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仏を信じよ!
- 31 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:37
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「はい、OKでーす!お疲れ様でしたー!」
スタッフの声が聞こえ、一気に緊張が解ける。
いつも通りの何気ないスタジオ収録。
しかし、石川の頭の中にはある言葉が響き渡ったままだった。
それは本番中にメンバーたちから言われた言葉……。
「石川さんって、はっきり言ってキショいんです」
「石川さんって……キショいんです」
「キショいんです」
「キショい」
「キショ」
「キ(ry」
いくら台本通りだとは言え、
その言葉は石川にとって、決して嬉しいものではなかった。
- 32 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:37
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石川は第4期メンバーとしてモーニング娘。に加入した。
歌唱力は別の意味で抜群、運動神経も別の意味で抜群、肌の色も別の意味で抜群、と、
三拍子揃った、まさに宝石の原石とも言える存在だった。
その後、石川は順調(ネガティブ)に人気を伸ばしていき、
モーニング娘。として唯一、うんこをしない存在とまで謳われるようになった。
しかし……その一方で、石川には一つのイメージが定着してしまっていた。それが……。
「キモッ!」「キショッ!」
石川も最初の頃はそれをあまり気にしていなかった。
自分のキャラクターを確立する、それが恩師の保田圭の教えだったのだ。
しかし、そんな石川も、最近はその一人歩きのキャラクターに疑問を抱き始めるようになっていた。
そしてその疑問はdd拍子に深まっていき、いつしか石川は仕事に対する情熱を失い始めていた。
「素晴らしいね、石川が抜けた、カントリー娘。!」
「素晴らしいファッションセンスと言えば、石川さん、からかっただけです!」
「すいません、石川さん、帰ってください!」
「滑ってる、石川さんって、かわいそう!」
「湖に謎の生物が現われました!」「石川さんのアゴ!」
「石川さんみたいにぶりぶりなんですよ!」
「石川さん、最近保田さんっぽいんです!」
「近寄らないでください!」
「ピンクだらけで気持ち悪い!」
「同じ色で揃える人って、センスが無いんだって!」
そういった石川をキモいキャラクターとして色付けしている台本に目を通すたびに、
石川は仕事が退屈に思えるようになってしまったのだ。
決して仕事が無いとか、人気が無いとか、暇ということではなかった。
石川にはその忙しい生活が、仕事が、『退屈』にしか思えなくなっていたのだ。
- 33 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:38
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あ〜あ、退屈だなあ。
そうは思うものの、スケジュールはすでに来春までガチガチに固められていた。
自由に過ごせる時間も少なく、退屈な仕事をこなす日々を続けるしかなかった。
そして、数少ない休日があったとしても……。
吉澤ひとみ――
( 0^〜^)<わりぃ、わりぃ。ちょっと第三文明に手記書かなきゃいけなくってさあ。
(;^▽^)<そ、そうなんだ。が、頑張ってね。
吉澤ひとみは同期の一人であり、加入当初からの石川の大親友であった。
加入当初は天才的な美少女と噂され、そこそこ人気もあったものの、
今では単なる鹿児島のカキ氷と化し、単なるムードメーカー要員に成り下がっていた。
しかし、その持ち前の陽気な性格から、どんな仕事も楽しむというのが吉澤のスタイルだった。
そのため、仕事が退屈で、せめてオフの日を楽しみたいと思う石川とは違い、
吉澤は楽しむのは仕事の時だけで、オフの日はゆっくりと学会の活動に専念していた。
加護亜依――
〔 ‘д‘〕<うち、ドラマの収録があるさかい。ほんまごめんな。
(;^▽^)<いや、いいの。お仕事頑張ってね。
加護亜依はモーニング娘。のバラエティー班の一人であったが、
なぜかドラマにもレギュラーで出演するなど、幅広い活動を行っていた。
しかし、ドラマの仕事がある以上、石川が一緒にオフを過ごすことは不可能だった。
辻希美――
の´D`の<あー、ダメダメ。これからジュニアと合コンだかんね。で、その後はお楽しみっと。
(;^▽^)<……。
そんなキャラだったのかよ。石川はそう思った。
- 34 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:38
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一緒に過ごすなら同期じゃ駄目だ。石川はそう思った。
やはりここは経験のある先輩たちと交流しておくべきだろう、と。
飯田圭織(リーダー)――
|||‘〜‘)||<はあ?退屈?それ、あたしに対する嫌味?
(;^▽^)<いやっ、そういうわけじゃ……。
安倍なつみ――
(o´ー`)<悪いけど、今夜は徹夜のプレステ大会があるから……またね!
(;^▽^)<プレステって……まだ懲りてなかったんですね……。
矢口真里――
(i|l ^◇^)<暇ならビューティーでも紡いでろって!おいら1980円のTシャツ買いに行く予定なんだよね。
(;^▽^)<……。
ビューティーって何だろうと思ったものの、石川には聞き返せなかった。
- 35 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:38
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そこで、今度は後輩たちを誘うことにした。
紺野あさ美――
|||o・‐・)<お断りします。これからジュニアとの合コンがありますから。
(;^▽^)<紺野もなんだ……。
小川麻琴――
∬*´ ロ`)<駄目ですよ。今夜はジュニアと合コンですから。明日は肌ツヤツヤですよ!
(;^▽^)<小川もかよ……。
新垣里沙――
( ‐e‐)<ジュニアと……。
(;^▽^)<それだけはありえないと思うんだけど……。
高橋愛――
リリ*’ー’*リリ ジーッ
(;^▽^)<……(な、なにこの熱い視線は……?)
リリ*’ー’*リリ<あ、あのぉ、あたすなら全然オッケーやよっ!合コンも(一度も)誘われてないやよっ!
石川は全速力で逃げた。少し退屈しのぎになったような気がした。
- 36 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:39
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石川は次に、6期のメンバーを誘うことにした。
藤本美貴――
ijjjVvVjjji<……で?
(;^▽^)<……たった一文字で返さなくても……。
田中れいな――
从 ` れ´)<これから美貴先輩と『仁義なき戦い』のビデオを見るんたい。忙しいったい。
(;^▽^)<……。
亀井絵里――
|||*^ー^)<ごめんなさい。私生活には仕事を持ち込まないようにしたいんです。人間関係も含めて。
(;^▽^)<……。
道重さゆみ――
从*・υ.・从<ヤダ!だって、かわいくない菌がうつったらヤダも〜ん!
(;^▽^)<……。
石川はかわいくない菌について小一時間問いつめたい気分になった。でもやめておいた。
- 37 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:39
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石川は思った。後輩が駄目でも、先輩たちならなんとかしてくれる、と。
中澤裕子――
リソ ~∀~ ソリ<そないに退屈なら辞めたらええやん。うちなんかこれからNHKの仕事やで!
石川は思った。仕事が無くなって最後の手段としてNHKに寄生するようにだけはなりたくない、と。
後藤真希――
処 ´ Д `)<んあ。何度見返しても『R.P.G』の犯人がわからないよぉ。
石川は思った。どう考えてもお●が犯人だろ、と。(※ネタバレのため伏字)
やはり先輩たちでも石川の退屈さを紛らわすことは無理なのだろう。
現役メンバーはそれぞれ仕事を楽しんでいるし、私生活も充実している。
そして卒業メンバーの二人も、今さら石川と付き合うほどの余裕は無かった。
しかし、この時石川は一人の人物の存在を忘れていた。
それは石川の教育係であり、石川のことを最もよく知っている人物だった。
その人物とは……。
- 38 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:39
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保田圭――
||| `.∀`)<あら、石川じゃないの?一体どうしたのよ?そんな黒い顔しちゃって。
(;^▽^)<いや、黒いのは元々なんですけど。『暗い』の間違いじゃないですか?
||| `.∀`)<そうとも言うわね。で、どうしたのよ?
(;^▽^)<実はカクカクシカジカで、毎日が退屈にしか感じなくなってしまったんです。
||| `.∀`)<((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル ?
(;^▽^)<違います。カクカクシカジカですって。
||| `.∀`)<なるほどね。オマリー・亀山・パチョレック以外は認めないってわけね。
(;^▽^)<いやっ、そんなこと一言も言ってないんですけど……。
||| `.∀`)<ふ〜ん。まあいいわ。石川もようやく作られたキャラクターとのジレンマに気づいたようね。
(;^▽^)<作られたキャラクター?
||| `.∀`)<だとすると、その『退屈』を無くす方法は一つしかないわ!
(;^▽^)<一つ?
||| `.∀`)<作られたキャラではなく、自分自身がキャラクターを作り上げる!それしか無いわ!
Σ(;^▽^)<じ、自分で自分のキャラクターを???
それは石川にとって、まさにコロンブスの卵のような発想であった。
そして石川は思った。今日の晩御飯は卵料理にしよう、と。
- 39 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:39
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||| `.∀`)<あたしもね、キャラクターでは色々と苦労したわ。最初は存在感ゼロだったし。
||| `.∀`)<でもね、あたしは自分自身でキャラクターを作り上げることはできなかったわ。
||| `.∀`)<気づいた時にはもう卒業……そんな余裕は無かったわ……。
||| `.∀`)<だから、今はそのキャラクターで細々と活動するしかないのよ……。
(;^▽^)<や、保田さん……。
||| `.∀`)<でも石川にはまだ時間があるわ!石川なら、きっと自分で自分のキャラを見つけられるはずよ!
(;^▽^)<ほ、本当ですか?
||| `.∀`)<そうよ……石川ならきっと……きっと見つけることができるはずよ!
||| `.∀`)<そう、あの伝説の『キモキモキャラ』をね!!!
(;^▽^)<って、ちがーーーーーーーーーーう!!!
(;^▽^)<それが作り上げられたキャラだっつってんだろ!!!話聞いてなかったのかよ!!!
石川は思った。保田に相談した自分がバカだった、と。
でも少し退屈さが紛れたような気がした。
- 40 :石川の退屈:2003/11/24(月) 18:40
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「2003年度、流行語大賞は……」
「『トメ子、止めます』に決定しました!!!」
スポットライトが石川に当たる。
周りから拍手喝采を受ける。
「おめでとうございます!今年度の流行語大賞を取りました石川梨華さんには……」
「賞品として、虎がぐるぐる回ってバターになる絵本に登場する権利が贈られます!」
(;^▽^)<え、えーっと、それって……。
「どうですか?今の気持ちは?」
(;^▽^)<だから、なんで色黒キャラとか、そういう方向に持ってこうとするわけ?
夢だった……。
石川の退屈は続く!
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