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スケバン刑事 コードネーム=松浦亜弥

1 :名無し娘。:2006/10/07(土) 07:38


          ノノハ))    4代目スケバン刑事松浦亜弥
        从‘ 。‘)^)@  おまんら許さんぜよ!!
        リ`ヽ_ソ
        j___f
        /l l l l|
        l_|_|_|_i
        |ーl-|
        l__l___)

101 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

ほげかんせつ・・・じゃなかった顎関節症になるんじゃないの?
というほど口を広げて大声で叫ぶ二人の腰には
まだあたしの記憶に新しいデジタル時計つきのウエストポーチ。
ビンゴ!やはりここだったのか。
こいつらを捕まえればあたしはモーニング娘。に入って―――
今ならまだ年末の紅白に間に合うかな?


「ヤバイ!逃げるぞ!」

「よっしゃ!」

「走れええええええ!」

「うおおおおおおおおおおお」


予想以上のダッシュで二人は二手に別れて逃げ出す。
くそ。逃げる逃げる言うんじゃねーよ!
逃した魚は大きいぞ!とならないように追いかけなきゃ―――どっちを?
迷っている暇などない。またこの次なんてあるわけないじゃん。

あたしは校舎の外へ向かって駆け出したヤツは諦めて
校舎の奥へと向かったヤツを追いかける。
一人が捕まれば、もう一人も自由に動けなくなるだろう。
加護がいなくなった―――辻のように。

102 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

爆弾なんてゲジゲジンだのマルマインゲアーだの言ってるような
頭の悪いヤツには作れないと思うんだけど、
前を走るヤツは自らどこにも逃げ場のない屋上へと駆け上がる。
バカだこいつ。ハマグチェレベルだ。まあいいけど。

あたしもヤツにやや遅れて屋上に上がる。
もう逃げ場所はない。意外とあっけなかったね。
ハロモニ裁判のように何の盛り上がりもなく決着か。
こいつを逮捕したら、あたしはやっぱり「獲ったどー!」と叫ぶべきだろうか。


「来んじゃねねええええええええええええええ」

「それ、よこせよ」

「来んな!爆発させるぞ!やってやんぞこらあああああああ!」

「バカな真似はよせ!」

103 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

さゆと話しているときの柴田のように好戦的な態度だなこいつ。
いや、逆か。好戦的なのはさゆの方かもしれない。
でもまあ「ナチュラル担当」っていうのは
自分の感情を一切隠さずに傍若無人に振舞うって意味じゃないよね?

ヤツの腰のデジタル時計はどうやらチクタクと動いているようだ。
残り何分かはわからないが―――あまり時間はないだろう。
あのピンクの線を切ればいいんだよね。ピンクピンクっと。
あたしの頭の中ってこんなにピンク色だったっけ?
ところで「レインボーピンク」って虹なのに全部ピンク色って変じゃない?
真っ黒な白熊、みたいな。まあどうでもいいんだけど。

こうやって無言で向き合っている間にも時計は進んでいる。
爆発してしまったらハイ、お終い。だよね。
ハロモニのお花見クイズみたいに最後に大逆転チャンスとかはないだろう。
ここは出し惜しみしてる場合じゃない――――

104 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

あたしはヨーヨーの横をぐっと押す。
ジャキーンと鈍い音がして二枚の刃がヨーヨーから飛び出す。
うは。カッチョイイゼ!カッチョイイゼ!
あたしはヤツに向かっていつもの(いつもっていつだよ?)2倍の高さでジャンプし―――
いつもの(だからいつもっていつだよ?)3倍の回転を加えてヨーヨーを放つ。
狙うのはピンクの線ただ一つ。

その時ヨーヨーは光の矢―――――とはならず、
狙いの右15cm横にそれてウエストポーチの腰のベルトをかすめる。
ワオ!じれったいミスショット!!
と自分にツッコミキティする前にベルトが切れたウエストポーチは
ヤツの腰からすり抜け―――
屋上からみちよの人生のように転がり落ち―――
地面に落ちるかなり前に―――弾け飛んだ。


「うう、うあああああああわわわあああああ」

「おい」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい」

「ゴメンで済んだら著作権法とかいらねええんだよ!」


まるでFNS歌謡祭のHPASのように平謝りに謝る化学部員。
謝れば済むってもんじゃないが、こっちは本人が謝っているだけまだマシか。
あたしは軽くぽよよよーんとヤツの横腹を蹴る。
これで一件落着といけばいいんだけど―――なんとなく嫌な予感がしていた。

105 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

FUNFUNFUNとハロプロに異様に好意的だった番組名のような
サイレン音を響かせて警察がやってくる。For beautiful human life.
ハロプロが産業再生機構のお世話になるのはいつになることやら。
暗闇警部も当然のように学校に来ていた。
過去にこの学校で起こった事件などについて話を聞くあたし。

この学校でこういった爆発騒ぎが起こったのは、
あの体育倉庫の一件も入れてこれで四件目になるらしい。
今日のを入れなければ三件。今日のはノーカウントよ?んなわけねー!
まあ、どっちにしても多い。多すぎる。多杉田かな。
あのなっちが起こしたスキャンダルですらお塩と素敵だなの二件だけなのに。


「飯島の身柄は確保した。千葉の行方も全力で追っているところだ」

「おい」

「爆発させたのは拙かったが、まあ怪我人もなかったしな」

「おい!」

「なんだ?もう帰りたいのか?きらりん☆レボリューションの時間にはもう間に合わないぞ」

「録画してるよ!そんなんじゃねえ。あの必殺技のことだよ」

106 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

「『ゆで理論1200マンパワーがものごっついスペシャルDDエディション』のことか」

「そんな寒い名前とかどうでもいいよ!あれ、大嘘だろ?」

「大嘘でも小嘘でもないぞ。特命刑事に代々伝わる・・・・・・・・」

「光の矢なんかにならなかったし、狙い通りにも飛ばなかった!」

「そりゃお前が真の意味でDDじゃないからじゃないのか?」

「完璧DDだっちゅーの。誰だって大好きだもん」

「ストューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」

「す、すちゅーかすろびん?」

「福田明日香の誕生日は?」

「ハロプロメンバーの誕生日なら全員言えるけど・・・・・」

「誰でも大好きなんだろ?まあ、お前もまだまだってことだ」


不覚・・・・・
真のDDってのは過去から現在まで全て押さえないといけないのか・・・・
それにしても福田明日香とは。
あぁーなつかしい、オリメンの人。
「DDになるって・・・・・むずかしいんだなぁー」

107 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

【草原のDD  終わり】





→To be continued

108 :名無し娘。:2006/11/08(水) 00:51
ふぉーびゅーてぃふぉーひゅーまんらいふwwww

109 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23

【第九話  D〜D?】

110 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23

ね〜えってばね〜え、お話聞いて〜
とばかりにあたしは琴美を化学実験室に呼び出したのだが、
それはお話を聞いてもらうためというより、お話をしてもらうためだった。
相変わらず辛気臭い雰囲気のあたしと琴美。でも仕方がない。
あたしは隙を見せないように慎重に話を進める。
娘。に入ったら愛ちゃんともこんな感じで接するべきだろうか。


「どうやらこの学校の爆発騒動も収まりそうだね」

「え?どういうこと?」

「だって飯島は捕まった。千葉が捕まるのも時間の問題でしょ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「あっ、ゴメンゴメン。飯島君も千葉君も琴美の友達なんだよね」

「いや、違う。そうやないねん」

「んじゃなに?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「なんか溜め込んでることがあるならあたしに話してみなよ!」

111 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24

琴美はなんとなく話しづらそうな表情をしている。
左手でいじいじとボールペンを弄繰り回している琴実。
この子は左利きなんだね。ハリケーンな魔球とか投げられるのかしら。

なんとなく気まずい沈黙が部屋を支配する。
友達ならここは逃げの一手だけど、DD刑事にはそんなことはできはしない。
きっと彼女はまだ大事なことを隠している。嘘をついている。
そう確信したあたしは彼女の心を開こうと嘘くさい言葉で話しかける。
そうよ勝負よ。

でも口調がおかしいのが自分でもわかる。
梨華ちゃんばりの棒読みの台詞。ああなんて嘘臭い台詞回し。
気兼ねなく会話できる素敵なヤツになりたいんだけどな。無理かな。
あたしは不器用だしよく食べるけど、よく笑わないし優しいヤツでもないんだ。

笑えない。嘘でもいいから笑顔で励ましたい。でも笑えない。
だってあたしは琴美のことを―――好きになっちゃいけないから。
嘘でもいいから笑う?いや、作り笑顔とかなんか上手くできない。
あたしはあくまでもビジネスライクに琴美を扱う。
モーニング娘。を扱う―――UFAのように。

112 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24


「あたしな、いじめられてたんやけど、たった二人だけ友達がおってん―――」


意を決したように琴美は一人語り出す。
「悪いところがあったら教えて?」と言われたわけじゃないが、
人が真剣に話しているので、あたしは普段は絶対切らない警察携帯の電源を切る。
かつて琴美の友達だったという化学部の中尾と金沢という男。
この爆弾騒動の全ての始まりはその二人の男だったらしい。


「でもな。ちょっと二人が喧嘩みたいになってな。中尾君は化学部をやめてしもてん―――」


喧嘩の理由を聞いても、中尾も金沢も絶対に答えなかったという。
中尾は部活を辞め、金沢ともほとんど話さなくなってしまった。
初期タンポポのようにバラバラになってしまった三人。
琴美に対するいじめは石川の髪型のようにどんどんエスカレートしていったらしい。
それを見ていた中尾はこう言ったという。

113 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24


「これ以上我慢することはないよ琴美。この学校ごと全員、俺がぶっ飛ばしてやる―――」


その言葉はあっという間に現実のものとなる。
その当時琴美をいじめてた生徒三人が校舎内で爆殺されたのだった。中尾もろとも。
あっけなく―――本当にそれは知恵の輪が解けるようにあっという間の出来事。
生徒四人死亡の事故原因は学校によって、初期カントリーのようになかったことにされる。
この学校には―――スキャンダルなど―――いじめなどなかったのだと。


「それからちょっとして。麗華ちゃんがやけにうちの部室に出入りするようになってん―――」


麗華もあたしのように執拗に爆破事件のことについて琴美に聞いた。
そしてやがて麗華は金沢と親しくなっていったという。
麗華と金沢の二人は―――石川卒業コンサートツアーの最中にも―――
打ち上げを欠席して自宅デートとかしていたのだろうか。
そんな金沢は徐々に学校にも来なくなり―――第二の爆破事件が起こった。

114 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25


「校長室がな、爆破されてん。爆破といってもほんのボヤ程度やってんけど―――」


その事件ならあたしも警部から聞いた。
体育倉庫爆破のときよりもかなり小さな爆破だったらしい。
爆弾自体は中尾が死んだ時と同タイプだったが、爆発はかなり小さかったとか。
ソースはmixi、じゃなくて警察なんだから間違いない。
少なくとも大阪美男の書き込みくらいは信用していいだろう。


「あたし、見てん。金沢君が爆弾作ってるところ。中尾君の真似して。あたし―――見てん」


金沢は校長室爆破事故があってほどなく学校を辞めた。
そして琴美も化学部を辞めた。
それから琴美は頻繁に麗華から嫌がらせを受けるようになったという。
今いる飯島や千葉といった部員は琴美が辞めてから入部してきた新メンで、
市井と4期メンバーのように琴実とはほとんど話したことがないと言う。

全てを話し終わった琴美は、魂の抜けた人形のように固まっている。
三人祭のように雷が落ちてビビビッてならないと元には戻らないかな?
本当にそんな感じでぐったりとしている琴美だが、
あたしは松本人志のように非情ではないので「病院行って来い!」とは言えない。

115 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25

「話してくれてありがとう。やっとわかったよ」

「わかったって?何が?」

「つまり金沢と麗華を押さえないと、飯島や千葉を逮捕してもダメってことだろ?」

「違う・・・・そうやなくて・・・・」

「何を心配してるの?何もナイゼナイゼ。心配ナイゼ。問題ナイゼ」

「爆弾なんてもうどうでもええねん・・・・・・」

「どうでもよくはないだろ!」

「あたしのこと・・・・・あたしのこと全然わかってへん」

「ちょっと年上のあたしにも、それくらいわかるわよ」

「サキちゃん、ホンマにあたしのこと友達と思ってる?」

「あったり前じゃん!」

「爆弾事件とあたしとどっちが大事?」

「琴美が大事だからこそ爆弾事件を解決したいんじゃない」

「ありがとうなサキちゃん。でも・・・・でも・・・・・」

116 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25

琴美は黙りこくってじっとあたしを見つめる。
つんくの才能のように沈黙していても、その目は雄弁にあたしに語りかけてくる。


「どうやって私守るのよ?根拠も何もないくせに」って。


あたしは琴美に向かって笑顔を見せようとしたが―――やめた。
どんな笑顔を見せても心の中が読まれそう。
だからあたしは琴美には笑顔を見せない。絶対に。
刑事である限り、琴美に笑いかけたりはしない。
だって事件を解決するためにはそんなことは必要ないから。
でも・・・・・でも・・・・・

迷うわー、こんな風になっちゃうのは
琴美が好きだからよ。琴美が好きだからよ。

117 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25

【D〜D?  終わり】





→To be continued

118 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:18

【第十話  GOOD BYE 夏DD】

119 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19


「琴美。麻宮さんの言ってることなんて全部嘘だよ」

「!」

「そいつは単に爆弾事件に興味があるだけ」

「そんな・・・・・・」

「琴美のことなんてどうでもいいと思ってるに決まってる」


薬品棚の後ろから出てきた麗華はキラキラとした目であたしと琴美を見つめる。
また出てきやがった。
屋上に出てきた昨日に続いて二日間の連続出現(1つ2つ3つ0華)。
あたしはイメージで麗華を「STKな子」にキャラ設定する。
盗撮くらい人並み程度にあるのかな・・・・・ってコラー!
とにかくいちいちうざったい麗華の声。麗華の話し方。麗華の仕草。
見てるだけでたまるストレスがたまる。ああぐちゃぐちゃよ。

確かにあたしは琴美に対して嘘をついていたけど―――
琴美の嘘はわかるじゃん。私の嘘はばれない。つもり。ワォ!
まあいいじゃん・・・・・

120 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19


「金沢ってヤツはどこだ?そいつが爆弾を作ってるのか?」

「あら琴美、そんなことまで話したんだ。口が軽いのね」

「てめえはもうお終いだよ」

「ふふふ。金沢君にお兄さんがいるってことも知ってるのかしら?」

「兄?」

「やめて!麗華ちゃん!もうそれ以上言わんといて!」

「あーら。やっぱり全部は言ってなかったのね。ふふふ」

「麗華・・・・・お前この化学実験室で何をやってるんだ?」

「ここで?ここはあんまり好きじゃないなあ。薬品臭くて。なんかヲタク臭くって」

「てめえ・・・・」

121 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19

いきなり出てきた金沢の兄という人間(兄沢?)にあたしは軽く動揺する。
さらに畳み掛けるように「ヲタク臭い」という言葉にもあたしは動揺する。
ヲタクを臭いって言うな。事実だけに心が痛むだろ。

そんなあたし以上に動揺が激しい琴美。まだ隠してることがあるのか?
ゆっくりと近づき、琴美の髪をさらさらと撫でる麗華。
泣いてるみたいな声がでちゃう琴美。
麗華の心が―――そして琴美の心が読めない。

122 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19


「さあ、琴美。武道館・・・・じゃなかった武道場にでも行こうよ。
あそこなら空気もいいし見晴らしもいい。ここは暗くて辛気臭いから好きじゃないわ」

「でも・・・・・でもあたし・・・・」

「琴美、これが最後のチャンスよ。あたしと麻宮さん、どっちを選ぶの?」

「どっちって・・・・・・・・・・」

「あたしは琴美の全てを知ってるわ。でも麻宮さんはどうかしら?」

「・・・・・・・・・・・」

「全部話していないんでしょ?話す勇気があるかしら?」

「・・・・・・・・・・・」

「集会はどうするのかしら?今さら辞められないわよ?」

123 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20

麗華と琴美はあたしを無視してずんずんと話を進める。
最後のチャンス?、チャンス of ラスト?、始まるわー危険な瞬間?

まあそれは別にいいんだけど『集会』?なにそれ。
武道館で集会とかって一体どんな現場系ヲタサークル?
そんなのがあるの?あたし知らない。
長崎年長組会談に出席しなかった安倍のような気持ちになるあたし。
琴美は黙りこくったまま石のように動かない。

124 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20


「サキちゃんのこと・・・・・・・信用してええん?」

「友達だって言ってんじゃん」

「あたしのこと、許してくれる?」

「許すって何をさ」

「麻宮さん、本当に本当に本当にあたしのこと友達やと思ってる?」

「うん」

「本当に?爆弾事件に興味があるだけなんとちゃうの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「麻宮さんって本当は何者なん?」

125 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20

真摯なまなざしで見つめてくる琴美。
何者って言われてもさ・・・・・・・・
二十歳のあたしは思わず自分が着ているセーラー服を見つめる。
高校生に見えてるかな?まあ中澤裕子のコントよりはマシかな。
いや。

やっぱ無理な話ね。違いすぎる。
あたしは琴美が思うほど純な女じゃない。
きっとウソはバレルわだから言えない。
もっと泥沼になったら―――切ないじゃない。

126 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20

【GOOD BYE 夏DD  終わり】





→To be continued

127 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:52

【第十一話  THE LAST DD】

128 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:52

あたしは琴美の問い掛けに対して―――
うつむいたままで、わざと返事をせずにいた。
きっと何か言葉にすれば涙流れたろうな。
あたしは黙って琴美の方に右手をすっと差し出す。


「琴美のこと守るって言ったこと。あれは嘘じゃない」

「サキちゃん・・・・・・」

「あたしは琴美のことを守る。何があっても」

「あたしはもうダメや。あたしもきっと・・・・・爆発して死ぬ運命なんや」

「琴美はあたしが死なさない。絶対守る。約束する」

「いや・・・・アカンわ。あたしはもうアカンねん」

129 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53


あたしは右手を琴美の方へと伸ばしたままずっと待つ。

琴美の手があたしの方へと差し伸べられるのを。

私待つわ。いつまで待つわ。

どんくらい時間が過ぎたって私は待てるわ。

市井紗耶香完全復活までは3年以上待った。

だが――――

どれだけ待ってもあの頃の市井が戻らなかったように、

琴美の手があたしの方へと差し伸べられることはなかった。

130 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53


「ゴメンなサキちゃん。あたし・・・・やっぱり・・・・」

「行こうか琴美。最後の準備をしないとね」

「あたし・・・・・もう戻られへん」

「そうよ。もう戻れない。戻るなんて許さないわよ」

「うん・・・・・・わかってる」


琴美は麗華と話しながら準備室から出て行った。
旧校舎から外に出てグラウンドの向こう側にある武道場に向かう二人。
あたしの言葉は琴美の胸に届かなかった。
どうしてだろう。わかってる。「嫌われてるんだよ」って言われるまでもなく。
どんなに綺麗な言葉を並べても、琴美が気に入んなけりゃ意味ねえNight。

131 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53

あたしは一人取り残された教室で空を切った右手を見つめる。
最後まで自分の正体を晒すことができなかった。
「なんでこんなに言うか分かる?琴美の事だからこんなに言うんだよ!」
とでも言えばよかったのだろうか。たとえ麗華に失笑されようとも。

それにしても琴美の考えていることば全然わからない。
彼女は一体何を胸の内に秘めているのだろうか。
わからない。全然わからない。
たとえつぼ八に呼び出したとしても、とてもわかりあえそうにない。
それでもあたしは、あたしは、あたしは―――この事件を解決しなければならない。

「守ってあげる」っていう言葉は嘘じゃないんだ。
正直な気持ちだから伝わってほしい。
今すぐじゃなくっても―――そのうちでいいから。

132 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53

あたしは学校を出てとぼとぼと家路につく。
金沢に兄がいたということ。「集会」という言葉の意味するところ。
琴美と麗華の関係。オーディションに受かった時のコメント。
先輩だけど年下になるメンバーを愛称で呼んでいいものかどうか。
考えなければいけないことことはたくさんあった。
あたしは少し遠回りをして、近くにある大学の構内を通って帰る。

メインストリートの歩道をそれてふかふかの芝生に足を踏み入れる。
大学の博物館の横の芝生では犬の散歩をしている人がたくさんいる。
残念ながら足を怪我してるオバサンはいない。
あたしは犬には縁がないのかな。別に豚とは縁がなくてもいいけれど。
はあ。あたし・・・・・本当にモーニング娘。に入れるのかなあ。
なんだか怪しくなってきた。

キーンと金属音が聞こえそうなくらい冷たい風が髪と無邪気に遊んでる。
この街の短い秋ももうすぐ終わる。
そろそろ例のニット帽を出すシーズンかもしれない。
冬に比べればこの街ではずっと存在感の薄い季節、秋。
でもまあ秋が好きだと言えば好きになれたし。

そんなことを考えるあたしの耳に風よりもさらに冷たい鋭い感触。
空を見上げるとゆっくりと、本当にゆっくりと、
この街にこの季節初めての雪が舞い降りてきていた。
まるで飯田さんがデザインしたかのような綺麗な雪の精たち。


――――冬が始まる。

133 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53

【THE LAST DD  終わり】





→To be continued

134 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19

【第十二話  奇跡のDDダンス。】

135 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19

あずすーんあず帰宅するやいなや警部が車でやってくる。
ちょっと本部まで一緒に来いとのお誘い。
あたしも丁度警部と話がしたかったところ。
ドライブなんてグッドタイミング。こんな日もあるのね。
あたしはちょっぴり三枚目な警部について行く。


「もう一人の化学部員、千葉も逮捕した」

「思ったより早かったじゃん」

「今、事情聴取してるところだ」

「『集会』・・・・・がどうとか言ってなかった?」

「『集会』?なんだそりゃ」

「着いたら詳しく話すよ」


あたしは琴美と麗華との会話を説明しようとしたが、上手く言葉が出てこない。
全然出てこない。
ココナッツ娘。の新曲のように一向に出てくる気配がない。
もしかしたら一生出てこないかもしれない。

136 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19

車は混み合った環状通りを東に向かって進む。
多くの車はまだスタッドレスタイヤに履き替えていないようだ。
ノーマルタイヤの車は初雪がうっすらと積もった道路に悪戦苦闘している。
そんな中、警部の車は高橋愛のトークのように一度も滑ることなく(嘘)目的地に到達する。

以前来た建物の地下一階では飯島と千葉が個々に取調べを受けていた。
これが噂の取調べか。ソースカツ丼とか頼んだら出してくれるのかな?
四角く小さい窓越しに見える二人は、
なんだかごっちんに分けてあげたくなるくらい無駄にテンションが高い。
自分らが何をしたかってこと、全然わかってないんだろうな。


「どうやら元化学部の金沢という男が爆弾を作っていたらしい」

「なーんだ。もうそこまでわかってるんだ」

「ああ。今は金沢の行方を全力で追っている」

「これでもうあたしの役目は終わったんじゃないの?」

「・・・・・そういえばお前、『集会』とか言ってたな」

「ああ・・・それはその・・・・飯島と千葉に聞けよ」

137 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20

あたしは元化学部の金沢の写真を警部からもらう。
兄が明で弟が明夫とかいう名前らしい。
あたしはじっと写真に写っている金沢明夫の顔を見つめる。
動物にたとえるならメガネザル。野菜にたとえるならカリフラワーってところか。
でもそんなことは口に出さない。いくらなんでも失礼というものだろう。

とにかく、警察の捜査は金沢兄弟のところまでたどり着いた。
ほんのちょこっとなんだけど―――前に進んだ気がする。
だが兄沢の方の写真は一枚も手に入らなかったらしい。
うーむ。
そいつは困った。ですね。ですねですねですね。
ですねですねですねですねですね(回数あってるかな?)。

話によると飯島と千葉は麗華に誘われて化学部に入ったらしい。
それまでは麗華とは全く接点がなかった飯島と千葉。
たった10分足らずで奇跡の恋となるってか?

麗華から離れて気づいた―――自分のやってることが犯罪ってことに。
まあ、きっと遅くない。まだやり直せる。DO THE LOVE!
そうさ。飯島だって千葉だって琴美だって―――そしてあたしだって。
きっと遅くない。まだやり直せるはず。

138 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20

「どうやら集会ってのは明日行われるらしい」

「明日!で、集会ってのは何の集会なんだよ」

「『A』という主催者が行う決起集会―――らしい」

「らしい?」

「目的はよくわからんがどうやら・・・・・・10個の爆弾を使って学校を―――」

「10個!マジかよ」


たった一つでも体育倉庫を吹き飛ばすあの破壊力。
10個もあったら間違いなく学校そのものが消し飛ぶ。それが目的か。
それにしても『A』だと?誰だ?
兄沢のAか?秋山のAか?
それとも松浦と久米宏が組んだが低視聴率で打ち切られた―――

139 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20

「とにかくだ。お前は学校に戻って『集会』の全容を探れ」

「麗華は?あいつを押さえた方が早いよ」

「今の状況では証拠が不十分だ。秋山を逮捕することはできん」

「証拠かー。ヒャクマミみたいな流出音源でもあれば決定的なんだけど・・・・・」

「それに秋山は自宅にも帰っていないようだ」

「彼氏の家にトイレットペーパーでも持っていってるんじゃないの?」

「とにかく!秋山を、そして集会を抑えられるのは学校に入れるお前だけだ」

「そんなこと言われたってもう明日だろ?」

「時間がないのはわかってる。だがやるしかない」

140 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20

言うだけなら簡単だよな。
「つんくが良い曲を書けばモーニング娘。は復活する!」とかさ。
言うだけなら簡単なんだよまったく。
そんな愚痴をグチグチ言いながらあたしは深夜の学校に忍び込む。
愚痴ってばっかいないで何とかしな!ベイビー!

それにしてもすっかり遅い時間になってしまった。
警部が門限通りにうちに送ってくれる、
あたしよりも弱虫な人だったらこんな時間にはならなかったのにね。
女にゃそれなりの時間もいりまっしょい!

目指すは旧校舎の化学実験室。
自宅からも消えている麗華が行きそうなところってここしか思いつかない。
あたしは慎重に身を屈め、ドアの前に進む。
そして案の定教室の中には―――人の気配が―――誰かいる?
みんなスヤスヤと寝てるような夜中にこっそりしのび足。
この鍵開ければ逮捕よ・・・・・


ピリィィィィピリィィィィピリィィィィ


って携帯鳴らすの誰だよーーーーーーーー

141 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20

素早く闇の中を二つに分かれていく人の気配。二人いるのか?
あたしは二つの気配のうちどっちにターゲットを絞ろうかと考えるが―――
二つの気配は全く逃げる気配もなく、むしろあたしを挟み込むように
移動しているのを感じて肌が粟立つ。ヤバイ。挟み撃ちにされる。
まさに前門の羊、後門の狼。粘着とバカ。どっちも怖い。

あたしはとっさに廊下の電気を点ける。闇はむしろ向こうに有利。
走りながらさらに実験室の電気も片っ端から点ける。
暗闇に慣れた目がちかちかする。
これって日本民間放送連盟が定めたガイドラインには違反してないよね?
とにかく二つの気配が誰なのかを確認しなければ。
本当言うと怖かった―――できればここから逃げだしたかった。
BUT「逮捕がしたい」が刑事の本能。

そんなことを考えながら窓を開けた瞬間、あたしの後頭部に鈍い痛みが走る。
乱れる制服。バサッと床に落ちる特命刑事ご用達のDD印の携帯電話と生徒手帳。
だがダメージは浅い。初めてプリプリピンクを見た時ほどの衝撃は受けなかった。
気を取り直しあたしは振り返る。若い男みたいなのが一人。
目が霞んでよく見えない。

考えるより先に相手の膝に素早くローキックを叩き込む。
男が呻く。
男はラブホの冷蔵庫くらいの小柄な体躯。
動作も鈍い。構えは隙だらけ―――この男が相手なら勝てる!

142 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21

そう感じた瞬間、あたしの顔面に走る激痛。視界が真っ赤に染まる。
体重計に乗ったわけじゃないけど―――
思わずなんじゃこりゃなんじゃこりゃ状態に陥るあたし。
何かが顔に飛んできた。視界が元に戻るまでもう少し時間がかかる。
そう判断したあたしは愛の種(精子の暗喩)―――じゃなくて
そこら中のものを撒き散らしながらその場を離れ、少しの間時間を稼ぐ。


「大丈夫か」

「なんとか・・・・クソっ!この女!」

「ここは俺が片付ける。お前は早く逃げろ」

「けどよお!」

「下手に騒げば警察が来る。早く撤収しろ」

「じゃあここは任せるよ」


徐々に視野が戻ってくる。
あたしの蹴りでふらついているのは若い男。学生か?
警部の持っていた写真の男とよく似てるけど―――こいつが金沢弟か?
あたしは木綿のハンカチーフで目を拭き立ち上がる。
出血は大したことない。大丈夫だ。まだ戦える。
8期の入るモーニング娘。じゃないけれど―――まだあと三年は戦える。

143 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21

「特命刑事の麻宮サキだな」

「お前に恨みがあるわけじゃないが」

「我々の計画を邪魔されちゃ困るんだよ」

「明日一日、ちょっと動けないようになってもらおうか」


金沢らしき男は後ろのドアから逃げ出す。でも追えない。
パンダみたいな大きなサングラスをかけた30前後の男があたしの前に立ちふさがる。
グラサン男は余裕綽々で鼻なんかほじってる。藤本かお前は。
あたしはこの男をどこかで見たことがある。ような気がする。
だがそれを思い出している暇はなさそうだ。
この男、腹が立つくらい余裕綽々なんだが―――全く隙がない。

逃げ出すことは無理。ならば倒すしかない。
あたしは腿に装着したヨーヨーに触れるが―――
この準備室は天井が低い。
例のなんちゃらマンパワーとかいう技を出すのは無理そうだ。
それでもあたしは鋭いスナップでヨーヨーを放つ。

まともに空手で戦っても絶対に勝てない。そう感じた。
なぜなら飯田圭織の負のオーラをも軽く凌駕するような
圧倒的な存在感が―――この男には漂っていたから。

144 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21

あたしは低い姿勢のままでヨーヨーを放つ。
ハロプロのCDの売上のように低空飛行で飛んでいくヨーヨー。
だがヨーヨーは勢いも虚しく軽くコーンと弾かれる。
男は掌に何かを持っている。だがそれが何なのかはよく見えない。

間合いを空けないと―――と思う間もなく間合いを詰められる。
そんなに詰めるんじゃねえ。美貴様のカップじゃあるまいし。
息をつく暇もなく、マカロニ―――じゃなかった
マシーンのようにビシバシと連続して飛んでくる拳と蹴り。
この男、強い。戦い慣れしている。
あたしも必死に応戦したが―――ペースは常にあっち。

ズバッとサマータイム並みの蹴りがあたしのわき腹に入る。
ののたんのように過呼吸に陥るあたし。
逆、逆、逆。息が出来ないあたしの肺。でも戦わなくちゃ。
そうよみんな必死なんだから。あきらめるくらい、簡単だから。
と思いながらもあたしはスラッシュダンスを踊るようにたたらを踏んで地面に倒れこむ。
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE!
とか言ってる場合じゃないよね。

でも動けない。苦丁茶のような苦い汁があたしの口の中に満ちる。
こんなに胸胸、切なくって苦しい。サングラスさん超イジワル!
あー、ダメだ。麻宮的にはー、グスングスン。もう立てないのー。

145 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:22

「サキちゃん!大丈夫!?」

「!」

「警察呼んだから!もうそこまで警察来てるから!」

「ふん、警察が?嘘丸出しだな」

「本当やもん!ほら!そこに!」


あたしは呻きながら声のする方を見る。
琴美じゃん。なんで琴美がここにいるんだ?
男はあたしに向かおうか琴美に向かおうか、
どっちに進むのか迷っているようだ。こっち?うーん・・・こっち?
だが男はどちらに進むこともなく―――
思わせぶりな言葉を残して闇に消えていった。


「まあいい。今日はこれくらいにしておこう」

「無駄だと思うが、一応警告しておこう」

「明日の集会を止めようなどとは思わないことだ」

「止まらない―――集会はもう止めちゃいけない」

「止まらない―――それはもう―――どこにも行かない」

146 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:22

【奇跡のDDダンス。 終わり】





→To be continued

147 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:32

【第十三話  DD(ヒヤシンス)】

148 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:32


「サキちゃん大丈夫?」

「琴美・・・・・なんでこんな時間にここにいるんだよ」

「ちょっと用事があってん。サキちゃんらしい子がいたんを見て―――」

「追っかけてきたってか?」

「すぐに携帯に電話したんやけど全然返事なかってんもん」

「アチャーミー。さっきの電話は琴美だったのか」

「うん。ついさっき。携帯にかけたよ」



琴美ってばいつもタイミング気にせずにおつかいの電話を入れてくる―――凄い人。
まあ、携帯の電源切ってなかったあたしが悪いんだけど。

149 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33

「用事ってなんだよ。こんな遅くに」

「え。うん。ちょっと」

「明日の『集会』ってやつか?」

「・・・・・・・サキちゃん全部知ってるん?」

「話せよ。話せよ全部」

「ぜ・・・全部?」

「そう。全部だよ。集会のこと。化学部のこと。金沢兄弟のこと。
麗華のこと。さっきのサングラスの男のこと。琴美が知ってること全部。
どんなことも―――話してほしいのよ」


琴美は言葉を探すように宙に視線を彷徨わす。
あたしは琴美が話すのを待った。
なんだか待ってばかりだけど、待つことは苦じゃない。
辻の2nd写真集が出るまでは三年待った。

あたしはうたばんでの6期メンのようにずっと黙っていた。
黙って待っていればいずれ琴美が話し始めることはわかっていた。
この子はきっとずっと話せる人が来るのを待っていたんだ。
きっとそうに違いなかった。

150 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33

やがて琴美は話し始めた―――

やはり爆弾を作っているのは金沢らしい。
化学薬品会社に勤める、金沢とは年の離れた兄とのコンビで。
爆弾の部品なんていう誕生日コンの最前のチケット並みに入手困難なものは
兄沢のコネクションで全部用意してたってわけか。

その爆弾というのは、元々は中尾が
琴美をいじめるやつらに対する復讐のために作り出したものだった。
だがその図面はこっそりと金沢の素敵ノートにぬっちされていたようだ。
中尾は金沢を激しく問い質したが―――問題が解決される前に中尾は死んだ。
琴美のために。たった一人の琴美のために、たった一人で死んだ中尾。

琴美はふうとため息をつき、真っ暗な空を見上げる。
空を見上げる時は―――いつもひとりぼっち。
悲しいこともあるけど、すべて意味があるんだね。

151 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33

そして金沢に近づいた麗華が新しい化学部員を集め、
だんだん爆弾作りにも慣れて、だんだん度胸もついて、
爆発事件はだんだんと大きくなっていった―――
と、ここまでは大体以前に聞いた話とあまり変わりない。


「で、集会ってなんなんだよ。麗華は何を考えてるんだ?」

「麗華ちゃん。学校ごと全部吹っ飛ばすらしいねん」

「なんのためによ?」

「わからへん。学校が面白くないとか言ってる人を集めて色々やってるねん」

「あのヲタ奴隷みたいな取り巻き連中か」

「あの人ら怖い。ホンマにメチャクチャする人らやねん」

152 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33


「明日の放課後、体育館にみんなを集めるんやて」

「おーおー。そいつは涙が止まらない放課後になりそうだな」

「そんで・・・・・体育館で全部爆発させるって言うてたわ」

「爆弾は?もう仕掛けてあるのか?」

「仕掛けるっていうか全部あの人らが身に付けて―――全員で『飛ぶ』ねん」

「おいおい・・・飛ぶって・・・・・推しジャンプとかじゃないよね?」

「ホンマはあたしも・・・・・その一人やってん」

「え!?」

「あたしも昔、それ用に爆弾を一個作ったことあるねん・・・・・」

「どういうことだよ!」

「ゴメン。サキちゃんゴメン。『集会』って元々はあたしが考えたことやねん」

「どうして?どうしてなの琴美?」

「中尾君が死んで・・・・・金沢君にも色々言われて・・・・・あたしは一人ぼっちで」

「バカが!だからって死ぬことはないだろ!」

「学校も。先生も。あたしも。みんな全部吹っ飛ばしたかってん。飛びたかってん」

153 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33

だが琴美は計画の途中で怖くなって化学部を辞めてしまったらしい。
辞めて正解ということもある。石黒のように。今や福田は微妙だけど。
だが琴美が辞めた後も麗華と金沢は集会の準備を着々と進めていた。
その集会は明日決行される―――『A』という男の名の下で。
男?『A』って男なのか?女なのか?それともサファイアみたいに―――


「琴美、『A』って誰なの?麗華のことか?」

「違うと思う。表で仕切ってるのは麗華ちゃんやけど・・・・・・」

「あのサングラスの男。あれが金沢の兄か?」

「わからん。金沢君のお兄ちゃんって一回も会ったことない」

「一回もないってことはないだろ」

「ホンマにないねん。あの人はいつも家にもおらんらしいねん」

「なんで?遠くにいってもうたん?」

「わからん。でも金沢君、お兄ちゃんには絶対会わせてくれへんねん」

154 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34


「まあいいや。大体のことはわかった」

「明日・・・・・どうするん?」

「もちろん集会をぶっ潰す。琴美も一緒に来いよ」

「え?あたし・・・・・怖い」

「大丈夫。琴美のことはあたしが守るから」

「でも・・・・・」

「琴美は集会を最後まで見届けるんだ」

「・・・・・・・・」

「見届けるんだ」


あたしは震える琴美を抱き寄せぎゅっと抱きしめる。
あたしはこの子に集会の、爆発事件の最後を見せてあげなければならない。
琴美には最後まで事の顛末を見届ける義務がある。
たとえライブ中に右足関節三角じん帯損傷の全治3週間のケガをしたとしても、
松葉杖をついてでもこの騒動のラストを見届けなければいけない。

なぜかそんな思いがあたしの中を支配していた。
全てが終わればきっと琴美は普通の生活ができるようになる。
受験して大学行ってアナウンサーにでもなって―――いや、北海道限定の地方タレントでもいい。
なぜかそんな風に―――楽観的に考えていた。

155 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34


「サキちゃん。あたしは全部話したで」

「うん。ありがとね」

「サキちゃんもあたしに全部話して」

「え?何を?」

「サキちゃんって何者なん?なんでこんなにあたしに優しくするん?」

「なんでって・・・・・友達だからだって言ったじゃん」

「なんで爆弾とか集会のことに関わろうとするん?」

「琴美のためじゃん」

「その言葉をホンマに信じてええん?」


琴美はつぶらな瞳であたしを見つめる。
上目遣い。上目遣い。上目遣い。
嘘をついてるあたしはこの無垢な瞳を直視することができない。
この瞳はこれまで一体何度あたしの心を締め付けてきただろうか。
事件に関わるのは―――琴美のため?自分のため?
いや。どっちとかないんだよ!

156 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34


何者なの?という琴美の真摯な問い掛けに対して
「爆弾の捜査をしている特命刑事でーす」と答えることはできない。
ぽーんと琴美の肩を叩いてあたしは無言で歩き出す。
目と目を合わすことはできない。きっと嘘ってばれてしまうから。

心の中に満ちる灰色の罪悪感。
どんな言葉も琴美を欺くための真っ黒な言葉に思えてしまう。
あれあたしってこんな人間だったっけ?
ただひたすらハロプロが好きだっただけの昔のあたし。
そんなに昔の話じゃないけど・・・・こんな色だったっけ?
今も「ふつう」で生きてるけれど―――これが私なんだろうか?

一つはっきりしていることは、琴美のおかげで事件は解決に向かい―――
あたしのモーニング娘。加入も実現に近づいたってことだ。
あたしと琴美の一方的なギブアンドテイクな関係。テイクアンドテイク?
だからあたしは「ありがとう」なんて気軽に声に出して言えない。
だってあたしは琴美に何も与えてあげることができていないんだから。
だからあたしは無言で―――心の中で琴美に礼を言う。

ありがとう。あなたがくれたすべてにありがとう。
ありがとう。あなたがくれたすべてにありがとう。

157 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34

【DD(ヒヤシンス)  終わり】





→To be continued

158 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:43

【第十四話  YOUR SONG〜DD宣誓〜】

159 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:43

あたしと琴美は、お互いどっちがたくさんの嘘をついてるかなんて
比べて仕方のない事を夜明けまで語ったりはせずに
北12条の交差点で右と左に別れて互いの家路に着く。
あたしも琴美のように思いを全て打ち明けることができるだろうか。
まあ、いつか。いつかね。
すぐじゃないかもしれないけれども―――思いよ伝われ。

気がつくともう夜が明けようとしていた。
とりあえず明日だ。やるしかない。
気合入れて明日に向かって―――やるときゃやるのさ!
その前にあたしは、とにかくちょっと一息入れて
二時間ほど仮眠をとってから学校に行こうと思いベッドに入ったが、
次に目が覚めたのはお昼も過ぎた15時だった。

うわ。
ごっちんやなっちだってここまでの寝過ごしはしないよー
麻宮サキさんよぉ!辻じゃないけどおまえは・・・・・キッズ以下だな!
とか自分に突っ込みを入れるあたし。
もう完全に遅刻だけど、まゆ毛を慎重に書いてから家を出る。

160 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44

あたしは自転車こぎこぎ全速力で学校に向かう。
急がなきゃ―――間に合わんデイ!
琴美の携帯にメールしようと思って気づく。
昨日のやりとりで落とした携帯と手帳は結局見つからなかったんだ。
嫌な予感が背中をぬるりと走る。
だけど されど そして いつか どこか 見つかる日が来るだろう。
自分に無理矢理言い聞かせるようにしてあたしは体育館に向かう。

体育館は―――まるでなっちの卒コン会場のように―――
建物の外から見てもそれとわかるくらい異様な雰囲気に包まれていた。
入り口では教師と生徒がそもさん、せっぱと押し問答をしている。
入れない。クソが。30円軍団か?心の狭いやつらだ。
モーニング娘。のオーディションだって門前払いなんかしないぞ。
どんな子でも、どんな子でも一応形だけでも一次は受けさせる。

どうする?裏口から行くか?まともにあそこから行くか?
まともにねえ。それはまずいか。
うちらが行ったらパニックになっちゃうよ。

161 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44

だが頭で考えるよりも体が先に反応するタイプのあたしは自転車のスピードを上げる。
トップスピードで人垣に突っ込むあたしとあたしの自転車。
倒れる生徒。呻く先生。響く怒号。パニックは頂点に達する。
いや、頂点はないと思うんやよ。
怪我してる生徒を踏み分けて体育館の中に入るあたし。

体育館のステージ上には麗華と琴美の姿が。
あずすーんあずあたしを見るや否や麗華は琴美を連れてステージを去る。
どこ行くんだ―――と言うまでもなくあたしは30円軍団に取り囲まれる。
やあやあ皆さんお久しぶり。謹慎処分は解けたのかい?
それはなんとも羨ましい限りですね。
あたしはあいぼんの謹慎期間がどれくらいになるのか数えようとして辞める。

今やるべきことはこいつらを蹴散らすこと。
今度は手加減しない。
あたしを本気で怒らせたら知りませんよ。知りませんよ。知りませんよ。

分かるよね?

162 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44

「またてめえかコラ!」

「一回死ぬかコラ?」

「みんなと一緒に弾けようぜ!」

「ばーん!ばーん!あはははははは」

「ゲームだよ!ゲーム!なにマジになってんのwwwwwwwwww」

「ん?悔しかったの?」

「必死だなおいwwwwwwwww」


口々に安っぽい台詞を吐く30円軍団。
・・・・・で?っていう。
ばっと学生服の上着を脱いだ軍団連中の腰には例のウエストポーチ。
オン、トゥル、スレ、フォ、ファイベ、ソックス、セブ、エイ、ナイ、テン!
あたしは素早くののたん式のクイーンズイングリッシュで爆弾の数を確認する。
確かに10個。
こいつらを止めればあたしの人生は変わる。

30円軍団を倒したいなぁ。爆弾を全部止めたいなぁ。モーニング娘。に入りたいなぁ。
たいなぁ星人と化したあたしはもう手段なんて選ばない。
ゲームだと言うならゲームでもいい。あたしはこのゲームに勝つ。
たとえハロモニのゲームの高橋愛のように、反則的な手段を使ってでも。

163 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:45

「うおおおおおおおおおおおおお」

「行くぜ!EVERYBODY!!」

「祭りの始まりだぜ!!!!!」


連中は獣のような叫び声を上げて腰のポーチを触る。
どうやら時限装置をオンにしたらしい。
見物に来てた連中にもそれはわかったらしく、
体育館は逃げ惑う人の波でパニック状態に陥る。
関係ないやつらが見物とか来てんじゃねーよ。
お前らが大勢いると軍団がきゃっきゃっきゃってなっちゃうだろ!

とにかくパニックの元になっている10人を止めないと。
10人か。くそおお。多いよ!でも焦るな。
焦らない、もう焦らない。急がば回れ。

これを倒せば開けるハロプロへの道。
わたしは信じて待ってます。良い子にしてました。
白馬に乗ったつんく様。ナビは壊れてないよね?

164 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46

連中は束になってあたしに襲い掛かってくる―――と思いきや、
10人はバラバラに走り出し、パニックになってる生徒達をさらに煽る。
脳裏を走る違和感。何かがおかしい。ホントにこいつらは何が目的なんだ?
目的なんてない?それにしても何かが変だ。
CDTVの恋人にしたいアーティストランキングを見た時に感じたような異物感。
誰かが―――裏で糸を引いている?

一瞬油断したあたしは後ろからドーンとぶつかられる。
でもそれは軍団連中じゃなくて普通の生徒。
きゃあきゃあきゃあとわめきながら走り回る生徒達。
次から次へと湧いて出て、あたしにガンガンぶつかってくる。
全くもう!ねぇいらいらする。さわんなよオル゙ァ!!

生徒達の間隙を縫うようにしてあたしに襲い掛かってくる軍団。
折り重なるようにして体育館の床に雪崩落ちるあたしと軍団と生徒。
したたかに頭を打ったあたしは軽く意識が遠のく。意識がdj
飛んだ!飛んだ!あたしの意識!飛んだーー!!
などとプッチゲームで遊んでる暇はない―――爆弾を止めないと。

165 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46

爆弾を止めないと―――
と思って伸ばした手がウエストポーチに触れる。
デジタル時計は0:01から―――0:00になって―――
もうダメだ。あたしは思わず目をつぶる。
今迄で一番震えちゃった瞬間。
間に合わなかった。死んだ。あたしは死んだ―――

―――と思った瞬間。
時計は再び5:00に戻る。まだ生きているあたし。
そして何事もなかったかのように再びカウントダウンが始まる。
アンコールですか???信じられない。
本当はこんなんじゃアンコールやってあげないんだからね!
という安倍さんの言葉が脳裏をよぎる。
でも麗華が安倍さんみたいに優しいわけがないよね?

166 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47

相変わらずうわわあわああああああとか叫びながら
体育館内を走り回っている他の軍団連中。
一向に爆発しそうにない10個の爆弾。
考えろ。考えるんだあたし。まだあたしは生きている。
生きてこそ―――偶然という成功へのヒントにも会うだろう。

もしかして。
あたしの脳裏には琴美を連れ去った麗華の姿がフラッシュバックする。
もしかして。
あたしは再び倒れてる軍団連中のウエストポーチに手を伸ばす。
成功を手にしてみたいなら、冷静な観察と分析を。
うん?
なんか足んない。なんか足んない―――そこにはピンクの導線がなかった。

167 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47

【YOUR SONG〜DD宣誓〜  終わり】





→To be continued

168 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:30

【第十五話  DD橋】

169 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31

あたしは折り重なる人の波を押し分け体育館の外に出る。
相変わらず30円軍団は暴れまわっている。もうグダグダ。
さゆのソロラジオかよっていうくらいグダグダ。
もうここに用はない。

あいさが、あいさが。いや、違う。
今探さなくちゃいけないのはアイドルでもウォーリーでもなくて麗華だ。
本物の爆弾はあいつが持っているに違いない。でもどこに?
学校全体を爆破するつもりなら学校の中にはいないはず。
それならどこにいるんだ?どこからこの茶番劇を見つめているんだ?
誰か教えてほしいんだ―――偉い人、賢い人教えて!

170 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31


「さあ、琴美。武道場にでも行こうよ」


「あそこなら空気もいいし見晴らしもいい」


あたしの脳内にフラッシュバックする麗華の言葉。
見晴らしがいい。確かに武道場なら体育館も校舎も一望できる。
ベストポジションだ。言うなれば前列中央。エースの指定席。
考えている暇はない。もう今爆発したって不思議じゃないんだ。
そうなる前に―――あたしは先に向かってるロードをひた走りに走る。

171 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31

あたしはグラウンドを一直線に横切り、最短距離で武道場を目指す。
ダッシュ滑走!名古屋キャッソウ!
もしも武道場に麗華がいたならあたしの姿は丸見えなんだけど、
今は裏から回りこんでひっそりと忍び込むなんてことしてる暇はない。
とにかく走れ!走るんだ!とあたしは全細胞に命令を送る。


そして


あたしは武道場の前にたどり着く。
一階はトレーニングセンター。略してレーニン。違う。トレセンだ。
二階は愛情イッポン!の収録だってできそうな広い柔道場。
そして一番上の三階は板間の剣道場になっている。
階段へと急ぐあたしの視界に一人の男子生徒が入ってくる。

172 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31


「なんだ?・・・・・てめえは昨日の!」


メガネザル顔を紅潮させているのは確認するまでもなく金沢(弟)。
あの夜にあたしに叩きのめされ―――そうになった金沢だった。
あたしは金沢に行く手を邪魔されているという煩わしさを感じる前に、
ここに麗華もいるに違いないという確信を得られたことに歓喜する。
思わず狼に「梨華ちゃんのおかげで麗華発見」というスレを立てそうになるくらい。


「いいかげん死ねやおるあっぁああ!」


とか言ってる金沢を軽くワンパンチでのしてあたしは二階へと駆け上がる。
弱い。存在自体が弱い。なにこのガニモニ級の弱々しさ。
この弱さ。こいつは小者だ。このカリフラワー君に話を聞いてる暇はない。
麗華。とにかく麗華を押さえるんだ。
二階には誰もいない。あたしなのんのんのんのんノンストップで三階へと上がる。
三階にはあたしが捜し求めていた麗華が悠然とパイプ椅子に腰掛けていた。

173 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32


「あら。麻宮さん。意外と早かったわね」

「麗華!爆弾はどこだ!」

「爆弾?・・・・・あら、琴美のことを探しに来たんじゃないの?」

「うるせえ!さっさと爆弾の場所を教えろ!」

「あらあら。やっぱり琴美よりも爆弾の方が大事みたいよ?」


ちちんぷいぷいと横を向いてそう言う麗華の視線の先から現れる琴美。
更衣室から出てきた琴美は手に携帯電話のような物を持っている。なんだアレ?
琴実の顔色はまるでファンクラブから来た封筒の色のように真っ青。
そのつぶらな瞳は真っ直ぐにあたしを見つめる。
あああ、まただ。またあの視線があたしの良心を締め付ける。

屋上で、化学準備室で、そしてそしてそして・・・・・・
いつの時もあたしを真っ直ぐにみつめてきた琴美の黒目勝ちな瞳。
私は今もあの頃を―――忘れられず生きてます。

174 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32


「サキちゃん・・・・・」

「琴美・・・・・」

「やっぱりサキちゃんは爆弾のことの方が・・・・」

「違う!そんなんじゃない!」

「サキちゃん、警察の人やってんね」

「!」

「ゴメンな。サキちゃんの生徒手帳と携帯、見せてもろたわ」


そう言う琴美の横から麗華がポーンとあたしに携帯と手帳を投げる。
昨日の夜、化学準備室で失くした携帯と手帳。
ご丁寧にも桜田門の御印の入った特命刑事ご用達のDD刑事グッズ。
よりによって麗華に拾われていたとは。

そんなもん拾う前に小イシカワでも拾えよという言葉をあたしは飲み込む。
これはもう、まとめサイトを作られるまでもなく有罪確定ですね。
「素敵だなと思って・・・・・」とかいう言い訳はおそらく通用しないだろう。

175 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32


琴美はあたしに向かって真っ直ぐ近づいてくる。
あたしは一歩も動くことができない。
琴美はゆっくりと左手を伸ばす。
ああ、そういえば―――この子は左利きだったっけ。


「サキちゃん。嘘って言うて」

「あ・・・・・・」

「警察の人なんかやないって言って」

「いや・・・・・・・」

「爆弾なんかよりあたしが大事って言って」

「あたしは・・・・・あたしは・・・・・・」

「サキちゃん。あたしの目を見て」

176 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32


あたしは琴美の目を見ることができなかった。
差し伸ばされた琴実の左手に手を指し伸ばすことはできなかった。
「話せば長いけど聞いてほしい」とか言いながら
学校じゃ教わらない経験のエトセトラを話すことはできなかった。
だってあたしは―――あたしは―――あたしは―――
DD刑事だったから。

あたしは琴美が差し出した左手を無視する。
あたしはそこに手を差し出すことはできない。
あたしはこれ以上琴美に嘘をつくことはできない。

琴美は泣きながら武道場の階段を下りていった。
あたしはそんな琴実の後姿を見つめながら、
化学実験室で琴実と話した日のことを思い出していた。
「爆弾事件とあたしとどっちが大事?」と琴実が言ったあの日あの時。

願い事一つ叶うなら―――あの頃に帰りたい。

177 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32

【DD橋  終わり】





→To be continued

178 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35

【第十六話  「ずっと DDでいいですか」】

179 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35


「さあ、麻宮さん。あなたとのお遊びもここまでよ」

「遊び?」

「そう。楽しかったでしょ?」

「てめえは・・・・・絶対許せねえ!」

「許せない?あらそう。ふふふ」

「爆弾はどこだ」

「ふふふ。特別サービスで教えてあげようかな。あたしを―――倒したらね!」

180 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35

あずすーんあずそう言うや否や麗華は木刀であたしに斬りかかってくる。
麗華を倒したら爆弾の場所を―――
秘密の場所を全て教えてあげる?ALL NIGHT LONG?
最高の条件に細心のサービスですね。そうだそうだそうだ。全くその通り。

まるでコレオグラファーのダンスのように本格的な麗華の体捌き。
こいつはきっと素人じゃねーな。きっと既にどこかの弱小芸能事務所に―――
とか思う間もなく突き突き突き突き突きをくーだーさーい。
突き突き突きつを無限大ーとロボキッスのような突きの嵐。

麗華は突かず離れず絶妙の間合いを保つ。
あたしは離れてヨーヨーを使うか近づいて空手を使うかで迷う。
間違ったってしょうがないでしょ。迷ってたって始まんないでしょう。とは言ってもね。
―――剣道三倍段。ふとそんな格言が脳裏をよぎる。
三倍という言葉にいまだに何度でも反応してしまうあたしはDD。

181 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35

あたしは必死で動き回るが麗華はなかなか間合いを空けてくれない。
保田のスケジュールくらいぽっかり空けばヨーヨー使えるのにー。
そういや麗華はあたしが空手やってるってこと知らないんじゃ?
あたしは大きく一つフェイントを入れてグッと間合いを詰める。
麗華の襟をつかみ、膝蹴りを麗華の鳩板、じゃなかった鳩尾に入れるが―――
固い!―――右膝に走る激痛。あわてて再び間合いを空けるあたし。


「あら麻宮さん大丈夫?お皿が割れたんじゃないかしら?」

「ふん。こんなのへちゃらへいけ」

「あらあら。血が出てるじゃないの。あたしがその血、止めてあげようかしら?」

「おう。よろしくよっすぃー」

「いいわよ。あなたの血の流れを―――息の根ごと止めてあげる」

182 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36

薄い笑顔でさらっと過激なことを言う麗華。
それで上手いこと言ったつもりかよ。
これ見よがしにゆっくりとめくり上げあられた麗華の制服の下には分厚い防具。
あんなの仕込んでたのか?矢口のブーツの底より厚いぜ。ずるい女。

あたしはひざをさする。大丈夫。折れちゃいない。いや、折れても戦う。
起きてるのか寝てるかわかんないほど、遠く霞みそうな意識を集中させる。
右手。左手。右足。左足。目。腰。まゆ毛。動け。顔中。無理。
ハロモニのロケくらい集まりが悪いあたしの各パーツからの反応。
くそ。全員集まれよ。どうせ暇なんだろ?来い。立て。もうこれが最後だ。

苦労なんて覚悟していた。最後笑えるなら。
これが終わればあたしはモーニング娘だ。
女の子なら誰もが思う―――ハッピーエンドストーリー。

183 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36

あたしは一瞬油断した麗華から一歩間合いを開く。
小さな一歩。でも一歩一歩でしか進めない人生だから。立ち止まりたくない。
あたしは斜め後ろに体を投げ出して
サイドスローでヨーヨーを麗華の眉間に放つ――――が

間合いをグッとつめながらあたしの横に回りこむ麗華。速い。
ヨーヨーの鎖はいつの間にかじゃらじゃらと麗華の木刀にからめとられていた。
鎖に引っ張られて振り回されるあたし―――板間に転がる。痛い。
「く」の字のように少し丸まったあたしに「を」の字のようにのしかかってくる麗華。
それなんてハロモニ人文字選手権?


「あーら麻宮さん、あたしが油断したとでも思ったのかしら?」

「油断なら―――とっくにしているわ!」


あずすーんあずそう言うや否や
あたしは怪我をした膝で麗華の股間を思いっきり打つ。
急所に不意討ち。卑怯だが「わたくしらしくないでしょ?」とか言ってる場合じゃない。
まさかここには防具なんてしてないだろ、と思いきや―――
固い!またもや固い感触。股間に何を入れてるんだ。お前は亀井か!

184 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36


「あなたもしつこい人ね」

「お前・・・・・ここにも防具を・・・・」

「防具?なーんのことかしらねー」


麗華さんったらまったくずるいこといっぱいする人ね。
自然じゃないところがなお悪よね。
あたしは巴投げの要領で麗華を後ろに投げようとする―――が
ヨーヨーの鎖がからまり上手くいかない。
麗華は完全にマウントポジションを取って木刀をあたしに向ける。
がばああああっと高く振り上げられる麗華の木刀。
この体勢では絶対にかわせない。

万事休す?いやいやいやいやいやいや。
諦めたらそこで試合終了ですよ?
麗華を倒す。倒すんだ。
平凡なわたしにだってできるはず。

185 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36

あたしは上体を少し浮かせて麗華の木刀を左の肩で受け止める。
聞いたこともないような音がして鎖骨が折れる。
でもこれは℃-uteが売れないってのと同じくらい想定の範囲内。
こんぐらい平気よ平気。今度はあたしの番。
ダメは承知でも待ってるだけじゃ辛いからねー。
逆転サヨナラ満塁ホームラン目指すっきゃない!

今度こそ本当に油断した麗華の鼻っ柱に思いっきり頭突きを見舞う。
くるりと安倍と松浦の力関係のように逆転する二人の姿勢。
今度はあたしが上になる。あたしは血混じりの唾を麗華の目に吐きつける。
もう手段なんか選んでられるか。握手会だろうがバスツアーだろうがなんでもやるぜ。


「下品ね・・・・ホント卑しい子」

「うるせえ!喧嘩に上品も下品もあるか!」

「あんたの唾、臭いのよ」

「てめえ・・・・・」

「てめえの・・・てめえのじぇんぞんじゃいがうぜえええええんだよ!」

「うるせええ!」

186 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36

あたしは噛み噛みで捨て台詞を吐き捨てた麗華の顎を思いっきり正拳で打つ。
さすがにここには防具は入れてないみたいだな。梨華ちゃんみたいに。
麗華はもう観念していたのだろう。
おいおいと声を上げて泣きながらあたしの拳に打たれるままになっていた。
泣くんだね。こういう場面では。すごいのね。あきれちゃうわ。
とか思ったその瞬間―――
あたしの首に強烈な一撃が入る。後ろから。誰だ?誰だ?

右膝。左肩。首。つんくの言うところの「ナイス谷間!」。全部痛い。
痛くて痛くてたまらない部分を全部押さえながらあたしは転がりまわる。
ヨーヨーの鎖を引く。こっちこいあたしの相棒。
視線を上げる。道場の入り口には見たことのない男が一人立っていた。
今度ばかりは女だけが持っているすごい直感が働くあたし。

このメガネザル顔にカリフラワーヘアー。似てる。
さっきあたしが一階でKOした元化学部の金沢に。
こいつがきっとこの事件の首謀者。
『A』ってのはやっぱり―――兄沢の『A』だったのかな?
当たり前だけど下半身は露出してないのね。AAみたいに。
攻撃を恐れて身構えるが、兄沢はあたしに見向きもせずに麗華に近寄る。

187 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37


「麗華!麗華!」

「う・・・あ、あきらさん・・・・」

「起爆装置はどこだ?お前が持ってるんだろ?」

「こ、琴美・・・琴美が・・・」

「チッ!あいつが持っていったのか!」


そういや兄沢の名前は「明」だったな。やっぱり「明」の『A』なのか。
とか思う間もなくあたしの思考は麗華の言葉に遮断される。
琴美が―――そういえば手に何か持っていた―――
琴美が起爆装置を持ってるって?マジかよおい!

時限爆弾じゃなくて起爆装置で爆破させるタイプなのか?
あたしはよろよろと階段の方へ向かう。
琴美を―――止めなきゃ。琴美は死なさない。あたしが守る。
あたしが守らなきゃなんだ。
誰かがやるんじゃないんだ。

188 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37


「お前が例の刑事か」

「うっせえ!どけ!」

「通すかよ。お前はここで死ね」

「ヘッ!死ねとか言ってんじゃねーよ、バーカ」

「そんな体で何ができるんだよ!」


兄沢君は木刀を手にあたしに襲い掛かってくる。
へっ。へったくそ。こいつは格闘技の経験ないな。麗華の方が強い。
だがあたしの体はそれ以上に動かなくなっていた。
もうスポフェス終わりみたいにクタクタでさ。疲れたよ。ももにきているよ!
でも攻撃しなきゃ。そう思いヨーヨーの鎖を引く。
だがヨーヨーは麗華の木刀とからみあってなかなか言うことを聞かない。

細くもつれた糸をほどくみたいに、
あたしはヨーヨーの鎖を操る―――鎖が途切れぬように。

189 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37


「何やってんだこらああああ!!」

そんな風に鎖を押したり 引いたりしてるから―――裏目裏目に結果が出たり・・・
兄沢の木刀があたしの背を打つ。いてえ。畜生。
あたしは再び道場の床に這い蹲る。今度こそダメだ。立てない。
痛いんだよ。右の膝も左の肩も。頭も。背中も。特攻服姿のヲタも。

兄沢はご丁寧にもあたしのヨーヨーの鎖を切る。
コロコロとかつての辻の体型のような音を立てて入り口の方へと転がっていくヨーヨー。
ムチムチ?それはえりりん。そんな冗談を言う気力ももう残っていなかった。

もうダメだ。空手も使えない。ヨーヨーも使えない。6期もアウェイじゃ使えない。
あたしの人生八方ふさがり。
あーあ。なんでこんなんなっちゃったんだろ。
あたしはただモーニング娘。に入りたかっただけなのに。
モーニング娘。が好きだっただけなのに。

でもそれももうお終いみたいね。
結局―――永遠の片想い。

190 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37

【「ずっと DDでいいですか」  終わり】





→To be continued

191 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47

【第十七話  気がつけば DD】

192 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47

兄沢が近づいてくる。
そしてそれとは異なるもう一つの足音。誰だ?あたしは視線を上げる。
気がつけばそばにグラサンが居た。
鎖の切れたあたしのヨーヨーを片手に持った、大きなサングラスの用務員。
こいつは―――確かあの夜、金沢の弟と一緒にいた―――


「お楽しみのところ悪いが・・・邪魔するぜ」

「誰だお前は?」

「名前なんてどうでもいいだろ。しがない一人の用務員さ」

「そうか。お前が明夫の言ってた・・・・・どうした。爆弾は全部校舎にセットしたのか?」

「お前が金沢明だな。探したぜ」

「お前・・・・・何者だ?」


なんだか様子がおかしい。
なかさきちゃんのビジュアルのように激変する周囲の空気。
兄沢は懐からほいっと拳銃を取り出す。おいおい。マジかよ。
だがサングラスの用務員は拳銃を見ても全く動揺した様子はない。余裕綽綽。
あたしのヨーヨーをいじりながら一歩一歩兄沢に近づく。
兄沢は何も言わずにいきなり用務員に発砲する。
だが―――そこいたはずの用務員は兄沢の視界から完全に消えていた。

193 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47

―――上だ!
と思わずあたしは心の中で「さとだや!」と同じようなテンションで叫ぶ。
用務員は空高く舞い上がり―――そしてヨーヨーを放つ。


ヨーヨーは―――光の矢となって―――兄沢の喉元にめりこんだ。


「こはっ」とミラクルなうめき声をあげて卒倒する兄沢。
床に大の字になった兄沢はピクリとも動かない。
そんな兄沢に対しても用務員は全く油断するそぶりを見せずに
慎重に近づき、兄沢の両手にカチャリと手錠をかける。
手錠?ってことはこいつは・・・・・

194 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47

「お前・・・・もしかして公安の・・・・・」

「まあな。半年前からこの金沢明を追っていた」

「お前も金沢兄弟の仲間じゃなかったのかよ」

「そんな振りをしてたのも金沢兄を誘い出すため」

「誘い出す?」

「この金沢って男は用心深い男でね。なかなか姿を現さなかった」

「それで・・・・・おとりになって・・・・」

「そう。『集会』をえさに金沢を誘い出したってわけだ」



唖然とするあたし。
こいつが公安の刑事だったのか。
もしかしてあたしはずっとこの男の掌の上で踊らされていたのか?
なんか急に体の力が抜けるあたし。まあいいや。結果が全て。
逮捕できたからOKだもん!どうもこうもないっすよ。

それにしても―――

195 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47

「お前、本当に何者だよ?」

「だから公安の―――」

「スチューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」

「1993年3月15日。さらに一言付け加えるのなら―――」


男はそう言いながら大きなサングラスを外す。
眉間には銃創のような派手な傷。意外と若い。
男は安倍なつみのような
無菌的な、人工的な―――とびきりの笑顔であたしに諭す。


「正確に発音するなら『ストューカス・ロビン・翔子』
より正確に言うなら、今の芸名は『岡田・ロビン・翔子』だ」

「!」

「日本語は正しく―――役不足オーケー?」

196 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48

「そんなことよりも」

「お前・・・・・」

「琴美ちゃんのことはいいのかな?」

「あ!」

「おいおい。忘れてたのか?」


あたしはすっかり琴美のことを―――そして爆弾のことすらも―――忘れてた。
なんてこったい。
忘れてる場合じゃない。琴美は起爆装置を持って行ったんだ!
グラサンは大きなポカをしちゃった私をさりげない声でつつんでくれた。
ある意味、優良刑事だな。マジでUFAとゼティマに見て欲しい。


「ここは俺が片付ける。お前は琴美ちゃんのところに行ってやれよ」

「あの・・・・その・・・・爆弾は・・・・・」

「10個とも俺が片付けた。琴美が持ってる起爆装置を押しても何も起こらんよ」

「ありがと!」

197 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48

★ ★ ★ ★ ★


サキは礼もそこそこによたよたと武道場の外へと走り出る。
男は金沢兄と麗華をひとまとめにして部屋の隅に置き、
階下に下りていくが―――そこにあるはずの金沢弟の姿はなかった。
男は携帯電話を取り出し上司らしき男に報告を入れる。


もしもし。金沢明を確保しました。

ええ。ええ。なかなか用心深いヤツでしたが、なんとか。

それが弟の方はまだ・・・・・至急手配お願いできますか。

いやいやいや。油断したつもりはなかったんですが・・・・・

え?例の特命刑事?・・・・・・・・・さあ。なんとも。

個人的には生徒会長の方が良いと思いますけどね・・・・・。


★ ★ ★ ★ ★

198 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48

あずすーんあずあたしはグラサンに礼を言うや否や校舎の方へ駆け出す。
膝は痛いわ、背中は痛いわ、肩は折れてるわ、村上は引退するわで
あたしは身も体もぼろぼろだったけど、走らずにはいられなかった。
爆弾魔は逮捕したし、爆弾は全部抑えた。
なのに、どこ行ったんだよー琴美!
琴美を救わないとこの事件は終わらない―――そんな気がしていた。

あたしは琴美を救うことができると信じていた。
そして―――
全てが終わればモーニング娘。に入ることができると信じていた。
一点の曇りもなくそう信じていた。

この事件が終われば―――
あたしにも琴美にも―――
幸せな未来が待っていると信じて疑わなかった。
これであたしが次のシングルのセンターだったら言うことはないんだけど―――
幸せの途中って自然すぎて少しずつ贅沢になってるかも?

199 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48

【気がつけば DD  終わり】





→To be continued

200 :名無し娘。:2006/11/17(金) 11:29
DD刑事生きてたー!!
すんごいうれしいぜ

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0ch BBS 2006-02-27