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リタリン飲んでる?

1 :リタリン:2004/02/01(日) 05:25
リタリン白い錠剤飲んで日々娘。生活営んでいるかた。
いるかなぁ・・・?

45 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:51
「お昼食べないの?」
と聞くと、カオリはやっと我に返ったのか、「あ、そうだ」と小さく叫んで
走り出した。その衝撃で机がガタガタと揺れ、机の右上の端っこに置かれて
いたカオリのノートは落ちそうになったがなんとか耐えて、そのまま机の上
に不安定な形のままでキープされた。

ドタバタとスタジオの端に置かれているお弁当を取りに行くカオリの後姿
は、でかい。迫力がある。でも、それに似合わずカオリは繊細だった。
詩とかそういうものが好きらしいんだけども、他人にそれを悟られたら馬鹿
にされると思っているらしい彼女の作品は(まあ、大体馬鹿にされる)、毎
回、笑わない、反応しない、あたしが見るという迷惑極まりない事態になっ
ていた。

46 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:52

カオリ曰く、足りないそうだ。
自分の存在に対して、今以上のものが必ず自分の中にはあると信じていた。
例えばそれはカリスマ性だったりするらしい。
そういう才能を彼女は自分で隠し持っていると確信していた。
前にそう言ったカオリに隠してたら意味無いじゃんと言ったら、見てない人
にはみえないのと、そのでかい図体でさらに肩を怒らせて威嚇してた。
それって裸の王様ってやつ?とさらに追い討ちをかけようと思ったけど、さ
すがに殴られそうだったので言うのを止めた思い出がある。

47 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:53
お弁当を選んでるカオリの姿を眺めてると、うずうずと左手首が疼きだし
た。かゆい。そう昨日あれだけ圭ちゃんが幸せそうにしていたのであたしは
軽く自分の左手首をカッターナイフで傷を付けてみたのだ、それはただ痛く
てうっすらと血が滲んだ後、痒くなっただけで腹立たしくなった。その行為
は、あたしには絆創膏を張った左手首を残しただけだった。

昼時ということでスタジオはざわざわと騒がしく、うるさい。でも、急にそ
のうるさいまでに飛びかってる会話が聞きたくなった。正直に言えば恋しく
なった。その中で何事もないような顔してお弁当を食べたいと思った。だか
ら、耳を澄ませて集中する。

だけど、わかるはずの日本語の単語は1つも明確に掴めなかった。
圭ちゃんやカオリの言葉はまだわかるというのに。ウンザリしたので、諦め
てお弁当を食べようと割り箸を掴み直す。うずうずと左手首が疼く、かゆい。
イライラしているうちにカオリがお弁当を抱えて帰ってきた。
「帰ってこなくてもいいのに」
「ごっちん酷い、で、カオの詩どう?」
とカオリはあたしの前に座ってポットからお茶を注いでる。

48 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:53
昨日さ、圭ちゃんと局であったよ。でさ、帰り道…。と、カオリの作品の話
を思いっきりスルーして、昨日の圭ちゃんの話をカオリにすると、カオリは
びっくりした顔をしてカオも今度お見舞いに行くよ、と言った。

カオリは、このスタジオの中にいる大人数の中で、数少ない圭ちゃんの友達
だ。それでも、カオリが見舞いに行きたいわけは、圭ちゃんが心配だから
じゃないというのは人目で解る。カオリの目には明らかに好奇心の色が覗い
ていた。

でも、だからと言って断る理由も無い。どっちかというとそういう目で見ら
れることを圭ちゃんは望んでるし。
それに今日は、これから帰りにお見舞いに行くことになっているのだ。
昨日、あの後、圭ちゃんは死ななかった。死んだと思ったけど、あれから
やって来た救急車に何故かあたしも一緒に乗せられて、近くの総合病院へ
と、あれよあれよとしてる間に連れられていった。

49 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:55

テレビドラマみたいに薄暗い無機質な感じがした廊下で、赤色に光る
「手術中」とかかれた看板を見ながら、20分くらい手術室の前の長椅子に
座っていた。ただドラマと違うのは、あたしは心配するでもなく、ただ帰り
たいと願っていたことだった。

しばらくして圭ちゃんのマネージャーが来てあたしを見つけると
「今日は疲れただろう、また明日にでもお見舞いに来るといい。そしたら保
田も元気になるよ」と言ってくれたので、ようやく帰れた。
しかし、そう言われたからには、今日お見舞いに行かなければならないの
だ。その話をすると、カオリは心底悔しそうに
「だめ。今日は無理なの、ダンスがね、うまくいかなくて、今日は居残りし
ようと思って」と肩を落とした。
「まあ、また行けばいいじゃん」と一応慰める

するとカオリは、この詩を圭ちゃんに見せて、そしたらきっと元気になる。
生というのがどういうものなのか解るよ。と、とんでもない事を言いのけ
た。鎖でですか、とその自信にびっくりしたけど、うん、わかったと真顔で
受け取るあたしもあたしだ。
だけど、圭ちゃんの場合、多分メロンとか千羽鶴とかそういうのより、喜ぶ
んだろうと思う。それに、あたしもメロンだとか千羽鶴を持っていく気は毛
頭ない。

50 :名無し娘。:2004/03/17(水) 05:55

 ★★★

51 :名無し娘。:2004/03/17(水) 06:06
真っ白の部屋の中。圭ちゃんだけが寝ている部屋の中は、閑散としていて、
唯一色があったのは花瓶に挿された真っ赤な薔薇だけだった。

病院について、昨日は…と、文句のひとつでも言ってやろうとしたあたしの
声を圭ちゃんはかき消すと、
「今度は、憑かれなかっただけマシじゃない?」とベットの上で笑った。そ
して、左手首に巻かれた包帯を解き始めた。

「ちょっと、また血とか出さないでよ、迷惑だし。昨日だって本当に死んで
ると思ったんだから」
そうさすがのあたしも怒ると、圭ちゃんは申し訳なさそうに笑って、黒い糸
で縫われた傷跡を見せてくれるだけに止まった。グロテスクに皮膚に埋め込
まれている黒い糸は皮膚が布のように扱われていて、それが、妙に気持ちを
ワクワクさせる。

「なんか、すごいね」
「これはだってほら、象徴ってヤツ?」

と圭ちゃんが誇らしげに腕を掲げて笑ったので、こいつはまだ飽きもせずに
そんなことを言っているのかと、あたしは圭ちゃんの左腕を掴むと、黒い糸
を思いっきりひっぱって、黒い糸を引き抜いて取ってやった。

ざまあみろだと、圭ちゃんを見ると本気で悲しそうにしていたので、ごめ
ん、少々、悪い事をしたなとは思っていますという気分になって深々と頭を
下げる。
そして、ナースコールを押すことを進めるでもなく、カオリの作品を進めた。

52 :名無し娘。:2004/03/17(水) 06:08
ノートから千切られたみすぼらしい紙を、圭ちゃんは受け取るとゲラゲラと
涙を流しそうな勢いで爆笑しながらそれを読んでいた。すこしカオリを哀れ
に思った。

一頻り大笑いした後、ひーひーと苦しそうに圭ちゃんは、ホント、カオリっ
て最高だよねと言った。
いやすごい本気の顔してたよ。これを読んで圭ちゃんは生という物に感動し
反省するんだって力説してたと、先ほどのカオリを思い出しながら圭ちゃん
に伝えた。
あの時のカオリを思うと、本当に少し切なくなる。圭ちゃんは反省どころか
大爆笑だ。
「カオリもやるね。あいつも手首切ってるかもよ」
圭ちゃんはそういうとにんまりと笑った。

あたしは切りそうにもないの?と好奇心で聞いてみると、圭ちゃんはアンタ
は冷めることで楽しんでるからねと意外に圭ちゃんも洞察力というものがあ
るのだと、びっくりした。はずれてるけど。

「ところで、その花瓶に挿してある真っ赤な薔薇は何かを皮肉ってるんです
か」と、さっきから気になっていた事を圭ちゃんに聞いた。

真っ白な部屋と真っ白な顔した圭ちゃんの横の真っ白なテーブルに真っ白な
花瓶に活けてある真っ赤な薔薇は、ぬいぐるみとかが色々入ってる玩具箱に
落とされた本物の子犬みたいな微妙なリアルさがあって少し気持ち悪く感じ
て気になっていたのだ。

圭ちゃんは「さあ、親が置いていったんだけど、これが何か皮肉なの?」と首
を傾げるだけだった。

さあ、なんだか皮肉のような気がしただけです。その薔薇はいつか朽ち果て
たりするのでしょうか。

53 :名無し娘。:2004/03/17(水) 06:09

 ★★★

54 :名無し娘。:2004/03/17(水) 21:55
POPだね。面白いですよ〜

55 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:40
( ・e・)ノシ<>>54アリガトー!

56 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:41


 ★★★

57 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:44
じゃあ、また気が向いたらカオリ連れて来るね。と、圭ちゃんの病室を出た
時は夕刻時で、病院から駅へと続く道に不自然に作られた芝生が夕陽に照ら
されオレンジ色に染まっていて、更に不自然さを際立たせていた。
きっと夕陽はその芝生だけでなく町中の隙のある場所、全てをオレンジ色に
している気がして、むぁっと虚しさが込みあがってきそうになる。その雰
囲気に飲み込まれたくなくて、ワザと足元だけを見て駅まで歩いた。
帰りの電車のホームで、なっちに会った時は本当にびっくりした。なっちも
びっくりしてた。

ホームの白線の内側に律儀に突っ立て居た、あたしの肩が急に叩かれて振り
向いたら、その人、なっちが居たのだ。
彼女は違う仕事をしているみたいで今回のハローのコンサートに参加してな
くて、とても久しぶりに会った。でも別に違和感は無くて、遠くはない人だ
なと思った。そして思い出した、昨日丁度、懐かしんでいた人だということ
に。

なっちは、目を真ん丸にして、わあひさしぶり、元気してたとか、そういう
ことを言っていて、唐突に昨日のことを回想したあたしは急に、そうだ。色
水作って遊んだよね!って叫んでしまった。なっちはそういうとこ相変わら
ずだねって猫みたいな顔で犬のような仕草で、あたしを見上げ微笑んだ。

58 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:49

それで、久しぶりだからご飯でも一緒に食べようよって何でそんな話になっ
たのだろうと電車の中でふたりならんで座っている時に考えていた。無言
で。なっちも無言だから、多分似たようなことを考えているのだろう。

仕事の帰り、それも圭ちゃんのお見舞いに寄り道付きというハードな日の帰
り道で会ったというのに、しかも、数ヶ月前になにかの特番で会っていて、
久しぶりに再会しただけだったのに、何故ご飯を食べるという流れになった
のか、あたしは自分に脳内で何度も何度も問いかけている。時に責めた。時
に不思議に思った。

あたしは普段めったに誰かを誘うことをしない、たまたま会った友人くらい
じゃ、普段なら絶対誘わないのだ。なぜなら、だってめんどうとかじゃなく
て、そういうのって相手の都合を知らない状態じゃ言えないでしょうって自
分でずっと自分の言動に対してつっこんでると、なっちの方は結論がでたの
か、それとも無言に堪えられなくなっただけなのか、とても優しい笑みを作
ると「どこ行く?」と聞いた。
ああ、そうこの包まれる感じの笑顔に、あたしはいつもこうだったのだと思
い出した。

59 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:50

あの頃、兜折りたくても、鶴を折りたくても、本当は折り紙とかどうでもよ
くったって、色水って綺麗だよねって微笑まれると、何もかもが全部許され
る気がしたのだ。
コンサートで失敗したこととか、マネージャーに嘘をついちゃったことと
か、メンバーに意地悪しちゃったこととか、後ろめたい物が全部、その出来
上がった色水に混じって溶けて無くなってしまうようながしていたのだ。あ
の時は。
だから、なっちの望む遊びを、いつもあたしは嬉々としてやっていた。と今
になって、その人の魅力に惹かれていつもと違う行動をとってしまうという
ことがあるんだと解った気になる。

60 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:50
だから、あたしは久しぶりにあの微笑みを見たときに、このまま別れること
を惜しく思い後先考えずに、ご飯でも食べに行かない?なんて言うことをし
たのだ。なるほど。さて、どこに食べに行きましょう。
ああ、また悩む。そしてなんでご飯食べようなんて誘ったんだろうとまたメ
ビウスの輪のように始めの悩みに戻りそうになったとき
「んっと、なっちの家の近くにおいしいお店あるんだけど、そこいってご飯
食べない?遅くなっても大丈夫?」
そう言って微笑んだなっちは、まさにセイボ・マリヤ・ゾウみたいで、今す
ぐにでも跪いて懺悔したい気分になると、許しを請うみたいに、あたしはウ
ンウンと頷いていた。

61 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:51


なっちの住んでいるという駅は、あたしの家の駅から4つ進んだところで、
それ程遠くなかった。改札を抜けると見知らぬ街の景色が広がる。商店街が
左側にずらっと並んでいて、町全体の雰囲気が暖かい印象を持った。なっち
にそう言うと、そんなもんかなとどうでもいい様子で、商店街の中に入って
いく。

商店街と言っても街の商店街というよりは繁華街の商店街という印象を受け
る。カラオケボックスや居酒屋、ファーストフードのお店、パンチコ店、そ
んなのが良く目に付く。いらっしゃいませいらっしゃいませとリピートされ
るスピーカーは良く見ると所々、茶色の錆がついていて安っぽさを際立たせ
ていた。

なっちが連れてきてくれたお店は、商店街の入り口から2つ目の右の角にあ
る2階建てのビルで、その店は芸能人が居るとは思えないような、チープな
匂いのする居酒屋とバーが合体したお店だった。
中の雰囲気は全体的に薄暗く、威勢のいい店員がまばらに立っている、
あたし達が入ると待ち構えてたかのように店員がやってきて、その店員の
後ろについていくと、カウンターの席の前を通り過ぎた。そこに居る人達は
みんな大学生くらいの年齢の人に見える。

なっちって自分の職業知ってる?と余計な事を思っている間に、そこから
もう少し奥に引導され座敷の個室に通された。座敷に向かい合う形で、
なっちが右側に座って、あたしは左に座った。

62 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:52
メニューに表示されている品物を見ると、これが名物なのですという物も無
く全体的にサイドメニューという感じだった。
サイドメニューと言ってもパスタだとか丼ものまである。とりあえず種類が
豊富なのだということはわかるが、だからこそ何か食べたいという物がまる
で無いあたしは悩んで、結局なっちと同じ飲み物を頼んで同じ食べ物を頼ん
だ。

しばらくして元気のよさそうな面だけした、目が死んでいる店員が運んでき
た飲み物はオレンジジュースにアルコールをいれたようなやつで、つまりカ
クテルというものだった。食べ物は知ってる。
カルボナーラとポテトフライと1人前のシーザーサラダ。
粉チーズ、とどうでもいい事を呟くしかない、いつもと違う環境の中でテン
パったあたしが話せることが出来ることといえば、圭ちゃんが手首を云々、
カオリの鎖がどうたらこうたら。

63 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:53
なっちもそいつらのどうしようも無さをしっているはずだし、ハローでのコ
ンサートに参加していないなっちにしてみれば、結構、微妙な話題である。
なっちは、笑ったり、困ったり、たまに嫌そうに笑ったり、そりゃ困るし、
嫌にもなるよねってばかりの話題しかない話にも、その度にうんうんと優し
く頷いたり驚いたり、いちいち反応をくれる。
たまに上手いタイミングで寂しそうな表情を見せたりしたりするので、更に
混乱したあたしはマシンガンのように言葉を放つ。

部屋には、あたしの声が一方的に聞こえていた。この、あたしの。この無口で
通しているつもりのあたしの。声が。

なっちによってペースが狂いに狂うのだ。彼女は故意的か、そうでないかは
わからないけれど、人の話を純粋無垢な顔をして待つ。
そして話したことには大袈裟に反応した。話し好きの人からすれば良い人な
んだろうけど、話下手のあたしからすれば迷惑な話だった。

64 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:53

そもそも、なっちは何故、喋らないのか、あのウルサイなっちは何処にいっ
たんだろう。卒業してからというもの新曲は出さずに、お芝居やらドラマや
らばっかりやって、メンバーとかと会わないから喋り方を忘れたんだろう
か。
とにかく、自分の声しか響かない状況ってのは、とてもめずらしくて、あた
しは焦り、どんどん自分を追い込んだ。
「すいません、これのお代わりください」
その言葉を幾度か繰り返しているうちに、あたしは人生ではじめて無茶苦茶
に酔った。世界がぐにゃぐにゃと歪む、へらへらと多分なにもおもしろくも
ない人達、圭ちゃんや、カオリの話を永遠と馬鹿にして笑っていたと思う。
あいつら馬鹿なのって何度も繰り返してるあたしが馬鹿だと自分を罵りながら。

気付いたら終電がなくなっていた。いや無くなっていたらしい。なっちが、
手を合わせて謝っている。
「でもさ、あたしも気付かなかったから、あたしも悪いし、そんなの良い
よ。タクシー掴まるかな」
多分、言えていると思う。口から出る言葉はふにゃふにゃとしている気がし
て気持ち悪い。なっちは、ふらふら、へらへら、しているあたしを見かねた
のか目を細めて言った。
「なっちの家、一人暮らしだから今日泊めてあげるよ、明日帰ったら?」
あたしは、ここに来た時と同じように、そのなっちの仕草に首を何度も縦に
振った。

65 :名無し娘。:2004/03/19(金) 06:54


 ★★★

66 :名無し娘。:2004/03/20(土) 12:52
イイヨー。面白くなってきた。
この文体が好き。

67 :名無し娘。:2004/04/13(火) 04:23
続きはー? 期待。

68 :名無し娘。:2004/05/08(土) 18:03
そのうちなんとかなるだろう

69 :( ・e・):2004/06/19(土) 04:20
そのうち、なんとかならないものはないよな、と思った。この頃、スミマセン…。

70 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:23



 ★★★

71 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:23
お店を出て、あたしの手はなっちによって牽かれて、ふたり、こじんまりと
したマンションの下まで15分くらい歩いてたどり着いた。
うち、ここなの。そう紹介されたなっちの部屋があるマンションは、こじん
まりとしている割にハイテクで、なっちはあたしの手を握ったまま、オート
ロックの暗証番号を押し、入り口へ入るとエレベーターに乗り込んだ。

あたしは、部屋に着くまで、ここのマンションすごいねえ、とか、一人で住
んでるんだすごいねえ、さっきすれ違った人なんかすごいねえ、とか、すご
いね、を頭悪く繰り返してた。
部屋の前に立ち、なっちが鍵を開けて中に入ろうとした瞬間、つまずいてこ
けそうになり、膝から崩れ落ちた。なっちは、そんなあたしを見て楽しそうに笑うと肩を抱いて立たせてくれて
「仕方ないなぁ、飲みすぎだよ。もう早く寝よう」と玄関を入ってすぐの右
の部屋のドアを指差すとここがベットルームといって、部屋に入った。
中は大きめの真っ赤なベットがひとつ。
ベットを見た瞬間吸い込まれるように倒れたと同時に、濁った思考の渦がぐるぐると回りだしたので、それに身を任せた。

72 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:24
暗闇の中ですすり泣く声が聞こえる、怖い、お化けかと身体を硬直させた次
に真っ赤なシーツが目に入ってここはどこだと考えたら、次々に今日の事を
思い出して、そうそうなっちんちってことは泣いているのはなっちです。

やなBGMだまた寝ようと思ったけど、頭が痛くて喉が渇いてお酒臭い、
気分が悪い。水が欲しいから、なっちに話しかけた。

「どうしたの」って問うたのは、まずはそこから始めなきゃいけないんだろ
うなあと思ったからであって、考え無しだったんだけどなっちはビクッと肩を
震わせて「ごめん、おこしちゃった?」と小声で呟く。
「いやまあそんなことは、いいんだけど」
水とかないかなと聞こうと思うのになっちは話を最後まで聞かず話し出
す。っていうかなんであたしの周りは、こんな人ばっかりなのだろうと少し
悲しい、あたしは。
重い身体を起き上がらせて自分で水を探す方が早いと思うけど、やっぱり重
いから無理。で、なっちに頼むしかないんだけど肝心のなっちは、問題の本
質、何故あたしが起きて声をかけたかは忘れたみたいで見当違いのことを言
う「ごっちんの寝息がすごく寂しく感じて、なんか泣けてきたの」
そうですか。水、水飲みたい。声でない。食道が乾きに乾ききってひっつい
てるみたい。
でも、めんどくさそうなのでそのまま眠ようと思った。
あたしの人生経験においての危険を察知する触覚が、サイレンを鳴らし、鐘
を鳴らし、ねるべき、ねるべきと暗示をかけてきて、
素直なあたしはそのまま眠りの中へと落ちた。

73 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:25


次に意識が戻った時、あたしは裸だった。何故、あたしはここで、どこで、
なにをしているのだろうって混乱していると、あたしの乳首に歯を立てて顔
を覗き込んでいる同じく裸のなっちの顔を見て、悟った。
そして、ああ?ああ、あたしってば、なに、してんの。って思った。そして
自分を呪った、けど、身体はだるくて重いのに、なっちが刺激を送ってくる
たびにビクッと背筋や腰に電流が走ったみたいになって、くにゃくにゃと頭
の芯がとろける。口から、かるいため息が漏れる。なっちが触れるポイン
ト、ポイントで、何度も、何度も、吐息とともに上ずった声が出た。ふわふわ
と気分の良い、心地よさ、刺激。
唐突にやってきたけど、これってなんだか安心する感覚だよねと、静かな波
のようにやってくる気持ち良さのおかげで自分への呪いは頭の片隅に飛んで
いってしまい。朦朧としている意識はひたすら敷き詰めた綿にめり込んでい
くみたいに奥へ奥へと沈んでいく。
そして、この急に訪れた不思議な幸福感は一気に急下降して、再び自分に呪
いをかけることとなった。

 「ねえ、なっちのこと好き?」

そうあたしに聞いたなっちは、気付けば耳元に唇を這わせていて、あたしの
耳を舌でぺチャぺチャと舐めていた。

好きなわけねーだろ、や、でも嫌いでもないんだけどね。
まあなんていうか、なんでこんなことになっているのか説明してほしいけ
ど、あんまり聞きたくも無いから、もう寝ようよ。
と言いたいけど、なんだか、思考が、あたしの、自我は、そのペチャペチャ音で
ぶちぶちと途切れてしまうようで、頭の奥の方では炭酸が弾けるような音がしている。
あたしは覚醒と共に現実を逃避するかのように混沌の中へと堕ちて行く。ま
どろむ。身体が重い。胃が気持ち悪い。まどろむ。眠い。

74 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:28


圭ちゃんとカオリがぎゃあぎゃあと嬉しそうに殴りあっていた。カオリの顔
は圭ちゃんの剃刀で傷付けられ血が噴出したかと思うと、カオリは甲高く奇
声をあげ圭ちゃんの頭を殴りつけた、ふっとんだ圭ちゃんは頭を強打し鈍い
唸り声をあげると頭から血を流してお腹を抱えて笑う。カオリは顔から血飛
沫を上げてケタケタ笑う。
あたしはそれを、この人達狂ってるのだなあと思いながら、にやにやと笑っ
てみていた。あたしは立ち上がるとゲラゲラきゃっきゃと笑うカオリと圭
ちゃんを掴んだ角材で頭をぶった叩くと、割れた頭から血が、白い魂みたい
なのが出ていく。
それでも、圭ちゃんとカオリの笑い声は続いていて、そんな喜ばなくてもい
いのにと思う。カタリと音がした。振り向くとなっちは脅えたように見てい
てああ、なっちもかとあたしはめんどくさげに角材を振り上げて、なっちの
頭を割ろうと思ったけど、なっちは巧みにそれを避けて、違う違うよと言う
と、空高い晴天に向かって窓ガラスを打ち破り飛び出すと地にむかって一直
線に落ちていった。
下を見るとぐちゃぐちゃになったなっちがまた嬉しそうに笑っていた。もっ
と近くで見ようとビルから出ると空から雨が降ってきた。その雨はどしゃぶ
りになって自分の身体を打ち続ける。雨は生暖かい風にのせて、なっちを溶
かしてキラキラ輝く真っ赤な色水にすると下水道へと流していった。途端にや
りきれなくなった、あたしは、ぐちゃぐちゃに溶け合い交じり合って熱を含んだ
思考ををとめて、咽び泣く。自分を慰めようと何かとても暖かくなる言葉を吐こ
「うとあたしは口を開くが、言葉は雨にかき消された。悔しくって泣きそう。

75 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:30


暗闇の部屋の中で流れている曲は、今週テレビで癒しのアルバム第一位とか
なんとか言われた曲だった。多くの人を癒してきているであろう、その優し
い音楽に包まれながら、酷く傷ついていた。
なっちの滑らかな肌へと口付けすると、また好きかと聞かれた。馬鹿馬鹿し
くて、つい笑ってしまった。なっちは儚げに笑った。
その笑みは、するどいナイフとなり自分を切りつけるようだった。とめどな
く溢れる血の海の中、何度も何度も自分にナイフを突き刺した。そして、あ
たしの返り血を浴びてべったりと血が染み付いたなっちの肌へと舌を這わせ
た。その度に、あたしから血が流れるというのに。
なっちの肌、湿った膣に誘導されて口付ける、唇の間から舌を出しては入れ
て、その渦の中へと飲まれた。頭の芯はもうどろどろに溶けてしまって、震
えがとまらくなる。なっちはきゅっと身体を硬くし、仰け反ると深い吐息を
吐く。その唇へとあたしの唇を押し付けた。
ああ、この感覚はなんなのだ。溶けて無茶苦茶になりそうなほどに高ぶる感
情。いつまでもいつまでも肌を舐めていたい。痛い、痛い。だけどそれは、
心の痛みで。背筋に電流が走る。
なっちの滑らかな肌、湿った体温、零れる吐息、それらが話しかけてくる。
 「ねえ、なっちのこと好き?」
今にも崩れてしまいそうな笑みをまだなっちは顔に貼り付けていた。

76 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:30


目が覚めた時、横でなっちは裸で眠っていた。そしてやっぱりあたしも裸
だった、ベットの下を探ると固まった服が出てきた。とりあえず、それらを
着ようと、ベットから降り立ち上がろうとすると、頭が酷く痛んだ。
飲み過ぎたせいだろうか、自分がどれほど飲んだのかすら良く覚えて無い。
服を着ると、あたしはなっちの肩を揺すった。
「起きて、ねえ」
ん。と微かに声を漏らしてなっちは目を開けた。その安らぎきっている顔に
告げる。
「ごめん、帰るね」
5秒ほどの沈黙の後、やっと声が届いたかと思えばなっちは、雨降ってるよ
と呟いた。うん、でも、帰るよと出せた声は擦れていた。
「昨日、すごいうなされてたよ。大丈夫?」
なっちは意識を覚醒させようと、がんばっていたけれど覚醒されては反対に
困る。なっちの言葉を無視して「帰る」と一言また言ってバックを掴むと玄関へと向かった。

77 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:31
外は真っ暗で、しとしとと雨が降っていた。帰る方法も浮かばないまま、マ
ンションの階段を下りる。頭は、ぼんやりとしていて、身体の感覚が鈍く
て、自分じゃないような感じがする。ポツリポツリと落ちてくる雨に顔を向
けた。

びしょ濡れで家に着いたときはすでに朝方5時。駅近くで拾ったタクシーの
運転手はずぶ濡れでアルコールのおかげで顔が腫れてるボロボロのあたし
に、話しかけることもなく、哀れな目線を送ると家までタクシーを走らせて
くれた。
何故か今は同情の目すら嬉しかった。だから、あたしは2000円と残っている全ての力で笑みを作ると、お礼を言ってタクシーを降りた。
家の中に入ると、べたついている肌や感触を洗い流そうと真っ先にシャワー
を浴びた。
浴び終わるとリビングに向かい、キッチンに置いてあるやかんから、麦茶を
注ぐと一気に飲み干した。途端、どっと疲れが襲ってきた。
自室に入ると引きずられるようにして、泥のように眠った。それでもしばら
くの間、なっちの感触や感覚や温度が消えなくて、うなされながら夢の中へ
と落ちていった。

78 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:31


  ★★★

79 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:31

あいつらさ、どうしてそんなことをしたの? なんて聞きやがんの、そんな
のわかってたらしないっつうの、って圭ちゃんは楽しそうに声を上げて笑う
から、なんだっけ、そう、傷は神様なんじゃなかったけって聞くと。
「あ、あれもしかして本気にしたの?」
と圭ちゃんが楽しそうな顔をしたので、
「するわけないじゃん」って言い返した。
圭ちゃんの乾いた笑い声が部屋に響く。部屋の中に活けてあった真っ赤な薔
薇はまだ枯れていなかった。昨日と同じように咲いていて、よく見るとそれ
は造花だった。
「そんなのさ、何故地球は丸いのか?って聞かれてるのと同じようなもん
じゃない?そんな理由なんて無いつうの、そんなのあったら、とっとと死ん
でるってば」

80 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:32


圭ちゃんは、久しぶりに会話するみたいに、よく喋った。それを指摘する
と、ここのやつら言葉が通じんのよと眉をしかめる。すると見計らったよう
にカオリが口を開いた。
「それでさ、カオ、昨日そろそろ鎖を切るべきもしれないって思ったんだ」

81 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:32

圭ちゃんは何やら考え込む仕草をすると眉間のシワをぽりぽりとかいて唸
る。っておい、お前ら、この道化はいつまで続けんのってあれなんだけど
ね、あたしだっていつまで、どこまで道化師やってるのか正直、もう良くわ
かんないんだけど。

82 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:33


ポケットの中で、携帯がブィーンブィーンと音を立てて震えている。なっち
だろうと思う。さっき、ここに来る前にもなっちから電話がきたけど出な
かった。
携帯の振動は止まることなく永遠と続きそうに思えた。なっちはきっとまた
泣いているんだろう。あの猫のような目で犬のような仕草で。
目を上げると、圭ちゃんとカオリが何やら顔を真っ赤にして喋りあってる。

窓の外は高く突き抜けた青空が広がっていて、でも部屋の中の人工的な暖か
い温度のおかげで反対に外はとても寒いんだろうことがわかった。そして、
空から発泡スチロールみたいな雪が、静かに降っていた。
あたしはポケットの中で震え続ける携帯を窓にぶつけて外へと投げ捨てたい
と思った。

静かに降り積もる発泡スチロールで出来た雪景色を思い浮かべる。瞼を閉じ
ると現れた暗闇の世界ではスライドプロジェクターがカタカタと動いて、暗
闇に映す映像は鮮やかな朱色の夕焼けを反射させ真っ赤にそまった雪景色を
見せていた。
心臓がドクドクと息苦しいまでに叩きつけ、ドクドクと体中に血がうごめく
音がする、それらの音が自分の中を渦巻いているようで、自分が興奮してい
るのに気付く。しまいには、聞こえる訳も無い発泡スチロールの雪の積もっ
ていくキュキュキュという音と鼓動が交じり合って、ただ一定のリズムだけ
が頭に残像のように残っては消え、また現れては消えていく。

83 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:33


息を深く吸い込み気合を入ると、あたしは携帯を握り締めて立ち上がった。
しかし、腕を振り上げた瞬間その熱は一気に冷めた、急に馬鹿らしくなって
振り上げた手を下げて投げ捨てるのをやめた。すると圭ちゃんとカオリが好
奇心に満ちた目であたしを見ていて、
呆けたように突っ立ているあたしの手の中で携帯はまだ振動し続けてる。そ
れが、身体に伝わり熱となって、まるで生き物のように蠢き身体中を駆け
巡っていた。視界はぼやけていてあたしは涙を流していた。熱い。

84 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:33



 ★★★

85 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:34


  ★★★

86 :名無し娘。:2004/06/19(土) 04:37
(;-e-)<失敗したのだ…

87 :名無し娘。:2004/06/19(土) 07:40
よくあることさ

88 :名無し娘。:2004/06/19(土) 23:05
熱い

89 :名無し娘。:2004/07/08(木) 22:19
ぬぬ

90 :名無し娘。:2004/07/18(日) 10:44
たまにはネタ書いてね

91 :名無し娘。:2004/08/08(日) 19:56
もう

92 :名無し娘。:2004/09/24(金) 22:36
            【 ホジェンヌ 】

オホホホそうですわね〜奥様〜
   @*"@@σ"  "*σ・゚・"*"*@・"*σ・゚・"*"*@・゚・
・゚・@・゚・     ,' ⌒ ヽ     ⌒ ヽ      ・゚・@・゚・
@・゚・     /    ノノノヽ (_  ノノノヽ ヽホホホホここはやっぱり
@       (  ノノ´ Д`ノノ) 从#~∀~#从     保全かしら?奥様〜ホホホ
@       ヽつ.~0(ヽ     ヘ/⊂/         "@・゚
         /~  0ヽ   (//   ~ヽ       @*"@@σ" 
         ノ_i__ゝ   ノ_i__ゝ      "*@・゚
*@・゚・      ノ ) !     ノ ) !        *@・゚・
@*"@@    (_ヽ /_ノ     (_ヽ /_ノ     @・゚・・゚・@
   @*"@@σ"  "*σ・゚・"*"*@・゚・ @*"@@σ"

93 :名無し娘。:2004/11/09(火) 16:50
今日はじめて読んだ

つづき、たのむ

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0ch BBS 2006-02-27