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スケバン刑事 コードネーム=松浦亜弥
- 1 :名無し娘。:2006/10/07(土) 07:38
-
ノノハ)) 4代目スケバン刑事松浦亜弥
从‘ 。‘)^)@ おまんら許さんぜよ!!
リ`ヽ_ソ
j___f
/l l l l|
l_|_|_|_i
|ーl-|
l__l___)
- 161 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44
-
だが頭で考えるよりも体が先に反応するタイプのあたしは自転車のスピードを上げる。
トップスピードで人垣に突っ込むあたしとあたしの自転車。
倒れる生徒。呻く先生。響く怒号。パニックは頂点に達する。
いや、頂点はないと思うんやよ。
怪我してる生徒を踏み分けて体育館の中に入るあたし。
体育館のステージ上には麗華と琴美の姿が。
あずすーんあずあたしを見るや否や麗華は琴美を連れてステージを去る。
どこ行くんだ―――と言うまでもなくあたしは30円軍団に取り囲まれる。
やあやあ皆さんお久しぶり。謹慎処分は解けたのかい?
それはなんとも羨ましい限りですね。
あたしはあいぼんの謹慎期間がどれくらいになるのか数えようとして辞める。
今やるべきことはこいつらを蹴散らすこと。
今度は手加減しない。
あたしを本気で怒らせたら知りませんよ。知りませんよ。知りませんよ。
分かるよね?
- 162 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44
-
「またてめえかコラ!」
「一回死ぬかコラ?」
「みんなと一緒に弾けようぜ!」
「ばーん!ばーん!あはははははは」
「ゲームだよ!ゲーム!なにマジになってんのwwwwwwwwww」
「ん?悔しかったの?」
「必死だなおいwwwwwwwww」
口々に安っぽい台詞を吐く30円軍団。
・・・・・で?っていう。
ばっと学生服の上着を脱いだ軍団連中の腰には例のウエストポーチ。
オン、トゥル、スレ、フォ、ファイベ、ソックス、セブ、エイ、ナイ、テン!
あたしは素早くののたん式のクイーンズイングリッシュで爆弾の数を確認する。
確かに10個。
こいつらを止めればあたしの人生は変わる。
30円軍団を倒したいなぁ。爆弾を全部止めたいなぁ。モーニング娘。に入りたいなぁ。
たいなぁ星人と化したあたしはもう手段なんて選ばない。
ゲームだと言うならゲームでもいい。あたしはこのゲームに勝つ。
たとえハロモニのゲームの高橋愛のように、反則的な手段を使ってでも。
- 163 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:45
-
「うおおおおおおおおおおおおお」
「行くぜ!EVERYBODY!!」
「祭りの始まりだぜ!!!!!」
連中は獣のような叫び声を上げて腰のポーチを触る。
どうやら時限装置をオンにしたらしい。
見物に来てた連中にもそれはわかったらしく、
体育館は逃げ惑う人の波でパニック状態に陥る。
関係ないやつらが見物とか来てんじゃねーよ。
お前らが大勢いると軍団がきゃっきゃっきゃってなっちゃうだろ!
とにかくパニックの元になっている10人を止めないと。
10人か。くそおお。多いよ!でも焦るな。
焦らない、もう焦らない。急がば回れ。
これを倒せば開けるハロプロへの道。
わたしは信じて待ってます。良い子にしてました。
白馬に乗ったつんく様。ナビは壊れてないよね?
- 164 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46
-
連中は束になってあたしに襲い掛かってくる―――と思いきや、
10人はバラバラに走り出し、パニックになってる生徒達をさらに煽る。
脳裏を走る違和感。何かがおかしい。ホントにこいつらは何が目的なんだ?
目的なんてない?それにしても何かが変だ。
CDTVの恋人にしたいアーティストランキングを見た時に感じたような異物感。
誰かが―――裏で糸を引いている?
一瞬油断したあたしは後ろからドーンとぶつかられる。
でもそれは軍団連中じゃなくて普通の生徒。
きゃあきゃあきゃあとわめきながら走り回る生徒達。
次から次へと湧いて出て、あたしにガンガンぶつかってくる。
全くもう!ねぇいらいらする。さわんなよオル゙ァ!!
生徒達の間隙を縫うようにしてあたしに襲い掛かってくる軍団。
折り重なるようにして体育館の床に雪崩落ちるあたしと軍団と生徒。
したたかに頭を打ったあたしは軽く意識が遠のく。意識がdj
飛んだ!飛んだ!あたしの意識!飛んだーー!!
などとプッチゲームで遊んでる暇はない―――爆弾を止めないと。
- 165 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46
-
爆弾を止めないと―――
と思って伸ばした手がウエストポーチに触れる。
デジタル時計は0:01から―――0:00になって―――
もうダメだ。あたしは思わず目をつぶる。
今迄で一番震えちゃった瞬間。
間に合わなかった。死んだ。あたしは死んだ―――
―――と思った瞬間。
時計は再び5:00に戻る。まだ生きているあたし。
そして何事もなかったかのように再びカウントダウンが始まる。
アンコールですか???信じられない。
本当はこんなんじゃアンコールやってあげないんだからね!
という安倍さんの言葉が脳裏をよぎる。
でも麗華が安倍さんみたいに優しいわけがないよね?
- 166 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47
-
相変わらずうわわあわああああああとか叫びながら
体育館内を走り回っている他の軍団連中。
一向に爆発しそうにない10個の爆弾。
考えろ。考えるんだあたし。まだあたしは生きている。
生きてこそ―――偶然という成功へのヒントにも会うだろう。
もしかして。
あたしの脳裏には琴美を連れ去った麗華の姿がフラッシュバックする。
もしかして。
あたしは再び倒れてる軍団連中のウエストポーチに手を伸ばす。
成功を手にしてみたいなら、冷静な観察と分析を。
うん?
なんか足んない。なんか足んない―――そこにはピンクの導線がなかった。
- 167 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47
-
【YOUR SONG〜DD宣誓〜 終わり】
→To be continued
- 168 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:30
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【第十五話 DD橋】
- 169 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
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あたしは折り重なる人の波を押し分け体育館の外に出る。
相変わらず30円軍団は暴れまわっている。もうグダグダ。
さゆのソロラジオかよっていうくらいグダグダ。
もうここに用はない。
あいさが、あいさが。いや、違う。
今探さなくちゃいけないのはアイドルでもウォーリーでもなくて麗華だ。
本物の爆弾はあいつが持っているに違いない。でもどこに?
学校全体を爆破するつもりなら学校の中にはいないはず。
それならどこにいるんだ?どこからこの茶番劇を見つめているんだ?
誰か教えてほしいんだ―――偉い人、賢い人教えて!
- 170 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
「さあ、琴美。武道場にでも行こうよ」
「あそこなら空気もいいし見晴らしもいい」
あたしの脳内にフラッシュバックする麗華の言葉。
見晴らしがいい。確かに武道場なら体育館も校舎も一望できる。
ベストポジションだ。言うなれば前列中央。エースの指定席。
考えている暇はない。もう今爆発したって不思議じゃないんだ。
そうなる前に―――あたしは先に向かってるロードをひた走りに走る。
- 171 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
あたしはグラウンドを一直線に横切り、最短距離で武道場を目指す。
ダッシュ滑走!名古屋キャッソウ!
もしも武道場に麗華がいたならあたしの姿は丸見えなんだけど、
今は裏から回りこんでひっそりと忍び込むなんてことしてる暇はない。
とにかく走れ!走るんだ!とあたしは全細胞に命令を送る。
そして
あたしは武道場の前にたどり着く。
一階はトレーニングセンター。略してレーニン。違う。トレセンだ。
二階は愛情イッポン!の収録だってできそうな広い柔道場。
そして一番上の三階は板間の剣道場になっている。
階段へと急ぐあたしの視界に一人の男子生徒が入ってくる。
- 172 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
「なんだ?・・・・・てめえは昨日の!」
メガネザル顔を紅潮させているのは確認するまでもなく金沢(弟)。
あの夜にあたしに叩きのめされ―――そうになった金沢だった。
あたしは金沢に行く手を邪魔されているという煩わしさを感じる前に、
ここに麗華もいるに違いないという確信を得られたことに歓喜する。
思わず狼に「梨華ちゃんのおかげで麗華発見」というスレを立てそうになるくらい。
「いいかげん死ねやおるあっぁああ!」
とか言ってる金沢を軽くワンパンチでのしてあたしは二階へと駆け上がる。
弱い。存在自体が弱い。なにこのガニモニ級の弱々しさ。
この弱さ。こいつは小者だ。このカリフラワー君に話を聞いてる暇はない。
麗華。とにかく麗華を押さえるんだ。
二階には誰もいない。あたしなのんのんのんのんノンストップで三階へと上がる。
三階にはあたしが捜し求めていた麗華が悠然とパイプ椅子に腰掛けていた。
- 173 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
「あら。麻宮さん。意外と早かったわね」
「麗華!爆弾はどこだ!」
「爆弾?・・・・・あら、琴美のことを探しに来たんじゃないの?」
「うるせえ!さっさと爆弾の場所を教えろ!」
「あらあら。やっぱり琴美よりも爆弾の方が大事みたいよ?」
ちちんぷいぷいと横を向いてそう言う麗華の視線の先から現れる琴美。
更衣室から出てきた琴美は手に携帯電話のような物を持っている。なんだアレ?
琴実の顔色はまるでファンクラブから来た封筒の色のように真っ青。
そのつぶらな瞳は真っ直ぐにあたしを見つめる。
あああ、まただ。またあの視線があたしの良心を締め付ける。
屋上で、化学準備室で、そしてそしてそして・・・・・・
いつの時もあたしを真っ直ぐにみつめてきた琴美の黒目勝ちな瞳。
私は今もあの頃を―――忘れられず生きてます。
- 174 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
「サキちゃん・・・・・」
「琴美・・・・・」
「やっぱりサキちゃんは爆弾のことの方が・・・・」
「違う!そんなんじゃない!」
「サキちゃん、警察の人やってんね」
「!」
「ゴメンな。サキちゃんの生徒手帳と携帯、見せてもろたわ」
そう言う琴美の横から麗華がポーンとあたしに携帯と手帳を投げる。
昨日の夜、化学準備室で失くした携帯と手帳。
ご丁寧にも桜田門の御印の入った特命刑事ご用達のDD刑事グッズ。
よりによって麗華に拾われていたとは。
そんなもん拾う前に小イシカワでも拾えよという言葉をあたしは飲み込む。
これはもう、まとめサイトを作られるまでもなく有罪確定ですね。
「素敵だなと思って・・・・・」とかいう言い訳はおそらく通用しないだろう。
- 175 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
琴美はあたしに向かって真っ直ぐ近づいてくる。
あたしは一歩も動くことができない。
琴美はゆっくりと左手を伸ばす。
ああ、そういえば―――この子は左利きだったっけ。
「サキちゃん。嘘って言うて」
「あ・・・・・・」
「警察の人なんかやないって言って」
「いや・・・・・・・」
「爆弾なんかよりあたしが大事って言って」
「あたしは・・・・・あたしは・・・・・・」
「サキちゃん。あたしの目を見て」
- 176 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
あたしは琴美の目を見ることができなかった。
差し伸ばされた琴実の左手に手を指し伸ばすことはできなかった。
「話せば長いけど聞いてほしい」とか言いながら
学校じゃ教わらない経験のエトセトラを話すことはできなかった。
だってあたしは―――あたしは―――あたしは―――
DD刑事だったから。
あたしは琴美が差し出した左手を無視する。
あたしはそこに手を差し出すことはできない。
あたしはこれ以上琴美に嘘をつくことはできない。
琴美は泣きながら武道場の階段を下りていった。
あたしはそんな琴実の後姿を見つめながら、
化学実験室で琴実と話した日のことを思い出していた。
「爆弾事件とあたしとどっちが大事?」と琴実が言ったあの日あの時。
願い事一つ叶うなら―――あの頃に帰りたい。
- 177 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
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【DD橋 終わり】
→To be continued
- 178 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
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【第十六話 「ずっと DDでいいですか」】
- 179 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
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「さあ、麻宮さん。あなたとのお遊びもここまでよ」
「遊び?」
「そう。楽しかったでしょ?」
「てめえは・・・・・絶対許せねえ!」
「許せない?あらそう。ふふふ」
「爆弾はどこだ」
「ふふふ。特別サービスで教えてあげようかな。あたしを―――倒したらね!」
- 180 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
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あずすーんあずそう言うや否や麗華は木刀であたしに斬りかかってくる。
麗華を倒したら爆弾の場所を―――
秘密の場所を全て教えてあげる?ALL NIGHT LONG?
最高の条件に細心のサービスですね。そうだそうだそうだ。全くその通り。
まるでコレオグラファーのダンスのように本格的な麗華の体捌き。
こいつはきっと素人じゃねーな。きっと既にどこかの弱小芸能事務所に―――
とか思う間もなく突き突き突き突き突きをくーだーさーい。
突き突き突きつを無限大ーとロボキッスのような突きの嵐。
麗華は突かず離れず絶妙の間合いを保つ。
あたしは離れてヨーヨーを使うか近づいて空手を使うかで迷う。
間違ったってしょうがないでしょ。迷ってたって始まんないでしょう。とは言ってもね。
―――剣道三倍段。ふとそんな格言が脳裏をよぎる。
三倍という言葉にいまだに何度でも反応してしまうあたしはDD。
- 181 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
-
あたしは必死で動き回るが麗華はなかなか間合いを空けてくれない。
保田のスケジュールくらいぽっかり空けばヨーヨー使えるのにー。
そういや麗華はあたしが空手やってるってこと知らないんじゃ?
あたしは大きく一つフェイントを入れてグッと間合いを詰める。
麗華の襟をつかみ、膝蹴りを麗華の鳩板、じゃなかった鳩尾に入れるが―――
固い!―――右膝に走る激痛。あわてて再び間合いを空けるあたし。
「あら麻宮さん大丈夫?お皿が割れたんじゃないかしら?」
「ふん。こんなのへちゃらへいけ」
「あらあら。血が出てるじゃないの。あたしがその血、止めてあげようかしら?」
「おう。よろしくよっすぃー」
「いいわよ。あなたの血の流れを―――息の根ごと止めてあげる」
- 182 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
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薄い笑顔でさらっと過激なことを言う麗華。
それで上手いこと言ったつもりかよ。
これ見よがしにゆっくりとめくり上げあられた麗華の制服の下には分厚い防具。
あんなの仕込んでたのか?矢口のブーツの底より厚いぜ。ずるい女。
あたしはひざをさする。大丈夫。折れちゃいない。いや、折れても戦う。
起きてるのか寝てるかわかんないほど、遠く霞みそうな意識を集中させる。
右手。左手。右足。左足。目。腰。まゆ毛。動け。顔中。無理。
ハロモニのロケくらい集まりが悪いあたしの各パーツからの反応。
くそ。全員集まれよ。どうせ暇なんだろ?来い。立て。もうこれが最後だ。
苦労なんて覚悟していた。最後笑えるなら。
これが終わればあたしはモーニング娘だ。
女の子なら誰もが思う―――ハッピーエンドストーリー。
- 183 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
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あたしは一瞬油断した麗華から一歩間合いを開く。
小さな一歩。でも一歩一歩でしか進めない人生だから。立ち止まりたくない。
あたしは斜め後ろに体を投げ出して
サイドスローでヨーヨーを麗華の眉間に放つ――――が
間合いをグッとつめながらあたしの横に回りこむ麗華。速い。
ヨーヨーの鎖はいつの間にかじゃらじゃらと麗華の木刀にからめとられていた。
鎖に引っ張られて振り回されるあたし―――板間に転がる。痛い。
「く」の字のように少し丸まったあたしに「を」の字のようにのしかかってくる麗華。
それなんてハロモニ人文字選手権?
「あーら麻宮さん、あたしが油断したとでも思ったのかしら?」
「油断なら―――とっくにしているわ!」
あずすーんあずそう言うや否や
あたしは怪我をした膝で麗華の股間を思いっきり打つ。
急所に不意討ち。卑怯だが「わたくしらしくないでしょ?」とか言ってる場合じゃない。
まさかここには防具なんてしてないだろ、と思いきや―――
固い!またもや固い感触。股間に何を入れてるんだ。お前は亀井か!
- 184 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
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「あなたもしつこい人ね」
「お前・・・・・ここにも防具を・・・・」
「防具?なーんのことかしらねー」
麗華さんったらまったくずるいこといっぱいする人ね。
自然じゃないところがなお悪よね。
あたしは巴投げの要領で麗華を後ろに投げようとする―――が
ヨーヨーの鎖がからまり上手くいかない。
麗華は完全にマウントポジションを取って木刀をあたしに向ける。
がばああああっと高く振り上げられる麗華の木刀。
この体勢では絶対にかわせない。
万事休す?いやいやいやいやいやいや。
諦めたらそこで試合終了ですよ?
麗華を倒す。倒すんだ。
平凡なわたしにだってできるはず。
- 185 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
あたしは上体を少し浮かせて麗華の木刀を左の肩で受け止める。
聞いたこともないような音がして鎖骨が折れる。
でもこれは℃-uteが売れないってのと同じくらい想定の範囲内。
こんぐらい平気よ平気。今度はあたしの番。
ダメは承知でも待ってるだけじゃ辛いからねー。
逆転サヨナラ満塁ホームラン目指すっきゃない!
今度こそ本当に油断した麗華の鼻っ柱に思いっきり頭突きを見舞う。
くるりと安倍と松浦の力関係のように逆転する二人の姿勢。
今度はあたしが上になる。あたしは血混じりの唾を麗華の目に吐きつける。
もう手段なんか選んでられるか。握手会だろうがバスツアーだろうがなんでもやるぜ。
「下品ね・・・・ホント卑しい子」
「うるせえ!喧嘩に上品も下品もあるか!」
「あんたの唾、臭いのよ」
「てめえ・・・・・」
「てめえの・・・てめえのじぇんぞんじゃいがうぜえええええんだよ!」
「うるせええ!」
- 186 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
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あたしは噛み噛みで捨て台詞を吐き捨てた麗華の顎を思いっきり正拳で打つ。
さすがにここには防具は入れてないみたいだな。梨華ちゃんみたいに。
麗華はもう観念していたのだろう。
おいおいと声を上げて泣きながらあたしの拳に打たれるままになっていた。
泣くんだね。こういう場面では。すごいのね。あきれちゃうわ。
とか思ったその瞬間―――
あたしの首に強烈な一撃が入る。後ろから。誰だ?誰だ?
右膝。左肩。首。つんくの言うところの「ナイス谷間!」。全部痛い。
痛くて痛くてたまらない部分を全部押さえながらあたしは転がりまわる。
ヨーヨーの鎖を引く。こっちこいあたしの相棒。
視線を上げる。道場の入り口には見たことのない男が一人立っていた。
今度ばかりは女だけが持っているすごい直感が働くあたし。
このメガネザル顔にカリフラワーヘアー。似てる。
さっきあたしが一階でKOした元化学部の金沢に。
こいつがきっとこの事件の首謀者。
『A』ってのはやっぱり―――兄沢の『A』だったのかな?
当たり前だけど下半身は露出してないのね。AAみたいに。
攻撃を恐れて身構えるが、兄沢はあたしに見向きもせずに麗華に近寄る。
- 187 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「麗華!麗華!」
「う・・・あ、あきらさん・・・・」
「起爆装置はどこだ?お前が持ってるんだろ?」
「こ、琴美・・・琴美が・・・」
「チッ!あいつが持っていったのか!」
そういや兄沢の名前は「明」だったな。やっぱり「明」の『A』なのか。
とか思う間もなくあたしの思考は麗華の言葉に遮断される。
琴美が―――そういえば手に何か持っていた―――
琴美が起爆装置を持ってるって?マジかよおい!
時限爆弾じゃなくて起爆装置で爆破させるタイプなのか?
あたしはよろよろと階段の方へ向かう。
琴美を―――止めなきゃ。琴美は死なさない。あたしが守る。
あたしが守らなきゃなんだ。
誰かがやるんじゃないんだ。
- 188 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「お前が例の刑事か」
「うっせえ!どけ!」
「通すかよ。お前はここで死ね」
「ヘッ!死ねとか言ってんじゃねーよ、バーカ」
「そんな体で何ができるんだよ!」
兄沢君は木刀を手にあたしに襲い掛かってくる。
へっ。へったくそ。こいつは格闘技の経験ないな。麗華の方が強い。
だがあたしの体はそれ以上に動かなくなっていた。
もうスポフェス終わりみたいにクタクタでさ。疲れたよ。ももにきているよ!
でも攻撃しなきゃ。そう思いヨーヨーの鎖を引く。
だがヨーヨーは麗華の木刀とからみあってなかなか言うことを聞かない。
細くもつれた糸をほどくみたいに、
あたしはヨーヨーの鎖を操る―――鎖が途切れぬように。
- 189 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「何やってんだこらああああ!!」
そんな風に鎖を押したり 引いたりしてるから―――裏目裏目に結果が出たり・・・
兄沢の木刀があたしの背を打つ。いてえ。畜生。
あたしは再び道場の床に這い蹲る。今度こそダメだ。立てない。
痛いんだよ。右の膝も左の肩も。頭も。背中も。特攻服姿のヲタも。
兄沢はご丁寧にもあたしのヨーヨーの鎖を切る。
コロコロとかつての辻の体型のような音を立てて入り口の方へと転がっていくヨーヨー。
ムチムチ?それはえりりん。そんな冗談を言う気力ももう残っていなかった。
もうダメだ。空手も使えない。ヨーヨーも使えない。6期もアウェイじゃ使えない。
あたしの人生八方ふさがり。
あーあ。なんでこんなんなっちゃったんだろ。
あたしはただモーニング娘。に入りたかっただけなのに。
モーニング娘。が好きだっただけなのに。
でもそれももうお終いみたいね。
結局―――永遠の片想い。
- 190 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
【「ずっと DDでいいですか」 終わり】
→To be continued
- 191 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
【第十七話 気がつけば DD】
- 192 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
兄沢が近づいてくる。
そしてそれとは異なるもう一つの足音。誰だ?あたしは視線を上げる。
気がつけばそばにグラサンが居た。
鎖の切れたあたしのヨーヨーを片手に持った、大きなサングラスの用務員。
こいつは―――確かあの夜、金沢の弟と一緒にいた―――
「お楽しみのところ悪いが・・・邪魔するぜ」
「誰だお前は?」
「名前なんてどうでもいいだろ。しがない一人の用務員さ」
「そうか。お前が明夫の言ってた・・・・・どうした。爆弾は全部校舎にセットしたのか?」
「お前が金沢明だな。探したぜ」
「お前・・・・・何者だ?」
なんだか様子がおかしい。
なかさきちゃんのビジュアルのように激変する周囲の空気。
兄沢は懐からほいっと拳銃を取り出す。おいおい。マジかよ。
だがサングラスの用務員は拳銃を見ても全く動揺した様子はない。余裕綽綽。
あたしのヨーヨーをいじりながら一歩一歩兄沢に近づく。
兄沢は何も言わずにいきなり用務員に発砲する。
だが―――そこいたはずの用務員は兄沢の視界から完全に消えていた。
- 193 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
―――上だ!
と思わずあたしは心の中で「さとだや!」と同じようなテンションで叫ぶ。
用務員は空高く舞い上がり―――そしてヨーヨーを放つ。
ヨーヨーは―――光の矢となって―――兄沢の喉元にめりこんだ。
「こはっ」とミラクルなうめき声をあげて卒倒する兄沢。
床に大の字になった兄沢はピクリとも動かない。
そんな兄沢に対しても用務員は全く油断するそぶりを見せずに
慎重に近づき、兄沢の両手にカチャリと手錠をかける。
手錠?ってことはこいつは・・・・・
- 194 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
「お前・・・・もしかして公安の・・・・・」
「まあな。半年前からこの金沢明を追っていた」
「お前も金沢兄弟の仲間じゃなかったのかよ」
「そんな振りをしてたのも金沢兄を誘い出すため」
「誘い出す?」
「この金沢って男は用心深い男でね。なかなか姿を現さなかった」
「それで・・・・・おとりになって・・・・」
「そう。『集会』をえさに金沢を誘い出したってわけだ」
唖然とするあたし。
こいつが公安の刑事だったのか。
もしかしてあたしはずっとこの男の掌の上で踊らされていたのか?
なんか急に体の力が抜けるあたし。まあいいや。結果が全て。
逮捕できたからOKだもん!どうもこうもないっすよ。
それにしても―――
- 195 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
「お前、本当に何者だよ?」
「だから公安の―――」
「スチューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」
「1993年3月15日。さらに一言付け加えるのなら―――」
男はそう言いながら大きなサングラスを外す。
眉間には銃創のような派手な傷。意外と若い。
男は安倍なつみのような
無菌的な、人工的な―――とびきりの笑顔であたしに諭す。
「正確に発音するなら『ストューカス・ロビン・翔子』
より正確に言うなら、今の芸名は『岡田・ロビン・翔子』だ」
「!」
「日本語は正しく―――役不足オーケー?」
- 196 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
「そんなことよりも」
「お前・・・・・」
「琴美ちゃんのことはいいのかな?」
「あ!」
「おいおい。忘れてたのか?」
あたしはすっかり琴美のことを―――そして爆弾のことすらも―――忘れてた。
なんてこったい。
忘れてる場合じゃない。琴美は起爆装置を持って行ったんだ!
グラサンは大きなポカをしちゃった私をさりげない声でつつんでくれた。
ある意味、優良刑事だな。マジでUFAとゼティマに見て欲しい。
「ここは俺が片付ける。お前は琴美ちゃんのところに行ってやれよ」
「あの・・・・その・・・・爆弾は・・・・・」
「10個とも俺が片付けた。琴美が持ってる起爆装置を押しても何も起こらんよ」
「ありがと!」
- 197 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
★ ★ ★ ★ ★
サキは礼もそこそこによたよたと武道場の外へと走り出る。
男は金沢兄と麗華をひとまとめにして部屋の隅に置き、
階下に下りていくが―――そこにあるはずの金沢弟の姿はなかった。
男は携帯電話を取り出し上司らしき男に報告を入れる。
もしもし。金沢明を確保しました。
ええ。ええ。なかなか用心深いヤツでしたが、なんとか。
それが弟の方はまだ・・・・・至急手配お願いできますか。
いやいやいや。油断したつもりはなかったんですが・・・・・
え?例の特命刑事?・・・・・・・・・さあ。なんとも。
個人的には生徒会長の方が良いと思いますけどね・・・・・。
★ ★ ★ ★ ★
- 198 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
あずすーんあずあたしはグラサンに礼を言うや否や校舎の方へ駆け出す。
膝は痛いわ、背中は痛いわ、肩は折れてるわ、村上は引退するわで
あたしは身も体もぼろぼろだったけど、走らずにはいられなかった。
爆弾魔は逮捕したし、爆弾は全部抑えた。
なのに、どこ行ったんだよー琴美!
琴美を救わないとこの事件は終わらない―――そんな気がしていた。
あたしは琴美を救うことができると信じていた。
そして―――
全てが終わればモーニング娘。に入ることができると信じていた。
一点の曇りもなくそう信じていた。
この事件が終われば―――
あたしにも琴美にも―――
幸せな未来が待っていると信じて疑わなかった。
これであたしが次のシングルのセンターだったら言うことはないんだけど―――
幸せの途中って自然すぎて少しずつ贅沢になってるかも?
- 199 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
【気がつけば DD 終わり】
→To be continued
- 200 :名無し娘。:2006/11/17(金) 11:29
- DD刑事生きてたー!!
すんごいうれしいぜ
- 201 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
【第十八話 砂を噛むように・・・DD】
- 202 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
まだ体育館の方は騒がしいようだったが、
あたしはそんな喧騒を軽く無視して校舎の中に入る。
どこ?教室か?化学実験室か?それとも―――それとも―――
「学校も。先生も。あたしも。みんな全部吹っ飛ばしたかってん」
「飛びたかってん」
琴美がそんなことを言ってたのをふと思い出す。飛ぶ。飛ぶ。
屋上―――あたしと琴美が初めて話したあの場所!
あたし脳天に舞い降りてきた直感。
信じて進むのか?疑って進むのか?ここはもう信じるしかない。
だってもうわかんないんだもん。
時間がないんだもん。
タイムイズマネーです。言わんこっちゃないでしょ?
- 203 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
あたしは傷ついた体をひきずるようにして屋上まで駆け上がる。
痛い。誰か代わってくれ。こんな時こそ代役柴田。みゅんみゅん。
あたしは右の肩で体当たりするようにして屋上のドアを開く。
折れた左の鎖骨まで響く。痛い。汗が止まらない。吐き気がする。眩暈も。
だがそんな痛みも屋上にいた琴美を見た瞬間―――消えた。
「琴美」
「サキちゃん」
「終わった。麗華も。金沢兄弟も。みんなぶっ倒した」
「終わってへんよ」
「琴美」
「でも・・・・もうすぐ全部終わるんやけどね」
琴美はバッと上着を脱ぐ。
そこには何度も見た例のウエストポーチが。
それを見た瞬間、再びあたしの体は疲労と激痛に包まれる。おい。マジか。
そういえば―――琴美自身も一つだけ爆弾を作っていたとか―――
まさかね。でも琴美の目は真剣だった。
あの目。飯田さんのように思いつめたあの目。危険だ。
- 204 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
琴美はテレビのリモコンのようなものをポーンとあたしの方に投げ捨てる。
おそらくこれが―――兄沢が用意していた起爆装置なのだろう。
今となってはもう用なしだが。
「押したけど全然反応なくって」
「爆弾はもう全部止められてるよ」
「知ってる。でもこの爆弾は違うよ」
「琴美・・・・・・」
「この爆弾はあたしが作ったやつだから」
「バカな真似はよせ」
「タイマーが切れたらそれでお終い」
- 205 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:39
-
「サキちゃん。ここで話したこと覚えてる?」
「うん・・・・・・・」
「あたしも覚えてる。一生忘れない」
「・・・・・・・・・・」
「友達だろって言ってくれたあれ、嘘やってんね」
あたしは琴美の問い掛けには答えない。
もうあたしが刑事だってことは―――
知っているでしょ?嘘をつくのはあまり上手じゃない。
でも友達って言ったのは嘘じゃない。
捜査のためなんかじゃない。
自分のためなんかじゃない。
本当に琴美のことが好きだったから。そうなんだ。
あの日が手の平から遠く離れ―――気付きました。
モーニング娘。に入ることなんかよりも―――
琴美を守ることの方が大事なんだって。
- 206 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:39
-
【砂を噛むように・・・DD】
→To be continued
- 207 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
【最終話 Thanks! DD刑事】
- 208 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
爆弾事件なんてもうどうでもいい
あたしは琴美を守る
あたしは絶対に琴美を死なせはしない
たとえ―――友達じゃなかったとしても
ふっきれた
あたしは飢えた虎のように大声で咆える
だが琴美は一切身じろぎしない
気のせいか琴美もあたしと同じようにふっきれたように見える
凛としたその表情は、いつもとはまた違った美しさに溢れている
ちょっとした心境の変化で女って変わるんだ?
琴美は左の腕からすっと一本の木刀を出す
琴美―――あんたも麗華と同じように剣道の覚えがあるのか?
だけどそんなことはもうどうでもいい
肩が折れようが膝が砕けようが―――あたしは琴美を止める
- 209 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
「望みごと」を 空に叫んだ
大声が かすれてた
恋人にさえ 話せず
困ってること 全部
- 210 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
あたしはもう一度天に向かって大きく咆える
もういい
もうモーニング娘。とかどうでもいい
だけどあたしはこの事件のケリをつけなくちゃいけない
そのためだったら全てを捨てる
そうさ
あたしは大学を辞めた
恋人とも別れた
バージニアスリムも辞めた
失う物はもう何もない
命を捨てたって構わない
でも―――琴美のことは捨てない
- 211 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
100年後の未来は どんな
表情で 笑うのかな
恋人達は こんなに
愛し合えるのでしょうか
- 212 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
サキちゃんのうそつき
あたしは信じてたのに
でもな。それでもサキちゃんが好きやで
サキちゃん
あたしと一緒に死んで
琴美はそう言いながらスッと左手で木の柄を抜く
キラリと光る銀色の永遠、いや銀色の刃
真剣だ
琴美。飯田さんみたいなダジャレじゃないよね
真剣なんだ
- 213 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
抱きしめた あの夜の
約束が気になる 友情
私 私 私
ほんとに 守れるかな
- 214 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
もちろん集会をぶっ潰す
琴美も一緒に来いよ
大丈夫。琴美のことはあたしが守るから
琴美は集会を最後まで見届けるんだ
あの夜に琴美に向かって言った言葉がフラッシュバックする
言ったことは守るさ
集会は潰した
そして―――琴美は守る
そのためにあたしは―――あたしはここにいる
あたしは負けない
琴美にも―――自分にも
負けねえ。絶対負けねえ。錦飾る日まで
- 215 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
今夜ありがとう また会えるだろう
貴重な 青春の瞬間
孤独なのを 忘れるほど
美しい 瞳だった
- 216 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
琴美の瞳がキラリと光る
黒目勝ちの美しい瞳
あたしの好きな瞳
一点の曇りもないその瞳で琴美はあたしに斬りかかってくる
琴美の踏み込みは深い
本気なんだね
交わしざまに琴美の腰の時計が目に入る
残り時間は1分を切っていた
もう時間がない
- 217 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からの ずっと先での
どんな場面も 受け止めるよ
ありがとう ありがとう
- 218 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしは琴美と戦いながら琴美と会話したことを思い出す
琴美に笑顔で話せなかったあの日のあたし
琴美に「ありがとう」と声に出して言えなかったあの日のあたし
全部あたしだ
嘘も本当も全部あたしの蒔いた種
あたしは自分で刈り取らなければならない
全部にケリをつけて―――
あたしは琴美に礼を言わなければ
ありがとうと
声に出して
あの時上手くできなかった―――とびきりの笑顔で
- 219 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
この街の未来も きっと
優しさが あるでしょう
不器用な私にだって
守りたいことだってあるし
- 220 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしはよろめきながらも右手に握り締めた物だけは放しはしない
特命刑事に許されたたった一つの武器
鎖の切れたヨーヨー
投げるチャンスは一度しかない
不器用だなんだと言ってる場合じゃない
あたしはこのヨーヨーで―――琴美を救う
琴美は別人のような素早さで右から左から斬りかかってくる
あたしは小刻みなステップで間合いをとる
自分でも不思議なくらい集中していた
琴美の動きがスローに見える
いつの間にか体の痛みは消えていた
- 221 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
目が覚めた あの朝の
太陽に話かけた
私 私 私
ほんとに 旅立つのね
- 222 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしは一つの決断を下す
いや、一つしか選択肢はなかった
あたしはヨーヨーから二枚の刃を出す
今しかない―――JUMP JUMPするのだ!
あたしはいつもの二倍のジャンプで飛び上がり―――
いつもの三倍の回転を加えてヨーヨーを放つ。
いつもっていつだよ?
それは―――今この瞬間以外の―――全てさ
- 223 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
今夜ありがとう また会えるだろう
またとない たったこの瞬間
靴の紐を ぎゅっと締めたら
振り向かず 進むから
- 224 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
あたしは確信していた
絶対光放つんだ―――素晴らしき未来はここから始まるんだ!
ヨーヨーは光の矢となって―――ピンクの導線を断つ
ヨーヨーの形はイメージ通りです
戦いの行方はあたなと―――琴美と二人です
真っ金色の光を放って琴美の腰をかすめるヨーヨー
遠くてよく見えなかったけど線を断ったことは手応えでわかった
終わりだ
これで本当に全部お終い
- 225 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
呆然と時計の止まった爆弾を見つめる琴美
終わった
役割を終えたヨーヨーはころころとあさっての方向に転がっていく
ありがとう。あたしのたった一つの相棒
あたしにはもう何も武器はない
琴美の剣を交わす術はもうない
体力も
気力も
でもいいんだ
これでいいんだ
- 226 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からも ずっと先でも
どんな場面も 意味があるだろう
ありがとう ありがとう
- 227 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
カーンと屋上のコンクリートの床に剣が落ちる音が響く
琴美は呆然とあたしを見つめる
今なら琴美に本当のあたしを晒せる
友達だから?
いや違う。友達かどうかなんて―――もうどうでもいい
口でだったら何とでも言える
大事なのはそんなことじゃないはず
今ならきっとわかりあえる
嘘も本当も抜きにして。今度こそあたしと琴美は。
あたしは琴美に向かって右手を差し出す――――
いや、それよりも一瞬早く琴美があたしに向かって左の手を――――
いや
- 228 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
今夜ありがとう また会えるだろう
またとない たったこの瞬間
靴の紐を ぎゅっと締めたら
振り向かず 進むから
- 229 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
どっちが先だったかなんてどうでもいい。
大事なのは、だ。
その瞬間に琴美に向かって笑うことができたかどうか。
とびきりの笑顔で
松浦亜弥のような
意味深な、確信犯的な、とびきりの笑顔で。
- 230 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からも ずっと先でも
どんな場面も 意味があるだろう
ありがとう ありがとう
- 231 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
【Thanks! DD刑事 終わり】
- 232 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 233 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
【エピローグ】
- 234 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
カンカンカンと乾いた音を立ててあたしは非常階段を駆け上がる
前を行く男は後ろを振り向くことなく荒い息を上げて走り続ける
あたしも真っ直ぐに男を追う
追いかけて 追いかけて すがりつきたいの
やがて男は雑居ビルの一角で行き惑う
追い詰めた
もうこれ以上逃げることはできない
- 235 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
学校の『集会』騒ぎは無事収まった
兄沢と麗華は全てを吐き、爆弾は全て回収された
取調べを受けていた琴美も無事無罪放免となったようだ
あたしはまだモーニング娘。には入っていない
いざ「入る」となると妙に躊躇ってしまうあたし
どうするどうする
どうするどうするどうするどうする
この先どうする?
- 236 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
男は落ちていた鉄パイプのようなもので殴りかかる
全然怖くない
まるでなっていない
麗華や琴美の方が強い
へなちょこ男はダメダメ、ダメダメ
あたしはいつもの高さで飛び、いつもの回転でヨーヨーを放つ
ヨーヨーに弾かれた鉄パイプは遠く彼方へと転がっていく
- 237 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
「それでお終い?」
「くっそおおおおおお!」
「金沢明夫。爆発物取締法違反で逮捕する」
「逮捕だと?てめえ一体何様なんだよ!」
「あたしか?あたしは・・・・・・・・・・・・」
- 238 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
コネだらけの企画、ハッピー8期オーディションから
訳も分からず強制送還
今じゃなんの因果かマッポの手先
この身ひとりと覚悟のはずが
不意に出会ったダチのため
期間限定!DD刑事!麻宮サキ!!
- 239 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
【エピローグ 終わり】
- 240 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
─┬────ヘ ─┬────へ
│ \ │ \
│ l │ l
│ ヽ │ ヽ
│ │ │ │
│ / │ /
│ / │ /
│ / │ /
─┴──── ─┴────
─┬─┬─ │ │
│ │ │ │ ────┼────
│ │ │ │ ┌──┼──┐
─┼─┼─ │ │ └──┼──┘
│ │ │ │ ───┼───┐
│ │ │ │ ─────┼───┼──
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/ │ │ │
/ .│ ─┘ ─┘
- 241 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
┌┐
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┌───────┘└───────┐
│┌──────────────┐│
└┘ └┘
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┌─────────────―─―┐
└────┐ ┌──┐ ┌────┘
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│ │ │ │
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ノ ,ノ │ │
/ / │ │ /\
__/ / │ └────′/
\__,,/ │ _ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 242 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
ご愛読ありがとうございました。
- 243 :名無し娘。:2006/11/18(土) 22:05
- よかったよー
- 244 :名無し娘。:2006/11/19(日) 01:56
- 圧巻
- 245 :名無し娘。:2006/11/19(日) 11:57
- 小ネタに笑いっぱなしだったよ
DD刑事大好きだー
- 246 :新宿:2006/11/19(日) 19:23
- DDのなんと熱き存在であることか
光の矢はロングホーンを折るのが精一杯かと思ったら
そんなことなかった
ありがとう(●´ー`●)
- 247 :名無し娘。:2006/11/19(日) 22:42
- 面白かった!
思い出せないネタがたくさんあって悔しかったよ
- 248 :名無し娘。:2006/12/09(土) 20:14
- 4代目誕生のシーンがこんなんだったらイヤだな…
吉良殿「サキ!受け取れぇ!!」
(吉良殿が投げたヨーヨーを受け取るサキ、キョトンとしている)
サキ「え…な、何これ!?(狼狽)」
吉良殿「そのヨーヨーはお前に力を与えてくれる!糸を引くんだ!!」
サキ「こ…これ、糸引けばいいの!!??」
吉良殿「そうだ!早く!!」
サキ「…うおおおおおおお……!!」
(糸が光り出す!!)
サキ「ちょ…な、何これぇ!!??たぁすぅけぇてぇえ〜〜〜〜!!!!
…ぅううああああああああ!!!!」
(着ていた服がセーラー服に変わり、顔も鋭いメイクのようになる!
胸元から飛び出す二本の赤スカーフ!!)
吉良殿「…(ニヤリ)スケバン刑事、見参!」
サキ「え?ス…スケバン刑事ぁ!?どどどどどーゆーことぉ!!??」
(敵の群れ、ビビって退散)
サキ「やだ、セーラー服!?恥ずかしぃ〜〜〜!!
(鏡を見て)うわ、怖!(ヨーヨーを見て)何でけーさつのマーク!?
…何じゃーこりゃ―――――!!!!!」
レイカ「…糸を巻け…。」
サキ「??…これを、巻くの?」
レイカ「…。(無言でうなずく)」
サキ「(糸を巻いていく)…おおおお〜〜〜〜入ってく入ってく〜〜〜!!!
何じゃーこりゃー!!」
(元に戻ったサキ)
サキ「このヨーヨーのせいだ…変なモン押し付けんなこのクソ親父!!!」
- 249 :名無し娘。:2006/12/22(金) 07:30
- サキちゃん8期合格おめでとう
- 250 :名無し娘。:2006/12/23(土) 00:40
- ノノノハ
川*´┴`) <・・・・・・・・・
__(っ/ ̄ ̄/_
`ー― '
- 251 :名無し娘。:2007/04/23(月) 19:23
- スケバン刑事について
http://ex22.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1177313803/
CINEMA TOPICS ONLINE
“自然と麻宮サキになっていきました”『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』松浦亜弥インタビュー
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/topics.php?number=1005
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/main.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003243.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003244.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003300.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003629.jpg
- 252 :名無し娘。:2007/07/07(土) 15:49
- レイカ「サキィ!あんたは…あんたは生きなぁ!!」
(↑点火したダイナマイトを片手に騎村時郎に突進!!)
- 253 :名無し娘。:2007/07/07(土) 22:31
- レイカ「サキちゃん、太りすぎるとお嫁にいけなくなっちゃうよ」
- 254 :名無し娘。:2007/07/11(水) 14:35
- レイカ「サキちゃん、いつまでもブリブリしてると、
またアゴはずれちゃうよ」
- 255 :♪いーまだー、今こそー、へぇーんしぃーんだぁぁ〜〜っ!!♪:2007/08/08(水) 12:21
- サキ「スケバン刑事、見参!!」
レイカ「ダークスケバン、推参!!」
- 256 :名無し娘。:2007/08/25(土) 19:20
- レイカ「あたしと…あたしと同じ奴がいた!
そいつがヨーヨーの糸を引くと、
そいつはセーラー服姿のスケバンになった!
…どう言う事だ!!?」
騎村時郎「…そのヨーヨーは“赤鯱”と言って、
お前の“青鯱”とは対を成すものだ…。
持つべき者が持った時、“赤鯱”はその真価を発揮する…。」
レイカ「…そいつも強いのか?」
騎村時郎「…その女…麻宮サキには近づくな…。」
- 257 :名無し娘。:2008/03/14(金) 14:48
- 吉良「助かった…ありがとよ。」
サキ「いいよ…ったく、あんなトコで行き倒れやがって。」
吉良「…赤鯱は?」
サキ「?ああ。(ヨーヨーを見せる)持ってるぜ。」
吉良「うむ。」
サキ「でも不思議だよなぁ。前までは「こんなの要らねぇ!」なんて言ってたのに、
今じゃこう…何だ、持ってないとソワソワしちゃうんだよな。」
吉良「それでいい。それが「選ばれし者のさだめ」だ。」
サキ「あんたがこのヨーヨー持って現れてからっていうもの、あたいの人生調子狂いっぱなしでよ、
ま、でもそれなりに毎日が刺激的になって…面白くなったってか…。」
- 258 :最終決戦!:2008/03/23(日) 15:24
- サキ「てめぇ(騎村)…何であたいらを…!
あたいらだけじゃねぇ、レイカのパパとママ、聖泉学園のみんな…
どうして関係ない人達まで殺すんだぁ!!」
騎村時郎「フッフッフ…その何の関係の無い者達が、
今もどこかで殺し合いをしているんだ。戦争という名目でな…。
お前達が赤鯱・青鯱を振るう度に、何の関係の無い、
何の罪も無い人間を、殺しているんだぁ!!
戦いとはそういうものだ…。」
サキ「あたいらが…みんなを殺したっていうのか?
…勝手な事言うなぁ!!!!」
- 259 :259追加:2008/03/23(日) 15:26
- (>>252に戻る)
- 260 :259追加:2008/03/23(日) 15:26
- (>>252に戻る)
- 261 :259:2008/03/23(日) 15:27
- しまった連投!ごめん…。
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