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Run Down or Run On

1 :匿名著者:2004/08/28(土) 23:27

肌を刺すような強い日射し。
そこかしこから聞こえてくるセミの鳴き声。
青々とした草のかおり。
そのすべてを五感で感じ取ると、ボクは深く息を吸い込んだ。
都会では感じることのなかった、清々しい感覚。
空気が身体の隅々にまで染みこんでゆくかのようだった。
ゆっくりと踏みしめる一歩までもが、懐かしい。
数年ぶりの帰郷だった。
この一年の大学生活の中で、少し疲れていたのかもしれない。
最初は帰るつもりもなく、友人たちと夏休みの旅行の予定まで立てていたのだ。
それを急遽断ってまで、今ボクはここにいる。
ボク自身はこの一年で少しは変わったのだと思う。
しかし、故郷はボクがこの町を離れたときと、何も変わっていない。
まるでここだけ、時が止まっているかのようだった。
これから先もこの風景だけは変わらないだろう。
そのときのボクには何の根拠もなくそう思えた。

「やっぱ、ここも変わってないよな。
 学生時代は毎日ここを自転車で通ったっけ。
 あの頃は……ん?」

ボクは不意に誰かに名前を呼ばれたような気がした。

「なーに、ボケっとした顔してんの?」
「……だれだ?」

声の方向へと振り向いたボクは、相当まぬけな表情だったに違いない。
さっきまで人の気配のまったくなかった、田舎道。
そこに突然、彼女は出現したのだ。
驚くな、というほうが無理だろう。

「キミ……いつのまに?」

59 :名無し娘。:2004/10/08(金) 22:17
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