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平家3を できちゃった雑談47
929 :
リライト習作 3人称
:2007/04/22(日) 05:02
「? 何だろう、これ」
ドレッサーの引き出しの中に黒いケースがあった。
柴田にしては珍しく、ちゃんと整理しようと、普段半分くらいしか開けないのを全開にしたら、奥から出てきたのだ。
(たぶんアクセのケースだ。見覚えがあるような、ないような……)
取り出して見ると、シールが貼ってある。「Ayumi」の文字。
「あ(梨華ちゃんとお揃いのピアスだ)」
二人でつけようね、と言って買ったものだ。なのに、柴田はそのまま引き出しの中に突っ込んでしまっていた。
「たしか不思議な力があるってお店の人が言ってたな」
けれど、柴田は一度もつけたことがなかった。
(せっかくだから明日はこっそり学校帰りにつけてみようかな)
何となく、楽しいような気分になった
930 :
リライト習作 3人称
:2007/04/22(日) 05:04
校門をでてしばらく歩いてから、柴田はいつもの通りポケットからピアスを取り出した。
最近ではもう習慣になってしまっている。
それは、ささやかなストレス発散の方法だった。
進学校ということになっているこの高校の制服が、柴田はあまり好きじゃなかった。
制服に、英単語や漢字、あの難しい方程式や化学反応式と同じにおいを感じていたのだ。
それが、制服をちょっと着崩してピアスをつけると心が紛れる。
まるで好きな香水をつけた時のように、はっとする、新しい自分を見つけたような気持ちになれる。
特に学校で疲れた時には、この「香水」はよく効くような気がしていた。
だが、その香水は柴田には強すぎたのだろうか。
それともまだまだ先のはずの受験戦争に、柴田は知らぬ間にストレスを募らせていたのだろうか。
最近、柴田は学校帰りのふとした瞬間に、まわりに誰もいないのに、人間の声のようなものが聞こえることがあった。
その声は「…ゃょ……ゃょ……」と聞こえた。
それはかすかな声だった。
誰にも相談できなかったけど、「幻聴だ」と柴田は思った。
931 :
リライト習作 3人称
:2007/04/22(日) 05:05
だが、そうではなかった。
あれは、彼女が遅くまで出かけていた日だった。疲れて家に帰ると、ピアスをつけたままベッドに寝転がり眠ってしまった。
夜遅く、目覚めた。耳元であの幻聴だと思っていた声が、いつもの何倍もの大きさで聞こえてきたのだった。
未知との遭遇、期待せざる邂逅、突然の出会いというものは時として人を完全に驚かせ、恐れさせ、失望させ、
落胆させる。そして時として我を失い、その結果として人は思わず叫んでしまうことがある、「何だろう、これ?」と。
それは柴田が、あのピアスを見つけたときと同じセリフだった。
ピアスの声がそうだったように、彼女の声もあの時の何倍もの大きさだった。
柴田が見たものは、ぼうっと宙に浮かぶこの世のものとは思えない小さな生き物だったのだ。
「あ、驚かせてもた。わたしはぁ、怪しいもんじゃなくてぇ、ピアスに住んでる精の高橋やよ、柴田さん」
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