■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50


レス数が1000を超えています。残念ながら全部は表示しません。
岡女体育祭

46 :HN募集中。:2003/11/25(火) 22:09
「レストランM&M」
「お前ら、今日レッスン終わったらちょっと時間もらうぞ。」つんく♂の声が不意に響いた。
モーニング娘。の15人全員がいぶかしげな表情を浮かべた。しかし、今はレッスンの間
の短い休憩時間である。皆余計な事を考えたくなかったのだろうか、すぐに視線を各々
の前にもどした。その後のレッスンはメンバーからこの事に関する思考を奪うのには十
分すぎるほどだった。・・・ レッスンが終わるやいなや、再びつんく♂がやってきた。
「終わったな?外にバス止めてあるから準備できた奴から乗っとってやー。」ああ、そう
いえばそんな事があったなという辛そうな顔で、全員が疲れた体をバスの座席に預けた。
「あの・・・今からどこへ行くんですか・・?」リーダーだという責任からだろうか、
飯田が重そうな口を開いた。「ん?ちょっとなぁ、メシでもおごったろうと思ってな。」
すると、緊張の糸がプツリと切れ、メンバー同士のおしゃべりがバス中に響きだした。
・・・二十分ほど経つか経たないか、バスが減速し、完全に停車した。「おお、着いたか。
皆降りてや。」つんく♂に続いてメンバーが降りていくと、明らかに皆表情が変わった。
困惑、裏切り、憂鬱、落胆。誰が見ても自分たちの前に建っているのはすこし古びた雑居
ビルだった。「こっちや、皆着いて来い。」つんく♂の後に体を引きずるようにメンバーが
続いた。

47 :HN募集中。:2003/11/25(火) 22:10
地下へと続く階段を下りていく。その途中で空調の音がし始め、つんく♂があるドアの
前で不意に立ち止まった。「ここや、ここ。」重厚なドアをグイと力強く開けると、
黄色い歓声が廊下中に響き渡った。中世ヨーロッパの城を思い起こさせるようなテーブル
とイス。しっとりとした美しさを持つ調度品。上に人が数人乗れそうなシャンデリア。
それらのどれもがあのビルの外見から想像できる代物ではない。メンバーが幸福の
眩暈を覚える中、後ろから優しげな足音が近づいてきた。メンバー全員が足音のした
方向を見ると、タキシードを身にまとったギャルソンらしい男がやってきた。
「ようこそいらっしゃいました。御席の方はこちらで決めさせていただきました。
ご自分のお名前のプレートの所へお座りください。」と着席を丁寧に促した。「今日は
特別な料理を頼んであるからな。」そうつんく♂が付け足すと、皆の期待はいっそう
高まり、メンバー同士のおしゃべりにも熱が入っていった。・・・しばらくして部屋の
ドアがノックされ、四人のギャルソンが皿を運んできた。そして全員の前に皿が置かれ
ると、入れ違いにシェフが入ってきた。「こちら、特製クラムチャウダーになります。」
シェフの言葉をよそに、笑顔と「美味しい!」という声があふれた。「こらこら、話
聞いたれや。シェフさん、この料理の説明したって。」「かしこまりました。」シェフに
よる料理の説明が始まった。

48 :HN募集中。:2003/11/25(火) 22:10
「クラムチャウダーは、元々はアメリカが発祥の地と一般的にはされています。
アメリカに渡った移住民が自国から野菜や塩漬けの肉を持ち込み、現地の魚介類と
煮込んだのが最初だそうです。今でもニューイングランド地方ではこの料理が名物で…
つまり・・・新しい一歩を標すのにふさわしい料理というわけです。」メンバーの動きが
一瞬、確かに止まった。「シェフさん、これどのぐらい具はいっているん?」
「本日は特製と言うことで、15種類の具が入っています。魚介類から野菜、スパイス・・・
様々です。目立つ具も目立たない具もありますが、どれか一つでも欠けたら、この味は
出せません。」「そうか、おおきに。」・・・場を気まずさに似た沈黙が覆った。「ほら、
冷めないうちに早よ食えや。」つんく♂が急かしたて、メンバーも我に返ったように再び
スプーンを口に運び始める。もう話し声は聞こえなくなっていた。クラムチャウダーの
暖かな湯気とカチャカチャという音だけが流れていた。そのまましばらく食べ続け、
自然とお開きとなった。明日もレッスンがあるのだ。最後のメンバーが席を立って少し
してつんく♂も席を立ち、外へ向かった。階段をのぼる途中、ふと人影が見えた。最後
の段を踏むと、そこにいたのは飯田だった。「今日はどうもありがとうございました。」
と深々と頭を下げた。「でも一ついいですか?私自分でクラムチャウダー作ったことが
あるんですけど、本当に15種類で・・・」「飯田、」つんく♂がその声を遮った。
「モーニング娘。はお前ら15人だけか?」「あっ・・・。」飯田は気づいた。自分達の
礎―中澤、石黒、市井、後藤、保田―「今日の料理、気に入ったか?」つんく♂は
いたづらを終えた後のような笑みを浮かべ、飯田に問いかけた。「ハイ!」飯田も満面の
笑みで答える。そして、二人も帰途へ着いた。・・・翌日も過酷なレッスンは続いた。
そんな彼女たちを支えている物のひとつに、あのクラムチャウダーの湯気があるのだろう。

49 :HN募集中。:2003/11/25(火) 22:14
「レストランM&M」〜飯田佳織編〜
「ほな、乾杯や。」そう言うと、つんく♂と飯田佳織は厳かに杯を重ねた。「あの・・・。」
飯田が乾杯の余韻を打ち消して声を発した。「なんで今日は私一人なんですか?」「ん?
リーダーとして普段は大変やろ?だからや。」飯田はここにいる事には何一つ疑問を持って
はいなかった。むしろほのかな喜びを感じていた。以前のあのクラムチャウダーの店。
(たぶん今日もつんく♂さんの頼んだ素敵な料理が来るんだろう。)その期待に応える
であろう、ギャルソンが料理を携えて静かにやってきた。「失礼します。こちら、本日の
料理―オードブルの盛り合わせでございます。」・・・(!?)飯田は自分の驚きを禁じえ
なかった。「えーこちら、手打ちそばのトマトソース風味、アジのマリネのサンドイッチ
、フランクフルトのクレープ、湯葉のラザニア風、キャビア・ロールでございます。
ごゆっくりどうぞ。」・・・今まで飯田が口にしてきた料理とは明らかに異なっている。
「早よ食えや。」そう言われ、飯田は何も考えずにサンドイッチを口に放り込んだ。
「ん!?美味しい!」飯田は急かされているように次々と料理に口をつけていった。
クレープ、キャビアの巻き寿司、そば、湯葉。あらかたを食べ終えた所にシェフが
やってきた。「いかがでしたでしょうか?」飯田はちょうど残りの巻き寿司をほうばった
所で、口の中をふくらませつつ、笑顔を返した。「ありがとうございます。本日のこの
料理を"ミスマッチ"というテーマで作らせていただきました。」瞬間、飯田の顔が少し
だけこわばった。シェフはこう続けた。「一見周りと違う物でも、仲が悪いのではなく、
むしろ素晴らしい結果を出すということがあるのです。」・・・食後、飯田は晴れ晴れと
した顔で外へと続く階段を上っていた。本当にこの店は素晴らしい。しかし、まだ飯田は
この店の名前を知らない。

393KB
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

0ch BBS 2006-02-27