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NACCI

1 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:33
In Another Time, In Another World...

2 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:34
いまなっちが見てる星の光は、なっちが産まれるずっと前に生まれた
光だって、誰かが言ってた。
空を埋め尽くしてる星々の間だって、秒速300000kmの光でさえたどり
着くのに何年もかかるって、誰かが教えてくれた。
なっちはshipの中で産まれたんだ。
なっちのお母さんも、お母さんのお母さんも、そのまたお母さんさえ
このshipの中で産まれたんだって、なっちは聞いてる。

3 :名無し娘。:2004/02/13(金) 22:34
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

4 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:35
terraという星をご存知でしょうか?
昔話には青の緑のと言った形容で登場するのに受信したテレグラフでは
黒っぽい赤っぽい、なっち達の故郷、らしい。
なっち達はずっとterraに代わるterraを目指して飛び続けている。
夢見過ぎだと思う。あの星が昔は輝いてたなんてあの星に昔住んでいた
なんて。ありえない。作り話のおとぎ話だわ。

5 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:36
>3
( ^▽^)<イラナイ

6 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:36
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 
       mothership
 
 
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

7 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:36
タワークロックが1400時ジャストを告げた。その時間にはシアターに
居るはずの私はまだ、ウォーカーののろのろ運転にいらいらしながら
指をとんとん膝をかたかた。
そりゃあライトムーヴを使えば一瞬で着くよ。でもあれを使ったら
シアターで買うブロマイド代が消えちゃうもん!シアターに見に行く
醍醐味のNo.2だってのに。

8 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:37
しかし遅刻も出来ない。舞台が始まっちゃうのもそうだけど、アイは
自分にも他人にも厳しい人だから。悪いのは私を二度寝させちゃった
目覚まし時計なのに、アイはきっと私を怒るんだろうなぁ。
一瞬悩んだ末の結論。はしたないけど仕方ない。私はガードをひらり
飛び超え、ドライバーに着地するや自慢の脚で走り出した。

9 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:37
クラクションに愛想笑いをしながら走ることたっぷり0005分。ようやく
シアター前で待つアイが見えた。手を振ると一拍遅れて振り返してる。
息切れの合間に「ごめんなさい」を吐き出す私にやっぱりアイはぶすっと
した顔で。
「遅刻やよ。これがなかったら危なかったがし」
えっ、とアイの指さす先、シアターのアテンションを振り返ればなんと
舞台装置故障で1415時からの開始にずれこんでいた。

10 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:38
「エリ、ほら早くおいで」
私の腕を引っ張るアイの顔はすでに笑ってた。私とアイは買ったばかりの
ブロマイドを胸に抱えて、ふかふかの座席に並んで腰を下ろす。
やがて音楽とライトがすぅっと消え幕が上がる。黄色い歓声があちこちで
上がり、身体が浮かぶような感覚が走った。

11 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:40
この想い、届いて!

12 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/13(金) 22:41
あ、11は内容とは関係無いんで

13 :名無し娘。:2004/02/14(土) 08:08
どんなお話になるのかな

14 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:12
>13
( ^▽^)<考えないで書いてますよー

15 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

16 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:13
夜道に靴のヒールの甲高い音が響く。髪を振り乱し服もしわくちゃに
走りながら振り返ったリカの目にはまだ、男の影が映っていた。
ぼろっ、と涙がこぼれる。
周りには誰も居なくて薄暗い街灯のみ。だんだんとふたりの差は縮まり
やがて男の手がバッグに届いて、リカが転んだ。

17 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:13
助けて。
と叫びたいはずがかすれた声。腰も抜けしまって、ずるずる這って
後ろに下がるのがせいいっぱい。
息を荒げた男の右手が肩にかけられリカが顔を背けた瞬間。
「おりゃぁ!」
「とりゃぁ!」
どさっ。近くから声がふたつとやや遠くから音がひとつ、聞こえた。

18 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:14
「大丈夫?」
「おケガはありませんか?」
視線を向ければ高校生くらいの女の子がふたり突然現れていて、
さっきの男は20mくらい向こうに吹き飛んでいる。この子達が助けて
くれたのだろうか?リカはぼろぼろと泣き崩れただうなづくだけ。
「女の子を泣かすなんて許せないわ!」
「男の風上にも置けないね。――せぇの」
「変身!」

19 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:14
まばゆい光。ボーイッシュな少女が金色に染まり、お嬢様っぽい
少女がピンク色に染まった。やがて光がおさまるとそこに居たのは。
「この世に悪のある限り!」
「この世の果てでも駆けつけますわ!」
呆然とする男とリカ。目の前のロボットみたいな存在に釘付け。
「宇宙刑事マッキング・ゴールド。見参!」
「同じくマツリング・ピンク。見参!ですわよ」

20 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:15
ゴールド色に着飾った宇宙刑事が右手を挙げる。その手の中に
じわじわと現れた物質はだんだんとメガフォンの形になった。
「マッキング・メガフォン、転送完了。――ピンク!」
「はい!」
ぽん、と放り投げられたそれを受け取り、呆然とし続けたままの
男に向けるピンク。ハウリングがうっすらと聞こえる。
「行きますわよ。必殺!フレッシュ――」

21 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/14(土) 23:15
わかりづらいっすね。mothershipがタイトルです

22 :名無し娘。:2004/02/15(日) 00:00

ちーーー


名無血のちーーーーーーー

23 :名無し娘。:2004/02/15(日) 05:09
もっと無茶やっていいよ

24 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 18:59
>22
( ^▽^)<呼んだでちか―――――――――――――――――?

25 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 18:59
>23
( ^▽^)<もういっぱいいっぱいですよー

26 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 18:59
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

27 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 18:59
「――ヴォイス!はぁ。アヤさん可愛かったぁ」
頬を紅らめながら真似してる、そんなアイも負けずに可愛いです。
シアターを出る頃には太陽灯はすっかりオレンヂに傾いていて、
私達はとりあえず落ち着こうとカフェで向かい合っていた。
「女ふたりで宝塚ってのもアレですけどね」
ストロー咥えてそう呟くけど、アイには届いてないみたいだった。

28 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 19:00
「なぁなぁエリは今日の見てマキさんとアヤさんどっちが良かった?」
「リカさん。2代目マツリング・ピンクになるとこが良かった」
「あ、えぇねぇ。容赦、しないよ!って決め台詞も素敵やったなぁ」
またしてもうっとりのアイ。
アイスラテをとっくに飲み干した私のグラスの中で、語りっぱの
アイのたっぷり残ったアイスオレのグラスの中で、窓越しに注がれる
早春の夕陽射しを受けた氷が見てる間に小さくなってく。
そんな気がした。

29 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 19:00
「行きますか」
こくり。同時に立ち上がった。ここはこの辺りじゃ珍しい有人の
キャッシャーで、まぁそこもお気に入りで通ってるんだけど。
「1200Yenになりまぁす」
「別々で」
「できませぇん」
ジェリービーンに眉毛が生えたような店員さんにカードを渡して
チェック。ぱっ、と一瞬引かれたYenが表示されたんだけど――。
あれ?

30 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 19:01
「ほい。あっしの分の600Yen、引いて」
カードを重ねる。お互いの指紋認証後、アイのカードから私のカードへ
600Yenが移ってきた。じっと見てても別におかしい動きは、ない。
「エリってばどうしたの?」
「さっきの会計さ、600Yenしか引かれなかった気がするんだ――」
まるでアイスラテをおごってもらったみたいに。
アイは指で作った銃を私に向ける。「ラッキーだね」と笑って撃った。

31 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 19:02
お母さん、あっし今日やっと小説総合スレに登録されそうやよ

32 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/15(日) 19:03
( ^▽^)<31は雑談ですよー

33 :名無し娘。:2004/02/15(日) 21:48
自分で登録してもよかったのに。

34 :名無し娘。:2004/02/16(月) 18:18
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

35 :名無し娘。:2004/02/16(月) 19:57
( `ー´)カエセ!!ウンコジャナイベ

36 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:30
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

37 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:31
太陽灯が月光灯へと切り替わった。お風呂はエアシャワーで適当に
済ませようと思ってたら、湯舟がはってあった。肩までつかり100を
いいかげんにカウントダウン。
「きゅーじゅきゅー、さんじゅごー、じゅーにぃ、ぜーろ」
濡れた髪をタオルに包んだままで夕食。メニューに目を見張った。
今日は何かのお祝い?ってくらいにお肉いっぱいだった。

38 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:31
「すごいのよ。天然のが合成より安かったんだから」
と嬉しそうにお母さん。味オンチだから合成養殖培養天然を問わず
お肉好き好きな私にお父さんが「食べさせ甲斐がないな」と一言。
「エリは成長期なんだからいーっぱい!食べますよぉーだ」
べっ、と舌を出した。

39 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:32
消灯。温まったアクアベッドに身体を浸した後で、忘れてた!と
目覚ましをセット。改めてどろりとした感触につかり目を閉じた。
身体の外と中の水分が入れ替わるような、この感触が好き。ふぅ、と
息をついたらなぜが別れ際のアイが頭に浮かんだ。
そうかもね。
今日はなんかラッキーが色々とあった気がする。うん、おやすみ。

40 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:32
>33
( ^▽^)<誰かが登録してくれるのに憧れてたんです…

41 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:32
>34
( ^●^)<オカワリ♪

42 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/16(月) 22:33
>35
(●^▽^)<もうおそいですよー

43 :名無血 ◆M3vD7.K722 :2004/02/16(月) 22:33
もっと素敵なトリップ目指します

44 :名無し娘。:2004/02/17(火) 20:49
機械で探すトリップ?近未来的だね。

45 :名無血 ◆M3vD7.K722 :2004/02/17(火) 22:42
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

46 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/17(火) 22:43
つくりもののような世界。
歩くたび靴は汚れて、触れるたび棘が指にささって、でも不思議と
これもアリって思えて。ムービーの中でだけ、教科書の中でだけ
見た、昔々に私達が住んでたって星のよに草の緑と水の青が見える。
「こんなの嘘だよね」
声がして振り向けばショートカットの女の子。流行らない真っ白の
ワンピースを着て枯れた木に寄り掛かって私を見てた。

47 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/17(火) 22:43
「こんなの?」
「緑がぱーって散らばって、青がばーって広がってるの」
否定的な口調とうらはらの笑顔でその子が言う。歳上かな?でも
手をかざすその仕種が可愛くて、なんか微笑ましい。
「でも、すっごく昔はこうだったって習ったよ」
「誰かが言ってた、ってやつ?」
「うん。あわをくうって誰かが言ってた、ってやつ」

48 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/17(火) 22:44
「エリは面白い子だね」
はて?なんでこの人は私の名前を知ってるんでしょう?
ってゆうかあなたは誰?見知らぬあなたが居る見知らぬ世界。
「もしかして夢?」
「なんだ、ちゃんとわかってたんだ。ねぇ、また来て良いかな?」
そう訊く彼女の後ろ、太陽灯が強過ぎて目を細めた。
――違う、太陽灯じゃない。あの空にまるく光ってるの、なに?
「どこへ?」

49 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/17(火) 22:44
「ここへ」
可愛い顔して指差したのは、地面つまり、夢の中へ?
「また来れるんなら良いけど」
「けど?」
「あなたの名前を教えてくれなきゃダメ」
「なんだそんなこと」
極上の笑顔から名前が洩れる。見てるこっちがドキドキするよ。
「なっち」
ナッチ。そう口唇を開こうとした瞬間、身体ががくがく揺れた。

50 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/17(火) 22:45
>44
(●^▽^)<まぁストリップだなんて…エッチ!

51 :名無血 ◆sN0aP1I/zA :2004/02/17(火) 22:46
今日のトリップ占いは、吉と出ました

52 :名無血 ◆sN0aP1I/zA :2004/02/17(火) 22:46
以外と良いかも…

53 :名無し娘。:2004/02/18(水) 22:18
もっと過激に!                         なんちゃって。

54 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:22
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

55 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:22
自分で仕掛けた目覚ましにちょっとムカムカしながら、起きた。
ゼリーミールをずるずるすすり、顔を洗って歯を磨く。動きやすい
パンツとシューズに着替え家を飛び出す――前のいつもの儀式。
壁のブロマイドにキス。うん、今日は昨日素敵だったリカさんと。
ウォーカーは朝のラッシュでぎっしりだけど、このぎっしり、
嫌いじゃない。
人に挟まれ隙間から見たタワークロックは0920時。まだまだ余裕。
そこでふと、何かへんてこな夢を見た気がしたって気がした。

56 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
結局はっきりと夢を思い出せないまま、スクールへ到着。
「おっす」
「おはよん」
笑顔のアイとタッチ。その机の上に広がるブロマイドは昨日アイが
買ってったやつ。アヤさんが微笑んでリカさんがウィンクしてて
マキさんが凛々しい。
「あっし入るなら桜組がええな。アヤさんがおるし」
「私は乙女組だな。昨日のリカさん素敵だったし」
「浮気者。こないだまではマキさんアヤさんて言うとったのにぃ」
ふくれるアイと笑う私。先生が来るまでそんなことをしてた。

57 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
マセマティクスの公式が頭を通り抜けて行き、私は窓の外ばかり
見ていた。シャインフィルタにうっすら顔が映ってて、にこりと
してみたりむすっとしてみたり。自分で言うのもなんだけど、割と
整った可愛い顔じゃないかと思う。
実はアイとふたり、秘密で考えてることがある。スクールを卒業
してもシニアに進学しないで、宝塚のスクールに行きたいってこと。
こう見えてもシナプスは運動能力を優先させてるんだからね。

58 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:23
「Mz.ERI. 答えなさい」
突然呼ばれて視線を戻すと、教卓の向こうから先生がじろりと
睨んでた。全然聞いてなんかなくて、当然答えられなくて、必然
私は立たされる。みんな笑った。アイも。
クラスの外で水入りポット両手に瞳を閉じれば、まぶたに浮かぶ
未来の姿。シアターでライトを浴びて、高らかに歌い踊る、私。

59 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/21(土) 19:24
>53
(●^▽^)<これ以上お見せすると怒られちゃいます…

60 :名無し娘。:2004/02/21(土) 21:19
舞台が未来だからかな。文体もそんな気がしてならない。

61 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:23
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

62 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:24
廊下のはずがクラスの中で、まばたきの間に生徒は私独りだけ。
「あれ?」
「こんにちはエリ。約束通り、また会えたね」
そう教卓から微笑むのは、いつもの先生じゃなくて、ショート
カットの幼な顔。黒のスーツを着てて、赤いフレームのレンズを
人差し指でつん、と持ち上げ気取ってる姿。
「えっとぉ」
この人を知っている。眉根を寄せて考えて、唐突に思い出した!
「ナッチ?」
確信を込めた質問に気取った笑顔のまま、こくり。
「Yes. でも今は先生をつけること」

63 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:24
「これ、なぁんだ?」
ナッチ先生が取り出した、と言うかいつ手にしたの?掲げるは
小さくて汚れてるけどまごうことなくお野菜で、もしかして私
バカにされてるのかしら。
「キャロット」
「あたりだからはい、プレゼント」
ぽん、と目の前に現れたキャロットを慌てて両手でキャッチした。

64 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:25
「受け取るんだ」
自分からプレゼントって言っておいて驚いてるナッチ先生。
「キャロット大好きなんです」
「こんなちっちゃくて、こんな汚れてても?」
「ちゃいこーです。実はエリってば味オンチなんです」
言ってから気づいた。ナッチが居るってことはこれって――。
「もしかして夢?」
先生はまた「Yes.」と赤いフレームを押し上げながら笑顔で。
そして、衝撃。

65 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/22(日) 09:25
>60
(●^▽^)<そんなに褒められると照れちゃう…

66 :名無し娘。:2004/02/23(月) 22:31
落ち込んだりもしたけれど、わたしは元気です。

67 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:56
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

68 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:57
「立ったまま眠るとは良い度胸ね、Mz.Eri」
ずきずきと痛む頭をさするとぽっこりとたんこぶがあった。
「どんな良い夢を見てたのかしら?」
「あのぉ」と口にして口ごもる。どんな夢だっけ?なんか
何かがどーのこーのだった気がして気になり考え込む。
あっ、と熱視線で我に返ると、先生のこめかみに血管が
浮いていた。まずい、と思うも時すでに遅しで。
「Mz.Eri. グラウンドを10周、今すぐ行ってらっしゃい」

69 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:57
まだ肌寒い春風を受けて走るグラウンドは、頭を冷静に
冴え渡らせた。息がほんの少し白く私は手にふぅと吹きかけ。
チェッカーが残り03周を告げる頃、記憶を辿り続けた私の
頭の中は、キャロットでいっぱいになっていた。
確かに見た。
夢の中で私は見たことないよな小さく汚れたキャロットを
両手で抱えて――かじろうとでもしてたんでしょうか?

70 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:58
お風呂上がり。食卓についた私は目を見張る。キャロット
シチュー、ベークドキャロット、キャロットガレット、
キャロットグラタン、スティックキャロット、キャロット
ジュース。見事なまでにオレンヂ一色だった。
「安かったのよ」
お母さんが笑ってる。大好物だって味オンチだって食べ飽きは
するってのに。黙々と口へ運び嫌々食べ終えるのと同時だった。
デザート登場。キャロットグラッセにキャロットスフレに
コンポートキャロット。気が遠くなりかけた。

71 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/24(火) 19:58
暗闇の中、アクアベッドに横たわり思い出すのは夢の中の
キャロットとさっき見たキャロット。あんな失敗作みたいの
見たの絶対初めてなのに、なんで夢に出て来れたんだろう?
そしてそんな夢の後のあんなご飯。
「偶然って、怖い」
と安易で適当な結論を導き出した私は、眠さに身を任せた。

72 :名無血 ◆BLdFgnqET2 :2004/02/24(火) 19:59
>66
(●^▽^)<時には無理するのも良いよ…でもたまには私を頼って…

73 :名無し娘。:2004/02/25(水) 22:25
なんかキャロットの夢見そう

74 :名無し娘。:2004/02/26(木) 01:38
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

75 :名無し娘。:2004/02/26(木) 20:27
>>74
( ^∇^)<しないよ!

76 :名無し娘。:2004/02/26(木) 20:58
( TーT)ダカラウンコジャナイッテ・・・

77 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:04
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

78 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:05
「春眠、暁を覚えずって昔々に誰かが言ってた」
視界に映るは見知らぬ天井。白をベースに細いラインで、
ところどころで変なオブジェが薄い光を放ってる。
「あれは蛍光灯」
「それも誰かが言ってたんですか?」
横になってる身体を起こした。側には真っ白い服に身を
包んだ見覚えある顔。ねぇナッチ、ここってさぁ。

79 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:05
「また夢の中だ」
「そぉよぉ。それはさておきこの白衣どう?」
くるっと回転するナッチ。スカートの裾がふわり。
「可愛い。天使みたい」
「おっエリりん鋭いねー。これは白衣の天使の制服です」
目を細めてナッチはそう笑うけど私の頭に疑問が浮かぶ。
天使に制服なんてあるのでしょうか?
「あったのさ。昔ナース今ホスピタルコンシェルジュ」
ホスコン?あれを人間が勤めてた時代っていったいいつ?
「お熱測りまちゅよー」とナッチ。自分で言って笑ってます。

80 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:06
「これ何だ?」
ナッチの右手を見て「キャロット」と私。
「じゃあこれは?」
ナッチの左手を見て「出来損ないのキャロット」と私。
「で、エリが落としたのはどっちのキャロット?」
「どっちも落としてませんよ」
「正直者ぉ」と投げつけられて、私は何とかふたつとも
キャッチする。

81 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:07
「キャロットに限らずお野菜の栽培方法、知ってる?」
白い頭飾りを直しながら、ナッチ。もう絶対に私のこと
バカにしてるでしょ?
そんなのとっくの昔にエレメンタリーで習ってるんだから。
「ゼラチナスキューブに種を浸せばそれだけで育つよ」
そう、勝手に大きくきれいな形に育つはずなのに――。
「どうしてそっちがちっちゃいのかは解らない?」
私は素直に頷いた。

82 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/02/29(日) 12:07
「ゼラチナス栽培発明以前は、お野菜は不格好だったのよ」
左手の中を見た。そう言われてもふぅん以外に何て言えば
いい?って言うか夢の中までスクールみたいだなんて!
「もしそんな時代に戻ったとしたらエリどうする?」
私は瞬き首をかしげる。んんっ?どうするってどういう意味?
「戻ったらって発明されたものは消えないし」
「じゃあ質問訂正。ゼラチナス栽培が禁止されたら?」
騒音、振動、そして光が射す。あぁん、もう!
「不格好でもお野菜はお野菜です!」
消える寸前、叫んだ。

83 :名無血 ◆.T4PnNuODU :2004/02/29(日) 12:07
>73
(●^▽^)<読み通りの展開ですみませーん

84 :名無血 ◆N8BJks0RAo :2004/02/29(日) 12:08
>74
(●●^▽^)<オカワリ

85 :名無血 ◆N8BJks0RAo :2004/02/29(日) 12:08
>75
(●●^▽^)<シテモイイジャン!

86 :名無血 ◆DPZsBTlouw :2004/02/29(日) 12:09
>76
(●●^▽^)<これいったい何ですかー?

87 :名無し娘。:2004/02/29(日) 18:40
トリップは毎回変えるのか?

88 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:24
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

89 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:24
バイザーいっぱいに広がるNonCarrerの羅列。
私は手の甲のプラグを抜きながら、消える寸前のエリの
叫び顔を思い出して笑う。
――おかえりなさい。今日もオーバーまで居ましたね。
アサミの声が頭の中に届いた。ぺろりと舌を出して、
ごめんねのサイン代わり。
――私の時はそんなに居なかったくせにぃ。
甘ったるく消えてった言葉が、バイザーに映り流れてく。

90 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/03(水) 02:25
――明日も入るんですか?偶然を起こすんですか?
呆れたように、アサミ。私はそれを否定する。エリと
話すのは楽しいけど、あの子のセンスはもう解ったし
とりあえずは終わりにしなくちゃ。
――あら意外。もちろんセレクトですか?
こくん。感じるでしょ?あの子はきっとなっちと一緒で
アサミと一緒。遥か遠いterraを愛せる存在。
「だからラストプレゼント。2013C-42A-8をお願い」
さっきのと違うプラグがふわりと浮かぶ。手の甲へ
差し込むと、バイザーにミニチュアの街並が映り込んだ。

91 :名無血 ◆5Zw4Kn/jfI :2004/03/03(水) 02:25
>87
(●●^▽^)<美しいトリップを探してトリップ中ですよー

92 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:45
スクールに着いたばかりの私にオフィサールームに来なさいと
メッセージ。
何ですか?それはつまり、朝から怒られるってことですか?
「失礼しまぁす」
ノックと小声の挨拶で開けたドアの先に、見えた見慣れた姿。
「アイ?」
「遅いよエリ。待ってたがし」
そう答えるアイの顔は笑みをたたえてる。そりゃアイは
品行方正才色兼備文武両道風紀委員でオフィサールームの
常連かも知れないけど、私は何も持ってない子ですから。
緊張なんです、嫌な予感です。

93 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:46
(●^▽^)<上のは失敗…ごめんなさい…

94 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:47
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

95 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:47
スクールに着いたばかりの私にオフィサールームに来なさいと
メッセージ。
何ですか?それはつまり、朝から怒られるってことですか?
「失礼しまぁす」
ノックと小声の挨拶で開けたドアの先に、見えた見慣れた姿。
「アイ?」
「遅いよエリ。待ってたがし」
そう答えるアイの顔は笑みをたたえてる。そりゃアイは
品行方正才色兼備文武両道風紀委員でオフィサールームの
常連かも知れないけど、私は何も持ってない子ですから。
緊張なんです、嫌な予感です。

96 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
「えっ?」と聞き返してしまった。「私達が?」
「そう。我がスクールからの今年度トレーデストよ」
アイを見ると、アイもこちらを見ていた。信じられない。だって
アイはさておき私は成績優秀でも運動抜群でもないのに。
「でね」先生が首をひねった。「行き先のスクールだけど」
「中央のスクールですよね?」
さらりと言うアイ。そして気づく。こいつもしかしてトレードを
意識してた?独りだけ先に中央へ行く気だったな?
アイを横目で睨むとウィンクで答えて来た。ちろと舌を出して。

97 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
「それが違うの。あの貴方達、宝塚歌劇団って知ってる?」
「はぁ」
「そこの養成スクールなのよ。中央は何を考えてるのかしら」
呆れたように、先生。アイはいつも以上に目を見開いてて、
私は口唇の端が釣り上がるのを止められない。
「だから無理強いはしないわ。貴方達、嫌だったら――」
「行きます!」
即答した。そして、私とアイの答えがきれいに重なってた。

98 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:48
何だって言うの?ここのところの私の回りの素敵な出来事は。
まるで偶然がわざとに、必然にされて集められているみたいで。
窓の外からはちょっときつめの太陽灯。目を細めながら出した
結論は、そうねきっと春だから。
平均普通の私、何もないエリにも春が来たってことで。

99 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/04(木) 07:49
(●^▽^)<レスがなくても何のそのー

100 :名無血 ◆LyaWUwpkA6 :2004/03/04(木) 07:50
(●^▽^)<げっとひゃくー

101 :名無し娘。:2004/03/04(木) 15:20
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

102 :名無し娘。:2004/03/04(木) 17:10
( ^▽^)<しないよ

103 :名無し娘。:2004/03/04(木) 17:46
>>89
NonCareer?

語り手が変わったときは分かりやすく印を付けた方がいいと思う。

104 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:38
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

105 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:39
ふと、目が醒めた。何だか眠り過ぎたように重い身体。
アクアベッドから起きあがって壁を見れば1015時って。
え――――っ。
飛び起きた。ミキってばどうして起こしてくれないのよ
と横のベッドを見れば空っぽ、というか使った形跡無し。
そして思い出す。
ミキってばトレーデストとやらに選ばれたとか選ばれない
とかで、昨日から地方区のシニアに0100月間行かされるん
だか行かされないんだか言ってたよな言ってないよな。

106 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
着替えをしながらゼリーミール。瞬間で食べ終わって
ホント便利。ブレザーをはおりバッグを背負って、どうせ
遅刻だけど、ゆっくりするのは性に合わないから飛び出した。
ラッシュアワーも過ぎてがらがらのウォーカーをスカートの
裾を抑えながら走る、走る。
そんな間に頭をよぎる記憶。もやがかかったうっすらな記憶。
あの夢の中の、白いワンピースの娘は、誰?

107 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
スクールに駆け込んでも早足のままに目指すは私のクラス。
見たことない子が今まさに開けようとしてるドアに手をかけ
「ごめんね」
呟いて飛び込んだ。みんながきょとんと私を見たかと思えば、
直後大爆笑。マキもリカもお腹を抱えてけたけたくすくす。
「アヤ、あんたどこからトレードされて来たのさ」
はいぃ?
リカが指差す先、ボードに書かれたERIの文字。ぴん、と来た。
さっき廊下に居た子がミキの代わりのトレーデストなんだ。

108 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:40
「エリです。よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる様が可愛い過ぎて、シニアの子とは
思えない、なんて思っていたら。
「シニアは04の月からで、今はまだスクール通いです」
ちょっと待って。じゃあミキはもう一度スクールに行かされて
いるわけ?
「私達とトレードされてるなら、きっとそうだと思います」
「まぁミキは地図の上下も解らない娘だからアリだよね」
マキがそう言って、クラスはまた笑いに包まれた。

109 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/11(木) 21:41
エリちゃんは空席、つまりミキの席、つまり私の隣に座った。
「こんにちは」の言葉に私もサービスと微笑みでいっぱいの
「よろしくね」を返す。あは、紅くなっちゃった。
「どう、宝塚?」
「緊張します。皆さんシアターで見たことある方ばかりで」
消え入りそうな声で言い切った。私の目を見ながら。ぴょこんと
芽生える悪戯心が語りかけて来る。からかっちゃえって。
「本性はみんなぐーたらだから幻滅するよ、きっと」
エリちゃんの耳に唇を寄せ、吐息をあてるように、囁いた。

110 :名無血 ◆WxIKIDfelM :2004/03/11(木) 21:41
>101
(●●^▽^)<オイシー

111 :名無血 ◆f0eEKYr9QM :2004/03/11(木) 21:41
>102
(●●^▽^)<したりしなかったりですよー

112 :名無血 ◆FCIZ4ZgtQI :2004/03/11(木) 21:42
>103
(●●^▽^)<通信が切れたって意味ですよー

113 :名無血 ◆TNtxZb.j4Y :2004/03/11(木) 21:42
(●^3^)三● プッ

114 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:03
放課後、私はエリちゃんを連れて家へ帰る。
なんと学校の席だけじゃなく、寮でまでミキの部屋を使う
らしい。エリちゃんが大人しそうな子で良かったと心から
思った。一ヶ月くらいなら仲良くやれるよ、きっと。
「じゃあミキはエリちゃん家に泊まってるのかな?」
「……たぶん」
指をくわえながら、エリちゃん。ミキってば釣り目で
気が強そうなくせに実は人見知りだから、相当胃とか
痛めてるんだろうな。そう思ったら笑ってしまう。ふふっ。

115 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:04
「……豪華で質素ですね」
私の部屋に来てエリちゃんはそう言ったきり黙って
しまった。
「これがあの派手な宝塚の裏側です」
飾り気のない部屋に、ずらりと並んだ服だけが華美で。
「今日一日どうだった?」
「楽しかったです」
小さなテーブルをはさんで向かい合った。
お互いのことを訊き話し、たまにしんとした空気が
流れたりする。それでも居心地が悪くないのはきっと、
エリちゃんが良い子だからかな、うん。

116 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 00:04
クロックが2230時のベルを鳴らし、私達はアクアベッドの
スイッチを入れる。体を浸しながらスピーカーを通して
会話を続けながら、やがてあの子の寝息が聞こえだすまで。
そして私も瞳を閉じる。
胸の上でゆるく指を組んで、行き先は夢の中。
夢の、中へ…。
「ふえっ!?」
鼻をつままれて、起きた。

117 :名無血 ◆dLiN3EYkn. :2004/03/23(火) 00:05
(●^▽^)<忘れた頃に更新ですよー

118 :名無血 ◆ZAjQvDdhIs :2004/03/23(火) 21:38
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

119 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
ぐるりと水平線。私ってば、水の上に立ってます。
そして目の前にはあの笑顔。ここのところおなじみの――。
「おっす。なっちだよ」
同じように水の上に立ってるけれど、私は驚いてしまう。
ひざからすとんと棒のようなソックス、短か過ぎるスカート、
小さ過ぎるブルーの上着はおへそを覗かせて。
「いやぁ、なっちもさ、コギャルに憧れる訳さ」
訳さと言われましても。

120 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
ナッチがぐーにした右手を出す。ぱっと広げるとぴちぴちと
魚が飛び跳ねてて、私はうわぁと後ずさり。苦手なんだよね。
「もしかして嫌い?」とナッチ。私はこくこく。
「丸い目とか青いうろことか冗談でしょ!って感じ」
「残念。…Fallen…」
突然、本当に突然、視界が真っ赤になった。水も、空も、
ナッチも、その手の中の魚も。
として停止した。ゆらゆらの波と跳ねてた魚とナッチの笑顔。
まるで造り物のように固まって――崩れた。

121 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:39
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
飛び起きた。視界に映る見慣れた光景にほっとしながら
私はおでこの汗をぬぐう。背中もぐっしょり汗をかいてて
気持ち悪さに私は脱ぎ捨て着替えを取りに行こうとする。
「あっ…」
そこで振り返りほっとする。良かった、エリちゃんは
起きてないみたい。見られたらちょっと恥ずかしいもん。
おろしたての真っ白のシャツを着て、私は暗闇に独り
ふぅと息をつく。
…憶えてない。解ってるのはすごく怖い夢だった、って
気がするだけ。

122 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:40
目を閉じ髪をかきあげる。頬をぴしゃぴしゃ両手で叩く。
何よそれ。アヤあなたシニアでしょ?宝塚トップでしょ?
スクールの子に笑われちゃうわ。
胸の動悸も完全におさまり、私はアクアベッドに横たわる。
「おやすみ、エリちゃん」
かすかな寝息に向かって呟く。そしてもう一度、瞳を閉じた。

123 :名無血 ◆A2ulM5E56A :2004/03/23(火) 21:41
(●^▽^)<……負けませんよー

124 :名無し娘。:2004/03/23(火) 22:08
誰に?何に?

125 :名無し娘。:2004/03/25(木) 00:07
負けるなよウンコ

126 :名無し娘。:2004/03/30(火) 00:21
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

127 :名無し娘。:2004/03/30(火) 01:47
だからそれをなっちに返せ

128 :名無し娘。:2004/03/30(火) 15:42
>>126
( ^∇^)つ●ウンコクエ!!!

129 :名無し娘。:2004/03/30(火) 18:28
(●´ー`)<?

130 :名無し娘。:2004/04/11(日) 14:36
むむっ

131 :名無血:2004/04/15(木) 17:13
「お名前は?」
白い服の女が言った。
「マキですけど?ってかあんたこそ誰?」
「なっちですけど」
びみょーな真似がしゃくに触る。

132 :名無血:2004/04/15(木) 17:16
「空は好き?」
はぁ?
ふざけんなと言おうとした口が開かない。風が
飛び込んでくる。落ちてるんですけど!
「えぇぇぇぇぇぇ?」
目の前の女は白いスカートを両手で抑えてて、
何かどこかで見たような映像。

133 :名無血 :2004/04/15(木) 17:19
私死ぬんだ。宝塚トップになったばっかりなのに。
「死なないよ。だって夢だもん」
えっ?
がくり、と振動。狭いアクアベッドの中で姿勢は
めちゃめちゃ。わざとかよ、って感じ。
ふと見た横には愛ちゃんがすやすや眠ってました。

134 :名無血:2004/04/16(金) 12:44
愛ちゃんはブルーストライプのシャツ着て寝てて、
さっきまでの子とはどうも別人みたい。って事はやっぱり。
「夢で良かった」
出した声がしんとした部屋に響く。覚えてるのは何となく
の見た目だけ。ショートカットで白い服だったってだけ。
どんな顔でどんな声でどんな名前だったか?
夢のお話なのに、やけに私は気になっていた。

135 :名無血:2004/04/16(金) 12:44
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

136 :名無し娘。:2004/04/19(月) 14:02
( ^▽^)っ●ウンコクエ!!

137 :名無し娘。:2004/04/22(木) 22:51
走れ。飛べ。そして更新せよ。

138 :名無し娘。:2004/04/23(金) 05:30
ふと読んだ時から気になって
読み続けています。
更新お待ちしておりますよ

139 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
一緒に練習を始めてみれば、それはもうエリちゃんもアイちゃんも
すごいもんで、最近のスクールの子はこんななのってリカもアヤも
勿論私も呆然とする訳で、ふと急に地図の上下も解らないままに
トレーデストに選ばれたミキを案じてしまったりします。
「身体を動かすの好きなんで」
照れたように笑ってそう言うふたり。私達も宝塚トップとは言え
うかうかしてられませんね、なんて目配せしあったりする。

140 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
ストライドを計り距離を決める。最初ゆっくりだんだん速く。
踏切台で思いきり飛び、空中で伸身のまま一回半横にひねる。
私やアヤはスタンドなしでも出来るけど、リカはスタンドなし
じゃ思いきり踏み切る事も出来ない。
「リカはアイドル路線だけで飛べずに満足するつもり?」
「しないよ」とリカはべっと舌を出す。「そんなつもりない」
遠くからリカがぎゅっと拳を握るのが見えて次の瞬間、リカは
スタンドの無い踏切台へと助走を始めた。

141 :名無血:2004/05/08(土) 14:04
残念ながらリカはおっきいおしりで着地しちゃって「ふぇっ」
なんて高い声を上げて私の笑いを誘うけれど。
「マキ!」
アヤが青い顔で「見て」と指差す先、まだリカちゃんが座ってる
エアシートを目がけて助走する姿が見えた。アイちゃんだった。
絶対ぶつかる。なのにアイちゃんは止まらない。そのままリカに
向かって踏み切り、飛び越すのかと思いきやまるでタックルの
ようにぶつかりふたりはごろごろんと転がる。
「ちょっと何すん――」
リカが怒りの声を上げるのとほぼ同じだった。それまでリカが
居た場所の上に、天井からライトがぐしゃりと落ちて潰れた。

142 :名無血:2004/05/08(土) 14:05
「天井のライトがぐらついてんのが見えたんで」
助けたはずのアイちゃんが真っ青な顔で言う。それもそうかも。
ちょっと間違えば自分も巻き込まれてたんだから。怖いな。
トレーニングはちょっと騒然、授業も中断、私とアヤとエリちゃん、
壁にもたれて落ち着こうとする。
メディカルに念のため運ばれたリカちゃんとアイちゃんを想って
みたり。ふぅと息つく。初めてだよ、こんな体験。

143 :名無血:2004/05/08(土) 14:05
ふと気付くと知らない人が居た。白くタイトなスカートとジャケット、
整った顔つき、ショートカットの髪のすべてが凛々しい美人さん。
歳は私達より十歳は上っぽい見た事ない人。誰?
先生との会話にこっそり聞き耳たててると、どうもから中央から来た
人っぽかった。ってか中央凄過ぎ速過ぎ。もう人を寄越すなんて。
私はぼ――っとその人を見ていた。こんな人絶対知らない、なのに
見た事ある気がする。何よそれどういう事か自分でも解らない。
回りに視線を移せばエリちゃんもアヤもその美人さんを見ていた。

144 :名無血:2004/05/08(土) 14:06
(●^▽^)<ウンコスキスキ♪

145 :名無し娘。:2004/05/12(水) 20:43
こらこら

146 :名無血:2004/05/16(日) 10:19
ふいにその人がこっちを見た。でも私を見なかった。
誰を見てるんだろ?この中で顔が知られてるのは私とアヤ。
じゃあアヤだ。そう思ってアヤを見れば、私の想いが
伝わってたのか、ふるふると首を横に振る。
「エリちゃん?」
「はい」
エリちゃんは前を見たまま。
「視線を感じる?」
届けると消えそうに小さな声で「感じます」と返ってきた。

147 :名無血:2004/05/16(日) 10:20
メディカルに行けばなごやかに話し合あってるリカと
アイちゃん。こっちの気も知らず笑顔なんか浮かべてる。
「ダイのオトナがだよ?もうね、気になって」
「素敵やよ」
何の話?と訊けば、さっき中央から来たっていう美人さんが
ふたりの様子を見にここに来たって。しかもふたりも私と
同じようになんかDeja-Vuを憶えたらしい。既視感。
「え、私もそう思ったよ」
「あの。私もです」
アヤもエリちゃんも。なんと五人全員だった。ふぅと息つく。
「あれ誰?」みんなの声が揃った。

148 :名無血:2004/05/16(日) 10:20
ヒューマノイドよ、と後で先生に教わった。常に中央と
電波交信で情報交換しているそうで、だから今日の対応も
速かったのねとなんか納得。
「モデルはおるんですか?」と訛りまじりでアイちゃん。
そっか。確かにヒューマノイドならモデルとなった
ヒューマンが居るはず。
「さぁ」先生はそう言ってため息をつく。「それより次作の
ダンスレッスンはどこでしたら良いかしら?」
ふっとミキの顔が浮かんだ。
「主役が帰って来てから考えましょう」と苦笑いを浮かべた。

149 :名無血:2004/05/16(日) 10:21
「もう次の作品って決まっとるんですか?」
夜。アクアベッドの向こうからアイちゃんが私に問いかける。
私はやや時間を置いての返事。
「決まってるよ。次はミキが主役なの。これ絶対秘密」
「ミキさんってマッキング・ゴールドでは悪役でしたよね」
「そう」リカを襲う男役。好演でした。「どう思った?」
「これ絶対秘密ですよ。悪役がすっげぇ似合っとりました」
「伝えとく」と言うとアイちゃんは悲鳴を上げた。
「これも絶対秘密だよ」私は声をひそめる。「次のって
実はマッキング・ゴールドの続編。悪役主役Version」
アイちゃんの唾を飲む音が聞こえた。ごくりって。
「タイトルは、逆の立場から見えてくるもの、って事で」

150 :名無血:2004/05/16(日) 10:22
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

151 :名無血:2004/05/16(日) 10:22
(●^▽^)<トリップの文字列忘れちゃいましたー

152 :名無血:2004/05/21(金) 21:10
「エリ」
鼻をつままれた。つまんでる相手は猫のようなブラックの
タイツに身を包み頭にはスコープをつけてる。けれどその顔は
見慣れてて、そして何だか懐かしい。
「ナッチ」
「久し振り。エリは元気そうだね」
いつもと違う、と気付いた。ナッチの笑顔が弱々しい。
嫌だ取り戻してよあの極上の、天使の微笑み。
「ナッチは元気じゃないの?」
「あんまり」と髪をかき上げて。「手痛いミスしちゃった」
ミス?

153 :名無血:2004/05/21(金) 21:10
「セルフコントロールミス」
私の前にはナッチだけが在って、その他には何もない。
突然。
「異常に気付くのが遅れてあやうく殺しちゃうとこだった」
無数の光の点が生まれて、すごい速さで私達の廻りを駆け巡る。
「時間が無いの」
「ジカン?」
やがて光はひとつに集まり、大きな青い球になる。そして
ナッチと私の真上で止まる。すっごく、きれい。ため息出ちゃう。
「これ、何」私は指差した。
「terra」ナッチも指差した。「永遠に辿り着けない到達点」

154 :名無血:2004/05/21(金) 21:11
そっとナッチが一歩近付いた。私は黙って見ていた。
「エリの夢、知ってる。宝塚に入りたいんだよね?」
こくりと頷く。そんな私の頬にナッチが両手を添える。何となく
何が起こるか解った。私はそのままで居た。
「なのにごめんね。急だったからエリしか見つけられなかった」
べっ、とナッチが舌を出す。舌の上には青い光。サファイア?
ナッチの顔が目の前にある。私は瞳を閉じる。唇にむにゅっと
触れる感覚。口の中に柔らかいものが入って来る感覚。
んっ。
何かが喉の奥に落ちた。きっとさっきの青い――。

155 :名無血:2004/05/21(金) 21:11
ナッチの顔が離れ、私は唇を手の甲でこする。
「待ってる」ってナッチが言った。「エリが来てくれるの」
また来ても良いって訊いたのは、ナッチだったのに。
視界がぼやける。すべてがラスタースキャナイズされる。
揺れる世界、鳴り響くノイズ、つままれる鼻。
「こら!」
瞬きの向こう、ほっぺをふくらませて怒ってるのは……アヤさん?

156 :名無血:2004/05/21(金) 21:11
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

157 :名無血:2004/05/21(金) 21:12
(●^▽^)<誰かが言ってたって、誰かが言ってた。

158 :名無血:2004/05/22(土) 12:08
鼻をつまんでもエリちゃんはぼうっとしてて、私はほっぺを
ぷっくらさせる。0002日目から遅刻させちゃう訳にはいかない。
「速く用意しないとスクールに遅れるよ」
でもエリちゃんの瞳は空中に焦点をあわせ薄く唇をあけてて、
何だか私はつまんだ鼻から手を離すタイミングを見失う。
「私、中央に行ってきます」
突然の言葉。口で息しながら濁点を多くしてエリちゃんが言う。
「え?何よそれ何なの何よ。って言うかスクールは?」
「今日はお休みになります」
「はい?」
にこりと笑うエリちゃん。パジャマのまま飛び出していった。

159 :名無血:2004/05/22(土) 12:09
よく解らないまま歯磨き顔洗い着替えてスクールへ。
クラスの前にはマキとリカとアイちゃんがつっ立ってた。
「お休みだって」
「しかも私達のクラスだけ」
見れば古臭いことに貼り紙なんかがあって、ダンスコントロールも
シングコントロールも、私達のクラスだけ異常発覚らしい。
「エリちゃんの言う通りだった」
「あれ?そう言えばエリは今日はおらんですか?」
アイちゃんに訊かれた私は首をかしげるジェスチャー。
「中央に行くって、パジャマのまんまで出かけていった」
「はい?」
「とりあえずお茶する?」マキが言って、私達はあっさり賛成。

160 :名無血:2004/05/22(土) 12:09
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

161 :名無血:2004/05/22(土) 12:10
ライトムーヴへ飛び乗る。行き先は「中央」へ。光の速さで
辿り着き、なのにお金も請求されない。解ってしまった。
今の私は特別なのだ。
きっとあの青い光。ある程度なら、思った事を思った通りにして
しまえる。大金持ちにも、何か権威ある行動も出来る。そして私は
それを「中央」へ向かう事に活用していた。0001秒でも速く。
ウォーカーを歩く人の間をすり抜けた。おじさんおばさん達が
私の事をじろじろ見てる。へへん、可愛いでしょ?このパジャマ。

162 :名無血:2004/05/22(土) 12:10
首が痛くなるほど見上げても、先端は消失点になってて見えない。
全面がシャインフィルタになってる超巨大なタワー。写真でしか
見たことなかった「中央の中央」。この☆の総べてを司る場所。
サンダルをからころ鳴らしゲートへと歩く。ゲートの横には
ガーディアンのようなヒューマノイドが02体、微動だにせず。
「おい、危ないぞ!」
太ったおじさんが私に声をかけるけど、何言ってんの?って
感じで私はあっさりゲートをくぐる。最上階目指して
エレベーターカプセルを探してきょろきょろ。何だかゲートが
うるさいなと振り返れば、さっきのおじさんがガーディアンに
入館を止められているのが見えた。

163 :名無血:2004/05/22(土) 12:11
「最上階に行きたいんですけど」
受け付けにいる美人さん、きっとヒューマノイドの彼女に訊くと
「あちらです」と教えてくれた。昨日宝塚スクールに来た人とは
別人だけど、世界には色々な美しさがあるんだよね。
ふわりと体が浮く感覚。デジタルカウントが見る見る上昇していき
7230で止まった。ドアが開いた先には、ギャリルドゥグラス。
壁に床に天井に私の姿が何重にもなって映ってる。そしてまたドア。
ドアには無数のタッチキーパネルと短い文章があった。
 
      Please Enter Pass Word
 

164 :名無し娘。:2004/05/23(日) 17:33
ほほう

165 :名無血:2004/05/23(日) 23:11
ためらいも悩む暇もなく、私は思い付くままパスワードのキィに
手を這わせ指をすべらせる。頭をかすめたキィワード。

 h o h o u

なのにうんともすんとも言いません。開きもしない、警報が鳴る訳
でもなく。ちろりと唇に舌を這わせた。乾いてる。あれ?
やがてエージアウトして入れたワードが消えた。私はふぅと息つき
リトライすべくリタッチする。

166 :名無し娘。:2004/05/24(月) 21:06
それで?

167 :名無血:2004/05/25(火) 08:03
なんでそんな事考えたんだろう?頭をよぎってくんだろう?
絶対違う。心の中のそう訴えるサイン。でも、と私は手をかざす。

 s o r e d e ?

やっぱりドアは開かない。解っていたんだ、でもちょっとだけ
恥ずかしくて、照れてうつむき、唇を噛む。こらっ。
そもそも問いかけってどういう事?
自分に聞いても答えは返ってこなくて、そしてエージアウト。

168 :名無し娘。:2004/05/25(火) 17:15
きゃめい

169 :名無血:2004/05/26(水) 08:01
「名前…そう、名前なのよ」と呟く。
ドアの向こう宛てでもなく、誰宛てでもなく、自分宛てでもなく。
うっすらと光を放つ壁の文字列に人差し指を尖らせ走らせる。

 c a m e i

打ち込んでから気付く。私の名前じゃ、ない。服を着替える時を
惜しんで来たってのにその時使って何をやってるんだか。
キヤメイの並びを見つめているとやがて融けるように消える。
「違う。呼ばれた私じゃなくて、呼んだ――」
また呟いてしまう。

170 :名無し娘。:2004/05/26(水) 18:45
なっち

171 :名無血:2004/05/27(木) 08:05
今まで何度も会った彼女。なのに記憶に残らない彼女。
そして今、青い光を受けた私の中で大きな位置を占める彼女。
そう、きっと彼女が答えなんだわ。
 
 n a c c i 
 
音も無くドアが開き私はサンダルをからころ鳴らして中へ。
結構歩かされた先、うっすらと影が見えて来る。椅子に座り顔の
半分をバイザーで覆った小さな女の子とその椅子に寄り添って立つ昨日
宝塚のスクールに来た美人さんの姿。
「思ったより遅かったね」バイザーの下で唇が動く。「ようこそ、エリ」
「お待ちしておりました」と美人さんが微笑み。
私は小首をかしげてウィンク。夢の外で会うの初めてだね、ナッチ。

172 :名無血:2004/05/27(木) 08:05
後ろでドアが閉まる。薄暗い部屋の中、赤や青のライトがあちこちで
点滅してる。無数のケーブルがナッチ達の後ろに散らばっている。
「いっぱい間違っちゃた」
「見てたよ」と言うナッチの声が笑ってる。きっとバイザーの下で瞳も。
私も舌を出してはにかむ。美人さんも手で口を抑え微笑む。
「エリ」
「んっ?」
「来てくれてありがとう。でも本当に良いの?」
本当に良いの?その言葉が私の胸にちくりっと刺さる。
あの夢の中で教わった。夢があるのにごめんねってナッチが言った。
つまりそれは私の未来が夢が変わってしまうって事。

173 :名無血:2004/05/27(木) 08:06
「良いよ」呟いたはずの言葉がやけに部屋中に響いた。「だってもう
青い光も飲み込んじゃったし」
「まだ吐き出せるよ」
「モグモグモグモグ、ウェーウェーって?」
「そう。モグモグモグモグ、ウェーウェーって」
時間が止まったような一瞬の沈黙が来て、そして一瞬で去って行く。
ナッチのバイザーにライトが映り込んでいる。
「夢は叶ったもん。宝塚の養成スクールに入る事できたし。それに」
「それに?」
「昔教科書で見た青と緑の★、とてもきれいで大好きだった」

174 :名無血:2004/05/27(木) 08:06
(●^▽^)<正解は出ないかと思ってましたー

175 :名無し娘。:2004/05/27(木) 08:50
新井素子を思い出した

176 :名無血:2004/05/29(土) 10:40
「最初から説明するね」
すっ、と部屋が真っ暗になった。かと思ったらいきなりぽつんと
小さな光が浮かぶ。ぽつん、ぽつん、ぽつんと無数に広がる。
「これが世界」
「セカイ」
「中心を見てて」と言われ私は、頷き顔を上げる。
くるくると回るのは、ちょっとだけ大きな炎の球。やがて炎は
小さくなって、消えて、茶色の球形になる。でも止まらない。
冷え続け凍り、溶けて青になり、青の側に緑が産まれる。
回りの光は光のままで、中心のそれだけが変化し続けてる。
「もしかしなくてもこれってterraだよね?」
「Yes.でもまだ終らないよ」
んっ?色が濁り出した。緑が黒に、青が赤に。そしてterraの
横にぽつりとシルバーの点が産まれる。シルバーはやがてterraと並ぶ
大きさの球になると、完全に黒くなったterraから離れ進み出した。
「これが私達の今居る場所、shipです」
あっと言う間の物語。terraの歴史なんて、私の青春の1ページの、
その1行にも満たない速さ。

177 :名無血:2004/05/29(土) 10:41
のろのろと進むshipを、ぼんやりと眺めてた。スクールで私達は、
故郷の星を離れ旅を続けるうちに、次の移住地を発見し今こうして
住んで居ると習ったのに。
「旅立ちはもう6000年も前の話。真実は消える様に忘れられました」
こんな大事な事を大の大人が忘れるものなのでしょうか。
「はい。旅の結末の統べてをナッチに委ねて」
視線をshipからナッチへ移す。バイザーで表情は解らないけどこんな
小さな子に…って違う。こう見えてナッチは6000年生きてるんだ。
「生きてるよな生きてないよな」
どゆ意味?
「なっちも実は0005人目なのさ」
ぴん、と来た。つまり私に遺志を受け継いで欲しいって訳ね。
0006人目のなっちとして!このshipを統べて!

178 :名無血:2004/05/29(土) 10:42
「もしだよ、もし。もし私が断ったらどうするの?」
「デリートかな。そして急いで次をセレクトする」
それは怖い話です。
「ライト点けて欲しい」
言うなりshipとterraが消え、真っ暗から真っ白になり、私は
「ひっ」と声を出してしまう。無数のケーブルがナッチの手に
足にコネクトされ、指先を動かすのすら戸惑うんじゃないの?
「そうでもないよ」とナッチは指を持ち上げる。「驚いた?」
「驚いた」
私は頷く。夢の中のナッチと違い過ぎるもん。
「バイザーも取ろっか?」
ゆっくりと指先が持ち上げるバイザーの中に剥き出しで回路とか
配電線がちらと見え、私は瞳を閉じた。

179 :名無血:2004/05/29(土) 10:42
No.0001へ選ばれたのは夢の中のナッチ。
「私達の役目はshipの中の1億2千万人の保護です」
No.0002には背の小さな金髪の娘。
「そしてそれは第二のterraを見つけるまで終わりません」
No.0003の目が離れた少女。
「ナッチがセレクトした誰かがナッチと共にnacciとして」
No.0004が八重歯で舌っ足らずの子。
「そして私はNo.0005として0800年程、ここで過ごしました」
美人ヒューマノイドさんの声が透き通る響き渡る胸を掴む。
もうキャロットが食べられない。カフェでアイスラテも飲めない。
シアターで宝塚も見れない。もう家族にもアイにも会えない。
でも、ね。――それはそれでええやんって、誰かが言ってた。

180 :名無血:2004/05/29(土) 10:43
「受け入れてもらえそうですね…すみません」
美人ヒューマノイドさんが私の瞳を覗き込み言う。まぁ、デリートは
嫌ですし。ここに来てたった0005分。せめて少しでも前向きにね。
「私が頼り無かったばっかりに結論を急がせてしまって」
美人さんの髪が指の端が足の爪先が薄くなった?気がした。
「でもこれで大丈夫、完璧です。これできっと」
気だけじゃない。実際に薄くなっていき砂の城のように崩れる。
ナッチは知ってたかのように微動もせず。もしかしてあの青い光を
私に渡してしまったから?根拠なんて無いけどそんな気がした。
突然の真実、突然の交代劇、突然のサヨナラ。突然過ぎる。
「一族は滅びない」

181 :名無血:2004/05/29(土) 10:43
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

182 :名無血:2004/05/29(土) 10:43
(●^▽^)<気分が良くなってきたので歌を歌います

183 :名無し娘。:2004/05/30(日) 15:16
エントリーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

184 :名無血:2004/05/31(月) 08:03
(●^▽^)<春はお別れの季節です♪みんな旅立って行くんです♪

185 :名無血:2004/05/31(月) 08:03
「おはよ。なんか眠そうだね」
「太陽光が出るまで勉強してたからね。今日マセマティクスの試験だし」
「げっ!今日だっけ?」
「今日だよ。もしかして勉強して来なかったとか?」
「そのもしかしてでございます」

186 :名無血:2004/05/31(月) 08:03
(●^▽^)<淡く色づく桜♪花びらもお祝いしてくれます♪

187 :名無血:2004/05/31(月) 08:04
「アイスオレとアイスラテとアイスエスプレッソで1700Yenになりまぁす」
「別々ってお願いできますか?」
「できませぇん」
「じゃああたし代表して払う。このカードから引いてください」
「ありがとぉーございましたぁー」

188 :名無血:2004/05/31(月) 08:04
(●^▽^)<ずっと仲良しで居てくれた♪刻は想い出の宝物♪

189 :名無血:2004/05/31(月) 08:04
「ミキちゃん。お父さん、晩ご飯ですよ」
「わぁ嬉しい。私、お肉大好きなんです。いただきまぁす」
「ミキちゃんみたいに喜んでくれる子が居るとおばさんも作り甲斐あるわ」
「やっぱり若い子が居ると食卓が賑やかで良いな」
「…じゃあ明日はミキ特製パスタをご馳走しますね、おじさま、おばさま!」

190 :名無血:2004/05/31(月) 08:05
(●^▽^)<そんな悲しまないで♪目の前の階段を上るだけ♪

191 :名無血:2004/05/31(月) 08:05
「落ちぶれましたわねマキさん。宇宙刑事は私ひとりで充分ですわ」
「貴女に全然かなわない。成長したわね。さぁリカ、私をデリートなさい」
「もう思い残す事はなさそうね。マッキング・メガフォン、転送!」
「あは、雲間から太陽灯が射し込んでる…。雪は止んだ、か」
「それではさようなら。フレッシュ・ヴォイス!」

192 :名無血:2004/05/31(月) 08:05
(●^▽^)<そうよ手を振って♪だめよ泣いたりしちゃ♪

193 :名無血:2004/05/31(月) 08:06
「マキさんアヤさんリカさん。アイです。スクール卒業して正式に入学しました」
「待ってたよ、久し振り。こちらこそよろしく」
「はい、よろしくお願いします!…でも何か変な感じなんですよね」
「あ、アイちゃんも?実は私も気持ちがもやもやしてるんだぁ」
「この時の喜びを分かち合える誰かがおったような気がするんやけど…」

194 :名無血:2004/05/31(月) 08:06
(●^▽^)<あぁいつまでも私達は振り向けばほら友達♪

195 :名無血:2004/05/31(月) 08:07
壁を埋め尽くす無数のモニターが0001秒おきに映像を切り替える度、
自分達がshipのクルーと知らない1億2千万の姿が映し出される。
その中にささやかな哀しみやひそやかな不幸せを見つけると、
ナッチは「7463F-21M-6をお願い」と声をかけ私がそれを差し出す。
ケーブルを替えればそれは、さりげなく緩和され、私達は微笑みを浮かべる。
偶然と必然を司りながら、まだ見ぬ故郷に思い馳せ――。

196 :名無血:2004/05/31(月) 08:07
This Is A True Love Story.
Mothership Continued Everlasting Voyage.
In Another Time, In Another World...

197 :名無血:2004/05/31(月) 08:08
(●^▽^)<じゃあね!

198 :名無し娘。:2004/05/31(月) 17:30
またね
その顔文字好き

199 :名無し娘。:2004/05/31(月) 23:59
テンポがよくて面白かったよ

200 :名無し娘。:2004/06/04(金) 02:54
急に終わったな、つらかったのか?
まー乙。

201 :名無し娘。:2004/06/10(木) 21:22
じゃあね!

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