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SIMPLE2000 THEアドベンチャー 〜ハロープロジェクト〜 Part2
- 1 :猿二匹:2003/12/19(金) 14:12
- 選択型小説で学園モノの恋愛モノ。
前スレで終わらせるつもりだったのに伸びちゃったので次スレ
前スレ
http://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi?bbs=bbs&key=1063338304
- 53 :名無し娘。:2003/12/26(金) 01:29
- 2
- 54 :猿二匹:2003/12/26(金) 01:36
- どう返信するかをしばらくの間考慮した。
松浦の誘いを受けることは、後藤と松浦が乗せられた天秤の針を、後者寄りに
倒すことに繋がると考えた俺は、容易に返事を書くことができない。
しかし後藤の存在は、気持ちが再燃した秋から時間の経過した今、冷めつつある
傾向にあった。
今が意を決する好機なのかもしれない。
俺は決心を固めた。
今度はクリスマスにどこに行くかを考えなければならなかった。
色々と考えを巡らせ、記憶の引き出しをいくつか開けて、適当な場所を模索する。
やがて思い立ったように携帯に掛けていた指を走らせ、即座にメールを作成し返信した。
松浦のメールが届いてから三十分が経過していた。
『××海浜公園とか、行ってみるか。』
前にコンビニで立ち読みした雑誌に、クリスマスのお勧めデートスポットとして
取り上げられていた場所を、提案としてあげる。
この選出には自信があった。
元来大人のデートスポットとして有名なこの場所は、俺達高校生からしてみれば
まだ早いかもしれないが、夜に訪れればムードは最高……のはずである。
クリスマスイブという特別な日に、少しくらい背伸びしてみてもいいだろう。
松浦からの返信はすぐに届いた。
『へぇ〜、いいね、有名だもんねそこ。
じゃあそこにしよう!なんか今から楽しみだよ!』
無機質なゴシック体の羅列からでも、彼女の静かな興奮が伝わってくるようだった。
松浦からのOKは出た。
あとは周辺の下調べをしておけば、当日は問題なく過ごせるだろう。
雑誌を買うという手もあるが、それ以上に俺には確実な手段があった。
以前から利用していた手段。
俺は別の人間に宛てて、メールを作成し始めた。
- 55 :猿二匹:2003/12/26(金) 01:36
- 数日後、平日の昼休み、俺は図書館を訪れていた。
図書委員が座るカウンターの奥には、今日の当番である新垣の姿があった。
しばらく会わずにいた彼女は身長も髪も伸び、いつもは頭の左右で結わっていた
髪を珍しく下ろしていたので、別人とも思えた。
しかし仏頂面は相変わらずで、意図してのものなのかどうかわからないが、
不機嫌な表情でパソコンの画面を睨みつけていた。
俺は新垣に用があってここに来たのだった。
彼女も俺が今日ここに来ることは知っている。
事前にメールして、俺は彼女にある依頼をしていた。
俺の姿を認めて、気だるそうに近づいてくる新垣。
その手には一枚の封筒が握られていた。
「はい、例のやつです。」
外側にはなにも書かれていないその封筒を俺に手渡す。
「おう、じゃあこれは代金な。」
俺は財布の中から千円札を数枚取り出して、封筒と交換というかたちで
新垣に渡した。
用を済ませると俺達はすぐに別れた。
新垣から手渡された封筒の中には、海外発祥の老舗レジャーランドの特別優待券が
二人分入っている。
数日前松浦と行く約束をした海浜公園のすぐ近くに、そのレジャーランドがあることを
事前に知っていた俺は、新垣にそのチケットの取得を依頼していたのだった。
新垣にどういう“ツテ”があるのかは知らないが、彼女は以前からそれを利用して
俺を含めた別の人間の代わりに、ライブ、コンサートや今回のようなレジャー施設の
利用券を取得する、仲介役のような役割を担っていた。
意気揚々と教室に帰る俺。
しかし上機嫌はいつまでも続かなかった。
階段に差し掛かるあたり、俺は後藤と出くわした。
- 56 :猿二匹:2003/12/26(金) 01:37
- 偶然ではないようだった。
後藤は俺の教室まで行って、俺が図書館に向かったことを確認してきたようだった。
新垣とは対照的に、久しぶりに会った後藤の髪は短く切られ、一時期は黒く染め直されていた
髪の毛は赤みのかかった茶髪に改めて染められていた。
少し痩せて、以前よりも大人びた印象を受けた。
「よかった、探したんだよ。」
嬉しそうに話しかけてくる彼女。
俺も笑顔を繕って返した。
「久しぶりだね、全然部活に来なくなっちゃったから……」
今度は憂いを帯びた表情に変わる。
以前までの強気な彼女は鳴りを潜めていた。
「どうした、何か用があったんじゃないのか?」
俺は早くこの状況から逃げ出したい気でいた。
「うん……ここじゃなんだから、ちょっと……」
後藤は俺の手を引いて、人気のない校舎の隅まで俺を連れて行った。
「あのね……」
言うのを憚る様子の彼女。
そんな態度をとられると、こちらも緊張してしまう。
「クリスマスなんだけど……イブの日ね?
一緒に……一緒にどこか行かない?」
今一番遭遇したくない状況に、俺は遭遇してしまった。
どうやら事を平穏無事に済ますことは、最後までできないようだ。
1>松浦のことを話して、きっぱりお断り。
2>誘いを受け、松浦には見切りをつける。
3>回答は先延ばしにする。
- 57 :名無し娘。:2003/12/26(金) 01:46
- 2
- 58 :名無し娘。:2003/12/26(金) 02:23
- 1de
- 59 :名無し娘。:2003/12/26(金) 02:52
- 1
- 60 :名無し娘。:2003/12/26(金) 06:06
- 2
- 61 :Rusty:2003/12/26(金) 07:57
- 1で
- 62 :名無し娘。:2003/12/26(金) 08:30
- 2
- 63 :名無し娘。:2003/12/26(金) 09:25
- 2で
- 64 :名無し娘。:2003/12/26(金) 11:44
- 1
- 65 :名無し娘。:2003/12/26(金) 12:08
- 1でおながい
- 66 :名無し娘。:2003/12/26(金) 12:08
- 1で
- 67 :名無し娘。:2003/12/26(金) 12:33
- 男らしく1で
- 68 :名無し娘。:2003/12/26(金) 12:39
- 1で
- 69 :猿二匹:2003/12/26(金) 14:22
- 俺が戸惑いを隠せないのは当然だ。
動揺をもろに表に出して、俺は困惑していた。
視線が泳いで、思考が冷静さを欠き、返答を待っているであろう後藤を直視する
ことができない。
「え、それって……」
搾り出すように出した言葉は、中途半端な形で出た。
うつむいていた後藤が俺を見上げる。
強気な彼女はまだ片鱗すら見せないから、俺もまた動揺を消し去ることが出来ない。
「一緒にいて欲しいんだ……どうかな。」
再び言葉に詰まる。
去年の夏に関係を絶って以来、後藤が俺に対して自分の気持ちを正確な言葉にして
ぶつけてくることはほとんどなかった。
熱が再燃した今年の夏にも、一緒に過ごした後夜祭の夜も、後藤が俺にその気持ちを
表立って晒してくることなどなかった。
後藤が俺に対してどういう気持ちでいてくれるかということが、直接的な言葉はやはり
出なかったとしても、ようやく確信を持てた気がした。
クリスマスという時勢に押されてのことかもしれない。
しかしタイミングが悪かった。
俺の気持ちはすでに松浦に傾いている。
ここで松浦を裏切るようなことをしてしまったら、去年の俺から全く成長して
いないことになってしまう。
いや、去年の俺の仕打ちを許してくれた後藤を無理に避けるようにして、結果的に彼女を
また傷つける結果にしてしまった俺は、やはり成長していないのかもしれない。
後藤の目に酷い男と映るのは覚悟のうえで、その誘いは断るべきだと考えた。
- 70 :猿二匹:2003/12/26(金) 14:22
- 「ごめん、無理なんだ。」
「え……」
俺のその言葉は予想していなかったのかもしれない。
後藤は意外な表情を俺に向けた。
「付き合ってる奴がいるんだ、俺……
クリスマスイブは、そいつと過ごすことにしてる。」
俺は苦虫を噛み潰したような顔をしていただろうか。
愛想笑いももう作れない。
後藤は俯いてしばらく黙って、嫌なものを取り払うように首を大きく二度横に振り、
やがて取ってつけたような笑顔を見せた。
痛々しい彼女の笑顔、見るのは初めてだった。
去年同じような状況にあったとき、俺は後藤に酷く叱責された。
今回、その様子はない。
拍子抜けしたというのが正確かもしれない。
「そっか、そうだよね。アンタ女の子にモテるから、いつまでもフリーでいるわけないもんね。」
俺に対してというより、自分に言い聞かせているように聴こえた。
乱れた髪を直そうともしないで、いつまでも無理に笑う。
後藤は酷く脆いもののように感じられ、俺は彼女を抱きしめてやりたい衝動に駆られたが、
そんなことは出来ないこととわかっていたから、ただ黙って彼女の様子を伺うだけだった。
「ごめんね、時間とらせちゃって。じゃあね。」
去っていく後藤の後ろ姿にすら気の利いた言葉をかけてやることも出来ない俺は、
無力感に満たされていた。
これで全てが解決したものと思いたい。
藤本、菊池は俺のことをどう感じて、どういう対応をしてくるだろうか。
自分に肯定的な考えは浮かばなかった。
一つため息をついて、嫌なことは考えないようにと松浦のことを頭に浮かべて、
俺は教室に戻ることにした。
- 71 :猿二匹:2003/12/26(金) 14:22
- 翌日、俺と後藤とのことは周りには知れ渡ってないらしく、誰も何も言ってこなかった。
誰かに責められるかもしれないと思っていた俺は、ひとまず安堵感に浸った。
しかし三時限目が終わってすぐの中休み、紺野が俺の教室まで訪ねてきたのだった。
教室の出入り口のところで、顔だけを中に入れるようにしてキョロキョロと辺りを見回す
様子はとても目立った。
誰かに呼ばれる前に俺は紺野の存在に気付き、自分から彼女に近づいていく。
「紺野、どうしたんだ?」
声を掛けると紺野ははっとしたように俺に向き直る。
「先輩に聞きたいことがあるんです。」
珍しく真剣な目つきで俺を見据える。
「ここじゃなんなんで、ちょっといいですか。」
教室のすぐ外の廊下まで俺を導いた。
中休みは短いから廊下まで出てくる生徒は少なく、遠くから騒ぐ声は聞こえてくるものの、
ここ自体はとても静かだ。
紺野は怒っていた。
「なんだ、どうした。」
なだめる様に尋ねる俺。
「後藤先輩になにしたんですか。」
やっぱり。
そのことに関してではないかと、心のどこかで思っていた。
俺が黙ったままでいると、紺野が続けた。
「昨日、部室で先輩泣いてました。」
それだけで第一に俺のところに来るあたり、俺が信用されていないことがわかる。
俺は観念して、紺野に全てを話すことにした。
- 72 :名無し娘。:2003/12/27(土) 14:27
- んあ
- 73 :猿二匹:2003/12/27(土) 15:19
- 「昨日、後藤にクリスマスイブの日、どこか行かないかって誘われた。」
紺野はただ頷いて、俺が続けるのを待っている。
「でも、俺はそれを断ったんだ。」
「なんでですか!?」
そこでいきなり紺野は形相を一変させて、俺に食って掛かってきた。
普段のおとなしい、常にどこか冷静な彼女とは様子が違う。
傍から見れば語気に迫力は感じないかもしれないが、表立って彼女が怒りを
露にするのはほとんどないことで、俺は萎縮せざるを得なかった。
しかし紺野の問いに答えなければ、この場から逃げることすら出来ない。
「今付き合ってる奴がいるんだよ、俺。」
正直に話してみたものの、紺野はすぐに俺の話を信じようとはしなかった。
普段から八方美人に振舞っていれば、それも当然かと思った。
説得するように紺野に言い聞かせると、ようやく彼女も納得したようだった。
さらに疑念をぶつけてくる。
「どんな人なんですか。」
「……タメの子だよ、バイトで知り合ったんだ。」
紺野は無関心だというように軽く頷いただけ。
「で、いつから付き合ってるんです?
まさか、一年以上なんてことありませんよね。」
彼女の言葉の最後は、無意識のものだろうが、荒くなった。
「文化祭のすぐあとだよ。
その子を文化祭に呼んで、その日のうちに告白した……」
正確には告白された、と言ったほうが正しいのだろうか。
言い方を変えたのは、俺が自分の面子を少しでも保ちたかったことの
現れかもしれない。
- 74 :猿二匹:2003/12/27(土) 15:20
- 「ちょっと待ってください。」
紺野が右の手のひらを俺に向けるようにして、抑止のポーズをとった。
「後夜祭は後藤先輩と一緒にいたんですよね。」
嫌な予感がしたが、嘘をつけばすぐにばれてしまうだろう。
「あ、ああ。」
「そのときは、もう今の彼女の人と付き合ってたことになるんですか?」
心臓に楔を打ち込まれたような気がした。
あわよくば、その矛盾にも似た俺の行動を気付かれないまま、これからを
やり過ごしていきたいと思っていたのだが、こうも早く誰かに感づかれるとは
思ってもみなかった。
やはり悪いことはできないということだろうか。
やはりここでも、嘘をつくことはできなかった。
正義感なんかじゃなく、ただ嘘をつく度胸すら持ち合わせていなかった。
言葉に出すのも恐ろしく感じ、目の前にいる後輩にただ頷いて見せただけ。
紺野はその無言の返答を受けて、ただ俺をじっと睨みつけていたが、
あきれ返ったように大きくため息をついたかと思うと、さっきよりもさらに
厳しい目つきで俺を見据えた。
どんぐり眼の奥に燃え上がる炎を見た気がした。
「このことは黙っていてあげます。
他の人に聞かれても、詳しくは言わない方が身のためだと思いますよ。」
紺野は厳しい表情のままで、俺に助言をくれた。
「今の彼女と付き合った時期は曖昧にしておいたほうがいいと思います。
あと、後藤先輩とは今のままでいていいんですか?」
これが最後の詰問だろう。
「……余り尾を引くのは嫌だけど、無理じゃないか?」
弱気な俺の発言を受けて、紺野はにやりと不敵に微笑んだ。
「私に任せてください。なんとかしてみせますよ。」
そうして紺野は俺の前から立ち去り、授業開始のチャイムが鳴り響いた。
- 75 :猿二匹:2003/12/27(土) 15:20
- 数日が経過したが、あれきり紺野が俺の前に姿を現すことはなかった。
クリスマスイブまであと二週間。
ようやく冬らしい気候に移り変わり、登校の際にはコートが欠かせなくなった頃、
俺は文化祭以降接点がなく、疎遠になりがちだった藤本と会話をする機会を得た。
その日は休日で、辺りが闇に満たされた午後六時、俺は発売したばかりの雑誌を
買いにコンビニまで来ていた。
藤本がそのコンビニでアルバイトをしていることをすっかり忘れていた俺は、
用事を済ませて外に出る際に仕事上がりの彼女と偶然出くわしたことで、そのことを
思い出させられた。
「アンタが来るの、随分久しぶりじゃない?」
「そんなことないけどな、お前が入ってる日と合わなかったんだろ。」
会話は何の隔たりも感じないまま進んだ。
平凡なやり取りが続かなくなれば、必然と話題は俺の周囲についてのものに及ぶ。
「そういやアンタ、結局どうしたのよ。」
「どうしたって、何が?」
「後藤さんとのこと、まさかまだ後回しにしてるなんてこと……」
藤本は俺と後藤の間にあった小さな事件のことを知らないようだ。
彼女がこの様子では、当事者以外で知っているのは紺野ぐらいということになるだろう。
「後藤には、クリスマスイブの日に誘われた。」
藤本が驚いたというように目を見開いた。
その反応は彼女にしては珍しい。
「で、どうしたの?OKしたの?」
少なからず興味があるといった調子だが、楽しみだというようには見えない。
「いや、断った。」
「え、何で?」
藤本は二度目の驚いた表情を見せる。
俺は紺野に言われたことを思い出して、軽はずみな発言は控えようと考えた。
- 76 :猿二匹:2003/12/27(土) 15:20
- 「まぁ……色々あるんだよ。」
うやむやにすることで藤本が納得するとも思えなかったが、予想に反して
彼女はあっさり引き下がった。
「ふーん……意外だね。」
彼女の目つきは冷たく、いつものそれに戻ってしまっていた。
「で、クリスマスはどうするわけ?
まさか、女の子の誘い断っておいて、一人で過ごすなんてことないよね。」
どんなに誤魔化したところで、核心をつかれれば痛い思いをするのは俺だった。
「一応、予定は入ってる……」
そこまで訊いて、藤本は呆れるようにため息をつく。
いつかの紺野と同じ反応だった。
「まぁ、アンタがそういうんだってことは、わかってたことだけどね……」
藤本が渋い顔で吐き捨てるように言う。
「今の相手ぐらいは、大切にしてやんなさいよ。」
年寄りじみた口調で藤本はつぶやいて、俺の肩を軽く叩いた。
- 77 :名無し娘。:2003/12/27(土) 15:45
- 連投規制阻止カキコ
- 78 :猿二匹:2003/12/28(日) 03:23
- 紺野が俺を呼び出したのはさらに数日が過ぎた後。
期末テストも終わり、生徒達はじきにやってくる冬休みにはしゃいでいた。
放課後、帰り支度をしていると、隣の吉澤に声を掛けられた。
「おい、ドアのところにいるの、サッカー部のマネージャーじゃないか?」
吉澤が顎で指す先を、俺は振り返って見つめた。
俺に叱咤を飛ばしたあの日と同じように、紺野がドアから半身を乗り出して
教室内を見渡している。
不慣れな教室に警戒した彼女の姿はやはり滑稽だ。
ホームルームはすでに終了している。
ざわめきの中散っていく生徒たちの間を縫うようにして、俺は紺野のもとへ向かう。
俺は彼女が訪ねてくるのをずっと待ちわびていたから、そのときは気がはやった。
「紺野、どうした。」
尋ねてはみたものの、俺には彼女がどうしてここまで来たのかがわかっていた。
「準備は万端です。ついて来てください。」
俺の顔を見てフッと軽く笑って見せた彼女は、楽しそうに駆け出して俺を先導した。
どこに連れて行くのか見当はつかなかったが、向かう先がどうであれ、これから紺野が
俺と後藤の関係を繕う手助けをしてくれることだけはわかっていた。
その目的以外に彼女が俺の教室を訪ねてくる理由はない。
後藤とは俺が彼女の誘いを断った日を境に顔を合わせていない。
あのときでさえ彼女が意図して俺に会いにきたわけで、そうしなければずっと
会う機会もなかったわけだから当然なのだが。
後藤との関係が今のままで終わってしまうのは、彼女が恋愛対象になるならないには
関係なく惜しいと思ったから、俺は幾度かどうにかしてもう一度話す機会を持とうと
考えてはいた。
しかし俺の根っからの優柔不断さと修羅場に対する恐怖心に煽られて、さらに紺野の
思わせぶりな行動に根拠のない期待を抱いてしまい、結局自ら行動することはできずにいた。
だからこうして紺野が俺の手助けを実際にしてくれたことは救われた。
- 79 :猿二匹:2003/12/28(日) 03:23
- 紺野に連れられてやってきた場所は第一会議室だった。
委員会や生徒会が利用する以外はまったく使われることのない教室だ。
「ここか?」
「はい、そうです。」
にっこり笑って返す紺野だが、俺の脳裏には疑問符が沸くばかり。
「鍵かかってるんじゃないのか?」
率直で当然の疑問だと我ながら思う。
「大丈夫です。生徒会長に先輩の名前を言ったら、すぐに貸してくれました。」
余計なことが余計な人物に知れ渡ってしまったようだ。
この先を不安に思いつつも今は紺野を責めるわけにもいかず、俺はただ心中に
不安の塊を残したまま、紺野の次の行動を待った。
「さ、いつまでも突っ立ってないで入ってください。
後藤先輩、さっきからずっと待たせてますんで。」
平然と俺を室内に誘導しようとする紺野だったが、俺が彼女の言い放ったその台詞を
聞き逃すはずもなく。
「後藤がいるのか?このなかに。」
「当たり前じゃないですか、先輩がいつまでたっても自分から行動できないから、
私が逃げ出せない状況を作ってあげたんでしょう。」
紺野が俺をたしなめるように静かに言った。
覚悟はしていた。
しかし実際その状況下に立たされると、足がすくんでなかなか踏み出すことができない。
紺野は室内に入るのを渋ったままでいる俺に対して、次第にイライラを募らせていく。
「もう、なにやってんですか、早く入ってください!」
痺れを切らした紺野がガラガラとドアを開け、両手で俺の身体をわしづかみにしたかと思うと、
女の子にしては強い腕力で俺を会議室の中に押し込んだ。
「ちょ、待て!」
ねじ込まれてから振り返ると、紺野が笑顔で俺に向かって手を振っている。
「じゃ、あとは自分で頑張ってくださいね〜。」
ガラガラと戸を閉められた。
- 80 :猿二匹:2003/12/28(日) 03:27
- 「紺野?」
後ろから声がした。
おそるおそる声のした方を振り向くと、そこには予想通り後藤の姿が。
繋がっている隣の教室に移動していたらしく、彼女はさっきまでの俺と紺野の
やり取りには気づいていないようだった。
不意に見つめあって、お互いに何も言いだすことができず、硬直してしまう。
「ひ、久しぶり……でもないか。」
沈黙を破ったのは後藤。
俺はまた自分から行動することができなかった。
「まぁ……そうだな。」
立ったままでの会話はそこで終わり、お互い綺麗に並べられた椅子を一つずつ持ってきて、
それぞれ違う方向を向いて目を合わせないようにしながら腰掛けた。
「断られたのはショックだったな、ちょっと自信あったんだけど。」
また後藤が切り出した。
「……ごめん。」
「謝らないでよ、別に悪いことしたわけじゃないんだから。」
いや、俺は後藤に悪いことをした。
だから謝罪を撤回する気にはならなかったが、詳しく話す勇気はやはりない。
「まさか、彼女がいるなんてね。思いもしなかったよ。
知ってたらあんなダサいことしなかったのにさ。」
彼女が虚勢を張っているのは、俺にもわかった。
「いつから付き合ってるの、その子と。」
後藤が口を開いた。
こちらに視線を向けてはいるが、表情は凍り付いている。
しかしその口調は優しい。
「秋から……まだそんなに長くないよ。」
ここでも紺野に言われたとおりにする。
大丈夫、今日は冷静だから墓穴は掘らない。
「秋か……」
後藤が席を立った。
何をするのかとその挙動をしばらく見守っていたが、彼女はゆっくりと窓際まで歩み寄っただけ。
そして窓の外を見つめながら、また口を開く。
- 81 :猿二匹:2003/12/28(日) 03:28
- 「アタシよりも可愛いんだ、その子。」
今度は明るい口調だった。
「そんなこと……」
言いよどむことしかできない。
今度は俺がうつむく番になった。
「ごめんね、意地悪だったね、こういうの。」
後藤はその場で俺のほうに向き直った。
その表情にはいつのまにやら笑みが浮かんでいた。
彼女の態度には違和感を覚えるとともに戸惑ってしまって、続きを切り出すことができない。
「夏にさ。」
後藤は明るいままだ。
「夏に、私を誘ってくれたよね、デートにさ……あれはデートでいいんだよね。」
俺は顔を上げて、つぶやく後藤に黙ってうなずいた。
「あのときは、アタシのこと好きでいてくれてたの?」
彼女らしい、ストレートな疑問だったから、逆に俺は冷静になることができた。
「ああ、あのときは……お前のこと好きだったと思う。
身勝手だとは思うけど……」
俺の言った身勝手という言葉の意味を、後藤はどう受け止めたのだろうか。
彼女は明るい表情を崩さないまま、窓際から歩みを始め、俺の横を通り過ぎて今度は
ドアのほうに向かった。
俺には背中を向けたままだ。
「……じゃあ、タイミングが悪かっただけなんだね。」
勢いを失った、切ない言葉がこぼれた。
「それなら、いいや。」
空元気な言葉が虚空に浮いた。
俺は立ち上がって、後藤の背後に立つ。
ただでさえ細いその身体が、今は余計に華奢に映る。
「……ごめん。」
不意に謝ってしまったのは失敗かもしれなかった。
後藤は振り向いて俺の目の前までゆっくりと歩み寄る。
「謝らないでって言ったでしょ。」
後藤は俺の胸に優しく左手を添えた。
俺は彼女の温かみを感じた。
落ち着いた微笑みはいつまでも消えずに残っている。
だから俺も冷静さを保つことができているのかもしれない。
「あんまりさ、気まずくならないようにしようね、これから。」
俺が一番言いたかったことを後藤は先に言ってくれた。
「ああ、そうだな。」
「こんなことで縁が切れちゃうの、勿体無いもんね。」
- 82 :猿二匹:2003/12/28(日) 03:28
- 「じゃあ、アタシもう行くね。」
添えた手を離して、そのまま別れの挨拶がわりに小さく振ってみせる。
早足で俺から離れていく彼女。
「ちょ……後藤!」
名残惜しくなって、彼女を捕まえようと手を伸ばしたが届かない。
「あ、そうだ。」
急に歩みを止めて、またこちらを向く。
「結局アンタ、部活はどうするの?」
さっきまでとはなんら関係のない話に、俺は拍子抜けしてしまった。
今さら部活に復帰することなどできるはずもない。
「いや、部活にはもう出ないつもり……」
俺の言葉に後藤は少しだけ残念そうに、
「そっか……わかった。」
最後に一言だけ残して、俺の前から消えた。
- 83 :名無し娘。:2003/12/28(日) 10:43
- それから、ど〜した?
- 84 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:04
- クリスマスイブ当日の昼、俺は電車に乗って松浦の地元の駅まで向かい、
そこで一旦降りて改札の脇で彼女と待ち合わせた。
俺が着いたときにはまだ彼女は到着しておらず、十分ほどが経過してから
待ち合わせ場所に姿を現した。
彼女が遅刻したわけではなく、俺が早く着きすぎてしまったのだった。
「ごめん、待たせちゃったね。」
それでも彼女は俺に軽く謝った。
「いや、そんなでもないよ。」
お決まりのやり取りを済ませると、俺は松浦と一緒に再び改札をくぐって
上り電車側のホームへと向かった。
向かう先は目的地である海浜公園の最寄り駅。
駅前は繁華街が発展していて、事前の下調べがなくとも遊ぶのには困らないと
聞いてきた。
到着するまでに二度電車を乗り換えることになるのだが、その長い道のり
車内で松浦は終始はしゃいだ様子を見せていた。
それも仕方の無いことだろう。
車内には俺達の他にも、数組のカップルの姿が見受けられた。
みんな考えることは同じだ。
一時間半が経過したころ、ようやく目的の駅に着く。
駅自体は縦長の小さなものだったが、その周りは俺達の地元とは比べ物に
ならないくらい発展している。
昼食を済ませていなかった俺達は、すきっ腹を堪えながら食事処を探しまわった。
「ねぇ、中華料理だって。」
松浦が隣を歩く俺の腕を掴んで引き寄せ、足を止めて自分が発見した店を指差す。
繁華街の一角、ごちゃごちゃした商店街の中に、小さな中華料理屋が一件。
- 85 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:04
- こじんまりとしたその店は個人経営のものらしく、外観もガラス戸越しに見た
内装もチェーン店のそれとは雰囲気がまるで違う。
独特と言ってしまえばそれまでだが、俺達のような初めての客がすんなり入れるような
雰囲気ではないと感じた。
俺はそれを気にしていたが、店を発見した松浦の側はそんなことは微塵も感じて
いない様子だった。
「ここにしようよ、良いお店じゃん。」
逆に店の持つ雰囲気を気に入った様子で、俺は仕方なしに彼女に従った。
ドアは自動ではなく、手で引かなければ開かなかった。
中に入ると香ばしい匂いが鼻を刺した。
「いらっしゃいませー。」
足を踏み入れると同時に鐘がなって、元気のいい女性の声が響いた。
案内を受ける前に開いている席を探して勝手に座ってしまった。
そこウエイトレスが一人やってきて注文を取るので、俺は慣れない中華料理屋で
何を頼んでいいのかわからず、無難にチャーハンを頼んだ。
松浦は石焼ビビンバを頼んで、注文を受けたウエイトレスは早々と店の奥に
引っ込んでしまった。
しばらく待って、注文した料理が届く。
松浦のビビンバを見て俺は、俺ももう少し凝ったものを頼めばよかったと今更後悔した。
「おいしそうだねー。」
心からそう思っているような松浦の声は、料理の味を一層引き立てているように思えた。
空腹だったせいもあってか、昼食に費やした時間は短かった。
皿を空けてもすぐには店を出ず、俺達は会話を楽しんだ。
客の入りはなかなかだったが、待ちが出ているわけではなかったので、遠慮する
必要もないだろうと思って、長居させてもらっていた。
- 86 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:05
- やがて店を出て、しばらく繁華街を歩き回る。
街中にクリスマスの装飾が施されていて、今日という日の雰囲気を盛り上げてくれていたが、
明日の今頃になれば取り外されてしまうのだろう。
そう思うと少し薄情な気がした。
俺達は服屋や雑貨屋などを回って、時が過ぎるのを待った。
一軒の雑貨屋を訪ねたとき、松浦が気に入ったリングがあると言って、俺にそれを見せてきた。
値段は千円と非常に格安だったので、渋ることなく買ってやった。
クリスマスプレゼントにしてはけち臭い気もしたが、松浦は喜んでくれた。
彼女も俺に同じ値段のバングルを買ってくれた。
「これで“おあいこ”だね。」
彼女らしいと思った。
その店を出て、早速リングをはめて見せた松浦に、
「どうせなら、二人で同じの買えばよかったな。」
と言うと、
「あー、そうだねー、そうすればよかったー……」
と彼女は残念そうにつぶやいた。
「でも、そういうこと君が言うとは思わなかったね。」
「なんだそれ、心外だな。」
お互い顔を見合わせて、自然と笑った。
十二月の日没は早い。
昨日が冬至だったのだから余計だ。
日がスミレ色を帯びてきた頃に、俺達は海浜公園を目指すことにした。
- 87 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:05
- 繁華街から二十分ほど歩いたところに、海浜公園はある。
道を照らすものは街灯の明りだけ。
見上げれば暗黒の中に、郡になったビルの明りが鮮やかに映えていた。
海に面しているから、駅前にいたときよりも空気が冷たい。
夜になったからというだけではないだろう。
俺は松浦と身を寄せ合うようにして、海沿いにあるベンチに腰掛けている。
見渡せば数組のカップルが目に付き、公園内の人通りも多いほうだったが、
思っていたよりは少なかった。
松浦の小さな頭が、俺の右肩から首の付け根にかかるあたりに乗る体勢。
どちらかが声を出せば、その振動が伝わってくるほど密接している。
しかし会話はときどき交わす程度で、それ以外は黙ったまま。
それでも松浦の体温を感じられるだけで幸福だった。
「ねぇ。」
松浦が甘ったるい小さな声を発する。
俺は敏感に反応した。
「ん?」
「楽しかったね、今日。」
平凡な感想だが、その口調、雰囲気はやはりムードに染められいつもと違うように感じた。
「ああ、そうだな。」
俺は松浦のこめかみの部分に頬擦りをしてみせた。
彼女はくすぐったそうに身を捩って軽く笑った。
「なんか、やっと付き合ってるんだなって思ったよ、今日。」
「ん、どういうこと?」
松浦が顔だけをこちらに向ける。
目がトローンとしていて、眠そうに見える。
「なんか今まで、君が壁を作ってるように感じた。
距離を置いて、私と話してるって感じ……」
少し辛い指摘だった。
彼女には負担をかけないようにしていたつもりだったが、やはり無理が出ていたようだ。
「気のせいだよ。」
松浦は後藤のことを詳しく知らないままでいい。
俺は誤魔化して、右手で彼女の身体を引き寄せて、自分の身体にさらに密着させた。
見つめあったままで、ムードに押されて、一回だけ軽くキスを交わす。
自然な流れだったから、照れなんか感じない。
軽く抱き合う姿勢で二人目を閉じて、眠ったようにただじっとしていた。
- 88 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:05
- その日は外泊した。
学校はお互い冬休みに入っていたから助かった。
翌日、始発ではないが早朝の電車で二人一緒に帰る。
俺達と同じ境遇の男女はやはり多い。
早朝の街はいつもより人気が多く、少しだけ賑やかな気がした。
松浦のほうが地元が近かったので、途中の駅で別れることになった。
彼女はいつも駅での別れ際、いつまでも俺に向かって手を振っていてくれる。
今日も例外ではなかった。
オールとは違って睡眠はとったから、別段疲れも溜まってはいなかった。
家に着く頃には、家族が朝食を済ませてしまっている時刻になっていた。
出迎えてくれた母親に挨拶をして、部屋に向かって荷物を適当に放り投げた。
ジャケットを脱いで部屋着を抱えて、風呂場に向かう。
シャワーを浴びたあとは、いつもの休日と変わりなく過ごした。
何気なく携帯を見て、二時間前に松浦からメールが届いていたのに気付いて、
慌てて返信した。
- 89 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:06
-
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 90 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:06
- やがて年が明け、冬が終わりに近づき、花粉症に苦しむ奴が増え始める頃になった。
俺は部活を正式に退部し、他の生徒よりもいち早く受験勉強に取り組み始めた。
松浦と大学は一緒のところに通おうという、ベタな約束を年明けすぐに交わしたせいだ。
理想はお互い大きく、妥協はしないようにというのが補足で付いた。
春休みのバイトは、二人とも休むことに決めている。
速水と石川さんは前ほど露骨にベタベタしなくなったが、円満に続いているように見える。
吉澤は部活一本だった生活を切り替え、大学受験を悲惨なものにしないようにと
俺と同じく受験勉強に精を出しているようだった。
引き締まっていた身体が、おおらかになってしまったのはいただけないが。
希美は髪をよく下ろすようになった。
会うたびに「可愛い」と褒めてやるのだが、その度にムキになって食って掛かってくるので
相変わらず手に負えない。
後藤はクリスマスの日にもう一度菊池のアプローチを受けたらしいが、結局断ったらしい。
未だにフリーでいるのには、少し罪の意識を感じているが、彼女に言ったら
「自惚れだね。」ぐらいのことは言われそうだ。
俺とは隔たりなく接してくれているのは助かる。
藤本は……何一つ変わらない。
- 91 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:07
- 授業中、松浦からメールが届いた。
「今度の日曜ヒマだよね、どっか行こうよ?」
彼女も授業中のはずなのだが。
その場でメールするのも味気ないので、あとで電話して直接話して決めよう。
そう決めて携帯を閉じ、俺は黒板を向き直った。
窓から指す日を妙に暖かく感じた。
- 92 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:07
- 〜了〜
- 93 :猿二匹:2003/12/29(月) 01:09
- 尻すぼみ、急ぎすぎの展開で申し訳ない
長続きさせて終期を逸するのを避けるため完結させました
今までお付き合いくださった皆様
ご愛読くださった皆様方に感謝
- 94 :名無しさん。:2003/12/29(月) 02:03
- 終わった。。
作者さん乙です〜。
- 95 :名無し娘。:2003/12/29(月) 08:25
- 脱稿乙です
文章も読みやすく、面白かったです
時間取れたら最初から読み直そっかな
- 96 :名無し娘。:2003/12/30(火) 02:02
- このスレこれからどうなるの?
猿ニ匹さんはもう書かないのかなぁ…
- 97 :名無し娘。:2004/01/02(金) 21:08
- 人口木へ一土
- 98 :名無し娘。:2004/01/02(金) 23:51
- ?
- 99 :名無し娘。:2004/01/03(土) 00:32
- >>98
口 へ
人 一
木 土。
ずれたらスマソ。
- 100 :名無し娘。:2004/01/03(土) 00:43
- 保全する必要があるのか?
- 101 :名無し娘。:2004/01/04(日) 00:14
- 何気に100がゲトーされてる
- 102 :名無し娘。:2004/01/13(火) 22:51
- 人口木へ一土
- 103 :名無し娘。:2004/01/16(金) 19:20
- 猿二匹さんはもう書かないのかな?
もし大丈夫なら、自分が書いていいかな??
- 104 :名無し娘。:2004/01/16(金) 21:03
- どんどん書いてくれ
- 105 :名無し娘。:2004/01/17(土) 01:15
- >>103
是非書いてください
- 106 :名無し娘。:2004/01/18(日) 02:15
- 神様お願いします書いてください
- 107 :103:2004/01/18(日) 17:09
- 只今、いろいろしております。(キャラ設定や本編の執筆等々)
書いてもよろしい様子なので、明日ぐらいに少しだけでも書かせて頂きたいと思います。
猿二匹さんよりもかなーーーり駄文ですが。
- 108 :103:2004/01/19(月) 20:32
-
「ZZZ…」
「お〜い。」
「ZZZ…」
「早く起きないと遅刻だぞ〜。」
「ZZZ…」
「「さっさと起きろぉ!!」」
「うわぁ!!」
…なんだ?
…視界がぼやけて、何が何だか…。
「兄貴、眼鏡。」
「…そっか。」
眼鏡を掛けてないんだから、よく見えない訳だ…。
枕元に置いていた眼鏡を手探りで探して、急いでかけてみる。
「やっと起きたか…。」
「おはよ、寝ぼすけさん。」
「…おはよございます。」
目の前に立っている二人。
- 109 :103:2004/01/19(月) 20:34
-
「しっかりしなよ、高2でしょ。」
一人は黒髪のポニーテールの女の子。名前は『田中れいな』。俺の妹。
だけど俺の名字は『田中』じゃない。
俺の親父が「お前の妹だ!」とか言って、1年前に連れてきた。
事情が事情なため、話せば長くなるから、割愛。
要は義理の妹。
「いっつも朝弱いもんねぇ。」
もう一人は長くて綺麗なブロンドヘアーの女性。名前は『飯田圭織』。俺の従兄弟にあたる。
北海道に住んでいたんだけど、
こっちの美術大学に通うって事で、上京してきたらしいんだけど…。
親が一人暮らしを断固として反対したらしくて、
その結果、親戚である俺の家に居候する事になった訳で。
「早くしないと遅刻だぞ、兄貴。」
「…はい。」
「朝食出来てるから、早く来てね。」
「…はい。」
部屋を出ていく二人…着替えよ。
- 110 :103:2004/01/19(月) 20:35
- こんな感じです…いかがでしょうか?
- 111 :名無し娘。:2004/01/19(月) 22:45
- 特に読みにくい所はないしいいと思いますよ
期待
- 112 :名無し娘。:2004/01/19(月) 22:52
- をぉ、久々に来たら新しい人が・・・
がんばってくだされ。
- 113 :名無し娘。:2004/01/20(火) 17:01
- がんがって続けてください。
で選択肢は?
- 114 :103:2004/01/20(火) 17:59
- >>111
そうですか、良かったです。(泣
>>112
なんとか頑張ってみます。(泣
>>113
はい、がんがります。
ごめんなさい・・・まだこれだけしか出来てないんです・・・。(泣
- 115 :名無し娘。:2004/01/21(水) 23:18
- 人口木へ一土
- 116 :名無し娘。:2004/01/25(日) 00:58
- 期待!がんばってください
- 117 :名無し娘。:2004/01/28(水) 18:13
- 【ゴールデンレス】
このレスを見た人はコピペでもいいので
10分以内に3つのスレへ貼り付けてください。
そうすれば14日後好きな人から告白されるわ宝くじは当たるわ
出世しまくるわ体の悪い所全部治るわでえらい事です
- 118 :103:2004/02/04(水) 20:53
-
「ふう…。」
制服に着替え終わった事だし、飯でも食お〜っと。
部屋を出て、リビングへと向かう…。
・
・
・
階段を下り、リビングへ向かうとそこには…
「おそいぞ兄貴、もう兄貴の分のハンバーグ食べちゃったよぉ〜。」
既に朝食を食べているれいなと、その奥で洗い物をしている圭織がいた。
「なっ!?」
「ず〜っと寝てる兄貴が悪〜い。」
「お前なぁ…!」
「大丈夫よ、はい。」
キッチンから和風ソースのかかったおいしそ〜なハンバーグがのったお皿を持ってきた圭織。
「あれ?なんで?」
「こんな事もあろうかと、一個余分に作って置いたの。」
「サンキュー!圭織!」
「ひど〜い!もう一個あるなんて言わなかったじゃん!」
「2個食べたんだから、文句言わないの。」
「むぅ〜…。」
「ん〜!うまい!」
- 119 :103:2004/02/04(水) 20:53
-
そんなこんなでアッという間に時間は経ち…
「二人とも、もう時間。」
「あ、ほんとだ…行くぞ、れいな。」
「言われなくてもわかってますぅ〜!」
「…。」
玄関に向かう俺とれいな。
圭織はまだ洗い物が残ってるみたいで、キッチンにいる。
「靴…あれ?俺の靴は…?」
「じゃあ、先行くね。」
そそくさと玄関から出ていくれいな……。
「靴…靴…あった!」
黒と白のスニーカーを履いて…っと。
…あ、忘れてた。
「じゃあ圭織、後はよろしく!」
「いってらっしゃい!気を付けるんだぞ!」
「わかってる!」
平日の朝の習慣…出かける前に圭織に声を掛ける事。
- 120 :103:2004/02/04(水) 20:57
-
家を出て、少し歩くと見えてくる30mほどの橋…少し上り坂…。
学校まではまだまだ先だ。
「ふぅ…。」
普通にだらだら歩いていると…
「お〜い!そこの高校生〜!」
「ん?」
今、橋を歩いている高校生は辺りを見渡しても俺一人。
なので、声が聞こえた背後へ振り向いてみると・・・
「おはよ。」
「おはようございます。」
「なんで他人行儀なの〜?いつもみたいに呼んでくれればいいのに。」
「いや…なんとなく。」
Tシャツにジーパンで身を包んでいるこの女性。
『安倍なつみ』。大学の1年生で、俺の幼なじみ。
21にもなって自分の事を『なっち』と呼んでいる。
しかも、強制的に他の人にも呼ばせる様にしてる。
俺の家の向かいの家に住んでいるから、小さい頃から一緒。
公園で遊んだり、一緒に風呂にも入ったし、一緒の布団で寝た事も…って小さい頃の話だぞ!小さい頃!
「ねぇ?」
俺の前に回り込んで、俺の顔を笑顔で覗き込む…
- 121 :103:2004/02/04(水) 20:58
-
「なんすか?」
「最近遊ばなくなったよね?なんで?」
悲しそうな表情を浮かべるなっち。
「…なっちが忙しくなったからでしょ?」
「あ…そっか、あはははははは…」
すぐに笑顔が戻りました。
「それに高校生とじゃなくて、大学の友達と遊べばいいじゃん。」
「なっちわぁ…君と遊びたいの。」
「…昔みたいに?」
「う〜ん…そうなのかなぁ?…よくわかんない。」
「なんじゃそりゃ!?」
「あははははは…」
訳分かんないお姉さんです、はい。
「あ、そうだ!」
「ん?」
「ののと同じ高校だったよね?」
「…ええ、まぁ。」
「最近さ、様子が変なんだ…のの。」
「変?」
「うん…なんかね、最近食欲がないみたいなの…。」
「えぇ!!あいつが!?」
「うん…。」
「う〜ん…何かありそうですなぁ…。」
「だから、聞いてみてくれない?」
「…俺が?」
「うん。」
「………無理。」
「なんでぇ!?」
「なんかさぁ…あいつ、俺の事避けてるみたいでさ…
聞こうとすれば、向こうが逃げると思うよ。」
「ののが?う〜ん…なんでだろうね。」
「こっちが聞きたいって。」
「だよね…あ、もうこんな時間!急がないと…。」
「ま、なんとかしてみます。」
「うん、よろしく、じゃあねぇ〜!」
走り去っていくなっち…そんなに何度もこっち振り向いてると…あ。
やっぱり…きれいにコケましたね。
「俺も急ご。」
- 122 :103:2004/02/04(水) 20:59
- ホントにすみません…。
次こそは選択肢出しますので…。 _| ̄|○
- 123 :名無し娘。:2004/02/04(水) 21:52
- 朝からハンバーグかよ!
- 124 :名無し娘。:2004/02/04(水) 22:54
- >>103
ついに来たね、乙です。
>>123
朝から牛丼食うより重いなw
- 125 :名無し娘。:2004/02/04(水) 23:32
- しかもれいなは2個食べてる罠
- 126 :名無し娘。:2004/02/04(水) 23:35
- >>103
いい感じですね。
無理せず続けてください。
>>124
俺、朝から牛丼だろうがハンバーグだろうが余裕なんだが・・・おかしかったのか?
- 127 :名無し娘。:2004/02/10(火) 23:50
- 期待期待♪
- 128 :書きたい人:2004/02/14(土) 13:55
- 俺も小説書いて良いですか?
それとも103さんの邪魔?
邪魔だったら遠慮しますんで。
- 129 :名無し娘。:2004/02/14(土) 14:43
- ジャマ
- 130 :名無し娘。:2004/02/14(土) 19:39
- >>128
>>103氏がなかなか来ないからなぁ。書いてもいいんでないかと思うが。
>>126
おかしくはないが、オレにはちと無理。
- 131 :名無し娘。:2004/02/14(土) 21:15
- >>128
書き手は多いほうがいい
- 132 :名無し娘。:2004/02/14(土) 21:47
- >>128
書いてちょ
- 133 :名無し娘。:2004/02/14(土) 21:51
- 小説書かれて困る人なんていないよ。
- 134 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:08
- 129=103
103氏が来ないし書いてもいいと思うよ
- 135 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:08
- ↑間違い(汗。
129=103?でし
- 136 :書きたい人:2004/02/14(土) 22:10
- 「そろそろ起きんと閉めるで」
「なあ」
「はよ起きんか」
俺は加護の声で目が覚めた。
ノロノロと俺の体を揺さぶっている。
「起きました・・・」
俺が起きたことを確認した加護は、
ジャラジャラと鍵のたくさんついたホルダーを、俺の眼前でチラつかせた。
「起きたんなら閉めるで」
辺りを見回すと、そこは学校の図書室だった。
まだ少し視界に靄がかかっている。
なかなか椅子を離れようとしない俺に、加護はいらついた口調で急かした。
「今行くって・・・」
どうやら加護は早く図書室の鍵を閉めて、家路につきたいらしい。
俺も早く帰って寝たかったので、足早に図書室を出た。
加護は鍵を閉めると、俺に「もう図書室で寝たらあかんよ」と釘を刺して、職員室に向かって走っていった。
きっと鍵を返すのだろう。
俺は携帯で時刻を確認すると、自分の教室に向かった。
教室に鍵は掛かっていなかった。
「助かった・・・」
俺は独り言を小さく呟き、素早く荷物をまとめ、鞄に入れる。
部活の奴がいてもよさそうだが、生憎、今日は試験前のため、部活動はやっていない。
今日はというか、これから試験が終わるまでずっとない。
まあ、部活に入っていない俺には関係の無いことだけど。
「何してるの?早く帰りなさい」
振り向くと教室のドアのところに、保田先生がいた。
- 137 :書きたい人:2004/02/14(土) 22:11
- 「今帰ります」
俺は先生に軽く会釈して、昇降口に向かおうとした。
「ちょっと待ちなさい」
保田先生の声にビクッと体を震わせる。
なんかしたか、俺。
「頼みたいことがあるんだけど」
頼みごと?保田先生が俺に?
とりあえず怒られる様子ではないので、恐る恐る振り返る。
「なんでしょうか?」
「此処じゃなんだから」
保田先生は生徒指導室に、俺を誘導した。
「で、なんでしょうか?」
「さっきまで図書室で寝てたらしいわね」
「あ、ハイ・・・」
きっと加護だ。
加護が鍵を返しに来たときにでも言ったんだろう。
保田先生はおもむろに席を立ち、生徒指導室の灯りを消すと、懐中電灯で自分の顔を照らした。
こ、、、こわいな。
保田先生は俺の気もしらないで、話を始めた。
「実はね・・・」
保田先生の話は・・・。
1>「この学校、最近幽霊が出るらしいの」
2>「図書室から夜な夜な、奇声が聞こえるらしいの」
3>「私、教員免許持ってないの」
- 138 :書きたい人:2004/02/14(土) 22:14
- 書いても良いということなので>>129さんには悪いですが
うpしました。
駄作なんで苦情とかアドバイス欲しいです。
次の更新で終わる選択肢もあります。
その場合はまた>>137に戻って選択してくださいってことで。
- 139 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:24
- 3
- 140 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:27
- 3
- 141 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:34
- 土曜日だから3で
- 142 :名無し娘。:2004/02/14(土) 22:46
- 3de
- 143 :103:2004/02/15(日) 00:00
- どうも、129さんではないです。(汗
私的考えとしては、いいと思いますよ。
他の作者さんの作品を読む事で、参考になるので(?)、私的には賛成でございます。
(この場を借りて質問したいんですが・・・主人公以外の男性キャラ出していいですか?
一応主人公の友人で・・・恋のライバル的存在なキャラなんですが・・・。)
- 144 :103:2004/02/15(日) 00:01
- 忘れてました。選択肢は3で。
- 145 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:19
- 「実はね・・・私、教員免許持ってないの」
保田先生は穏やかな、でも少し焦ったような口調で語り始めた。
もうそれは、俺に驚く暇さえ与えない勢いだった。
「大学を出たときに取ろうとして落ちちゃったのよ。
私、何やってもダメな子だったから・・・。
でもね!それでも先生になりたくて頑張って偽造免許造ったの!
そしたら意外と使えちゃってねぇ。
ちょっと図に乗って?
そのままダラダラとここまできちゃったのよね」
おいおい・・・。明らかに頑張る方向が違うだろ。
勉強するんじゃないのかよ。
俺は余計なことまで喋り出しそうな保田先生を、制止した。
「それって、本当の話なんですか?」
「ええ」
保田先生は真面目な顔で返事を返した。
「偽造って・・・ちょっとソレ、見せてくれませんか?」
「いいわよ」
俺は保田先生が職員室に職員免許・・・
もとい、偽造免許を取りに行っている間、必死に考えをめぐらせた。
(保田先生は教員の資格がないのか?)
(そういえば色々と思い当たる節があるけど・・・)
(あの話はまじ?)
(否、真剣な顔だったし・・・)
(じゃあ俺はどうすれば?)
(うーん・・・)
(そもそも何で先生は俺なんかにそんな話を?)
一番重要なことを思い出した瞬間、保田先生が生徒指導室の扉を開けた。
「持ってきたわよ!」
俺は手に取ってソレを眺める。
以前、中澤先生から見せてもらったことがあるが、
今持っている保田先生のソレと、まったく同じものであった。
「コレ、本物じゃないんですか・・・?」
「これがまた違うのよ」
しかし、とても偽造には見えない。
これは使えるよな・・・。
「ねえ、どうしたらいいのかしら」
「どうしたらって言われても・・・」
- 146 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:19
- それから俺達は、2時間、必死に考えた。
そして、決意した。
「保田先生」
「ん?なんか思いついた?」
「はい」
俺は心に思ったままを言い放った。
「取りましょう、教員免許、本物を」
保田先生はしばらくの間呆然としていたが、苦笑しながら口を開いた。
「無理よ、もう・・・歳だし」
俺は、俺の中の何かが弾けた感じがした。
「そんなことありません!!!!!」
必死になって、保田先生はまだ十分にやっていける年齢だと語る。
そんな俺を、保田先生は静かに、寧ろ冷ややかな視線で見ていた。
「だから!俺と一緒に取りましょうよ」
そう、俺と一緒に。
「保田先生はまだまだいけます!」
保田先生からの返事はなかった。
これ以上俺が何を言っても無駄だと察し、保田先生の返事を待つことにした。
長期戦を覚悟していたが、約3分後に、保田先生は重々しく口を開いた。
「・・・私にも、まだできるかな?」
俺は保田先生の前向きな返事に、心が弾んだ。
「大丈夫です」
俺はキラリと光る笑顔で返した。
- 147 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:20
-
それから数年の月日が流れた。
「・・・大丈夫、あなただって、まだ若いじゃない」
あの後、圭は免許を取って、立派な教員になった。
俺は・・・。
歳を重ねるごとに、次第に落ちこぼれていく自分が分かる。
やっぱり俺には教師なんて無理だったんだよ。
あの日圭と誓ったのに・・・圭と一緒に教師になるって。
でも俺には無理だった。
ならばどうする?俺。
・・・昔の圭のように、偽造免許を・・・。
俺に残された道は、それしかなかった。
試験の日。
俺は圭の「頑張って」という言葉を背に、家を出た。
多分圭は、試験を受けに行ったと思っているだろう。
でも違うんだ、俺の行き先は印刷工場。
そう、昔の圭のように・・・。
少し胸が痛んだ。
しかし、全ては圭との約束のために。
俺は建前を並べ、自分に言い聞かせた。
試験が終わる時刻に印刷工場を出る。
手配はした。
そいつはパスポートや学生証、保険証や印鑑まで、全てのジャンルの偽造に携わっている。
そいつに頼んだんだ、数日後には完璧なのが出来てるはずだ。
その日俺は、何食わぬ顔で、圭の待つ家に戻った。
俺が帰るなり一番に圭は
「試験!どうだった・・・?」
と、緊迫した表情で聞いてきた。
「まあまあ・・・かな」
俺は胸の痛みに、罪悪感に耐えながら、それからの日々を過ごした。
そして、合格発表の日がきた。
「じゃあ、行ってきます・・・」
「・・・うん・・・」
圭、あと少しでお前の笑顔が見れるな。
- 148 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:22
- 103様
ありがとうございます。
お互い頑張って書きましょう。
その内更新が不定期に現象が起こりそうな予感・・・
- 149 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:50
- 俺はあの日と同じように印刷工場に向かった。
「おい」
不意に後ろから声をかけられ、背筋に悪寒が走った。
「用意出来てるぜ」
あいつだ。
俺が振り返ると、圭のものと全く同じソレを持ったあいつがいた。
「金は?」
「持ってきた・・・」
「早く出せよ」
俺は金と引き換えに、ソレを受け取った。
「じゃあな」
そいつとはもう会うことはないだろう。
俺はこれからワクワクしなくてはならない。
受かったのだから・・・。
教師に、なれたのだから。
圭は泣いて喜んでくれるだろう。
しかし、今の俺にそんなことが果たして出来るであろうか。
もう戻れはしない。
進むしかないんだ。
俺は決意を新たに、圭の待つ家に向かった・・・。
- 150 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:50
- 3年後。
俺は偽造の教員免許で、教壇に立っていた。
もう人を騙すのも、だいぶ慣れたことだった。
3年の間に、俺と圭は結婚した。
幸せだった。
全てが順調だった。
それがいけなかった。
1年前に、圭は不慮の事故で死んでしまった。
俺はそれから枯れ果てた。
家に帰っては圭を思い出す毎日。
でも、それも次第になくっていった。時間が、過ぎていった。
初めてクラス担任を任された年、俺の受け持ったクラスには、
教師になるのが夢だという女の子がいた。
教師という職業に憧れているその子とは、コミュニケーションも増えていった。
もっと知りたい、学びたい。そしてそれを、教えたい。
そんな彼女の視線を、俺は度々直視出来なかった。
こんなにも純に教師を、俺を尊敬している子がいる。
なのに・・・俺は。
免許を造るなんて・・・!
今更、自分の選んだ道を後悔していた。
- 151 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:50
- そんなある日。
俺は学校に残って、試験問題を作っていた。
「しつれーしまーす」
声とともに、職員室の扉が開かれた。
「なんだ、田中か。どうしたんだ?」
「部室の鍵を返しにきたんですよー」
「部室?今部活動はやってないだろう」
「先輩が部室で寝ちゃったんですよー、そんでぇ、起こすの苦労してぇ・・・」
「そうだったのか・・・」
俺は・・・圭と同じ道を選んだ。
「それで、今彼女は何処に?」
「多分、教室じゃないですかね」
「ありがとう、気をつけて帰れよ!」
「うぃーす」
俺は田中が出て行ったのを見届けると、彼女のクラスに向かった。
教室につくと、彼女は鞄に荷物を詰めている最中だった。
俺はドアの部分から、声をかける。
「何してるんだ?早く帰りなさい」
彼女が振り向き、目が合う。
「今帰ります」
昇降口に向かって行った彼女を呼び止める。
「ちょっと待て」
瞬間、体を強張らせる彼女。
「頼みたいことがあるんだ」
恐る恐る振り返る彼女。
「なんでしょうか?」
「此処じゃなんだから」
俺は生徒指導室に、彼女を誘導した。
「で、なんでしょうか?」
「さっきまで部室で寝てたそうだね」
「あ、ハイ・・・」
彼女は「しまった」という表情になる。
俺はおもむろに席を立ち、生徒指導室の灯りを消すと、懐中電灯で自分の顔を照らした。
きっと、あの時の圭と同じように、怖いんだろうな。俺の顔。
「実はな・・・」
俺は、圭と同じ道を選んだ。
Happy?End
- 152 :書きたい人:2004/02/15(日) 00:52
- ハイ、すいませんでした。
>>137に戻っちゃってください
- 153 :名無し娘。:2004/02/15(日) 01:50
- 3
というのは冗談で2
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