り上げる。もう散ってしまった葉でさえ
綺麗に一つ一つ丁寧に描かれていた。
「大好きな場所。」
「・・・・・・・・・・・お〜。」
「あんたが交信してどーすんの。」
「あ、すんません。でもこれ・・・。」
僕は一つだけ疑問があって、質問した。
「なんでここに矢口さんがいるんですか?」
「ああ、ちっちゃいから。」
「え゛」
飯田さんがなんで矢口さんを選んだのか、結局よく分からなかった。
925 :
てと
:2004/12/01(水) 21:10
突然僕らの前に襲い掛かった現実は、驚くほど大きなもので。
気が動転して一瞬どうすればいいのか、分からなかった。
中澤さんの表情が痛々しい。
その声はあまりに辛い。でも不幸中の幸いか、今は前を向くしか選択肢がなかった。
いつも見慣れているモニターも、見たくなんかなかった。
深く頭を下げる。
今日の昼、ここで頭を下げていたもう1人のメンバーのことを想って。
僕達が出来ることなんて、頭を下げることと、歌うことくらいしかない。
だから、今は全力で歌おう。
ただただ、ひたむきに。
だから、今は全力で歌おう。
全てを忘れて。
926 :
てと
:2004/12/02(木) 21:23
午後になって冷え込んできた。テレビ局の外に少し居ただけで身体が大分冷えてしまった。
冷え切った身体を温めるため、僕は局内の自販機にジュースを買いにいった。
お金を入れて、コーヒーを買う。
横の椅子に座ろうとすると、ごっちんが缶を持った姿勢を保ったまま壁に寄りかかって寝ていた。
隣に腰を下ろしてじーっと見つめてみたけど、起きる様子なし。
僕はコーヒーをそっとごっちんの顔の前に翳すと、そっとほっぺにそれをくっつけた。
「ふぃっ!・・・ん〜・・あったかいや。」
驚いて変な声を出したけど、うっすらと目を開けたごっちんは微笑んでくれた。
でもこっちを向くとすぐに、
「おりゃ」
「うあ!」
冷たい缶を思い切り押し付けられて思わず声を出してしまった。
ごっちんは満足そうに笑った。
「お返しお返し。」
927 :
てと
:2004/12/03(金) 18:16
携帯をポケットの中にしまうと、視線の先には愛ちゃんと新垣さんがいた。
新垣さんはコンビニ袋から肉まんをとりだすと頬張っている。
二人で雑談をしながらおやつタイムといったところだろうか。
愛ちゃんはあんまんを持っていたらしく、ちぎって新垣さんに渡した。
新垣さんはそれをおいしそうに食べると、お返しに肉まんをちぎる。
はい、と愛ちゃんの前に出した瞬間、
どこからか現れた紺野さんがパクッ、と食べてしまった。
びっくりする二人。
もう一回、とちぎって渡すと、
今度は小川さんが顔を出してきて一口でイン。
も〜、と言いながら笑う二人。小川さんと紺野さんは満足顔。
楽屋は今日も平和だ。
928 :
名無し娘。
:2004/12/03(金) 21:35
イイヨイイヨー
929 :
てと
:2004/12/04(土) 23:13
「ドラマ見たよー。」
石川さんは何の前触れもなく突然僕にそう言った。
びっくりして何を言っているのかよく分からなかったけど、すぐに思いだす。ああ、最近出たあれか。
最近僕はドラマに出演させて頂いてそれが昨日オンエアーされたらしい。
石川さんは何を言うのだろう、そう思っていたら口から飛び出した一言はいただけないものだった。
「相変わらずヘタだね。」
「?!」
「もっとこう、なんていうのかなぁ、迫力が足りないんだよね。オーラ?」
カチンと来て思わず僕は禁じてに即手を出してしまった。
「・・・ハイカラさんに言われたくない。」
「!ちょっと、昔のことを持ち出さないでよ!」
「いや進歩ないし」
「何〜?!」
年甲斐性もなく追いかけっこ。
85年組はなんだかんだまだまだ子どもだよな、自分でも思った。
「ハイカラさんが通りま〜す♪」
「も〜う!」
930 :
てと
:2004/12/05(日) 23:58
今日の楽屋はチャンピオンずシップで大盛り上がり。
楽屋は比較的マリノスを応援する人が多かった。
矢口さんなんかは「真里サポだよ?真里サポ」って自分の名前を主張していた。
よっすぃ〜は「サントストゥーリオかっけー!絶対日本人じゃないのに日本人かっけー!」
なんて久々にかっけーを連発。やけに活き活きしていた。
試合は0−0のままハーフタイム。そこで収録の時間が来てしまった。
「一発で決めるよ!」
みんな一致団結したときは強い。本当に一発で撮りを決めてしまった。
でもだからといって後半開始に間に合うわけではなくて、みんな大急ぎで楽屋に戻った。
楽屋の扉を開けると、付けっ放しだったテレビから大歓声。
マリノスが1点を先制していた。二つの感情がぶつかり合う楽屋。
僕は「ウィーアーレッズ!」ってよっすぃ〜と連発してただけに凹んだ。
試合はマリノスが勝ったけど、レッズサポーターの「ウィーアーレッズ!」が止まらない。
でも楽屋の中では矢口さんが止まらなかった。
「勝った勝った勝ったー!!」
「うっさいうっさいうっさい!矢口さんうっさい!!」
試合は終わっても、レッズコールが終わっても、楽屋は納まりそうにない。
931 :
てと
:2004/12/06(月) 20:22
藤本さんと原宿で適当にふらついていると、サッカーの練習場みたいな場所を見つけた。
サッカーをしている大学生をじーっと見ていると、藤本さんはいなくなっていた。
アレ、と思って行方を捜すと、背中に何かを当てられた。
振り返ると、藤本さんが跳ね返ってきたボールをキャッチして弾ませていた。
右手で上手くボールをコントロールしてバウンドさせて、足の間を通して左手に移す。
何回かボールを弄ぶと、そこでキャッチした。
「どう?ワンオーワン。」
「・・・どっから持って来たの?」
「落ちてた。」
「・・・やろっか。」
「よーしやろー!かかってきなさい!」
932 :
てと
:2004/12/06(月) 20:31
ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ・・・。
腰を低く保ったままに、ボールは地面と掌を往復運動する。
左か、右か?
「ホントさー。」
「ん?」
すっと左方向に風を切る感覚。
あ、と口から出た言葉は白い息だけを残して、藤本さんを掠めた。
「美貴が入ってから、結構経つよね。」
ふわっと浮き上がるように地面を蹴ると、手首を軽く返すように動かして
ボールを押し出す。
黒い放物線を描いたボールは、ボードに当たることなくネットを捉えた。
「4点リードー。」
球を両手に持って地面に弾ませながら、笑顔で僕の方を振り向く。
僕に向かってボールを強く前へと突き出すと、ボールは一直線に僕の胸に届いた。
鋭いチェストパスを放った藤本さんは、強い目をして言った。
「まだ、諦めてないから。あんたには負けないよ?」
すっと右手の人差し指を掲げると、
「もう1本。さあ、来い。次で決めるよ。」
勝てないな、藤本さんには。
933 :
てと
:2004/12/07(火) 19:07
誰かが買ってきたのか、飴玉の袋が机の上に置かれていた。
みんなそれを取ったりして適当に食べている。段々と少なくなる飴。
僕が食べようと思ったときにはもうほとんど飴は入っていなくて、
いも味という興味を惹かれるのがラス1だった。
試しに食べてみよう。
手を伸ばしてそれを取ろうとすると、誰かの手とぶつかった。
手を辿って顔までつくと、紺野さんだった。
目が合う。
紺野さんは悲しそうな顔をしながら手を引く。
なんだかものすごい罪悪感に駆られて僕はそれを持ち上げると、紺野さんに差し出した。
代わりにりんご味の飴を取って食べてみせると、紺野さんはすごく嬉しそうな顔をした。
でも、芋味ってなんだったんだろう。
すげー気になる・・・。
934 :
てと
:2004/12/08(水) 18:17
矢口さんがさっきから大騒ぎ。
何してんだろう?と思ったら携帯を手に怒ったり喜んだりしていた。
なんだいつものことか、と思ったけど、いつも僕は気になっていた。
何を見てるんだ?
悪口サイト、なんて言ってるのは聞いたことあるし、いつ聞いてもそうとしか答えない。
個人的に自分も何を言われているのか、興味があったし、今日は勇気を持って覗き込んでみた。
「みんなよー。」
矢口さんはそう言いながらも僕が見える範囲でしか隠さない。
少しだけ見えたその文字を見て、驚いた。
2ちゃ(ry
「世の中にはすごいもんがありますからね・・・。」
「お前なに悟ってんの?!」
キャハハ、と笑われたけど、なんだか乗る気分じゃなかった。
いつだっけな、食いまくりとか、はぶられてるとか、書かれたの。
935 :
名無し娘。
:2004/12/09(木) 13:10
なるほど、「僕」も標的にされたことあるのねw
936 :
てと
:2004/12/09(木) 19:03
あそびで、ほんの遊びで曲作りをしていた。
とは言ったものの、本格的なものとは程遠くて、保田さんのパソコンを使って作った
ニ曲(くらい作っていた気がする)より全然しょぼい。ギターを使って作っただけ。
「十分で作ったしな・・・。」
回音とかそういった装飾音をも使いこなす保田さんは、なんだかんだすごい。
できの悪いバンドの曲よりもよっぽどいいんじゃないだろうか。
「終わった〜・・・。」
わざと大きな声を出して、保田さんが僕に言ってきた。
リアクションに困る。そういちいち作ったことを自慢してこなくても。
「まずまずかしら。」
すました顔で保田さんはそう言うけど、すぐに慌て出した。
「あれ?何よ!!」
ガチャガチャッ!!
キーボードを狂ったように押しまくる保田さん。
「どうしました?」
「フ・・・フリーズした・・・。」
ご愁傷様です。
937 :
てと
:2004/12/10(金) 18:46
自転車をこいで、今日もコンビニへとお昼ご飯探索。
掘り出し物を求めて今日はちょっと遠くまで出向いてみた。
テレビ局を出て10分近く走ったところにあるそのコンビニに入ると、
何故かよっすぃとすれ違った。
「おお、よっすぃ」
「おお、珍しいね」
「たまには遠出しようと思ってさ」
ニコニコと笑うよっすぃ。
片手にはコンビニ袋がぶら下がっているけど、多分大した量は入っていない。
「なんかいいのあった?」
「おにぎりが豊富だよ。」
「マジで?」
「マジマジ。ハロプロくらい豊富」
「どんだけだよ」
938 :
てと
:2004/12/10(金) 18:46
笑いながらおにぎりを物色しに歩く。
よっすぃはそのままコンビニの外へと出て行った。
「あれ、そんなないじゃん」
ふと外を見ると、よっすぃを目が合う。でも向こうは明らかにまずい、と言った表情。
何故かよっすぃは自転車に跨っていた。
「あ゛!!」
よっすぃはなんか言っていたけど硝子越しでよく分からない。
なんか「ばれちまったらしょうがねぇ」なんて言っているっぽかったけど。
よっすぃはすっと自転車のキー(スペアキー?)をポケットから取り出してみせると、
鍵を開けて、一気に足をかけた。
「おい!!」
慌ててコンビニの外に出ようと急いだけど、それより速くよっすぃは走り去っていった。
「……」
どうしよう、この距離。
939 :
名無し娘。
:2004/12/11(土) 00:24
スペアキーワロタ。
それにしてもシチュエーション無限だな。感心。
940 :
てと
:2004/12/11(土) 18:17
楽屋への道をゆっくりと歩いていると、何か変な声が聞こえた。
歩けば歩くほど、その声は確実に大きくなる。
「?」
どこかの楽屋から声が漏れているのかもしれない。
歩けば歩くほどに近くなるその高い声は、やがてはっきりと聞き取れるようになった。
辻ちゃんと加護ちゃんだ。
ゆっくりと楽屋の前に立つと、ドアが開きっぱなしだった。
閉めておこう、そう思ってそのとき、ちょっとだけのぞきこむと、
そのとき見えた光景はなんだかひどく現実的だった。
「せーの、」
『だぶるゆーでーす』
「微妙だね」
「微妙やな。ちょっと被ってないな。まあええや、次はトークの時の打ち合わせや。
うちが指を1本立たせたら「へぇ〜」で2本は「そうなんですか?」やったな。
それから・・・・。」
全部聞くことを、僕の全身が拒んだ。
そっとドアを閉じると、ちょっとだけ悲しくなった。
941 :
てと
:2004/12/12(日) 21:09
「せんぱーい!」
「何?」
楽屋に戻ると道重さんがこっちに向かって手を振る。
僕が聞き返すと同時に道重さんは漫画本を掲げて見せた。
「ああ、もう読んだの。」
「面白かったです!」
たくさんの漫画本を僕に渡す。
「クリリンのことかー!」
「うぉ!びっくりした。」
「だってクリリンをスーパーサイヤ人のダシに使ってるんでもん。
あと天津飯とヤムチャの弱さ具合もひどいですよ!
魔人ブウもダラダラしすぎです!」
「分かった、分かったから道重さん、あのね?」
「はい?」
久々に読んだからか興奮し気味だったけどやっと止まってくれた道重さんに、
僕は言った。
「何も全巻一気に返すことないよね?」
942 :
名無し娘。
:2004/12/12(日) 23:08
42巻も貸すなよ
943 :
てと
:2004/12/13(月) 17:08
楽屋の空気が重い。
矢口さんと藤本さんはにらみ合ったまま全く動かなかった。
石川さんはそれを見て慌てて、声が上ずっている。
「ちょ、ちょ、ちょっと二人とも!そんなにらみ合わないで楽しく!ね?」
♪
ここ最近よく耳にするようになったあのイントロが何故か室内を流れ出した。
途端に踊りながら入ってきたのは5,6期の7人。でも顔は泣いている。
ジャンジャンジャン♪
バンッ!
ドアが開く。そして出てきたのは、
「おーれーおーれー・・・・」
ジャガジャガジャンッ♪
「マツウラサンバー♪おーれーおーれー・・・・」
ジャガジャガジャンッ♪
「マツウラサンバーーーーー♪」
ジャガジャジャンジャンジャジャン♪
『ボツ』
「えー絶対ウケますよぉ〜!」
松浦さんの持ち込みネタは一瞬にして破棄された。
944 :
てと
:2004/12/14(火) 17:50
「寒いねー」
「ホントですよー」
愛ちゃんと一緒に帰り道を歩く。
駅までの道のりも段々と寒くなってきて、コートも必須になってきた。
でも、今日はなんとなく寄り道をした。
「でもホント変だよ」
「そんなことないですよ!じゃあ先輩も書いてみて下さい!」
公園は寒さの割に人が結構いて、子どもが元気そうに駆け回っていた。
子どもは風の子、なんてよく言ったものだな、なんて考えると年をとった気がする。
愛ちゃんは走り回る子どもを楽しそうに眺めていた。
945 :
てと
:2004/12/14(火) 17:50
あるとき子どもが愛ちゃんと激突した。
「愛ちゃん大丈夫?」
「はい。」
子どもを撫でると、子どもはニコッと笑ってもーにんぐむすめだ!、と指差した。
一歩遅れてその子どものお母さんと思われる人が慌てて駆け寄ってきた。
「どうもすみません」
「ドンウォーリー」
「・・・・どうもすみません」
お母さんは子どもを連れるとあっと言う間に離れていってしまった。
「why?why?why?」
そ、そりゃぁ、なぁ・・・。Mother本気で引きますよ・・・。
946 :
てと
:2004/12/15(水) 18:30
前回赤点だったけん、と田中さんは教科書片手に必死に勉強をしていた。
こういうときの楽屋にいる先輩メンバーの心中は一つ。
こっち来るな・・・。
答えられる保証がない、というより分かるはずがない。
勉強もせずに仕事ばかりしているメンバーがほとんどの中、
しっかりと学校に通っている亀井さんは珍しいくらいで。
田中さんも義務教育から解き放たれたらどうするのだろう。
「先輩」
ビクッと身体が反応する。勿論僕を含めて。
誰に聞く?誰に聞く?
不安が走る。
田中さんは教科書とノートを手に、僕の前に立った。
「分からないんで教えてください」
947 :
てと
:2004/12/15(水) 18:36
藤本さんと石川さんがハイタッチを交わすのが見えた。
矢口さんは僕を見てウケまくっている。
僕はとりあえず教科書を見てみることにした。
もしかしたら分かるかもしれないし・・・。
しかし生憎田中さんが聞いてきたのは僕にとって完全に欠落している部分だった。
デビュー後上京して、学校に入るまでにブランクが少しあった。
そのため義務教育のはずなのに習ってない単元があった。
そして田中さんの質問と偶然それは合致。どうしろと。
「あ〜、なんていうか〜」
「やめとけやめとけ、そいつこー見えてバカだからさぁ」
「よっすぃが言うな。」
「れいないい?」
フラフラと近づいてきた亀井さんは、教科書をチェックすると、ささっと解いた。
ポカンとする田中さん、笑う亀井さん。
亀井さんはニコニコしながら道重さんの横に戻った。
ここで紺野さんがコンビニから戻ってきた。
それを見た瞬間、先輩メンバーが一斉に紺野さんを取り囲んだ。
『なんで早く帰ってこなかったんだよ!』
「へ?」
948 :
てと
:2004/12/16(木) 19:12
一人での仕事が終わって帰ろうとすると、
同局で別の撮影をしていた亀井さんとばったり会った。
適当に話をすると、
「あ、そうだ!」
亀井さんは思い出したように鞄の中からたくさんの写真を取り出した。
それを僕に渡すと、旅行のやつです、と笑った。
「おお〜、よく撮れてるねー。全員が写ってるのほとんどホテル内だけど。」
「アハハ・・・。しょうがないですよぉ、下手に頼めないし。」
いっそのことお店でお店の皆さんと仲良く写真とってサイン書いてもよかったのかな、
そんなことを思いながら一枚一枚写真を眺めていく。
「うぉ、中澤さんの顔すごいことになってる」
「ホントだー!すごいですよこれ。」
「あ、これで終わりか。・・・ん?なんか足りなくない?」
「え、気のせいですよ。じゃあ絵里は仕事がまだあるんで行きますね」
「あ、うん。じゃあね、お疲れ様」
「お疲れ様でーす」
去り行く背中を見つめながら、撮られたはずがなくなっていた写真を思い出して、
思わず笑った。
田中さんが持ってるのかな?
949 :
てと
:2004/12/17(金) 17:49
――これ誰のかな?
――分かんな〜い
声が聞こえる。でも僕はそれに興味を示す気にはなれなかった。
眠い。今はただ寝たかった。
――あ、愛ちゃんこれ誰のか分かる?
――ん〜?知らんよ?
――誰のだろう。
なんの話をしているのか、
少しだけ気になったけどそれよりも眠気が僕の頭を支配していた。
今度こそ深い眠りに。
――なにそれ
――あ、美貴ちゃん。かけてかけて。
――え?いいけど。
かける?かけるってなんだ?眠いから脳が動かない。
――wow wow wow 青春♪
――色々あるさぁ〜♪
――人で遊ばない。
――はーい。
ああ、なるほど。
なんのことだか分かった瞬間、こめかみ辺りに圧迫感を感じた。
「ん?」
『おおー』
「インテリインテリ」
「イケメンイケメン」
フレーム越しに爆笑するメンバーの嬉しそうな顔が見えた。
950 :
てと
:2004/12/19(日) 00:18
ついさっきまで秋だったような気がするのに、もうこんなに寒い。
ぎりぎりの生活を送り続けてきて1年の積もり積もった疲労感がやばかった。
からだはきついけどみんなも一緒なんだろう。今年ももう終わりだし、あと一分張りだ。
「らいねんもがんばりましょーね。」
らくそうな顔をしている愛ちゃん。ちょっと目を疑ってしまう。
すいすいと歩いていくその姿は力強かった。
とうとうつんくさんに言われた1ヶ月が終わってしまう時が来た。
1ヶ月、悩み悩んだ結果を、明日伝えに行く。でも、今までやってきたことから
0になって、再スタートするというのは少し怖くも感じた。
回想する癖が、最近出るようになった。加入当初から今までのことを何故か思い出す。
デビューして、ぎこちない空気が和らいで、後輩ができて、頑張って。
すいすいと、今の愛ちゃんの歩く姿のようには行かないけれど、なんとかやってきた。
「どうしたんですかボーっとして、来年も頑張らなきゃいかんのですから!」
「え、あ、うん!」
気合を入れられると、二人で駅までゆっくりと歩いた。
951 :
名無し娘。
:2004/12/19(日) 13:15
いよいよか・・・
952 :
てと
:2004/12/19(日) 19:04
そっとドアに手をかける。遂に約束の期日が訪れてしまった。
この日まで何度悩み、苦しんできただろうか。
時間の進みがこんなにも早く感じた事はなかった。
「失礼します。」
「来たな。」
つんくさんは待ってましたと真剣な顔をして言うと、
機材を弄る手を休めて僕の方へと身体を向けた。スタジオ備え付けの椅子を拾うと、向かい合う。
「どや、決心はついたか?」
「・・・はい。」
僕の回答の仕方が不満だったのか、
「なんや釈然とせぇへんなぁ。でもお前かて分かっとるやろこの現状を。
この判断はお前の将来、いやハロプロの将来を決める言う手も大袈裟ではない。」
953 :
てと
:2004/12/19(日) 19:04
確かにそうかもしれない。
話題に乏しい、いや逆に言えば話題を作ってもメディアの煽りが減った今、
加入当初過去最高の反響を呼んだといわれる僕を動かすのは定石といえるかもしれない。
逆に言えばそれに手を出さなければならないほどに苦しい状況だという裏返しかもしれないけど。
「そう・・・ですね。分かりました、やります。」
「よし、そーと決まったら曲作るで!男の曲は久々かもしれんな〜。」
つんくさんは一人嬉しそうな笑顔を見せている。
僕は曖昧な作り笑顔でしかそれを返せなかった。
「お前ギター弾けるんやし、一緒に作るか?」
「・・・それ笑えないっすよ。」
「せやなぁ。」
954 :
てと
:2004/12/20(月) 21:45
それから仕事が終わった後時間が早ければつんくさんのスタジオまで行って
お互いに曲についてひたすら試行錯誤を続けた。
真面目に、商品としての作曲は初めてだったから楽しかったけれど、
胸がすっきりしないのも確かだった。
みんなには半分伝えた。
ソロデビューするという事。
それだけを伝えて、卒業については一切話さなかった。
それが僕の胸に重く圧し掛かっているのかもしれない。
『今日元気がなかった気がするんですけど、どうかしました?』
愛ちゃんからのメールは、僕を悩ます原因の一つだった。
愛ちゃんだけじゃない。他のメンバーからも似たようなメールを幾つか受信した。
そのうち何人が、感づいているのか・・・。
「隠せないな、メンバーには」
「ん?どないした」
「いや、なんでもないです」
葛藤の中、僕は今人生において最も苦しい経験をしているかもしれない。
955 :
名無し娘。
:2004/12/21(火) 10:53
揺れてるな
956 :
名無し募集中。。。
:2004/12/21(火) 11:17
おお!佳境にはいってきたね!
いい感じだ
957 :
てと
:2004/12/21(火) 20:13
僕がモーニング娘。に入って以来、たくさんの時間をメンバーと共にしてきた。
仕事以外でも様々な時を共に過ごし、喜怒哀楽して。
彼女達のことを僕は本当の家族のように思っているし、彼女達を思ってくれていると思う。
そんな家族に隠し事をするという行為は、自分にとって耐えられない事だった。
「つんくさん。」
「なんや。」
「メンバーに明かします。」
これが僕の答えだった。
彼女達を騙しているという罪悪感は辛すぎる。
「待て、まだ早い。」
「様子がおかしいらしくてみんなに心配かけてしまって・・・。
それにみんなに隠し事なんてしたくないんですよ。」
「あかん、まだ早い。」
「どうしてですか!みんなに知らせないことで一体なにが」
「遅かれ早かれ。」
つんくさんは僕の言葉を遮った。
「そうなるんやから同じやろ?」
「・・・・っ。」
「お、おい!待ちぃ!」
その場にいられなくなった僕は、気づいたらドアを開けて外へと飛び出していた。
958 :
てと
:2004/12/22(水) 20:48
飛び出したはいいけれどどうしよう。
気づくと僕はスタジオからかなり離れた位置まで走っていた。
建物からは出ていないけれど、つんくさんといた部屋とは全然違う位置にいた。
僕は間違っているのだろうか。
僕はただ、嘘をつきたくないだけなのに。
かけがえのない家族に、本当のことを話したいだけなのに。
ソファに座る。顔が上げられずに僕は俯いたまま動けなかった。
目を閉じる。
目の前に広がるのは当たり前だけれど暗闇だ。
分からない。どうすればいいのか。分からない。
そんなときだった。
「どうした?下なんか向いて。」
中澤さんがそんな僕に気づいてくれたのは。
959 :
てと
:2004/12/22(水) 20:55
それは今にもほどけてしまいそうな糸を解くには充分すぎるきっかけだった。
僕は糸が切れてしまったみたいに全部、中澤さんに話してしまった。
ソロデビュー、卒業、メンバーに明かしていないこと、つんくさんに言われた言葉。
全部、隈なく話した。
中澤さんはそれを聞いて随分急やな〜、と困ったような顔をした。
「なにもかもそうなんです。」
「・・・でもな?裏を返せばそれだけお前に賭けとるっちゅうことならへんか?」
「・・・・!」
中澤さんは僕の横にどかっと腰掛けると、背中をさすってきた。
「みんなに言わずに隠すのはお前の性格やときついやろな。
せやけどあんたは耐えなあかん。」
「なんで」
「・・・カオリなんか正直な話、いつ卒業するかなんかファン以外気づかんで?
それに予定を割り込んで、しかも発表の場が発表の場やしな。
元々お前がモーニングでも卒業して一番大きく騒がれるやろうし。
久々に話題を作れるかも分からん。」
はぁ、と中澤さんは溜息をつくと、続けた。
「残念な事に余裕がないからな。うちらは。
すっと漏れてしまう可能性を少しでも抑えたい気持ちは分かるわ。
発表の場にポイントがあるわけやし。」
「・・・そうですね。耐えるしか、ない・・・。」
「力になれなくてすまんな。」
中澤さんはそう言って立ち上がると去っていったけれど、
力になれなくて、なんてそんなこと、全然ないですよ?
960 :
名無し募集中。。。
:2004/12/23(木) 08:32
どうなるどうなる!!
961 :
てと
:2004/12/23(木) 20:26
僕のソロデビューCDのリリース日は娘。の新曲1週間後に決定した。
曲の初披露はミュージックステーションのスペシャル。
そこで歌う直前にいきなり卒業のことを宣言しろ、とつんくさんに言われた。
確かに上手いやり方だ、と思う。
ゲストも豪華だから普段より視聴率が高い。
みんな後半に畳み掛ける大物を待っているのに対して、
僕達は18歳未満のメンバーがいるから序盤には出番が終わる。視聴率は高いだろう。
ここまでは良かった。納得したし。
でもメンバーに卒業を伝えるタイミング。一体いつ言えばいいのか。
「もう明日やし、お前のタイミングでええ。」
とつんくさんは言ってくれた。
でもここまでずっと話せなかった罪悪感が、僕の口を重くした。
もう金曜日は目の前まで来ている。
でもファンの人達、一般の人達と同時の発表だけはできない。
それは一種の裏切り行為にも思えた。
悩み悩んで彷徨っている間に、金曜日はもう目の前まで来ていた。
962 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 01:00
構成力の凄さに脱帽です。リアルとアンリアルを
本当に上手く絡めてますなぁ
963 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 03:31
うめえょ・・ホントにすごく主人公?に引き込まれるよ・・・
次は終に!!!!あぁ・・更新が待ち遠しいよ
964 :
名無し募集中。。。
:2004/12/24(金) 11:06
主人公が娘。を卒業したあとも書けるんだったら
書いてほすぃなぁ
965 :
名無し娘。
:2004/12/24(金) 13:41
他の人が書いてくれればいいよ
続ける気がないから終わらせようとしてるんだし
966 :
てと
:2004/12/24(金) 18:57
番組が始まる直前の楽屋は少しだけ静かだった。
遂にここまで来てしまった。今言わないともう、間に合わない。
でも遅くなればなるほどに硬く閉ざされた僕の口元は、本当に臆病で。
本番が近づくことによる緊張よりも、
言わなきゃいけないという自分自身へのプレッシャーが僕を硬くしていた。
時間は刻一刻と近づいている。もうスタンバイはすぐだ。
そのとき、横にいた藤本さんが、僕の耳元で囁いた。
「もう時間だよ。」
「え、まさか。」
まさか、藤本さん知ってる?
小さな声で返すと、藤本さんは頷いた。
「みんなね。」
「え?!」
小声ではいられない衝撃を受けた。思わず声を上げてしまう。
藤本さんは極めて冷静な顔で――いや、装っているのだろう――続けた。
967 :
てと
:2004/12/24(金) 18:57
「愛ちゃんなんか、泣いたんだから。」
「・・・・。」
そう言われて愛ちゃんの方をそっと覗く。心なしか、目が少しだけ赤く思えた。
藤本さんは勤めてか、終始冗談っぽい口調で話していた。
「愛ちゃんの涙は高いよ?あんたもしっかりしないと。ほら。」
「うん、分かった。」
胸の中で鞭を打つ。競馬で馬にスパートをかけるように、強く叩く。
そうでもしないと動いてくれそうになかった。
「因みに誰が聞いたの?」
「え、美貴。うじうじしてて言えそうになかったから言っちゃった。」
「言っちゃったって・・・。」
「ほら、もう始まるよ。」
「うん。言うわ。」
全部知っているみんなに、僕は全部話した。
968 :
名無し娘。
:2004/12/24(金) 22:05
イイヨー。感情移入しながら読んでるよ。
969 :
名無し募集中。。。
:2004/12/25(土) 12:10
続き!続き!
主人公イイヨ!
970 :
てと
:2004/12/25(土) 20:25
「こいつ、やっと言いやがった。」
そういう矢口さんの目に溜まったものを見ると心苦しかった。
僕の告白に、みんな少しも怒らずに最後まで聞いてくれた。
むしろ今までなんで言わなかったんだよ、と怒ってもらいたいくらいの気持ちだったのに、
みんな優しすぎると思う。
「そんなんで俺抜けても大丈夫か?」
「何言ってるの〜!それより私より先に卒業ってどういうこと??」
「ん〜、ごめんとしか言いようがない・・・。」
「謝んなよ!!」
藤本さんだった。
強く鋭い目をして、僕の事をじっと見て。
でもすぐに笑顔になった。
「そんなんでソロやれないよ。もっと胸を張って。」
「藤本さん・・・」
「そうですよ!頑張って下さいよ!!!」
リアクションは十人十色だった。
激励してくれる娘もいれば、冗談っぽく引き止める娘もいて。
泣き付くような娘はいなかったけれど、
何人か明らかに目が赤くて潤んでいたのが見えてしまって、辛かった。
本当、ごめんとしか言いようがない。
今まで言えなくて、そして、いきなり消えて。
971 :
てと
:2004/12/25(土) 20:33
舞台裏に移動して、僕達の登場を待つ。
立っている時、服の袖を掴まれる様な感覚を覚えた。
そしてその正体にすぐ気づく。
「・・・愛ちゃん?」
「・・・すみません。来年も、がんばろうって・・・」
本当に、謝ることしかできない。
僕は口を開こうとしたけれど、口元を押さえ込まれた。
愛ちゃんは目を軽く拭うと、言った。
「何も言わないでください・・・。そんで、一つだけお願い、聞いてくれます?」
「・・・うん。」
愛ちゃんは僕の手に指を絡めた。
ぎゅっと握られる手。
「もう謝らないで下さい。」
言われて気づいた。
僕は謝る事で、逃げていたのかもしれない。
一人勝手に謝って、全部を済ませた気になって。
みんな納得しているはずなんて、ないのに。
だから僕は愛ちゃんに言われたように、謝ることを辞めよう。
現実と向かい合って、逃げないで。
今の僕にはまだ、ちょっと難しい事かもしれないけれど。
「うん。」
握られた手を、僕は強く握り返した。
972 :
名無し募集中。。。
:2004/12/26(日) 14:59
うわーん、いいよ!!!
佳境!!!
973 :
名無し娘。
:2004/12/26(日) 17:03
高橋かわいいな・・・
974 :
てと
:2004/12/26(日) 23:39
「お〜」
ここが僕が娘。でいられる最後のステージ。
そう思うと少しだけ不思議な気持ちになる。
今日は誰よりも早く来たかった。誰よりも長く居たかった。
一秒一秒、一曲一曲を噛み締めたいから。
急遽卒業コンサを行うことになったから人が来るのかどうか、正直すごく不安だった。
僕なんかが卒業しても、誰も来てくれないんじゃないかって。
こんなこと考えるのも変なのかもしれないけれど、
それが僕が「娘。」でいれたどうかの証になると思うから。
リハを済ましてあとは始まりの時間を待つだけ。
すごい緊張が僕を襲う。
こんなに緊張したのは加入当時初めてテレビに映ったとき以来かもしれない。
ボンッと肩に手を乗せられた。
後ろを振り向くと、飯田さんだった。
「カオリより先に卒業しやがって」
笑った。そう言って笑うと、飯田さんは今度は僕の背中を2回、叩いた。
「ビシッと決めなよ」
「・・・はい!」
975 :
てと
:2004/12/26(日) 23:45
ステージ上へと飛び出すと、歓声の大きさに一瞬たじろいだ。
そこにはがら空きの客席なんてどこにもなくて、大勢のファン。
みんな、来てくれたんだ。
オープニングから快調に飛ばす。
一曲一曲を、大事に。
僕にとっても、みんなにとっても、忘れられない夜にしてやる、そう思いながら。
コンサでは恒例となった浪漫のギターソロ。
下手くそかもしれないけれど精一杯弾く。いつもよりうねりすぎて、みんな笑っていたけど。
ギターソロを終えると不思議と拍手が沸き起こって、僕達を盛り立てた。
「ありがとう!!」
大声で叫ぶと、みんなが返してくれる。
これだから、コンサはやめられないんだ。
976 :
名無し募集中。。。
:2004/12/27(月) 06:08
いいのぉ
977 :
名無し募集中。。。
:2004/12/27(月) 10:21
なけるよ
978 :
てと
:2004/12/27(月) 20:51
コンサート、アンコールも順調に済ますと、
あとは卒業セレモニーを残すのみとなった。
会場は静まり返って、僕の事を見ている。巨大のモニターには僕が映し出されている。
マイクを持つ手が、震えていた。
目を閉じて、鋭く息を吐く。
胸に手を置いて摩ると、僕はマイクを口元に向けた。
『今日は、本当に僕のために、かどうかは分からないけど来てくれてありがとう』
茶化す様に言うと客席が軽く沸く。
でもメンバーは誰一人として笑っていなかった。それがちょっと辛い。
『なんで僕がモーニング娘。に入ることが出来たのか、疑問でならないけれど、
今はただつんくさんに感謝したいです。
だって、こうやってみんなと同じ時を共に出来たんだから。』
ドッと湧く観客。嬉しくてたまらなかった。
チラッと客席から涙を覗かせている人を見て、ちょっとだけ泣きそうになりながら。
僕は続けた。
979 :
てと
:2004/12/27(月) 20:59
『そして、もう一つ。つんくさんに感謝したい事があります』
ここでまた、一息つく。
胸がきゅーっとしめつけられる様な感覚を覚えるのは、何故だろう。
僕は顔をみんなの方へと向けた。顔はもうよく見えない。
視界が開けるのを邪魔する何かが、僕の目の前に広がって、空間を歪ませていた。
『みんなと、モーニング娘。のみんなと、
ハロプロのみんなと、出会えて良かった。心からそう思う。』
大きな歓声が聞こえた。でもそれを確認できる目は今の僕にはない。
鼻を啜る。
目頭がすごく熱かった。
でも今日は、拭っちゃいけない。そう思った。
『ホント、情けない。泣かないって決めてたのに。』
頑張れ。
そんな声が次々と耳に飛び込んでくる。
うん頑張る。頑張るけど・・・今の、その一言はちょっと痛すぎるよ。
980 :
てと
:2004/12/27(月) 21:12
『最後に、本当に最後になりますが・・・。』
心を、出来るだけ落ち着かせる。
精一杯、精一杯気丈でいたいから。
メンバーにこれ以上、情けない姿を見せたら、ちゃんと卒業できないから。
『これから僕は、一人で活動していくことになりますが、
どうか、これからもずっと、
モーニング娘。を、ずっと応援してやってください。』
目から雫が零れ落ちると、視界が少しだけ開けた。
メンバーの顔が映って、少し驚いた顔をしているのが確認できた。
何人も涙を流している。
僕のために涙を流すなんて、そんな安い涙流しちゃダメだよ。
それに、まだ話は終わってないよ。
『みんなの、がんばってる姿を、
ずっとその目で、その心で、見続けてあげてください。
これがモーニング娘。の僕からの、みんなへの最後のお願いです』
大歓声がステージ上の僕達を包む。もうダメ、ごめん。
涙が止まらなかった。
981 :
てと
:2004/12/27(月) 21:21
僕の涙がひかないうちに、みんなのスピーチが始まった。
5、6期は一番年長の愛ちゃん、亀井さんが代表になって、
4期以前は全員一言ずつくれるという段取りだったけど、
何を言うのか、リハで触れなかったから知らなかった。
「先輩、卒業おめでとうございます!」
元気一杯の声が飛びこんできて、安心したのも束の間。
亀井さんの方へと視線を移すと、肩が震えていたのが目に入った。
「先輩の分まで、絵里達頑張りますから!心配しなくて、いいんですよ?」
意地悪だな、まだ泣かせたいの?
胸の奥から目まで何かが繋がって、一気に熱くなるような、そんな感じがした。
「世界一可愛い後輩を持って、先輩は幸せですよ!!
以上!!エ・リ・ザ・ベ・ス・キャメイでしたぁ!!」
ワッとみんなが僕達を包む。涙を隠してくれるかのように。
982 :
てと
:2004/12/27(月) 21:30
「先輩。」
愛ちゃんは、精一杯気丈に振舞おうとしているのがよく分かった。
震えているのに、体が震えているのにグッと力を入れて、無理矢理抑え込んで。
それだけで、言葉は要らないくらいだった。
だってこれ以上話されてしまうと、また涙が出てしまう。
「卒業、おめでとうございます。
あたし達5期は、入ったばっかんときに先輩に大分迷惑をかけたり、
お世話になったりしました。ホントに、感謝して、ます。」
途切れ途切れになる言葉達が、逆に僕の胸にじわじわと響く。
今はどんな言葉を聞いても、もしかしたら泣いてしまうのかも。
「ごめんなさい、泣きそーで、大したこと言えません・・・。
お互い成長して、これからも頑張りましょう・・・。」
大きく一礼した愛ちゃんの背中はやっぱり震えていて、僕の体も気づいたら震えていた。
983 :
てと
:2004/12/27(月) 21:39
藤本さんは6期とは何故か別枠でここに入った。
マイクを持つその手の先、目はやっぱりどこか睨んでいるようで。
でも精一杯笑ってくれた。
「卒業オメデト。」
ワザと軽いノリを装ってくれているのが、嬉しかった。
これ以上泣かせるような一言が続くと、壊れてしまう。
「美貴より先にソロになってんじゃねぇよ!!」
客席大爆笑。
さっきまで泣いていたメンバーさえも笑っていた。
藤本さん自身も笑っている。
ちょっと笑えないけれど、思わず笑ってしまった。
ま、これで涙も拭けたでしょう。そんな顔をしている藤本さん。
アイコンタクトで返すと、笑ってくれた。
「待ってろよ。」
984 :
てと
:2004/12/27(月) 21:39
「卒業おめでとう。」
よっすぃ〜はあくまで冷静。
涙を見せる様子もなく、むしろ笑顔を見せてくれた。
この方が、僕も楽かもしれない。
「入ったばっかのとき、おどおどしてるあんた、可愛かったよ。でも・・・。」
お客さんもこの時ばかりは少しだけ笑った。
でも、そのあとの一言はやっぱりよしこの上手さだ。
「カッコよくなりやがって。かっけーよ、今のお前。」
思わず少し笑ってしまった。
ありがとう、聞こえないように呟く。
でもよっすぃ〜の方が、かっけーよ。
「じゃあ、あばよ!」
大きな盛り上がりを見せる客席。やっぱ、すごい。
985 :
てと
:2004/12/27(月) 21:48
僕のフライングで追い抜かれる形となった石川さんは、
ちょっとだけ複雑な表情でマイクを持っていた。
でも、マイクを口元に向けると、パッと笑顔が咲く。
「卒業おめでとう。」
ありがとう、そう返したくなるような言い方だった。
「あなたが入ってきたとき最初、男の子ってこともあって、
あんまり話せなかったよね。今でも覚えてる。」
加入当初、僕はあまりみんなと話すことが出来なかった。
それまでテレビの向こう側にいた人達が、というのもあるし。
僕を避けてた石川さんに気づいてしまったのもあるし。
でも、
「でもいつだったかな。私が熱出しちゃったとき。
お薬が切れちゃっていて。
北海道で、
冬なのに雪の中スタッフよりも誰よりも先にお薬探しに行ってくれて。
あそこから打ち解けたよね、あのときはありがとう。」
改めてお礼を言われると照れくさい。
でも、僕が追い抜かしたことを一言も口にしない石川さんを見ているだけで、
ちょっと瞼の裏が忙しいことになっていた。
「寂しくなるけど、なやみがあったらいつでもお姉さんに相談しなさいよ。」
あのときの約束、覚えていたんだ。
くすっと笑う石川さん。大歓声。その影で、静かに頬を伝う何かを隠した。
986 :
てと
:2004/12/27(月) 21:53
矢口さんが、小さい体を少しみんなより前に出して立つ。
マイクを両手で抱えていたけど、左手を離すと右手で持った。
「卒業おめでとう。」
笑顔はない。何もかもが突然だったから、無理もないのかもしれないけど。
僕はまた一息深く吐き出すと、矢口さんのほうに目を向けた。
「最初入ったときは、ホントどうしようかと思ったけど、
すぐにそんな心配がないって分かったよ。これだけ大きくなっちまったしな。」
ここで始めて笑顔を見せてくれた。目が合って、僕も笑い返す。
笑顔になっているか、自信ないけど。
「これから色々大変だと思うけど、自分の力を信じて、根性で乗り切れ。
ここまで来れた、その持ち前の根性でさ。」
「・・・はい!」
思わず返事をする。マイクは手にない。
ただ、精一杯声を張り上げた。
987 :
てと
:2004/12/27(月) 21:58
最後の一人である飯田さんが、ゆっくりと僕に近づく。
何歩か歩み寄った所で、その足を止めた。
「卒業おめでとう。」
その大きな目は確実に僕の目を捉えている。
その瞳を見つめ返すと、吸い込まれそうな、そんな錯覚を覚える。
「モーニング娘。としては今日が最後だけど、
これからは一人のソロアーティストとしての人生が始まるんだよ。」
「・・・はい。」
ファンの人に見てもらう、ということを忘れてしまったみたいに、
僕達はお互い目をあわせて話した。
「長く長くて、険しくて険しい人生になると思うけど。がんばってよ。
人生ってのはさ、ホント素晴らしいもんなんだから。」
観客からざわめきが起こり始める。僕も気がついた。
この曲で、締める、モーニング娘。としての僕。悪くないかもしれない。
「ソロアーティストとして、しっかり大成できるように祈りを込めて、」
飯田さんはマイクをファンのみんなへと向ける。
矢口さんが横に立つと、合図をかける。
「せーの!!」
『I wish!!!』
やめてよこんな演出。
また涙が出てきちゃったじゃないですか。
988 :
名無し募集中。。。
:2004/12/28(火) 01:31
いやはや、最高ですな
てとさん素晴らしいです
989 :
名無し募集中。。。
:2004/12/28(火) 07:57
うーーん!!
とてもよいですよ・・・
あとはメンバーとの絡みかな
990 :
名無し娘。
:2004/12/28(火) 20:22
1000が先か500kが先か
991 :
てと
:2004/12/28(火) 21:58
誰もいなくなった会場の静けさは、祭りの後の静けさと同じ。
この静かな空間で、今日という日を一人、振り返った。
目を瞑ると何の音もない、何もない、ただの闇。
なんとなく感慨に耽っていると、後ろからちょんと肩を叩かれた。振り向くと指がほっぺに当たる。
「なにしてんですか?」
「終わったな、って思って」
愛ちゃんだった。
「これからは一人でこの会場を埋めなきゃ。みんななし、自分の力で」
「…本当に卒業しちゃうんですよね」
「うん」
ゆっくりとステージの真ん中へと、二人で歩く。
こんなに広いステージを、一人で駆け回る。少しだけ怖い気もした。
992 :
てと
:2004/12/28(火) 21:59
「やめないで、なんて言いません」
愛ちゃんは精一杯、と思える笑顔をみせてくれた。
「言ったってどうしよもないし、それに…」
「それに?」
「…やっぱいいです」
「え」
愛ちゃんの目は、セレモニー中と同じくらいに潤んでいた。見るだけで、涙腺を刺激される。
愛ちゃんはさっきよりもニコッと笑うと、
「ソロアーティストとして活躍する先輩、楽しみにしてます」
「……」
やばい、涙が出てきた。でも、ここで僕がすべき事は、泣くことじゃない。
僕は愛ちゃんと同じように、グッと引き締めると、
「ありがとう」
今僕の出来る、最高の笑顔で返した。
てとの『僕と娘。の夢物語』終わり。
993 :
てと
:2004/12/28(火) 22:05
容量の最後を自分で埋めてしまいそうですが、あとがきをさせてください。
書き始めた当初、夢見さんの言葉を信じて繋ぎを出来ればと思って書き出しました。でも僕の書き込み速度が上がるにつれ、
僕以外の職人さんの書き込みが減って乗っ取りみたいになってしまって、すごい罪悪感を覚えました。
このスレは本来参加型のスレ。僕一人の行動で他の人達が書き込めないのだとしたら…そう思うと辛いです。
遂に小説スレで紹介されるようになってから、もはや参加型のスレの空気は完全に亡き者にされ、正直色んなものに押しつぶされそうになりました。
だから僕はこのスレを持って身を引かせてください。僕が書いたものをなかったものとして、夢物語を続けてください。
我侭で、身勝手なのは分かってます。調子乗ってんじゃねぇと言われても仕方ありません。
でももし、書いてもいいと言う声があるなら…その時は書かせて頂きたいと思います。読みたい方が、もしいるのなら。
でもその時は、こんな風に毎日書く、なんて事は自粛します。
以上、長々と書きましたが僕の拙い文章を読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。
てと。
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