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ボツ小説

1 ::2004/03/23(火) 08:25

なんとなく入ったカレー屋でなぜかソニンが店員をしていた。

105 :10:2004/04/20(火) 19:56
ボツJ 終

106 :名無し娘。:2004/04/20(火) 22:23
ナイス

107 :名無し娘。:2004/04/21(水) 22:09
スバラシイ

108 :名無し娘。:2004/04/22(木) 18:14
とてもきれい

109 :名無し娘。:2004/04/22(木) 22:40
このスレ以外に書いたことないんですか?
あるなら教えて欲しいんですが

110 :名無し娘。:2004/04/24(土) 12:35
大胆にして細心

111 :11:2004/04/26(月) 00:10
「影がね、なんかおかしいんだ」
やぐっちゃんの声は深刻だった。
私と圭ちゃん、顔を見合わせて、ひょいと背中のほうから、やぐっちゃんの足元を覗き込んで見たのだけれど、そこには、小さなやぐっちゃんのシルエットが、夕陽のおかげで大きく、黒々と伸びてるだけで。
「あたしには、普通にしか見えないけど」
と圭ちゃんが呟きます。私も言う。
「あたしにも普通に見えるよ」

112 :11:2004/04/26(月) 00:11
やぐっちゃんは難しい顔で頷いた。
「そっか、でもどっか違うんだよなあ」
「おかしいね」
私は首をかしげた。圭ちゃんも首をかしげた。
それからいつまでもやぐっちゃんは、腕組みしたまま、難しい顔でぶつぶつ、影を眺めながら呟いてました。
「何かがおかしいんだよ」

113 :11:2004/04/26(月) 00:11
じゃあ、あたしの影と比べてみようか。
なんて言おうと思って気づいた。
「あれえ」
素っ頓狂な声をあげてしまい、やぐっちゃんは驚いて顔をあげた。圭ちゃんもこっちを見ている。私は腕組みをしながら、呟いた。
「影が、ない」

114 :11:2004/04/26(月) 00:11
私の足元からは影が伸びていませんでした。並んで立っている、やぐっちゃんの足元からは、すらっとシルエットが伸びてるのに。
「どしたんだろ、一体」
「うぅん、どしたんだ」
すると圭ちゃんも言います。
「ていうかさ、あたしの影もないや」
三人並んで唸ります。こうなるとおかしいのは逆に私たち二人のほう。

115 :11:2004/04/26(月) 00:11
「もっと、明るいところに出てみよう」
と言って私たちは、広い場所へと移動しました。右手をブラインドがわりに、眩しい夕陽を遮りながら、見下ろした私と、圭ちゃんの足元にやはり影はなく。
「オイラにはあんのに」
やぐっちゃんの足元には影が。

116 :11:2004/04/26(月) 00:12
そこで不意に私は気づいた。
「なぁんだ」と言って私は笑いました。
「真正面から太陽が来てるんだから、ほら、影はこっちだよ」

117 :11:2004/04/26(月) 00:12
そう言って振りかえると、確かにすらっと影が伸びています。私のと、やぐっちゃんのと、圭ちゃんのと。
私と圭ちゃん、顔を見合わせて、大笑い。
「あはははははははははははははは」「あははははははははははははははは」「じゃあ、オイラのは一体、なんだよう」「あははははははははははははははははは」

118 :11:2004/04/26(月) 00:12
ボツL 終

119 :12:2004/04/26(月) 00:13
「つーか話聞いてる?」
「ああごめん、クロスワード、やってるんだよ、今」
「へえ」
「わかんなくてさ・・・最初がモで始まってるんだ」
「うん」
「それで、12345・・・8文字だ」
「うん」
「で、最後は・・・め だ」
「うん」
「あと多分だけど2文字目は棒だ」
「棒って」
「あれだよ、あの、伸ばす棒」
「ああ、伸ばす棒」
「そう、伸ばす棒」
「なるほど」
「あと5文字目、5文字目は グ だな」
「結構分かってんじゃん」
「必死で埋めたからな」
「で、問題はどうなってんの」
「それがなぁ、結構長いんだよ」
「言ってみてよ」
「増えたり減ったり分裂したり戻ったり改造されたりばら売りされたり歌ったり踊ったり泣いたり笑ったりするものってなんだ?」
「あー」
「わかるか?」
「うーん、ミジンコ」
「・・・なんでミジンコ?」

120 :12:2004/04/26(月) 00:13
ボツM 終

121 :13:2004/04/26(月) 00:19
「神様おねがいソロ活動がしたいです」と私はある日星に祈った。そうして部屋に帰ると中澤さんがいた。私はびっくりする。
「なんでこんなところにいるんですか」
「お前の願いかなえに来たんやないか」と中澤さんは言った。中澤さんは、右手に大きなナタを持っていた。

122 :13:2004/04/26(月) 00:19
わるい予感がした。
「まさかとは思いますけどー、そのナタで娘。のみんなをみなごろしにして、残ったあたし一人でソロ、なんてオチじゃないですよね」
と私は言った。
「なんや、アカンのかぁ」と中澤さんは首を振る。「したらどんなんがええ?ミキティてきには」

123 :13:2004/04/26(月) 00:19
「ていうかあたし的にはやっぱりすっごい名曲を、なんか感動するテーマに基づいて歌って、それで初登場は五位くらいなんだけど二ヵ月後くらいに一位とって、そんであたし感動して泣いちゃう、みたいなのがいいですね」
と私は言った。
「わかった」
と中澤さんは言った。

124 :13:2004/04/26(月) 00:19
それからすぐ中澤さんは窓から飛び降りて消えてしまって、ここ三階なのに、とか、何しに来たんだろう、とか、私はぼんやりと色々考えながらベッドに横たわっている。
もしかするとさっきの中澤さん、ほんとに神様なのかもしれない。ううん、ていうかきっとそうだ。だってあたし誰にも言ってないもん神様に祈ったこと。それになんか窓から飛び降りてたし。ふつう死ぬよねこんな高さから飛び降りたら。とか思ってたその時、
いきなりうううううううううううううううううううんってサイレンの音がして私は跳ね起きた。それでカーテン開けて外見たらすごい大騒ぎになっていた。

125 :13:2004/04/26(月) 00:20
『中澤裕子飛び降り自殺』
なんて文字がいろんなスポーツ新聞の見出しを埋め尽くして私はもうしらない。とか思ってたんだけど、やっぱり現場が私の家である以上は知らないフリも出来ずに仕方なく私は、「そう言えば最近悩んでるみたいでした・・・」なんて、会見の席でうつむいてみたりもした。
最初はすごい私のこと、警察の人とかに疑われてたみたいなんだけど、私の迫真の演技が功を奏したらしく、ほとぼりが冷めると今度は逆に私と中澤さんの関係がクローズアップされるようになった。実は仲良しだった、というのがファンにも事務所にもえらく新鮮だったみたいで、というのは、私が苦し紛れに「よく遊びに来てました」なんて言ったからだと思うんだけど。
で、その組み合わせはずいぶん意外性があったらしく。

126 :13:2004/04/26(月) 00:20
というわけでつんく♂さん曰く「気持ちをこめて歌ったらええ」と渡された曲を私はソロで歌うことになった。表立ってコメントはなかったけどそれが中澤さんへの追悼ソングであることは周知の事実だった。偶然とは言え私は中澤さんに感謝した。
渡された歌はなかなかにいい曲で私はブース席で歌いながら、もしかすると中澤さんはほんとに神様だったのかもしれないな、なんてちらりと思った。私は、気持ちをこめて歌った。

127 :13:2004/04/26(月) 00:20
初登場五位だったその曲は二週目にランキング圏外に落ちた。また変わらない日々がはじまった。私はもうソロがしたいとか誰にも言わなくなったし、考えることもなくなった。そうして替わりにわきあがってきたのは中澤さんが死んだことに対する悲しみだった。
それは、ほんとに、急にせり上がってきた感じだった。けれど娘。のみんなや他の人たちがさんざん泣いて、悲しんで、やっと悲しみを忘れかけた今になっちゃ、誰にも言えなくて私は時々夜中ひとりで泣いた。星を見ると祈った。

128 :13:2004/04/26(月) 00:21
しばらくして梅雨がきた。悲しみはちっとも薄れないどころかどんどん強くなった。その上目の前で自殺された責任なんかもちょっとずつ感じるようになって、私は梅雨の空に負けないくらいどんより湿った毎日を過ごしていた。
仕事は忙しかった。娘。の新曲が出るというのでレッスンがあったりレコーディングがあったり、歌番組の収録があったりして、それでも虚しさは紛れなかった。発売日はぐんぐん近づいていった。いつもと違って、それに対して緊張感のかけらもなかった。ただただ虚しかった。

129 :13:2004/04/26(月) 00:21
そんなある日、私たちは事務所に集まっていた。色々な打ち合わせが交わされていくのを私はぼんやりと眺めていた。と、誰かが言った。
「そう言えば、新曲のランキングが出てるから。」
そして全員に何やらコピー用紙が回された。それを見てみんなは歓声をあげた。私もぼんやりと紙に目を落とした。
娘。の曲は四位くらいだった。そして一位にはあの時出した私の曲がランクインされていた。

130 :13:2004/04/26(月) 00:21
はじめ印刷ミスかと思った。「すごいじゃん」とか「良かったねぇ」って声がして私に言ってるんだって最初わからなかった。私は笑うでもなく喋るでもなくただぼーっとみんなを眺めていた。みんなすごい嬉しそうだった。矢口さんとかめちゃくちゃ喜んでいた。胸の、奥の方から、何かがこみあげてくるのを感じた。
「なんで今更一位になったんですかねえ」と私は照れ隠しに呟いた。
矢口さんが、笑いすぎて眼に溜まったんだろう涙を、拭いながら教えてくれた。
「きっとファンのみんなが買ったんだよ。だって、ほら、こないだの土曜ってさ──」

131 :13:2004/04/26(月) 00:21
そんであたし感動して泣いた。

132 :13:2004/04/26(月) 00:21
ボツN 終

133 :名無し娘。:2004/04/26(月) 12:48
11 ワカラン
12 ワロタ
13 イイ!

134 :名無し娘。:2004/04/26(月) 19:26
最後の一行がいいね。

135 :名無し娘。:2004/04/26(月) 20:28
11 矢口の影は反対方向にも伸びてる
っていうことだと思う

136 :14:2004/04/27(火) 23:58
「ふふ、綺麗なバラ・・・」
「あ、道重、どしたのそれ?」
「ほら、見てみてくださいよ飯田さん、綺麗なバラにはトゲがあるって。このバラ、こんな鋭いの」
「ほんとだ・・・すごいトゲ・・・痛っ」

137 :14:2004/04/27(火) 23:58
「あれ、バラが一本増えてるよ」
「ほんとですか?気づかなかった」
「あたしもー」
「さっきは確かに・・・、一本しかなかった気がするけど。飯田さんに聞いてみよう。飯田さーん」
「あれ・・・いないみたいだねぇ」
「何やってんだろ、もうすぐ本番なのに・・・ちょっとあたし探してくるよ」
「あ、行ってらっしゃい・・・ねえ、ウチ等も探しにいこうか?田中?」
「ん・・・それにしても・・・綺麗なバラですね、それにすごいトゲ」
「あれ、田中?」

138 :14:2004/04/27(火) 23:59
「あれ、バラが置いてあるよ」
「ほんとだー、綺麗なバラ」
「そしてなぜか誰もいない・・・梨華ちゃんとかどこ行ったんだろう」
「藤本さんさっき廊下ですれ違ったよ、なんか飯田さん探してたみたいだけど」
「まこっちゃん何やってんの?」
「いや、ちょっとバラを咥えてみようかな、と思って」
「・・・なんでもいいけど、トゲ、気をつけなよ」
「折っちゃったら怒られるかな」
「へーきだよ、四本もある」
「痛て。トゲ刺さった」
「だから言ったじゃ・・・ん?」

139 :14:2004/04/27(火) 23:59
「みきちゃん大変、まこっちゃんが消えた。こつぜんと」
「何フザけてんの」
「フザけてるとかじゃなくて」
「そんなことより辻ちゃん、飯田さん見なかった?」
「いや、見てないけど」
「・・・本番まであと30分か。よし、手分けして探そう」
「えー」
「辻ちゃんはあっち。で、他のひとは・・・って、なんで二人しかいないの?」
「だからまこっちゃんが消えたんだってば」
「・・・ちょっと待って、バラ、めちゃめちゃ増えてない?」
「んー、いちにいさん、・・・五本?あれれ?さっきは確か」
「誰か持ってきた?」
「みてないけど」
「ちょっと調べてみる必要ありそう」
「調べるって」
「なんか怪しいよ、このバラ」
「うーん・・・普通のバラに見えるけどなあ、綺麗なだけで」
「どれどれ・・・痛っ」
「あー、トゲ気をつけないと・・・って、ののも刺さっちった」

140 :14:2004/04/27(火) 23:59
「わあ、バラがこんなに。」

141 :14:2004/04/28(水) 00:00
ボツO 終

142 :名無し娘。:2004/05/01(土) 01:38
( ‘д‘)ノ<ブロ、ワルサーあるで

143 :名無し娘。:2004/05/03(月) 15:48
かつて読んだどのボツ小説よりもボツ小説らしいボツ小説だ。

144 :名無し娘。:2004/05/07(金) 16:45
書けそうで書けない味だ

145 :名無し娘。:2004/05/16(日) 07:53
>>142
南の診療に赤、さっき保田を東で漁ってるのを見た。武器はセクビ、漁りたい。

146 :15:2004/05/21(金) 22:32
石川 突然ですが問題です。この楽屋のどこかに、ヤグチさんが隠れています。
吉澤 さて、ドコでしょう。
飯田 へ?
藤本 …っていうか、ありえないよね。

147 :15:2004/05/21(金) 22:32
吉澤 ありえない、なんてことはないです。
石川 隅々まで探しましょう。
亀井 ロッカーの中…いませーん。
田中 テーブルの下もいないよ。
道重 カーテンの奥もいませんでした。
加護 …いるわけないじゃん。こんな狭い部屋に。
辻  かくれるトコなんてもうないじゃん。
新垣 石川さん、吉澤さんも、あんまり適当なこと言わないで下さい。

148 :15:2004/05/21(金) 22:33
吉澤 はい、全員ブー。
石川 正解は鏡の中でした。
紺野 何を言ってるんですか。
小川 鏡?
吉澤 じゃあリカちゃん、ヤグチさんを呼んでくださーい。
石川 はーい。

149 :15:2004/05/21(金) 22:33
石川、馬鹿でかいハンマーを取り出して、鏡に向かって振り下ろす。
がしゃん。

飯田 うわっ。
藤本 なんてことを。

割れた鏡の奥から、矢口の死体が転がり落ちてくる。

150 :15:2004/05/21(金) 22:33
石川 と、言うわけでしたー。
吉澤 ちょっと難しかったかな?
辻  こんなのわかるわけねーだろ。
藤本 インチキだよね。
石川 インチキだなんて。
加護 かえれー。
全員 かえれー。 
吉澤 一生懸命考えたのに。
石川 ぐすっ。
警官 殺人と死体遺棄の現行犯で逮捕する。

151 :15:2004/05/21(金) 22:34
がつん。
警官、ゆっくりと倒れる。
後ろで飯田がさっきのハンマーを持って立っている。

飯田 ふー、あぶなかった。
石川 助かりました!
吉澤 さすがリーダー。
藤本 でもさー、この人どうすんの?
石川 ん、いいこと考えた。
吉澤 ふふ、じゃあみなさん、10分だけ出て行ってください。
加護 また?
石川 今度はすごいよ、すっごい隠し場所見つけたんだから!
飯田 しょうがないなー。

152 :15:2004/05/21(金) 22:34
石川と吉澤をのぞく全員、嬉しそうに出て行く。
残った二人は目をキラキラさせて言い合う。

吉澤 床下?
石川 天井裏!

153 :15:2004/05/21(金) 22:34
ボツP 終

154 :16:2004/05/21(金) 22:36
「なんか、つんくさんがめちゃくちゃいい歌つくってました」
「マジで?」
「なんか、昨日事務所で、あのエライ人とか集まる部屋あるじゃないですか」
「あ、三階の会議室?」
「そう、で、偶然前通ったら、テープがかかってて」
「ふぅん」
「スゴイんですよ、もうあたしうっとりしちゃって」
「そんなにいい歌だったんだ」
「その後の会議も大盛り上がりでしたよ。これは売れる!とか、最高だ!って感じで」
「へえ、すごいね、ウチ等の歌かなあ」
「そこまでは聞いてませんでしたけど、でももしあの曲もらったらミリオン行くかも」
「マジで?ていうか一回聞いただけでそこまでわかるの?」
「はい。ていうか一回聞いただけなのに、未だに耳から離れない」
「すごい・・・そこまで言うなら、リカちゃんちょっと歌ってみてよ」
「いいですよ。ふー、ふふふー、ふふー、ふふふふふふー」
「・・・」
「どうでした?」
「どうでした?って言うか・・・とりあえずミリオンは行かないっぽい」
「またそうやって・・・あ、あたしが歌ったからいい歌に聞こえない、って言うんでしょ?」
「違うけど・・・まあ、そう言うことかな」

155 :16:2004/05/21(金) 22:36
ボツQ 終

156 :17:2004/05/21(金) 22:39
リカちゃんと家で料理つくって食べる約束だったので、私、台所にいるんだけど、フライパンとかいろいろ久しぶりに取り出して洗ってたら、ナベのフタがぶっ壊れてることに気づいた。
『今駅ついた。あと10分くらいで着きます。何か買ってくるものあったら言ってね』
というリカちゃんからのメールに、私はカチカチと返事をかえす。
『ナベブタ買ってきて。なんでもいいから。』

157 :17:2004/05/21(金) 22:39
20分くらいしてチャイムが鳴る。ドアを開けるとブタを小脇に抱えたリカちゃんが汗まみれの顔で笑っている。
「あー重かったァ」
そう言ってブタを床に下ろす。ブタはよちよちと部屋の隅へ走っていく。私はそれを目だけで追う。
「忘れてた、リカちゃんはバカだったよね。」
「なにが?」

158 :17:2004/05/21(金) 22:39
ブタはやっと落ち着いたらしく、部屋の隅っこで大人しくうずくまっている。よく見るとその背中にはナベが括り付けられていて野菜なんかがたくさん入っている。
「なるほどナベが括り付けられてるからナベブタなんだね。なっとく。」
私はわざとはっきりした声で言う。リカちゃんは嬉しそうに笑う。
「かわいいよね。」
「うん」
にこにことブタを眺めるリカちゃんは私のシラけた視線に気づかない。私はため息をつく。気づいたところでどうにもならないだろう。まあ、野菜とナベつきのブタ。悪くは無い。私は包丁を手にとって振り返る。
「とりあえず食っちゃおうよこのブタ」

159 :17:2004/05/21(金) 22:40
ブタはびくっと顔をあげる。リカちゃんもさらにびくっと顔をあげる。口をとがらせてまくしたてる。
「何なの何よそれ、そんなオニみたいなことあたし絶対はんたい。」
「はぁ?じゃあなんのつもりで買ってきたんだよこんなブタ。あたしはナベのフタ買って来いっつったんだよ」
「ちがうよちがうよヨッスィナベブタって言ったよ?ほら、メール、ほらほら」
「たしかにナベブタってあるけどナベブタっつってブタ買ってくる奴がドコにいんだよ!」
怒りを堪えきれずに私はリカちゃんの顎を掴む。
「は、離してよぅ」とか言いながらリカちゃんはちょっと嬉しそうでそれがまたむかつく。

160 :17:2004/05/21(金) 22:40
そんな私たちを途中までは不安そうに眺めていたブタだったけど、私が顎を掴むために包丁を置いたせいか、気づくと安心したようにまた、部屋の隅でだらしなくうずくまっている。ふいに何もかもバカバカしくなる。私はため息をついて顎から手を離す。
「とりあえずナベはもういいや、何しようか」
呟きながら私は冷蔵庫を開ける。リカちゃんも背中から「うーん、どうしよう」なんて言う。ブタはそのすぐ後ろで「ぶいぶい」と鼻を鳴らしている。
「・・・って、いつの間に。」
「きっとお腹空いてるんだよ。」
リカちゃんはいとおしそうにブタの耳あたりをさする。なんか気に入らない。

161 :17:2004/05/21(金) 22:40
「これ食べるかな。」
ごそごそとリカちゃんが差し出したのは捨てようと思ってた余り物の野菜炒めだった。
「どうだろ・・・つーかそれ傷んでるっぽいけど」
「ほら、お食べ?」
ちょっと嬉しそうにリカちゃんはサランラップを取った。
瞬間、たぶん0.7秒くらい、ブタはありえない勢いでそれを平らげた。

162 :17:2004/05/21(金) 22:40
食べ終わったブタは顔をあげると「ぶい」と言う。
私とリカちゃんは顔を見合わせる。リカちゃんの目は輝いていた。きっと私の目も同じくらいキラキラしていただろう。
「すっげえええ!」
「フードファイターだ、フードファイターだよ」
「見た?見た?今のスピード。一秒かかってねーよ、まじカッケーよこいつ」
「あ、これも食べるかな・・・?あ!」
「うぉ、早ぇ!」
「すごい!これも!これも!」
「これなんて生だけど!」
「これも!明らかにもう腐ってるけど!」
「これはどうだ!」

163 :17:2004/05/21(金) 22:40
1時間くらいしてブタは満足げに部屋の隅っこでうずくまっている。
私は空っぽの冷蔵庫の前で、リカちゃんの顎をつかんでいる。
「どうすんだよ。食うもん無くなっちゃったじゃんか。」
「ヨッスィが調子乗って食べさせるからだよ。」
「自分だって。」
私たちはお互いを責める。けれどお腹が空いては喧嘩も出来やしない。
「やっぱブタ食おうよ・・・」
「ダメだよ・・・」
なんて言いながらもうベッドでぐったりしてる。大切な時間はこんな風に過ぎていく。

164 :17:2004/05/21(金) 22:41

そして気づくと朝になっている。
私は体を起こす。
一人きりだ。目を擦る。いくら擦ってもリカちゃんもいないしナベブタもいない。
そしてテーブルにはなにやら。
「・・・うまそうな、におい」

165 :17:2004/05/21(金) 22:41
テーブルの上には大盛りのナベ。豚汁みたいな感じのものが湯気を立てている。やたら食欲をそそる匂い。
私はふたたび目を擦る。擦りながら、呟く。
「・・・材料どこあったんだ、一体」
その時トイレからごそごそという気配を感じる。とするとリカちゃんはいる。しかしブタは。いっぺんに目がさめるのを感じる。

166 :17:2004/05/21(金) 22:41
思い出すのはあの、ブタに括り付けられていたナベ。そして野菜。そしてゆうべ無くなったはずの肉。そしてここにある肉。いなくなった、ブタ。
私はふたたびナベに目をやる。
ナベの隣に置かれたちいさなメモが目に入る。手紙だ。
それは小学生が左手で書いたような字で。

「おせわになりました ナベブタです ゆうべのごおんはいっしょうわすれません せめてものおんがえしとして わたしの いちばんとくいな りょうりで おんがえしさせて もらおうとおもいます いっしょうけんめい つくりました おいしいと いいです おいしいと いってくれれば いちばん しあわせです ナベブタより」

167 :17:2004/05/21(金) 22:41
私は泣いた。
泣きながら汁をすくって飲んで肉を頬張った。
それは今までにない味だった。今まで食べたことのない味だった。おいしいとかまずいとか、私にとってはそういう問題じゃなかったけれど、私は一口ごとに「おいしい」と、しつこいくらいに言いながら食べた。
もう夢中だった。

168 :17:2004/05/21(金) 22:41
けれど半分くらい食べ終わったところでトイレから流す音が聞こえて、私はやっと正気にかえった。リカちゃんは私が起きるまで取っといてくれたんだから、一人で全部食べるわけにはいかないな、と思った。
「これ、おいしいよ、一緒に食べよう」
私が涙声でそう呼びかけると、半分くらい開いたトイレのドアから、ナベブタが照れくさそうに顔を出す。

169 :17:2004/05/21(金) 22:42
ボツR 終

170 :名無し娘。:2004/05/21(金) 22:56
うっわぁ

171 :名無し娘。:2004/05/22(土) 02:09
うあぁ、後味悪ぅ。
なのに読み返しちまった。うぁぁ。

カチカチ山思い出したよ。

172 :名無し娘。:2004/05/22(土) 04:54
俺は弟切草のバッドエンディング思い出した。
自分の彼女は焼け死んで、
間違えて助け出したのは狂った双子の姉の方だったっていう…

173 :名無し娘。:2004/05/23(日) 03:42
凄いとしか表現できないのが悲しい

174 :名無し娘。:2004/05/23(日) 04:17


175 :名無し娘。:2004/05/25(火) 23:59
うわぁ、まじですげぇ。。。

176 :18:2004/06/06(日) 23:46

楽屋にゴマキ人形が落ちていた。

「へんな人形。ごっちんそっくり。」
楽屋に一人きり、辻が退屈しのぎに人形の鼻を掴むと、それはまるで生き物のようにむくむく動き出す。
「ハナヲツカマナイデクダサイ。ハナヲ。」
「うわあ。ごっちんの声だ。」
辻は目を丸くする。
「イイカラアヤマリナサイ。」
「わ、ほんとにごっちんみてえ。もっと喋ってよ。もっと。」
辻は嬉しそうに笑う。ゴマキ人形は頭をかく。そして言う。
「ツジ、アヤマレ。」
「うわあ。」
辻は一向に謝らない。ゴマキ人形もそれでいいみたいな風で。

177 :18:2004/06/06(日) 23:47

楽屋にゴマキ人形が落ちていた。

「あれ、ごっちんの人形。」
楽屋に一人きり、人形を拾い上げながら、なっちが言う。
「見ればみるほどそっくり。」
言いながら、乱暴に人形を揺する。手を引っ張って見たりする。なっちは笑顔を崩さない。
「ばーかばーかばーか。ねえごっちん、聞こえてる?」

「最近大変なんだよ、ドラマとかさ。歌も一人っきりだしさ。」
人形を相手に、一人喋りつづけるなっち。
時折頭をふんわり撫でられて、ゴマキ人形は心地よさそうに膝でじっとしている。

178 :18:2004/06/06(日) 23:47

楽屋にゴマキ人形が落ちていた。

「何これ、ごっちんの人形じゃん。」
そう言って飯田が人形を拾い上げる。
「床に置いとくなんてヒドイね。カオが飾っといてあげるからね。」
言いながら、飯田は優しくゴマキ人形のホコリを払う。すると突然人形は口をぱくっと開く。
「アナタハイイヒトデス、ネガイヲヒトツ、カナエテアゲマス」
飯田は笑って答える。
「じゃあごっちん娘。に戻ってきてよ、何人も抜けちゃうから不安なんだよ」
ゴマキ人形はその途端にくたっとなって、それは何回ゆすぶってももうただのぬいぐるみに過ぎなかった。

179 :18:2004/06/06(日) 23:47
ボツS 終

180 :名無し娘。:2004/06/10(木) 21:24
悪くない。
いや
素晴らしい。

181 :19:2004/06/27(日) 01:42
ある日。
ほんのイタズラのつもりで楽屋の電気を消したら飯田さんだけがぼわっと白く浮かび上がった。
私は泣いた。
「いいださんはオバケだったんですね」
「違うよ道重、実はカオリは牛乳で出来てるんだよ」

182 :19:2004/06/27(日) 01:42
なるほど白いえのぐで書いた絵のように綺麗な飯田さんが「牛乳で出来てるんだよ。」なんてもっともらしい顔で言うとそれはそれっぽく聞こえるのだ。私は泣き止む。
「じゃあいいださんは冷やしておかないといけないんですね」
「違うよ道重、カオリはロングライフ牛乳で出来てるんだ」

183 :19:2004/06/27(日) 01:42
とすると冷蔵庫に入れておかなくても飯田さんが腐る、ということはないのだ。私は少しつまらなく思う。まっしろな飯田さんが腐っていくさまはさぞかし儚く綺麗なことだろうに、という思いが私を掴んで離れない。
「だからいいださんは北海道出身なんですね」
「それとこれとは関係ないよ道重」

184 :19:2004/06/27(日) 01:42
ある日。
ほんの冗談のつもりで石川さんの肩に噛み付いたらぽろっと肉が取れた。
私は泣いた。
「いしかわさんは妖怪だったんですね」
「違うよ道重、実はわたしチョコレートで出来てるんだよ」

185 :19:2004/06/27(日) 01:43
なるほど言われてみれば確かに、口の中に広がるあまあい香りはチョコレートのものだった。私は泣き止む。
「じゃあいしかわさんは冷やしておかないといけないんですね」
「違うよ道重、わたしガーナ産だから溶けにくいんだ」

186 :19:2004/06/27(日) 01:43
とすると火でもつけない限り石川さんが溶けてなくなる、ということはないのだ。私は少しつまらなく思う。溶けかけたチョコレートを慌てて頬張るのが案外好きなのだ。
「だからいしかわさんは色がくろいんですね」
「それとこれとは関係ないよ道重」

187 :19:2004/06/27(日) 01:43
さてそんなある日牛乳とチョコレートが脱退することが発表された。
なんだか胸がむかむかするような落ち着かない感じ。
ガマンが出来ない。楽屋で、三人だけになるのを見計らってから、私は二人に言う。
「どうしても辞めるんですか」
二人は答えずに笑っている。私のむかむかはどんどん強くなってばっくんばっくん胸を内側から打ち付ける。それは鼓動のようで衝動のような抑えきれない感情だった。
「まーしょうがないよねー」
「ずいぶん先の話だし・・・それに、道重もすぐに慣れるよ」
その味気ない感じがとても嫌だ。私は必死で耐えたがこみあげてくるものを抑えきる事が出来ない。痛みが辛いのではなくてこの痛みに終わりがないと思うことが、とにかく辛いのだ。だから泣きながら

188 :19:2004/06/27(日) 01:44
私は楽屋で一人ミルク・チョコレートを頬張る。
矢口さんが入ってきたので私は笑いながら言う。
「ねえ矢口さん知ってましたか、ガーナ産チョコレートはミルクとの相性がバッチリなんですよ!」
矢口さんは私の手元を見て、それから少しつまらなそうに笑った。
「知ってた。」

189 :19:2004/06/27(日) 01:44
ボツT 終

190 :20:2004/06/27(日) 01:44
つんく♂が一升瓶を片手に楽屋に入ってくる。
濁った目でわめくように言う。
「なあお前ら、娘。が5人になるとしたらどういうメンバーがええと思う?」
やばい本気だ、と矢口は直感する。

191 :20:2004/06/27(日) 01:45
飯田が悲しげに視線を伏せる。
石川が何か言いたそうな素振りをみせる。
吉澤がとっさに石川の口を後ろからふさぐ。
高橋はぽかんと口をあけている。
紺野は横目でみんなの様子をうかがっている。
新垣が難しそうな顔で首をかしげる。
田中はすでにちょっと泣きそうだ。
道重は悩んだフリして鏡を見ている。
亀井は汚いモノを見る目でつんく♂を見ている。
そして藤本が嬉しそうに手を挙げて言う。
「あたしが5人いればいいと思います。」

192 :20:2004/06/27(日) 01:45
「いい案だと思ったんだけどなあ。」
グーでぶたれて、赤くはれたおでこをさすりながら藤本がぼやく。
つんく♂が出て行ったドアを、そっと閉めながら、矢口が嬉しそうに言う。
「いや、最高の案だったよ。」

193 :20:2004/06/27(日) 01:45
ボツU 終

194 :21:2004/06/27(日) 01:46
瀕死の重傷を負ったカゴちゃんが言う。
「ああごっちんもうあたし助かんないよ、自分でわかるんだ・・・今までありがと・・・」
私はその手を握りながら答える。
「そんなことないよ、ほら、今救急車くるから!」
カゴちゃんは弱弱しくうなずく。
カゴちゃんは私の可愛い後輩であり弟子であり仲間であり親友だ。私は泣きそうになるのをぐっと堪える。

195 :21:2004/06/27(日) 01:46
「あたし天国行くんだ・・・でも・・・天国行く前に・・・うなぎ・・・」
とカゴちゃんは呟く。
「何、うなぎ?うなぎが食べたいの?ねえ、うなぎが?」
私は焦ってなんども聞き返す。カゴちゃんはすっと無表情になり、ふかく息を吸い込むと、喋りだす。

196 :21:2004/06/27(日) 01:46
「ああ天国行く前に一度でいいからごっちんが生きたままのうなぎを、あたしのために買って来て、料理しようとするんだけど手からすっぽ抜けちゃって、捕まえようとするとまたすっぽ抜けて、そのまま延々とうなぎと格闘するところが見たかったなあ。」

197 :21:2004/06/27(日) 01:47
というわけで私は走っている。一番近くの魚屋が待ち構えたように笑う。
「ほら姉ちゃん、イキのいいうなぎだ、持ってきな」
私はバケツごとそれを受け取る。受け取りながら代金を払って踵を返す。そして部屋に戻るとカゴちゃんはもう虫の息だ。どうやら救急車はまだ来ていないようだった。
「今すぐ作るからね待っててね!」
言いながら私は献立を考える。とりあえずカバヤキだ。私はバケツからうなぎを取り出そうとする。視界の隅でカゴちゃんの目がきらりと光ったように見える。気のせいだったかもしれない。

198 :21:2004/06/27(日) 01:47
水を離れ私の手のなかに入るのを、待ち構えていたかのようにうなぎは暴れだす。そしてつるっと手から抜けていく。焦って私はそれを掴む。うなぎはまたつるっと抜ける。私はそれを掴む。うなぎはさらにつるっと滑ってそこはもう窓の外だ。私はひたすらに追いかける。うなぎはどんどん上へ上へと、私もどんどん上へ上へと。

199 :21:2004/06/27(日) 01:47
気づけば雲が遥か下に見える。うなぎはさらに昇りつづける。私もさらに昇りつづける。カゴちゃんが笑いながら言う。
「頑張ってね、もうすぐ着くからね」
私はようやくだまされたことに気づく。カゴちゃんはふわふわ浮きながら、ごめんねという感じで手を立てる。そして言う。
「着いたら、一緒にカバヤキ食べようね」

200 :21:2004/06/27(日) 01:48
ボツV 終

201 :名無し娘。:2004/06/27(日) 08:53
凄いな。脱帽する。

202 :名無し娘。:2004/06/27(日) 11:30
久しぶりのこの感覚。たまりません

203 :名無し娘。:2004/06/28(月) 04:33
やばい過去最高にいい、もう超やばい

204 :22:2004/07/11(日) 02:12
「なんか聞いたんですけど・・・モーニング娘。の七不思議ってあるんですよね?」
一体誰に聞いたのか、目をキラキラさせて田中がそんなことを言う。
「あるけど・・・聞いたってつまんないよ?」
私は渋る。しかし田中はしつっこく食い下がってくる。
「教えてください!矢口さん!教えて!」
とても引き下がりそうにない様子だった。バカバカしかったが、しかしよく考えてみると私もかつては裕ちゃんとかに、目をキラキラさせて食い下がった身だ。しぶしぶ口を開く。

205 :22:2004/07/11(日) 02:13
「一つ。12時過ぎてから最後に帰ろうとすると、1/32の確率で楽屋のドアが開かない。」
田中が「は?」という顔になった。私は構わず続ける。
「一つ。コンサート中にマイクを落とすと、1/32の確率で靴ヒモが切れる。」

206 :22:2004/07/11(日) 02:13
「・・・その、さんじゅうにぶんのいち、ってなんなんですか。」
私は無視して続ける。
「一つ。衣装を汚したり破いたりすると、1/32の確率で口内炎が出来る。一つ。遅刻した時に・・・」
田中はすっかり呆れ顔だ。私が初めて聞いた時のように。

207 :22:2004/07/11(日) 02:13
「・・・1/32で目覚まし時計が壊れる。あと二つか。ええと・・・」
「もういいです。」
話の途中だったが、白けきった目つきで田中が腰を上げる。無理もない。まあ、どっちにしろ、そろそろ話を切り上げるつもりだった。いい加減夜も遅いのだ。
「じゃあ車来てるみたいなんで・・・あたし、お先に失礼します。」
田中がそう言って出て行くと、楽屋には私一人が残された。忘れ物がないか確認して、私もゆっくりと立ち上がる。ドアに手をかける。開かない。

208 :22:2004/07/11(日) 02:13
あれ。と思い時計を見る。12時を3分ほど過ぎていた。
「あ、1/32」
呟いて私はくすっと笑った。それからもう一度ノブをひねり、楽屋を後にする。

209 :22:2004/07/11(日) 02:14
ボツW 終

210 :23:2004/07/11(日) 02:15

ひたすらに暑かった。汗まみれになりながら石川が言う。
「・・・ロケ、なかなか終わらないですね」
私は答えずに、袖口で額の汗をぬぐう。そして少し離れた収録現場に視線をやる。監督さんがまた立ち上がって、大声を張り上げている。
「NG!NGだ!」
うんざりした顔で石川はうつむく。どうやら、私の出番はまだまだ来ないようだ。そして石川の出番も。

211 :23:2004/07/11(日) 02:15
待つのは苦じゃないがとにかく暑いのだ。私たちは山でロケをしていた。本来、待ち時間は涼しい車の中で過ごしたり、まあ、なんかしらの冷房あるんだけど、今日に限って言えば「冷房は全てぶっ壊れて」いた。
というわけで今、私と石川が待機している場所は崖のふちだった。崖、ってほどでもないかもしれないけど、まあ10メートルくらいの高さはあった。
そしてその下には川が流れているのだ。さらさらと涼しげな川の流れを眺めながらちょっとでも涼もう、という苦肉の策だった。

212 :23:2004/07/11(日) 02:15
「イイダさん、今まで黙っててすいません。実はあたし魚だったんです。」
川をぼんやり見つめていた石川が、ふいにそんなことを言う。
「あんた、暑さでおかしくなったんじゃ」
冗談のつもりで私は答える。茶化すみたいな口調で。
「おかしくもなりますよ、だってあたし魚なんですもの」
けれど石川は真剣だった。

213 :23:2004/07/11(日) 02:15
ちらっと「もしかしたら、石川まじで狂ったんじゃ?」と私は頭の片隅で思った。
それくらい暑かった。その時視界の隅でふたたび監督が立ち上がる。
「違うっつってんだろ!もう一回!もう一回だ!」
横顔に目をこらすと、いや、目をこらさなくても汗だくだった。見てるだけで暑っ苦しい。その時どこか遠くの方で「ざぶん」という音がした。
振り返ると石川の姿がない。

214 :23:2004/07/11(日) 02:16
ああ、飛び込んだんだな、と私は思った。そして顔を上げて、照りつける太陽を見ながらふふっと笑う。ムリもない、この暑さじゃ。
とは言え、今はれっきとした収録の最中なのだ。私はゆっくりとマネージャーの方へ向かう。うつろに私を見かえすマネージャーも汗だくだ。服から、前髪から、顔から、汗びっしょり。とにかく暑いのだ。私は言う。
「マネージャー大変です。石川が川に飛び込みました。」
「なんだって?」
収録は中断された。大騒ぎになった。

215 :23:2004/07/11(日) 02:16
私は説明をした。これこれこう言うわけで、石川が実は魚だったこと。気づいたら飛び込んでたこと。けれどやっぱりみんな暑さにおかしくなってるらしくて、誰も石川を捕まえにいこうとはせずに、崖から川を眺めては「おーい」とか言うだけ。あげくの果てには救助隊を呼ぼう、とか言いだす始末で。
なぜこんな簡単なことがわからないのだろう?みんなやっぱり、暑さにやられているのだ。私は笑いながら口を開く。
「いいですか、石川は『実はあたし魚だったんです』って言ったんですよ」
みんながうつろな目で私を振り返る。私はすこし得意げに続ける。
「だったら、こっちは鳥になればいいじゃないですか?」
言いながら私は地面を蹴って翼を広げた。

216 :23:2004/07/11(日) 02:16
飛びながら私は水面に目を凝らす。暑さにやられてしまった石川を探して。水面はぐんぐんと近づいてくる。水は限りなくすきとおっていて視界はとてもクリアだ。けれど石川はなかなか見つからない。風を切って私は飛びつづける。
向かい風がとても心地よくてさっきまでの暑さが嘘のよう。水面はキラキラと太陽の光を反射して、抜けるような青空との間、まるでまっさおなプリズムの中に居るようだどこか、遠くのほうで「ざぶん」という音が聞こえた気がした私は飛びつづける永遠に続く青の中を魚になってしまった石川を探して。
けれど石川はどこにも居ない。

217 :23:2004/07/11(日) 02:16
ボツX 終

218 :名無し娘。:2004/07/11(日) 07:52
そんなのありですか

219 :24:2004/07/11(日) 16:31
亀井が悩んでいる。
「なんかあたしだけ人気ないんじゃないでしょうか。」
みんなはうんうんと頷く。そういうきもちは誰にでもあった。

そこへ加護が入ってきて言う。
「そんなのみんないっしょだよ。」
しかし「悩みのない加護さんにはわからないんです。」と亀井は取り付くしまもない。

そこで加護が言う。
「じゃあ加護ちゃんになってみよう。はい、加護ちゃんスーツ」

220 :24:2004/07/11(日) 16:31
加護ちゃんスーツの仕組みはわからないが、そのスーツを着た亀井は加護そっくりになった。
「すごい・・・加護さんそっくり」
「でしょー。しばらくそれで過ごしてみなよ。その間あたし亀井ちゃんスーツ着ててあげるからさ。」
亀井は嬉しそうに「ありがとうございました!」と何度もいい、いつの間にか声まで加護そっくり。

221 :24:2004/07/11(日) 16:31
一週間ほどして、亀井が言う。
「加護さん、すごいですこのスーツ。なんだかあたし芯から加護さんになった気持ちで。」
「でしょう。すごいでしょう。」と加護も嬉しそうに笑う。

「で、悩みは解決したの?」
「はい。加護さんには加護さんなりの悩みがやっぱりありました。言わないけど。」
「うん。言わないでね。」
と加護は笑いながら言う。

222 :24:2004/07/11(日) 16:32
「じゃあ、そろそろあたし亀井に戻ろうと思います。」と言って亀井は背中を向ける。
「ファスナー、自分じゃ届かなくて。下ろしてください。」
加護はその背中に歩み寄る。そしてファスナーに手をかける。なにやらごそごそしてたかと思うと、急に大笑いをはじめる。
「アハハハ、ファスナー、壊れちゃったよ。」

223 :24:2004/07/11(日) 16:32
亀井は泣き笑いのような顔で「それじゃ困るんです。」と言う。
加護はマジなのか冗談なのかわからない顔で「ファスナー壊れちゃった。アハハハ。亀井ちゃん脱退しなくちゃね。」と言う。
黙ってみていた辻がぼそっと言う。
「ああ、いいな。」

224 :24:2004/07/11(日) 16:32
ボツY 終

225 :25:2004/07/11(日) 16:32

「ののはあと一ヶ月の命なんだよ」
と加護ちゃんが言った。私はなんのことやらわからず「へえ」と頷いてみせた。辻ちゃんもニコニコ笑って、
「だからメロンとか食べさせてあげた方がいいよ」
と言う。
私は笑ってその頭をはたく。

226 :25:2004/07/11(日) 16:33
その夜、私は圭ちゃんに電話をする。
「こんなこと言うんだよ、加護がさあ」
「ああ、あんたからかわれてんだよ」
圭ちゃんは笑う。私も笑うべきなのだろうが、とは言えその何気ないやりとりが私に、いっぷう変わった印象を残したのも事実だった。電話を切ってからも、一人のベッドで私は考える。冗談にマジになるなんてバカバカしい。でも、もしマジだったらどうしよう。

227 :25:2004/07/11(日) 16:33
メロンどころじゃ済まない。いたたまれなくなって私は、辻ちゃんに電話をかける。
「もしもしごっちんどしたの」
元気な声だ。私は言う。
「お昼の話なんだけどさー、あと一ヶ月の命って」
話はけたたましい笑い声でさえぎられる。しばらく経ってこんな声が聞こえる。
「あれはねー、実はあいぼんのことなんだよね」

228 :25:2004/07/11(日) 16:33
電話を切って、私は謎が一つ増えたことを感じる。いかにも冗談めかした中に、笑い飛ばせない何かが確実に存在していた。私は重い気持ちで考える。しばらく経って眠りに落ちる。そして目が覚めると忙しい仕事が待っているのだ。過ぎ行く日常の中に私はそれを忘れていく。

やがて梅雨が明けた頃、久しぶりに私は楽屋で辻ちゃんに会う。辻ちゃんは笑って、言う。
「ごっちん覚えてる?あいぼん。あと二週間の命なんだよ」
すっかり忘れてたくせに私はマジな表情をつくって「ああ」と答える。辻ちゃんはちょっと心配そうな顔になる。
「でもあんまり気にしない方がいいよ」
予想以上に深刻な顔になったらしく、そんなことまで言われる。そして私は再び悩みに落ちる。

229 :25:2004/07/11(日) 16:33
その夜、私はやぐっちゃんに電話をする。
「あのさあ、辻と加護のことなんだけどさぁ」
しかしやぐっちゃんは険しい声でぜんぜん別の話をする。
「そんなことより知ってる?カオリがあと半年の命なんだ」
私は一気に疲れを感じる。

230 :25:2004/07/11(日) 16:33
私の口数が少ないせいか、一分ほどでやぐっちゃんはそっけなく電話を切った。それはやぐっちゃんの気遣いだったのかもしれないが、私にとって今や遠く離れたかつての仲間たちはまるきり他人のように思える。やがて私はよしこに電話をする。
「あのさ、よしこ、今モーニング娘。で何が起きてんの?お願い教えて」
ほとんど祈るような気持ちだった。よしこはちょっと口篭もり、それから重苦しい声で呟く。
「もう知っちゃったんだね・・・やっぱごっちんは耳が早いね」
吐き出すようによしこは言う。梨華ちゃんがあと十ヶ月の命だと。私は何かを言おうとする。声にならない。

231 :25:2004/07/11(日) 16:34
「あんたバカじゃないの」
圭ちゃんがからからと笑う。私はむっとする。笑われるつもりで電話したんじゃない。
「何がおかしいの」
「何ガって。ていうか普通に考えてみなよ。あんたからかわれてんだよ?だってさ、辻加護が来月。カオリが来年の1月って・・・」
「もういい!」
軽い調子に我慢が出来なくなる。携帯を叩きつけるように切って、また私は一人のベッドに横たわる。カーテンの向こうに辛うじて月が見える。わずかに雲がかかって。眺めながら私は眠りに落ちる。そして変わらない日常が、目覚めた私を待ち受けているのだ。再び私はそれを忘れる。

232 :25:2004/07/11(日) 16:34
八月のある日、辻ちゃんと加護ちゃんが脱退した。全てが終わった控え室で、私は二人に花束を渡す。
「今までお疲れ様・・・」
けれど二人は花束を受け取ろうとしない。かわりに加護ちゃんが目を輝かせて、言う。
「ねえごっちん覚えてる?のの、もう今日までの命なんだよ」
「何言ってんの、それはあいぼんでしょ?」
二人は笑いながら、顔を見合わせたり、私の顔を見つめてみたり、相変わらずとても冗談とは思えない調子が、仕草から、口調から、溢れてきている。私は辛うじて目をそらし、みんなに笑いかける。
「ねえ、二人こんなこと言ってるけど」
誰も返事をしない。みんな一様に、壁にかけられた時計を見ている。私も思わずそっちを見る。時計が

233 :25:2004/07/11(日) 16:34
12時の針を指すと同時に、辻ちゃんが加護ちゃんを殺そうとする。でもその前に加護ちゃんが辻ちゃんを殺した。「あーあ」とやぐっちゃんが呟くのが聞こえる。加護ちゃんは返り血を浴びて嬉しそうに笑っている。私は何も思わない。ただ機械的に携帯を開き、圭ちゃんに電話をかける。
「もしもし圭ちゃん?やっぱりマジだったよ」
けれど圭ちゃんはただ笑うのみなのだ。
「バッカじゃないの、あんたからかわれてんだよ」
辻ちゃんはもはやぴくりとも動かない。カオリがまっしろな顔でそれを眺めている。梨華ちゃんは凄いスピードで小指をかりかりと、噛んでいる。加護ちゃんは、返り血を浴びて嬉しそうに、笑っている。私は呟く。
「そうなの・・・かなあ?」

234 :25:2004/07/11(日) 16:34
ボツZ 終

235 :26:2004/07/11(日) 16:36

「わたしを探さないでください。探さないで!」

236 :26:2004/07/11(日) 16:36


楽屋のテーブルに置かれていたその手紙を、カオリがやたらフキゲンに読み上げる。そして事務的に言う。
「というわけで、探さないでくれってことだから。あれね。探したら死刑ね」
「仕方ないなあ」
みんな納得する。オガワが不思議そうに言う。
「え、誰がいなくなったんですか?」
「それを追求するのも死刑ね。もちろん見つけても死刑」
だるそうにリカちゃんがぼやく。
「なんかあたし見つけちゃいそうで怖いよ」
「ああ、テーブルの下とか覗きづらいよね、これから」

237 :26:2004/07/11(日) 16:37

やがて一年が過ぎる。そしたらあの子もこの子もいなくなって。
コンノが言う。
「今度また増えるらしいよ・・・明日会見やるって・・・」
「ってことはまた減るのかな」
「次誰だろ・・・なんか、でも、もう慣れたよね」
冷めた言葉がやりとりされる。ヨッスィが呟く。
「別にあたしもう辞めてもいいけどな・・・」
「うわ、言っちゃった」
「そう言うんじゃなくて、なんか。もう疲れた、やる気しないんだよ」

238 :26:2004/07/11(日) 16:37

ふたたび一年が過ぎる。あの子もこの子もいなくなる。けれど人数は大して変わらない。
ミキティが呟く。
「なんか楽屋寂しくなったよね」
タカハシが答える。
「みんなゴハン食べに行っちゃったって。・・・新しい子たちだけで固まっちゃってる感じ、あるよね」
「ん。・・・そういや、こないだガキさんからメールきたよ」
「どうだった?」
「んー、なんか、元気にやってるみたいよ・・・」

239 :26:2004/07/11(日) 16:37

そしてまた時が過ぎる。「残っている」のが誰なのか。その基準すらぼやけてくる。
ミチシゲが言う。
「あたし、もうダメみたい。今の路線に耐えられないの。」
「そんな。」
「レイナもおなじだって・・・楽しかったけど、終わりだね。バイバイ」
「待ってよ・・・待ってってば、ねえ・・・」

240 :26:2004/07/11(日) 16:37

けれど時は止まらない。あの子はいなくなり、この子もいなくなり、そして。
楽屋で一人、カメイが呟く。
「あたしがリーダーだなんて、笑っちゃうよね。このあたしが、リーダーで、一番センパイ。」
呟きながら、さらさらと手紙を書いている。読まなくても内容はわかる。
「さよなら」
カメイはそう呟いてロッカーの扉を開ける。

241 :26:2004/07/11(日) 16:38

「ヤグチさん、久しぶりです」
「カメイ、死刑だよ」
狭いロッカーのなかで、私たちは泣きながら抱き合う。

242 :26:2004/07/11(日) 16:38
ボツ小説 終

243 :名無し娘。:2004/07/11(日) 16:42
1個だけ使われていないアルファベットがあるのはわざと?

244 :名無し娘。:2004/07/11(日) 16:43
更新乙。
リアルタイムで読ませて頂きました。
面白かった。

・・・でこれで完結?

245 :名無し娘。:2004/07/11(日) 16:50
謎は謎のままでいいんじゃない

246 :名無し娘。:2004/07/11(日) 23:20
あっさりとしていながら後に残るこの感じ。
まさに至高のメニューと呼ぶにふさわしいラインナップですな。

247 :名無し娘。:2004/07/14(水) 00:40
ありがとう
そして
さようなら

248 :名無し娘。:2004/07/14(水) 07:38
ありがとう
そして
いつかまた

249 :名無し娘。:2004/07/15(木) 01:30
( ´D`)<いいらさんはレミ、あいぼんはチーフスペれす
      ののはシグ、防具はエプロンれす
      北東に移動して漁るれすか?

250 :名無し娘。:2004/07/15(木) 02:44
新垣「はいよ!今日は大塚愛の【さくらんぼ】でいってみる??」
亀井「そんじゃ逝ってみようぜ!さくらんぼ☆」

新垣・亀井『♪笑顔咲ク 君とつながってたい もしあの向こうに見えるものがあるなら♪』

亀井「で、ターゲットは誰にするかなぁ?」
新垣「ダーツで決めようダーツ!」
亀井「わかった〜そうしようか!エイッ!」
プスッ
新垣「はい!吉澤さんことよしこにけって〜い!」
吉澤「いってぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!!!!」
亀井「相手はやっぱり永遠のカップリング!卒業間近(っていうかリストラ!?( ´._ゝ`)プッ)の石川さんで!」
石川「そこのちゃんねらー。ヒソヒソ話の声になってないわよ。てか楽屋でなにやってんのよ?」
新垣「では、運命の矢が当たった2人には笑顔でくっついてどっかの向こうを見てください」
石川「はぁい?意味わかんないんですけどー。
   それよりそこで白熊が何か儀式的な準備運動してるからとりあえず死んだふりしときなさい」
吉澤「すーすーはーはー」
     ガチャ      ガチャ
新垣「とりあえずくっついてもらいました〜(手錠で)」
吉澤「てめぇらゴルァあああああああああああああああああああああ!!!」
    ズガガガガガ
石川「って待って待って!痛い痛い!私ひきずってるってよっすぃぃ!」
亀井「きゃー♪石川さんがだるまのようにっ!すごーい」
新垣「いまだ!エリちゃんずらかるよ!」ダッ
吉澤「おい待てテメェら!なんだこれ!邪魔だっつーの!」ゲシゲシ

251 :名無し娘。:2004/07/15(木) 02:45
 
新垣・亀井『♪愛し合う2人 幸せの空 隣どおし あなたとあたし さくらんぼ♪』

新垣「はぁはぁ。とりあえず危機は去ったね」
亀井「ねぇ、これ本当に楽しいの?てかこんなことしてるとそのうちマジ殺されるよ。マジで」
新垣「気にしない気にしない☆それじゃ、続けるよ」

新垣・亀井『♪もういっかい!♪』

新垣「えいっ!」
プスッ
飯田「いっでぇえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」

252 :名無し娘。:2004/07/15(木) 02:45
ボツ理由:サバってて眠いので不真面目でした

253 :名無し娘。:2004/07/15(木) 03:18
ノノ*^ー^)うp場所失敗ごめんなさい

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0ch BBS 2006-02-27