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日立が自動洗浄機付きシェーバーを発表

1 :名無し娘。 :2007/08/30(木) 15:39
( `.∀´)y-~~ <バカね

4 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/14(金) 00:15
「今日からもずっとここですよ、後藤さん!」
小春はそう言うと、真新しい社員証を後藤の目の前にかざした。
『モーニング電気工業 製品企画課 久住小春』

5 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/14(金) 01:16
そもそもの始まりは、今にして思えばあの瞬間であろう。
「そんなわけないじゃない。バカね」
吸いかけの煙草を手に見下して笑う保田に、後藤が腹を立てた、あの瞬間。

6 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/14(金) 22:02
夕方の休憩コーナーは人もまばら。
西側の窓からは夕日が差し込む。
保田の右手の煙草の灰が落ちるのがなぜか後藤にはスローモーションに見えた。

7 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/14(金) 22:29
「私だってね、うちのシェーバーの切れ味には自信を持ってるわ。でも、今の時代、一つの武器で戦うのは難しいの」
保田は手元の薄紫色のシェーバーにスイッチを入れると後藤の目の前に突き出した。
「悔しいけどエイベの完全水洗いシェーバーは良く出来てる。清潔志向のデオドラント世代に上手くアピールしてるわ」

8 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/14(金) 23:37
「だったらどうすんのっ!このまま負けを認めなきゃなんない!?」
激昂が吐き出させた強く遣る瀬無い後藤の言葉を、保田は紫煙をくゆらせながら右から左へ受け流した。
「今度の会議でこの状況をひっくり返せるだけのプランを発表するのよ」

9 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/15(土) 01:46
モーニング電気工業。その明るい名前と真逆に、斜陽の会社。
創業10年を直前に迎えて社員の誰もが思っている事。このままでは。
「私の中のモーニング電気工業が終わってしまうんですよ!」

10 :はぶられっ娘。純情 ◆JunJo.ujO2 :2007/09/15(土) 05:36
「今度の会議までに……」。後藤は唇を噛んだ。「時間が足りないよ」
人材がいないわけではない。かつてヒット商品を連発した開発者もいる。若手も育ってきてはいる。
だが、一発で劣勢を引っくり返せるようなプランをすぐに出せる者が都合よくいるはずもない。後藤も例外ではなかった。

11 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/15(土) 10:20
「商品のプランに正解なんてないのよ」 保田は後藤から目を逸らせて、続けた。
「昔売れた商品が今でも売れるかなんてわからないわ。
 それなのに同じコンセプトの商品を繰り返してばかり」

12 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/15(土) 13:27
そこまで言うと保田は後藤に目を戻し、後藤のうなだれた様子を確認し、追い討ちをかける。
「今度の会議で新製品のプランが出来なければ、うちはエイベの後追いを開始する。二匹目の泥鰌を
狙う戦略に転換することに決まってるのよ。それでもいいの、製品企画課課長後藤真希」

13 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/15(土) 18:51
「私は……私は絶対、みんなが納得するようなプランを用意してみせる!」
後藤は自分を言い聞かせるようにそう叫ぶと、持っていたカップのコーヒーを投げつけて走り去った。
保田は全治一週間の火傷を負った。

14 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/15(土) 21:57
走り去る後藤はその背中をキラキラと輝く瞳で見つめる小春に気がつかなかった。
「後藤さん……」
そして小春は熱いコーヒーをかぶり悶絶している保田に気がついたけれど気にはしなかった。

15 :バックラッシュ ◆LTvvPcKs0. :2007/09/15(土) 23:36
保田と言い合った数日後、後藤は企画課の会議に出席していた。
「みんなが納得するプラン」しかしそれを見出す事もできず
暗い気持ちでの出席であった。

16 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/16(日) 10:14
圭ちゃんにあわせる顔がないよぉ…。
後藤は営業課課長・保田の全身包帯まみれの姿を思い出しため息をついた。
コーヒー火傷でおおげさすぎだぁ…じゃなくて、プラン浮かばなかったぁ。

17 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/16(日) 11:38
「失礼します」
もう、そんな時間か。会議が始まってだいたい一時間もたつと庶務課がコーヒーと灰皿の交換にやってくる。
しばらくコーヒーを見るのもうんざりな後藤だったが、煮詰まった雰囲気が少しでも変わるのはありがたかった。

18 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/16(日) 12:03
(……庶務課の人も大変だよなぁ)
運ばれるコーヒーを見ながら、他人事のようになんとなくそんなことを考える。
(だって、結局コーヒーを淹れるのは機械でも、その操作は人間がするわけだし……)

19 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/16(日) 19:06
「ん?機械だけど人間が操作する……?」 (ピコピコピン♪)
閃いた、そう思ったがこの擬音は違う。自分にはそんな音で立つ物はない。
そう考えた後藤は「ピコーン」と口に出して言い直してみたけれど時すでに遅く、良いアイディアは遠く彼方へ去ってしまっていた。

20 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/17(月) 00:21
「ご苦労様」と開発部長が半ば上の空で呟く。「いつも悪いね」
「いやー、大したことないですよ」 という声に聞き覚えがあり、後藤は顔を上げた。
「でもー、コーヒーが勝手に移動してくれれば楽なんですけどね」 と笑ったのは、久住小春だった。

21 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/17(月) 10:07
コーヒーが勝手に…その言葉が後藤の頭をぐるぐる回る。
ぐるぐる回って、回って、回って、やっぱりあなたが好き。
「小春ちゃん!」後藤は勢い良く立ち上がる。「それいただき!」

22 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/17(月) 12:16
なんのことか分らずキョトンとしている小春を尻目に、後藤は興奮気味にまくし立てた。
「水洗いシェーバーは確かに画期的だけど、結局は自分の手を使わなきゃならないんだ。
しかし、全てを自動で行えれば……そう、清潔に安全と時間の節約の2つの価値をプラスできる」

23 :はぶられっ娘。純情 ◆JunJo.ujO2 :2007/09/17(月) 16:33
「全自動! ウォー!!」
小春は関節がないかのような妙な動きでリアクションをとった。
「シェーバーが自動で顔にくっついて自動でヒゲを剃ってくれるんですね、後藤さんっ!!!」

24 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/17(月) 19:38
再び会議室は重苦しい雰囲気に包まれた。
小春はハッと気づいたが、すぐに止めるのは恥ずかしかったので奇妙なアクションを続けた。
それはクビ振りシェーバーの充電が徐々に切れていくさまを演じているように見えた。

25 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/18(火) 22:33
「小春ちゃんの言う事にも、一理ある・・・かな」
後藤はコーヒーカップを両手で包みこんだまま、呟いた。
「今あるシェーバーの問題点を改善すれば、それが画期的な商品になるじゃん!」

26 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/18(火) 23:18
保田の言っていた言葉を思い出す。今までと同じことをやっても仕方ないのだ。
「自動で顔にくっつくのは難しいかもしれないけど、自動で水洗いならできるんじゃないでしょうか?」
後藤は意を決して、開発部長に切り出した。

27 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/19(水) 07:54
開発部長は首をひねっている。
「イマイチ『自動で水洗い』の図が頭に浮かばないのだが…」
足のついた髭剃りが自分で洗面台に歩いて行くのか?

28 :はぶられっ娘。純情 ◆JunJo.ujO2 :2007/09/19(水) 12:57
「二足歩行か」。古参開発部員の矢口が応じた。
「それならウチにはASIMO以上の蓄積があるからな」
この会社、無駄に凄い技術力があった。販売には結びついてないのだが。

29 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/19(水) 22:00
「水利まで移動するのは、まあいいにせよ」
突如として活気付く会議。さっきまで煮詰まっていたのが嘘のようだ。
「どうやって水利を認識させるのだ? 電気カミソリに」 会議は踊る、されど進まず。

30 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/20(木) 21:58
「水は洗面器にでも用意するのか?」開発部長が尋ねる
「自分で蛇口をひねるのが理想ですね」矢口開発部員が答える
「イメージはカラスの行水」腕組みして答えたのは、久住小春。

31 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/20(木) 22:36
ブレインストーミング。
誰かの出した意見に否定的な意見を言わず、とにかく意見を集めるのが目的。
その証拠に皆元気になり、笑顔が浮かび、庶務課の子まで居座っている。

32 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/21(金) 00:44
これはどう、あれはどうと皆が口々に考えを述べだしたのを見て、開発部長が言った。
「急に意見が出だしたな。少しこれで考えてみようか」
「ホントですか!?」と大はしゃぎで答えたのはなぜか小春だった。

33 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/21(金) 22:28
「なぜ君がそんなに喜ぶのかね」
「だって小春の一言で出たアイディアですもん小春もお手伝いすべきなんです」
「ふむ。確かにそうかもしれんな。いや、それこそがロックやん」と開発部長はワケの判らない言葉で頷いた。

34 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/22(土) 02:01
こうして小春は応援要員として、庶務課と開発部製品企画課を行き来する日々を送り始めた。
「うひゃ、うひゃひゃ、うひゃひゃひゃうひゃ」小春の頭は憧れの後藤と働く喜びでいっぱい。
直線的な行ったり来たりで忙しい毎日も、まったく苦にはならなかった。

35 :はぶられっ娘。純情 ◆JunJo.ujO2 :2007/09/22(土) 15:22
煮詰まって雰囲気が暗くなると、小春は明るく「みなさん! テイクアウト・イージーですよ!」と鼓舞した。
「うん、そうだな」「そうだそうだ」「顔をしかめててもアイデアは出ないもんな」
この連中はみんな英語が苦手だったのだ。

36 ::2007/09/23(日) 11:28
活発な会議でデザイン図のラフスケッチがみるみる溜まる。
紅白歌合戦でアイドルがさせられたメイドのような格好をした美女ロボットが
右手をすぽっと抜くと手首が髭剃りになっているのが一番現実的だった。

37 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/24(月) 22:43
ひとまずイメージを固めるためと言いくるめられ、ミニスカメイド服を着せられる小春。
「こんな感じですかあ?」
資料だとやたら写メを撮られながら、小春なりにロボットをイメージして歩いてみたが固まったのは違うものばかりだった。

38 :麦わら帽子 ◆Oa52DB/jc6 :2007/09/24(月) 23:33
さっそく髭をそってみるように言われた小春は指をカミソリの刃に見立てて顔に近づけた。
ところがそのまま微動だにしない。どうしたのかと皆が思った瞬間小春が喋った。
「ところで髭ってどうやって剃るんですか?」

39 :うっかめいえり娘。 ◆bst10eX4UA :2007/09/24(月) 23:54
その瞬間、会議室の皆の目が合った。そして微かに頷きあう。
―――どうやら間違い無いわね。
―――えぇ。久住小春、まだ脇はトゥルトゥルのようね。

40 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/25(火) 01:50
結局その日の会議はそこで行き詰まり、小春がトゥルトゥルであることが知れ渡っただけだった。
翌日、小春は早速庶務課の先輩3人にひげの剃り方を聞いた。
親切に教えてくれる先輩社員の亀井と道重のはるか向こうで、なぜか田中が泣いていた。

41 :バックラッシュ ◆LTvvPcKs0. :2007/09/26(水) 23:18
それから数週間後が経った。コンセプトは決まっている。後は設計なのだ。
「みんな小春で遊んでないでなんとかしてよ!」
仕事の進まない課の連中に遂に後藤がキレた。

42 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/26(水) 23:27
「え?試作品ならもう作ってますよ」
当たり前のような笑顔で話す小春に後藤が「そんなハズないじゃん」と返す。
「それっぽい図面?があったんでお願いしてきちゃいましたあ」

43 :A:2007/09/27(木) 07:53
「ぷろとたいぷ、はいっといで!」
小春そっくりのロボットがモデルウォークで現われ、保田の前で止まる。
温かな泡をその顔に塗りたくった次の瞬間、かみそり1本で顔中の産毛を剃り落とした。

44 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/27(木) 22:50
あまりの出来事に会議室は静まり返る。そして次の瞬間波のような拍手と賞賛の声がおとずれた。
「凄い…凄いね、小春。よくやったね…」後藤も驚きの表情を隠せない。
「でも、もうちょっと正確に剃れるように改良しないとね」後藤の視線の先には、顔中血だらけの保田がいた。

45 :うっかめいえり娘。 ◆nG2AKgc/zs :2007/09/28(金) 07:29
『今期予算どころか資本金まで使い切って作った』その事実に保田が目を回す。
「どーすんのよ!もう絶対潰れるじゃない!いや、すっごい楽しかったけどさぁ!」
「大丈夫!」小春が笑う。「さっきアラブの石油王が現金で買ってくれました」

46 :バックラッシュ ◆LTvvPcKs0. :2007/09/28(金) 12:57
【アラブの石油王ご用達!】早速キャッチコピーも完成し
プロジェクトは動き出す。髭が男のシンボルであるアラブ圏での商品のヒットは
日本のみならず世界中で注目を集めた

47 :はぶられっ娘。純情 ◆JunJo.ujO2 :2007/09/28(金) 16:31
「小春にこんな凄い才能があったなんて」。改めて後藤は賞賛した。
「小春は後藤さんの背中を見て頑張ったんですよ。でも資金かけすぎたから回収しないと」
小春の言葉に営業の光井が応えた。「私たちが死に物狂いで売りますよ」

48 :麦わら帽子 ◆Oa52DB/jc6 :2007/09/28(金) 23:10
光井は「初級アラビア語講座」教科書を片手になおも中東を駆け回った。
初めは相手にしなかった大富豪たちも石油王と一緒に写ったロボットの写真を見ると目の色を変えた。
「話を聞こうじゃないか。」光井はこの言葉を最初に覚えたほどだった。

49 :アンチョ・マーレ ◆33BCtp.TEA :2007/09/28(金) 23:17
その頃の小春はと言えば、相変わらず庶務課の業務に追われていた。
しかし実績ある人間を会社は放っておかず、企画課に出入りする毎日。
「直線的に行ったり来たり・・今日は泊まりだって」

50 :4-6-3 ◆MS92LJfmIM :2007/09/28(金) 23:17
ロボットは売れた。売れて売れて売れまくった。
あっという間に開発費は回収でき、数ヶ月後には思いがけぬ大きな黒字へと転じた。
ついでに、光井は仏教からイスラム教へ改宗した。

51 :うにばーさる・S・J ◆TSwdSwnvrg :2007/09/28(金) 23:29
奇跡の商品『Maid Shaver “KOHA PINK”』の裏で起きていた静かなムーブメント。
後に伝説のヒットメーカーと呼ばれることとなる時代のアイドル久住小春。
彼女の新しいスタートはこの一言から始まるのであった……

52 :ウルスカ ◆16cm/qMt4A :2007/09/28(金) 23:36
終わり

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