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スケバン刑事 コードネーム=松浦亜弥

1 :名無し娘。:2006/10/07(土) 07:38


          ノノハ))    4代目スケバン刑事松浦亜弥
        从‘ 。‘)^)@  おまんら許さんぜよ!!
        リ`ヽ_ソ
        j___f
        /l l l l|
        l_|_|_|_i
        |ーl-|
        l__l___)

13 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:49


タンッ

二代目DD刑事 コードネーム・麻宮サキ

  

14 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:49

【プロローグ】

15 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:50

どことなく なんとなく

長い長いこの地球の歴史の

少しだけどこの私も一部なんだわと思わせるような

晴れやかな青空の下



あたしはラストチャンスになるであろう
ハッピー8期オーディションの会場の門をくぐる。
モーニング娘。に入りたいと思うようになってから早六年が過ぎた。
松浦亜弥ばりに年齢を誤魔化して受けたキッズオーディションも入れればこれが七回目のトライ。
現人神新垣様の生写真をお守り代わりにぎゅっと握り締める。
ああ
『こらー、かめー』
みたいに怒られるためなら地球だって滅亡させてやるのに。

16 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:51

世が世なら今頃あたしは黄金の4期メンバーとして

いやいや

世が世なら今頃あたしは現人神と同期の5期メンバーとして

いやいや

世が世なら今頃あたしはもっさんの代わりに6期メンバーとして

いやいや

世が世なら今頃あたしはミラクルエースの相棒役の7期メンバーとして

いやいやいや

もう8期メンバーでいいやいや

などと思いながら面接で歌う曲の確認を入念に行う。
携帯用小型音楽再生機器から聴こえるシャボン玉を何度も何度も何度も
ウォークマンという商品名にしては有名すぎる単語は公の場で言っていいのかな。
オーディションに受かったらラジオマスター梨華ちゃんに教えてもらお。

17 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:51


「それでは4714番の方どうぞ」


呼ばれたあたしはすっと立ち上がる
どう見ても50人くらいしかいないオーディションなのに
なぜ3000番とか4000番代の番号があるのかについては深く考えない。
あたしがスーパースターになれば解決される問題だ。
スターになりたい。
そのためにあたしは大学を辞めた。
恋人とも別れた。
バージニアスリムも辞めた。


あたしは面接官に一礼をする


作り笑顔とかなんかは上手くできない
不器用でも毎日を楽しめる
ハッピーな毎日
野心的でいいじゃん。

不器用なあたしの人生最大の野心
モーニング娘。に入るという夢に向かって
歌わんとするまさにその瞬間

18 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:53


「うらあああああああああ動くんじゃねえええええええええ」

「どけおらあああああああ」

「こんなオーディションぶっ壊してやるぜえええええええええええ」



響き渡る怒号。
なにがなにやらわけがわからずおろおろする関係者。
どうやら熱狂的なファンが会場に乱入してきたらしい。
なぜかそのおっさんは分厚いウエストポーチみたいなものをつけている。
どうみても40代のおっさんウエストポーチってさ。
熊井ちゃんのランドセル以上に似合わないよー。

あたしはスッとその男の背後に回りこみ延髄に蹴りをくれる。
紺野あさ美の影響で始めた空手はいまだに茶帯のままだけど
それはあさ美ちゃんへのリスペクトの気持ちから。
腕前は極真二段は堅いところ。
蹴り一発であっけなく失神するおっさん。いやまあ本当におっさんだよ。

遅らせばながら駆け寄ってくる警備の人間たち。遅いよ。
あやみきユニットを作るのくらい遅い。やるなら2003年にやれよ。
まあいいや。こいつを片付けてオーディションを再開しましょうよと
おっさんの手を引いたその時


チッチッチッチッ


ウエストポーチから聞こえる時計のような変な音。なんだこれ?

19 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:54

判断する間もなくあたしは警察の人間に乱暴に抱えあげられる。
乱暴に股座に突っ込まれる警察官の手。
ミキティそこはののたんのおまんまんれすよと暴れようとするが―――



「早く離れろ!ダメだ!爆発するぞ!」



え?
爆発?
うそおおおおおおおおおおおおお



次の瞬間、聞いたこともないような爆音がこだまし――――

視界は一面、飯田圭織のスケジュールのように真っ白となり―――

あたしの意識は遥か彼方―――

20 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:55



・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・

  

21 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:56

「気がついたようですね」


うん?暗い部屋。スタンド一つだけの照明。ここどこ?


「まあこれくらいでくたばっちまったら使い物にならないっすよ」


話しているのは・・・・・二人の男?


「それでは早速本題に入りましょうか」


あ。これってもしかして新手の企画?ドッキリ系?


「お前は本日付で特命刑事に任命された」


とくめい?匿名?特命?  けいじ?慶二?慶太じゃなくて?

22 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:56

「お前は私立松ぼっくり学園に潜入して我々の捜査に協力してもらう」

「捜査?刑事ってこと?なになになになになんなのなによなんなのよー」

「実はこの高校では爆弾騒ぎが頻発しているんですよ」

「お前はそこの転入生・麻宮サキという名前で潜伏して捜査を行う」

「ふざけんなよ!なんであたしがそんなことしなくちゃいけないんだよ!」

「学校は生徒達の聖域だからな。俺たち大人にゃ手が出せないってわけよ」

「あたしもうとっくに二十歳過ぎてんだけど」

「大丈夫。松浦亜弥がスケ番刑事で女子高生役をやったときも二十歳過ぎてたから」

23 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:57

あの人は15の頃から老け顔だったからじゃないの
という言葉をあたしは飲み込む。
一体全体なんなんだよこの展開は。トクメイ刑事?なにそれありえない。
爆弾騒ぎってなんなのよ
そんな危ないことに巻き込まれるなんて絶対嫌。
不器用なあたしに捜査なんてできるわけ・・・


「もし協力してくれたら、寺田君に話を通してあげてもいい」
「やります」

24 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:58

あたしが一応確認のために寺田って寺田農のことじゃないですよねって言う前に


「これが制服」 「これが学生証」 「これが携帯電話」

「そしてこれが・・・・・・君に許されたたった一つの武器だ」

「なにこれ・・・・・ヨーヨー?」

「上手く扱えるかな?」

「ふざけんな!あたしのたった一つの武器はモーニング娘。を愛する心だ!」

「ほっほっほ。よろしい」

「そんなお前にコードネームを与えよう」

「このコードネームは・・・・長らく使われていなかったんですけどね・・・・・」


あたしはヨーヨーを手に取る。
シャキーンと格好良さげな音がして―――
側面の両側の丸い部分にアルファベットの文字が二つ並ぶ。
――――なんだこれ?


「それが君のコードネームだ」

25 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:59


─┬────ヘ         ─┬────へ
  │        \            │        \
  │         l          │         l
  │           ヽ           │         ヽ
  │          │          │         │
  │          │          │         │
  │          │          │         │
  │            ,/         │           ,/
  │        /          │        /
  │       /             │       /
─┴────'.            ─┴────'


                                         │
  ──┬───┬──.         |                   │
      │      │     │   │     ───────┼───────
      │      │     │   │                   │
      │      │     │   │         ┌────┼────┐
      │      │     │   │         │        │        │
      │      │     │   │         └────┼────┘
  ──┼───┼── .   | .     |                   │
      │      │     │   │         ─────┼─────┐
      │      │     │   │                   │          │
      │      │     │   │     ───────┼─────┼──
      │      │     │   │                   │          │
     /     │          │         ─────┼─────┘
      │      │          │                   │
     ,/        │          │                   │
    ,/         │          │                   │
  ,/           |.         ──┘                 ─┘

26 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 23:00






→To be continued

27 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:12


どっちが先だったかなんてどうでもいい。


大事なのは、だ。


その瞬間にヤツに向かって笑うことができたかどうか。


とびきりの笑顔で


松浦亜弥のような


意味深な、確信犯的な、とびきりの笑顔で。
  

28 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:12

【第一話  ドッキドキ! DDメール】

29 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:13

警察から渡されたセーラー服を着てあたしは高校へと向かう。
地下鉄北18条駅を降りて創成川方向へと歩みを進める。
やけに広い道路。やけに間隔の広い家々。この街に来てまだ二日。
Gパン履くのには慣れたが地下鉄のコツはいまだつかめない。

制服にまとわりつく雪虫がうざい。
雪虫は振り払うと幻のユニット「あぁ!」のようにあっけなく崩れ去る。
角を曲がるとれいなの胸と同じくらい貧相な校舎が目に入る。

一見廃墟のような校舎は、灰色と一言で片付けることができないくらい
複雑な灰色で染められてるが、校庭は広く、ポプラの木々が高くそびえている。
肛門、じゃなかった校門に吸い込まれていく生徒達は
みな一様に高橋の肛門笑顔を見せられた本体ヲタように精気がなく
どんよりどんよりと曇っている。

爆発騒ぎねえ。
そんな元気ありそうなやついないけど、もしかしたら日常生活で
抑圧されている屈折した感情を一般人には理解できない方法で
解放する真性オドリストみたいなやつがいるのかもしれない。
どうでもいいけど「タイガー」ってただ立ってるだけなんだからヲタ芸じゃないよね?

30 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:13

「みんなに紹介しよう。転校生のー、麻宮サキさんだ」

「いえええええええええええええええ!」
「れいにゃぁぁぁおおれいにゃあぁぁおおええぇぇぇ!!」
「うおうおうおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ひゃっほううううううううううううううう!」
「れいにゃぁぁぁおおれいにゃあぁぁおおええぇぇぇ!!」


色じれを歌い出さんばかりの勢いで盛り上がる教室内。
あたしゃ福岡から来たわけじゃないんだけど。
それにしてもなんだよこの盛り上がりよう。
そんなバカどもは無視してあたしは空いている一番後ろの席に座り教科書を


「はじめまして。DD刑事さん。あたしは秋山麗華。よろしくね」

31 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:14

ずきゅぅうううううーん。
と初めていしよし小説を読んだ時のような衝撃があたしの胸を走る。
DD刑事?なにそれ?いきなり?
あたしはあわてて自分の身の回りをチェックする。

鉢巻は巻いてないし当然そこには八つ墓村のようなサイリウムも指してない。
特攻服も着てないし生写真も体に貼り付けてないし
手持ちのラジカセから大音量の「Sexy Boy」もかけてないし
首から下げたチケットホルダーにこれ見よがしにハロコンのチケットも入れてないし
デブじゃないしハゲじゃないしリュックも背負ってないし
「水道の出しっぱなしはやめる」みたいなエコ活動以前の問題のような発言もしていない。

なぜにばれたの?しかもこの子刑事って言ったYO!バレてたら捜査にならないYO!
捜査は打ち切り?モーたいやMUSIXだってもうちょっと続いてたYO!
あたしはなぜ心の中で吉澤口調になったのかを真面目に考えることなどせずに
隣の席で微笑んでいる亜麻色の髪の乙女を見つめる。
ごっちんもサントワマミーとか君といつまでもをカバーしてもダメだよね。


「幸せだなあ」

「は?」

32 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:15

「またDD刑事さんとお知り合いになれて。幸せだなあって」

「また?」

「あら。あなた知らないの?」

「何が?」

「あなたの前にもね、転校生がいたのよ」

「初めて聞いた」

「爆弾騒ぎのこととか色々調べてたみたいだけど」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「死んじゃった!」

「冗談だよね?」

「死んじゃったの。どっかーんって爆発して。うふふふふ」

「誰がやったんだ?」

「うふふふふ。二代目さんも死なないように気をつけてね」

33 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:15

あずすーんあず学校が終わるやいなやあたしは携帯を手に取りやつらにメールする。
携帯メール打つのもだいぶ早くなったし。
まあそんなことはどうでもいい。刑事だってばれてんのに捜査なんかやってられっかよ。
世が世ならあたしはモーニング娘。のセンターで歌っていた人間なんだ。
この際それがココナッツ娘。のセンターでもいいや。ついてこいアヤカ。
こんなわけわかんないような学校にいるくらいなら
同じくらいわけわかんないようなことやってるアップフロントと契約する。

とにかくもう一度やつらと話しなくちゃダメだ。
「とにかくすぐ会いたい。もう一度話さなければならないことができた」
的なメールを送信してから、間違えて別れた彼氏に送信してしまったことに気づく。
唯一覚えていたメールアドレスが別れた男ってのも情けない話。
あたしは一応、間違って送信したことを詫びるメールも送る。なにこの律儀さ。
未練なんかじゃないよ。
ハロプロヲタには未練なんて言葉は存在しないのさ。

あたしはファミレスに入って一人でコーヒー頼んだ。
それは選挙の日に投票行って外食するのと同じくらい必然的な行動。
少し少しほんのまた少し「大の大人な」気分だわ。
改めてあの時警察でもらった名刺に書かれているアドレスを打ち込む。
メールを入れてみよう。返事すぐかな?
あー、あいにくこの店圏外っぽいわ・・・・・

34 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:16

【ドッキドキ! DDメール  終わり】





→To be continued

35 :名無し娘。:2006/10/19(木) 22:35
(●^▽^)<よくもまぁこんな丁度良いスレがあったものですね

36 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:39

【第二話  トロピカ〜ルDDして〜る】

37 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:40

「そういえばあたしはまだあんたの名前を聞いていない」


西3丁目通りの喫茶店であたしは例の刑事と向き合う。
あの時二人いた刑事の若い方。年は三十代前半ってところか。
刑事とは思えない垢抜けた服装。ジャニーズ系の涼しげな顔。
それらの気高い調和を全てぶち壊しているmチックなアフロヘア。
なんだこいつ。ミラーボール星から来たのか?


「おいおい。そんなことのために呼び出したのかよ」

「もったいぶらずに教えろよ」

「名前なんてない。名無し娘。ってわけだ」

「ふざけんな。名前がなきゃ呼びようもないだろ」

「じゃあ仮に・・・・・『スーパーウルトラキュートでセクシーダイナマイトかつ
トークもキレキレ新バラエティの女王にしてプレイボーイの連載も絶好調
矢口真里ことシンデレラガールネバーエンディング売れっ子うひうひうはうは
超絶ソロシンガー兼ハロコン司会担当145cmちゃんよろピーンク』でどうだ?」

「どうだって言われても・・・・・・・・バカか? 長いよ」

「略して ―――― 矢口シネ」

「お前が氏ね」

38 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41

「あたしの前にもあの高校で捜査してたやつがいたらしいな」

「おぉ」

「転校初日にあたしが刑事だってこと知ってるやつがいた」

「いぇあ」

「こんなんで捜査なんかできるわけないだろ?なに考えてんだ?」

「ふゎ、ふゎ」

「ふざけんな!」

「・・・・確かにお前と同じように捜査を行っていた特命刑事がいた」

「死んだって聞いたけど」

「ああ。爆弾魔に返り討ちにあっちまったみたいだな」

「名前は」

「ポーラ。 ポーラ・ジョンソンだ」

「外人かよ!そんなん目立ってしょうがねーだろ!」

「だが彼女が特命刑事だって知っている生徒はいなかったはずだ」

「けどよぉ!」

39 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41

「実はな。もう一人刑事がいるらしいんだ」

「あぁ!?」

「公安の方から一人、あの学校に潜入して捜査を行っている刑事がいるらしい」

「公安だと?」

「ああ。そっちの線からも爆弾魔に関する捜査をしているらしい」

「初耳ですっ!」

「公安の方には・・・・・どうやらこっちの動きは筒抜けらしい」

「マジかよ!」

「どっちにしてもだ」

「?」

「その秋山ってやつが事件にからんでいるんじゃないのか?」

「本当に?う・・・うん。」

40 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41

夏の妙な雰囲気でついうなずいちゃったけど
秋山麗華にどうやって説明しようかな?
トロピカル取調べ?mは本気らしい。


「最後にもう一つ」

「なんだ?」

「あたしに隠し事してること、もうないだろうな!」

「今のところはな」

41 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42

m刑事はそんな思わせぶりな捨て台詞を残して去っていった。
あたしは笑っていいともでミキティの出身地を訊ねたときのタモリくらい
何度も何度も食い下がったが、とうとうヤツは最後まで名前を言わなかった。
クソが。
あたしはすっかり温くなったコーヒーを残して喫茶店を出る。
地下鉄には乗らず歩いて北12条まで下る。
どうってことない距離だ。なっちとかおりんの心の距離に比べれば。

家に帰ってメールを見ると予想通り彼氏からのメールが入っていた。
まさか今年のイブまでもたない関係だとは思わなかったけど
あたしが選んだのは聖なる鐘が鳴り響く夜じゃなくて目先の薄汚いコネ。

でもいいんだ。どんなに汚い仕事だってやりきってみせるさ。
あたしはハロプロに入るためなら手段は選ばないし、
入った後もなりふり構わず沖縄の駐車場だろうがどこだろうが
立派にアイドルしてみせるつもりだった。

42 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42

まさかDD刑事だとかそんなことを彼に説明できるわけもないので
あたしは適当な嘘をならべて彼に別れのメールを送る。

布団に入りうつらうつらとしながら考える。
聖なる鐘が鳴り響く夜がどんなにロマンチックだろうがそんなのは嘘だ。
真実なんかじゃない。本当のあたしを晒せるわけがない。

本当のあたし。
そんなものが一体どこにあるのかはわからないけど、
とにかく今はこの事件を解決することだけを考えよう。

43 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42

めざまし時計がふたつある。でも起きない。
憂鬱な朝。
男と別れた後だろうが石川が金髪にした後だろうが、朝は必ずやって来る。

学校はとっくに遅刻だがあたしは自転車をかっ飛ばす。
ゴー!ゴー!レッツゴー!バイセコー!
自転車通学は禁止なので学校の脇の狭い路地に
はりきってアルバイト、ローンで買った愛車を隠すようにして止める。

路地を抜けて学校の裏庭にあたる塀を乗り越える。
塀塀松っちゃん。塀塀浜ちゃん。HEY!HET!HEY!MUSIC CHAMP!
ハロプロ勢は日曜はコンサートがあるんで番組収録は平日にしてくれないかな?
裏庭の木々をバッリバリアバリと派手な音を立てて折りながら
あたしは校舎の裏に着地する。
一斉に振り返る学生の群れ。
HEY!HET!HEY!お前ら授業中なのになにやってんだよ。

44 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43

10人くらいの人の輪の中心でうずくまっている一人の女の子。
まるでシャボン玉のPVのローライズガキさんみたいにびしょびしょの濡れ鼠。
パンツははいてるよね?とか冗談言える雰囲気じゃないみたい。

ニヤニヤしながらこっちを見てる下品な男子生徒。ざっと見て10人。
それに負けないくらいニヤニヤしている下品な女子生徒。ざっと見て5人。
そして一人椅子に腰掛けている秋山麗華。

麗華は、ニヤニヤしてる下品な15人と足せば丁度ゼロになるんじゃないかって
いうくらい上品な笑顔であたしを見つめる。やんなるくらい綺麗な笑顔。
細長い顎。細長い眉。細長い鼻。細長い瞳。
それでいて調和のとれた、凛とした美しさ。
世が世ならあたしも麗華ヲタになっていたかもねっ!ていうくらい。

45 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43

「あら麻宮さん。そんなところからご登校?」

「てめえ。なにしてんだよ!」

「あらいやだ。下品な口調」

「何してるってー!僕達はこういうことをしているのー!」


などとあからさまに小馬鹿にした口調で
一人の男子生徒がうずくまっている女子生徒をモップで殴る。
1500mを走り切った後のなっちのようにぐったりとする女子生徒。


「あれー、琴美ちゃんどうしちゃったのでちゅかー」

「つまんねーぞコラ!なんか反応しろよ!」


ゲラゲラゲラと下品な笑い声が響く。
同時にあたしに向かって挑発的な野次を繰り返すバカどもたち。
琴美と呼ばれた女の子はあたしとは決して視線を合わせようとはしない。
足を組み替えながら目を細めてあたしに微笑みかける麗華。

そうかよ。そうか。
はしゃいじゃってよいのかな?
麗華がちょっとDD刑事っぽいKICKを期待してたらどうしよう。
逮捕状取らなくちゃ・・・・・

46 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43

【トロピカ〜ルDDして〜る  終わり】





→To be continued

47 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:00

【第三話  LOVE DD色】

48 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:01

「おい!いい加減にしろ!」

「あぁ?転校生は黙ってろよ!」

「いい子ぶってんじゃねーぞコラ!」


コラと言われても10円コラしか思い浮かばないあたしはDD。ていうか狼住人。
合わせて30円くらいの価値しかないような不良ども10人があたしを取り囲む。
10人か。まともに相手するにはちょっと多いな。
大検受験や語学留学のために脱退するやつはいないかね?

49 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:02

「邪魔すんなよコラ」

「犯っちゃうよコラ」

「調子乗んなよコラ」


コラコラコラとうるさい30円軍団はゆっくりとまばらにあたしに近づいてくる。
悪ぶってはいるが言う程喧嘩慣れしているようには見えない。
こういうやつらを相手にする時に肝心要なのは好奇心・・・じゃなくて最初の一撃。
気分は恋愛戦隊ならぬDD戦隊ヲタレンジャーなあたしは
太ももに装着している革のホルダーに手をかける。
おもちゃのヨーヨーの3倍くらいのずっしりとした
あいぼん(さくら組時代)的な重量感が掌に満ちる。

次の瞬間、あたしの掌からヨーヨーは放たれ ―――

50 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:03

あたしの掌からヨーヨーは放たれ ―――
秋山麗華の頭上約10cmのところを通過する ――― 予定だったんだけど。
あたしのヨーヨーは予定通りになんて行くわけない原宿6:00集合ばりに
予定通りにはいかず、目標の約3メートル右にある窓ガラスを直撃した。



ガラガラガラガラガッシャーン!



「た、隊長! 大変です。ものすごい音であります。」
「わっかっておる!」
「一体、なにがあったというのだ。」
「は! ですが、まったく予測できません。」

などと売上86万枚(オリコン調べ)の3rdアルバムのような小芝居を打つこともなく、
30円軍団たちは、醜聞発覚から矢口脱退が決定するくらいの速さで撤収していく。
はえーはえー。喧嘩慣れはしてなくても逃げるのなら慣れてますってか。

窓から顔を出す教師らしきおっさん。
うずくまっていた女の子の手を引いてあたしもそこから立ち去る。
手を握って乗り越えよう、青春!なーんてゴマイケルな冗談は言えなかった。
だって握り締めた彼女の手は―――
生きている人間のものとは思えないくらい―――冷たかったから。

51 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:04

★ ★ ★ ★ ★



窓を割り、ころころと転がっていくヨーヨーには見向きもしないで
サキは琴美の手を引いて駆け出していく。
旧校舎の二階と新校舎の二階を結ぶ渡り廊下の窓から
一人の男がその光景をじっと見つめていた。
男は深く帽子をかぶり、萩原舞のような大きなサングラスをしている。
そんな学校にも℃-uteにも不似合いな格好の男は―――微かに笑っているようだった。


やれやれ。

今度の刑事はヨーヨーもろくに扱えないのか。

前の特命刑事よりも大したことないかもしれないな。
           . . . .
あんな調子で決起集会を阻止できるかな?

いや、その前にそこまでたどり着けるかどうか―――

まあ、お手並み拝見といったところだな。



★ ★ ★ ★ ★

52 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:04

あたしは左手にカバンを、右手に彼女の手を持ってずいずいと屋上へと上っていく。
あやや大脱出マジックの鎖のように固く結ばれたあたしの右手と彼女の左手。
それって本当に固いんだろうか?とか大の大人は聞いちゃいけない。
あたしが爆破されたらモーニング娘。のメンバーは泣いてくれるだろうか。
まあ、どっちにしてもそれはあたしが娘。に入ってからの話だ。

あきらかに授業中だと思われる時間帯の屋上には誰もいない。
あたしはたまたま持っていたTシャツをカバンから取り出し彼女に渡す。
かくかくと震えながら無言で服を着替える彼女。
Tシャツの胸に書かれた「NO BLOOD FOR OIL」の文字を怪訝そうに見つめる。


「おい、名前は?」

「え?」

「名前だよ名前!お前の名前」

「琴美・・・・・・」

「本当に琴美っていう名前なのか!?」

「どういうこと?」

「いやまあ・・・・・」

53 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:05

本名は麻琴なのに不良どもに琴美琴美といじめられてたのかと
思っていたのだが・・・・・・・それは気の回しすぎだったみたい。
9合目まで上らせといて無理矢理富士登山をやめさせるとか
どれだけハイレベルないじめなんだよと。

タオルで濡れた髪を拭く琴美は、同性のあたしから見てもドキッとするほど可愛い。
黒目勝ちな澄んだ瞳。ぺちゃっと潰れた鼻。丸みを帯びた頬。
あの麗華とは何もかもが正反対な造りの顔立ちだが―――
よく見れば麗華に負けず劣らず美しい。
麗華が彼女をいじめる理由はそんなところにあるのだろうか。

54 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:07

「なんでやられっぱなしなんだよ。やり返せよ」

「そんな簡単に言わんといて」

「黙ってるから相手が付け上がるんだよ!」

「やり返すなんて。そんなん無理やわ」

「先生は?先生には言ったの?」

「先生なんてなんもしてくれへんよ」


琴美はゆっくりゆっくりと話し出した。
田中れいなのMCのように要領を得ない琴美の話をまとめるなら―――
田中れいなのように地方から引越してきた彼女は、
田中れいなのように引っ込み思案な性格もあって
田中れいなのように今は友達らしい友達もいなくて、
田中れいなのようにTDSデートに連れて行ってくれる男もおらず、
田中れいなのように情熱的な送り迎えをしてくれるマネージャーもおらず、
田中れいなのようにずっとハブられているらしい。

55 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:07

「よしわかった!じゃあとりあえずあたしと友達になろう」

「え。アカンよ。そんなんしたら麻宮さんもいじめられるわ」

「大丈夫、きっと大丈夫。きっとやる気次第」

「変なことせんといて!頼むからあたしに構わんといてや!」

「大丈夫、きっと大丈夫。全部自分次第」

「なあ、なんでそんなん言うん?格好つけんといてよ」

「大人ぶる気も、意地を張る気もないわ」

「嬉しいけど・・・・あたしが余計にいじめられるだけや」

「大丈夫。あたしが琴美のこと守るから」

「麻宮さん・・・・・・」

「だからなんにも心配しなくていいよ」

「なんでそんなに優しいん?」

「バーカ。友達なんだから当たり前だろ」

56 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:11

「『バーカ。友達なんだから当たり前だろ』・・・・うふふふ。麻宮さん優しいんだー」


後ろから聞こえた甲高い声にハッと振り返る。
無音映画のように足音一つさせることなく屋上を進んでくる一人の女。
さわさわとゆるやかな風を受けて舞う亜麻色の髪。
その美しさは―――まるで福祉大相撲のイベントで歌った藤本のように
灰色の学校には不似合いなキレのある美しさだった。


「『大丈夫。あたしが琴美のこと守るから』・・・・・キャハハハ!あたしも言われたーい」


矢口の笑い声の物真似をする加護のように
微妙に似ている麗華の物真似があたしの神経を逆撫でする。
麗華の右手にはあたしが放り投げたままにしていたヨーヨーがあった。
しゅるりしゅるりと小気味良い音を立てて上下するヨーヨー。
秋山麗華・・・・・・・こいつ何者だ?

57 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:13

「はい、ヨーヨー。返してあげる」


そう言って麗華はヨーヨーをメトロラビッツばりのアンダースローであたしの方へと投げる。
メトロといえば地下鉄。喫茶店じゃないですよ里田さん。
あたしは受け取ったヨーヨーを強く握り締める。
その時、ふとヨーヨーの手触りに粗末な布のような
ざらついた粗い質感を感じ、あたしは視線をヨーヨーへと移す。
鉄製のヨーヨーは黒く焦げてぼろぼろになっていた。
あれ?あたしのヨーヨーじゃない?


「あらごめんなさい。麻宮さんのヨーヨーはこっちだった――――わ!」


あずすーんあずそう言うやいなや麗華はヨーヨーを鋭く放つ。
ヨーヨーはあたしの脇をすり抜けて―――琴美の下腹をしたたかに打つ。
うたばんで加護が矢口に見舞ったマンコパンチなんかとは比べ物にならないくらい激しく。

58 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:14

「てめえ!」

「あらあら。守ってあげるんじゃなかったの?」

「お前・・・・・なんで琴美にかまうんだ?」

「ヨーヨー。確かに返したわよ」


あたしは琴美の足元に転がっているヨーヨーを拾い上げる。
確かにそれはあたしのヨーヨーだった。
琴美は顔一面にびっしりと脂汗をかいているが、
気丈にも、大丈夫。大丈夫だから。と言って逆にあたしを気遣う。
あたしは一人なかなか写真集を出せない道重さゆみのような無力感を味わう。

そんなあたしに向かって麗華は全盛期のつんくプロデュースの
シングルリリースペースのように攻撃的に言葉を畳み掛ける。

59 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:14

「そっちのヨーヨーはね。ポーラちゃんのヨーヨー」

「!」

「知ってるでしょ?」

「どっかーんって吹っ飛ばされたポーラちゃん」

「・・・・・・」

「持ってたヨーヨーも真っ黒焦げになっちゃいましたとさ」

「てめえ・・・・・」

「あの体育倉庫みたいにね」

「!?」

60 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:15

I WISHのジャケット写真のように麗華がスッと指差した先には
古ぼけた倉庫があり―――
麗華が指を差すのとほぼ同時に凄まじい爆音が響き―――
古ぼけた倉庫が「あった」。という過去形になる。
あたしは爆発する倉庫をただ呆然と眺めることしかできなかった。


「麻宮さんもあの体育倉庫みたいにならないように・・・お気をつけて」


泣きじゃくる琴美。高笑いをしながら去っていく麗華。
それでもあたしは何もできなかった。
なんだか急に複雑な感情が―――
こう頭の中をぐるぐる巡っている――――― 悔しいわ。

61 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:15

【LOVE DD色  終わり】





→To be continued

62 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:37

【第四話  100回のDD】

63 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:46

BABY! 恋にKNOCK OUT!のイントロのような
けたたましいサイレンの音が響いて消防車が学校に押し寄せる。
琴美をこのまま一人にするのはちょっと気が引けたが、
現場(コンサート会場のことではない)に行かないわけにはいかないだろう。
とりあえずあたしは琴美と携帯番号とメールアドレスを交換する。
トレカ以外のものを交換するのなんていつ以来だろう。


「ごめん。そんじゃあたし行くから」

「麻宮さん、ありがとう」

「サキでいいよ」

「サキちゃん、ホンマ嬉しかったわ。ありがとう」

「バーカ、礼なんて言うなよ。友達だろ」

「友達・・・・ホントに?」

「ほんとだって。ほんとだって。マジだって。真面目な顔して話してるでしょ?」

「ありがとう」

「こっちこそ、わがままな娘でゴメンね」

「え?」

「次はちゃんと守るから」

「ええよ・・・そんなん」

「絶対守るから」

64 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:57

特命刑事なんて言ったって正規のオーディションを通過してない
かつての2期メンバー並にうさんくさい存在なわけで、
まさかそこにいる警察官たちに捜査状況を聞くわけにもいかない。
どうしよっかなと思っているあたしの目に
「顔はヤバイよ。ボディにしな、ボディに!」とか言い出しそうな
アフロヘアーをなびかせたミラーボール星人が映る。

あたしは立ち入り禁止と書かれたロープが張ってある一歩手前から
黒く焦げたヨーヨーをミラーボール星人の後頭部に向かって放り投げる。
あたしは「おっと毛虫」ばりの昭和のリアクションを予想したが、
ミラーボーラーはこれまで見せたことのなかったような俊敏さで振り返り、
あたしの投げたヨーヨーを荒々しくキャッチッチする。
ギラリと暗い色の光がやつの目の中で光る。

ほんの一瞬、晒した本性。ヤツも刑事なんだ。
まるで加護亜依の関西弁トークを聞いたときのような不思議な感覚。
まあいいや。
なんかそれぞれに知らない部分とかあってもいいと思う。
あたしは親指を横に立ててヤツにこっちへ来いとサインを送る。

65 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:58

「サキか。車で話そう」

「車?どこ行くんだ?」

「暗闇警視のところまで」

「誰それ?」

「お前も会ったことがあるだろう。俺と一緒にいた・・・・・・」

「あのジジイか。あいつ暗闇警視っていうの?」

「ああ。あの人が暗闇警視で、俺が暗闇警部ってわけだ」

「だっせー名前。なんなら『スーパーウルトラキュートでセクシーダイナマイトかつ
トークもキレキレ新バラエティの女王にしてプレイボーイの連載も絶好調
矢口真里ことシンデレラガールネバーエンディング売れっ子うひうひうはうは
超絶ソロシンガー兼ハロコン司会担当145cmちゃんよろピーンク』って呼んであげようか?」

「行こう」

「なんで照れてるの?」

66 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:59

★ ★ ★ ★ ★



一人の刑事らしき男とサキは足早に車へと駆け込んでいく。
古ぼけたミニクーパーはいかにも面倒臭そうな感じでエンジンがかかり、
よろよろと校門から走り出て環状通方面へと消えていく。
大きなサングラスをかけた男はそれを確認すると
ゆっくりとタバコの火を消して焼失した体育倉庫の方へ目をやる。


予想以上だ。

今回の爆弾の破壊力がこれほどとは。

この調子でいけば計画は予定よりも早く進むかもしれない。
           . . . .
どうやら最後の決起集会の日も近いな。

あの新米刑事が俺の邪魔をするとも思わないが―――

集会が行われる前に排除しておくべきだろうか。



★ ★ ★ ★ ★

67 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:00

暗闇警部とかいうダッサダサな名前を名乗ったm刑事は
車で話そうとか言っておきながら無言で車を厚別方面へと走らせる。
爆弾魔のこと。麗華のこと。公安のこと。
8期オーデの進捗状況。赤西君がカトゥーンを脱退した真相。
それから・・・・それから・・・・・
聞きたいことは山ほどある。


「なあ。なんとか言えよ」

「運転中」

「携帯かけるわけじゃないんだからさ。別にいいだろ」

「運転中だっての」

「お前・・・・・まだなんか隠してるのか?」

「別に隠してるわけじゃないよ。誰かみたいに面白く話せないだけ」

「誰かって誰だよ」

「お前の聞きたいことは、暗闇警視が応えてくれるだろう」

「面白おかしく?」

68 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:01

「そっちこそどうなんだ。捜査は進んでいるのか」

「琴美っていう子に色々と聞いた。秋山麗華のこととか」

「何かわかったか?」

「いや。大したことは―――わっきゃない(Z)」

「わかったのかわからなかったのかどっちだよ」

「あんた言ってたけどさ、やっぱりあたしが刑事ってことを知っているのは麗華だけみたい」

「よっしゃ。よっしゃ。よっしゃ。秋山麗華が怪しいな・・・・・こっちでも調べてみよう」

「琴美は麗華に酷くいじめられてる。もっと何か知っているような気がする」

「お前は琴美と仲良くなったのか?」

「一応。麗華から守ってやるってことになった」

「よし、それでいい。その子は利用できるな。嘘でも仲良くしておくんだ」

「嘘でも仲良くって・・・・・係じゃねえんだから」

「着いたぞ」

69 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:02

警部は車を乱暴に地下の車庫に入れる。
がくんがくんと揺れる車内。
あたしは思わずジェットコースターに乗ったさゆのようにヘッドバンキングをかます。
手で鼻をつまみ「あわわわわ」とか白目で言いながら
あたしは事件のことや琴美のことを色々と考えるが、思いは上手くまとまらない。

利用か。確かにあたしはこの事件を解決して
モーニング娘。に入るためなら何でも利用するつもりだった。
だけど・・・・だけど・・・・

って言うか別に別に別に・・・
「守ってやる」って言った、
あの時の気持ちはウソとかそんなんじゃないし―――

70 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:02

【100回のDD  終わり】





→To be continued

71 :名無し娘。:2006/10/29(日) 21:30
係ワラタ。なつかしいねー
あちこちでニヤリとしてます

72 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:26

【第五話  桃色DD想い】

73 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:27

先を行く暗闇警部に続いてあたしは不自然なまでに暗い部屋の中に入る。
暗い。話しづらいよ。せめてサユリウム(原文ママ)でも光らせてくれないか。
そんな部屋の奥には自称・「暗闇警視」らしき爺がどっしりと椅子に座っている。
世が世なら一国の総裁って感じの貫禄。
うさちゃんピースとかは世界で一番似合わない人種だね。

暗闇警視が座っているのは笑わん姫みたいな無駄にゴージャスな椅子。
お付きの秘書とかはやっぱりキノコの帽子をかぶっているのかな?
そんな警視はあたしを見るなり無言で机の上にドザっと、
いやいや失礼。どさっとウエストポーチを投げる。


「これはあのオーディションのときの・・・・・」

「そう。あの時使われたのと同じ爆弾だ」

「!」

「信管は抜いてある」

「どこで手に入れたんだ?」

「被害者の・・・阿久津とかいう男の部屋から見つかったものだ」

74 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:28

ああ、世が世なら今頃あたしは3次オーディションに進出して―――
とかボーっとオーディションの記憶をたどっているあたしの耳に、
ポーチから嫌な音が聞こえてくる。

チチチチチチチ

中澤裕子の舌打ちのような嫌らしい音を立てて
進んでいるデジタル時計を見てあたしは思わず眉をひそめる。
だが警視はまるでお気に入りの矢口を舐め回す時の
中澤裕子のように嬉々として爆弾をいじっている。嬉しそうだな。不謹慎だぞ。
もっと警察らしくピリリと行こうぜ。ワビサビつけてさ。
それはともかく体育倉庫を吹き飛ばしたのもこれと同じものなのだろうか。


「学校の倉庫を吹き飛ばしたのも・・・・」

「おそらくこれと同タイプだろう。だが」

「だが?」

「破壊力が違いすぎる。これでは体育倉庫は吹き飛ばせんよ」


確かにオーディションの時は会場が吹き飛ぶなんてことはなかった。
爆弾持ってた男は死んだらしいけどね。
そこにいたあたしも冷や汗ジリリキテルって感じだったけど怪我はしなかった。
破壊力の大きさが今の熊井ちゃんと昔の熊井ちゃんほど違う。

75 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:29

「今回の爆破の規模は過去のものよりもかなり大きい」

「爆弾が改良されてるってことか」

「その通り。まあ今回のは情報不足だったから仕方ないが」

「なあ、仕方ないで片さんでよ・・・・・」

「だが規模は違っても同じタイプだとわかった。次は対応のしようがある」

「こんなもん止めらんないだろ・・・・・新種のチョコレートじゃあるまいし」

「止め方を教えよう」

「え?」

「そこの切れ目から出ている線があるだろう。一本切ってみろ」

「どの線を?三本くらい線が出てるけど」

「試しにやってみろ。正しい線を切れば時計が止まる。」

76 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:29

いくら信管が抜いてあるっていったって爆弾には変わりない。
何の知識もないあたしにやってみろっておい!
何の経験もない小春に声優をやらすようなもんじゃないか。
どれだけ無難にこなしても―――古参のアニヲタからは叩かれるという理不尽。
あたしが成功したらやっぱりこいつらは「感情がこもっていない」とか言うのだろうか?
まあいいや。とにかく小春スピリッツで前向きにやってみよう。

爆弾処理いらしい処理なんて初めてしちゃいまーす?
赤白ピンク。三色の線。
選べないとても選べないだって緊張しちゃいます。
わかってるそうねわかってるここが決める時ね。
「気合」入れて線を切りましょう。
勇気出して「こっちだ!」


チチチチチチチ


即、「さよなら〜」
解除になんてなってない・・・・・・・・

77 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:30

【桃色DD想い  終わり】





→To be continued

78 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57

【第六話  Yeah!めっちゃDD】

79 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57


「残念。正解はピンクの線だ」

「わかるかよ!」

「わかるようにならないとダメだ」

「売るセーバか」


女だけが持ってるものすごい直感が働くときもあるけれど―――
それは爆弾解除の時なんかじゃないみたい。
色々と考えても裏目裏目に結果が出たり・・・・・

まあいい。失敗から学びましょう。
次に同じタイプの爆弾を見たときは対応できる。
だってこのピンクの線を切るだけで止まるんだから簡単じゃん。

80 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57


「とりあえず麻宮君はそのまま学校で捜査を続けてください」

「ああ。話は変わるけど・・・・・お前らに用意してほしいものがある」

「新潟産の美味しいお米?」

「なんでだよ!ちげ〜よ!」

「何がほしいんだ」

「武器が欲しい。このヨーヨーじゃダメだ」


相手はかなり強力な爆弾を持っていることがわかった。
いや、爆弾だけとは限らない。
他の銃火器を持っている可能性だって「感涙!時空タイムス」の視聴率よりは高いだろう。
あたしも銃くらい欲しい。

難しいかもしれないけど―――
出来そうもないくらいなこと、おねだりしてもいいよね?

81 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58


「フッ。まだそのヨーヨーは使いこなせていないらしいな」

「あのなあ。ヨーヨーなんかで戦えるわけないだろ」

「ヨーヨーは特命刑事だけが使える特別な武器だぞ」

「無理無理無理。新垣家式でまともなもんじゃを作るようなもんだ」

「お前が不器用なだけだろ」

「ああ不器用さ。どうやってもなかなか上手になれそうになーい」

「よし・・・じゃあとっておきの必殺技を教えよう」

「ひ、必殺技?・・・・・なんかまゆげビーム並に胡散臭いな・・・・・」

「ヨーヨーを貸してみろ」

「う・・・うん」

82 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58

暗闇警視はあたしからヨーヨーを受け取ると
椅子から立ち上がりずいずずいと部屋の中央へと進む。
警視はまるで一人、舞台の上でスポットライトを浴びているような感じになる。
なんだか今にも卒コン最後の挨拶をする卒メンみたい。


「よく見ておくんだ。一度きりしかしない」

「お腹いっぱい学ぶよ」


警視はそういうとヨーヨーの横をぐっと押す。
ジャキーンと鈍い音がして二枚の刃がヨーヨーから飛び出す。
おいおい!こんな機能があったのかよ!
小川が語学に興味があったっていうくらいの後付け設定じゃねーか!

83 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58


「二枚刃ってわけだ・・・・100万パワー+100万パワーで200万パワー!」


いきなり熱く語り出す警視。
100万パワー?なにそれ。
すげえすげえすげえすげえ唐突!


「いつもの二倍のジャンプが加わって200万X2の400万パワー!」


とか言いながら真剣な顔で「 テ イ ク オ フ 」する警視。
お前、空飛ぶのかよ!そらマックの店員も必死で笑いをこらえるわ。
すげえすげえすげえすげえ跳躍!


「そしていつもの3倍の回転を加えれば400万×3の・・・・・・・・・」


3倍という言葉にいまだに微妙に反応するあたしはDD。
ごうんごうんごうんと音を立てて回りだすヨーヨー。
すげえすげえすげえすげえ回転!


「1200万パワーだあああああああああああ!!!!!!!!!!!」

84 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58

葛・根・湯と乾いた音を立ててヨーヨーは部屋の隅に転がる。
確かに・・・見た目はすごいけど・・・・なにこれ?
1200マンパワーとかいっても全然ものごっつくないじゃん!
意味不明!ミステリアス!僕らの先とおんなじように
この必殺技にもまだ未知なる部分があるのかな?


「おい・・・・これのどこが必殺技なんだ?」

「わたしはDDではないからな」

「あぁ?」

「真のDDがこの技を使う時、ヨーヨーは光の矢となって使い手の意のままに飛んでいく」

「マジかよ」

「と聞いている」

「見たことないのかよ!」

「まあな。わたしもそこにいる警部も・・・・・実際に見たことはない」


そんなんで戦えるのかよ・・・・・という言葉をあたしは飲み込む。
真のDD?そうさあたしはDDさ。
DDにしかできないっていうならやってやろうじゃねーか。
確かに光の矢なんて胡散臭過ぎる。
ほんとは不安よ。私にできるかな?
でもなさねば、なんとかかんとかね!

85 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:59

【Yeah!めっちゃDD  終わり】





→To be continued

86 :名無し娘。:2006/11/05(日) 21:19
小ネタの挟み方がいいねw

87 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39

【第七話  DD 美学】

88 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39

解決出来ないで凹んじゃってみっともない。
ってわけにもいかないのであたしは翌日もまた何事もなかったかのように登校する。
それが学生の必然。特命刑事の美学。
あたしはコートの絵里を、じゃなかった襟を立てて早足で歩く。
雪が降り始めるちょっと前。10月末のこの街は風が一番冷たい季節。

北18条近辺の創生川通りはいつものように南行きのみ渋滞している。
北行きはガラガラで誰も通っていない。まるで何かを暗示するかのように。
ふう。あたしのハロプロ加入への道のりも険しい。
売れっ子への道、渋滞中ってか。

とりとめのないことを考えているうちに学校に着く。

89 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39

あたしは自分の教室よりもまず先に琴美のクラスの教室に入る。
琴美の机にはごっちんブログのイラストのような
気持ち悪い落書きが山のように書かれていた。
琴美はそこにいなかった。カバンもない。
琴美を見つけられるかどうか心配してたら―――メールが届きました(着いちゃった)。
思わず振り返るが後ろには誰もいない。改めてメールの文面を確認する。

あたしは教室を出て乱暴に後ろ手でドアを閉める。
ダンダンダンと階段を駆け上がる。ダンはダンでも仔犬のダンのことじゃないよ?
きつい段差ににじむ汗。あたしはちょっとした発汗3号気分を味わう。
この階段を上りきったらどんな商品を紹介したらいいんだろうか。

大きく一つ深呼吸して心の扉、じゃなかった屋上への扉を思い切り開く。
屋上であたしを待っていたのはもちろん、
カルフォルニア生まれの埼玉育ち、Mr.スウェットじゃなくて琴美。
人は流した汗の数だけ強くなれる―――んだったらいいんだけどね。

90 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40


「サキちゃん」

「教室戻ろ」

「そんなん・・・無理やわ」

「蛇螺蛇螺やってないですぐ行こうぜ」

「あそこにはあたしの居場所ないねん」

「居場所なんてものは自分で作るんだよ」

「そんなん・・・・無理や」

「全部心の持ちよう。『いいことある』って思い込めばなりそうじゃん!」

「・・・・・・・・・・・・」


言う事はいっちょ前のもう一人の私。
綺麗事なんてことはわかってる。でも。
「上手く利用するんだぞ」という警部の言葉が不意に浮かぶ。
この子の心を利用する―――
覚悟は半人前のもう一人の私。

91 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40

あたしは事件を解決することを望んでいるのだろうか?
琴美が救われることを望んでいるのだろうか?
どっち?どっちが本当のあたし?

本当のあたし。
そんなものが一体どこにあるのかはわからないけど、
とにかく今はこの事件を解決することだけを考えよう。

92 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40


「なあ!あんた麗華と何かもめたの?」

「いじめられるんはいつものことやから・・・・・・
あの人があたしにからんでくるようになったんは・・・・最近やけど」

「最近?いつから?」

「中尾君が死んでから・・・・・あの事件の後から化学部に来るようになって」

「中尾君って誰だよ」

「あたしと同じ化学部の子やってん。でもな、化学部をやめたすぐ後に死んでしもた」

「死んだってなんかあったのかよ?」

「爆発事件があったんよ。阿久津君もあんなことになってしもたし・・・・・」

「阿久津君!?」


阿久津という名前を聞いた瞬間、ピコーンと電球が灯るあたしの頭上30cm。
いや別にモーヲタの予想の斜め上を行くアイデアが閃いたわけじゃないんだけどね。
爆弾――阿久津――琴美――麗華。
ミニモニ。の連帯感(高橋を除く)のように一つにつながる事件の線。
ここでキーとなる言葉は「150cm以下(高橋を除く)」ではなく「化学部」だろう。
いやちょっと待て。

93 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40


「阿久津君もそうやったって、もしかして親戚の人が爆発事件にあったとか?」

「親戚?いや、阿久津君本人がな・・・・・死んでしもてん。
なんやモーニング娘。のオーディション会場とかに乗り込んでな。
そこで爆弾を爆発させてしもたらしいわ」

「げ!あいつ高校生だったのかよ!」

「え?阿久津君のこと知ってるん?」

「いやまあ知ってるというか・・・あたし、その会場にいたんだよ・・・・・」

「え!ホンマに!?」

「ところで阿久津君っていうのも化学部の子だったの?」

「うん。でも二人とも途中で退部してしもたんやけどね」


驚いた。あの爆弾男が高校生だったとは。
あのみうなばりに光り輝く頭頂部はどう見ても40代だと思ったのだが。
つくづくモーヲタの見た目年齢というのはわからないもんだ。
あたしをじーっと見つめる琴美の黒目勝ちな美しい瞳。
うわ。
ベリーズの握手会に来るおっさん並みに不審に思われてるのかな。
あたしのこと―――どこまで話せばいいもんだか。

94 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41


「サキちゃん、爆発事件に興味あるん?」

「いやまあ、あたしあの時偶然会場にいて・・・・・それで」

「偶然?オーディションを受けに行ったんやないの?」

「まさか!今さらモーニング娘。なんて、そんなねー、あはははは」

「サキちゃん可愛いから受けてたら受かってたかもね」

「ははははっ。モーニング娘。になんて入りたくないよー、だっせー」


あたしは心の中で、なぜかまず最初に藤本さんに謝りながら、
ほぼ完全にお世辞であると思われる琴美の言葉を聞き流す。

アウェイ番組の矢口のような乾いた笑いが閑散とした屋上に響く。
虚しい。声は笑っていても顔は笑ってはいない。笑えない。
あたしには麗華のような美しい笑顔はできない。
捜査をしていくためにも―――今は琴美に心を許すわけにはいかない。

そうだ。モーヲタであることを隠すんじゃなくて、
捜査をしてる刑事だってことを隠すんだからねって自分に言い聞かせる。
本当のところどっちなのかはあたし自身にもよくわからない。
本当のあたしってどっちさ?

95 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41

キンコンカーンという音が聞こえて授業が始まる。そろそろ戻らないと。
はあ。やっぱり琴美と本当の友達になるのは無理だな。
モーニング娘。に入りたいという夢を晒せないあたし。小さくたぁって夢は夢よ。
心を晒せないあたしに琴美の孤独を癒すことなんてできないよね。
琴美にも―――あたしのように他人には晒せない夢があるのかな。
AKB48に入りたいとか。まあそれはそれで困るけど。

あたしは右手で琴美の左手をつかんで教室まで連れて行く。
まるで教育係の道重に従う小春のように従順な琴美。
あたしに利用されている可哀想な琴美。
いや、従順なように見えて操られているのはあたしの方☆カナ?
どっちが罠にかかったの?私なの?あなたなの?

そのつぶらな瞳を見ているとついつい本当のあたしを晒しそうになる。
「念には念を入れ自己紹介私はモーヲタのDD」とか。まあいいや。
あたしはもう一度この子の手をぎゅっと握り締める。
この子のおかげであたしの夢は実現に向けて少し近づいた。

捜査するDDとその女の魔力―――
孤独な時は二人離れずに―――夢を見るんだよ。

96 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41

【DD 美学  終わり】





→To be continued

97 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08

【第八話  草原のDD】

98 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08

あたしは二階にある渡り廊下を渡って旧校舎へと向かう。
2002年の加護のように陰鬱としたこの学校の中で、
2006年の加護のように表世界から隔絶されている旧校舎。
そこの三階に化学部が部室として使っている化学実験室があるらしい。

ガラガラと娘。コンの客席状況のような音を立てて
一人の用務員が台車を押しながら渡り廊下の向こうからやってくる。
あたしは右側によけてその男をやり過ごす。
男は不審なくらい大きなサングラスをかけている。
なんだあれ?
プライベート時のれいなだってあんな大きなサングラスはしてないぞ。

すれ違いざまに用務員があたしを見ながらニヤニヤしていたのは―――
きっとあたしのスカートが人並み以上に短かったからではないだろう。
「SOME BOYS! TOUCH」みたいな衣装を着てたなら話は別だけど。
なんなんだあのグラサン野郎は?
気にはなるがそれ以上関わることなくあたしは化学実験室へと急ぐ。

99 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08

★ ★ ★ ★ ★


サキは怪訝そうな表情でサングラスの用務員を見ていたが
何かを振り切るように旧校舎の方へと走り出す。
旧校舎は小気味良く動くサキの肢体をするりと飲み込み―――
その後を追うサキの影すらも、辻の胃袋のように貪欲に飲み込む。
男は振り向かない。男がその時にやるべきことは何もなかった。


化学実験室までたどり着いたか。
          . . . .
あの刑事が決起集会のことをつかむのは時間の問題だな。

だがそうなったとしても予定に変更はないだろう。

問題は麗華がどう動くかだが―――

麗華の行動だけは予想できない。

まあいいさ。俺がやるべきことは一つ。

こうなった以上、集会を止めることは―――もう誰にもできない。


★ ★ ★ ★ ★

100 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08

人気のない(←モーニング娘。のことではない)教室は、
無用心にも鍵はかかっておらず、あたしはすんなりと
化学実験室へと足を踏み入れることができた。
助かる。あたしは小川と同じくらい錠前開けが不得意なんだ。

準備室の奥からはがたがたと物音が聞こえる。人がいる気配。
琴美の話では今の化学部には飯島と千葉という部員がいるという。
こちらの方に足音が近づいてくる。
そのまま出口へ向かうのか?――――いやそうとは限らない。
(わざわざ遠回りして私がいる)こっちから来たりしてwwwwwww


「おい」

「やったな」

「ああ。完成だ」

「よーし。派手にテストといくか」

「やっと僕達が主役になる時間がやってきたね。ブラザー」

「何言ってるんだ。今回は僕の一人舞台だぜ?」

「何やってんだ?おまえら」

「うわああああああああああああああああああああああ」

「誰えだよおまえええええええええええええ」

101 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

ほげかんせつ・・・じゃなかった顎関節症になるんじゃないの?
というほど口を広げて大声で叫ぶ二人の腰には
まだあたしの記憶に新しいデジタル時計つきのウエストポーチ。
ビンゴ!やはりここだったのか。
こいつらを捕まえればあたしはモーニング娘。に入って―――
今ならまだ年末の紅白に間に合うかな?


「ヤバイ!逃げるぞ!」

「よっしゃ!」

「走れええええええ!」

「うおおおおおおおおおおお」


予想以上のダッシュで二人は二手に別れて逃げ出す。
くそ。逃げる逃げる言うんじゃねーよ!
逃した魚は大きいぞ!とならないように追いかけなきゃ―――どっちを?
迷っている暇などない。またこの次なんてあるわけないじゃん。

あたしは校舎の外へ向かって駆け出したヤツは諦めて
校舎の奥へと向かったヤツを追いかける。
一人が捕まれば、もう一人も自由に動けなくなるだろう。
加護がいなくなった―――辻のように。

102 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

爆弾なんてゲジゲジンだのマルマインゲアーだの言ってるような
頭の悪いヤツには作れないと思うんだけど、
前を走るヤツは自らどこにも逃げ場のない屋上へと駆け上がる。
バカだこいつ。ハマグチェレベルだ。まあいいけど。

あたしもヤツにやや遅れて屋上に上がる。
もう逃げ場所はない。意外とあっけなかったね。
ハロモニ裁判のように何の盛り上がりもなく決着か。
こいつを逮捕したら、あたしはやっぱり「獲ったどー!」と叫ぶべきだろうか。


「来んじゃねねええええええええええええええ」

「それ、よこせよ」

「来んな!爆発させるぞ!やってやんぞこらあああああああ!」

「バカな真似はよせ!」

103 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

さゆと話しているときの柴田のように好戦的な態度だなこいつ。
いや、逆か。好戦的なのはさゆの方かもしれない。
でもまあ「ナチュラル担当」っていうのは
自分の感情を一切隠さずに傍若無人に振舞うって意味じゃないよね?

ヤツの腰のデジタル時計はどうやらチクタクと動いているようだ。
残り何分かはわからないが―――あまり時間はないだろう。
あのピンクの線を切ればいいんだよね。ピンクピンクっと。
あたしの頭の中ってこんなにピンク色だったっけ?
ところで「レインボーピンク」って虹なのに全部ピンク色って変じゃない?
真っ黒な白熊、みたいな。まあどうでもいいんだけど。

こうやって無言で向き合っている間にも時計は進んでいる。
爆発してしまったらハイ、お終い。だよね。
ハロモニのお花見クイズみたいに最後に大逆転チャンスとかはないだろう。
ここは出し惜しみしてる場合じゃない――――

104 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09

あたしはヨーヨーの横をぐっと押す。
ジャキーンと鈍い音がして二枚の刃がヨーヨーから飛び出す。
うは。カッチョイイゼ!カッチョイイゼ!
あたしはヤツに向かっていつもの(いつもっていつだよ?)2倍の高さでジャンプし―――
いつもの(だからいつもっていつだよ?)3倍の回転を加えてヨーヨーを放つ。
狙うのはピンクの線ただ一つ。

その時ヨーヨーは光の矢―――――とはならず、
狙いの右15cm横にそれてウエストポーチの腰のベルトをかすめる。
ワオ!じれったいミスショット!!
と自分にツッコミキティする前にベルトが切れたウエストポーチは
ヤツの腰からすり抜け―――
屋上からみちよの人生のように転がり落ち―――
地面に落ちるかなり前に―――弾け飛んだ。


「うう、うあああああああわわわあああああ」

「おい」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい」

「ゴメンで済んだら著作権法とかいらねええんだよ!」


まるでFNS歌謡祭のHPASのように平謝りに謝る化学部員。
謝れば済むってもんじゃないが、こっちは本人が謝っているだけまだマシか。
あたしは軽くぽよよよーんとヤツの横腹を蹴る。
これで一件落着といけばいいんだけど―――なんとなく嫌な予感がしていた。

105 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

FUNFUNFUNとハロプロに異様に好意的だった番組名のような
サイレン音を響かせて警察がやってくる。For beautiful human life.
ハロプロが産業再生機構のお世話になるのはいつになることやら。
暗闇警部も当然のように学校に来ていた。
過去にこの学校で起こった事件などについて話を聞くあたし。

この学校でこういった爆発騒ぎが起こったのは、
あの体育倉庫の一件も入れてこれで四件目になるらしい。
今日のを入れなければ三件。今日のはノーカウントよ?んなわけねー!
まあ、どっちにしても多い。多すぎる。多杉田かな。
あのなっちが起こしたスキャンダルですらお塩と素敵だなの二件だけなのに。


「飯島の身柄は確保した。千葉の行方も全力で追っているところだ」

「おい」

「爆発させたのは拙かったが、まあ怪我人もなかったしな」

「おい!」

「なんだ?もう帰りたいのか?きらりん☆レボリューションの時間にはもう間に合わないぞ」

「録画してるよ!そんなんじゃねえ。あの必殺技のことだよ」

106 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

「『ゆで理論1200マンパワーがものごっついスペシャルDDエディション』のことか」

「そんな寒い名前とかどうでもいいよ!あれ、大嘘だろ?」

「大嘘でも小嘘でもないぞ。特命刑事に代々伝わる・・・・・・・・」

「光の矢なんかにならなかったし、狙い通りにも飛ばなかった!」

「そりゃお前が真の意味でDDじゃないからじゃないのか?」

「完璧DDだっちゅーの。誰だって大好きだもん」

「ストューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」

「す、すちゅーかすろびん?」

「福田明日香の誕生日は?」

「ハロプロメンバーの誕生日なら全員言えるけど・・・・・」

「誰でも大好きなんだろ?まあ、お前もまだまだってことだ」


不覚・・・・・
真のDDってのは過去から現在まで全て押さえないといけないのか・・・・
それにしても福田明日香とは。
あぁーなつかしい、オリメンの人。
「DDになるって・・・・・むずかしいんだなぁー」

107 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10

【草原のDD  終わり】





→To be continued

108 :名無し娘。:2006/11/08(水) 00:51
ふぉーびゅーてぃふぉーひゅーまんらいふwwww

109 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23

【第九話  D〜D?】

110 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23

ね〜えってばね〜え、お話聞いて〜
とばかりにあたしは琴美を化学実験室に呼び出したのだが、
それはお話を聞いてもらうためというより、お話をしてもらうためだった。
相変わらず辛気臭い雰囲気のあたしと琴美。でも仕方がない。
あたしは隙を見せないように慎重に話を進める。
娘。に入ったら愛ちゃんともこんな感じで接するべきだろうか。


「どうやらこの学校の爆発騒動も収まりそうだね」

「え?どういうこと?」

「だって飯島は捕まった。千葉が捕まるのも時間の問題でしょ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「あっ、ゴメンゴメン。飯島君も千葉君も琴美の友達なんだよね」

「いや、違う。そうやないねん」

「んじゃなに?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「なんか溜め込んでることがあるならあたしに話してみなよ!」

111 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24

琴美はなんとなく話しづらそうな表情をしている。
左手でいじいじとボールペンを弄繰り回している琴実。
この子は左利きなんだね。ハリケーンな魔球とか投げられるのかしら。

なんとなく気まずい沈黙が部屋を支配する。
友達ならここは逃げの一手だけど、DD刑事にはそんなことはできはしない。
きっと彼女はまだ大事なことを隠している。嘘をついている。
そう確信したあたしは彼女の心を開こうと嘘くさい言葉で話しかける。
そうよ勝負よ。

でも口調がおかしいのが自分でもわかる。
梨華ちゃんばりの棒読みの台詞。ああなんて嘘臭い台詞回し。
気兼ねなく会話できる素敵なヤツになりたいんだけどな。無理かな。
あたしは不器用だしよく食べるけど、よく笑わないし優しいヤツでもないんだ。

笑えない。嘘でもいいから笑顔で励ましたい。でも笑えない。
だってあたしは琴美のことを―――好きになっちゃいけないから。
嘘でもいいから笑う?いや、作り笑顔とかなんか上手くできない。
あたしはあくまでもビジネスライクに琴美を扱う。
モーニング娘。を扱う―――UFAのように。

112 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24


「あたしな、いじめられてたんやけど、たった二人だけ友達がおってん―――」


意を決したように琴美は一人語り出す。
「悪いところがあったら教えて?」と言われたわけじゃないが、
人が真剣に話しているので、あたしは普段は絶対切らない警察携帯の電源を切る。
かつて琴美の友達だったという化学部の中尾と金沢という男。
この爆弾騒動の全ての始まりはその二人の男だったらしい。


「でもな。ちょっと二人が喧嘩みたいになってな。中尾君は化学部をやめてしもてん―――」


喧嘩の理由を聞いても、中尾も金沢も絶対に答えなかったという。
中尾は部活を辞め、金沢ともほとんど話さなくなってしまった。
初期タンポポのようにバラバラになってしまった三人。
琴美に対するいじめは石川の髪型のようにどんどんエスカレートしていったらしい。
それを見ていた中尾はこう言ったという。

113 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24


「これ以上我慢することはないよ琴美。この学校ごと全員、俺がぶっ飛ばしてやる―――」


その言葉はあっという間に現実のものとなる。
その当時琴美をいじめてた生徒三人が校舎内で爆殺されたのだった。中尾もろとも。
あっけなく―――本当にそれは知恵の輪が解けるようにあっという間の出来事。
生徒四人死亡の事故原因は学校によって、初期カントリーのようになかったことにされる。
この学校には―――スキャンダルなど―――いじめなどなかったのだと。


「それからちょっとして。麗華ちゃんがやけにうちの部室に出入りするようになってん―――」


麗華もあたしのように執拗に爆破事件のことについて琴美に聞いた。
そしてやがて麗華は金沢と親しくなっていったという。
麗華と金沢の二人は―――石川卒業コンサートツアーの最中にも―――
打ち上げを欠席して自宅デートとかしていたのだろうか。
そんな金沢は徐々に学校にも来なくなり―――第二の爆破事件が起こった。

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