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スケバン刑事 コードネーム=松浦亜弥
- 1 :名無し娘。:2006/10/07(土) 07:38
-
ノノハ)) 4代目スケバン刑事松浦亜弥
从‘ 。‘)^)@ おまんら許さんぜよ!!
リ`ヽ_ソ
j___f
/l l l l|
l_|_|_|_i
|ーl-|
l__l___)
- 2 :名無し娘。:2006/10/08(日) 01:39
- ちゃらららーららーら、ららららー
- 3 :名無し娘。:2006/10/09(月) 09:30
- ノノ_,ハ,_ヽ ・
⌒`) ┣¨┣¨ と从 ‘ 。‘) / ズキューン!
;;;⌒`) 二 / @と) ==========
;⌒`)⌒`)ニニ し'"(__) キーン!
レザー製バトルスーツ
↓
キン! ・
ノノ_,ハ,_ヽ/ ズキューン!
⌒`) ┣¨┣¨┣¨ と从 ‘ 。‘) ==========
;;;⌒`) ニニニニ / @と)============
;⌒`)⌒`)ニニニニニ し'"(__) \ ズキューン!
キン! ・
防弾効果【強】
↓
∋oノハヽo∈ ノノノハヽ
( ^▽^) 从;‘ 。‘)
と つ=[ニフ + / つ つ
し"(__) し "(__)
刃物【弱】
- 4 :名無し娘。:2006/10/10(火) 18:54
-
☆ノノハヽ ∋oノハヽo∈
(( Σ从 ‘ 。‘)! Σ(^▽^ )! ))
↓
☆ノ_,ハ,_ヽミ ヒュルルル!
从#‘ 。‘)つ──── 三@)) ミ _∩
と ノ @⊂/ ノ )))
↓
((@ 三 三 @))
. \ ヒョヒョヒョ! ウヒョヒョヒョ! /
\ /
☆ノ_,ハ,_ヽ ∋oノハヽo∈
从#‘ 。‘)つ――三 @)) ((@ 三――と(^▽^# )
と ノ ヽ つ
↓
・ 。☆ノノハ从./ \.从oノハヽo∈・ 。
。 (‘ 。 ゚((@ 三〜 ガ ッ! 〜三 @));゚ ▽^) 。
(つ/ W \ / W \ と)
- 5 :名無し娘。:2006/10/10(火) 18:56
- ウヒョホホホホホホホホ
从从ババババッ
ノノハヽ 二⊃ ─==≡≡≡((@)
从*^▽^) ̄二⊃─=====≡≡≡≡≡((@) ∋oノハヽ
と ∀"─三⊃─===≡≡≡≡≡((@) 从;‘ 。‘) ヒエー
く/_|j_l ゝ二⊃─=≡≡≡≡((@) (つ@と)
(丿 (ノ WWババババッ 彡≡≡
- 6 :名無し娘。:2006/10/10(火) 18:56
- 傷だらけの街ニューヨークから訳も分からず強制送還今じゃなんの因果かマッポの手先
この身ひとりと覚悟のはずが不意に出会ったダチのため期間限定スケバン刑事麻宮サキ
\____________________________________/
∨
ノハヽヽ
从*‘ 。‘) ピシャッ!
ノ 三二レ,ゞ`´⌒二二((◎ ==
彡 i |:::::::::::::::ノ ̄
l├⊆⊇┤
( |::::::i:::::::|
|:::: ll::::::|
|:::::|.|:::::|
(___,|.|,____)
- 7 :名無し娘。:2006/10/14(土) 16:15
- ノノ_,ハ,_ヽ ∋oノハヽo∈
と从 ‘ 。‘)つ─── 三@)) (^▽^ )
/ ノ @と と|
し "(__) (__(_)
ノノ_,ハ,_ヽ ∋oノハヽo∈
と从 ‘ 。‘)つ─────── (( (^▽^ ) ──三@ ))
/ ノ @と/ と/
し "(__) (__(_)
ガツン
ノノ_,ハ,_ヽ ∋oノハヽo∈
と从 ‘ 。‘)つ─────── (^▽^;)@ 三
/ ノ と と \
し "(__) @〜〜 (_(_)
- 8 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 20:49
- //////////////////////////////////////////////////////////
- 9 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:47
-
【注意〜この物語を読む前に〜】
1) この物語はフィクションです。
2) 現実の法律・社会制度・一般風俗と異なる描写があります。流してください。
3) 感想は感想スレ、雑談は雑談スレ、固定ネタは固定職人スレでお願いします。
4) 更新は一ヶ月に一度くらいの予定です。
5) 5といえばソロ活動がさっぱりな後藤さん。
6) 半年くらい更新がなかったら放棄したと思ってください。
7) 从 ‘ ∀‘)つ──── 三@
では、はじまりのはじまり。
- 10 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:48
- カタカタカタカタ
にだいめ
 ̄ ̄ ̄ ̄
タンッ
二代目
- 11 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:48
- カタカタカタカタ
二代目でぃーでぃーでか
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
タンッ
二代目DD刑事
- 12 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:48
- カタカタカタカタ
二代目DD刑事 こーどね
 ̄ ̄ ̄ ̄
カタカタカタカタ
二代目DD刑事 コードネーム ・あさみやさき
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 13 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:49
-
タンッ
二代目DD刑事 コードネーム・麻宮サキ
- 14 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:49
-
【プロローグ】
- 15 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:50
-
どことなく なんとなく
長い長いこの地球の歴史の
少しだけどこの私も一部なんだわと思わせるような
晴れやかな青空の下
あたしはラストチャンスになるであろう
ハッピー8期オーディションの会場の門をくぐる。
モーニング娘。に入りたいと思うようになってから早六年が過ぎた。
松浦亜弥ばりに年齢を誤魔化して受けたキッズオーディションも入れればこれが七回目のトライ。
現人神新垣様の生写真をお守り代わりにぎゅっと握り締める。
ああ
『こらー、かめー』
みたいに怒られるためなら地球だって滅亡させてやるのに。
- 16 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:51
-
世が世なら今頃あたしは黄金の4期メンバーとして
いやいや
世が世なら今頃あたしは現人神と同期の5期メンバーとして
いやいや
世が世なら今頃あたしはもっさんの代わりに6期メンバーとして
いやいや
世が世なら今頃あたしはミラクルエースの相棒役の7期メンバーとして
いやいやいや
もう8期メンバーでいいやいや
などと思いながら面接で歌う曲の確認を入念に行う。
携帯用小型音楽再生機器から聴こえるシャボン玉を何度も何度も何度も
ウォークマンという商品名にしては有名すぎる単語は公の場で言っていいのかな。
オーディションに受かったらラジオマスター梨華ちゃんに教えてもらお。
- 17 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:51
-
「それでは4714番の方どうぞ」
呼ばれたあたしはすっと立ち上がる
どう見ても50人くらいしかいないオーディションなのに
なぜ3000番とか4000番代の番号があるのかについては深く考えない。
あたしがスーパースターになれば解決される問題だ。
スターになりたい。
そのためにあたしは大学を辞めた。
恋人とも別れた。
バージニアスリムも辞めた。
あたしは面接官に一礼をする
作り笑顔とかなんかは上手くできない
不器用でも毎日を楽しめる
ハッピーな毎日
野心的でいいじゃん。
不器用なあたしの人生最大の野心
モーニング娘。に入るという夢に向かって
歌わんとするまさにその瞬間
- 18 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:53
-
「うらあああああああああ動くんじゃねえええええええええ」
「どけおらあああああああ」
「こんなオーディションぶっ壊してやるぜえええええええええええ」
響き渡る怒号。
なにがなにやらわけがわからずおろおろする関係者。
どうやら熱狂的なファンが会場に乱入してきたらしい。
なぜかそのおっさんは分厚いウエストポーチみたいなものをつけている。
どうみても40代のおっさんウエストポーチってさ。
熊井ちゃんのランドセル以上に似合わないよー。
あたしはスッとその男の背後に回りこみ延髄に蹴りをくれる。
紺野あさ美の影響で始めた空手はいまだに茶帯のままだけど
それはあさ美ちゃんへのリスペクトの気持ちから。
腕前は極真二段は堅いところ。
蹴り一発であっけなく失神するおっさん。いやまあ本当におっさんだよ。
遅らせばながら駆け寄ってくる警備の人間たち。遅いよ。
あやみきユニットを作るのくらい遅い。やるなら2003年にやれよ。
まあいいや。こいつを片付けてオーディションを再開しましょうよと
おっさんの手を引いたその時
チッチッチッチッ
ウエストポーチから聞こえる時計のような変な音。なんだこれ?
- 19 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:54
-
判断する間もなくあたしは警察の人間に乱暴に抱えあげられる。
乱暴に股座に突っ込まれる警察官の手。
ミキティそこはののたんのおまんまんれすよと暴れようとするが―――
「早く離れろ!ダメだ!爆発するぞ!」
え?
爆発?
うそおおおおおおおおおおおおお
次の瞬間、聞いたこともないような爆音がこだまし――――
視界は一面、飯田圭織のスケジュールのように真っ白となり―――
あたしの意識は遥か彼方―――
- 20 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:55
-
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
- 21 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:56
-
「気がついたようですね」
うん?暗い部屋。スタンド一つだけの照明。ここどこ?
「まあこれくらいでくたばっちまったら使い物にならないっすよ」
話しているのは・・・・・二人の男?
「それでは早速本題に入りましょうか」
あ。これってもしかして新手の企画?ドッキリ系?
「お前は本日付で特命刑事に任命された」
とくめい?匿名?特命? けいじ?慶二?慶太じゃなくて?
- 22 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:56
-
「お前は私立松ぼっくり学園に潜入して我々の捜査に協力してもらう」
「捜査?刑事ってこと?なになになになになんなのなによなんなのよー」
「実はこの高校では爆弾騒ぎが頻発しているんですよ」
「お前はそこの転入生・麻宮サキという名前で潜伏して捜査を行う」
「ふざけんなよ!なんであたしがそんなことしなくちゃいけないんだよ!」
「学校は生徒達の聖域だからな。俺たち大人にゃ手が出せないってわけよ」
「あたしもうとっくに二十歳過ぎてんだけど」
「大丈夫。松浦亜弥がスケ番刑事で女子高生役をやったときも二十歳過ぎてたから」
- 23 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:57
-
あの人は15の頃から老け顔だったからじゃないの
という言葉をあたしは飲み込む。
一体全体なんなんだよこの展開は。トクメイ刑事?なにそれありえない。
爆弾騒ぎってなんなのよ
そんな危ないことに巻き込まれるなんて絶対嫌。
不器用なあたしに捜査なんてできるわけ・・・
「もし協力してくれたら、寺田君に話を通してあげてもいい」
「やります」
- 24 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:58
-
あたしが一応確認のために寺田って寺田農のことじゃないですよねって言う前に
「これが制服」 「これが学生証」 「これが携帯電話」
「そしてこれが・・・・・・君に許されたたった一つの武器だ」
「なにこれ・・・・・ヨーヨー?」
「上手く扱えるかな?」
「ふざけんな!あたしのたった一つの武器はモーニング娘。を愛する心だ!」
「ほっほっほ。よろしい」
「そんなお前にコードネームを与えよう」
「このコードネームは・・・・長らく使われていなかったんですけどね・・・・・」
あたしはヨーヨーを手に取る。
シャキーンと格好良さげな音がして―――
側面の両側の丸い部分にアルファベットの文字が二つ並ぶ。
――――なんだこれ?
「それが君のコードネームだ」
- 25 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 22:59
-
─┬────ヘ ─┬────へ
│ \ │ \
│ l │ l
│ ヽ │ ヽ
│ │ │ │
│ │ │ │
│ │ │ │
│ ,/ │ ,/
│ / │ /
│ / │ /
─┴────'. ─┴────'
│
──┬───┬──. | │
│ │ │ │ ───────┼───────
│ │ │ │ │
│ │ │ │ ┌────┼────┐
│ │ │ │ │ │ │
│ │ │ │ └────┼────┘
──┼───┼── . | . | │
│ │ │ │ ─────┼─────┐
│ │ │ │ │ │
│ │ │ │ ───────┼─────┼──
│ │ │ │ │ │
/ │ │ ─────┼─────┘
│ │ │ │
,/ │ │ │
,/ │ │ │
,/ |. ──┘ ─┘
- 26 :◆JOJO8O9U :2006/10/15(日) 23:00
-
→To be continued
- 27 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:12
-
どっちが先だったかなんてどうでもいい。
大事なのは、だ。
その瞬間にヤツに向かって笑うことができたかどうか。
とびきりの笑顔で
松浦亜弥のような
意味深な、確信犯的な、とびきりの笑顔で。
- 28 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:12
-
【第一話 ドッキドキ! DDメール】
- 29 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:13
-
警察から渡されたセーラー服を着てあたしは高校へと向かう。
地下鉄北18条駅を降りて創成川方向へと歩みを進める。
やけに広い道路。やけに間隔の広い家々。この街に来てまだ二日。
Gパン履くのには慣れたが地下鉄のコツはいまだつかめない。
制服にまとわりつく雪虫がうざい。
雪虫は振り払うと幻のユニット「あぁ!」のようにあっけなく崩れ去る。
角を曲がるとれいなの胸と同じくらい貧相な校舎が目に入る。
一見廃墟のような校舎は、灰色と一言で片付けることができないくらい
複雑な灰色で染められてるが、校庭は広く、ポプラの木々が高くそびえている。
肛門、じゃなかった校門に吸い込まれていく生徒達は
みな一様に高橋の肛門笑顔を見せられた本体ヲタように精気がなく
どんよりどんよりと曇っている。
爆発騒ぎねえ。
そんな元気ありそうなやついないけど、もしかしたら日常生活で
抑圧されている屈折した感情を一般人には理解できない方法で
解放する真性オドリストみたいなやつがいるのかもしれない。
どうでもいいけど「タイガー」ってただ立ってるだけなんだからヲタ芸じゃないよね?
- 30 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:13
-
「みんなに紹介しよう。転校生のー、麻宮サキさんだ」
「いえええええええええええええええ!」
「れいにゃぁぁぁおおれいにゃあぁぁおおええぇぇぇ!!」
「うおうおうおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ひゃっほううううううううううううううう!」
「れいにゃぁぁぁおおれいにゃあぁぁおおええぇぇぇ!!」
色じれを歌い出さんばかりの勢いで盛り上がる教室内。
あたしゃ福岡から来たわけじゃないんだけど。
それにしてもなんだよこの盛り上がりよう。
そんなバカどもは無視してあたしは空いている一番後ろの席に座り教科書を
「はじめまして。DD刑事さん。あたしは秋山麗華。よろしくね」
- 31 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:14
-
ずきゅぅうううううーん。
と初めていしよし小説を読んだ時のような衝撃があたしの胸を走る。
DD刑事?なにそれ?いきなり?
あたしはあわてて自分の身の回りをチェックする。
鉢巻は巻いてないし当然そこには八つ墓村のようなサイリウムも指してない。
特攻服も着てないし生写真も体に貼り付けてないし
手持ちのラジカセから大音量の「Sexy Boy」もかけてないし
首から下げたチケットホルダーにこれ見よがしにハロコンのチケットも入れてないし
デブじゃないしハゲじゃないしリュックも背負ってないし
「水道の出しっぱなしはやめる」みたいなエコ活動以前の問題のような発言もしていない。
なぜにばれたの?しかもこの子刑事って言ったYO!バレてたら捜査にならないYO!
捜査は打ち切り?モーたいやMUSIXだってもうちょっと続いてたYO!
あたしはなぜ心の中で吉澤口調になったのかを真面目に考えることなどせずに
隣の席で微笑んでいる亜麻色の髪の乙女を見つめる。
ごっちんもサントワマミーとか君といつまでもをカバーしてもダメだよね。
「幸せだなあ」
「は?」
- 32 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:15
-
「またDD刑事さんとお知り合いになれて。幸せだなあって」
「また?」
「あら。あなた知らないの?」
「何が?」
「あなたの前にもね、転校生がいたのよ」
「初めて聞いた」
「爆弾騒ぎのこととか色々調べてたみたいだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「死んじゃった!」
「冗談だよね?」
「死んじゃったの。どっかーんって爆発して。うふふふふ」
「誰がやったんだ?」
「うふふふふ。二代目さんも死なないように気をつけてね」
- 33 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:15
-
あずすーんあず学校が終わるやいなやあたしは携帯を手に取りやつらにメールする。
携帯メール打つのもだいぶ早くなったし。
まあそんなことはどうでもいい。刑事だってばれてんのに捜査なんかやってられっかよ。
世が世ならあたしはモーニング娘。のセンターで歌っていた人間なんだ。
この際それがココナッツ娘。のセンターでもいいや。ついてこいアヤカ。
こんなわけわかんないような学校にいるくらいなら
同じくらいわけわかんないようなことやってるアップフロントと契約する。
とにかくもう一度やつらと話しなくちゃダメだ。
「とにかくすぐ会いたい。もう一度話さなければならないことができた」
的なメールを送信してから、間違えて別れた彼氏に送信してしまったことに気づく。
唯一覚えていたメールアドレスが別れた男ってのも情けない話。
あたしは一応、間違って送信したことを詫びるメールも送る。なにこの律儀さ。
未練なんかじゃないよ。
ハロプロヲタには未練なんて言葉は存在しないのさ。
あたしはファミレスに入って一人でコーヒー頼んだ。
それは選挙の日に投票行って外食するのと同じくらい必然的な行動。
少し少しほんのまた少し「大の大人な」気分だわ。
改めてあの時警察でもらった名刺に書かれているアドレスを打ち込む。
メールを入れてみよう。返事すぐかな?
あー、あいにくこの店圏外っぽいわ・・・・・
- 34 :◆JOJO8O9U :2006/10/18(水) 23:16
-
【ドッキドキ! DDメール 終わり】
→To be continued
- 35 :名無し娘。:2006/10/19(木) 22:35
- (●^▽^)<よくもまぁこんな丁度良いスレがあったものですね
- 36 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:39
-
【第二話 トロピカ〜ルDDして〜る】
- 37 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:40
-
「そういえばあたしはまだあんたの名前を聞いていない」
西3丁目通りの喫茶店であたしは例の刑事と向き合う。
あの時二人いた刑事の若い方。年は三十代前半ってところか。
刑事とは思えない垢抜けた服装。ジャニーズ系の涼しげな顔。
それらの気高い調和を全てぶち壊しているmチックなアフロヘア。
なんだこいつ。ミラーボール星から来たのか?
「おいおい。そんなことのために呼び出したのかよ」
「もったいぶらずに教えろよ」
「名前なんてない。名無し娘。ってわけだ」
「ふざけんな。名前がなきゃ呼びようもないだろ」
「じゃあ仮に・・・・・『スーパーウルトラキュートでセクシーダイナマイトかつ
トークもキレキレ新バラエティの女王にしてプレイボーイの連載も絶好調
矢口真里ことシンデレラガールネバーエンディング売れっ子うひうひうはうは
超絶ソロシンガー兼ハロコン司会担当145cmちゃんよろピーンク』でどうだ?」
「どうだって言われても・・・・・・・・バカか? 長いよ」
「略して ―――― 矢口シネ」
「お前が氏ね」
- 38 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41
-
「あたしの前にもあの高校で捜査してたやつがいたらしいな」
「おぉ」
「転校初日にあたしが刑事だってこと知ってるやつがいた」
「いぇあ」
「こんなんで捜査なんかできるわけないだろ?なに考えてんだ?」
「ふゎ、ふゎ」
「ふざけんな!」
「・・・・確かにお前と同じように捜査を行っていた特命刑事がいた」
「死んだって聞いたけど」
「ああ。爆弾魔に返り討ちにあっちまったみたいだな」
「名前は」
「ポーラ。 ポーラ・ジョンソンだ」
「外人かよ!そんなん目立ってしょうがねーだろ!」
「だが彼女が特命刑事だって知っている生徒はいなかったはずだ」
「けどよぉ!」
- 39 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41
-
「実はな。もう一人刑事がいるらしいんだ」
「あぁ!?」
「公安の方から一人、あの学校に潜入して捜査を行っている刑事がいるらしい」
「公安だと?」
「ああ。そっちの線からも爆弾魔に関する捜査をしているらしい」
「初耳ですっ!」
「公安の方には・・・・・どうやらこっちの動きは筒抜けらしい」
「マジかよ!」
「どっちにしてもだ」
「?」
「その秋山ってやつが事件にからんでいるんじゃないのか?」
「本当に?う・・・うん。」
- 40 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:41
-
夏の妙な雰囲気でついうなずいちゃったけど
秋山麗華にどうやって説明しようかな?
トロピカル取調べ?mは本気らしい。
「最後にもう一つ」
「なんだ?」
「あたしに隠し事してること、もうないだろうな!」
「今のところはな」
- 41 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42
-
m刑事はそんな思わせぶりな捨て台詞を残して去っていった。
あたしは笑っていいともでミキティの出身地を訊ねたときのタモリくらい
何度も何度も食い下がったが、とうとうヤツは最後まで名前を言わなかった。
クソが。
あたしはすっかり温くなったコーヒーを残して喫茶店を出る。
地下鉄には乗らず歩いて北12条まで下る。
どうってことない距離だ。なっちとかおりんの心の距離に比べれば。
家に帰ってメールを見ると予想通り彼氏からのメールが入っていた。
まさか今年のイブまでもたない関係だとは思わなかったけど
あたしが選んだのは聖なる鐘が鳴り響く夜じゃなくて目先の薄汚いコネ。
でもいいんだ。どんなに汚い仕事だってやりきってみせるさ。
あたしはハロプロに入るためなら手段は選ばないし、
入った後もなりふり構わず沖縄の駐車場だろうがどこだろうが
立派にアイドルしてみせるつもりだった。
- 42 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42
-
まさかDD刑事だとかそんなことを彼に説明できるわけもないので
あたしは適当な嘘をならべて彼に別れのメールを送る。
布団に入りうつらうつらとしながら考える。
聖なる鐘が鳴り響く夜がどんなにロマンチックだろうがそんなのは嘘だ。
真実なんかじゃない。本当のあたしを晒せるわけがない。
本当のあたし。
そんなものが一体どこにあるのかはわからないけど、
とにかく今はこの事件を解決することだけを考えよう。
- 43 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:42
-
めざまし時計がふたつある。でも起きない。
憂鬱な朝。
男と別れた後だろうが石川が金髪にした後だろうが、朝は必ずやって来る。
学校はとっくに遅刻だがあたしは自転車をかっ飛ばす。
ゴー!ゴー!レッツゴー!バイセコー!
自転車通学は禁止なので学校の脇の狭い路地に
はりきってアルバイト、ローンで買った愛車を隠すようにして止める。
路地を抜けて学校の裏庭にあたる塀を乗り越える。
塀塀松っちゃん。塀塀浜ちゃん。HEY!HET!HEY!MUSIC CHAMP!
ハロプロ勢は日曜はコンサートがあるんで番組収録は平日にしてくれないかな?
裏庭の木々をバッリバリアバリと派手な音を立てて折りながら
あたしは校舎の裏に着地する。
一斉に振り返る学生の群れ。
HEY!HET!HEY!お前ら授業中なのになにやってんだよ。
- 44 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43
-
10人くらいの人の輪の中心でうずくまっている一人の女の子。
まるでシャボン玉のPVのローライズガキさんみたいにびしょびしょの濡れ鼠。
パンツははいてるよね?とか冗談言える雰囲気じゃないみたい。
ニヤニヤしながらこっちを見てる下品な男子生徒。ざっと見て10人。
それに負けないくらいニヤニヤしている下品な女子生徒。ざっと見て5人。
そして一人椅子に腰掛けている秋山麗華。
麗華は、ニヤニヤしてる下品な15人と足せば丁度ゼロになるんじゃないかって
いうくらい上品な笑顔であたしを見つめる。やんなるくらい綺麗な笑顔。
細長い顎。細長い眉。細長い鼻。細長い瞳。
それでいて調和のとれた、凛とした美しさ。
世が世ならあたしも麗華ヲタになっていたかもねっ!ていうくらい。
- 45 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43
-
「あら麻宮さん。そんなところからご登校?」
「てめえ。なにしてんだよ!」
「あらいやだ。下品な口調」
「何してるってー!僕達はこういうことをしているのー!」
などとあからさまに小馬鹿にした口調で
一人の男子生徒がうずくまっている女子生徒をモップで殴る。
1500mを走り切った後のなっちのようにぐったりとする女子生徒。
「あれー、琴美ちゃんどうしちゃったのでちゅかー」
「つまんねーぞコラ!なんか反応しろよ!」
ゲラゲラゲラと下品な笑い声が響く。
同時にあたしに向かって挑発的な野次を繰り返すバカどもたち。
琴美と呼ばれた女の子はあたしとは決して視線を合わせようとはしない。
足を組み替えながら目を細めてあたしに微笑みかける麗華。
そうかよ。そうか。
はしゃいじゃってよいのかな?
麗華がちょっとDD刑事っぽいKICKを期待してたらどうしよう。
逮捕状取らなくちゃ・・・・・
- 46 :◆JOJO8O9U :2006/10/22(日) 19:43
-
【トロピカ〜ルDDして〜る 終わり】
→To be continued
- 47 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:00
-
【第三話 LOVE DD色】
- 48 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:01
-
「おい!いい加減にしろ!」
「あぁ?転校生は黙ってろよ!」
「いい子ぶってんじゃねーぞコラ!」
コラと言われても10円コラしか思い浮かばないあたしはDD。ていうか狼住人。
合わせて30円くらいの価値しかないような不良ども10人があたしを取り囲む。
10人か。まともに相手するにはちょっと多いな。
大検受験や語学留学のために脱退するやつはいないかね?
- 49 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:02
-
「邪魔すんなよコラ」
「犯っちゃうよコラ」
「調子乗んなよコラ」
コラコラコラとうるさい30円軍団はゆっくりとまばらにあたしに近づいてくる。
悪ぶってはいるが言う程喧嘩慣れしているようには見えない。
こういうやつらを相手にする時に肝心要なのは好奇心・・・じゃなくて最初の一撃。
気分は恋愛戦隊ならぬDD戦隊ヲタレンジャーなあたしは
太ももに装着している革のホルダーに手をかける。
おもちゃのヨーヨーの3倍くらいのずっしりとした
あいぼん(さくら組時代)的な重量感が掌に満ちる。
次の瞬間、あたしの掌からヨーヨーは放たれ ―――
- 50 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:03
-
あたしの掌からヨーヨーは放たれ ―――
秋山麗華の頭上約10cmのところを通過する ――― 予定だったんだけど。
あたしのヨーヨーは予定通りになんて行くわけない原宿6:00集合ばりに
予定通りにはいかず、目標の約3メートル右にある窓ガラスを直撃した。
ガラガラガラガラガッシャーン!
「た、隊長! 大変です。ものすごい音であります。」
「わっかっておる!」
「一体、なにがあったというのだ。」
「は! ですが、まったく予測できません。」
などと売上86万枚(オリコン調べ)の3rdアルバムのような小芝居を打つこともなく、
30円軍団たちは、醜聞発覚から矢口脱退が決定するくらいの速さで撤収していく。
はえーはえー。喧嘩慣れはしてなくても逃げるのなら慣れてますってか。
窓から顔を出す教師らしきおっさん。
うずくまっていた女の子の手を引いてあたしもそこから立ち去る。
手を握って乗り越えよう、青春!なーんてゴマイケルな冗談は言えなかった。
だって握り締めた彼女の手は―――
生きている人間のものとは思えないくらい―――冷たかったから。
- 51 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:04
-
★ ★ ★ ★ ★
窓を割り、ころころと転がっていくヨーヨーには見向きもしないで
サキは琴美の手を引いて駆け出していく。
旧校舎の二階と新校舎の二階を結ぶ渡り廊下の窓から
一人の男がその光景をじっと見つめていた。
男は深く帽子をかぶり、萩原舞のような大きなサングラスをしている。
そんな学校にも℃-uteにも不似合いな格好の男は―――微かに笑っているようだった。
やれやれ。
今度の刑事はヨーヨーもろくに扱えないのか。
前の特命刑事よりも大したことないかもしれないな。
. . . .
あんな調子で決起集会を阻止できるかな?
いや、その前にそこまでたどり着けるかどうか―――
まあ、お手並み拝見といったところだな。
★ ★ ★ ★ ★
- 52 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:04
-
あたしは左手にカバンを、右手に彼女の手を持ってずいずいと屋上へと上っていく。
あやや大脱出マジックの鎖のように固く結ばれたあたしの右手と彼女の左手。
それって本当に固いんだろうか?とか大の大人は聞いちゃいけない。
あたしが爆破されたらモーニング娘。のメンバーは泣いてくれるだろうか。
まあ、どっちにしてもそれはあたしが娘。に入ってからの話だ。
あきらかに授業中だと思われる時間帯の屋上には誰もいない。
あたしはたまたま持っていたTシャツをカバンから取り出し彼女に渡す。
かくかくと震えながら無言で服を着替える彼女。
Tシャツの胸に書かれた「NO BLOOD FOR OIL」の文字を怪訝そうに見つめる。
「おい、名前は?」
「え?」
「名前だよ名前!お前の名前」
「琴美・・・・・・」
「本当に琴美っていう名前なのか!?」
「どういうこと?」
「いやまあ・・・・・」
- 53 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:05
-
本名は麻琴なのに不良どもに琴美琴美といじめられてたのかと
思っていたのだが・・・・・・・それは気の回しすぎだったみたい。
9合目まで上らせといて無理矢理富士登山をやめさせるとか
どれだけハイレベルないじめなんだよと。
タオルで濡れた髪を拭く琴美は、同性のあたしから見てもドキッとするほど可愛い。
黒目勝ちな澄んだ瞳。ぺちゃっと潰れた鼻。丸みを帯びた頬。
あの麗華とは何もかもが正反対な造りの顔立ちだが―――
よく見れば麗華に負けず劣らず美しい。
麗華が彼女をいじめる理由はそんなところにあるのだろうか。
- 54 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:07
-
「なんでやられっぱなしなんだよ。やり返せよ」
「そんな簡単に言わんといて」
「黙ってるから相手が付け上がるんだよ!」
「やり返すなんて。そんなん無理やわ」
「先生は?先生には言ったの?」
「先生なんてなんもしてくれへんよ」
琴美はゆっくりゆっくりと話し出した。
田中れいなのMCのように要領を得ない琴美の話をまとめるなら―――
田中れいなのように地方から引越してきた彼女は、
田中れいなのように引っ込み思案な性格もあって
田中れいなのように今は友達らしい友達もいなくて、
田中れいなのようにTDSデートに連れて行ってくれる男もおらず、
田中れいなのように情熱的な送り迎えをしてくれるマネージャーもおらず、
田中れいなのようにずっとハブられているらしい。
- 55 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:07
-
「よしわかった!じゃあとりあえずあたしと友達になろう」
「え。アカンよ。そんなんしたら麻宮さんもいじめられるわ」
「大丈夫、きっと大丈夫。きっとやる気次第」
「変なことせんといて!頼むからあたしに構わんといてや!」
「大丈夫、きっと大丈夫。全部自分次第」
「なあ、なんでそんなん言うん?格好つけんといてよ」
「大人ぶる気も、意地を張る気もないわ」
「嬉しいけど・・・・あたしが余計にいじめられるだけや」
「大丈夫。あたしが琴美のこと守るから」
「麻宮さん・・・・・・」
「だからなんにも心配しなくていいよ」
「なんでそんなに優しいん?」
「バーカ。友達なんだから当たり前だろ」
- 56 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:11
-
「『バーカ。友達なんだから当たり前だろ』・・・・うふふふ。麻宮さん優しいんだー」
後ろから聞こえた甲高い声にハッと振り返る。
無音映画のように足音一つさせることなく屋上を進んでくる一人の女。
さわさわとゆるやかな風を受けて舞う亜麻色の髪。
その美しさは―――まるで福祉大相撲のイベントで歌った藤本のように
灰色の学校には不似合いなキレのある美しさだった。
「『大丈夫。あたしが琴美のこと守るから』・・・・・キャハハハ!あたしも言われたーい」
矢口の笑い声の物真似をする加護のように
微妙に似ている麗華の物真似があたしの神経を逆撫でする。
麗華の右手にはあたしが放り投げたままにしていたヨーヨーがあった。
しゅるりしゅるりと小気味良い音を立てて上下するヨーヨー。
秋山麗華・・・・・・・こいつ何者だ?
- 57 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:13
-
「はい、ヨーヨー。返してあげる」
そう言って麗華はヨーヨーをメトロラビッツばりのアンダースローであたしの方へと投げる。
メトロといえば地下鉄。喫茶店じゃないですよ里田さん。
あたしは受け取ったヨーヨーを強く握り締める。
その時、ふとヨーヨーの手触りに粗末な布のような
ざらついた粗い質感を感じ、あたしは視線をヨーヨーへと移す。
鉄製のヨーヨーは黒く焦げてぼろぼろになっていた。
あれ?あたしのヨーヨーじゃない?
「あらごめんなさい。麻宮さんのヨーヨーはこっちだった――――わ!」
あずすーんあずそう言うやいなや麗華はヨーヨーを鋭く放つ。
ヨーヨーはあたしの脇をすり抜けて―――琴美の下腹をしたたかに打つ。
うたばんで加護が矢口に見舞ったマンコパンチなんかとは比べ物にならないくらい激しく。
- 58 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:14
-
「てめえ!」
「あらあら。守ってあげるんじゃなかったの?」
「お前・・・・・なんで琴美にかまうんだ?」
「ヨーヨー。確かに返したわよ」
あたしは琴美の足元に転がっているヨーヨーを拾い上げる。
確かにそれはあたしのヨーヨーだった。
琴美は顔一面にびっしりと脂汗をかいているが、
気丈にも、大丈夫。大丈夫だから。と言って逆にあたしを気遣う。
あたしは一人なかなか写真集を出せない道重さゆみのような無力感を味わう。
そんなあたしに向かって麗華は全盛期のつんくプロデュースの
シングルリリースペースのように攻撃的に言葉を畳み掛ける。
- 59 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:14
-
「そっちのヨーヨーはね。ポーラちゃんのヨーヨー」
「!」
「知ってるでしょ?」
「どっかーんって吹っ飛ばされたポーラちゃん」
「・・・・・・」
「持ってたヨーヨーも真っ黒焦げになっちゃいましたとさ」
「てめえ・・・・・」
「あの体育倉庫みたいにね」
「!?」
- 60 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:15
-
I WISHのジャケット写真のように麗華がスッと指差した先には
古ぼけた倉庫があり―――
麗華が指を差すのとほぼ同時に凄まじい爆音が響き―――
古ぼけた倉庫が「あった」。という過去形になる。
あたしは爆発する倉庫をただ呆然と眺めることしかできなかった。
「麻宮さんもあの体育倉庫みたいにならないように・・・お気をつけて」
泣きじゃくる琴美。高笑いをしながら去っていく麗華。
それでもあたしは何もできなかった。
なんだか急に複雑な感情が―――
こう頭の中をぐるぐる巡っている――――― 悔しいわ。
- 61 :◆JOJO8O9U :2006/10/25(水) 20:15
-
【LOVE DD色 終わり】
→To be continued
- 62 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:37
-
【第四話 100回のDD】
- 63 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:46
-
BABY! 恋にKNOCK OUT!のイントロのような
けたたましいサイレンの音が響いて消防車が学校に押し寄せる。
琴美をこのまま一人にするのはちょっと気が引けたが、
現場(コンサート会場のことではない)に行かないわけにはいかないだろう。
とりあえずあたしは琴美と携帯番号とメールアドレスを交換する。
トレカ以外のものを交換するのなんていつ以来だろう。
「ごめん。そんじゃあたし行くから」
「麻宮さん、ありがとう」
「サキでいいよ」
「サキちゃん、ホンマ嬉しかったわ。ありがとう」
「バーカ、礼なんて言うなよ。友達だろ」
「友達・・・・ホントに?」
「ほんとだって。ほんとだって。マジだって。真面目な顔して話してるでしょ?」
「ありがとう」
「こっちこそ、わがままな娘でゴメンね」
「え?」
「次はちゃんと守るから」
「ええよ・・・そんなん」
「絶対守るから」
- 64 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:57
-
特命刑事なんて言ったって正規のオーディションを通過してない
かつての2期メンバー並にうさんくさい存在なわけで、
まさかそこにいる警察官たちに捜査状況を聞くわけにもいかない。
どうしよっかなと思っているあたしの目に
「顔はヤバイよ。ボディにしな、ボディに!」とか言い出しそうな
アフロヘアーをなびかせたミラーボール星人が映る。
あたしは立ち入り禁止と書かれたロープが張ってある一歩手前から
黒く焦げたヨーヨーをミラーボール星人の後頭部に向かって放り投げる。
あたしは「おっと毛虫」ばりの昭和のリアクションを予想したが、
ミラーボーラーはこれまで見せたことのなかったような俊敏さで振り返り、
あたしの投げたヨーヨーを荒々しくキャッチッチする。
ギラリと暗い色の光がやつの目の中で光る。
ほんの一瞬、晒した本性。ヤツも刑事なんだ。
まるで加護亜依の関西弁トークを聞いたときのような不思議な感覚。
まあいいや。
なんかそれぞれに知らない部分とかあってもいいと思う。
あたしは親指を横に立ててヤツにこっちへ来いとサインを送る。
- 65 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:58
-
「サキか。車で話そう」
「車?どこ行くんだ?」
「暗闇警視のところまで」
「誰それ?」
「お前も会ったことがあるだろう。俺と一緒にいた・・・・・・」
「あのジジイか。あいつ暗闇警視っていうの?」
「ああ。あの人が暗闇警視で、俺が暗闇警部ってわけだ」
「だっせー名前。なんなら『スーパーウルトラキュートでセクシーダイナマイトかつ
トークもキレキレ新バラエティの女王にしてプレイボーイの連載も絶好調
矢口真里ことシンデレラガールネバーエンディング売れっ子うひうひうはうは
超絶ソロシンガー兼ハロコン司会担当145cmちゃんよろピーンク』って呼んであげようか?」
「行こう」
「なんで照れてるの?」
- 66 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 20:59
-
★ ★ ★ ★ ★
一人の刑事らしき男とサキは足早に車へと駆け込んでいく。
古ぼけたミニクーパーはいかにも面倒臭そうな感じでエンジンがかかり、
よろよろと校門から走り出て環状通方面へと消えていく。
大きなサングラスをかけた男はそれを確認すると
ゆっくりとタバコの火を消して焼失した体育倉庫の方へ目をやる。
予想以上だ。
今回の爆弾の破壊力がこれほどとは。
この調子でいけば計画は予定よりも早く進むかもしれない。
. . . .
どうやら最後の決起集会の日も近いな。
あの新米刑事が俺の邪魔をするとも思わないが―――
集会が行われる前に排除しておくべきだろうか。
★ ★ ★ ★ ★
- 67 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:00
-
暗闇警部とかいうダッサダサな名前を名乗ったm刑事は
車で話そうとか言っておきながら無言で車を厚別方面へと走らせる。
爆弾魔のこと。麗華のこと。公安のこと。
8期オーデの進捗状況。赤西君がカトゥーンを脱退した真相。
それから・・・・それから・・・・・
聞きたいことは山ほどある。
「なあ。なんとか言えよ」
「運転中」
「携帯かけるわけじゃないんだからさ。別にいいだろ」
「運転中だっての」
「お前・・・・・まだなんか隠してるのか?」
「別に隠してるわけじゃないよ。誰かみたいに面白く話せないだけ」
「誰かって誰だよ」
「お前の聞きたいことは、暗闇警視が応えてくれるだろう」
「面白おかしく?」
- 68 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:01
-
「そっちこそどうなんだ。捜査は進んでいるのか」
「琴美っていう子に色々と聞いた。秋山麗華のこととか」
「何かわかったか?」
「いや。大したことは―――わっきゃない(Z)」
「わかったのかわからなかったのかどっちだよ」
「あんた言ってたけどさ、やっぱりあたしが刑事ってことを知っているのは麗華だけみたい」
「よっしゃ。よっしゃ。よっしゃ。秋山麗華が怪しいな・・・・・こっちでも調べてみよう」
「琴美は麗華に酷くいじめられてる。もっと何か知っているような気がする」
「お前は琴美と仲良くなったのか?」
「一応。麗華から守ってやるってことになった」
「よし、それでいい。その子は利用できるな。嘘でも仲良くしておくんだ」
「嘘でも仲良くって・・・・・係じゃねえんだから」
「着いたぞ」
- 69 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:02
-
警部は車を乱暴に地下の車庫に入れる。
がくんがくんと揺れる車内。
あたしは思わずジェットコースターに乗ったさゆのようにヘッドバンキングをかます。
手で鼻をつまみ「あわわわわ」とか白目で言いながら
あたしは事件のことや琴美のことを色々と考えるが、思いは上手くまとまらない。
利用か。確かにあたしはこの事件を解決して
モーニング娘。に入るためなら何でも利用するつもりだった。
だけど・・・・だけど・・・・
って言うか別に別に別に・・・
「守ってやる」って言った、
あの時の気持ちはウソとかそんなんじゃないし―――
- 70 :◆JOJO8O9U :2006/10/29(日) 21:02
-
【100回のDD 終わり】
→To be continued
- 71 :名無し娘。:2006/10/29(日) 21:30
- 係ワラタ。なつかしいねー
あちこちでニヤリとしてます
- 72 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:26
-
【第五話 桃色DD想い】
- 73 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:27
-
先を行く暗闇警部に続いてあたしは不自然なまでに暗い部屋の中に入る。
暗い。話しづらいよ。せめてサユリウム(原文ママ)でも光らせてくれないか。
そんな部屋の奥には自称・「暗闇警視」らしき爺がどっしりと椅子に座っている。
世が世なら一国の総裁って感じの貫禄。
うさちゃんピースとかは世界で一番似合わない人種だね。
暗闇警視が座っているのは笑わん姫みたいな無駄にゴージャスな椅子。
お付きの秘書とかはやっぱりキノコの帽子をかぶっているのかな?
そんな警視はあたしを見るなり無言で机の上にドザっと、
いやいや失礼。どさっとウエストポーチを投げる。
「これはあのオーディションのときの・・・・・」
「そう。あの時使われたのと同じ爆弾だ」
「!」
「信管は抜いてある」
「どこで手に入れたんだ?」
「被害者の・・・阿久津とかいう男の部屋から見つかったものだ」
- 74 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:28
-
ああ、世が世なら今頃あたしは3次オーディションに進出して―――
とかボーっとオーディションの記憶をたどっているあたしの耳に、
ポーチから嫌な音が聞こえてくる。
チチチチチチチ
中澤裕子の舌打ちのような嫌らしい音を立てて
進んでいるデジタル時計を見てあたしは思わず眉をひそめる。
だが警視はまるでお気に入りの矢口を舐め回す時の
中澤裕子のように嬉々として爆弾をいじっている。嬉しそうだな。不謹慎だぞ。
もっと警察らしくピリリと行こうぜ。ワビサビつけてさ。
それはともかく体育倉庫を吹き飛ばしたのもこれと同じものなのだろうか。
「学校の倉庫を吹き飛ばしたのも・・・・」
「おそらくこれと同タイプだろう。だが」
「だが?」
「破壊力が違いすぎる。これでは体育倉庫は吹き飛ばせんよ」
確かにオーディションの時は会場が吹き飛ぶなんてことはなかった。
爆弾持ってた男は死んだらしいけどね。
そこにいたあたしも冷や汗ジリリキテルって感じだったけど怪我はしなかった。
破壊力の大きさが今の熊井ちゃんと昔の熊井ちゃんほど違う。
- 75 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:29
-
「今回の爆破の規模は過去のものよりもかなり大きい」
「爆弾が改良されてるってことか」
「その通り。まあ今回のは情報不足だったから仕方ないが」
「なあ、仕方ないで片さんでよ・・・・・」
「だが規模は違っても同じタイプだとわかった。次は対応のしようがある」
「こんなもん止めらんないだろ・・・・・新種のチョコレートじゃあるまいし」
「止め方を教えよう」
「え?」
「そこの切れ目から出ている線があるだろう。一本切ってみろ」
「どの線を?三本くらい線が出てるけど」
「試しにやってみろ。正しい線を切れば時計が止まる。」
- 76 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:29
-
いくら信管が抜いてあるっていったって爆弾には変わりない。
何の知識もないあたしにやってみろっておい!
何の経験もない小春に声優をやらすようなもんじゃないか。
どれだけ無難にこなしても―――古参のアニヲタからは叩かれるという理不尽。
あたしが成功したらやっぱりこいつらは「感情がこもっていない」とか言うのだろうか?
まあいいや。とにかく小春スピリッツで前向きにやってみよう。
爆弾処理いらしい処理なんて初めてしちゃいまーす?
赤白ピンク。三色の線。
選べないとても選べないだって緊張しちゃいます。
わかってるそうねわかってるここが決める時ね。
「気合」入れて線を切りましょう。
勇気出して「こっちだ!」
チチチチチチチ
即、「さよなら〜」
解除になんてなってない・・・・・・・・
- 77 :◆JOJO8O9U :2006/11/01(水) 21:30
-
【桃色DD想い 終わり】
→To be continued
- 78 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57
-
【第六話 Yeah!めっちゃDD】
- 79 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57
-
「残念。正解はピンクの線だ」
「わかるかよ!」
「わかるようにならないとダメだ」
「売るセーバか」
女だけが持ってるものすごい直感が働くときもあるけれど―――
それは爆弾解除の時なんかじゃないみたい。
色々と考えても裏目裏目に結果が出たり・・・・・
まあいい。失敗から学びましょう。
次に同じタイプの爆弾を見たときは対応できる。
だってこのピンクの線を切るだけで止まるんだから簡単じゃん。
- 80 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:57
-
「とりあえず麻宮君はそのまま学校で捜査を続けてください」
「ああ。話は変わるけど・・・・・お前らに用意してほしいものがある」
「新潟産の美味しいお米?」
「なんでだよ!ちげ〜よ!」
「何がほしいんだ」
「武器が欲しい。このヨーヨーじゃダメだ」
相手はかなり強力な爆弾を持っていることがわかった。
いや、爆弾だけとは限らない。
他の銃火器を持っている可能性だって「感涙!時空タイムス」の視聴率よりは高いだろう。
あたしも銃くらい欲しい。
難しいかもしれないけど―――
出来そうもないくらいなこと、おねだりしてもいいよね?
- 81 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58
-
「フッ。まだそのヨーヨーは使いこなせていないらしいな」
「あのなあ。ヨーヨーなんかで戦えるわけないだろ」
「ヨーヨーは特命刑事だけが使える特別な武器だぞ」
「無理無理無理。新垣家式でまともなもんじゃを作るようなもんだ」
「お前が不器用なだけだろ」
「ああ不器用さ。どうやってもなかなか上手になれそうになーい」
「よし・・・じゃあとっておきの必殺技を教えよう」
「ひ、必殺技?・・・・・なんかまゆげビーム並に胡散臭いな・・・・・」
「ヨーヨーを貸してみろ」
「う・・・うん」
- 82 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58
-
暗闇警視はあたしからヨーヨーを受け取ると
椅子から立ち上がりずいずずいと部屋の中央へと進む。
警視はまるで一人、舞台の上でスポットライトを浴びているような感じになる。
なんだか今にも卒コン最後の挨拶をする卒メンみたい。
「よく見ておくんだ。一度きりしかしない」
「お腹いっぱい学ぶよ」
警視はそういうとヨーヨーの横をぐっと押す。
ジャキーンと鈍い音がして二枚の刃がヨーヨーから飛び出す。
おいおい!こんな機能があったのかよ!
小川が語学に興味があったっていうくらいの後付け設定じゃねーか!
- 83 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58
-
「二枚刃ってわけだ・・・・100万パワー+100万パワーで200万パワー!」
いきなり熱く語り出す警視。
100万パワー?なにそれ。
すげえすげえすげえすげえ唐突!
「いつもの二倍のジャンプが加わって200万X2の400万パワー!」
とか言いながら真剣な顔で「 テ イ ク オ フ 」する警視。
お前、空飛ぶのかよ!そらマックの店員も必死で笑いをこらえるわ。
すげえすげえすげえすげえ跳躍!
「そしていつもの3倍の回転を加えれば400万×3の・・・・・・・・・」
3倍という言葉にいまだに微妙に反応するあたしはDD。
ごうんごうんごうんと音を立てて回りだすヨーヨー。
すげえすげえすげえすげえ回転!
「1200万パワーだあああああああああああ!!!!!!!!!!!」
- 84 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:58
-
葛・根・湯と乾いた音を立ててヨーヨーは部屋の隅に転がる。
確かに・・・見た目はすごいけど・・・・なにこれ?
1200マンパワーとかいっても全然ものごっつくないじゃん!
意味不明!ミステリアス!僕らの先とおんなじように
この必殺技にもまだ未知なる部分があるのかな?
「おい・・・・これのどこが必殺技なんだ?」
「わたしはDDではないからな」
「あぁ?」
「真のDDがこの技を使う時、ヨーヨーは光の矢となって使い手の意のままに飛んでいく」
「マジかよ」
「と聞いている」
「見たことないのかよ!」
「まあな。わたしもそこにいる警部も・・・・・実際に見たことはない」
そんなんで戦えるのかよ・・・・・という言葉をあたしは飲み込む。
真のDD?そうさあたしはDDさ。
DDにしかできないっていうならやってやろうじゃねーか。
確かに光の矢なんて胡散臭過ぎる。
ほんとは不安よ。私にできるかな?
でもなさねば、なんとかかんとかね!
- 85 :◆JOJO8O9U :2006/11/05(日) 19:59
-
【Yeah!めっちゃDD 終わり】
→To be continued
- 86 :名無し娘。:2006/11/05(日) 21:19
- 小ネタの挟み方がいいねw
- 87 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39
-
【第七話 DD 美学】
- 88 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39
-
解決出来ないで凹んじゃってみっともない。
ってわけにもいかないのであたしは翌日もまた何事もなかったかのように登校する。
それが学生の必然。特命刑事の美学。
あたしはコートの絵里を、じゃなかった襟を立てて早足で歩く。
雪が降り始めるちょっと前。10月末のこの街は風が一番冷たい季節。
北18条近辺の創生川通りはいつものように南行きのみ渋滞している。
北行きはガラガラで誰も通っていない。まるで何かを暗示するかのように。
ふう。あたしのハロプロ加入への道のりも険しい。
売れっ子への道、渋滞中ってか。
とりとめのないことを考えているうちに学校に着く。
- 89 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:39
-
あたしは自分の教室よりもまず先に琴美のクラスの教室に入る。
琴美の机にはごっちんブログのイラストのような
気持ち悪い落書きが山のように書かれていた。
琴美はそこにいなかった。カバンもない。
琴美を見つけられるかどうか心配してたら―――メールが届きました(着いちゃった)。
思わず振り返るが後ろには誰もいない。改めてメールの文面を確認する。
あたしは教室を出て乱暴に後ろ手でドアを閉める。
ダンダンダンと階段を駆け上がる。ダンはダンでも仔犬のダンのことじゃないよ?
きつい段差ににじむ汗。あたしはちょっとした発汗3号気分を味わう。
この階段を上りきったらどんな商品を紹介したらいいんだろうか。
大きく一つ深呼吸して心の扉、じゃなかった屋上への扉を思い切り開く。
屋上であたしを待っていたのはもちろん、
カルフォルニア生まれの埼玉育ち、Mr.スウェットじゃなくて琴美。
人は流した汗の数だけ強くなれる―――んだったらいいんだけどね。
- 90 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40
-
「サキちゃん」
「教室戻ろ」
「そんなん・・・無理やわ」
「蛇螺蛇螺やってないですぐ行こうぜ」
「あそこにはあたしの居場所ないねん」
「居場所なんてものは自分で作るんだよ」
「そんなん・・・・無理や」
「全部心の持ちよう。『いいことある』って思い込めばなりそうじゃん!」
「・・・・・・・・・・・・」
言う事はいっちょ前のもう一人の私。
綺麗事なんてことはわかってる。でも。
「上手く利用するんだぞ」という警部の言葉が不意に浮かぶ。
この子の心を利用する―――
覚悟は半人前のもう一人の私。
- 91 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40
-
あたしは事件を解決することを望んでいるのだろうか?
琴美が救われることを望んでいるのだろうか?
どっち?どっちが本当のあたし?
本当のあたし。
そんなものが一体どこにあるのかはわからないけど、
とにかく今はこの事件を解決することだけを考えよう。
- 92 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40
-
「なあ!あんた麗華と何かもめたの?」
「いじめられるんはいつものことやから・・・・・・
あの人があたしにからんでくるようになったんは・・・・最近やけど」
「最近?いつから?」
「中尾君が死んでから・・・・・あの事件の後から化学部に来るようになって」
「中尾君って誰だよ」
「あたしと同じ化学部の子やってん。でもな、化学部をやめたすぐ後に死んでしもた」
「死んだってなんかあったのかよ?」
「爆発事件があったんよ。阿久津君もあんなことになってしもたし・・・・・」
「阿久津君!?」
阿久津という名前を聞いた瞬間、ピコーンと電球が灯るあたしの頭上30cm。
いや別にモーヲタの予想の斜め上を行くアイデアが閃いたわけじゃないんだけどね。
爆弾――阿久津――琴美――麗華。
ミニモニ。の連帯感(高橋を除く)のように一つにつながる事件の線。
ここでキーとなる言葉は「150cm以下(高橋を除く)」ではなく「化学部」だろう。
いやちょっと待て。
- 93 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:40
-
「阿久津君もそうやったって、もしかして親戚の人が爆発事件にあったとか?」
「親戚?いや、阿久津君本人がな・・・・・死んでしもてん。
なんやモーニング娘。のオーディション会場とかに乗り込んでな。
そこで爆弾を爆発させてしもたらしいわ」
「げ!あいつ高校生だったのかよ!」
「え?阿久津君のこと知ってるん?」
「いやまあ知ってるというか・・・あたし、その会場にいたんだよ・・・・・」
「え!ホンマに!?」
「ところで阿久津君っていうのも化学部の子だったの?」
「うん。でも二人とも途中で退部してしもたんやけどね」
驚いた。あの爆弾男が高校生だったとは。
あのみうなばりに光り輝く頭頂部はどう見ても40代だと思ったのだが。
つくづくモーヲタの見た目年齢というのはわからないもんだ。
あたしをじーっと見つめる琴美の黒目勝ちな美しい瞳。
うわ。
ベリーズの握手会に来るおっさん並みに不審に思われてるのかな。
あたしのこと―――どこまで話せばいいもんだか。
- 94 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41
-
「サキちゃん、爆発事件に興味あるん?」
「いやまあ、あたしあの時偶然会場にいて・・・・・それで」
「偶然?オーディションを受けに行ったんやないの?」
「まさか!今さらモーニング娘。なんて、そんなねー、あはははは」
「サキちゃん可愛いから受けてたら受かってたかもね」
「ははははっ。モーニング娘。になんて入りたくないよー、だっせー」
あたしは心の中で、なぜかまず最初に藤本さんに謝りながら、
ほぼ完全にお世辞であると思われる琴美の言葉を聞き流す。
アウェイ番組の矢口のような乾いた笑いが閑散とした屋上に響く。
虚しい。声は笑っていても顔は笑ってはいない。笑えない。
あたしには麗華のような美しい笑顔はできない。
捜査をしていくためにも―――今は琴美に心を許すわけにはいかない。
そうだ。モーヲタであることを隠すんじゃなくて、
捜査をしてる刑事だってことを隠すんだからねって自分に言い聞かせる。
本当のところどっちなのかはあたし自身にもよくわからない。
本当のあたしってどっちさ?
- 95 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41
-
キンコンカーンという音が聞こえて授業が始まる。そろそろ戻らないと。
はあ。やっぱり琴美と本当の友達になるのは無理だな。
モーニング娘。に入りたいという夢を晒せないあたし。小さくたぁって夢は夢よ。
心を晒せないあたしに琴美の孤独を癒すことなんてできないよね。
琴美にも―――あたしのように他人には晒せない夢があるのかな。
AKB48に入りたいとか。まあそれはそれで困るけど。
あたしは右手で琴美の左手をつかんで教室まで連れて行く。
まるで教育係の道重に従う小春のように従順な琴美。
あたしに利用されている可哀想な琴美。
いや、従順なように見えて操られているのはあたしの方☆カナ?
どっちが罠にかかったの?私なの?あなたなの?
そのつぶらな瞳を見ているとついつい本当のあたしを晒しそうになる。
「念には念を入れ自己紹介私はモーヲタのDD」とか。まあいいや。
あたしはもう一度この子の手をぎゅっと握り締める。
この子のおかげであたしの夢は実現に向けて少し近づいた。
捜査するDDとその女の魔力―――
孤独な時は二人離れずに―――夢を見るんだよ。
- 96 :◆JOJO8O9U :2006/11/06(月) 20:41
-
【DD 美学 終わり】
→To be continued
- 97 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08
-
【第八話 草原のDD】
- 98 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08
-
あたしは二階にある渡り廊下を渡って旧校舎へと向かう。
2002年の加護のように陰鬱としたこの学校の中で、
2006年の加護のように表世界から隔絶されている旧校舎。
そこの三階に化学部が部室として使っている化学実験室があるらしい。
ガラガラと娘。コンの客席状況のような音を立てて
一人の用務員が台車を押しながら渡り廊下の向こうからやってくる。
あたしは右側によけてその男をやり過ごす。
男は不審なくらい大きなサングラスをかけている。
なんだあれ?
プライベート時のれいなだってあんな大きなサングラスはしてないぞ。
すれ違いざまに用務員があたしを見ながらニヤニヤしていたのは―――
きっとあたしのスカートが人並み以上に短かったからではないだろう。
「SOME BOYS! TOUCH」みたいな衣装を着てたなら話は別だけど。
なんなんだあのグラサン野郎は?
気にはなるがそれ以上関わることなくあたしは化学実験室へと急ぐ。
- 99 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08
-
★ ★ ★ ★ ★
サキは怪訝そうな表情でサングラスの用務員を見ていたが
何かを振り切るように旧校舎の方へと走り出す。
旧校舎は小気味良く動くサキの肢体をするりと飲み込み―――
その後を追うサキの影すらも、辻の胃袋のように貪欲に飲み込む。
男は振り向かない。男がその時にやるべきことは何もなかった。
化学実験室までたどり着いたか。
. . . .
あの刑事が決起集会のことをつかむのは時間の問題だな。
だがそうなったとしても予定に変更はないだろう。
問題は麗華がどう動くかだが―――
麗華の行動だけは予想できない。
まあいいさ。俺がやるべきことは一つ。
こうなった以上、集会を止めることは―――もう誰にもできない。
★ ★ ★ ★ ★
- 100 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:08
-
人気のない(←モーニング娘。のことではない)教室は、
無用心にも鍵はかかっておらず、あたしはすんなりと
化学実験室へと足を踏み入れることができた。
助かる。あたしは小川と同じくらい錠前開けが不得意なんだ。
準備室の奥からはがたがたと物音が聞こえる。人がいる気配。
琴美の話では今の化学部には飯島と千葉という部員がいるという。
こちらの方に足音が近づいてくる。
そのまま出口へ向かうのか?――――いやそうとは限らない。
(わざわざ遠回りして私がいる)こっちから来たりしてwwwwwww
「おい」
「やったな」
「ああ。完成だ」
「よーし。派手にテストといくか」
「やっと僕達が主役になる時間がやってきたね。ブラザー」
「何言ってるんだ。今回は僕の一人舞台だぜ?」
「何やってんだ?おまえら」
「うわああああああああああああああああああああああ」
「誰えだよおまえええええええええええええ」
- 101 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09
-
ほげかんせつ・・・じゃなかった顎関節症になるんじゃないの?
というほど口を広げて大声で叫ぶ二人の腰には
まだあたしの記憶に新しいデジタル時計つきのウエストポーチ。
ビンゴ!やはりここだったのか。
こいつらを捕まえればあたしはモーニング娘。に入って―――
今ならまだ年末の紅白に間に合うかな?
「ヤバイ!逃げるぞ!」
「よっしゃ!」
「走れええええええ!」
「うおおおおおおおおおおお」
予想以上のダッシュで二人は二手に別れて逃げ出す。
くそ。逃げる逃げる言うんじゃねーよ!
逃した魚は大きいぞ!とならないように追いかけなきゃ―――どっちを?
迷っている暇などない。またこの次なんてあるわけないじゃん。
あたしは校舎の外へ向かって駆け出したヤツは諦めて
校舎の奥へと向かったヤツを追いかける。
一人が捕まれば、もう一人も自由に動けなくなるだろう。
加護がいなくなった―――辻のように。
- 102 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09
-
爆弾なんてゲジゲジンだのマルマインゲアーだの言ってるような
頭の悪いヤツには作れないと思うんだけど、
前を走るヤツは自らどこにも逃げ場のない屋上へと駆け上がる。
バカだこいつ。ハマグチェレベルだ。まあいいけど。
あたしもヤツにやや遅れて屋上に上がる。
もう逃げ場所はない。意外とあっけなかったね。
ハロモニ裁判のように何の盛り上がりもなく決着か。
こいつを逮捕したら、あたしはやっぱり「獲ったどー!」と叫ぶべきだろうか。
「来んじゃねねええええええええええええええ」
「それ、よこせよ」
「来んな!爆発させるぞ!やってやんぞこらあああああああ!」
「バカな真似はよせ!」
- 103 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09
-
さゆと話しているときの柴田のように好戦的な態度だなこいつ。
いや、逆か。好戦的なのはさゆの方かもしれない。
でもまあ「ナチュラル担当」っていうのは
自分の感情を一切隠さずに傍若無人に振舞うって意味じゃないよね?
ヤツの腰のデジタル時計はどうやらチクタクと動いているようだ。
残り何分かはわからないが―――あまり時間はないだろう。
あのピンクの線を切ればいいんだよね。ピンクピンクっと。
あたしの頭の中ってこんなにピンク色だったっけ?
ところで「レインボーピンク」って虹なのに全部ピンク色って変じゃない?
真っ黒な白熊、みたいな。まあどうでもいいんだけど。
こうやって無言で向き合っている間にも時計は進んでいる。
爆発してしまったらハイ、お終い。だよね。
ハロモニのお花見クイズみたいに最後に大逆転チャンスとかはないだろう。
ここは出し惜しみしてる場合じゃない――――
- 104 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:09
-
あたしはヨーヨーの横をぐっと押す。
ジャキーンと鈍い音がして二枚の刃がヨーヨーから飛び出す。
うは。カッチョイイゼ!カッチョイイゼ!
あたしはヤツに向かっていつもの(いつもっていつだよ?)2倍の高さでジャンプし―――
いつもの(だからいつもっていつだよ?)3倍の回転を加えてヨーヨーを放つ。
狙うのはピンクの線ただ一つ。
その時ヨーヨーは光の矢―――――とはならず、
狙いの右15cm横にそれてウエストポーチの腰のベルトをかすめる。
ワオ!じれったいミスショット!!
と自分にツッコミキティする前にベルトが切れたウエストポーチは
ヤツの腰からすり抜け―――
屋上からみちよの人生のように転がり落ち―――
地面に落ちるかなり前に―――弾け飛んだ。
「うう、うあああああああわわわあああああ」
「おい」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい」
「ゴメンで済んだら著作権法とかいらねええんだよ!」
まるでFNS歌謡祭のHPASのように平謝りに謝る化学部員。
謝れば済むってもんじゃないが、こっちは本人が謝っているだけまだマシか。
あたしは軽くぽよよよーんとヤツの横腹を蹴る。
これで一件落着といけばいいんだけど―――なんとなく嫌な予感がしていた。
- 105 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10
-
FUNFUNFUNとハロプロに異様に好意的だった番組名のような
サイレン音を響かせて警察がやってくる。For beautiful human life.
ハロプロが産業再生機構のお世話になるのはいつになることやら。
暗闇警部も当然のように学校に来ていた。
過去にこの学校で起こった事件などについて話を聞くあたし。
この学校でこういった爆発騒ぎが起こったのは、
あの体育倉庫の一件も入れてこれで四件目になるらしい。
今日のを入れなければ三件。今日のはノーカウントよ?んなわけねー!
まあ、どっちにしても多い。多すぎる。多杉田かな。
あのなっちが起こしたスキャンダルですらお塩と素敵だなの二件だけなのに。
「飯島の身柄は確保した。千葉の行方も全力で追っているところだ」
「おい」
「爆発させたのは拙かったが、まあ怪我人もなかったしな」
「おい!」
「なんだ?もう帰りたいのか?きらりん☆レボリューションの時間にはもう間に合わないぞ」
「録画してるよ!そんなんじゃねえ。あの必殺技のことだよ」
- 106 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10
-
「『ゆで理論1200マンパワーがものごっついスペシャルDDエディション』のことか」
「そんな寒い名前とかどうでもいいよ!あれ、大嘘だろ?」
「大嘘でも小嘘でもないぞ。特命刑事に代々伝わる・・・・・・・・」
「光の矢なんかにならなかったし、狙い通りにも飛ばなかった!」
「そりゃお前が真の意味でDDじゃないからじゃないのか?」
「完璧DDだっちゅーの。誰だって大好きだもん」
「ストューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」
「す、すちゅーかすろびん?」
「福田明日香の誕生日は?」
「ハロプロメンバーの誕生日なら全員言えるけど・・・・・」
「誰でも大好きなんだろ?まあ、お前もまだまだってことだ」
不覚・・・・・
真のDDってのは過去から現在まで全て押さえないといけないのか・・・・
それにしても福田明日香とは。
あぁーなつかしい、オリメンの人。
「DDになるって・・・・・むずかしいんだなぁー」
- 107 :◆JOJO8O9U :2006/11/07(火) 20:10
-
【草原のDD 終わり】
→To be continued
- 108 :名無し娘。:2006/11/08(水) 00:51
- ふぉーびゅーてぃふぉーひゅーまんらいふwwww
- 109 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23
-
【第九話 D〜D?】
- 110 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:23
-
ね〜えってばね〜え、お話聞いて〜
とばかりにあたしは琴美を化学実験室に呼び出したのだが、
それはお話を聞いてもらうためというより、お話をしてもらうためだった。
相変わらず辛気臭い雰囲気のあたしと琴美。でも仕方がない。
あたしは隙を見せないように慎重に話を進める。
娘。に入ったら愛ちゃんともこんな感じで接するべきだろうか。
「どうやらこの学校の爆発騒動も収まりそうだね」
「え?どういうこと?」
「だって飯島は捕まった。千葉が捕まるのも時間の問題でしょ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あっ、ゴメンゴメン。飯島君も千葉君も琴美の友達なんだよね」
「いや、違う。そうやないねん」
「んじゃなに?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「なんか溜め込んでることがあるならあたしに話してみなよ!」
- 111 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24
-
琴美はなんとなく話しづらそうな表情をしている。
左手でいじいじとボールペンを弄繰り回している琴実。
この子は左利きなんだね。ハリケーンな魔球とか投げられるのかしら。
なんとなく気まずい沈黙が部屋を支配する。
友達ならここは逃げの一手だけど、DD刑事にはそんなことはできはしない。
きっと彼女はまだ大事なことを隠している。嘘をついている。
そう確信したあたしは彼女の心を開こうと嘘くさい言葉で話しかける。
そうよ勝負よ。
でも口調がおかしいのが自分でもわかる。
梨華ちゃんばりの棒読みの台詞。ああなんて嘘臭い台詞回し。
気兼ねなく会話できる素敵なヤツになりたいんだけどな。無理かな。
あたしは不器用だしよく食べるけど、よく笑わないし優しいヤツでもないんだ。
笑えない。嘘でもいいから笑顔で励ましたい。でも笑えない。
だってあたしは琴美のことを―――好きになっちゃいけないから。
嘘でもいいから笑う?いや、作り笑顔とかなんか上手くできない。
あたしはあくまでもビジネスライクに琴美を扱う。
モーニング娘。を扱う―――UFAのように。
- 112 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24
-
「あたしな、いじめられてたんやけど、たった二人だけ友達がおってん―――」
意を決したように琴美は一人語り出す。
「悪いところがあったら教えて?」と言われたわけじゃないが、
人が真剣に話しているので、あたしは普段は絶対切らない警察携帯の電源を切る。
かつて琴美の友達だったという化学部の中尾と金沢という男。
この爆弾騒動の全ての始まりはその二人の男だったらしい。
「でもな。ちょっと二人が喧嘩みたいになってな。中尾君は化学部をやめてしもてん―――」
喧嘩の理由を聞いても、中尾も金沢も絶対に答えなかったという。
中尾は部活を辞め、金沢ともほとんど話さなくなってしまった。
初期タンポポのようにバラバラになってしまった三人。
琴美に対するいじめは石川の髪型のようにどんどんエスカレートしていったらしい。
それを見ていた中尾はこう言ったという。
- 113 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:24
-
「これ以上我慢することはないよ琴美。この学校ごと全員、俺がぶっ飛ばしてやる―――」
その言葉はあっという間に現実のものとなる。
その当時琴美をいじめてた生徒三人が校舎内で爆殺されたのだった。中尾もろとも。
あっけなく―――本当にそれは知恵の輪が解けるようにあっという間の出来事。
生徒四人死亡の事故原因は学校によって、初期カントリーのようになかったことにされる。
この学校には―――スキャンダルなど―――いじめなどなかったのだと。
「それからちょっとして。麗華ちゃんがやけにうちの部室に出入りするようになってん―――」
麗華もあたしのように執拗に爆破事件のことについて琴美に聞いた。
そしてやがて麗華は金沢と親しくなっていったという。
麗華と金沢の二人は―――石川卒業コンサートツアーの最中にも―――
打ち上げを欠席して自宅デートとかしていたのだろうか。
そんな金沢は徐々に学校にも来なくなり―――第二の爆破事件が起こった。
- 114 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25
-
「校長室がな、爆破されてん。爆破といってもほんのボヤ程度やってんけど―――」
その事件ならあたしも警部から聞いた。
体育倉庫爆破のときよりもかなり小さな爆破だったらしい。
爆弾自体は中尾が死んだ時と同タイプだったが、爆発はかなり小さかったとか。
ソースはmixi、じゃなくて警察なんだから間違いない。
少なくとも大阪美男の書き込みくらいは信用していいだろう。
「あたし、見てん。金沢君が爆弾作ってるところ。中尾君の真似して。あたし―――見てん」
金沢は校長室爆破事故があってほどなく学校を辞めた。
そして琴美も化学部を辞めた。
それから琴美は頻繁に麗華から嫌がらせを受けるようになったという。
今いる飯島や千葉といった部員は琴美が辞めてから入部してきた新メンで、
市井と4期メンバーのように琴実とはほとんど話したことがないと言う。
全てを話し終わった琴美は、魂の抜けた人形のように固まっている。
三人祭のように雷が落ちてビビビッてならないと元には戻らないかな?
本当にそんな感じでぐったりとしている琴美だが、
あたしは松本人志のように非情ではないので「病院行って来い!」とは言えない。
- 115 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25
-
「話してくれてありがとう。やっとわかったよ」
「わかったって?何が?」
「つまり金沢と麗華を押さえないと、飯島や千葉を逮捕してもダメってことだろ?」
「違う・・・・そうやなくて・・・・」
「何を心配してるの?何もナイゼナイゼ。心配ナイゼ。問題ナイゼ」
「爆弾なんてもうどうでもええねん・・・・・・」
「どうでもよくはないだろ!」
「あたしのこと・・・・・あたしのこと全然わかってへん」
「ちょっと年上のあたしにも、それくらいわかるわよ」
「サキちゃん、ホンマにあたしのこと友達と思ってる?」
「あったり前じゃん!」
「爆弾事件とあたしとどっちが大事?」
「琴美が大事だからこそ爆弾事件を解決したいんじゃない」
「ありがとうなサキちゃん。でも・・・・でも・・・・・」
- 116 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25
-
琴美は黙りこくってじっとあたしを見つめる。
つんくの才能のように沈黙していても、その目は雄弁にあたしに語りかけてくる。
「どうやって私守るのよ?根拠も何もないくせに」って。
あたしは琴美に向かって笑顔を見せようとしたが―――やめた。
どんな笑顔を見せても心の中が読まれそう。
だからあたしは琴美には笑顔を見せない。絶対に。
刑事である限り、琴美に笑いかけたりはしない。
だって事件を解決するためにはそんなことは必要ないから。
でも・・・・・でも・・・・・
迷うわー、こんな風になっちゃうのは
琴美が好きだからよ。琴美が好きだからよ。
- 117 :◆JOJO8O9U :2006/11/08(水) 20:25
-
【D〜D? 終わり】
→To be continued
- 118 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:18
-
【第十話 GOOD BYE 夏DD】
- 119 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19
-
「琴美。麻宮さんの言ってることなんて全部嘘だよ」
「!」
「そいつは単に爆弾事件に興味があるだけ」
「そんな・・・・・・」
「琴美のことなんてどうでもいいと思ってるに決まってる」
薬品棚の後ろから出てきた麗華はキラキラとした目であたしと琴美を見つめる。
また出てきやがった。
屋上に出てきた昨日に続いて二日間の連続出現(1つ2つ3つ0華)。
あたしはイメージで麗華を「STKな子」にキャラ設定する。
盗撮くらい人並み程度にあるのかな・・・・・ってコラー!
とにかくいちいちうざったい麗華の声。麗華の話し方。麗華の仕草。
見てるだけでたまるストレスがたまる。ああぐちゃぐちゃよ。
確かにあたしは琴美に対して嘘をついていたけど―――
琴美の嘘はわかるじゃん。私の嘘はばれない。つもり。ワォ!
まあいいじゃん・・・・・
- 120 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19
-
「金沢ってヤツはどこだ?そいつが爆弾を作ってるのか?」
「あら琴美、そんなことまで話したんだ。口が軽いのね」
「てめえはもうお終いだよ」
「ふふふ。金沢君にお兄さんがいるってことも知ってるのかしら?」
「兄?」
「やめて!麗華ちゃん!もうそれ以上言わんといて!」
「あーら。やっぱり全部は言ってなかったのね。ふふふ」
「麗華・・・・・お前この化学実験室で何をやってるんだ?」
「ここで?ここはあんまり好きじゃないなあ。薬品臭くて。なんかヲタク臭くって」
「てめえ・・・・」
- 121 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19
-
いきなり出てきた金沢の兄という人間(兄沢?)にあたしは軽く動揺する。
さらに畳み掛けるように「ヲタク臭い」という言葉にもあたしは動揺する。
ヲタクを臭いって言うな。事実だけに心が痛むだろ。
そんなあたし以上に動揺が激しい琴美。まだ隠してることがあるのか?
ゆっくりと近づき、琴美の髪をさらさらと撫でる麗華。
泣いてるみたいな声がでちゃう琴美。
麗華の心が―――そして琴美の心が読めない。
- 122 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:19
-
「さあ、琴美。武道館・・・・じゃなかった武道場にでも行こうよ。
あそこなら空気もいいし見晴らしもいい。ここは暗くて辛気臭いから好きじゃないわ」
「でも・・・・・でもあたし・・・・」
「琴美、これが最後のチャンスよ。あたしと麻宮さん、どっちを選ぶの?」
「どっちって・・・・・・・・・・」
「あたしは琴美の全てを知ってるわ。でも麻宮さんはどうかしら?」
「・・・・・・・・・・・」
「全部話していないんでしょ?話す勇気があるかしら?」
「・・・・・・・・・・・」
「集会はどうするのかしら?今さら辞められないわよ?」
- 123 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20
-
麗華と琴美はあたしを無視してずんずんと話を進める。
最後のチャンス?、チャンス of ラスト?、始まるわー危険な瞬間?
まあそれは別にいいんだけど『集会』?なにそれ。
武道館で集会とかって一体どんな現場系ヲタサークル?
そんなのがあるの?あたし知らない。
長崎年長組会談に出席しなかった安倍のような気持ちになるあたし。
琴美は黙りこくったまま石のように動かない。
- 124 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20
-
「サキちゃんのこと・・・・・・・信用してええん?」
「友達だって言ってんじゃん」
「あたしのこと、許してくれる?」
「許すって何をさ」
「麻宮さん、本当に本当に本当にあたしのこと友達やと思ってる?」
「うん」
「本当に?爆弾事件に興味があるだけなんとちゃうの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「麻宮さんって本当は何者なん?」
- 125 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20
-
真摯なまなざしで見つめてくる琴美。
何者って言われてもさ・・・・・・・・
二十歳のあたしは思わず自分が着ているセーラー服を見つめる。
高校生に見えてるかな?まあ中澤裕子のコントよりはマシかな。
いや。
やっぱ無理な話ね。違いすぎる。
あたしは琴美が思うほど純な女じゃない。
きっとウソはバレルわだから言えない。
もっと泥沼になったら―――切ないじゃない。
- 126 :◆JOJO8O9U :2006/11/09(木) 20:20
-
【GOOD BYE 夏DD 終わり】
→To be continued
- 127 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:52
-
【第十一話 THE LAST DD】
- 128 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:52
-
あたしは琴美の問い掛けに対して―――
うつむいたままで、わざと返事をせずにいた。
きっと何か言葉にすれば涙流れたろうな。
あたしは黙って琴美の方に右手をすっと差し出す。
「琴美のこと守るって言ったこと。あれは嘘じゃない」
「サキちゃん・・・・・・」
「あたしは琴美のことを守る。何があっても」
「あたしはもうダメや。あたしもきっと・・・・・爆発して死ぬ運命なんや」
「琴美はあたしが死なさない。絶対守る。約束する」
「いや・・・・アカンわ。あたしはもうアカンねん」
- 129 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53
-
あたしは右手を琴美の方へと伸ばしたままずっと待つ。
琴美の手があたしの方へと差し伸べられるのを。
私待つわ。いつまで待つわ。
どんくらい時間が過ぎたって私は待てるわ。
市井紗耶香完全復活までは3年以上待った。
だが――――
どれだけ待ってもあの頃の市井が戻らなかったように、
琴美の手があたしの方へと差し伸べられることはなかった。
- 130 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53
-
「ゴメンなサキちゃん。あたし・・・・やっぱり・・・・」
「行こうか琴美。最後の準備をしないとね」
「あたし・・・・・もう戻られへん」
「そうよ。もう戻れない。戻るなんて許さないわよ」
「うん・・・・・・わかってる」
琴美は麗華と話しながら準備室から出て行った。
旧校舎から外に出てグラウンドの向こう側にある武道場に向かう二人。
あたしの言葉は琴美の胸に届かなかった。
どうしてだろう。わかってる。「嫌われてるんだよ」って言われるまでもなく。
どんなに綺麗な言葉を並べても、琴美が気に入んなけりゃ意味ねえNight。
- 131 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53
-
あたしは一人取り残された教室で空を切った右手を見つめる。
最後まで自分の正体を晒すことができなかった。
「なんでこんなに言うか分かる?琴美の事だからこんなに言うんだよ!」
とでも言えばよかったのだろうか。たとえ麗華に失笑されようとも。
それにしても琴美の考えていることば全然わからない。
彼女は一体何を胸の内に秘めているのだろうか。
わからない。全然わからない。
たとえつぼ八に呼び出したとしても、とてもわかりあえそうにない。
それでもあたしは、あたしは、あたしは―――この事件を解決しなければならない。
「守ってあげる」っていう言葉は嘘じゃないんだ。
正直な気持ちだから伝わってほしい。
今すぐじゃなくっても―――そのうちでいいから。
- 132 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53
-
あたしは学校を出てとぼとぼと家路につく。
金沢に兄がいたということ。「集会」という言葉の意味するところ。
琴美と麗華の関係。オーディションに受かった時のコメント。
先輩だけど年下になるメンバーを愛称で呼んでいいものかどうか。
考えなければいけないことことはたくさんあった。
あたしは少し遠回りをして、近くにある大学の構内を通って帰る。
メインストリートの歩道をそれてふかふかの芝生に足を踏み入れる。
大学の博物館の横の芝生では犬の散歩をしている人がたくさんいる。
残念ながら足を怪我してるオバサンはいない。
あたしは犬には縁がないのかな。別に豚とは縁がなくてもいいけれど。
はあ。あたし・・・・・本当にモーニング娘。に入れるのかなあ。
なんだか怪しくなってきた。
キーンと金属音が聞こえそうなくらい冷たい風が髪と無邪気に遊んでる。
この街の短い秋ももうすぐ終わる。
そろそろ例のニット帽を出すシーズンかもしれない。
冬に比べればこの街ではずっと存在感の薄い季節、秋。
でもまあ秋が好きだと言えば好きになれたし。
そんなことを考えるあたしの耳に風よりもさらに冷たい鋭い感触。
空を見上げるとゆっくりと、本当にゆっくりと、
この街にこの季節初めての雪が舞い降りてきていた。
まるで飯田さんがデザインしたかのような綺麗な雪の精たち。
――――冬が始まる。
- 133 :◆JOJO8O9U :2006/11/10(金) 19:53
-
【THE LAST DD 終わり】
→To be continued
- 134 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19
-
【第十二話 奇跡のDDダンス。】
- 135 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19
-
あずすーんあず帰宅するやいなや警部が車でやってくる。
ちょっと本部まで一緒に来いとのお誘い。
あたしも丁度警部と話がしたかったところ。
ドライブなんてグッドタイミング。こんな日もあるのね。
あたしはちょっぴり三枚目な警部について行く。
「もう一人の化学部員、千葉も逮捕した」
「思ったより早かったじゃん」
「今、事情聴取してるところだ」
「『集会』・・・・・がどうとか言ってなかった?」
「『集会』?なんだそりゃ」
「着いたら詳しく話すよ」
あたしは琴美と麗華との会話を説明しようとしたが、上手く言葉が出てこない。
全然出てこない。
ココナッツ娘。の新曲のように一向に出てくる気配がない。
もしかしたら一生出てこないかもしれない。
- 136 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:19
-
車は混み合った環状通りを東に向かって進む。
多くの車はまだスタッドレスタイヤに履き替えていないようだ。
ノーマルタイヤの車は初雪がうっすらと積もった道路に悪戦苦闘している。
そんな中、警部の車は高橋愛のトークのように一度も滑ることなく(嘘)目的地に到達する。
以前来た建物の地下一階では飯島と千葉が個々に取調べを受けていた。
これが噂の取調べか。ソースカツ丼とか頼んだら出してくれるのかな?
四角く小さい窓越しに見える二人は、
なんだかごっちんに分けてあげたくなるくらい無駄にテンションが高い。
自分らが何をしたかってこと、全然わかってないんだろうな。
「どうやら元化学部の金沢という男が爆弾を作っていたらしい」
「なーんだ。もうそこまでわかってるんだ」
「ああ。今は金沢の行方を全力で追っている」
「これでもうあたしの役目は終わったんじゃないの?」
「・・・・・そういえばお前、『集会』とか言ってたな」
「ああ・・・それはその・・・・飯島と千葉に聞けよ」
- 137 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20
-
あたしは元化学部の金沢の写真を警部からもらう。
兄が明で弟が明夫とかいう名前らしい。
あたしはじっと写真に写っている金沢明夫の顔を見つめる。
動物にたとえるならメガネザル。野菜にたとえるならカリフラワーってところか。
でもそんなことは口に出さない。いくらなんでも失礼というものだろう。
とにかく、警察の捜査は金沢兄弟のところまでたどり着いた。
ほんのちょこっとなんだけど―――前に進んだ気がする。
だが兄沢の方の写真は一枚も手に入らなかったらしい。
うーむ。
そいつは困った。ですね。ですねですねですね。
ですねですねですねですねですね(回数あってるかな?)。
話によると飯島と千葉は麗華に誘われて化学部に入ったらしい。
それまでは麗華とは全く接点がなかった飯島と千葉。
たった10分足らずで奇跡の恋となるってか?
麗華から離れて気づいた―――自分のやってることが犯罪ってことに。
まあ、きっと遅くない。まだやり直せる。DO THE LOVE!
そうさ。飯島だって千葉だって琴美だって―――そしてあたしだって。
きっと遅くない。まだやり直せるはず。
- 138 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20
-
「どうやら集会ってのは明日行われるらしい」
「明日!で、集会ってのは何の集会なんだよ」
「『A』という主催者が行う決起集会―――らしい」
「らしい?」
「目的はよくわからんがどうやら・・・・・・10個の爆弾を使って学校を―――」
「10個!マジかよ」
たった一つでも体育倉庫を吹き飛ばすあの破壊力。
10個もあったら間違いなく学校そのものが消し飛ぶ。それが目的か。
それにしても『A』だと?誰だ?
兄沢のAか?秋山のAか?
それとも松浦と久米宏が組んだが低視聴率で打ち切られた―――
- 139 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20
-
「とにかくだ。お前は学校に戻って『集会』の全容を探れ」
「麗華は?あいつを押さえた方が早いよ」
「今の状況では証拠が不十分だ。秋山を逮捕することはできん」
「証拠かー。ヒャクマミみたいな流出音源でもあれば決定的なんだけど・・・・・」
「それに秋山は自宅にも帰っていないようだ」
「彼氏の家にトイレットペーパーでも持っていってるんじゃないの?」
「とにかく!秋山を、そして集会を抑えられるのは学校に入れるお前だけだ」
「そんなこと言われたってもう明日だろ?」
「時間がないのはわかってる。だがやるしかない」
- 140 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20
-
言うだけなら簡単だよな。
「つんくが良い曲を書けばモーニング娘。は復活する!」とかさ。
言うだけなら簡単なんだよまったく。
そんな愚痴をグチグチ言いながらあたしは深夜の学校に忍び込む。
愚痴ってばっかいないで何とかしな!ベイビー!
それにしてもすっかり遅い時間になってしまった。
警部が門限通りにうちに送ってくれる、
あたしよりも弱虫な人だったらこんな時間にはならなかったのにね。
女にゃそれなりの時間もいりまっしょい!
目指すは旧校舎の化学実験室。
自宅からも消えている麗華が行きそうなところってここしか思いつかない。
あたしは慎重に身を屈め、ドアの前に進む。
そして案の定教室の中には―――人の気配が―――誰かいる?
みんなスヤスヤと寝てるような夜中にこっそりしのび足。
この鍵開ければ逮捕よ・・・・・
ピリィィィィピリィィィィピリィィィィ
って携帯鳴らすの誰だよーーーーーーーー
- 141 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:20
-
素早く闇の中を二つに分かれていく人の気配。二人いるのか?
あたしは二つの気配のうちどっちにターゲットを絞ろうかと考えるが―――
二つの気配は全く逃げる気配もなく、むしろあたしを挟み込むように
移動しているのを感じて肌が粟立つ。ヤバイ。挟み撃ちにされる。
まさに前門の羊、後門の狼。粘着とバカ。どっちも怖い。
あたしはとっさに廊下の電気を点ける。闇はむしろ向こうに有利。
走りながらさらに実験室の電気も片っ端から点ける。
暗闇に慣れた目がちかちかする。
これって日本民間放送連盟が定めたガイドラインには違反してないよね?
とにかく二つの気配が誰なのかを確認しなければ。
本当言うと怖かった―――できればここから逃げだしたかった。
BUT「逮捕がしたい」が刑事の本能。
そんなことを考えながら窓を開けた瞬間、あたしの後頭部に鈍い痛みが走る。
乱れる制服。バサッと床に落ちる特命刑事ご用達のDD印の携帯電話と生徒手帳。
だがダメージは浅い。初めてプリプリピンクを見た時ほどの衝撃は受けなかった。
気を取り直しあたしは振り返る。若い男みたいなのが一人。
目が霞んでよく見えない。
考えるより先に相手の膝に素早くローキックを叩き込む。
男が呻く。
男はラブホの冷蔵庫くらいの小柄な体躯。
動作も鈍い。構えは隙だらけ―――この男が相手なら勝てる!
- 142 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21
-
そう感じた瞬間、あたしの顔面に走る激痛。視界が真っ赤に染まる。
体重計に乗ったわけじゃないけど―――
思わずなんじゃこりゃなんじゃこりゃ状態に陥るあたし。
何かが顔に飛んできた。視界が元に戻るまでもう少し時間がかかる。
そう判断したあたしは愛の種(精子の暗喩)―――じゃなくて
そこら中のものを撒き散らしながらその場を離れ、少しの間時間を稼ぐ。
「大丈夫か」
「なんとか・・・・クソっ!この女!」
「ここは俺が片付ける。お前は早く逃げろ」
「けどよお!」
「下手に騒げば警察が来る。早く撤収しろ」
「じゃあここは任せるよ」
徐々に視野が戻ってくる。
あたしの蹴りでふらついているのは若い男。学生か?
警部の持っていた写真の男とよく似てるけど―――こいつが金沢弟か?
あたしは木綿のハンカチーフで目を拭き立ち上がる。
出血は大したことない。大丈夫だ。まだ戦える。
8期の入るモーニング娘。じゃないけれど―――まだあと三年は戦える。
- 143 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21
-
「特命刑事の麻宮サキだな」
「お前に恨みがあるわけじゃないが」
「我々の計画を邪魔されちゃ困るんだよ」
「明日一日、ちょっと動けないようになってもらおうか」
金沢らしき男は後ろのドアから逃げ出す。でも追えない。
パンダみたいな大きなサングラスをかけた30前後の男があたしの前に立ちふさがる。
グラサン男は余裕綽々で鼻なんかほじってる。藤本かお前は。
あたしはこの男をどこかで見たことがある。ような気がする。
だがそれを思い出している暇はなさそうだ。
この男、腹が立つくらい余裕綽々なんだが―――全く隙がない。
逃げ出すことは無理。ならば倒すしかない。
あたしは腿に装着したヨーヨーに触れるが―――
この準備室は天井が低い。
例のなんちゃらマンパワーとかいう技を出すのは無理そうだ。
それでもあたしは鋭いスナップでヨーヨーを放つ。
まともに空手で戦っても絶対に勝てない。そう感じた。
なぜなら飯田圭織の負のオーラをも軽く凌駕するような
圧倒的な存在感が―――この男には漂っていたから。
- 144 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:21
-
あたしは低い姿勢のままでヨーヨーを放つ。
ハロプロのCDの売上のように低空飛行で飛んでいくヨーヨー。
だがヨーヨーは勢いも虚しく軽くコーンと弾かれる。
男は掌に何かを持っている。だがそれが何なのかはよく見えない。
間合いを空けないと―――と思う間もなく間合いを詰められる。
そんなに詰めるんじゃねえ。美貴様のカップじゃあるまいし。
息をつく暇もなく、マカロニ―――じゃなかった
マシーンのようにビシバシと連続して飛んでくる拳と蹴り。
この男、強い。戦い慣れしている。
あたしも必死に応戦したが―――ペースは常にあっち。
ズバッとサマータイム並みの蹴りがあたしのわき腹に入る。
ののたんのように過呼吸に陥るあたし。
逆、逆、逆。息が出来ないあたしの肺。でも戦わなくちゃ。
そうよみんな必死なんだから。あきらめるくらい、簡単だから。
と思いながらもあたしはスラッシュダンスを踊るようにたたらを踏んで地面に倒れこむ。
OH YEAH! VERY PRETTY DANCE!
とか言ってる場合じゃないよね。
でも動けない。苦丁茶のような苦い汁があたしの口の中に満ちる。
こんなに胸胸、切なくって苦しい。サングラスさん超イジワル!
あー、ダメだ。麻宮的にはー、グスングスン。もう立てないのー。
- 145 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:22
-
「サキちゃん!大丈夫!?」
「!」
「警察呼んだから!もうそこまで警察来てるから!」
「ふん、警察が?嘘丸出しだな」
「本当やもん!ほら!そこに!」
あたしは呻きながら声のする方を見る。
琴美じゃん。なんで琴美がここにいるんだ?
男はあたしに向かおうか琴美に向かおうか、
どっちに進むのか迷っているようだ。こっち?うーん・・・こっち?
だが男はどちらに進むこともなく―――
思わせぶりな言葉を残して闇に消えていった。
「まあいい。今日はこれくらいにしておこう」
「無駄だと思うが、一応警告しておこう」
「明日の集会を止めようなどとは思わないことだ」
「止まらない―――集会はもう止めちゃいけない」
「止まらない―――それはもう―――どこにも行かない」
- 146 :◆JOJO8O9U :2006/11/11(土) 22:22
-
【奇跡のDDダンス。 終わり】
→To be continued
- 147 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:32
-
【第十三話 DD(ヒヤシンス)】
- 148 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:32
-
「サキちゃん大丈夫?」
「琴美・・・・・なんでこんな時間にここにいるんだよ」
「ちょっと用事があってん。サキちゃんらしい子がいたんを見て―――」
「追っかけてきたってか?」
「すぐに携帯に電話したんやけど全然返事なかってんもん」
「アチャーミー。さっきの電話は琴美だったのか」
「うん。ついさっき。携帯にかけたよ」
琴美ってばいつもタイミング気にせずにおつかいの電話を入れてくる―――凄い人。
まあ、携帯の電源切ってなかったあたしが悪いんだけど。
- 149 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33
-
「用事ってなんだよ。こんな遅くに」
「え。うん。ちょっと」
「明日の『集会』ってやつか?」
「・・・・・・・サキちゃん全部知ってるん?」
「話せよ。話せよ全部」
「ぜ・・・全部?」
「そう。全部だよ。集会のこと。化学部のこと。金沢兄弟のこと。
麗華のこと。さっきのサングラスの男のこと。琴美が知ってること全部。
どんなことも―――話してほしいのよ」
琴美は言葉を探すように宙に視線を彷徨わす。
あたしは琴美が話すのを待った。
なんだか待ってばかりだけど、待つことは苦じゃない。
辻の2nd写真集が出るまでは三年待った。
あたしはうたばんでの6期メンのようにずっと黙っていた。
黙って待っていればいずれ琴美が話し始めることはわかっていた。
この子はきっとずっと話せる人が来るのを待っていたんだ。
きっとそうに違いなかった。
- 150 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33
-
やがて琴美は話し始めた―――
やはり爆弾を作っているのは金沢らしい。
化学薬品会社に勤める、金沢とは年の離れた兄とのコンビで。
爆弾の部品なんていう誕生日コンの最前のチケット並みに入手困難なものは
兄沢のコネクションで全部用意してたってわけか。
その爆弾というのは、元々は中尾が
琴美をいじめるやつらに対する復讐のために作り出したものだった。
だがその図面はこっそりと金沢の素敵ノートにぬっちされていたようだ。
中尾は金沢を激しく問い質したが―――問題が解決される前に中尾は死んだ。
琴美のために。たった一人の琴美のために、たった一人で死んだ中尾。
琴美はふうとため息をつき、真っ暗な空を見上げる。
空を見上げる時は―――いつもひとりぼっち。
悲しいこともあるけど、すべて意味があるんだね。
- 151 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33
-
そして金沢に近づいた麗華が新しい化学部員を集め、
だんだん爆弾作りにも慣れて、だんだん度胸もついて、
爆発事件はだんだんと大きくなっていった―――
と、ここまでは大体以前に聞いた話とあまり変わりない。
「で、集会ってなんなんだよ。麗華は何を考えてるんだ?」
「麗華ちゃん。学校ごと全部吹っ飛ばすらしいねん」
「なんのためによ?」
「わからへん。学校が面白くないとか言ってる人を集めて色々やってるねん」
「あのヲタ奴隷みたいな取り巻き連中か」
「あの人ら怖い。ホンマにメチャクチャする人らやねん」
- 152 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33
-
「明日の放課後、体育館にみんなを集めるんやて」
「おーおー。そいつは涙が止まらない放課後になりそうだな」
「そんで・・・・・体育館で全部爆発させるって言うてたわ」
「爆弾は?もう仕掛けてあるのか?」
「仕掛けるっていうか全部あの人らが身に付けて―――全員で『飛ぶ』ねん」
「おいおい・・・飛ぶって・・・・・推しジャンプとかじゃないよね?」
「ホンマはあたしも・・・・・その一人やってん」
「え!?」
「あたしも昔、それ用に爆弾を一個作ったことあるねん・・・・・」
「どういうことだよ!」
「ゴメン。サキちゃんゴメン。『集会』って元々はあたしが考えたことやねん」
「どうして?どうしてなの琴美?」
「中尾君が死んで・・・・・金沢君にも色々言われて・・・・・あたしは一人ぼっちで」
「バカが!だからって死ぬことはないだろ!」
「学校も。先生も。あたしも。みんな全部吹っ飛ばしたかってん。飛びたかってん」
- 153 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:33
-
だが琴美は計画の途中で怖くなって化学部を辞めてしまったらしい。
辞めて正解ということもある。石黒のように。今や福田は微妙だけど。
だが琴美が辞めた後も麗華と金沢は集会の準備を着々と進めていた。
その集会は明日決行される―――『A』という男の名の下で。
男?『A』って男なのか?女なのか?それともサファイアみたいに―――
「琴美、『A』って誰なの?麗華のことか?」
「違うと思う。表で仕切ってるのは麗華ちゃんやけど・・・・・・」
「あのサングラスの男。あれが金沢の兄か?」
「わからん。金沢君のお兄ちゃんって一回も会ったことない」
「一回もないってことはないだろ」
「ホンマにないねん。あの人はいつも家にもおらんらしいねん」
「なんで?遠くにいってもうたん?」
「わからん。でも金沢君、お兄ちゃんには絶対会わせてくれへんねん」
- 154 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34
-
「まあいいや。大体のことはわかった」
「明日・・・・・どうするん?」
「もちろん集会をぶっ潰す。琴美も一緒に来いよ」
「え?あたし・・・・・怖い」
「大丈夫。琴美のことはあたしが守るから」
「でも・・・・・」
「琴美は集会を最後まで見届けるんだ」
「・・・・・・・・」
「見届けるんだ」
あたしは震える琴美を抱き寄せぎゅっと抱きしめる。
あたしはこの子に集会の、爆発事件の最後を見せてあげなければならない。
琴美には最後まで事の顛末を見届ける義務がある。
たとえライブ中に右足関節三角じん帯損傷の全治3週間のケガをしたとしても、
松葉杖をついてでもこの騒動のラストを見届けなければいけない。
なぜかそんな思いがあたしの中を支配していた。
全てが終わればきっと琴美は普通の生活ができるようになる。
受験して大学行ってアナウンサーにでもなって―――いや、北海道限定の地方タレントでもいい。
なぜかそんな風に―――楽観的に考えていた。
- 155 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34
-
「サキちゃん。あたしは全部話したで」
「うん。ありがとね」
「サキちゃんもあたしに全部話して」
「え?何を?」
「サキちゃんって何者なん?なんでこんなにあたしに優しくするん?」
「なんでって・・・・・友達だからだって言ったじゃん」
「なんで爆弾とか集会のことに関わろうとするん?」
「琴美のためじゃん」
「その言葉をホンマに信じてええん?」
琴美はつぶらな瞳であたしを見つめる。
上目遣い。上目遣い。上目遣い。
嘘をついてるあたしはこの無垢な瞳を直視することができない。
この瞳はこれまで一体何度あたしの心を締め付けてきただろうか。
事件に関わるのは―――琴美のため?自分のため?
いや。どっちとかないんだよ!
- 156 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34
-
何者なの?という琴美の真摯な問い掛けに対して
「爆弾の捜査をしている特命刑事でーす」と答えることはできない。
ぽーんと琴美の肩を叩いてあたしは無言で歩き出す。
目と目を合わすことはできない。きっと嘘ってばれてしまうから。
心の中に満ちる灰色の罪悪感。
どんな言葉も琴美を欺くための真っ黒な言葉に思えてしまう。
あれあたしってこんな人間だったっけ?
ただひたすらハロプロが好きだっただけの昔のあたし。
そんなに昔の話じゃないけど・・・・こんな色だったっけ?
今も「ふつう」で生きてるけれど―――これが私なんだろうか?
一つはっきりしていることは、琴美のおかげで事件は解決に向かい―――
あたしのモーニング娘。加入も実現に近づいたってことだ。
あたしと琴美の一方的なギブアンドテイクな関係。テイクアンドテイク?
だからあたしは「ありがとう」なんて気軽に声に出して言えない。
だってあたしは琴美に何も与えてあげることができていないんだから。
だからあたしは無言で―――心の中で琴美に礼を言う。
ありがとう。あなたがくれたすべてにありがとう。
ありがとう。あなたがくれたすべてにありがとう。
- 157 :◆JOJO8O9U :2006/11/12(日) 13:34
-
【DD(ヒヤシンス) 終わり】
→To be continued
- 158 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:43
-
【第十四話 YOUR SONG〜DD宣誓〜】
- 159 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:43
-
あたしと琴美は、お互いどっちがたくさんの嘘をついてるかなんて
比べて仕方のない事を夜明けまで語ったりはせずに
北12条の交差点で右と左に別れて互いの家路に着く。
あたしも琴美のように思いを全て打ち明けることができるだろうか。
まあ、いつか。いつかね。
すぐじゃないかもしれないけれども―――思いよ伝われ。
気がつくともう夜が明けようとしていた。
とりあえず明日だ。やるしかない。
気合入れて明日に向かって―――やるときゃやるのさ!
その前にあたしは、とにかくちょっと一息入れて
二時間ほど仮眠をとってから学校に行こうと思いベッドに入ったが、
次に目が覚めたのはお昼も過ぎた15時だった。
うわ。
ごっちんやなっちだってここまでの寝過ごしはしないよー
麻宮サキさんよぉ!辻じゃないけどおまえは・・・・・キッズ以下だな!
とか自分に突っ込みを入れるあたし。
もう完全に遅刻だけど、まゆ毛を慎重に書いてから家を出る。
- 160 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44
-
あたしは自転車こぎこぎ全速力で学校に向かう。
急がなきゃ―――間に合わんデイ!
琴美の携帯にメールしようと思って気づく。
昨日のやりとりで落とした携帯と手帳は結局見つからなかったんだ。
嫌な予感が背中をぬるりと走る。
だけど されど そして いつか どこか 見つかる日が来るだろう。
自分に無理矢理言い聞かせるようにしてあたしは体育館に向かう。
体育館は―――まるでなっちの卒コン会場のように―――
建物の外から見てもそれとわかるくらい異様な雰囲気に包まれていた。
入り口では教師と生徒がそもさん、せっぱと押し問答をしている。
入れない。クソが。30円軍団か?心の狭いやつらだ。
モーニング娘。のオーディションだって門前払いなんかしないぞ。
どんな子でも、どんな子でも一応形だけでも一次は受けさせる。
どうする?裏口から行くか?まともにあそこから行くか?
まともにねえ。それはまずいか。
うちらが行ったらパニックになっちゃうよ。
- 161 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44
-
だが頭で考えるよりも体が先に反応するタイプのあたしは自転車のスピードを上げる。
トップスピードで人垣に突っ込むあたしとあたしの自転車。
倒れる生徒。呻く先生。響く怒号。パニックは頂点に達する。
いや、頂点はないと思うんやよ。
怪我してる生徒を踏み分けて体育館の中に入るあたし。
体育館のステージ上には麗華と琴美の姿が。
あずすーんあずあたしを見るや否や麗華は琴美を連れてステージを去る。
どこ行くんだ―――と言うまでもなくあたしは30円軍団に取り囲まれる。
やあやあ皆さんお久しぶり。謹慎処分は解けたのかい?
それはなんとも羨ましい限りですね。
あたしはあいぼんの謹慎期間がどれくらいになるのか数えようとして辞める。
今やるべきことはこいつらを蹴散らすこと。
今度は手加減しない。
あたしを本気で怒らせたら知りませんよ。知りませんよ。知りませんよ。
分かるよね?
- 162 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:44
-
「またてめえかコラ!」
「一回死ぬかコラ?」
「みんなと一緒に弾けようぜ!」
「ばーん!ばーん!あはははははは」
「ゲームだよ!ゲーム!なにマジになってんのwwwwwwwwww」
「ん?悔しかったの?」
「必死だなおいwwwwwwwww」
口々に安っぽい台詞を吐く30円軍団。
・・・・・で?っていう。
ばっと学生服の上着を脱いだ軍団連中の腰には例のウエストポーチ。
オン、トゥル、スレ、フォ、ファイベ、ソックス、セブ、エイ、ナイ、テン!
あたしは素早くののたん式のクイーンズイングリッシュで爆弾の数を確認する。
確かに10個。
こいつらを止めればあたしの人生は変わる。
30円軍団を倒したいなぁ。爆弾を全部止めたいなぁ。モーニング娘。に入りたいなぁ。
たいなぁ星人と化したあたしはもう手段なんて選ばない。
ゲームだと言うならゲームでもいい。あたしはこのゲームに勝つ。
たとえハロモニのゲームの高橋愛のように、反則的な手段を使ってでも。
- 163 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:45
-
「うおおおおおおおおおおおおお」
「行くぜ!EVERYBODY!!」
「祭りの始まりだぜ!!!!!」
連中は獣のような叫び声を上げて腰のポーチを触る。
どうやら時限装置をオンにしたらしい。
見物に来てた連中にもそれはわかったらしく、
体育館は逃げ惑う人の波でパニック状態に陥る。
関係ないやつらが見物とか来てんじゃねーよ。
お前らが大勢いると軍団がきゃっきゃっきゃってなっちゃうだろ!
とにかくパニックの元になっている10人を止めないと。
10人か。くそおお。多いよ!でも焦るな。
焦らない、もう焦らない。急がば回れ。
これを倒せば開けるハロプロへの道。
わたしは信じて待ってます。良い子にしてました。
白馬に乗ったつんく様。ナビは壊れてないよね?
- 164 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46
-
連中は束になってあたしに襲い掛かってくる―――と思いきや、
10人はバラバラに走り出し、パニックになってる生徒達をさらに煽る。
脳裏を走る違和感。何かがおかしい。ホントにこいつらは何が目的なんだ?
目的なんてない?それにしても何かが変だ。
CDTVの恋人にしたいアーティストランキングを見た時に感じたような異物感。
誰かが―――裏で糸を引いている?
一瞬油断したあたしは後ろからドーンとぶつかられる。
でもそれは軍団連中じゃなくて普通の生徒。
きゃあきゃあきゃあとわめきながら走り回る生徒達。
次から次へと湧いて出て、あたしにガンガンぶつかってくる。
全くもう!ねぇいらいらする。さわんなよオル゙ァ!!
生徒達の間隙を縫うようにしてあたしに襲い掛かってくる軍団。
折り重なるようにして体育館の床に雪崩落ちるあたしと軍団と生徒。
したたかに頭を打ったあたしは軽く意識が遠のく。意識がdj
飛んだ!飛んだ!あたしの意識!飛んだーー!!
などとプッチゲームで遊んでる暇はない―――爆弾を止めないと。
- 165 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:46
-
爆弾を止めないと―――
と思って伸ばした手がウエストポーチに触れる。
デジタル時計は0:01から―――0:00になって―――
もうダメだ。あたしは思わず目をつぶる。
今迄で一番震えちゃった瞬間。
間に合わなかった。死んだ。あたしは死んだ―――
―――と思った瞬間。
時計は再び5:00に戻る。まだ生きているあたし。
そして何事もなかったかのように再びカウントダウンが始まる。
アンコールですか???信じられない。
本当はこんなんじゃアンコールやってあげないんだからね!
という安倍さんの言葉が脳裏をよぎる。
でも麗華が安倍さんみたいに優しいわけがないよね?
- 166 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47
-
相変わらずうわわあわああああああとか叫びながら
体育館内を走り回っている他の軍団連中。
一向に爆発しそうにない10個の爆弾。
考えろ。考えるんだあたし。まだあたしは生きている。
生きてこそ―――偶然という成功へのヒントにも会うだろう。
もしかして。
あたしの脳裏には琴美を連れ去った麗華の姿がフラッシュバックする。
もしかして。
あたしは再び倒れてる軍団連中のウエストポーチに手を伸ばす。
成功を手にしてみたいなら、冷静な観察と分析を。
うん?
なんか足んない。なんか足んない―――そこにはピンクの導線がなかった。
- 167 :◆JOJO8O9U :2006/11/13(月) 21:47
-
【YOUR SONG〜DD宣誓〜 終わり】
→To be continued
- 168 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:30
-
【第十五話 DD橋】
- 169 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
あたしは折り重なる人の波を押し分け体育館の外に出る。
相変わらず30円軍団は暴れまわっている。もうグダグダ。
さゆのソロラジオかよっていうくらいグダグダ。
もうここに用はない。
あいさが、あいさが。いや、違う。
今探さなくちゃいけないのはアイドルでもウォーリーでもなくて麗華だ。
本物の爆弾はあいつが持っているに違いない。でもどこに?
学校全体を爆破するつもりなら学校の中にはいないはず。
それならどこにいるんだ?どこからこの茶番劇を見つめているんだ?
誰か教えてほしいんだ―――偉い人、賢い人教えて!
- 170 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
「さあ、琴美。武道場にでも行こうよ」
「あそこなら空気もいいし見晴らしもいい」
あたしの脳内にフラッシュバックする麗華の言葉。
見晴らしがいい。確かに武道場なら体育館も校舎も一望できる。
ベストポジションだ。言うなれば前列中央。エースの指定席。
考えている暇はない。もう今爆発したって不思議じゃないんだ。
そうなる前に―――あたしは先に向かってるロードをひた走りに走る。
- 171 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
あたしはグラウンドを一直線に横切り、最短距離で武道場を目指す。
ダッシュ滑走!名古屋キャッソウ!
もしも武道場に麗華がいたならあたしの姿は丸見えなんだけど、
今は裏から回りこんでひっそりと忍び込むなんてことしてる暇はない。
とにかく走れ!走るんだ!とあたしは全細胞に命令を送る。
そして
あたしは武道場の前にたどり着く。
一階はトレーニングセンター。略してレーニン。違う。トレセンだ。
二階は愛情イッポン!の収録だってできそうな広い柔道場。
そして一番上の三階は板間の剣道場になっている。
階段へと急ぐあたしの視界に一人の男子生徒が入ってくる。
- 172 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:31
-
「なんだ?・・・・・てめえは昨日の!」
メガネザル顔を紅潮させているのは確認するまでもなく金沢(弟)。
あの夜にあたしに叩きのめされ―――そうになった金沢だった。
あたしは金沢に行く手を邪魔されているという煩わしさを感じる前に、
ここに麗華もいるに違いないという確信を得られたことに歓喜する。
思わず狼に「梨華ちゃんのおかげで麗華発見」というスレを立てそうになるくらい。
「いいかげん死ねやおるあっぁああ!」
とか言ってる金沢を軽くワンパンチでのしてあたしは二階へと駆け上がる。
弱い。存在自体が弱い。なにこのガニモニ級の弱々しさ。
この弱さ。こいつは小者だ。このカリフラワー君に話を聞いてる暇はない。
麗華。とにかく麗華を押さえるんだ。
二階には誰もいない。あたしなのんのんのんのんノンストップで三階へと上がる。
三階にはあたしが捜し求めていた麗華が悠然とパイプ椅子に腰掛けていた。
- 173 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
「あら。麻宮さん。意外と早かったわね」
「麗華!爆弾はどこだ!」
「爆弾?・・・・・あら、琴美のことを探しに来たんじゃないの?」
「うるせえ!さっさと爆弾の場所を教えろ!」
「あらあら。やっぱり琴美よりも爆弾の方が大事みたいよ?」
ちちんぷいぷいと横を向いてそう言う麗華の視線の先から現れる琴美。
更衣室から出てきた琴美は手に携帯電話のような物を持っている。なんだアレ?
琴実の顔色はまるでファンクラブから来た封筒の色のように真っ青。
そのつぶらな瞳は真っ直ぐにあたしを見つめる。
あああ、まただ。またあの視線があたしの良心を締め付ける。
屋上で、化学準備室で、そしてそしてそして・・・・・・
いつの時もあたしを真っ直ぐにみつめてきた琴美の黒目勝ちな瞳。
私は今もあの頃を―――忘れられず生きてます。
- 174 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
「サキちゃん・・・・・」
「琴美・・・・・」
「やっぱりサキちゃんは爆弾のことの方が・・・・」
「違う!そんなんじゃない!」
「サキちゃん、警察の人やってんね」
「!」
「ゴメンな。サキちゃんの生徒手帳と携帯、見せてもろたわ」
そう言う琴美の横から麗華がポーンとあたしに携帯と手帳を投げる。
昨日の夜、化学準備室で失くした携帯と手帳。
ご丁寧にも桜田門の御印の入った特命刑事ご用達のDD刑事グッズ。
よりによって麗華に拾われていたとは。
そんなもん拾う前に小イシカワでも拾えよという言葉をあたしは飲み込む。
これはもう、まとめサイトを作られるまでもなく有罪確定ですね。
「素敵だなと思って・・・・・」とかいう言い訳はおそらく通用しないだろう。
- 175 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
琴美はあたしに向かって真っ直ぐ近づいてくる。
あたしは一歩も動くことができない。
琴美はゆっくりと左手を伸ばす。
ああ、そういえば―――この子は左利きだったっけ。
「サキちゃん。嘘って言うて」
「あ・・・・・・」
「警察の人なんかやないって言って」
「いや・・・・・・・」
「爆弾なんかよりあたしが大事って言って」
「あたしは・・・・・あたしは・・・・・・」
「サキちゃん。あたしの目を見て」
- 176 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
あたしは琴美の目を見ることができなかった。
差し伸ばされた琴実の左手に手を指し伸ばすことはできなかった。
「話せば長いけど聞いてほしい」とか言いながら
学校じゃ教わらない経験のエトセトラを話すことはできなかった。
だってあたしは―――あたしは―――あたしは―――
DD刑事だったから。
あたしは琴美が差し出した左手を無視する。
あたしはそこに手を差し出すことはできない。
あたしはこれ以上琴美に嘘をつくことはできない。
琴美は泣きながら武道場の階段を下りていった。
あたしはそんな琴実の後姿を見つめながら、
化学実験室で琴実と話した日のことを思い出していた。
「爆弾事件とあたしとどっちが大事?」と琴実が言ったあの日あの時。
願い事一つ叶うなら―――あの頃に帰りたい。
- 177 :◆JOJO8O9U :2006/11/14(火) 21:32
-
【DD橋 終わり】
→To be continued
- 178 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
-
【第十六話 「ずっと DDでいいですか」】
- 179 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
-
「さあ、麻宮さん。あなたとのお遊びもここまでよ」
「遊び?」
「そう。楽しかったでしょ?」
「てめえは・・・・・絶対許せねえ!」
「許せない?あらそう。ふふふ」
「爆弾はどこだ」
「ふふふ。特別サービスで教えてあげようかな。あたしを―――倒したらね!」
- 180 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
-
あずすーんあずそう言うや否や麗華は木刀であたしに斬りかかってくる。
麗華を倒したら爆弾の場所を―――
秘密の場所を全て教えてあげる?ALL NIGHT LONG?
最高の条件に細心のサービスですね。そうだそうだそうだ。全くその通り。
まるでコレオグラファーのダンスのように本格的な麗華の体捌き。
こいつはきっと素人じゃねーな。きっと既にどこかの弱小芸能事務所に―――
とか思う間もなく突き突き突き突き突きをくーだーさーい。
突き突き突きつを無限大ーとロボキッスのような突きの嵐。
麗華は突かず離れず絶妙の間合いを保つ。
あたしは離れてヨーヨーを使うか近づいて空手を使うかで迷う。
間違ったってしょうがないでしょ。迷ってたって始まんないでしょう。とは言ってもね。
―――剣道三倍段。ふとそんな格言が脳裏をよぎる。
三倍という言葉にいまだに何度でも反応してしまうあたしはDD。
- 181 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:35
-
あたしは必死で動き回るが麗華はなかなか間合いを空けてくれない。
保田のスケジュールくらいぽっかり空けばヨーヨー使えるのにー。
そういや麗華はあたしが空手やってるってこと知らないんじゃ?
あたしは大きく一つフェイントを入れてグッと間合いを詰める。
麗華の襟をつかみ、膝蹴りを麗華の鳩板、じゃなかった鳩尾に入れるが―――
固い!―――右膝に走る激痛。あわてて再び間合いを空けるあたし。
「あら麻宮さん大丈夫?お皿が割れたんじゃないかしら?」
「ふん。こんなのへちゃらへいけ」
「あらあら。血が出てるじゃないの。あたしがその血、止めてあげようかしら?」
「おう。よろしくよっすぃー」
「いいわよ。あなたの血の流れを―――息の根ごと止めてあげる」
- 182 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
薄い笑顔でさらっと過激なことを言う麗華。
それで上手いこと言ったつもりかよ。
これ見よがしにゆっくりとめくり上げあられた麗華の制服の下には分厚い防具。
あんなの仕込んでたのか?矢口のブーツの底より厚いぜ。ずるい女。
あたしはひざをさする。大丈夫。折れちゃいない。いや、折れても戦う。
起きてるのか寝てるかわかんないほど、遠く霞みそうな意識を集中させる。
右手。左手。右足。左足。目。腰。まゆ毛。動け。顔中。無理。
ハロモニのロケくらい集まりが悪いあたしの各パーツからの反応。
くそ。全員集まれよ。どうせ暇なんだろ?来い。立て。もうこれが最後だ。
苦労なんて覚悟していた。最後笑えるなら。
これが終わればあたしはモーニング娘だ。
女の子なら誰もが思う―――ハッピーエンドストーリー。
- 183 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
あたしは一瞬油断した麗華から一歩間合いを開く。
小さな一歩。でも一歩一歩でしか進めない人生だから。立ち止まりたくない。
あたしは斜め後ろに体を投げ出して
サイドスローでヨーヨーを麗華の眉間に放つ――――が
間合いをグッとつめながらあたしの横に回りこむ麗華。速い。
ヨーヨーの鎖はいつの間にかじゃらじゃらと麗華の木刀にからめとられていた。
鎖に引っ張られて振り回されるあたし―――板間に転がる。痛い。
「く」の字のように少し丸まったあたしに「を」の字のようにのしかかってくる麗華。
それなんてハロモニ人文字選手権?
「あーら麻宮さん、あたしが油断したとでも思ったのかしら?」
「油断なら―――とっくにしているわ!」
あずすーんあずそう言うや否や
あたしは怪我をした膝で麗華の股間を思いっきり打つ。
急所に不意討ち。卑怯だが「わたくしらしくないでしょ?」とか言ってる場合じゃない。
まさかここには防具なんてしてないだろ、と思いきや―――
固い!またもや固い感触。股間に何を入れてるんだ。お前は亀井か!
- 184 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
「あなたもしつこい人ね」
「お前・・・・・ここにも防具を・・・・」
「防具?なーんのことかしらねー」
麗華さんったらまったくずるいこといっぱいする人ね。
自然じゃないところがなお悪よね。
あたしは巴投げの要領で麗華を後ろに投げようとする―――が
ヨーヨーの鎖がからまり上手くいかない。
麗華は完全にマウントポジションを取って木刀をあたしに向ける。
がばああああっと高く振り上げられる麗華の木刀。
この体勢では絶対にかわせない。
万事休す?いやいやいやいやいやいや。
諦めたらそこで試合終了ですよ?
麗華を倒す。倒すんだ。
平凡なわたしにだってできるはず。
- 185 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
あたしは上体を少し浮かせて麗華の木刀を左の肩で受け止める。
聞いたこともないような音がして鎖骨が折れる。
でもこれは℃-uteが売れないってのと同じくらい想定の範囲内。
こんぐらい平気よ平気。今度はあたしの番。
ダメは承知でも待ってるだけじゃ辛いからねー。
逆転サヨナラ満塁ホームラン目指すっきゃない!
今度こそ本当に油断した麗華の鼻っ柱に思いっきり頭突きを見舞う。
くるりと安倍と松浦の力関係のように逆転する二人の姿勢。
今度はあたしが上になる。あたしは血混じりの唾を麗華の目に吐きつける。
もう手段なんか選んでられるか。握手会だろうがバスツアーだろうがなんでもやるぜ。
「下品ね・・・・ホント卑しい子」
「うるせえ!喧嘩に上品も下品もあるか!」
「あんたの唾、臭いのよ」
「てめえ・・・・・」
「てめえの・・・てめえのじぇんぞんじゃいがうぜえええええんだよ!」
「うるせええ!」
- 186 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:36
-
あたしは噛み噛みで捨て台詞を吐き捨てた麗華の顎を思いっきり正拳で打つ。
さすがにここには防具は入れてないみたいだな。梨華ちゃんみたいに。
麗華はもう観念していたのだろう。
おいおいと声を上げて泣きながらあたしの拳に打たれるままになっていた。
泣くんだね。こういう場面では。すごいのね。あきれちゃうわ。
とか思ったその瞬間―――
あたしの首に強烈な一撃が入る。後ろから。誰だ?誰だ?
右膝。左肩。首。つんくの言うところの「ナイス谷間!」。全部痛い。
痛くて痛くてたまらない部分を全部押さえながらあたしは転がりまわる。
ヨーヨーの鎖を引く。こっちこいあたしの相棒。
視線を上げる。道場の入り口には見たことのない男が一人立っていた。
今度ばかりは女だけが持っているすごい直感が働くあたし。
このメガネザル顔にカリフラワーヘアー。似てる。
さっきあたしが一階でKOした元化学部の金沢に。
こいつがきっとこの事件の首謀者。
『A』ってのはやっぱり―――兄沢の『A』だったのかな?
当たり前だけど下半身は露出してないのね。AAみたいに。
攻撃を恐れて身構えるが、兄沢はあたしに見向きもせずに麗華に近寄る。
- 187 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「麗華!麗華!」
「う・・・あ、あきらさん・・・・」
「起爆装置はどこだ?お前が持ってるんだろ?」
「こ、琴美・・・琴美が・・・」
「チッ!あいつが持っていったのか!」
そういや兄沢の名前は「明」だったな。やっぱり「明」の『A』なのか。
とか思う間もなくあたしの思考は麗華の言葉に遮断される。
琴美が―――そういえば手に何か持っていた―――
琴美が起爆装置を持ってるって?マジかよおい!
時限爆弾じゃなくて起爆装置で爆破させるタイプなのか?
あたしはよろよろと階段の方へ向かう。
琴美を―――止めなきゃ。琴美は死なさない。あたしが守る。
あたしが守らなきゃなんだ。
誰かがやるんじゃないんだ。
- 188 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「お前が例の刑事か」
「うっせえ!どけ!」
「通すかよ。お前はここで死ね」
「ヘッ!死ねとか言ってんじゃねーよ、バーカ」
「そんな体で何ができるんだよ!」
兄沢君は木刀を手にあたしに襲い掛かってくる。
へっ。へったくそ。こいつは格闘技の経験ないな。麗華の方が強い。
だがあたしの体はそれ以上に動かなくなっていた。
もうスポフェス終わりみたいにクタクタでさ。疲れたよ。ももにきているよ!
でも攻撃しなきゃ。そう思いヨーヨーの鎖を引く。
だがヨーヨーは麗華の木刀とからみあってなかなか言うことを聞かない。
細くもつれた糸をほどくみたいに、
あたしはヨーヨーの鎖を操る―――鎖が途切れぬように。
- 189 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
「何やってんだこらああああ!!」
そんな風に鎖を押したり 引いたりしてるから―――裏目裏目に結果が出たり・・・
兄沢の木刀があたしの背を打つ。いてえ。畜生。
あたしは再び道場の床に這い蹲る。今度こそダメだ。立てない。
痛いんだよ。右の膝も左の肩も。頭も。背中も。特攻服姿のヲタも。
兄沢はご丁寧にもあたしのヨーヨーの鎖を切る。
コロコロとかつての辻の体型のような音を立てて入り口の方へと転がっていくヨーヨー。
ムチムチ?それはえりりん。そんな冗談を言う気力ももう残っていなかった。
もうダメだ。空手も使えない。ヨーヨーも使えない。6期もアウェイじゃ使えない。
あたしの人生八方ふさがり。
あーあ。なんでこんなんなっちゃったんだろ。
あたしはただモーニング娘。に入りたかっただけなのに。
モーニング娘。が好きだっただけなのに。
でもそれももうお終いみたいね。
結局―――永遠の片想い。
- 190 :◆JOJO8O9U :2006/11/15(水) 18:37
-
【「ずっと DDでいいですか」 終わり】
→To be continued
- 191 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
【第十七話 気がつけば DD】
- 192 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
兄沢が近づいてくる。
そしてそれとは異なるもう一つの足音。誰だ?あたしは視線を上げる。
気がつけばそばにグラサンが居た。
鎖の切れたあたしのヨーヨーを片手に持った、大きなサングラスの用務員。
こいつは―――確かあの夜、金沢の弟と一緒にいた―――
「お楽しみのところ悪いが・・・邪魔するぜ」
「誰だお前は?」
「名前なんてどうでもいいだろ。しがない一人の用務員さ」
「そうか。お前が明夫の言ってた・・・・・どうした。爆弾は全部校舎にセットしたのか?」
「お前が金沢明だな。探したぜ」
「お前・・・・・何者だ?」
なんだか様子がおかしい。
なかさきちゃんのビジュアルのように激変する周囲の空気。
兄沢は懐からほいっと拳銃を取り出す。おいおい。マジかよ。
だがサングラスの用務員は拳銃を見ても全く動揺した様子はない。余裕綽綽。
あたしのヨーヨーをいじりながら一歩一歩兄沢に近づく。
兄沢は何も言わずにいきなり用務員に発砲する。
だが―――そこいたはずの用務員は兄沢の視界から完全に消えていた。
- 193 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
―――上だ!
と思わずあたしは心の中で「さとだや!」と同じようなテンションで叫ぶ。
用務員は空高く舞い上がり―――そしてヨーヨーを放つ。
ヨーヨーは―――光の矢となって―――兄沢の喉元にめりこんだ。
「こはっ」とミラクルなうめき声をあげて卒倒する兄沢。
床に大の字になった兄沢はピクリとも動かない。
そんな兄沢に対しても用務員は全く油断するそぶりを見せずに
慎重に近づき、兄沢の両手にカチャリと手錠をかける。
手錠?ってことはこいつは・・・・・
- 194 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
「お前・・・・もしかして公安の・・・・・」
「まあな。半年前からこの金沢明を追っていた」
「お前も金沢兄弟の仲間じゃなかったのかよ」
「そんな振りをしてたのも金沢兄を誘い出すため」
「誘い出す?」
「この金沢って男は用心深い男でね。なかなか姿を現さなかった」
「それで・・・・・おとりになって・・・・」
「そう。『集会』をえさに金沢を誘い出したってわけだ」
唖然とするあたし。
こいつが公安の刑事だったのか。
もしかしてあたしはずっとこの男の掌の上で踊らされていたのか?
なんか急に体の力が抜けるあたし。まあいいや。結果が全て。
逮捕できたからOKだもん!どうもこうもないっすよ。
それにしても―――
- 195 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:47
-
「お前、本当に何者だよ?」
「だから公安の―――」
「スチューカス・ロビン・翔子の誕生日は?」
「1993年3月15日。さらに一言付け加えるのなら―――」
男はそう言いながら大きなサングラスを外す。
眉間には銃創のような派手な傷。意外と若い。
男は安倍なつみのような
無菌的な、人工的な―――とびきりの笑顔であたしに諭す。
「正確に発音するなら『ストューカス・ロビン・翔子』
より正確に言うなら、今の芸名は『岡田・ロビン・翔子』だ」
「!」
「日本語は正しく―――役不足オーケー?」
- 196 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
「そんなことよりも」
「お前・・・・・」
「琴美ちゃんのことはいいのかな?」
「あ!」
「おいおい。忘れてたのか?」
あたしはすっかり琴美のことを―――そして爆弾のことすらも―――忘れてた。
なんてこったい。
忘れてる場合じゃない。琴美は起爆装置を持って行ったんだ!
グラサンは大きなポカをしちゃった私をさりげない声でつつんでくれた。
ある意味、優良刑事だな。マジでUFAとゼティマに見て欲しい。
「ここは俺が片付ける。お前は琴美ちゃんのところに行ってやれよ」
「あの・・・・その・・・・爆弾は・・・・・」
「10個とも俺が片付けた。琴美が持ってる起爆装置を押しても何も起こらんよ」
「ありがと!」
- 197 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
★ ★ ★ ★ ★
サキは礼もそこそこによたよたと武道場の外へと走り出る。
男は金沢兄と麗華をひとまとめにして部屋の隅に置き、
階下に下りていくが―――そこにあるはずの金沢弟の姿はなかった。
男は携帯電話を取り出し上司らしき男に報告を入れる。
もしもし。金沢明を確保しました。
ええ。ええ。なかなか用心深いヤツでしたが、なんとか。
それが弟の方はまだ・・・・・至急手配お願いできますか。
いやいやいや。油断したつもりはなかったんですが・・・・・
え?例の特命刑事?・・・・・・・・・さあ。なんとも。
個人的には生徒会長の方が良いと思いますけどね・・・・・。
★ ★ ★ ★ ★
- 198 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
あずすーんあずあたしはグラサンに礼を言うや否や校舎の方へ駆け出す。
膝は痛いわ、背中は痛いわ、肩は折れてるわ、村上は引退するわで
あたしは身も体もぼろぼろだったけど、走らずにはいられなかった。
爆弾魔は逮捕したし、爆弾は全部抑えた。
なのに、どこ行ったんだよー琴美!
琴美を救わないとこの事件は終わらない―――そんな気がしていた。
あたしは琴美を救うことができると信じていた。
そして―――
全てが終わればモーニング娘。に入ることができると信じていた。
一点の曇りもなくそう信じていた。
この事件が終われば―――
あたしにも琴美にも―――
幸せな未来が待っていると信じて疑わなかった。
これであたしが次のシングルのセンターだったら言うことはないんだけど―――
幸せの途中って自然すぎて少しずつ贅沢になってるかも?
- 199 :◆JOJO8O9U :2006/11/16(木) 19:48
-
【気がつけば DD 終わり】
→To be continued
- 200 :名無し娘。:2006/11/17(金) 11:29
- DD刑事生きてたー!!
すんごいうれしいぜ
- 201 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
【第十八話 砂を噛むように・・・DD】
- 202 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
まだ体育館の方は騒がしいようだったが、
あたしはそんな喧騒を軽く無視して校舎の中に入る。
どこ?教室か?化学実験室か?それとも―――それとも―――
「学校も。先生も。あたしも。みんな全部吹っ飛ばしたかってん」
「飛びたかってん」
琴美がそんなことを言ってたのをふと思い出す。飛ぶ。飛ぶ。
屋上―――あたしと琴美が初めて話したあの場所!
あたし脳天に舞い降りてきた直感。
信じて進むのか?疑って進むのか?ここはもう信じるしかない。
だってもうわかんないんだもん。
時間がないんだもん。
タイムイズマネーです。言わんこっちゃないでしょ?
- 203 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
あたしは傷ついた体をひきずるようにして屋上まで駆け上がる。
痛い。誰か代わってくれ。こんな時こそ代役柴田。みゅんみゅん。
あたしは右の肩で体当たりするようにして屋上のドアを開く。
折れた左の鎖骨まで響く。痛い。汗が止まらない。吐き気がする。眩暈も。
だがそんな痛みも屋上にいた琴美を見た瞬間―――消えた。
「琴美」
「サキちゃん」
「終わった。麗華も。金沢兄弟も。みんなぶっ倒した」
「終わってへんよ」
「琴美」
「でも・・・・もうすぐ全部終わるんやけどね」
琴美はバッと上着を脱ぐ。
そこには何度も見た例のウエストポーチが。
それを見た瞬間、再びあたしの体は疲労と激痛に包まれる。おい。マジか。
そういえば―――琴美自身も一つだけ爆弾を作っていたとか―――
まさかね。でも琴美の目は真剣だった。
あの目。飯田さんのように思いつめたあの目。危険だ。
- 204 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:38
-
琴美はテレビのリモコンのようなものをポーンとあたしの方に投げ捨てる。
おそらくこれが―――兄沢が用意していた起爆装置なのだろう。
今となってはもう用なしだが。
「押したけど全然反応なくって」
「爆弾はもう全部止められてるよ」
「知ってる。でもこの爆弾は違うよ」
「琴美・・・・・・」
「この爆弾はあたしが作ったやつだから」
「バカな真似はよせ」
「タイマーが切れたらそれでお終い」
- 205 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:39
-
「サキちゃん。ここで話したこと覚えてる?」
「うん・・・・・・・」
「あたしも覚えてる。一生忘れない」
「・・・・・・・・・・」
「友達だろって言ってくれたあれ、嘘やってんね」
あたしは琴美の問い掛けには答えない。
もうあたしが刑事だってことは―――
知っているでしょ?嘘をつくのはあまり上手じゃない。
でも友達って言ったのは嘘じゃない。
捜査のためなんかじゃない。
自分のためなんかじゃない。
本当に琴美のことが好きだったから。そうなんだ。
あの日が手の平から遠く離れ―――気付きました。
モーニング娘。に入ることなんかよりも―――
琴美を守ることの方が大事なんだって。
- 206 :◆JOJO8O9U :2006/11/17(金) 20:39
-
【砂を噛むように・・・DD】
→To be continued
- 207 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
【最終話 Thanks! DD刑事】
- 208 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
爆弾事件なんてもうどうでもいい
あたしは琴美を守る
あたしは絶対に琴美を死なせはしない
たとえ―――友達じゃなかったとしても
ふっきれた
あたしは飢えた虎のように大声で咆える
だが琴美は一切身じろぎしない
気のせいか琴美もあたしと同じようにふっきれたように見える
凛としたその表情は、いつもとはまた違った美しさに溢れている
ちょっとした心境の変化で女って変わるんだ?
琴美は左の腕からすっと一本の木刀を出す
琴美―――あんたも麗華と同じように剣道の覚えがあるのか?
だけどそんなことはもうどうでもいい
肩が折れようが膝が砕けようが―――あたしは琴美を止める
- 209 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
「望みごと」を 空に叫んだ
大声が かすれてた
恋人にさえ 話せず
困ってること 全部
- 210 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
あたしはもう一度天に向かって大きく咆える
もういい
もうモーニング娘。とかどうでもいい
だけどあたしはこの事件のケリをつけなくちゃいけない
そのためだったら全てを捨てる
そうさ
あたしは大学を辞めた
恋人とも別れた
バージニアスリムも辞めた
失う物はもう何もない
命を捨てたって構わない
でも―――琴美のことは捨てない
- 211 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:13
-
100年後の未来は どんな
表情で 笑うのかな
恋人達は こんなに
愛し合えるのでしょうか
- 212 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
サキちゃんのうそつき
あたしは信じてたのに
でもな。それでもサキちゃんが好きやで
サキちゃん
あたしと一緒に死んで
琴美はそう言いながらスッと左手で木の柄を抜く
キラリと光る銀色の永遠、いや銀色の刃
真剣だ
琴美。飯田さんみたいなダジャレじゃないよね
真剣なんだ
- 213 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
抱きしめた あの夜の
約束が気になる 友情
私 私 私
ほんとに 守れるかな
- 214 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
もちろん集会をぶっ潰す
琴美も一緒に来いよ
大丈夫。琴美のことはあたしが守るから
琴美は集会を最後まで見届けるんだ
あの夜に琴美に向かって言った言葉がフラッシュバックする
言ったことは守るさ
集会は潰した
そして―――琴美は守る
そのためにあたしは―――あたしはここにいる
あたしは負けない
琴美にも―――自分にも
負けねえ。絶対負けねえ。錦飾る日まで
- 215 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
今夜ありがとう また会えるだろう
貴重な 青春の瞬間
孤独なのを 忘れるほど
美しい 瞳だった
- 216 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
琴美の瞳がキラリと光る
黒目勝ちの美しい瞳
あたしの好きな瞳
一点の曇りもないその瞳で琴美はあたしに斬りかかってくる
琴美の踏み込みは深い
本気なんだね
交わしざまに琴美の腰の時計が目に入る
残り時間は1分を切っていた
もう時間がない
- 217 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:14
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からの ずっと先での
どんな場面も 受け止めるよ
ありがとう ありがとう
- 218 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしは琴美と戦いながら琴美と会話したことを思い出す
琴美に笑顔で話せなかったあの日のあたし
琴美に「ありがとう」と声に出して言えなかったあの日のあたし
全部あたしだ
嘘も本当も全部あたしの蒔いた種
あたしは自分で刈り取らなければならない
全部にケリをつけて―――
あたしは琴美に礼を言わなければ
ありがとうと
声に出して
あの時上手くできなかった―――とびきりの笑顔で
- 219 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
この街の未来も きっと
優しさが あるでしょう
不器用な私にだって
守りたいことだってあるし
- 220 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしはよろめきながらも右手に握り締めた物だけは放しはしない
特命刑事に許されたたった一つの武器
鎖の切れたヨーヨー
投げるチャンスは一度しかない
不器用だなんだと言ってる場合じゃない
あたしはこのヨーヨーで―――琴美を救う
琴美は別人のような素早さで右から左から斬りかかってくる
あたしは小刻みなステップで間合いをとる
自分でも不思議なくらい集中していた
琴美の動きがスローに見える
いつの間にか体の痛みは消えていた
- 221 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
目が覚めた あの朝の
太陽に話かけた
私 私 私
ほんとに 旅立つのね
- 222 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:15
-
あたしは一つの決断を下す
いや、一つしか選択肢はなかった
あたしはヨーヨーから二枚の刃を出す
今しかない―――JUMP JUMPするのだ!
あたしはいつもの二倍のジャンプで飛び上がり―――
いつもの三倍の回転を加えてヨーヨーを放つ。
いつもっていつだよ?
それは―――今この瞬間以外の―――全てさ
- 223 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
今夜ありがとう また会えるだろう
またとない たったこの瞬間
靴の紐を ぎゅっと締めたら
振り向かず 進むから
- 224 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
あたしは確信していた
絶対光放つんだ―――素晴らしき未来はここから始まるんだ!
ヨーヨーは光の矢となって―――ピンクの導線を断つ
ヨーヨーの形はイメージ通りです
戦いの行方はあたなと―――琴美と二人です
真っ金色の光を放って琴美の腰をかすめるヨーヨー
遠くてよく見えなかったけど線を断ったことは手応えでわかった
終わりだ
これで本当に全部お終い
- 225 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
呆然と時計の止まった爆弾を見つめる琴美
終わった
役割を終えたヨーヨーはころころとあさっての方向に転がっていく
ありがとう。あたしのたった一つの相棒
あたしにはもう何も武器はない
琴美の剣を交わす術はもうない
体力も
気力も
でもいいんだ
これでいいんだ
- 226 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:16
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からも ずっと先でも
どんな場面も 意味があるだろう
ありがとう ありがとう
- 227 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
カーンと屋上のコンクリートの床に剣が落ちる音が響く
琴美は呆然とあたしを見つめる
今なら琴美に本当のあたしを晒せる
友達だから?
いや違う。友達かどうかなんて―――もうどうでもいい
口でだったら何とでも言える
大事なのはそんなことじゃないはず
今ならきっとわかりあえる
嘘も本当も抜きにして。今度こそあたしと琴美は。
あたしは琴美に向かって右手を差し出す――――
いや、それよりも一瞬早く琴美があたしに向かって左の手を――――
いや
- 228 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
今夜ありがとう また会えるだろう
またとない たったこの瞬間
靴の紐を ぎゅっと締めたら
振り向かず 進むから
- 229 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
どっちが先だったかなんてどうでもいい。
大事なのは、だ。
その瞬間に琴美に向かって笑うことができたかどうか。
とびきりの笑顔で
松浦亜弥のような
意味深な、確信犯的な、とびきりの笑顔で。
- 230 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:17
-
今夜ありがとう 今夜ありがとう
明日からも ずっと先でも
どんな場面も 意味があるだろう
ありがとう ありがとう
- 231 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
【Thanks! DD刑事 終わり】
- 232 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
- 233 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:18
-
【エピローグ】
- 234 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
カンカンカンと乾いた音を立ててあたしは非常階段を駆け上がる
前を行く男は後ろを振り向くことなく荒い息を上げて走り続ける
あたしも真っ直ぐに男を追う
追いかけて 追いかけて すがりつきたいの
やがて男は雑居ビルの一角で行き惑う
追い詰めた
もうこれ以上逃げることはできない
- 235 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
学校の『集会』騒ぎは無事収まった
兄沢と麗華は全てを吐き、爆弾は全て回収された
取調べを受けていた琴美も無事無罪放免となったようだ
あたしはまだモーニング娘。には入っていない
いざ「入る」となると妙に躊躇ってしまうあたし
どうするどうする
どうするどうするどうするどうする
この先どうする?
- 236 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
男は落ちていた鉄パイプのようなもので殴りかかる
全然怖くない
まるでなっていない
麗華や琴美の方が強い
へなちょこ男はダメダメ、ダメダメ
あたしはいつもの高さで飛び、いつもの回転でヨーヨーを放つ
ヨーヨーに弾かれた鉄パイプは遠く彼方へと転がっていく
- 237 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:19
-
「それでお終い?」
「くっそおおおおおお!」
「金沢明夫。爆発物取締法違反で逮捕する」
「逮捕だと?てめえ一体何様なんだよ!」
「あたしか?あたしは・・・・・・・・・・・・」
- 238 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
コネだらけの企画、ハッピー8期オーディションから
訳も分からず強制送還
今じゃなんの因果かマッポの手先
この身ひとりと覚悟のはずが
不意に出会ったダチのため
期間限定!DD刑事!麻宮サキ!!
- 239 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
【エピローグ 終わり】
- 240 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
─┬────ヘ ─┬────へ
│ \ │ \
│ l │ l
│ ヽ │ ヽ
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/ │ │ │
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- 241 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 242 :◆JOJO8O9U :2006/11/18(土) 19:20
-
ご愛読ありがとうございました。
- 243 :名無し娘。:2006/11/18(土) 22:05
- よかったよー
- 244 :名無し娘。:2006/11/19(日) 01:56
- 圧巻
- 245 :名無し娘。:2006/11/19(日) 11:57
- 小ネタに笑いっぱなしだったよ
DD刑事大好きだー
- 246 :新宿:2006/11/19(日) 19:23
- DDのなんと熱き存在であることか
光の矢はロングホーンを折るのが精一杯かと思ったら
そんなことなかった
ありがとう(●´ー`●)
- 247 :名無し娘。:2006/11/19(日) 22:42
- 面白かった!
思い出せないネタがたくさんあって悔しかったよ
- 248 :名無し娘。:2006/12/09(土) 20:14
- 4代目誕生のシーンがこんなんだったらイヤだな…
吉良殿「サキ!受け取れぇ!!」
(吉良殿が投げたヨーヨーを受け取るサキ、キョトンとしている)
サキ「え…な、何これ!?(狼狽)」
吉良殿「そのヨーヨーはお前に力を与えてくれる!糸を引くんだ!!」
サキ「こ…これ、糸引けばいいの!!??」
吉良殿「そうだ!早く!!」
サキ「…うおおおおおおお……!!」
(糸が光り出す!!)
サキ「ちょ…な、何これぇ!!??たぁすぅけぇてぇえ〜〜〜〜!!!!
…ぅううああああああああ!!!!」
(着ていた服がセーラー服に変わり、顔も鋭いメイクのようになる!
胸元から飛び出す二本の赤スカーフ!!)
吉良殿「…(ニヤリ)スケバン刑事、見参!」
サキ「え?ス…スケバン刑事ぁ!?どどどどどーゆーことぉ!!??」
(敵の群れ、ビビって退散)
サキ「やだ、セーラー服!?恥ずかしぃ〜〜〜!!
(鏡を見て)うわ、怖!(ヨーヨーを見て)何でけーさつのマーク!?
…何じゃーこりゃ―――――!!!!!」
レイカ「…糸を巻け…。」
サキ「??…これを、巻くの?」
レイカ「…。(無言でうなずく)」
サキ「(糸を巻いていく)…おおおお〜〜〜〜入ってく入ってく〜〜〜!!!
何じゃーこりゃー!!」
(元に戻ったサキ)
サキ「このヨーヨーのせいだ…変なモン押し付けんなこのクソ親父!!!」
- 249 :名無し娘。:2006/12/22(金) 07:30
- サキちゃん8期合格おめでとう
- 250 :名無し娘。:2006/12/23(土) 00:40
- ノノノハ
川*´┴`) <・・・・・・・・・
__(っ/ ̄ ̄/_
`ー― '
- 251 :名無し娘。:2007/04/23(月) 19:23
- スケバン刑事について
http://ex22.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1177313803/
CINEMA TOPICS ONLINE
“自然と麻宮サキになっていきました”『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』松浦亜弥インタビュー
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/topics.php?number=1005
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/main.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003243.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003244.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003300.jpg
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/200704/1005/img070417003629.jpg
- 252 :名無し娘。:2007/07/07(土) 15:49
- レイカ「サキィ!あんたは…あんたは生きなぁ!!」
(↑点火したダイナマイトを片手に騎村時郎に突進!!)
- 253 :名無し娘。:2007/07/07(土) 22:31
- レイカ「サキちゃん、太りすぎるとお嫁にいけなくなっちゃうよ」
- 254 :名無し娘。:2007/07/11(水) 14:35
- レイカ「サキちゃん、いつまでもブリブリしてると、
またアゴはずれちゃうよ」
- 255 :♪いーまだー、今こそー、へぇーんしぃーんだぁぁ〜〜っ!!♪:2007/08/08(水) 12:21
- サキ「スケバン刑事、見参!!」
レイカ「ダークスケバン、推参!!」
- 256 :名無し娘。:2007/08/25(土) 19:20
- レイカ「あたしと…あたしと同じ奴がいた!
そいつがヨーヨーの糸を引くと、
そいつはセーラー服姿のスケバンになった!
…どう言う事だ!!?」
騎村時郎「…そのヨーヨーは“赤鯱”と言って、
お前の“青鯱”とは対を成すものだ…。
持つべき者が持った時、“赤鯱”はその真価を発揮する…。」
レイカ「…そいつも強いのか?」
騎村時郎「…その女…麻宮サキには近づくな…。」
- 257 :名無し娘。:2008/03/14(金) 14:48
- 吉良「助かった…ありがとよ。」
サキ「いいよ…ったく、あんなトコで行き倒れやがって。」
吉良「…赤鯱は?」
サキ「?ああ。(ヨーヨーを見せる)持ってるぜ。」
吉良「うむ。」
サキ「でも不思議だよなぁ。前までは「こんなの要らねぇ!」なんて言ってたのに、
今じゃこう…何だ、持ってないとソワソワしちゃうんだよな。」
吉良「それでいい。それが「選ばれし者のさだめ」だ。」
サキ「あんたがこのヨーヨー持って現れてからっていうもの、あたいの人生調子狂いっぱなしでよ、
ま、でもそれなりに毎日が刺激的になって…面白くなったってか…。」
- 258 :最終決戦!:2008/03/23(日) 15:24
- サキ「てめぇ(騎村)…何であたいらを…!
あたいらだけじゃねぇ、レイカのパパとママ、聖泉学園のみんな…
どうして関係ない人達まで殺すんだぁ!!」
騎村時郎「フッフッフ…その何の関係の無い者達が、
今もどこかで殺し合いをしているんだ。戦争という名目でな…。
お前達が赤鯱・青鯱を振るう度に、何の関係の無い、
何の罪も無い人間を、殺しているんだぁ!!
戦いとはそういうものだ…。」
サキ「あたいらが…みんなを殺したっていうのか?
…勝手な事言うなぁ!!!!」
- 259 :259追加:2008/03/23(日) 15:26
- (>>252に戻る)
- 260 :259追加:2008/03/23(日) 15:26
- (>>252に戻る)
- 261 :259:2008/03/23(日) 15:27
- しまった連投!ごめん…。
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