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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜3
- 160 :匿名 ◆TokDD0paCo :2006/11/12(日) 22:37
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理由なんてない。
ただなんとなく。それだけのことだった。
それがあんな事態を引き起こすきっかけになるだなんて……。
ある日僕は誰もいない楽屋に戻ってきた。
おや? そう思ったけれど、そのときはただそれだけのことだった。
ふとテーブルに目をやると、そこには誰かがつまんでいたらしいお菓子が乱雑に広げられていた。
別に特別食べたかったわけじゃない。
ついと手を伸ばしてポテチを一枚つまみ上げた。
まだ湿気ってない。
「ふむ、まだそれほどの時間は経っていないようだね」
なんて推理小説めいた独白を、芝居がかった口調で呟いて、パリパリと咀嚼する。
楽屋を見回しながらも、もう一枚、伸ばした指先がその奥にある袋に触れた。
- 161 :匿名 ◆TokDD0paCo :2006/11/12(日) 22:37
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親指と人差し指でつまみ上げたそれを口に入れようとして、ふと考えた。
掌を上にして、伸ばした指の先にはピーナツが乗っている。
左手で右手の根本を叩く。
勢いよく跳ねたピーナッツは僕の口の中へ消えた。
カリカリと咀嚼しながらなかなか香ばしいピーナツに、そして一発で成功してる自分に満足げに笑う。
ピーナツをもう一つ。
今度は高く上へと放り投げてみる。きれいな放物線を描いて戻ってくるピーナッツが口の中へ収まる。
立て続けにもう一個。
上へ放り投げた瞬間に、部屋の中で物音が聞こえた。
一瞬それに気を取られた僕の口元へ落ちてきたピーナッツ。
微妙にずれたポジション、くちびるの上に当たったそれは、なんのミラクルなのか跳ね返って鼻の中へナイスイン。
慌てて下を向いたと同時にこぼれ落ちるピーナッツ。
ヒドイ目にあった。
そして僕は楽屋の隅にある硬質なロッカーへ恨みがましい視線を向けた。
何気ない素振りでゆっくりと近づく。
端から横目で眺めながらロッカーの前を歩いていく。
- 162 :匿名 ◆TokDD0paCo :2006/11/12(日) 22:38
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「ここだっ!」
えいと開いたロッカーの中で、亀井さんが笑顔のままで硬直していた。
「見てたね?」
亀井さんが表情を変えずにコクンと頷く。
「笑ったでしょ?」
急に挙動不審な表情になった亀井さんが、迷った末にコクンと頷く。
「ちょっとおいで」
ロッカーから亀井さんを連れ出し、テーブルの側へと歩く。
「これなーんだ?」
「せ、せんぱい? なんか絵里、すごいイヤーな予感がするんですけどぉ」
僕の指先にはピーナツ。
きっと彼女の予感は当たっている。
二人の視線が絡み合う。
「こうしてやるっ!」
「きゃーー!!」
- 163 :匿名 ◆TokDD0paCo :2006/11/12(日) 22:38
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しばらくもつれ合った後、部屋に入ってきた道重さんが見た物は、鼻からピーナッツを落とした瞬間の亀井さんの姿だった。
僕には今、亀井さんがなにを考えているのかがとてもよく解った。
わけの解らないままに亀井さんに襲われた道重さんも、やはり同じ運命を辿った。
まるで映画で観たゾンビや吸血鬼のように、この事象は恐るべき伝染性を持っていたんだ。
次々と楽屋へ戻ってくるメンバーが襲われていく。
理性を取り戻していた僕は、その修羅場を目にしながらこれはマズイことになったと考えていた。
その流れが断ち切られたのはよっすぃーのときだった。
おかしな精神状態にあった愛ちゃんが、襲いかかったはずのよっすぃーに逆襲されたんだ。
その手から飛んだピーナッツが、最後に戻ってきた藤本さんを直撃し、事態はより凄惨なものへと変化した。
感染者も非感染者もなく、敵も味方もない。
いつまで続くのかすら解らない、ピーナッツを中心にして混沌とした状態へ突入した。
そしてどれほどの時間が過ぎたのだろう。
開いたドアにマネージャーの怒声。
事態は急激に集束し、僕と……申し訳ないことにメンバー全員が正座で一時間あまりもお説教をいただいた。
けれど昔みたいに、少し子供だったあの頃のように、楽しかったと感じてしまったのはまぎれもない事実だった。
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