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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3
- 595 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:01
-
いつもの楽屋。
そして、すぐ隣にみんなの楽屋。
少し前までは、気軽に訪れることのできる場所だった。
話して、遊んで。そうやってみんなを感じていた。
…けど今は。
藤本さんの一件以来、思いを強くしたことがある。
「もう何をどう書かれるか、分かったもんじゃない」
僕は男で、みんなは女。
もちろん、僕にとってはそんなの関係ないけど。
外から見れば、そうじゃないのかもしれなかった。
楽屋でみんなと一緒に過ごしている。
そんな光景を外の、悪い人間が見聞きしたら。
誤解や嘘や虚構で、歪められて伝わるかもしれない。
まして記事にでもなってしまったら…みんなを傷つける。
以来、こちらからみんなの楽屋に出向くことはしなくなった。
この前の新垣さんみたいに、むこうから来てくれるなら。
拒むつもりはなかった。拒むのは、さすがに不自然だ。
みんなの力になりたいという気持ちは変わってないわけだし。
けど…自分からは。
「考えすぎかな…」
臆病な自分を感じる。振り払うようにひとりごちて、目を閉じた。
- 596 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:01
-
コンコン
…ん?
コンコンコン
来訪を告げる音に、まどろみから引き戻される。そして。
「せんぱーい?」
ドアが開くと同時に、聞き慣れた声が響く。
目をこすりながら、声の主へ顔を向けた。
「亀井さん」
「せんぱい、寝てました?」
「うん、そうみたい」
「ごめんなさい、起こしちゃって」
謝りながら、亀井さんが近づいてくる。
あんなことを考えていた矢先の、突然の来訪とはいえ。
「…何か用?」
僕の言葉は、ちょっと不用意だったらしかった。
- 597 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:02
-
立ち止まって、わずかに俯いた亀井さん。
そのたたずまいが、悲しい、と僕に訴える。
小さくなってしまった声。かろうじてそれは僕に届いた。
「せんぱい…」
「あ、うん」
「何かないと…駄目ですか?」
「え?」
「ちゃんとした用がないと、来ちゃ駄目ですか?」
「そんなこと…」
あぁ、しまった。そうじゃないのに。どうやって宥めようか。
考えている僕に向けて、亀井さんが顔を上げる。
何か、意を決したような。そんな表情をしていた。
「せんぱい」
「うん?」
「最近…絵里のこと、避けてません?」
「………」
「………」
「…そんなこと、ないよ?うん」
「嘘」
「………」
「…やっぱり」
沈黙を肯定ととったようだった。亀井さんが呟く。
- 598 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:02
-
「絵里…何かしました?」
「え?」
「せんぱいに嫌われるような、何か」
「そんな。とんでもないよ」
「じゃあ」
何故。
亀井さんの瞳が、真剣であることを伝えている。
さっき考えていたことを話そうかと、ちょっと思ったけど。
何となく憚られて、適当にごまかすことにした。
「少し、距離を置こうとは思ってる」
「え?」
「ほら。多分次だから」
「…何がですか?」
「卒業」
「………」
次は僕。
確証はないけど、多少の説得力はあるだろう。
「いつ、いなくなってもいいように」
「せんぱい…」
「準備っていうか。何かそんな感じ」
「………」
「だから、避けてるわけじゃ…ないよ?」
…なんだかな。
即席とはいえ、出来の悪い言い訳に歯がみする。
しかし、言ってしまったものは仕方がない、と諦めて。
亀井さんの反応を待った。
- 599 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:03
-
「せんぱい」
「うん?」
「絵里は、テキトーすぎるけど。せんぱいは」
「………」
「いろいろ、考えすぎてる」
「………」
「せんぱい」
「あ、はい」
「考えすぎです」
語気を強めた亀井さん。その言葉が、頭の中でこだまする。
隠している本当の理由を、見透かされたように感じた。
「すごい恥ずかしいけど…絵里言います」
「う、うん」
「…もっと、いつも、近くにいて欲しい」
「………」
「卒業は、いつか来る。けど」
「………」
「そんなこと考えるのは止めて、今は一緒にいて欲しい」
「………」
「せんぱいが遠くにいっちゃうなんて、嫌」
「………」
「嫌です」
「………」
「絵里、そんなとこまで…来ちゃいましたよ?」
- 600 :名無し娘。:2007/06/22(金) 23:04
-
「…亀井さん」
それ、どういう…?
意味を測りかねて、言いかける。
僕は男で、みんなは女。
もちろん、僕にとってはそんなの関係ないけど。
みんな…亀井さんにとっては?
…まさか、そんなこと。
そう思い、首を小さく横に振った。
「だからせんぱい」
「…うん」
「少しだけ、絵里を見習って」
「………」
「テキトーに、なってください」
「………」
「駄目、ですか?」
頬を真っ赤に染めながら、尋ねてくる亀井さん。
そうまでして、そこまでして言ってくれるのなら。
考えすぎるのはもう止めにしよう。
そう心に誓いながら、亀井さんを見つめて。
「うん。分かった」
「…よかった」
…安堵、かな。
表情を見てそんなことを思いながら、「やだ」や「恥ずかしい」を
連発して右往左往する亀井さんを眺めていた。
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