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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3

426 :『お守り代わりにそっと』:2007/05/10(木) 22:51

それはいかにも彼女らしい、七年もの間そうであり続けた彼女らしい舞台だった。
笑顔で始まって、笑顔で歌い踊ってここまできた。
自身の最後の舞台などということは関係ないように、今までと変わることなく元気な姿だって、そう感じた。

そして今も。
同じ時間を過ごせるこの瞬間を惜しんで、涙を流しながらそれぞれの想いを伝える後輩たち。
その愛すべき後輩たちを少しだけ照れ臭そうに、けれどいつものように笑って見ている。
一人、また一人と言葉を交わし、抱き合っている姿を見ながら、僕は迷っていた。
勿論伝えるべき言葉はいくらでもあるし、考えていたけれど……

427 :『お守り代わりにそっと』:2007/05/10(木) 22:52

愛ちゃん、藤本さんと、どこか引き継ぎめいたやりとりが終わる。
残っているのは僕だけ。
どこか不思議な感覚だった。
これだけの観客に囲まれて、多くのメンバーやスタッフがいる空間で、どこか二人きりのような。

「よっ」
「おう」

切り出した言葉は用意していた言葉じゃなく。
自分の口から出た言葉も、返ってきた言葉も、あまりにいつもと変わらない。
笑い出してしまいそうなくらいに。

「卒業するんだ」
「卒業、するよ」
「うん。……、今までありがとう」
「そんだけかよ」

呆れたように笑うくせに、その表情はどこか満足そうに見えた。
どれほど本気でそう思っているのかが伝わっているからかもしれない。
僕は感謝している。心の底からだ。
何時、何をとか、そんなことですらなく、彼女の存在そのものに。
助けてくれた先輩が側からいなくなり、逃げ場を奪われて、ここにいる意味を曖昧にしていく僕に。
最後に残った絆が“僕”でいるための力になっていたから。

 いてくれてありがとう

そして願わくば、前を歩いていく君に、追いかける僕がなんらかの力をあげられればいいと願う。

428 :『お守り代わりにそっと』:2007/05/10(木) 22:54

「いつだったかな」
「お?」
「僕がしていた腕時計、妙に気に入ってたよね」
「あー、アレね。かっけーなあって思ってさ」
「買った翌日だってのに取られそうになった」
「結局くんなかったじゃん。高いモンじゃないっていったくせにさあ」

そのときの彼女を思い出して笑うと、よっすぃーも思いだしたんだろう、悔しそうな顔を作ってそう返してくれた。

「あのときでもそうだったんだけどね。多分、もう手に入らないんだよ、アレ」
「……?」
「だから、あげるよ」
「はっ!? マジで?」
「卒業祝いに」
「……サンキュ」

離れていく君に、もしなにかの時には思いだしてほしいから。
一人で歩いていく君へ……
お守り代わりにそっと。

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