■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50
名もなきスレ

1 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:16
名もなき小説とか書くスレです

2 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:17
〜2005年4月〜
「全員揃ったかー?」
 先生の声が教室に響く。今日は私が3年生になって初めての登校日だ。
「はぁ…もう3年か…」
 気が重い。いつの間にか、もう最上級生になってしまった。いよいよ、進路を決めなきゃ
いけない時期だ。
「あさ美ちゃん、何ボーっとしてんの?」
 誰かにそう呼ばれて私は我に帰った。私の名前は紺野あさ美、高校3年生になりたてだ。
「どーしたの、元気ないじゃん」
 やたらテンションの高いこの子の名前は小川麻琴、私の中学時代からの親友だ。
「えっ?ああ、なんでもないよ…」
「どーした?恋の悩みがしか?」
 そう言ってきたのは高橋愛、高校に入ってから出来た私の友達だ。何でも中学時代は福井
に住んでいたそうで、今でも福井訛りがある。
「もう、何でもないってば…」
「あっ、あさ美のほっぺたが膨れたがし」
「ホントだ〜」
「ちょっと…もうやめてよ、気にしてるんだから」
 確かに私の頬(というか顔?)は人よりちょっと大きい。鏡の前に立つといつも
「小顔にならなきゃ…」
 と思ってしまう。何か、みんな美人でいいなぁ…私もって思うのはない物ねだりなのかな…
「紺野!紺野あさ美!」
「はっ、はい!」
 先生に名前を呼ばれて我に帰った。私の高校生活最後の年が始まった…

3 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:17
(つづき)
 3年生に入ったら、嫌でも進路のことを考えなきゃいけなくなる。はぁ…ひたすら勉強勉強
なんて、憂鬱になりそう。
「であるからして、この方程式のXは…」
 全くもって、訳がわからない。こんなの、人生のうちで一体何回使うんだろう…。
「あさ美ちゃん、あさ美ちゃん」
 まこっちゃん…麻琴ちゃんに後ろから呼ばれた。
「ん?」
「ねぇねぇ、今日授業終わったらケーキ食べに行こうよ」
「え?」
「愛ちゃんも誘ってさ」
「はぁ…」
 まこっちゃんは食べる事が大好きだ。まあ私も人の事は言えないから…お互い様だけど。
「まあいいけど…後にしようよ。今授業中だし…」
「あっ、そっか。ごめんごめん…」
 まこっちゃんはそう言って笑った。そして、
「手紙書いたから読んでよ」
 そう言って手紙を私の机に投げてくれた。
「どれどれ…」
 手紙を開いて読んでみる。
「もう三年生。一緒にいられるのもあと少しだけど
 がんばろうね〜 マコ」
 そう、3人一緒にいられるのもあと少し。残り1年、頑張らなきゃ。私は心の中で誓った。

4 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:17
 授業が終わった。約束どおり、3人で喫茶店に行く事になった。
「あさ美ちゃん遅いやよー、さっさと行くがし」
「ちょっと待ってよ…」
 愛ちゃんはせっかちだ。まあ私がトロいだけかもしれないけど、何かしょっちゅう急かさ
れてる気分になる。
「もう…」
 何とか三人揃って駅の前まで行った。行きつけの喫茶店。ケーキがおいしい。
「今日は何食べる?」
 まこっちゃんは食べてばっかりだ。まあ私も人の事言えない。おいしいもの食べるのはやめ
られないのだ。
「じゃあ、あっしはショートケーキとミルクティーでいいがし」
「私はモンブランね」
 愛ちゃんとまこっちゃんはさっさと決めてしまった。私は何にしようか…
「あさ美ちゃんは?」
「早くするやよー」
「じゃあ…私はザッハトルテでいいや」
 三人の注文が出揃ったところで、いつものように取り留めのない話になった。もっとも私は
聞き役だ。なぜなら…
「この間の宝塚みたがしか?月組が…」
 愛ちゃんは慣れない人には人見知りする割には友達同士だとやたら話したがる。安心するん
だろうか。
「それでね、星組のあの人がまた…」
 宝塚は別に嫌いじゃないけど、私は正直よく分からない。まこっちゃんも詳しくないので、
二人して愛ちゃんの話に相槌を打っている。そこへ…
「お待たせしました…」
 ケーキが運ばれてきた。まこっちゃんと私の表情が変わった。

5 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:18
「いただきまーす!デッヘッへ…」
 まこっちゃんは待ちきれないといった感じだった。早速食べ始めた。私もザッハトルテを食
べ始める。
「あさ美ちゃんもまこっちゃんも食べすぎやよ。急いで食べるものじゃないがし」
 愛ちゃんは私とまこっちゃんにちょっと呆れているようだ。でもそんな事は気に留めてもい
られない。
「もう…食べてるとてんで人の話聞いてないがし」
 愛ちゃんは私とまこっちゃんを見ていつもそう言う…自分のことは差し置いて。でも、私も
まこっちゃんもそんな事は分かっているから、特に何も言わない。
「愛ちゃんも早く食べなよ〜」
 まこっちゃんはそんな事を言いながらモンブランを食べている。私もザッハトルテを食べて
いる。
「やれやれ…しょうがないがし」
 そう言って、愛ちゃんも食べ始めた。私たち3人、何だかんだ言っても仲はいい。
「あさ美ちゃん、まだ食べ終わってないの?」
 まこっちゃんがこっちを見ている。どうやらもう食べ終わったらしい。
「あさ美ちゃん、早くするがし…」
 いつの間にか愛ちゃんも食べ終わっていた。私は(あんまり自覚ないけど)どうも行動が遅
いらしい…。
「ごめん、もうちょっと待って…」
 こんな感じで、私たちの放課後は過ぎていく…

6 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:18
「じゃあ、また明日ねー」
 愛ちゃんとはちょっと家が離れているので、店を出たところで別れた。ただし…
「ね、あさ美ちゃん、お腹空いてない?」
「え?さっき食べたばっかりじゃん」
 まこっちゃんはホントに食べてばっかりだ。自分もよく食べるけど、ちょっとすごいと思う
時もある。
「ねえねえ…」
「…うーん、今はまだ空いてないかな…」
 そんな事を言っていると十字路に着いた。ここでまこっちゃんとお別れだ。
「また明日ねー」
「うん、またねー」
 まこっちゃんと別れて家に着く。
「ただいまー」
「あ、お帰り」
 妹が待っていた。中学生は早く授業が終わったらしい。
「勉強したの?来年は受験だよ」
「お姉ちゃんには言われたくないし」
 そう言って妹はドアを閉めた。全く…これだから…って、3年前の私もあんな感じだったけ
ど。
「はぁ…来年からどうなるのかな…」
 来年の事はあまり考えたくないけど、進路をぼちぼち決めないといけない。どうしようか…
「大学…か」
 そんな事を考えていると私は何故か眠くなった。そしていつしか眠ってしまったらしい…
「あさ美…ごはんよ」
 目を覚ますと、もう夜だった…

7 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:18
 4月の最後の週末。3人でカラオケに行く事になった。いつものように駅の前で集合するん
だけど…約束した時間になっても愛ちゃんが来ない。
「愛ちゃんはまだ?」
「うーん…まだ来ないね…」
 そんな事を言っていると、愛ちゃんがやって来た。
「ごめーん、待ったがしか?」
「遅いよー、どうしたの?」
「いやぁ、朝からお風呂に入ってたら遅くなったやよー」
 私とまこっちゃんはちょっと呆れたが、気にしない事にした(というか、愛ちゃんと仲良く
するにはある程度我慢強くないといけない)。
「さ、さっそく行きましょー」
 まこっちゃんは立ち直りが早い。私と愛ちゃんを引き連れてカラオケボックスに向かった。
「さ、何歌う?とりあえず私から歌うね〜」
 大体この3人でカラオケに来ると、真っ先に歌い始めるのはまこっちゃんだ。その次に愛ち
ゃん、最後に私になる。
「じゃあ歌うよ〜」
 そう言ってまこっちゃんはaikoを歌い始めた。愛ちゃんと私は聞き役に回る。
「あ〜テトラポット登って〜」
 まこっちゃんが歌っていると、愛ちゃんが曲を選び始めた。

8 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:19
「何歌うの?」
「そうやね〜、あっしは倉木麻衣でも歌うがし」
 そう言って愛ちゃんは曲本をめくっている。
「そう言うあさ美ちゃんは何歌うの?」
「私?」
 私は最近の曲を歌うのが苦手だ。あんまり詳しくないのもあるけど、テンポの速い曲は歌い
づらいのである。
「何にしようか…」
 そんな事を考えている内に
「ステ〜バマイサイ〜今始まる〜」
 愛ちゃんの歌声が聞こえてきた。私も何か選ばなきゃ…
「あさ美ちゃんはどうするの?」
 まこっちゃんが訊いてきた。曲本を読んでいくうちにある曲に目が止まった。
「これなら歌えるかも…」
 私はその曲を入れた。そして、私の番が巡ってきた。

9 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:19
「あさ美ちゃんの歌を聞くのは久しぶりやね」
「そうだね…最近カラオケ行ってなかったし」
 そんな話を二人がしているらしい。で、私の選んだ曲は…
「君ぃ〜の好きなひ〜とが〜百年続きますように〜」
 これなら歌えるかなと思って選んだ「ハナミズキ」は結構難しかった。まあ、ノリのいい曲
じゃないしな…
 歌い終わると、
「あさ美ちゃんすごいやよー」
「上手じゃん!」
 何故か二人が拍手している。自分では全然下手だと思ってるのに…ちょっと照れ臭い。
「そんな…拍手しないでよ」
「いいじゃん、上手だったよ〜」
 まこっちゃんはそう言ってくれるが、私は自分で3人の中で一番下手だと思っているので素
直に喜べなかった。
「そう?あ、ありがとう…」
 そんな事を言いながら、私は席に戻った。

10 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:21
 それからはみんな好きな曲を好き勝手に歌っていた…のだが1時間を過ぎた時、まこっちゃん
が言った。
「ねえ、普通に歌っても飽きちゃうから点数入れようよ〜」
 え?そりゃちょっと…と私は思ったが、幸か不幸か
「ええね。あさ美ちゃんもそうしよ?」
 と愛ちゃんまで言い出した。こうなると私は断れない。
「うーん、まあいいよ、そうしよっか」
 かくして『誰が一番早く100点を出すか』に興味は移ってしまった。
「じゃあ、私これ歌うね」
 まこっちゃんはそう言って歌い始めた。
「ダリンダーリン〜そばにいーて〜」
 結果は96点。
「ああ、もうちょっとだったのになー」
 まこっちゃんは悔しそうにそう言いながら午後の紅茶を飲んでいる。
「じゃあ、次はあっしが歌うやよー」
 愛ちゃんはそう言ってマイクを持った。
「誰かの為じゃなく〜自分のためにだけ〜やさしくなれたらいいのに〜」
 結果は97点。
「ムキーッ、もうちょっとだったがし…でも麻琴には勝ったやよ」
 愛ちゃんはかなり悔しそうだ。でも
「あさ美ちゃんがきっと100点出すやよ」
 そう言って私にマイクを渡してくれた。ただ…ここで何を歌うかは(私的に)結構重要だ。
「何歌おうかな…」
 迷った末に、私が選んだのは…

11 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:21
「い〜ちばんの勇気はいつの日も〜自分ら〜しく素直に生きる事〜」
 歌い終わった時、私は内心しまった!と思ってしまった。今まで二人が場のテンション上げ
てたのに…空気読めなかった私。
「……おおっ!99点だー!」
「あさ美ちゃん、すごいやよー!」
 二人は驚いているらしい。しかし、盛り下がる曲歌っちゃったなと思っている私は内心後悔
しっぱなしだった。
「え?99点だったの?もうちょっとだったな…」
 私は自分のした事がいまいちピンと来なかった。それがまこっちゃんには驚きだったらしく、
「あさ美ちゃん、もっと喜びなよー」
 と言ってきた。私は
「あ、ああ…そうだね…」
 とか答えて取り繕ったけど、何かどうせなら100点取りたかったなと思って素直に喜べな
かった。
 その後結局遂に100点は出ずじまいで、私の出した99点が最高点になった。そしてそん
なこんなでカラオケの時間はあっという間に過ぎて、最後の曲になった。
「最後は3人で歌おうよ」
「いいね。そうするがし」
「何歌うの?」
「あさ美ちゃんが決めていいよ」
「え?私?」
「だって、今日一番点数高かったの、あさ美ちゃんじゃん」
「うーん…」
 迷った末に決めたのは
 何を歌うか考えた末、この曲を選んだ。
「じゃあ、これにするね」

12 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:21
「いつかまた〜どうしようもなく〜寂しくなったぁ〜その時は〜」
 最後は何故かこの曲で締め括った、別に深い意味はない。ただ考えているうちに、何となく
歌いたくなったのだ。
「んふーっ、いっぱい歌ったやよ」
「まさかあさ美ちゃんが一番とは思わなかったな〜。ああ、おなか空いた」
「私が一番だったのはたまたまだよ、たまたま」
 そんな事を言いながら私たちは店を出た。
「じゃあ、またねー」
 愛ちゃんと別れて私とまこっちゃんは二人で帰った。
「ああ、また来週から学校だね…」
「そうだね…もうすぐ進路決めなきゃいけないね…」
 私がそう言った瞬間、まこっちゃんの表情が一瞬曇った(気がした)。
「どうかした?」
「え?ああ、何でもないよ。あさ美ちゃんは頭いいからなあ…きっといい大学に行けるよ」
「はは…まあ頑張るよ。まこっちゃんは?」
「私?私はね…ま、またいつかね。じゃあ、私はこれで」
「あ、またねー」
 まこっちゃんの様子が明らかにおかしかった。何かあったのかな…(私はこういう時、すご
く心配になる)
「家に帰ったらメールするか…」
 家に帰ってメールしてみたが、まこっちゃんからの返事はその日は来なかった。

13 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:21
 翌日。もうすぐ4月も終わりだ。
「行ってきます…」
 家を出てバス停の前まで行くとまこっちゃんが待っていた。
「おはよ〜」
「あ、おはよう」
 まこっちゃんの様子は特に変わらないようだ。良かった…と私は一安心した。
「さ、もうすぐバスが来るよ」
 二人でバスに乗り込んだ。愛ちゃんは途中から乗ってくる。
「ねえ、昨日は楽しかったね〜」
「うん。私朝から何かのどが痛くって…」
 私は昨日のその後の事を気にしていたが、訊くタイミングがつかめない。そうこうするうちに…
「次は〜東が丘下〜東が丘下〜
 板井小児科前〜」
 愛ちゃんの乗って来るバス停の前に着いた。ガラッ、扉が開く。
「おはよーやよー」
 愛ちゃんが乗って来た。
「おはよ〜」
「おはよう」
 いつもの朝の光景だ。
「今日何があったっけ?」
「忘れたの?今日は日本史だよ〜」
「ああ、また中臣鎌足の話するがし」
「…愛ちゃん、それもう随分前に終わったよ…。今日から江戸時代だし」
「ええ〜?もう信長の話もできんがし」
 そんなこんなで、バスが学校の前に着いた。今日も私たちの学校生活が始まった。

14 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:22
 朝から古典を習って、その後に数学。正直、やる気がなくなる。
「おなか減ったな…」
 まだ11時過ぎ。長い…
「ねえ、次の授業の前にパン買って来ていいと思う?」
 まこっちゃんが訊いてきた。ああ、私も食べたいな…
「ねえ、私にも買ってきてくれない?」
「いいよ〜、何がいい?」
「クリームパンがいいなぁ」
「分かった。じゃあ買ってくるね〜」
 形容するとドタドタドタって感じで、まこっちゃんが走って行った。間に合えばいいけど…
「あさ美ちゃん〜、次の授業何だったかの?」
「え?次は確か漢文のはずだよ」
「教室移動じゃなかったがしか?」
「そうだったかも…」
「じゃあ行くやよー。マコトは?」
「まこっちゃんは…あっ!」
 マズい。パン買いに行ったままだ。置いていく訳にも行かない。
「まこっちゃん、今パン買いに行った…」
「は?今更何を…」
 愛ちゃんがイラついて来た。マズい、抑えなきゃ。
「わ、私がさ、おなか減ってるって言ったから…まこっちゃん買いに行って来てくれたんだ」
 何とかそう言った。でも…
「遅いがし…授業に遅れるやよ」
 愛ちゃんはそう言って先に行こうとした。
「あ、待ってよ…」
 私がそう言った時に、
「あさ美ちゃん、ごめーん、売り切れだった…クリームパン」
 まこっちゃんがそう言って帰って来た。と、
「キーンコーンカーンコーン…」
「遅刻だー!」
 4時間目の授業は、こうして始まった。

15 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:23
 昼ごはんも食べて、最後の授業だ。と言ってもHRなんだけど。今日は進路の話らしい。3
年になると、嫌でもそんな話ばっかり聞かなきゃいけない。
「大学入試に臨むに当たって、重要なのは…」
 聞かなきゃいけない話なんだろうけど、あんまり聞く気が起きない。後ろを見るとまこっ
ちゃんは寝ている。愛ちゃんは紙にペンを走らせているけど、きっと宝塚の誰かのイラスト
でも書いているんだろう。
「入試日程は…」
 大学に行けばそれでいいってよくみんな言う。でも…目的もなくぶらぶらしてたってしょ
うがないと思うのは…私だけなんだろうか?
「今日はここまで。よし、掃除だ」
 授業が終わった。まこっちゃんを起こさなきゃ。
「まこっちゃん、もう終わったよ、ねえ、起きて」
「…う…うぅん…」
 まこっちゃんが目を覚ました。ただし…あんまり寝起きは良くない事が(経験上)分かっ
ているので慎重に相手しなくちゃ。
「さ、帰ろっ」
「ああ、うん…」
 まこっちゃんが眠い目を擦っていると、愛ちゃんがやって来た。
「マコト、寝ちゃダメがしよ」
「え?あぁ…」
 いつものまこっちゃんじゃない。寝ぼけてるとこんな感じになる。
「さ、帰るやよー」
「あ、ちょっと待ってよー」
 三人でバス停に向かった。もう四月も終わる。

16 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:23
 バスの中の話題はゴールデンウィークの予定だ。
「ねえ、どっか遊びに行こうよ〜」
「ええね、どこに行くがし?」
「あさ美ちゃんはどこに行きたい?」
「そうだなぁ…」 
 この辺は大きな街じゃないから、遊園地とかある訳じゃない。遊ぶところがおいそれとあ
る訳じゃないから、行き着く先はいつも同じところになる。
「何かおいしいもの食べに行く?」
「もー、あさ美ちゃんいっつもそればっかりがし」
 愛ちゃんは結構人に合わせにくいタイプなので、私はいつも無意識のうちに合わせに行っ
ているフシがある。
「だって…おいしいもの食べたいじゃん、カラオケはこの間行ったし…」
「ああ…お菓子食べたい…デッヘッへ…」
 まこっちゃんが私の言葉にそう言って頷いた。こうなれば多数決だ。
「まあいいがし…じゃあ3人でケーキディナーでも行くやよ」
 私とまこっちゃんが大きく頷いたところで、バスが東が丘下のバス停に差し掛かった。
「あ、降りるがし」
「またねー」
 愛ちゃんが降りてから、私とまこっちゃんは二人で考えた。
「愛ちゃんを本屋さんあたりに連れて行ってあげたらいいんじゃないかな?」
「そうだね…でも愛ちゃんいったん行くとしばらく帰ってこないよ…」
 まこっちゃんはそう言った。まあ確かにそうだ。愛ちゃんは(私やまこっちゃんの比では
なく)本好きだから、一回行くと当分出てこない。
「映画とかどうかな?愛ちゃんも喜ぶんじゃ…」
「いいねぇ、でも何見に行く?」
「それは…家帰ってから調べとくよ。ついでにケーキバイキングも…ね」
「ケーキ?デッヘッへ…」
 そんな事を言っていると、バスが終点に着いた。

17 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:24
「じゃあねー」
 まこっちゃんと別れて家に帰ると、誰もいなかった。妹は出かけたらしい。
「ふぅ…」
 家に帰ってPCを立ち上げて映画を調べていると、まこっちゃんからメールが来た。
「どう〜見つかった?」
 そんなすぐ見つからないよ…と思いながら返信する。
「後で見つかったら教えるねー」
 そう返信すると、適当な日時を探して映画の検索をかけた。目に留まった一本の映画。
「これいいんじゃないかな…」
 単館上映だったが、なかなか良さそうだ。それに、ケーキバイキングからも近いし。
「これにしようっと」
 時間を見ると、昼の1時からだった。これなら充分だ。
「明日二人に言えばいいか…」
 もう明日から5月だ。高校生活もだんだん残りが少なくなっていく。この3人で一緒
にいられるのはあとどれくらいなんだろう…そんな事を考えた。

18 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:25
(May・View of Makoto)
 今日からゴールデンウィーク…そして今日はあさ美ちゃんと愛ちゃんと一緒に遊びに
行く日。ケーキバイキングが待ってる…デッヘッヘ。
 駅の前。
「あ、愛ちゃーん」
「マコト、今来たがしか?」
「うん」
「あさ美ちゃんは?」
「まだだよ」
「遅いがし…」
 自分だって今来たくせに。愛ちゃんは待てない、せっかちなのだ。
「まだがしか?」
「まぁまぁ、待ってあげようよ、愛ちゃん…」
 そんなことを言っていると、
「ごめーん…遅くなっちゃった…」
 あさ美ちゃんがやって来た。
「んもーっ、遅いやよー」
「ごめんね…ちょっと家出るのに手間取っちゃって」
 あさ美ちゃんがそう言って頭を掻いた。愛ちゃんはちょっと不満そうだ。
「さ、早く行くやよ」
 愛ちゃんは早速歩き出した。せっかちだからしょうがないけど、もうちょっと私や
あさ美ちゃんの話も聞いてくれてもいいのになぁ…
「今日どうしたの?」
「いやぁ…朝ね、ちょっとお母さんとケンカしちゃって…」
 あさ美ちゃんの表情が暗い。よっぽど何かあったらしい。でも…多分ケーキ食べて
るうちに直るか。
「さ、行こうよ。映画始まっちゃうよ」
「あ、そっか。行こう行こう」
 あさ美ちゃんを何とか落ち着かせて、私たちは電車に乗った。

19 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:25
 3人で乗る電車の中。話題はコロコロ変わる。基本的には愛ちゃんが話し役、あさ美
ちゃんが聞き役、そして私が合わせ役といった感じだ。
「でね、でね、これがこうでさ…」
「うん…うん…」
 愛ちゃんが話しているとなかなか入りにくい。本人は気づいていないだろうけど、直
した方がいいと思うんだけどな…
「今日はどこの映画館に行くがしか?」
「今日はね、単館上映の映画見ようと思って…何か面白いらしいんだ」
「どれどれ…」
 あさ美ちゃんの持ってきた雑誌を見ると
「複雑なる心」って書いてある。見ると、外国の映画らしい。でも何かちょっと暗そう
なタイトルだな…
「これ見るの?何か暗そうな話がし」
「あ、愛ちゃん…」
 いくらなんでもストレートに言いすぎだよ…何か私が余計な心配しちゃった。でもあ
さ美ちゃん、言われるのには慣れてるからなぁ…
「まあでもさ、面白いって言ってたよ。いいじゃん、見に行こうよ…」
「うーん、まあ分かったがし」
 何とか愛ちゃんを落ち着かせて、私たちは電車を降りた。しばらく歩いていくと、
「あ、あそこだ」
 ちょっと寂れた感じの映画館だった。中に入ると、人はあんまりいなかった。
「もうすぐ始まるがし」
 場内が暗転して、静かに映画の幕が開いた。

20 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:25
「When I Was listen to the Radio…」
 イエスタデー・ワンス・モアが流れてきた。画面にはモノクロの映像。
「ね、あさ美ちゃん、これどんな話なの?」
 小声で尋ねる。
「見てたら分かるよ…」
 あさ美ちゃんはそう答えると再び視線をスクリーンに向ける。
「ん…」
 仕方なく私もそうする。愛ちゃんは既に見入っているようだ。
 映画は複雑な家庭に生まれた少年が親友と過ごした少年時代を追う物語だった。でも…
ラストシーンはその親友がいなくなってしまうんだけど…
 主人公の男の子が十字路の真ん中に呆然と立ち尽くすところでエンドロールが流れた。
「ん…」
 私はちょっと感動していた。隣のあさ美ちゃんは目頭が真っ赤になっている。
「あさ美ちゃん…泣いてるがし」
 愛ちゃんは冷静に見ていたようだ。
「感動しちゃってさ…」
 あさ美ちゃんが泣いているのを見て、私は前誰かに言われた言葉を思い出した。
「感動して泣けるというのは…それだけその人の心が澄んでいるんだ」
 何だかその言葉を思い出して、私はジーンと来た。だけど…
「さ、早くケーキバイキングに行くやよー」
 愛ちゃんは相変わらずだった…うーん…

21 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:26
 映画館を出た私たちはケーキバイキングに向かった。あさ美ちゃんも笑顔を取り戻す。
「うわぁ…おいしそう…」
 私もお腹が空いていたので嬉しくて仕方がない。
「もー、またケーキに目がくらんでるやよ…」
 愛ちゃんの言葉なんか、もう完全に頭のどこかへ消えてしまう。
「さ、食べよ食べよっ」
 あさ美ちゃんは紫芋のケーキ、私はいちごのショートケーキを早速食べ始める。
「そんなに急いで食べるものでもないと思うがし」
 そう言いながら愛ちゃんはザッハトルテを食べ始めた。
「あ、そうだ、なんか飲もうっと…何がいい?」
 ショートケーキを半分食べ終わった所で私が言った。
「じゃあ…私はミルクティー」
「あっしはコーヒーでいいがし。でもアイスがいいやよ」
 そう言われて私が取りに行った。取りに行って戻ってくると…先に食べ始めたはずの
あさ美ちゃんがまだ大分ケーキを残していて、後から食べ始めたはずの愛ちゃんが次の
ケーキを食べ始めている。
「あさ美ちゃんが食べるのが遅いやよー」
 私の疑問に答えるように、愛ちゃんが言った。
「そうかなぁ…?私そんなに遅い?普通なんだけど」
 あさ美ちゃんはそんな事を言っているが、私から見てもそれは違うんじゃないかと思
う。
「ま、いいや…普通に食べるよ、私は」
 そう言ってあさ美ちゃんはまた紫芋のケーキをぱくつき始めた。愛ちゃんは早くも次
のケーキを食べようとしている。
「愛ちゃん、いくらなんでもそれは…早くない?」
「こういうのは早く食べて新しいものを食べないと損がし」
 愛ちゃん、せっかちだなぁ…あさ美ちゃん、のんびりしてるなぁ…そんな事を思いな
がら私はケーキを食べていた。

22 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:26
「あ、あと10分だ…」
 3人はすっかりケーキを食べ尽くしていた。愛ちゃんは既に自分の食べたいものは全
部食べたらしく、コーヒーを飲んでいる。対してあさ美ちゃんは最後に残していたいち
ごのタルトを食べている、相変わらずゆっくりと。
「ごちそうさま…」
 私は最後のケーキを食べ終わった。お腹いっぱい、幸せいっぱいだ、デッヘッヘ…
「あさ美ちゃん、まだ?」
「いいじゃん…これおいしいんだもん…」
「そうだけど…」
 愛ちゃんはまたちょっとイライラしているらしい。もう…もうちょっとリラックスす
ればいいのに。
 あさ美ちゃんがケーキを食べ終わったところで、ちょうど規定の時間になった。
「さ、帰るやよー」
 愛ちゃんがそう言ってお金を払うと、真っ先に店を出た。私とあさ美ちゃんが追う。
外はぽかぽか陽気の暖かい一日だ。
「ね、これからどうする?」
「うーん、まだ時間あるね…」
「じゃあ、ゲーセン行くやよー」
 愛ちゃんがそう提案した。私もあさ美ちゃんも断る理由もない。
「じゃ、行こっか」
 あさ美ちゃんがそう言って、私たちはゲームセンターに向かった。

23 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:26
「あ、あと10分だ…」
 3人はすっかりケーキを食べ尽くしていた。愛ちゃんは既に自分の食べたいものは全
部食べたらしく、コーヒーを飲んでいる。対してあさ美ちゃんは最後に残していたいち
ごのタルトを食べている、相変わらずゆっくりと。
「ごちそうさま…」
 私は最後のケーキを食べ終わった。お腹いっぱい、幸せいっぱいだ、デッヘッヘ…
「あさ美ちゃん、まだ?」
「いいじゃん…これおいしいんだもん…」
「そうだけど…」
 愛ちゃんはまたちょっとイライラしているらしい。もう…もうちょっとリラックスす
ればいいのに。
 あさ美ちゃんがケーキを食べ終わったところで、ちょうど規定の時間になった。
「さ、帰るやよー」
 愛ちゃんがそう言ってお金を払うと、真っ先に店を出た。私とあさ美ちゃんが追う。
外はぽかぽか陽気の暖かい一日だ。
「ね、これからどうする?」
「うーん、まだ時間あるね…」
「じゃあ、ゲーセン行くやよー」
 愛ちゃんがそう提案した。私もあさ美ちゃんも断る理由もない。
「じゃ、行こっか」
 あさ美ちゃんがそう言って、私たちはゲームセンターに向かった。(つづく)
(つづき)
 ゲームセンターに入ってまず私がやるものがある。
「まこっちゃん、また取る気でしょ?」
「もちろん!」
 私はUFOキャッチャーが好きだ。4回に1回くらいはちゃんと獲れる。
「今日は何獲るの?」
「あれにしようかなぁ」
 私の視線にはディズニーのぬいぐるみが入ったボックスがあった。あれ、絶対獲り
たいなぁ…
「頑張って獲るぞ!」
 気合いを入れて私はレバーを動かし始めた。狙うのは上の方にうまい事落ちている
ティガーの人形。
「よし…こっちへ…こっちへ…」
 クレーンをゆっくりと手繰り寄せる。そして…今だ、チャンス。
「まこっちゃん頑張って!」
 小声であさ美ちゃんが言う。私は無言で頷く。
「あっ!あっ…あっ…ああ…落ちちゃった…」
 私とあさ美ちゃんの目の前で、ぬいぐるみはうまい事落ちて行った。あぁ、後もう
少しだったのになぁ…
「もう一回やっていい?」
「いいよ〜」
 あさ美ちゃんはニッコリ笑って答えてくれた。と、そこへ…
「麻琴〜、どうやった?」
 トイレに行っていたらしく、手を拭きながら愛ちゃんが帰ってきた。
「もうちょっとだったんだよねぇ…」
 そう言って私はまた100円玉を入れた。

24 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:26
「さ、やってみようっと…」
 今度こそ…私は神経を集中させてレバーを動かす。狙いはさっきと同じようなところ
にあるカンガ・ルーの人形。
「あれだ…」
 今だ!そう思って行った…が、ちょっと浅すぎた。結局空振りに終わってしまった。
「はぁ…もうちょっとだったのになぁ…」
 ちょっと悔しいが仕方がない。諦めて私たちは2階へ向かった。
「プリクラ撮るやよー」
 私たちはプリクラ撮影機の中に入った。
「さ、撮ろ、撮ろ」
 愛ちゃんは写真に慣れているのか、次々にポーズを決める。私たちも笑顔で写る。
「あ、次が最後やよー」
 最後の写真、私たちは何故か?肩を組んで写った。
「さ、出てくるやよー」
 出てきた写真を自分で見ると何だかちょっと恥ずかしい。でも我ながらいい笑顔だ。
「はい、これ麻琴の分。これ、あさ美ちゃんの分」
 プリクラを3人で分けて、私たちは家路についた。
「じゃあ、またね」
 愛ちゃんと別れてから、あさ美ちゃんと二人でいつもの十字路の前まで歩く。その途
中。
「ね、まこっちゃん…」
「ん?」
「まこっちゃんってさぁ…高校出たら…どうするの?」
「え?どうしたのいきなり?」
「いや…やっぱりさぁ、進路の事とか…気になってさ…ゴメン、へんな事聞いちゃった…」
 私…どうするんだろう?自分でも決め兼ねていた。
「私ね…まだ分かんない…ハハ…あさ美ちゃんは?」
「私はね…大学に行くって決めたんだ…」
 やっぱりな…と思いながら私はあさ美ちゃんの話を聞いていた。確かにあさ美ちゃんは
頭もいいから、きっといい大学に行けるだろう…でも、私はどうなるんだろう?

25 :名無し娘。:2004/12/04(土) 01:27
 あさ美ちゃんの話を聞きながら、私は自分のやりたい事ってなんだろうと考えていた。
「私は…」
 大学に行く事だろうか?それとも専門?まだあんまり深く考えていなかった私はここで
ふと迷ってしまった。
「私…まだ分かんないや、ヘヘヘ…」
 笑ってごまかした。でも…あさ美ちゃんはもう先の事まで考えてるんだなぁ…
「そっか…まこっちゃんも頑張ろうね」
「うん」
 そんな事を話したところで、私たちはいつもの十字路に着いた。
「じゃあ、私はここで」
「うん、じゃあまたね」
 あさ美ちゃんと別れて私は一人になった。家に帰っても誰もいない。
「ふぅ…」
 愛ちゃんにもあさ美ちゃんにも話せない秘密が…私には一つだけある。
「どうしよう…」
 一体私は来年の春、何をしているんだろう…不安な気持ちで私はいっぱいだった。
「ちょっと横になろうっと…」
 私はそのまま寝てしまった。寝ている間は…すべてを忘れられる…全く、悲しいけど、
でもしょうがない。
 ただ…その時間は長続きしなかった。携帯が鳴る…
「今日は楽しかったのー、また行こうね」
 愛ちゃんからのメールだった。いつまでそれができるのか…まだ私には分からない。

26 :名無し娘。:2004/12/04(土) 03:54
とりあえず更新はできる日にw

27 :名無し娘。:2004/12/04(土) 10:33
高まる期待

28 :名無し娘。:2004/12/05(日) 01:09
こっそりと続き>>25から

 朝になった。カーテンを開けると、空はとても澄んだ青空だ。
「今日も休み…か」
 世間一般はゴールデンウィークだけど、私の休みは昨日で終わりだ。
「行ってくるね…」
「ああ、気をつけてね」
 愛ちゃんにもあさ美ちゃんにも言えなかった事。
「さ、行きますか…」
 自転車に乗って、場所へ向かう。
「着いた…」
 着いた先は、一軒の倉庫。
「あ、君が例の子か。よろしくね」
「どうも、初めまして…」
 初対面なんだから愛想くらい良くしなきゃいけないってのは分かってるけど、でもなぜか
できない。
「紹介する。今日からここの手伝いをしてもらう、小川さんだ」
「初めまして…」
 愛ちゃんにもあさ美ちゃんにも相談しないで、私はこのバイトを始める事を一人で決めた。
そう、自分のために…
「さ、早速だけどとりあえずこの部屋にあるダンボールを運んでもらうね」
「はい」
 自分のために、頑張らなきゃ。私は気合を入れ直して、初めてのバイトをこなした。そう、
時間が経つのも忘れるくらい。
「お疲れ様でした!」
 初めてのバイトを終えて、疲れた体で帰ってくると、
「ああ、お帰り」
 母親がいた。

29 :名無し娘。:2004/12/05(日) 01:09
「どう、ちょっとは元気になった?」
「うん…ちょっと楽になったよ…マコちゃん、ありがとね」
 私の母親は…ちょっと体が悪い。この数年、体調を崩して家にいる。そして、父親はこの家
にはいない。つまり…私と母親の二人暮らしだ。
 生活に必要なお金は手当てを受けて貰っている。後は親戚の人から貰うお金だ。もちろん、
生活は苦しい。だから…高校を出てもその先は就職くらいしか道はない。でも…それが私のや
りたい事かって訊かれたら…それはきっと違う。
「どうしたら、いいんだろう…」
 自分の夢って、そう簡単に諦めたくない。でも…それを叶えるには一人の力じゃ無理だ。
「はぁ…」
 慣れないバイトで疲れ切った体を私はベッドに横たえた。そして…結局眠りから覚めると、
もう朝になっていた。
「んん…ぁあ…」
 携帯を見るとメールが来ていた。あさ美ちゃんからだ。
「また来週あたり、どこか行かない?」
 遊びの誘い…行きたいのは山々だけど、でも行けない。ごめんね、と心の中で呟きながらメー
ルを返す。
「ごめん!ちょっと用事入っちゃった。また今度にして」
 あさ美ちゃんの残念そうな顔が目に浮かぶ。でも…仕方がない。今は友情より、お金を稼がな
きゃいけないの、自分のためにも。
「さ、今日も頑張ろうっと…」
 自分を奮い立たせて、今日も私は仕事をこなした。

30 :名無し娘。:2004/12/05(日) 20:33
一回分だけ更新

31 :名無し娘。:2004/12/05(日) 20:33
 ゴールデンウィークが終わった。またいつもの様に学校に行く。でも…ちょっと気が重い。
「行ってきまーす」
 気が重いのはきっと寝不足なのも影響しているんだろうなとは思うけど、でも…心は晴れない。
空が青いのとは対照的だ。
「はぁ…」
 ついつい溜め息の数も増える。でも…この表情は人には見せられない。特に…あさ美ちゃんと
愛ちゃんには。
 二人は二人なりに目標を持って、それに向かって頑張っている。だから…余計な心配はかけら
れないし、掛けたら悪いと思ってしまうのだ。
 重い気分のまま、何とかいつもの表情を作って、私はバス乗り場へ向かった。
「あ、まこっちゃん、おはようー」
 あさ美ちゃんがやって来た。無邪気な笑顔に、少しだけ心が癒される。
「おはよう、今日から学校、ダルいね」
「ね、ずっと休みならいいのになぁ…」
 それでも、私にはあんまり大差ない…とは言えなかった。
「そ、そうだね…」
「また今度どこか行かない?」
「今度?分かった、暇な日があったら言うね」
 としか答えられなかった。ホントはそんな事、あんまりないのに…
「あ、バスが来たよ」
 今日も学校が始まる。でも…来年の今頃、私は何をしているんだろう?そんな事がふと、頭の中を
駆け巡った。
「まこっちゃん?まこっちゃん、どうしたの?」
 あさ美ちゃんに訊かれて慌てて私は我に返った。今は私の事情、誰にも知られたくない。
「おはようやよ〜」
 いつもの停留所から、愛ちゃんが乗って来た。今日もいつもと同じ一日がまた始まる…

32 :名無し娘。:2004/12/05(日) 20:34
タイトルは「Teenage Walk」で行こうと思います

33 :底なし:2004/12/06(月) 01:20
読みました
何かちょっと切なくなる内容ですね
続き期待してます

34 :名無し募集中。。。:2004/12/06(月) 22:59
乙です。
どんな展開になっていくのか・・・楽しみです。

35 :( ´D`) ◆p0xVFNonnI :2004/12/07(火) 09:06
|D`).。oO(ここまで読んだのれす)
|⊂

36 :名無し娘。:2004/12/07(火) 18:04
まあまあ期待してるよ

37 :名無し娘。:2004/12/07(火) 23:34
 学校に着いて、いつものように授業が進み、いつものように一日が終わる。そして…
「まこっちゃん、帰ろっ」
 あさ美ちゃんと愛ちゃんと一緒に帰る。これもいつもと同じ光景だ。でも…何かが違う。
「じゃあ、また明日ねー」
 あさ美ちゃんと別れて家に帰って、机に向かって一人考える。目の前には…今日返って来た小テスト
の結果。
「はぁ…これじゃ全然ダメだ…」
 夢を叶えるためには、人の何倍も努力しなきゃいけない。頭では分かってるけど、いざ実行するとな
ると…なかなか難しい。
「頑張らなきゃ…」
 私は買ってきた参考書に目を通す。内容が難しすぎてさっぱり分からないが、やるしかない…
「えーと、2次方程式が…」
 結局夜中までその参考書に取り組んだ。でも…全然進まない。
「どうしよう…」
 残された時間は、長いようで短い。そして、私は勉強だけじゃない、バイトもしなきゃいけない。全
ては…自分の夢のために。
「寝よう…」
 時計の針はもう夜の2時を回っていた。私は一人寂しく、床に就いた。明日はバイトだ…

34KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail(省略可)

0ch BBS 2006-02-27