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紺野あさ美の黒い日記帳(二冊目)

1 :紺野あさ美:2003/09/15(月) 14:57
前の日記帳はページがいっぱいになったので、豚の脱退決定を
記念して二冊目の日記帳を買った。
さあ、高貴な私が娘。を制する物語を描くとしようか。

ちなみに前スレはここ。私の活躍をとくと見るがいい。

紺野あさ美の黒い日記帳
http://www.topsites.jp/test/read.cgi?bbs=morning&key=1002493474

180 :紺野あさ美:2005/09/26(月) 11:01
昨日の武道館。
ファイナルでもなんでもないのに、なぜかお客さんが一杯いて
すごく盛り上がった。

不思議だ。
地方に行けば狭い会場なうえ二階席に人が居ないこともあるのに。
チケットだって売り切れてない。ただで配ってるって話も聞く。

最近、ステージに立つたびに思う。
下手糞な私の歌なんか、聞きたい人いるの?
醜い私の姿なんか、見たい人いるの?

前座で出てきた子供たちのほうが、私なんかよりずっと可愛いし
歌も上手いしダンスも綺麗。
なんであの子達が前座なんだろう?
私が代わってあげたいよ。

華やかなステージの上で輝く私。
でも、それはまやかしの私でもある。
まやかしのヴェールにくるまって、大勢の人を騙している。

私には判る。
きっと近いうちに、ヴェールを引き剥がされるときが来るだろう。

そして、その時こそ私は解き放たれ自由になるのだ。

181 :紺野あさ美:2005/09/27(火) 12:09
昨日、石川さんから突然メールをもらった。
一昨日の武道館を観に来ていてくれたらしい。

「紺野、良かったよ、とっても輝いていたね。もっともっと頑張りなよ」

……この人のポジティブさにはホトホト呆れてしまう。

青森のデパートやら三重の町おこしやら一生懸命ドサ回りしても
子供たちよりCDは売れず、ましてやその子供たちの引き立て役
としてお客さんに歓迎されても居ないイベントに参加して、着たくも
ない足の出る服着せられて歌いたくもない恥ずかしい歌を歌っ
て、それでもまだ一生懸命に耐えて頑張っている。

頑張ればなんとかなる、って考え、いい加減に捨てたら?

何をどうしようがダメなものはダメなの
世界の流れはもう貴方には傾いてなんか来ない。
それが判ってて、どうして頑張るの?無駄だよそんなの。

でも、そう思いつつも私の予定もぎっしり。
新曲のレコーディング、ダンスレッスン、コンサート、ハロモニ…
…相変わらず疲れる。眠くて仕方がない。
自分で自分を縛りつけ、鞭で叩いているような自虐的感覚。
こんなのいやだ。
早く楽になりたい。でも楽になったら私に何が残るのだろう。

パンドラの箱を開放したら、そこには希望が残ったという。
私のパンドラを開けたらそこには何が残るのか、そのうち試して
みるのもいいかもしれない。

182 :紺野あさ美:2005/09/28(水) 12:10
同じハロープロジェクトの可愛い後輩。石村舞波ちゃんが引退するらしい。
表向きの理由は、学業に専念したいから、だそうだ。

……ま、気持ちは判る。

学校から帰って毎日ダンスレッスンして先生に怒鳴られて
レコーディングして土日はコンサートにイベントに握手会。
週末どころかお正月も夏休みも無い毎日。
それでいてお給料は月に五万円。
そりゃあ誰だって嫌になるだろう。
まともな神経だったらまず耐えられないに違いない。
本人もそうだが、まず親御さんが我慢できなかったんじゃないかな。

でも……じゃあ、今ここにいる私は何?
週末地方公演行って、東京に帰ってきてそのまま徹夜でダンス
レッスン、朝になったら学校行って、夕方また集まってレッスンの続き
と雑誌の取材、テレビの収録……お休みどころか寝る暇も無い。
我ながら良く生きていられたなあと思う。

華やかなステージ。きらびやかな衣装。誰もが憧れるトップアイドル。
でもそんなものはうわべだけ。実際は肉体と神経をすり減らしていくだけの
延々と続くタイムサイクルの繰り返し。
そうと判っては居ても、ステージから降りることが出来ない弱気な私。
早く降りたい、楽になりたい。
だけど一度降りたらもう二度とあそこには戻れない。
でもいつかは誰かに引き摺り下ろされるかも知れない。
そんな恐怖感にさいなまれながら、今まで生きてきた。

その点、舞波ちゃんは立派だ。誰かに引き摺り下ろされる前に自分から降りた。
彼女は偉い。勝ち組だ。

神様お願いします。彼女に幸せを下さい。

そして、できたら弱気な私にも、自分から飛び降りられる勇気を下さい。

183 :紺野あさ美:2005/09/29(木) 09:56
昨日は久々に時間があったので、パソコンを使ってあちこち
覗いてみる。
ハロコンのこと、香港のこと、武道館のこと、そして新曲のこと。
賛否両論、色々な意見があってとっても面白い。
夢中になって読んでいるとついつい時間を忘れてしまう。
ふとその中で、特に大きい見出しになっている記事を見つけた。

「こんこんのことだからこんなに言ってるんだぞ」

……ディスプレイの前で思わず苦笑いしてしまう。
私のことを好いてくれるのはとっても嬉しい。
だけど、この人は本当に私のことを好きなんだろうか。
ひょっとしたら私の写真が欲しかっただけなんじゃないの?
または、係員に制止された腹いせに思わず言っちゃったとか?

もし本当に私のことを好いてくれるなら、写真ぐらい手渡しして
あげたっていい。私のためにわざわざ香港まで来てくれたんだもの。
それぐらいしてあげたい。
この人は、もし私が目の前に居てもこういう事を言うんだろうか。
なんだかそっちに興味がある。

修正されてホクロも傷もシミも無い美しい私の写真。
でも、こんな偽物になんの価値があるんだろう。
写真の私は私であっても私じゃないのに。

いつか、みんなの目の前に本物の私をさらけ出したい。
その時に、この人を含め果たしてどういう反応があるのか、それを
試してみるのも面白いだろう。

184 :名無し娘。:2005/09/29(木) 12:02
時事ネタキター!

185 :紺野あさ美:2005/09/30(金) 10:11
今日は新曲の振り付けをやり直すって事で急遽呼び集められた。
こないだ武道館で発表したばっかりなのに差し替えなんて。
いったい何を考えているんだろう?

うちらのダンスレッスンは相変わらずだ。
出来る子はさっさと覚えてしまいあとは適当に遊んでいる。
出来ない子はいつまでたってもおいてけぼり。
私とかさゆは出来ない方だからいつも苦労する。みんなが
帰ったあと夜中まで居残りさせられて泣きそうになったこともあったっけ。
特に問題な小春ちゃんは先生が付きっ切りで教えている。仕方がない
ことだけど、これもダンスレッスンが進まない一つの原因でもある。

そうこうするうちに、隣にベリーズの子たちがやってきた。
舞波ちゃんの卒業式のリハをやるようだ。
何気なく横目で眺めていて、驚いた。
ダンスの能力に個人差があるのは仕方が無い。だけど、あの子達は
互いに教えあっている。出来る子は出来ない子に。出来た子も互いに
確認しあって足りない部分を補いあっている。
休憩時間も、あの子達は八人で輪になってお弁当を食べて、
学校のこととかお菓子の事とか楽しげに語り合っている。
一人で読書したり、居眠りしたり、会話すらないうちらとは大違いだ。

昔、矢口さんがよく言ってた。
「モーニング娘。って家族も同様だから」
今のうちらに、それが当てはまるだろうか?私も含めみんな勝手なこと
しててバラバラで、話し合いどころか冗談すら言い合わない。それが
果たして家族同様と言えるんだろうか?

こういう事に関してリーダーや愛ちゃんやれいなは呆れるほどに無関心だ。
オマメちゃんは唯一気を配ってくれるけど、藤本さんあたりはそれが
気に食わないようでいつも怒ってばかりいる。飯田さんや石川さん、辻ちゃん
加護ちゃんがいた頃はまだこれほど酷くはなかった。いったいいつの間に
こんなになってしまったんだろう?

なんとなくだけど私には判る。
今のうちらは、歌唱力とかCD売り上げとか以前の問題で、ベリーズの
子たちに負けている。
例え今はうちらが上でも、近い将来間違いなくあの子達に追いつかれ、
そして追い越されるだろう。

もしも出来るならばだけど、あの子達に追い越された、負けたと判った
その瞬間に立ち会う事だけは、したくはないものだ。
なぜなら私の「モーニング娘。」は無敵なのだから。
誰かに負ける前に、無敵なままで終わったほうがむしろ幸せだろう。

186 :紺野あさ美:2005/10/04(火) 12:59
大阪から帰ったばかりなのに、今度は文化祭のリハーサルだ。
さして広くもない部屋にハロメンが集合。
いつもの事ながら時間が無い。
台本読みしても台詞がなかなか頭に入らない、気ばかりが焦る。

「早くしなさい!これくらいすぐに覚えられるでしょ?」
見ると、ベリーズの背の高い子が舞台監督さんに怒られている
のが判った。
スタッフの人はみんないい人ばかりだけど、時間が無かったり
焦ってくるとどうしても気が高ぶり声も荒くなる。

それに朝からリハ室に詰めている私たちと違って、あの子達は
学校がある。夕方過ぎからが実質の練習時間だ。
しょうがないことだけどリハはどうしても遅れ気味になるし、そう
なるとますます時間が無い。

やがて休憩時間になった。
監督さんが居なくなったとたんに、堰を切ったようにわっと泣き
出してしまうベリーズの子。
他の6人が周りを囲んで一生懸命慰めている。

「じゃあさ、熊井ちゃんの出番のとこ、みんなで練習してみようよ」
一番小さい子がその場を仕切る。
休憩時間なのに、立ち上がって自主練習を始める彼女たち。
背の高い子も涙を拭きつつ、もう一度台本に食らいついて行く。
手足の動きを見る子、台詞をチェックする子、全体を仕切る子…
…誰に言われるでもなく自然に役割分担が出来ているようだ。

やがて、見違えるように動きがよくなった彼女。
「よしよし、良く頑張ったね。偉い偉い」
小さい子が背伸びしながら大きい子の頭をなでる。
さっきの涙はどこへやら、嬉しげに微笑む大きい子。

「ねえねえ、もうあんまり時間ないけどお菓子食べない?」
「わー、食べる食べるぅ」「りーにもちょーだーい」
桃子ちゃんの発言で一気に場の雰囲気がほぐれた。
見ていてとてもほほえましい。

そういえば、こないだの名古屋コン。リーダーが怪我をして急遽
ダンスのパートが変更になった。
これこそ本当に時間が無くてまったくのやっつけ仕事になってしま
ったけど、最後に夏先生が呆れながら言った。

187 :紺野あさ美:2005/10/04(火) 13:00
「あんたたち、チームワークってもん理解してる?」

先生の言葉に早くもそっぽを向く藤本さんとれいな。
相変わらず我関せずの愛ちゃん。
何とかしたくても自分の事で精一杯なあたしとかさゆ。

だって……時間ないんだからしようがないじゃん……
彼女たちの言葉が見えるようだ。

「あんたたちは十人全員で一つのチームなんだよ。自分
さえ良ければいいってもんじゃないんだ。昔は……」
途中まで言いかけて、口をつぐむ夏先生。

それ以上のことを口に出すのは、さすがにはばかられたのか
時間が来てリハーサルはそこで終わってしまった。
とっとと休憩に入ってしまう私たち。
パート変更は完全には出来てない。不安を抱えたまま本番に突入。
本当にこれでいいんだろうか?

昔のモーニング娘。にあって、今のモーニング娘。に無いもの。
そして、
今のモーニング娘。に無くて、今のベリーズ工房にあるもの。

夏先生の言いたいことはなんとなく判る。
だけど、どうしようもないこの現実。

この前も思ったけど、うちらはあの子達に確実に負けつつある。
いや、それ以前に勝ち負け自体に興味が無い今の姿勢をなんとか
しないといけないのかも。

いっそ娘。の看板をかけて、あの子達と真剣勝負をしてみたい。
それで、もしうちらがあの子達に負けたら、その時こそ、
私たちが本当に一つのチームとして生まれ変われるんだろう。

188 :紺野あさ美:2005/10/06(木) 15:04
Berryz工房ってどんなユニットなんだろう?
文化祭のリハ事件があって以来、かなり気になり始めた。

そういえば私、あの子達のこと殆ど知らないや。
ずっと以前にキッズとして入ってきて、いつの間にか
ユニットが出来ていて。

でもハロコンとかスポフェス、HPASぐらいでしか競演しな
かったし、楽屋も別で良く判らない。
個人の名前も殆ど知らない。辞めた子が舞波ちゃんだって
事と、やたらキャピキャピしていて声のカン高い子が桃子
ちゃんだって事ぐらいしか……

そういえばオマメがハロモニであの子達と競演した時に、
桃子ちゃんの名前知らなくて、あとでマネージャーさんに
突っ込まれてたっけ、ふふふ。

私は思い切って、事務所に転がっていたビデオを借りてきた。
家に帰って早速再生してみる。
中には今年のイベントとか握手会の様子が収められていた。
「これは……」
冬の北海道やら真夏のよみうりランド、大人でも過酷だと思われる
環境でも、笑顔で頑張っている彼女たち。
握手会の途中で気分が悪くなって退場した子がいれば、他の子達が
物まね大会とかやって必死に時間を稼ぐ。
8人もいるんだから、1人ぐらい欠けたって握手会を続けてしま
えばいいのに、その子が戻ってくるまでひたすら頑張っている。
「健気だなぁ……凄いなぁ……」

そういえば、私たちもこの間、娘。として初めて握手会をやった。

189 :紺野あさ美:2005/10/06(木) 15:05
でも東名阪だけでいずれも冷房の効いた建物の中だったし、移動が
手間だっただけでこの子達に比べれば全然楽だ。
でも、私達は文句ばっかり言っていた。
「暑い」「ダルい」「お弁当がまずい」「差し入れ無いの?」…
…一日こっきりの握手会ですらこんな調子。まったく困ったものだ。

やがてビデオも終わりの方になってきて、私はある事に気がついた。
イベントの終盤、キャプテンと呼ばれている小さい子が音頭を取っ
て、こう言ったのだ。

「これからも応援、よろしくお願いします」

言いながら8人全員で深々と頭を下げる。
そしてイベントが終わる。もしくは握手会に移行する。

私はビデオを早送りして、他のイベントもチェックしてみた。
上の挨拶は、他の会場でも必ず出てくる。ライブでも同じ。
イベントと握手会が続けてある時は二回言っている。握手会が
二回まわしの時は合計三回も。

お客さんだって人間だ。ステージの上からとはいえ、ここまで
頭を下げられれば少なくとも悪い気分はしない。
例え曲やなんかにあんまり興味が沸かなくとも、できればもう
一度応援に行ってやろう……そう思うはずだ。

私はビデオを止めた。
ため息をつきながらリモコンをテーブルに置く。

190 :紺野あさ美:2005/10/06(木) 15:06
……それじゃあ、私達はどうなのか。

ライブの台本には最後の挨拶として「また私達のコンサートに
来てね」と書いてある。
でも、ここまで真摯な態度で挨拶なんかしたことあっただろうか?

飯田さんがリーダーだった時は、挨拶だけは本当にうるさかった。
「どんなに眠くても疲れていても、スタッフさんへの挨拶だけは
ちゃんとしなさい」って。
私やマコっちゃんも怒られた。六期の子達も怒られていた。
藤本さんも怒られたけど、反抗していっつも喧嘩していた。

飯田さんが居なくなって、誰も注意する人が居なくなった。
移動のバスから降りる時とか、差し入れもらった時とか、一言ぐらい
声をかけるとかすればいいのに。今ではみんなてんで無視。
でも私も他人のことは言えない。疲れていたり眠かったりしたら、
気がつかないままきっとみんなと同じ事をしているだろう。
ましてやお客さんに対してなんて……

あたしは立ち上がった。コーヒーを入れ直して机に戻る。

初心忘れるべからずとはよく言ったものだ。
私達はいつの間にか、当たり前だけど一番大切な事を置き去りにして
しまっている。

191 :紺野あさ美:2005/10/06(木) 15:09
時間が無いから?仕事で疲れているから?
それともトップアイドルの驕り?
いや、何を言おうとも今は単なる言い訳にしかならない。

あの子供達に、それを教えられるなんて……

私はケータイを開いた。
オマメとマコっちゃんとさゆにメールを打つ。
「明日、ちょっと相談したいことがある、と……よし、送信」

ひょっとしたらダメかも知れない。もう手遅れなのかも知れない。
だけど、出来る限りの事はしてみよう。
同じ負けるにしても、もうちょっとは頑張ってみたい。
座して死を待つだけなんて、絶対にイヤだ。

私は、いま送信したメールの返事を待ちながら、
ビデオの巻き戻しボタンを押した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

192 :名無し娘。:2005/10/06(木) 21:29
新しい感じだな

193 :紺野あさ美:2005/10/12(水) 18:17
翌日。
私の家にマメ、マコっちゃん、さゆの三人がやってきた。
文化祭の後に入っていた雑誌の取材が、相手の都合でキャンセルになったのが幸いだった。
もしそうでなければ夜中しか時間が無かったに違いない。

食事を簡単に済ませたあと、テーブルの上には暖かい紅茶とお菓子。
各自が持参した寝巻き姿の私たち。
最近のテレビのこととかアクセサリーの話に花を咲かせる。
まるでお泊まり会のような、なごやかな雰囲気。

頃はよしと見て、私は話を切り出した。
ベリーズの子たちが映っている例のビデオも見せる。

いくらも話さないうちに、オマメはすぐに賛同してくれた。
彼女は、元来私と同じような疑問を持っていたようだ。
マコっちゃんは途中まで首をひねっていたけど、初心に還るべきと言う
話の大筋については判ってくれたようだ。
そこで、さゆが口を挟む。
「でもそれって、私たちが自覚すれば解決する問題かな?」
さすが。
この子はボーっとしているようで実は鋭い。

「そこなんだよねえ、実は」
みんなの顔を見渡してため息をつく私。
今のところの障壁は、こういう事に無関心なリーダーと愛ちゃん、そしてれいな。
無関心どころか怒る藤本さん。ここらへんだ。
彼女らの協力なくしてチームワークの向上なんかできるはずもない。

「上田さんにお願いして、言ってもらおうか」
オマメが髪の毛をかき上げつつ言う。

194 :紺野あさ美:2005/10/12(水) 18:18
確かにマネージャーさんから諭して貰うのは正統派なやり方ではある。
しかし、夏先生の言葉にすら耳を傾けなかった人たちなのに、今更そんな手が
通用するだろうか?
「えりと小春ちゃんには私から話してみます。えりも、最近娘。の雰囲気よくないね
みたいなこと言ってたから、きっと賛成してくれると思う」
「ありがと、さすがはさゆ。頼りになるね」
私の言葉に、嬉しそうな顔をする彼女。

「あとは、れいなと、そして愛ちゃんか……」
マコっちゃんがつぶやくように言う。
重苦しい空気が、私たちを包み込んだ。

私から言わせれば、どっちもかなりの問題児だ。
二人とも自分の事ばっかりでまともにコミュニケーションが取れた試しが無い。
それでも、とりあえずこっちの言い分を聞いてくれるれいなはまだマシな方で、
愛ちゃんに至ってはまったくダメ。
オマメは、一時期ホント熱心に付き合ってたけど、とうとう匙を投げてしまい
最近はまともに口を利こうともしない。

「どっちにせよ、忙しすぎるんだよね。うちらは……」
お茶を一口飲んで、マコっちゃんが言う。
自然と他の人からもため息が漏れる。

土日はもちろん、盆暮れ正月もお休みは殆どなし。
風邪を引いても休めない、いつもニコニコしてなきゃならない。と言って身体
を動かしていられる時はまだ良くて、テレビ収録で一日拘束される時とかずっ
と待機してなきゃならないし、その間を縫って雑誌の取材やらアンケートやら。
おまけに時間は不規則。
徹夜でダンスレッスンやらレコーディングは当たり前。
最近、ちょっとはマシになったけど、それでもお休みは月に一日程度しかない。
これでは、メンバーでじっくり話し合う時間なんかとれるはずもない。

「そうだ、三輪さんに相談してみようか」
オマメが椅子から立ち上がりながら言った。

195 :紺野あさ美:2005/10/12(水) 18:19
三輪さん……飯田さんが卒業するまではうちらのマネージャーだった人で、
今はパシフィックとか広尾とかあっちのイベントを仕切っているはず。
言葉はキツいし態度も厳しい大変な人だったけど、基本的にうちらの事を
第一に考えてくれているいい人だ。
リーダーや藤本さんもあの人には一目置いている。
もしかして、三輪さんならなんとかしてくれるかも……

あたしは、ふと顔を上げた。
オマメがあたしをじっと見つめているのに気がつく。
「な、何?……」
戸惑いながら言う私に、マメは嬉しそうに微笑んだ。
「いや、なんかコンちゃんが急に頼もしく見えちゃってさ」
「そんな……」
「コンちゃんも娘。について色々考えてくれてるんだなーって思って。なんだかすっごく嬉しい」
目を伏せるあたし。

違う……私はそんなつもりで言ってるんじゃない。
ただ、何もしないまま自滅するのは、あの子供達に負けるのは、嫌なだけ。

「よし、明日事務所行ったら三輪さんの都合聞いて、もし居たら話だけでもしてみようよ」
「そうしよそうしよ」
「あたし、えりと小春ちゃんに連絡しときます」

あたしは、急に元気になってワイワイ言い始めた彼女たちを見やりながら、
明日、三輪さんに話す内容について、頭の中で何度もシミュレーションしていた。

196 :名無し娘。:2005/10/13(木) 22:59
これはもう立派な小説ですね

197 :紺野あさ美:2005/10/14(金) 17:51
「紺野、お前からメールをもらった時は一体何事かと思ったよ」

黒い氷が浮いているアイスコーヒーに、ミルクを入れつつ言う三輪さん。
顔は微笑みを浮かべつつも、私を見つめる鋭い眼の輝きにはまったく
隙がない。
この人は、以前と少しも変わっていない。

新曲の打ち合わせが早めに終わったことと、三輪さんが事務所に
いてくれたので、なんとかお昼ご飯をご一緒するという名目で
彼女を外に連れ出すことが出来た。
さゆは別の仕事で居なかったが、マメとマコっちゃんが同席して
くれた。二人とも私の心強い味方だ。

私は、三輪さんに全てを話した。
喫茶店だからビデオは再生できなかったけど、今の娘。の内情に
関する事実、娘。の現在や将来について私が危惧していること、
昨日マメやマコっちゃんと話をしたことについて、包み隠さずそ
のまま本音をぶつけた。

私が言い足りない部分は、マメがフォローしてくれた。
娘。内の雰囲気がおかしいことは薄々判ってはいても、それを
なかなか言い出せるような雰囲気ではないことと、娘。のことを
熟知している三輪さんになんとか協力してほしいこと。とにかく
今の娘。をなんとかしたい、と言い添えた。

下手すると私よりもずっと情熱的な言い方だったかも知れない。

198 :紺野あさ美:2005/10/14(金) 17:53
三輪さんは、腕組みしたままかなり長い間沈黙していた。
ウエイトレスさんが二回目に水を注ぎに来てくれたあと、ようやく
口を開く。
「飯田が、さ……」
ゴクリ……息を呑んだまま、次の言葉を待つ私たち。

「あの子が卒業する時に、あたしに言ったのさ」
言った、って……何を?
三輪さんは、氷が殆ど解けたアイスコーヒーに口をつけた。
と、椅子から立ち上がる。

「お前たちの話は判った。あたしはあたしなりにちょっと
動いてみるよ」
「え?……あ、あのっ!」
引き止めようとする私たちに、三輪さんのすまなそうな声が響く。
「ごめん、二時から次の打合せなんだ。あんたたちももう戻らな
いといけないんじゃないのか?」
「あ、そういえば……」
「やばい、次の仕事なんだっけ?」
マメとマコっちゃんも急にそわそわし始める。
半分腰を浮かしかける私。

そんな……まだ話は終わって……

三輪さんはテーブルの上の伝票を拾い上げると、私に微笑みかけた。
「あたしは嬉しいよ、紺野」
「えっ?」
思わず見上げる私。
「いや、お前がこんなにも真面目に考えていてくれてるとは思って
なくてね。こりゃ、娘。もまだまだ捨てたもんじゃないなと」
「そ、そんな……」
「とにかく、2,3日私に時間をくれるかな。その間に考えてみた
い事もあるし」
スーツの裾をひるがえしながら慌ただしくレジに向かう彼女。

199 :紺野あさ美:2005/10/14(金) 17:54
釣られて立ち上がり、あとを追って入り口に向かう私たち。
三輪さんは会計を済ませると、私たちの方に振り返った。
「あ、そうだ。あんたらに一つだけ言っとく」
びくっ……射すくめられるように動きが止まる。

「まずはあんまり思い詰めないように。あんたたちは好むと好ま
ざるとに関わらず、十人でやっていかざるを得ないんだ。十人で
一つのモーニング娘。なんだからね。それは忘れないで。いい?」
私たちは無言のまま、コクコクとうなづく。
「あともう一つ。絶対に早まった真似だけはしないこと。取り返し
がつかなくなってからじゃ遅いからね。節度を持って行動する。
特に、新垣」
いきなり呼ばれて目を白黒させるマメ。

「お前の言っていることは正論だ。決して間違ってない。だが、
世の中それだけでは解決つかないことも多い。正論だけを振りか
ざしても、誰も耳を傾けてはくれないぞ」
「で、でも……」
「相手に認められるだけの実力を示せ……そう言いたいんですね」
言いかけるマメを制して、マコっちゃんが言った。
ニッコリと微笑む三輪さん。

「それじゃ、また近いうちに」
喫茶店の扉が開き、また閉まった。
走っていく足音がかすかに響く。

ほうっ、と全身の力が抜けていくのを感じる私。

200 :紺野あさ美:2005/10/14(金) 17:59

と、私の携帯が鳴った。メールを開いてみるとさゆからだ。
「えりと小春ちゃんに例の話をしました。紺野さんたちからも、
もっとお話を聞きたいそうです、だって」
思わず顔を見合わせる私たち。

今度はマコっちゃんの携帯が鳴る。電話だ。
「あ、はい。ごめんなさぁい……すぐ戻りますぅ」
電話の向こうで怒鳴り声が聞こえる。
言いながらぺこぺこ頭を下げるマコっちゃん。
「やっばー、遅刻だぁ」
あわてて喫茶店を出て事務所に走る私たち。

……少しずつでも、前に進んではいるのかな……

私は、今までとは違う空気が、少しずつ私たちを押し包み始めて
いる事に気付いていた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

201 :書いている人:2005/10/14(金) 18:07
>>196
レスポンス、ありがとうございます。
書いている途中からネタの方向性が変わってしまい、自分でも
どうなることかと危惧しておりますw
でも、とりあえず書ける限りは頑張ります。よろしくお願いします。

202 :名無し娘。:2005/10/14(金) 19:03
ええんとちゃう

203 :名無し娘。:2005/10/15(土) 14:44
読み応えあるねー
何つーか、死にスレ乗っ取って独立してもいいんじゃないのw

204 :名無し娘。:2005/11/14(月) 18:17
ここでずっと書いてほしいな

205 :紺野あさ美:2005/11/17(木) 16:08
直感2の売り上げが出た。
思ったとおり初動は良くない。
て言うか今までの娘。シングルの中では最低らしい

……思わずため息が漏れてしまう。

いい加減にやっててダメならまだ仕方が無いけど、
一生懸命やって結果が出ない時は、実に辛いものだ。

ダンスレッスンにしてもそう。
一度覚えた振り付けを変更する作業は厳しい。
頭で理解はしていても、身体は以前の踊りで勝手に動いてしまう。
先生に怒られるけど、簡単に直りはしない。

でも、何故かまこっちゃんは張り切っている。
自分の実力を認めてもらいたい…その一心で頑張っている。
少なくとも、私にはそう見える。
頑張ってるのはマメとさゆも同じだ。
マメは、もちろんあの人、藤本さんに勝ちたいため。
さゆは、たぶん小春ちゃんと言う後輩が出来たため。
目指すものや、守りたいものが出来て、初めて人間は本気になると
言うけどまさにその通りだと思う。

じゃあ、私はなんなんだろう?
最近、何の為に頑張ってるのか判らなくなる。
娘。のエースになりたいから……そんな事を考えた時期もあった。
でももうそんな望みは無い。と言うか考えなくなった。
私にも目標があったはずなのに、いつの間にか消えてしまった。
今はただ、自分の居場所を確保するのに精一杯。
前が見えない、後ろも見えない。
真っ暗な中で必死に手足だけ突っ張っている、そんな状態。

目標が見えないから頑張れない。
ならば目標を作ればいい。

いっそ、ソロにでもなってみようか。

私が、私のモーニング娘。と対決する。
思わず背中がゾクゾクするようなシチュエーション。

もしそれで、勝つ事が出来たなら
その時こそ、私が私自身の歌を歌うことが出来るんだろう。

206 :名無し娘。:2006/01/05(木) 15:11
ほっしゅ

207 :名無し娘。:2006/01/11(水) 00:54
更新待ってるぜ

208 :名無し娘。:2006/01/12(木) 17:50
もっと黒く頼むぜ

209 :名無し娘。:2006/01/12(木) 19:09
毒はいいものだ

210 :名無し娘。:2006/02/09(木) 10:16
もっと毒をくれ

211 :紺野あさ美:2006/02/10(金) 17:04
今日は朝からの予定が全てキャンセル。
マネージャーさんたちは全員呼び集められて緊急会議中だ。

いったい何なんだろう……などととぼける必要は無いな。
加護さんの喫煙問題。これに違いない。
そういえばこないだ変な男が事務所にやってきてうちの社長と
やりあっていたが、あれは写真を売り込みに来たのだろう。

しかし、うちの事務所もバカなことをしたものだ。
一千万円だかなんだか知らないが、払ってしまえばいいものを。
松浦さんに続き矢口さんの件といい、はした金払わなかったばかりに
世間にいい恥をさらしてしまった。そして今度も。

ちなみにこの事件、内外への影響は計り知れない。
イベント中止、テレビ出演自粛、CD発売延期……一千万どころ
の話じゃない。大損害だ。
こういうところが判ってないと言うか、経営者としての神経を疑うところだ。
UFAはタレントに優しい事務所だと言うが、スキャンダルにも
優しくあれよ、とか思う。

でも、もっと憂鬱なのはこれで私たちへの監視も一層厳しくなるってこと。
男性関係はもちろん、飲酒喫煙等一切ダメ。
みんなのストレスは溜まる一方だ。

そういえば、こないだ石川さんが言ってた。
「こんこんは、食べ物さえあれば満足だよね、ストレス溜まんなくていいね」
褒められてるのかナメられてるのか判らないが、確かにそのイメージは
あるような気がする。

いっそ、そこにつけ込んで見ようか。
私と妻子ある男性、それも有名人とのスキャンダル発覚、大騒動。
いいアイデアだ。自分でもワクワクする。

マメ、怒るだろうなぁ。こんちゃんだけは信じてたのに、とか。
まこっちゃんは口あんぐり開けたままになっちゃうだろうな。
あ、でもそれはいつもか。ふふふ。
愛ちゃんはどうだろ、他人の話はあんまり興味ないかな。

私は時々、私の中で暴れだす私自身を止められなくなる事がある。
これってストレス?いや、たぶんこっちが本当の私。
私の中にある時限爆弾がいつ爆発するのか……そんなスリルを味わいつつ
これからも生きるとしよう。

212 :名無し娘。:2006/02/11(土) 20:08
黒いっすね

213 :名無し娘。:2006/02/13(月) 06:04
余裕を感じさせるところがいい

214 :名無し娘。:2006/03/15(水) 12:02
ほしゅだね。

215 :名無し娘。:2006/04/04(火) 20:11
更新期待だね。

216 :紺野あさ美:2006/04/28(金) 19:23
ついに、この日がやってきた。
私が私に戻る日。

今まで私を縛っていたあらゆるもの。
私をがんじがらめにしていたもの。
私を私で無くならせていたもの。
それらから全て、解放される。それは今。

こんな時でも周りの反応は予想した通り。
「勿体ない」
「なんで辞めるの?」
「これからじゃん」

……違う。
これからだから辞めるのだ。
もうこれ以上縛られるのには耐えられない。
私が私で無い日はもう沢山だ。

明日、みんなの前に立つ私。
今までの私ではない。今日からの新しい私。

そして、私は解き放たれ、大空に羽ばたく鳥になるのだ。

217 :名無し娘。:2006/05/06(土) 01:49
そうきたかぁ

218 :名無し娘。:2006/05/09(火) 09:00
紺野の卒業が決まって、一番初めにこのスレの黒紺さんの日記を
思いうかべました。
きょう久しぶりに全部読み返してみました。
2年も前のものなのに全然色褪せていませんね、それどころか
今になって、あの頃よりもっと冴えるような気がしました。

もう見てないだろうけど、ここに書くしかないから書きます
黒紺さん今さらだけど、素晴らしい日記をありがとう。

219 :紺野あさ美:2006/05/12(金) 16:53
昨日、ガッタスの試合が終わった。
スフィアリーグとしては私は最後。
優勝できなかったのは心残りだったけど、ちゃんと試合には出られたし
セレモニーもやってもらって、それなりに花道は飾れたと思う。

里田さんは泣いていた。
のんちゃんも泣いていた。
石川さんや藤本さんも、涙をこらえていた。
コレちゃんは泣いてなかったけど、あとで号泣していたらしい。

そんな中、私はといえば妙に落ち着いていた。
最後の挨拶も普通に済ませることが出来た。
斉藤さんが三月に辞めたばかりなのに、私も居なくなってしまう。
残ったみんなに申し訳ない気持ちはあったけど、これも仕方の無いことだ。

試合後、取材があってガストへ。
だけど殆ど打ち上げと変わらない。
飲んで食べてワイワイおしゃべりして。いつも通りの楽しい空間。
でも、これで終わり。これで最後。

少しずつだけど、何かが変わっていく自分を感じる。
歯車は動き出した。もう誰にも止められない。
もちろん私自身にも。


そうそう。
私のことは置いといて、一つだけ気がかりなことがある。
それは、まこっちゃんのことだ。

彼女が卒業するって事は、発表までもちろん私は知らなかったし、
娘。のみんなも知らなかったらしい。
本当にびっくりした。

いったいまこっちゃんに何があったのか、少し落ち着いたら
日記に記してみようと思う。

220 :名無し娘。:2006/06/15(木) 13:53
保全

221 :名無し娘。:2006/07/12(水) 11:08
ほぜんします

222 :名無し娘。:2006/07/20(木) 15:47
あと三日だな。。。

223 :紺野あさ美:2006/07/24(月) 13:27
私の夢は"弁護士"みんな知っていたよね?

224 :名無し娘。:2006/08/28(月) 21:07
ほぜんするぜ

225 :名無し娘。:2006/09/10(日) 05:07
死ぬほどこんこん好きなんや〜。俺もっ!その辺に共感!

226 :竜次 :2006/09/18(月) 18:24
紺野あさ美さんガンバレ

227 :竜次 :2006/09/18(月) 18:24
紺野あさ美さんガンバレ

228 :名無し娘。:2006/11/29(水) 02:09
あいぼんに捧げる228ゲット

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