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NACCI

1 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:33
In Another Time, In Another World...

53 :名無し娘。:2004/02/18(水) 22:18
もっと過激に!                         なんちゃって。

54 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:22
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

55 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:22
自分で仕掛けた目覚ましにちょっとムカムカしながら、起きた。
ゼリーミールをずるずるすすり、顔を洗って歯を磨く。動きやすい
パンツとシューズに着替え家を飛び出す――前のいつもの儀式。
壁のブロマイドにキス。うん、今日は昨日素敵だったリカさんと。
ウォーカーは朝のラッシュでぎっしりだけど、このぎっしり、
嫌いじゃない。
人に挟まれ隙間から見たタワークロックは0920時。まだまだ余裕。
そこでふと、何かへんてこな夢を見た気がしたって気がした。

56 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
結局はっきりと夢を思い出せないまま、スクールへ到着。
「おっす」
「おはよん」
笑顔のアイとタッチ。その机の上に広がるブロマイドは昨日アイが
買ってったやつ。アヤさんが微笑んでリカさんがウィンクしてて
マキさんが凛々しい。
「あっし入るなら桜組がええな。アヤさんがおるし」
「私は乙女組だな。昨日のリカさん素敵だったし」
「浮気者。こないだまではマキさんアヤさんて言うとったのにぃ」
ふくれるアイと笑う私。先生が来るまでそんなことをしてた。

57 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
マセマティクスの公式が頭を通り抜けて行き、私は窓の外ばかり
見ていた。シャインフィルタにうっすら顔が映ってて、にこりと
してみたりむすっとしてみたり。自分で言うのもなんだけど、割と
整った可愛い顔じゃないかと思う。
実はアイとふたり、秘密で考えてることがある。スクールを卒業
してもシニアに進学しないで、宝塚のスクールに行きたいってこと。
こう見えてもシナプスは運動能力を優先させてるんだからね。

58 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
「Mz.ERI. 答えなさい」
突然呼ばれて視線を戻すと、教卓の向こうから先生がじろりと
睨んでた。全然聞いてなんかなくて、当然答えられなくて、必然
私は立たされる。みんな笑った。アイも。
クラスの外で水入りポット両手に瞳を閉じれば、まぶたに浮かぶ
未来の姿。シアターでライトを浴びて、高らかに歌い踊る、私。

59 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:24
>53
(●^▽^)<これ以上お見せすると怒られちゃいます…

60 :名無し娘。:2004/02/21(土) 21:19
舞台が未来だからかな。文体もそんな気がしてならない。

61 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:23
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

62 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:24
廊下のはずがクラスの中で、まばたきの間に生徒は私独りだけ。
「あれ?」
「こんにちはエリ。約束通り、また会えたね」
そう教卓から微笑むのは、いつもの先生じゃなくて、ショート
カットの幼な顔。黒のスーツを着てて、赤いフレームのレンズを
人差し指でつん、と持ち上げ気取ってる姿。
「えっとぉ」
この人を知っている。眉根を寄せて考えて、唐突に思い出した!
「ナッチ?」
確信を込めた質問に気取った笑顔のまま、こくり。
「Yes. でも今は先生をつけること」

63 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:24
「これ、なぁんだ?」
ナッチ先生が取り出した、と言うかいつ手にしたの?掲げるは
小さくて汚れてるけどまごうことなくお野菜で、もしかして私
バカにされてるのかしら。
「キャロット」
「あたりだからはい、プレゼント」
ぽん、と目の前に現れたキャロットを慌てて両手でキャッチした。

64 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:25
「受け取るんだ」
自分からプレゼントって言っておいて驚いてるナッチ先生。
「キャロット大好きなんです」
「こんなちっちゃくて、こんな汚れてても?」
「ちゃいこーです。実はエリってば味オンチなんです」
言ってから気づいた。ナッチが居るってことはこれって――。
「もしかして夢?」
先生はまた「Yes.」と赤いフレームを押し上げながら笑顔で。
そして、衝撃。

65 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:25
>60
(●^▽^)<そんなに褒められると照れちゃう…

66 :名無し娘。:2004/02/23(月) 22:31
落ち込んだりもしたけれど、わたしは元気です。

67 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:56
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

68 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:57
「立ったまま眠るとは良い度胸ね、Mz.Eri」
ずきずきと痛む頭をさするとぽっこりとたんこぶがあった。
「どんな良い夢を見てたのかしら?」
「あのぉ」と口にして口ごもる。どんな夢だっけ?なんか
何かがどーのこーのだった気がして気になり考え込む。
あっ、と熱視線で我に返ると、先生のこめかみに血管が
浮いていた。まずい、と思うも時すでに遅しで。
「Mz.Eri. グラウンドを10周、今すぐ行ってらっしゃい」

69 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:57
まだ肌寒い春風を受けて走るグラウンドは、頭を冷静に
冴え渡らせた。息がほんの少し白く私は手にふぅと吹きかけ。
チェッカーが残り03周を告げる頃、記憶を辿り続けた私の
頭の中は、キャロットでいっぱいになっていた。
確かに見た。
夢の中で私は見たことないよな小さく汚れたキャロットを
両手で抱えて――かじろうとでもしてたんでしょうか?

70 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:58
お風呂上がり。食卓についた私は目を見張る。キャロット
シチュー、ベークドキャロット、キャロットガレット、
キャロットグラタン、スティックキャロット、キャロット
ジュース。見事なまでにオレンヂ一色だった。
「安かったのよ」
お母さんが笑ってる。大好物だって味オンチだって食べ飽きは
するってのに。黙々と口へ運び嫌々食べ終えるのと同時だった。
デザート登場。キャロットグラッセにキャロットスフレに
コンポートキャロット。気が遠くなりかけた。

71 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:58
暗闇の中、アクアベッドに横たわり思い出すのは夢の中の
キャロットとさっき見たキャロット。あんな失敗作みたいの
見たの絶対初めてなのに、なんで夢に出て来れたんだろう?
そしてそんな夢の後のあんなご飯。
「偶然って、怖い」
と安易で適当な結論を導き出した私は、眠さに身を任せた。

72 :名無血 ◆BLdFgnqET2 :2004/02/24(火) 19:59
>66
(●^▽^)<時には無理するのも良いよ…でもたまには私を頼って…

73 :名無し娘。:2004/02/25(水) 22:25
なんかキャロットの夢見そう

74 :名無し娘。:2004/02/26(木) 01:38
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

75 :名無し娘。:2004/02/26(木) 20:27
>>74
( ^∇^)<しないよ!

76 :名無し娘。:2004/02/26(木) 20:58
( TーT)ダカラウンコジャナイッテ・・・

77 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:04
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

78 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:05
「春眠、暁を覚えずって昔々に誰かが言ってた」
視界に映るは見知らぬ天井。白をベースに細いラインで、
ところどころで変なオブジェが薄い光を放ってる。
「あれは蛍光灯」
「それも誰かが言ってたんですか?」
横になってる身体を起こした。側には真っ白い服に身を
包んだ見覚えある顔。ねぇナッチ、ここってさぁ。

79 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:05
「また夢の中だ」
「そぉよぉ。それはさておきこの白衣どう?」
くるっと回転するナッチ。スカートの裾がふわり。
「可愛い。天使みたい」
「おっエリりん鋭いねー。これは白衣の天使の制服です」
目を細めてナッチはそう笑うけど私の頭に疑問が浮かぶ。
天使に制服なんてあるのでしょうか?
「あったのさ。昔ナース今ホスピタルコンシェルジュ」
ホスコン?あれを人間が勤めてた時代っていったいいつ?
「お熱測りまちゅよー」とナッチ。自分で言って笑ってます。

80 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:06
「これ何だ?」
ナッチの右手を見て「キャロット」と私。
「じゃあこれは?」
ナッチの左手を見て「出来損ないのキャロット」と私。
「で、エリが落としたのはどっちのキャロット?」
「どっちも落としてませんよ」
「正直者ぉ」と投げつけられて、私は何とかふたつとも
キャッチする。

81 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:07
「キャロットに限らずお野菜の栽培方法、知ってる?」
白い頭飾りを直しながら、ナッチ。もう絶対に私のこと
バカにしてるでしょ?
そんなのとっくの昔にエレメンタリーで習ってるんだから。
「ゼラチナスキューブに種を浸せばそれだけで育つよ」
そう、勝手に大きくきれいな形に育つはずなのに――。
「どうしてそっちがちっちゃいのかは解らない?」
私は素直に頷いた。

82 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:07
「ゼラチナス栽培発明以前は、お野菜は不格好だったのよ」
左手の中を見た。そう言われてもふぅん以外に何て言えば
いい?って言うか夢の中までスクールみたいだなんて!
「もしそんな時代に戻ったとしたらエリどうする?」
私は瞬き首をかしげる。んんっ?どうするってどういう意味?
「戻ったらって発明されたものは消えないし」
「じゃあ質問訂正。ゼラチナス栽培が禁止されたら?」
騒音、振動、そして光が射す。あぁん、もう!
「不格好でもお野菜はお野菜です!」
消える寸前、叫んだ。

83 :名無血 ◆.T4PnNuODU :2004/02/29(日) 12:07
>73
(●^▽^)<読み通りの展開ですみませーん

84 :名無血 ◆N8BJks0RAo :2004/02/29(日) 12:08
>74
(●●^▽^)<オカワリ

85 :名無血 ◆N8BJks0RAo :2004/02/29(日) 12:08
>75
(●●^▽^)<シテモイイジャン!

86 :名無血 ◆DPZsBTlouw :2004/02/29(日) 12:09
>76
(●●^▽^)<これいったい何ですかー?

87 :名無し娘。:2004/02/29(日) 18:40
トリップは毎回変えるのか?

88 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:24
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

89 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:24
バイザーいっぱいに広がるNonCarrerの羅列。
私は手の甲のプラグを抜きながら、消える寸前のエリの
叫び顔を思い出して笑う。
――おかえりなさい。今日もオーバーまで居ましたね。
アサミの声が頭の中に届いた。ぺろりと舌を出して、
ごめんねのサイン代わり。
――私の時はそんなに居なかったくせにぃ。
甘ったるく消えてった言葉が、バイザーに映り流れてく。

90 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:25
――明日も入るんですか?偶然を起こすんですか?
呆れたように、アサミ。私はそれを否定する。エリと
話すのは楽しいけど、あの子のセンスはもう解ったし
とりあえずは終わりにしなくちゃ。
――あら意外。もちろんセレクトですか?
こくん。感じるでしょ?あの子はきっとなっちと一緒で
アサミと一緒。遥か遠いterraを愛せる存在。
「だからラストプレゼント。2013C-42A-8をお願い」
さっきのと違うプラグがふわりと浮かぶ。手の甲へ
差し込むと、バイザーにミニチュアの街並が映り込んだ。

91 :名無血 ◆5Zw4Kn/jfI :2004/03/03(水) 02:25
>87
(●●^▽^)<美しいトリップを探してトリップ中ですよー

92 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:45
スクールに着いたばかりの私にオフィサールームに来なさいと
メッセージ。
何ですか?それはつまり、朝から怒られるってことですか?
「失礼しまぁす」
ノックと小声の挨拶で開けたドアの先に、見えた見慣れた姿。
「アイ?」
「遅いよエリ。待ってたがし」
そう答えるアイの顔は笑みをたたえてる。そりゃアイは
品行方正才色兼備文武両道風紀委員でオフィサールームの
常連かも知れないけど、私は何も持ってない子ですから。
緊張なんです、嫌な予感です。

93 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:46
(●^▽^)<上のは失敗…ごめんなさい…

94 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:47
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

95 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:47
スクールに着いたばかりの私にオフィサールームに来なさいと
メッセージ。
何ですか?それはつまり、朝から怒られるってことですか?
「失礼しまぁす」
ノックと小声の挨拶で開けたドアの先に、見えた見慣れた姿。
「アイ?」
「遅いよエリ。待ってたがし」
そう答えるアイの顔は笑みをたたえてる。そりゃアイは
品行方正才色兼備文武両道風紀委員でオフィサールームの
常連かも知れないけど、私は何も持ってない子ですから。
緊張なんです、嫌な予感です。

96 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
「えっ?」と聞き返してしまった。「私達が?」
「そう。我がスクールからの今年度トレーデストよ」
アイを見ると、アイもこちらを見ていた。信じられない。だって
アイはさておき私は成績優秀でも運動抜群でもないのに。
「でね」先生が首をひねった。「行き先のスクールだけど」
「中央のスクールですよね?」
さらりと言うアイ。そして気づく。こいつもしかしてトレードを
意識してた?独りだけ先に中央へ行く気だったな?
アイを横目で睨むとウィンクで答えて来た。ちろと舌を出して。

97 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
「それが違うの。あの貴方達、宝塚歌劇団って知ってる?」
「はぁ」
「そこの養成スクールなのよ。中央は何を考えてるのかしら」
呆れたように、先生。アイはいつも以上に目を見開いてて、
私は口唇の端が釣り上がるのを止められない。
「だから無理強いはしないわ。貴方達、嫌だったら――」
「行きます!」
即答した。そして、私とアイの答えがきれいに重なってた。

98 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
何だって言うの?ここのところの私の回りの素敵な出来事は。
まるで偶然がわざとに、必然にされて集められているみたいで。
窓の外からはちょっときつめの太陽灯。目を細めながら出した
結論は、そうねきっと春だから。
平均普通の私、何もないエリにも春が来たってことで。

99 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:49
(●^▽^)<レスがなくても何のそのー

100 :名無血 ◆LyaWUwpkA6 :2004/03/04(木) 07:50
(●^▽^)<げっとひゃくー

101 :名無し娘。:2004/03/04(木) 15:20
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

102 :名無し娘。:2004/03/04(木) 17:10
( ^▽^)<しないよ

103 :名無し娘。:2004/03/04(木) 17:46
>>89
NonCareer?

語り手が変わったときは分かりやすく印を付けた方がいいと思う。

104 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:38
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

105 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:39
ふと、目が醒めた。何だか眠り過ぎたように重い身体。
アクアベッドから起きあがって壁を見れば1015時って。
え――――っ。
飛び起きた。ミキってばどうして起こしてくれないのよ
と横のベッドを見れば空っぽ、というか使った形跡無し。
そして思い出す。
ミキってばトレーデストとやらに選ばれたとか選ばれない
とかで、昨日から地方区のシニアに0100月間行かされるん
だか行かされないんだか言ってたよな言ってないよな。

106 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
着替えをしながらゼリーミール。瞬間で食べ終わって
ホント便利。ブレザーをはおりバッグを背負って、どうせ
遅刻だけど、ゆっくりするのは性に合わないから飛び出した。
ラッシュアワーも過ぎてがらがらのウォーカーをスカートの
裾を抑えながら走る、走る。
そんな間に頭をよぎる記憶。もやがかかったうっすらな記憶。
あの夢の中の、白いワンピースの娘は、誰?

107 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
スクールに駆け込んでも早足のままに目指すは私のクラス。
見たことない子が今まさに開けようとしてるドアに手をかけ
「ごめんね」
呟いて飛び込んだ。みんながきょとんと私を見たかと思えば、
直後大爆笑。マキもリカもお腹を抱えてけたけたくすくす。
「アヤ、あんたどこからトレードされて来たのさ」
はいぃ?
リカが指差す先、ボードに書かれたERIの文字。ぴん、と来た。
さっき廊下に居た子がミキの代わりのトレーデストなんだ。

108 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
「エリです。よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる様が可愛い過ぎて、シニアの子とは
思えない、なんて思っていたら。
「シニアは04の月からで、今はまだスクール通いです」
ちょっと待って。じゃあミキはもう一度スクールに行かされて
いるわけ?
「私達とトレードされてるなら、きっとそうだと思います」
「まぁミキは地図の上下も解らない娘だからアリだよね」
マキがそう言って、クラスはまた笑いに包まれた。

109 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:41
エリちゃんは空席、つまりミキの席、つまり私の隣に座った。
「こんにちは」の言葉に私もサービスと微笑みでいっぱいの
「よろしくね」を返す。あは、紅くなっちゃった。
「どう、宝塚?」
「緊張します。皆さんシアターで見たことある方ばかりで」
消え入りそうな声で言い切った。私の目を見ながら。ぴょこんと
芽生える悪戯心が語りかけて来る。からかっちゃえって。
「本性はみんなぐーたらだから幻滅するよ、きっと」
エリちゃんの耳に唇を寄せ、吐息をあてるように、囁いた。

110 :名無血 ◆WxIKIDfelM :2004/03/11(木) 21:41
>101
(●●^▽^)<オイシー

111 :名無血 ◆f0eEKYr9QM :2004/03/11(木) 21:41
>102
(●●^▽^)<したりしなかったりですよー

112 :名無血 ◆FCIZ4ZgtQI :2004/03/11(木) 21:42
>103
(●●^▽^)<通信が切れたって意味ですよー

113 :名無血 ◆TNtxZb.j4Y :2004/03/11(木) 21:42
(●^3^)三● プッ

114 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:03
放課後、私はエリちゃんを連れて家へ帰る。
なんと学校の席だけじゃなく、寮でまでミキの部屋を使う
らしい。エリちゃんが大人しそうな子で良かったと心から
思った。一ヶ月くらいなら仲良くやれるよ、きっと。
「じゃあミキはエリちゃん家に泊まってるのかな?」
「……たぶん」
指をくわえながら、エリちゃん。ミキってば釣り目で
気が強そうなくせに実は人見知りだから、相当胃とか
痛めてるんだろうな。そう思ったら笑ってしまう。ふふっ。

115 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:04
「……豪華で質素ですね」
私の部屋に来てエリちゃんはそう言ったきり黙って
しまった。
「これがあの派手な宝塚の裏側です」
飾り気のない部屋に、ずらりと並んだ服だけが華美で。
「今日一日どうだった?」
「楽しかったです」
小さなテーブルをはさんで向かい合った。
お互いのことを訊き話し、たまにしんとした空気が
流れたりする。それでも居心地が悪くないのはきっと、
エリちゃんが良い子だからかな、うん。

116 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:04
クロックが2230時のベルを鳴らし、私達はアクアベッドの
スイッチを入れる。体を浸しながらスピーカーを通して
会話を続けながら、やがてあの子の寝息が聞こえだすまで。
そして私も瞳を閉じる。
胸の上でゆるく指を組んで、行き先は夢の中。
夢の、中へ…。
「ふえっ!?」
鼻をつままれて、起きた。

117 :名無血 ◆dLiN3EYkn. :2004/03/23(火) 00:05
(●^▽^)<忘れた頃に更新ですよー

118 :名無血 ◆ZAjQvDdhIs :2004/03/23(火) 21:38
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

119 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
ぐるりと水平線。私ってば、水の上に立ってます。
そして目の前にはあの笑顔。ここのところおなじみの――。
「おっす。なっちだよ」
同じように水の上に立ってるけれど、私は驚いてしまう。
ひざからすとんと棒のようなソックス、短か過ぎるスカート、
小さ過ぎるブルーの上着はおへそを覗かせて。
「いやぁ、なっちもさ、コギャルに憧れる訳さ」
訳さと言われましても。

120 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
ナッチがぐーにした右手を出す。ぱっと広げるとぴちぴちと
魚が飛び跳ねてて、私はうわぁと後ずさり。苦手なんだよね。
「もしかして嫌い?」とナッチ。私はこくこく。
「丸い目とか青いうろことか冗談でしょ!って感じ」
「残念。…Fallen…」
突然、本当に突然、視界が真っ赤になった。水も、空も、
ナッチも、その手の中の魚も。
として停止した。ゆらゆらの波と跳ねてた魚とナッチの笑顔。
まるで造り物のように固まって――崩れた。

121 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
飛び起きた。視界に映る見慣れた光景にほっとしながら
私はおでこの汗をぬぐう。背中もぐっしょり汗をかいてて
気持ち悪さに私は脱ぎ捨て着替えを取りに行こうとする。
「あっ…」
そこで振り返りほっとする。良かった、エリちゃんは
起きてないみたい。見られたらちょっと恥ずかしいもん。
おろしたての真っ白のシャツを着て、私は暗闇に独り
ふぅと息をつく。
…憶えてない。解ってるのはすごく怖い夢だった、って
気がするだけ。

122 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:40
目を閉じ髪をかきあげる。頬をぴしゃぴしゃ両手で叩く。
何よそれ。アヤあなたシニアでしょ?宝塚トップでしょ?
スクールの子に笑われちゃうわ。
胸の動悸も完全におさまり、私はアクアベッドに横たわる。
「おやすみ、エリちゃん」
かすかな寝息に向かって呟く。そしてもう一度、瞳を閉じた。

123 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:41
(●^▽^)<……負けませんよー

124 :名無し娘。:2004/03/23(火) 22:08
誰に?何に?

125 :名無し娘。:2004/03/25(木) 00:07
負けるなよウンコ

126 :名無し娘。:2004/03/30(火) 00:21
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

127 :名無し娘。:2004/03/30(火) 01:47
だからそれをなっちに返せ

128 :名無し娘。:2004/03/30(火) 15:42
>>126
( ^∇^)つ●ウンコクエ!!!

129 :名無し娘。:2004/03/30(火) 18:28
(●´ー`)<?

130 :名無し娘。:2004/04/11(日) 14:36
むむっ

131 :名無血:2004/04/15(木) 17:13
「お名前は?」
白い服の女が言った。
「マキですけど?ってかあんたこそ誰?」
「なっちですけど」
びみょーな真似がしゃくに触る。

132 :名無血:2004/04/15(木) 17:16
「空は好き?」
はぁ?
ふざけんなと言おうとした口が開かない。風が
飛び込んでくる。落ちてるんですけど!
「えぇぇぇぇぇぇ?」
目の前の女は白いスカートを両手で抑えてて、
何かどこかで見たような映像。

133 :名無血 :2004/04/15(木) 17:19
私死ぬんだ。宝塚トップになったばっかりなのに。
「死なないよ。だって夢だもん」
えっ?
がくり、と振動。狭いアクアベッドの中で姿勢は
めちゃめちゃ。わざとかよ、って感じ。
ふと見た横には愛ちゃんがすやすや眠ってました。

134 :名無血:2004/04/16(金) 12:44
愛ちゃんはブルーストライプのシャツ着て寝てて、
さっきまでの子とはどうも別人みたい。って事はやっぱり。
「夢で良かった」
出した声がしんとした部屋に響く。覚えてるのは何となく
の見た目だけ。ショートカットで白い服だったってだけ。
どんな顔でどんな声でどんな名前だったか?
夢のお話なのに、やけに私は気になっていた。

135 :名無血:2004/04/16(金) 12:44
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

136 :名無し娘。:2004/04/19(月) 14:02
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

137 :名無し娘。:2004/04/22(木) 22:51
走れ。飛べ。そして更新せよ。

138 :名無し娘。:2004/04/23(金) 05:30
ふと読んだ時から気になって
読み続けています。
更新お待ちしておりますよ

139 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
一緒に練習を始めてみれば、それはもうエリちゃんもアイちゃんも
すごいもんで、最近のスクールの子はこんななのってリカもアヤも
勿論私も呆然とする訳で、ふと急に地図の上下も解らないままに
トレーデストに選ばれたミキを案じてしまったりします。
「身体を動かすの好きなんで」
照れたように笑ってそう言うふたり。私達も宝塚トップとは言え
うかうかしてられませんね、なんて目配せしあったりする。

140 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
ストライドを計り距離を決める。最初ゆっくりだんだん速く。
踏切台で思いきり飛び、空中で伸身のまま一回半横にひねる。
私やアヤはスタンドなしでも出来るけど、リカはスタンドなし
じゃ思いきり踏み切る事も出来ない。
「リカはアイドル路線だけで飛べずに満足するつもり?」
「しないよ」とリカはべっと舌を出す。「そんなつもりない」
遠くからリカがぎゅっと拳を握るのが見えて次の瞬間、リカは
スタンドの無い踏切台へと助走を始めた。

141 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
残念ながらリカはおっきいおしりで着地しちゃって「ふぇっ」
なんて高い声を上げて私の笑いを誘うけれど。
「マキ!」
アヤが青い顔で「見て」と指差す先、まだリカちゃんが座ってる
エアシートを目がけて助走する姿が見えた。アイちゃんだった。
絶対ぶつかる。なのにアイちゃんは止まらない。そのままリカに
向かって踏み切り、飛び越すのかと思いきやまるでタックルの
ようにぶつかりふたりはごろごろんと転がる。
「ちょっと何すん――」
リカが怒りの声を上げるのとほぼ同じだった。それまでリカが
居た場所の上に、天井からライトがぐしゃりと落ちて潰れた。

142 :名無血:2004/05/08(土) 14:05
「天井のライトがぐらついてんのが見えたんで」
助けたはずのアイちゃんが真っ青な顔で言う。それもそうかも。
ちょっと間違えば自分も巻き込まれてたんだから。怖いな。
トレーニングはちょっと騒然、授業も中断、私とアヤとエリちゃん、
壁にもたれて落ち着こうとする。
メディカルに念のため運ばれたリカちゃんとアイちゃんを想って
みたり。ふぅと息つく。初めてだよ、こんな体験。

143 :名無血:2004/05/08(土) 14:05
ふと気付くと知らない人が居た。白くタイトなスカートとジャケット、
整った顔つき、ショートカットの髪のすべてが凛々しい美人さん。
歳は私達より十歳は上っぽい見た事ない人。誰?
先生との会話にこっそり聞き耳たててると、どうもから中央から来た
人っぽかった。ってか中央凄過ぎ速過ぎ。もう人を寄越すなんて。
私はぼ――っとその人を見ていた。こんな人絶対知らない、なのに
見た事ある気がする。何よそれどういう事か自分でも解らない。
回りに視線を移せばエリちゃんもアヤもその美人さんを見ていた。

144 :名無血:2004/05/08(土) 14:06
(●^▽^)<ウンコスキスキ♪

145 :名無し娘。:2004/05/12(水) 20:43
こらこら

146 :名無血:2004/05/16(日) 10:19
ふいにその人がこっちを見た。でも私を見なかった。
誰を見てるんだろ?この中で顔が知られてるのは私とアヤ。
じゃあアヤだ。そう思ってアヤを見れば、私の想いが
伝わってたのか、ふるふると首を横に振る。
「エリちゃん?」
「はい」
エリちゃんは前を見たまま。
「視線を感じる?」
届けると消えそうに小さな声で「感じます」と返ってきた。

147 :名無血:2004/05/16(日) 10:20
メディカルに行けばなごやかに話し合あってるリカと
アイちゃん。こっちの気も知らず笑顔なんか浮かべてる。
「ダイのオトナがだよ?もうね、気になって」
「素敵やよ」
何の話?と訊けば、さっき中央から来たっていう美人さんが
ふたりの様子を見にここに来たって。しかもふたりも私と
同じようになんかDeja-Vuを憶えたらしい。既視感。
「え、私もそう思ったよ」
「あの。私もです」
アヤもエリちゃんも。なんと五人全員だった。ふぅと息つく。
「あれ誰?」みんなの声が揃った。

148 :名無血:2004/05/16(日) 10:20
ヒューマノイドよ、と後で先生に教わった。常に中央と
電波交信で情報交換しているそうで、だから今日の対応も
速かったのねとなんか納得。
「モデルはおるんですか?」と訛りまじりでアイちゃん。
そっか。確かにヒューマノイドならモデルとなった
ヒューマンが居るはず。
「さぁ」先生はそう言ってため息をつく。「それより次作の
ダンスレッスンはどこでしたら良いかしら?」
ふっとミキの顔が浮かんだ。
「主役が帰って来てから考えましょう」と苦笑いを浮かべた。

149 :名無血:2004/05/16(日) 10:21
「もう次の作品って決まっとるんですか?」
夜。アクアベッドの向こうからアイちゃんが私に問いかける。
私はやや時間を置いての返事。
「決まってるよ。次はミキが主役なの。これ絶対秘密」
「ミキさんってマッキング・ゴールドでは悪役でしたよね」
「そう」リカを襲う男役。好演でした。「どう思った?」
「これ絶対秘密ですよ。悪役がすっげぇ似合っとりました」
「伝えとく」と言うとアイちゃんは悲鳴を上げた。
「これも絶対秘密だよ」私は声をひそめる。「次のって
実はマッキング・ゴールドの続編。悪役主役Version」
アイちゃんの唾を飲む音が聞こえた。ごくりって。
「タイトルは、逆の立場から見えてくるもの、って事で」

150 :名無血:2004/05/16(日) 10:22
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

151 :名無血:2004/05/16(日) 10:22
(●^▽^)<トリップの文字列忘れちゃいましたー

152 :名無血:2004/05/21(金) 21:10
「エリ」
鼻をつままれた。つまんでる相手は猫のようなブラックの
タイツに身を包み頭にはスコープをつけてる。けれどその顔は
見慣れてて、そして何だか懐かしい。
「ナッチ」
「久し振り。エリは元気そうだね」
いつもと違う、と気付いた。ナッチの笑顔が弱々しい。
嫌だ取り戻してよあの極上の、天使の微笑み。
「ナッチは元気じゃないの?」
「あんまり」と髪をかき上げて。「手痛いミスしちゃった」
ミス?

153 :名無血:2004/05/21(金) 21:10
「セルフコントロールミス」
私の前にはナッチだけが在って、その他には何もない。
突然。
「異常に気付くのが遅れてあやうく殺しちゃうとこだった」
無数の光の点が生まれて、すごい速さで私達の廻りを駆け巡る。
「時間が無いの」
「ジカン?」
やがて光はひとつに集まり、大きな青い球になる。そして
ナッチと私の真上で止まる。すっごく、きれい。ため息出ちゃう。
「これ、何」私は指差した。
「terra」ナッチも指差した。「永遠に辿り着けない到達点」

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