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平家3を できちゃった雑談47
926 :
リライト習作
:2007/04/22(日) 04:20
「? 何だろう、これ」
ドレッサーの引き出しの中に黒いケースがあった。
珍しくちゃんと整理しようと、普段半分くらいしか開けないのを全開にしたら、奥から出てきた。
たぶんアクセのケースだな。見覚えがあるような、ないような……。
取り出して見ると、シールが貼ってある。「Ayumi」の文字。
「あ」
梨華ちゃんとお揃いのピアスだ。「柴ちゃんに似合うと思うよ」と言われ、その気になった。
二人でつけようね、と言って買ったんだ。なのに、何となくそのまま引き出しの中に突っ込んでしまったんだよね。
たしか不思議な力があるってお店の人が言ってたけど、一度もつけたことはなかったっけ。
せっかくだから明日はこっそり学校帰りにつけてみようかな。
927 :
リライト習作
:2007/04/22(日) 04:21
校門をでてしばらく歩いてから、いつもの通りポケットからピアスを取り出した。
最近ではもう習慣になってしまっている。
それは、ささやかなストレス発散の方法だった。
進学校ということになっているこの高校の制服が、私はあまり好きじゃなかったんだ。
制服は、英単語や漢字、あの難しい方程式や化学反応式と同じにおいがする。
それが、制服をちょっと着崩してピアスをつけると心が紛れる。
まるで好きな香水をつけた時のように、はっとする、新しい自分を見つけたような気持ちになれる。
特に学校で疲れた時には、この「香水」はよく効くような気がしていた。
だけど、その香水は強すぎたんだろうか。
それともまだまだ先のはずの受験戦争に、私は知らない間にストレスを募らせていたのだろうか。
最近、私は学校帰りのふとした瞬間に、まわりに誰もいないのに、人間の声のようなものが聞こえることがあった。
その声は「…ゃょ……ゃょ……」と聞こえた。
それはかすかな声だった。
誰にも相談できなかったけど、「幻聴だ」と私は思った。
928 :
リライト習作
:2007/04/22(日) 04:21
だけどそうじゃなかった。
あれは、私が遅くまで出かけていた日だった。疲れて家に帰ると、ピアスをつけたままベッドに寝転がり眠ってしまった。
夜遅く、目覚めた。耳元であの幻聴だと思っていた声が、いつもの何倍もの大きさで聞こえてきた。
未知との遭遇、期待せざる邂逅、突然の出会いというものは時として人を完全に驚かせ、恐れさせ、失望させ、
落胆させる。そして時として我を失い、その結果として人は思わず叫んでしまうことがある、「何だろう、これ?」と。
それは私が、あのピアスを見つけたときと同じセリフだった。
ピアスの声がそうだったように、私の声もあの時の何倍もの大きさだった。
私が見たものは、ぼうっと宙に浮かぶこの世のものとは思えない小さな生き物だったのだ。
「あ、驚かせてもた。わたしはぁ、怪しいもんじゃなくてぇ、ピアスに住んでる精の高橋やよ、柴田さん」
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