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俺と娘。の夢物語〜in 狩狩〜4
- 54 :『時を』:2007/12/24(月) 00:01
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「絵里ちゃん」
そう呼び掛けられた声に注意を向けると、いつになく“弱い”表情の先輩がいた。
「せんぱぁい。なんですか?」
「ごめん。明日、一緒の仕事ないでしょ。その後も、どうしても空かないんだ」
今日は二十二日。
明日の仕事が終わると……
「じゃあせんぱいは……」
「ほんと、ごめん」
「でもっ――、あ、えっと……、うん」
昨日からのささやかな期待は、それが叶わないとなると思っていた以上にショックだった。
そうならないようにしたつもりだけど、それでも表情に出てしまったらしい。
先輩は本当にごめんなさいって、声からも、表情からも伝わってきた。
だから。
- 55 :『時を』:2007/12/24(月) 00:01
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「もおーっ。そんな顔するのずるいですよぉ」
「だって…」
「だってじゃなーい。そんな顔されて怒ったら絵里が悪いみたくなるじゃないですか」
「……ごめん」
「いいですってば、もう。しかたないんで許したげます」
正直な気持ち。
それでいくらか笑顔混じりになった先輩は、それでもまだ申し訳なさそうに、肩に背負ったバッグから一つの包みを出した。
そっと差し出されたその包みは、あまり見慣れない和紙? みたいなのでラッピングされた掌に余るくらいの長方形。
「早くなっちゃうけど、プレゼント」
「うわあっ、ありがとーございますう」
ちょっと沈んだ気分が少し持ち直す。
それは“なにが”貰えるか、じゃあなくって“誰から”貰えるか、だってことなんだ。
「開けてもいーですか?」
「どうぞ。っていうか開けてほしい」
少し楽しみにしてるみたいな先輩の口調。
ちょっと不安がわき上がる。
- 56 :『時を』:2007/12/24(月) 00:02
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「なんか欺されたりしません?」
「そんなわけないよ。そんな趣味も……、まあ嫌いじゃないけど。今はない」
なんでそんなことを訊くのかって驚いた風な先輩が、最後には冗談めかして笑った。
その笑いを見たから、逆に大丈夫なんだって和紙のラッピングに手を掛けた。
破かないようにゆっくりと広げた中から、出てきたのは透明なプラスティックのケース。
「腕時計……」
「そ。プライベートで、一年間つけてほしいな」
それは小さくて可愛らしい腕時計。
だけどただ可愛いっていうんじゃなくて、アンティークな和を感じさせるデザイン。
鈍色の真鍮で作られた本体に一輪の花が飾られていて、文字盤には古めかしい数字。
革のベルトのオレンジがちょうどいいアクセントになっててとても魅力的なものに見えた。
「すごくいいです。……あれ? でも一年って……?」
「今までの十八年よりも、もっと素敵な一年になるように」
「あっ…」
一年、って言葉に少しだけ意味を持たせたアクセント。
- 57 :『時を』:2007/12/24(月) 00:02
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「十代最後の一年を大事に過ごしてほしいかなって」
先輩と出会えたこれまでの五年と、それにも負けないこれから先。
なによりも大切なのは時間だって、幾度も教えてもらっているから。
「あっ」
「ん?」
「じゃあ来年はもっと素敵な腕時計をくれるんですか?」
少し見開いた目がくしゃりとやわらかくなって。
「来年は二十歳だから、素敵な女性にふさわしいのを探しておくよ」
冗談に紛らわせての約束に。
そしてここにいてくれることに。
心からのありがとう。
- 58 :匿名 ◆TokDD0paCo :2007/12/24(月) 00:11
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亀井さんオメ。
良い一年をお過ごしください。
>>47
それはこちらも喜ばしいですw
>>48
愛ちゃんはいつも頑張ってますよ。
ただこの中であまり頑張ると話が終わってしまいますね(^-^;
>>49-52
私はどうもこの先輩とキッズ(と括られる)の娘たちをうまく絡ませてげられません。
感心しきりでございます。
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