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仮面ライダー紺野
- 33 :車山:2003/10/16(木) 01:15
- 緑褐色のボディは次第に変化し、そこには真っ白い素肌の少女の姿が現れた。実験被験者用のものと思われる薄いローブを血に染めている。
「まこっちゃん!!」
紺野は傷だらけの小川のもとに駆け寄ると、小さな肩を抱いた。
「まこっちゃん・・・しっかりして!!」
「く・・・う・・・」
小川は紺野に支えられ、よろよろと立ち上がった。
「わ、私の事なら心配しないで・・・それより、追手がもうすぐ来ると思う。い、急いで・・・!!」
「で、でもどうやって・・・!?」
「あそこ・・・」
小川は紺野のはるか頭上を指差した。
「あの硝子の天井を破れば・・・出口のすぐ側に出られる」
紺野は目を見張った。目測で数十メートルは裕にある。普通ならばクレーン車でも使わない限り、到底届きはしない高さだった。
「と、とんでもない!!あんな高い所に・・・!?」
「忘れたの!?あさ美ちゃんの身体は・・・!!」
「・・・・・・!!」
(カンカンカンカンカン・・・)
無数の足音が近づいてきたかと思うと、扉の穴から追手の戦闘兵が駆け込んできた。
「むっ!?」
紺野は小川をぐいっと抱きかかえると、思い切りジャンプした。
「こ、紺野が・・・逃げたぞ!!」
(ガシャアアアァァァァァン!!)
紺野の着地と同時に、階下の手術室には硝子の破片が土砂降りの雨のように降り注いだ。
「逃がすな、捕まえろ!!」
「神」から荒々しい声で指示が飛び、警報機がやかましく鳴り響いた。
「ま、まこっちゃん・・・」
「だ、大丈夫・・・出口は、あそこだよ」
出口はすぐ目の届く距離に位置していた。2人は一目散に駆け出した。
「すぐ近くのマシン格納庫に『サイクロン』が・・・『System MASKED RIDER』専用の改造オートバイがあるはず・・!」
「うむっ!?」
その時、付近を守っていた1人の警備兵が紺野達に気付いた。ライフル銃をこちらに向け迎撃してくる。紺野は走る速度を上げ、無我夢中で向かっていった。飛び上がり、首筋に向けて空手の手刀を浴びせた。
(グギッ・・・ズガガガガガ・・・)
首が折れる鈍い音と共に、銃の引金を引きながら兵士は絶命した。彼が残り僅かの命をかけて発射した銃弾は通路の壁を撃ち続けて尽きた。
「うっ・・・」
紺野は酷くうろたえた。
一つは、生まれて初めて人を殺したこと。もう一つは、たった一撃で人を殺してしまえるようなパワーが自分にはあること。
紺野は先ほど叩き下ろした右手をじっと見つめた。自分が目で見たところで分かるはずは無かったが、この人工皮膚の下には秘密結社の恐ろしい野望が隙間無く詰まっているのだ・・・そう考えると悔しくて悔しくてたまらなかった。一瞬、死にたくなった。
「な、何してるの・・早く!!」
気付くと、小川は既に向かいの格納庫から「サイクロン」を持ち出してきていた。紺野は背後の転がる死体を気にしながら、駆け出した。
「あさ美ちゃん!これを・・・」
小川が「サイクロン」の座席シートを開けると、見覚えのある仮面(マスク)が内蔵されていた。小川はそれを取り出すと、素早く紺野の頭部に取り付けた。
「この仮面に内貼りされているメカニズムから特殊な電波が発信され、それがあさ美ちゃんの脳波と同調し、肉体に組み込まれた人工内臓を作動させるスイッチになるの」
「第二の皮膚」が紺野の服と密着し胸筋を開き、人工筋肉に連動する。
「・・・急ごう」
2人を乗せた「サイクロン」は猛スピードで発進した。
「2人とも殺しても構わぬ!!絶対に外へは出すな!!」
「神」も躍起になって捲くし立てる。
「撃てっ!!撃ち殺せええぇ!!」
(ガガガガガガガガガガガガガガ・・・)
態勢を立て直した兵士達が追撃を試みライフルを乱射するが、時速500キロの超高速走行を続ける「サイクロン」を捉える事はもはや不可能だった。
紺野と小川は、脱走した。
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