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【下克上】例えば名無しが作者編【成り上がり】
- 1 :名無し娘。:2006/03/25(土) 03:16 ID:13s.MAi2
-
この狩狩には多数の”ネタ”存在する。
そこでどうだ、君も、そこのお前も、その”ネタ”を書いてみないかい?
- 133 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:00 ID:g3i/0tr6
-
* * *
- 134 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:00 ID:g3i/0tr6
-
「……ってことなんだ」
「ふむふむ」
「おーい?」
「ふむふむ」
「聞いてる? 美貴の話」
「ふむふむ」
「アンタ馬鹿?」
「ふむふむ」
――ムカつく
「ぎゃ!? 痛いっ!」
「人の話も聞かないで、なに雑誌なんか読んでんのっ!」
- 135 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:01 ID:g3i/0tr6
-
読んでいた雑誌を取りあげて言ってやった。
あ、ここは美貴の部屋で、大して強く叩いたわけでもないのに大袈裟に頭さすってるコイツ。
一応幼なじみ……、なんか気がついたら隣にいたって感じのヤツ。
こっちに出てきて、コイツとの縁も終わりなるのかなぁ、なんて思ったものだった。
なのに、高校卒業するなり就職するのにこっちに出てきて、あげくにウチから五分のボロいアパートに越してきた。
「だからって叩かなくたっていいじゃんか……」
「大体、なんでアンタ此処にいんの?」
「なんでって……自分で呼んだんだろーに。それ買ってこいって」
そう言いながら指差した先にあるのはトイレットペーパー。
12ロール入り……ダブルのヤツ。
「……そっか」
「そうです」
「………」
なんか勝ち誇った顔してる。
ちょっとムカつくんですけど……
- 136 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:01 ID:g3i/0tr6
-
「こんなのもいる?」
ヒラヒラと宙に踊らせた手をギュッと擦りあわせるように力を込めてる。
スッと力を抜いてゆっくり手を開くと……
「いりませんーっ!」
「そう?」
ポケットティッシュ。
いつのまにかヘンな手品覚えて、時折こうやって美貴のコトからかったりする。
「ってゆーか、そろそろ帰れば?」
「ヒドイなおい、カレシに向かって帰れだなんて」
「はっ? 彼氏? ドコに?」
「目の前に愛しいハニーがいるじゃないか」
「カ・エ・レ」
「はい……」
- 137 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:02 ID:g3i/0tr6
-
――ったくもう……ふざけてばっかなんだから。
けっ飛ばしたお尻を押さえてスゴスゴと帰って行く背中を見ながら思った。
思い返してみればいつもそうだった気がする。学校でも、家でも、いつも。
いつだっておちゃらけた態度で人のことからかうようなことばっか言って笑ってる。
バカでとぼけたちょっと憎らしい兄妹みたいなヤツ。
- 138 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:02 ID:g3i/0tr6
-
さすがに昨日のあれは悪かったかなって思って、仕事帰りにおみやげ買ってアイツのアパートのそばでタクシーを降りた。
時間的にもう帰ってるだろう二階の一番奥のアイツの部屋へ、錆びた階段をカンカンと小気味よく鳴らして上がっていった。
登り切るところでアイツの部屋の前に見慣れた背中を見つけて、ちょうどいいタイミングだったって声をかけようとした。
「おー、い……?」
口にした声が尻つぼみに小さくなる。
アイツの向こうにもう一人の人影があったからだった。
バレたらマズイかなって慌てて帽子を深めにかぶり直すと、少しドモリ気味に美貴の名前を呼ぶアイツの声が聞こえた。
かぶり直した帽子の陰からそっと様子をうかがうと、なんか気まずそうなアイツと、……知らない女が立っていた。
- 139 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:03 ID:g3i/0tr6
-
「……あれ? なにカノジョ?」
「そうですけど、貴女は?」
冗談交じりにそう聞くと、アイツを引き寄せるように前に出てきた女がそう言った。
強気な、でもどこか弱々しく感じる口調だった。
「み…アタシは……幼なじみだけど。ゴメン、知らなかったからさ。邪魔しちゃった?」
「別に平気ですよ? あがっていかれませんか?」
「いーよ。そんなヤボじゃないし。二人で仲良くやればいーじゃん。美貴だってそうする相手ぐらいいるしね」
「……そっか」
やっと口を開いたアイツは少し疲れたみたいな顔してボソッとそう呟いた。
「これ、良かったら二人で食べなよ」
美貴とアイツの分だったお弁当の箱をポイッと放り投げて階段を下りていく。
錆びた階段が、上がってくるときよりも軋んでるような気がした。
なんか胃の中に鈍りでも入ってるみたいな感じがする。
重くって気分が悪くて……なんか苦しい。
- 140 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:04 ID:g3i/0tr6
-
その日からアイツはうちにこなくなった。
週に二回も三回もきてたアイツがもう二週間も姿を見せない。
どうやらホントにあれがカノジョにだったってことなんだろうって思った。
アイツの顔を見なくなってから三週間。
こんなに会わずにいるのは東京に出てきたとき以来だと気がついた。
けど今回はあのときとは違う。
互いの状況も……それ以外のことも。
- 141 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:04 ID:g3i/0tr6
-
仕事を終えて帰ってきた自分の部屋でベッドに倒れ込んで、ふと上げた顔の先にコルクのボードが見える。
こっちにきてからプライベートで撮った写真が貼られてるボード。
亜弥ちゃんや娘。のメンバーと撮った写真が所狭しと貼り付けてある。
その中に一枚だけ、アイツと写ってる写真があった。
おちゃらけたポーズで笑ってる写真の中のアイツは、今日のアイツとは全然違うものだった。
美貴の知ってるアイツは、根はマジメなくせにふざけてて、そんでもってバカで……でもいっつも美貴のそばにいてくれて……
- 142 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:05 ID:g3i/0tr6
-
――バカなのは美貴の方だ…
アイツにカノジョがいるのがこんなにイヤだってこと、今頃になって気がついて。
今頃になって気がついて、こんなに胸が苦しくなるなんて……
「美貴はバカだ……」
- 143 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:05 ID:g3i/0tr6
-
枕が濡れるくらいに時間が過ぎた頃、さんざん泣いたせいかヤケに喉がかさついた。
冷蔵庫にはなにもないはずだった。からっぽの冷蔵庫を思いだして長いため息をつく。
けだるい身体を起こして、放り出してあった大きめの帽子だけを目深にかぶった。
その感覚で思い出してしまった。この帽子はあの日にかぶっていたものだ。
苦しいよ……。
- 144 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:05 ID:g3i/0tr6
-
コンビニを出るなり、よく冷えたスポーツドリンクのキャップをひねった。
一口含んでみてどれほどの水分を流したのかって思った。
500mlのペットボトルを一気に飲み干してしまったけれどまだ足りない。
違う種類のスポーツドリンクを開けて一口喉に流し込む。
口元を乱暴に拭って歩き出してすぐ、どこか耳に馴染む声を聞いた気がした。
「美貴…?」
振り返っってみれば汚いスニーカーが見えた。
こっちにきてからずっと履いてるって言ってたかな。
- 145 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:06 ID:g3i/0tr6
-
「……こんな遅くに買い物かよ」
「アンタには関係ないじゃん」
どっか刺々しい口調に苛立って、こっちまで言葉が荒くなる。
「っ……あぁ、そーだな。カンケーないよ。俺なんかよりも心配してくれるヤツがいんだろ」
ちょっとキレたようなアイツの言葉がすごく痛かった。
痛い、痛い、痛い……
- 146 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:06 ID:g3i/0tr6
-
「おい……どーかしたのか?」
なにも言えずにいる美貴に、少しやわらいだ口調でアイツが聞いてくる。
悔しいけど涙が出そうになる。
「…………もない」
「え? なんかあったのかよ」
「なんでもないっ! カノジョいるくせに優しくなんかすんなよっ!」
美貴じゃない女に話すための口で優しい言葉なんかかけんな。
これ以上情けないところなんかアイツに見せたくなくて、コンビニの袋を投げつけてアイツの前から逃げ出した。
- 147 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:07 ID:g3i/0tr6
-
夢中になって走って、息が切れるほど走って。
なのに気がついたら腕を掴まれて。
転びそうになったところをもう一本の腕で支えられていた。
「走んのはえーよ、バカ」
少し乱れた呼吸に合間にそんな声が聞こえた。
振り解こうともがくけれど、アイツの腕はしっかりと美貴を掴んで放さない。
「ちょっとこい」
「なんでよ、離してっ――」
「いいからこいってっ!」
グイグイと掴まれた腕ごと引っ張られて。
それっきり黙って歩くアイツの背中について歩かされた。
- 148 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:07 ID:g3i/0tr6
-
気がつくと美貴たちは、あの錆びた階段を上がっていた。
カンカンと二人の足音が噛み合わないリズムを刻んでるみたいに。
狭い部屋の中で気が抜けて座り込んでる美貴に、アイツが話しかけてくる。
「この部屋に入ったの初めてなんだぞ。男以外は」
「ウソばっか」
「こないだのは違うぞ。会社の子で、なんだか知らねーけど好かれちゃって。でも帰ってもらったし」
聞こえてきた言葉が信じられなくて、見上げたアイツの顔はいつになく強ばっていた。
- 149 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:08 ID:g3i/0tr6
-
「何年も、ずっと前から言ってんだろ。お前のこと好きだって」
「っ――だって、そんなの……あんなからかうみたいに――」
「しょーがねーじゃん。……本気で告って本気で拒まれたら、もうそばにいらんなくなるから」
「……バカ」
「マジで言うよ。……俺、ずっと美貴のことが好きだった。ずっと一緒にいたいよ」
「……ばーか」
目も鼻も、あつくてツンとする。
泣くつもりなんてないのに……止まんない。
「使えよ」
ポンと目の前に置かれたティッシュの箱。未開封のヤツ。
開けて渡してよ、なんて思いながら何枚も抜き出したティッシュで涙を拭ってた。
- 150 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:08 ID:g3i/0tr6
-
続けて数枚ティッシュを抜き出したとき、なにかおかしな感じがして箱を持ち上げてみる。
アイツが楽しそうに笑ってる。
もしかしたらって立て続けにティッシュを抜き出し続けると、箱の中にもう一つの箱があった。
「プレゼント」
アイツが楽しそうにそう言った。
その箱はよく見かける青紫のパコって開く小さな箱。
そっと取り出したソレを見つめてる美貴に「安いけどな」ってアイツが笑う。
おかしくなっちゃうんじゃないかってくらいドキドキしながら慎重に蓋の部分に手をかけて。
そっと、大切に開けた箱の中からひょっこりのぞいたソレは……小さく丸められたポケットティッシュだった。
またからかわれたって思った美貴はキレそうになる寸前に誰かの声を聞いた気がした。
- 151 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:08 ID:g3i/0tr6
-
――だめだこりゃ
- 152 :名無し娘。:2006/09/30(土) 22:09 ID:g3i/0tr6
-
なんかのTVだっけかな。
そんなことを考えながら蓋を閉めて。
その安い箱を思いっきり投げつけた。
ヒョイと箱をかわしたアイツが声を上げて笑いながら目の前に座り込む。
「プレゼント」
美貴の目の前に掲げられたそれは、親指と人差し指で摘まれた銀色のリングだった。
クルクルとめまぐるしく変わる状況の中で、もっとも強い思いを掴まえてアイツの首にしがみついた。
「バカッ……でもダイスキ」
おわり
- 153 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:37 ID:k20CQu22
- 「皆さんお疲れ様っしたーっ!!」
どこにでもあるチェーンの居酒屋で、
よくある打ち上げの風景。
「無事、我々のサークルは文化祭で黒字を出す事ができましたー!」
「イェーイッ!」
その空気に溶け込みながら俺も声を張り上げる。
「今日はもう無礼講で、思いっきり飲みましょう!
カンパーーーイッッッ!!」
- 154 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:37 ID:k20CQu22
- 皆が早いピッチでビール瓶を空けていく。
ただ、俺はそうしなかった。
そうしたくない理由があったから。
「イエ〜イ!飲んでる〜?」
「…吉澤もう酔ってんの?」
「ん〜?まだジョッキ3杯しか飲んでないよ〜?」
「完全に酔っとるやんけ」
スッと吉澤が俺の隣に入り込み、
空のグラスを2つ手に取った。
「ほら」
「…わかったよ」
- 155 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:37 ID:k20CQu22
- しぶしぶ近くのビールを1つ目のグラスに注ぐ。
2つ目のグラスに…
「あぁそっちは私がするの!ほら!」
「お前やっぱ酔ってるな」
吉澤が流れるような動きで俺からビール瓶を奪うと、
代わりにグラスを持たせてギリギリまでビールを注ぐ。
「ハイカンパ〜イ♪」
「…カンパイ」
「ほらほらダメでしょ?乾杯はぁ、『杯』を『乾かす』ってぇ書くんだよ?」
「その話何回目だよ?」
「何回しても覚えないからでしょぉ?」
「うっせーなぁもう」
このやり取りも何度目だろう。
ただ、いつもはこれで終るのに、
今日は何かが違っていた。
- 156 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:39 ID:k20CQu22
- 「ねぇ」
「ぅん?」
「あんたさぁ、美貴ちゃんとは最近どうなの?」
「ハァ?」
「いやぁ…やっぱり仲いいのかなぁって」
「そんな事聞かなくても知ってるだろ?」
「そ、そうなんだけど…」
「それとも他になにかあるのか?」
「そんなんじゃないけどさ」
- 157 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:39 ID:k20CQu22
- 「それがそうもいかないんですよねー」
「里沙ちゃん!」
「おぉー新垣さんお疲れ」
「センパーイ飲んでますかぁー?
あ、吉澤さん向こうで男子が呼んでましたよ」
「マジ?うー…早めに潰してくるか」
そう言うと吉澤は濃いサワーのピッチャーを抱えて
少しおぼつかない足取りで向こうへと歩いていった。
入れ替わるように新垣さんが俺の隣に座ると、
赤くなった顔を近づけてこう切り出した。
- 158 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:39 ID:k20CQu22
- 「さっきの話の事なんですけど」
「吉澤さん、最近すっごくセンパイの事気にしてるんですよ」
「へ?」
「どうも石川さんが最近カレシ作ったらしくてぇ、
それで吉澤さんに自慢してるみたいなんですよ」
「でも、そんなの前もあったじゃん」
「イヤイヤイヤそれがねぇ、どうも石川さんが吉澤さんとセンパイを
くっつけようとしてるみたいなんですよぉ」
「何ィ!」
かなり大きな声を出した事に自分でも驚いた。
周りのざわめきに全てかき消されたとわかっていても。
- 159 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:40 ID:k20CQu22
- 「でぇ、吉澤さんもまんざらでもないみたいでぇ」
「え!?あのサッカー部のやつとは…」
「あぁもうとっくに別れてますよぉ知らなかったんですか?」
「あいつそういう事言わないからなぁ」
「ほら!言わないって事はやっぱ好きなんですよぉ」
心の奥でミシッという音がした気がした。
そういう話は何回か聞いた事はある。
飲みの席で本人に聞いた事もある。
その時は笑って否定していたけど、
多分我慢していたんだろう。
- 160 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:40 ID:k20CQu22
- 「センパーイ、どうしたいんですか?てか今彼女いるんですか?」
この質問をされるといつも戸惑う。
今までは曖昧にうなづいたりしていた。
俺の事を良く知ってる人はこうすれば察してくれた。
もっと俺の事を良く知ってる人はこんな質問をしてこない。
今日もそうすればよかった。
それで何も問題はなかった。
・・・なのに。
- 161 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:42 ID:k20CQu22
- その時、机の上でケータイがうなりだした。
すかさず俺は目で合図を配りながら席を立つ。
早足でテーブルから離れながら、
なぜか大切な物を置いてきたような気持ちになった。
店から出てケータイの画面を確認する。
分かっていた事なのに、ドキッとした。
慌てて電話に出る。
あぁ、いつもの感じだ。
- 162 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:42 ID:k20CQu22
- 「もしもし」
「もしもし?ゴメンねーまだ飲んでるの?」
「そうだな…もうしばらくかかりそう」
「今日オールするんじゃない?明日どうしよっか?」
「ぅん…行くよ…」
「でもさ、午前中映画見てご飯とか無理じゃない?」
「いや、絶対に行くよ」
「本当に?無理しないでよ」
「美貴が前から見たがってた映画だろ?」
「そうだけどさ…」
「約束は守るよ」
「フフッ」
「何かおかしかった?」
「今日はずいぶん男らしくない?」
- 163 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:43 ID:k20CQu22
- 言われて初めて気がついた。
普段なら言わないような事。
お酒のせいにしておけばいいんだろう。
「ん?俺はいつもこうだろ」
「バッカみたい」
このやり取りは初めてかな。
でも、ずいぶん昔からやってたような気がする。
- 164 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:44 ID:k20CQu22
- 「適当な所で帰るよ。それでも無理だったらさ」
「何?」
「看病してよ」
「…分かった」
「何だよお前も酔ってるの?」
「ナイショ♪」
「…それでさ、聞きたい事あるんだけど」
「石川さんが、俺と…」
「よっちゃんをくっつけようっていうやつ?知ってるよ」
思わず出た、自分の言葉。
思いがけない、美貴の言葉。
- 165 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:44 ID:k20CQu22
- 「…え?」
「知ってるよその話。梨華ちゃん私に聞いてきたもん」
「何て?」
「『美貴ちゃんさぁ、今カレシいる?』って」
「それで、何て答えたの?」
「明日教えてあげる」
「・・・そっか」
「じゃ、明日ね」
「うん」
ゆっくりとケータイをたたみ、店の中へと戻る。
さっきの自分と美貴の言葉がぐるぐると頭の中でらせんを描く。
自分達のテーブルに戻る。
さっきと何も変わらない、バカ騒ぎの中に身を投じる。
吉澤も、新垣さんもそこにいる。
- 166 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:45 ID:k20CQu22
- 「ただいま」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「いない間にずいぶん飲んだ?」
「えーそんな事ないですよぉ」
「じゃあこの空のグラスは何かな?」
「私そんな芋焼酎なんて知りません!」
「はい自白いただきましたー」
「そんな事より、さっきの続きなんですけど」
「センパイは彼女いるんですか?」
- 167 :名無し娘。:2006/10/01(日) 23:45 ID:k20CQu22
- 黙って手に持ったままのケータイを取り出す。
電池パックのふたを外して、裏側を新垣さんに見せた。
美貴と2人で撮ったプリクラ。
そのままふたを新垣さんに手渡し、
近くにあった青りんごサワーのグラスを引き寄せた。
「・・・」
相変わらず周りは騒々しい。
今俺が何を言ったかは誰も聞いてないんだろう。
そう思いながら、一息にグラスを乾かした。
終わり
- 168 :名無し娘。:2006/10/02(月) 11:50 ID:78Hq7fDY
-
川VvV)ノ<ぃょぅ、いるかい?
( -_-)<いるけど・・・なんでいつもノックもせずに俺の部屋に
入ってくるんだよ!
川VvV)<いいじゃん、固いこというなよ。
なんか見られて困るものでもあるのかよ?
ハハァ〜ン、さては一人エッチでもしてるんだな?
(* -_-)<バ、馬鹿!・・・そりゃしないことはないけど・・・
女がそんなこと言うなよ!
川*VvV)<ミキのことを想像してたりしてぇ
(* -_-)<するか!お前みたいなチンチクリンを想像したら
タツものもたたねぇよ!
( ; -_-)。0(ホントはしてるけど・・・)
川VvV)<ふ〜ん。そっか・・・。
川*VvV)<・・・たまにはミキでしてもいいぞ。
そんで感想聞かせて♪
(* -_-)<だから、お前じゃしないっての!
それよりなんか用事か?
- 169 :名無し娘。:2006/10/02(月) 11:50 ID:78Hq7fDY
-
川VvV)<おう、そうだった
お前パソコンくわしいかったよな?
( -_-)<詳しいってほどじゃないけど、人並みには使えるよ。
川VvV)ノ■<これに入ってる資料で、なんかよくわかんない記号がでるんだけど
なんとかならない?
( -_-)<どれどれ?このエクセルファイルを開いてっと
川VvV)<これ、この「#DIV/0」ってやつ。これを消したいんだけど・・・
( -_-)<あのなぁ、営業職っていったってこれくらいできるようになれよ。
川VvV)<うるさいなぁ、ミキはそういうのが苦手だから営業職になったの!
( -_-)<まあ、分かるような気がするけど
えーっとIF関数とISERROR関数を使ってっと・・・はい、できた。
川VvV)<おぉ、サンキュー。やっぱ頼りになるねぇ♪
( ; -_-)。0{ IF(ISERROR(ミキに告白),気まずくなる,進展なしの幼馴染)・・・か}
煤i ; -_-)。0(っていうかこれ上手くいったときの式が入ってないじゃん!)
( -_-)=3<こんな弱気じゃ
・・・だめだ、こりゃ・・・
- 170 :名無し娘。:2006/10/02(月) 23:11 ID:loGAHRnE
-
急に呼び出された近所の公園。
ガキの頃、二人で走り回ったこの公園も、
久しぶりにきてみればずいぶん小さく感じるものだなと思った。
隣に座ってる美貴もそう感じてるのかなと横を向いたときだった。
いつになく大人しかった美貴が突然俺に抱きついてきた。
予想外な行動に動揺した俺はなんの反応もできず、ただ呆然とされるがままでいた。
「昨日さ、なにしてた?」
「え? 昨日……?」
俺の肩にあごをのせるようにしてるミキはどんな表情でいるんだろう。
耳元で掠れる声に答えを返しながら考えた。
- 171 :名無し娘。:2006/10/02(月) 23:12 ID:loGAHRnE
-
「梨華ちゃんとなにしてた?」
「な、なにってなんだよ」
「告白、された?」
「――っ!?」
何で知ってるんだって驚きで言葉にならなかった。
そう聞いてくる美貴の表情が気になって、離しかけた身体を細い腕が邪魔をする。
「知ってるんだ。ミキさ、梨華ちゃんに相談されてたから」
「そ、そうだったのか……」
「返事…してあげた?」
「したよ。キチンと――」
「言わなくていいっ」
「え?」
「聞いちゃったら言えなくなるもん」
「なにを?」
「ミキね、梨華ちゃんに謝らなきゃなんない」
「それって――」
「あんたのこと好き。ううん、ずっと好きだったみたい」
「ミキ……」
「あんたと梨華ちゃんが付き合うって考えたら、どうしても伝えずにいらんなくなっちゃって……」
- 172 :名無し娘。:2006/10/02(月) 23:13 ID:loGAHRnE
-
その声は微量の湿気を帯びていて、耳元でスンと洟をすする音が聞こえる。
「ゴメンね。梨華ちゃんと仲良くね」
美貴の手が俺の肩を掴み、グッと腕を伸ばした。
腕一本分の距離で、ミキの双眸から雫がこぼれ落ちた。
「じゃあね」
そう言い残して立ち上がった美貴を伸ばした俺の腕が掴まえる。
引き寄せられるように立ち上がると、今度は俺の方から美貴を抱きしめた。
「どこ行くんだよ」
「だって」
小さな美貴にはなかった甘い香りが鼻をくすぐる。
その感覚に勢いづけられた俺は、今まで言えずにいた言葉を口にした。
- 173 :名無し娘。:2006/10/02(月) 23:14 ID:loGAHRnE
-
「俺も、ミキのこと好きだっ! 先に言われちゃってカッコワリーけどな」
「でも梨華ちゃんが……」
「関係ねーよ。俺はミキ……ミキがいいんだ。気にするんだったら石川さんには俺から話すさ」
「ごめん」
「俺でいいか?」
「あんたじゃなきゃヤなの」
そう微笑む美貴がギュッと強くしがみついてくる。
- 174 :名無し娘。:2006/10/02(月) 23:14 ID:loGAHRnE
- あまり肉付きがよくない、けれど柔らかなふくらみが遠慮がちに俺の胸を刺激する。
「ミキさ、そんなない胸押しつけんなよ」
聞かされた言葉の嬉しさと、刺激に対する気恥ずかしさと。
照れ隠しでつい口にした言葉、その失言に気がついて返ってくるはずの痛みに身体を硬くした。
「今なんつった、コラッ」
が、返ってきたのは更なる刺激だった。違う方向性の。
「これでもかっ」
お、大きくは、ない……けれど、そんなことも口にできる状況じゃあなかった。
なによりもこの自分の身体的な変化を美貴に気づかれ……!?
「エッチ……」
だめだこりゃ
- 175 :名無し娘。:2006/10/03(火) 12:15 ID:uXBU/9.M
-
「ねぇ、あんたってさ好きな子いないの?」
「はぁ?」
俺のベットに寝転びながら漫画を読んでいる女。
こいつは、俺の幼馴染でしかも家が隣同士。まさに、ベタな恋愛ドラマの
ような俺とこいつ。けど、俺はこいつに恋愛感情なんてもったことない。
「だ〜か〜ら〜、あんた付き合ってる人とかいないわけ?」
「いねぇ〜よ、お前も知ってんだろ。俺は、生まれてから彼女なんて
できたことないぐらい」
自分で、言ってて情けなくなる。俺は、生まれてきて20年彼女なんてもってのほか
好きなやつなんて出来たことなかった。
「そうだけどさ…あんた、外見はいいのにねぇ〜」
「うるせえよ。お前こそ、どうなんだよ」
「美貴? 美貴もいないよ」
「え? お前、この前彼氏と歩いてなかった?」
「あ〜あれ? 面白くなかったから別れた」
「(お前、男に対してあれって…)」
「まぁ、美貴ずっと好きな人居るし…」
「は? なに? ごめん、聞こえなかった」
「もういい!!」
そう言って、美貴は怒ってベットの布団に潜り込んだ。
- 176 :名無し娘。:2006/10/03(火) 12:16 ID:uXBU/9.M
-
「おい、美貴。お前ガキじゃねぇんだから、布団なんかにもぐりこむなって」
「むぅ〜…」
「むぅ〜って…はぁ、美貴〜!!」
俺は、ベットにダイブする。そして、布団の上から美貴の脇をくすぐった。
「!! にゃははははは!!」
「早く、俺の布団から顔出せ〜。じゃねぇと、もっとひどくするぞ」
「わかったぁ〜、わかったから〜!!」
美貴は、勢いよくガバッと起き上がった。
−チュッ−
「!?」
「あ…」
目の前には、美貴の真っ赤な顔。
「ご、ごめん。美貴どっかぶつけなかったか?」
「う、うん。だ、大丈夫」
「あ、お、俺、なんかジュース買ってくるから」
自分の火照った体を冷まそうと足早に外に飛び出した。
「(…帰ったら、俺あいつに殺されるんじゃないか?)」
そんなことを、考えながら近くの自販機に向かって歩き出した。
その時、俺の右手に暖かくてやわらかい感触が。
「み、美貴?!」
「一緒に行こ」
「う、うん」
「美貴さ、好きな人いるって言ったじゃん…」
そう言って、僕を見つめる美貴。
なんか、頭がクラクラしてきた。
−だめだ、こりゃ−
- 177 :名無し娘。:2006/10/03(火) 15:10 ID:7wTZMWfo
- 美貴「お前さぁなんで最近俺を避けるんだよ〜」
俺 「避けてるんじゃないよ、逃げてるんだよ」
美貴「同じじゃないか!何でだよ〜ちっちゃい頃は隣同士で
仲良くて、よくお医者さんごっこして遊んだじゃないか」
俺 「って、大抵俺が患者で美貴がお医者さんの役じゃないかぁ、
嫌がる俺のズボンをおろしてアソコを観察してたじゃないか」
美貴「うん。あの頃はアソコがどうなってるか興味があってな。
それより、何で俺が嫌いなのか、理由を言えよ」
俺 「今だって興味があるくせに〜、とにかく美貴とは
やって行けないんだぁ、もう疲れたよ〜」
美貴「何が疲れるんだよ、それに近頃希美と付き合ってるって
話じゃないか、あんな子供っぽくて色気のかけらもない
ヤツとよく一緒にいられるな〜」
俺 「あのなぁ希美は色気は無いけど、陽気で明るくて
一緒に居ると癒されるんだよぉ。
美貴なんか癒されるどころか、毒気ばっかりじゃないか!」
美貴「何だとぉてめえ!毒気ばっかりで悪かったなぁ!
尻から毒を注入してやろうか〜!!」
俺 「ダメだ、こりゃ〜」
続く。
- 178 :名無し娘。:2006/10/03(火) 20:37 ID:7wTZMWfo
-
美貴「今日こそは、俺が嫌いな理由を聞かせろや〜」
俺 「そんな事は胸に手を当てて考えればわかるだろう」
美貴「それがわからないから聞いてるんだろ!
ちっちゃい頃はお前の家にお泊りに行ってよく一緒に
お風呂に入ったじゃないか、あんなに仲良かったのに」
俺 「って、美貴は洗いっこしてて、よくすべった振りをして俺の
アソコを触ってきたじゃないか、恥ずかしかったなぁ」
美貴「うん。あの頃はアソコがどんな具合か興味があってな、
それよりこの前の日曜日、里沙とデートしたって聞いたぞ、
あんな、いつもコラ〜ァって突っ込んでくるヤツとよく
一緒にいられるなぁ」
俺 「今だって触ってくるくせに〜、
とにかく、里沙は確かにコラ〜ァって突っ込んでるけど、
同じツッコミでも美貴と違って里沙のは愛があるんだよ〜
美貴のは毒があるんだよ」
美貴「また毒かよ〜、毒ならさゆの方がコブラ並みだよ〜」
俺 「ま、さゆの毒には可愛げがあるから救われるんだ、
よし、美貴が嫌いな理由を言ってやる」
美貴「おう、聞かせて貰おうじゃないか」
- 179 :名無し娘。:2006/10/03(火) 20:40 ID:7wTZMWfo
-
俺 「なぜ美貴は人を蔑んだ目で見るんだよ、なぜ皆と一緒に
笑ってやれないんだよ、
確かに、誰とは言わないけど北極点並みに寒い事言う者も
いるよ。でもそれで迷惑かけるわけでもないし、
あんなに蔑んだ目で見ることないじゃないか」
美貴「・・・・」
俺 「俺は別に美貴に愛想良くしろって言ってるわけじゃないよ、
でも、すぐ高慢ちきに人をあげつらって蔑む事はよくないって
俺は思うんだ。相手の気持ちを思いやって、みんなのように
笑って流してやればすむことじゃないか。
なぜそれが美貴には出来ないんだ・・・」
美貴「俺は、器用に愛想笑いなんか出来ないんだよ、
誰かのように自分を飾り立てる事なんて出来ないんだ、
人から何と言われようとも、そんな生き方しか出来ない、
幼なじみのお前だけはわかってくれてると思ってた・・・」
俺 「美貴・・・泣いてるのか、俺の前で泣いてる美貴は初めてだな」
美貴「・・・・」
俺 「美貴、俺が悪かった。 俺は美貴が素直になって欲しいんだ、
自分や他人にも素直で正直になって欲しいんだ」
美貴「そんな事出来ないよ・・・」
俺 「そんな事ないよ、今日の美貴は素直じゃないか、
人前で涙を流すなんて今まで無かったじゃないか、
涙は素直だから出てくるんだよ。俺はそんな美貴が好きだよ、
俺の言う事がわかるだろう」
美貴「うん・・・」
俺 「わかってくれたか、よし!そうだ今度の日曜久しぶりに
俺とデートしてくれよ」
美貴「いいよ」
俺 「あっ!いけねぇ今度の日曜は、れいなとデートする予定なんだ、
それに来週の日曜は絵里とする予定なんで、その次だな」
美貴「だめだ、こりゃ〜」
終わり。
- 180 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:50 ID:sVbTKPV.
-
ここのところ美貴の様子がおかしい。
隣の家に住み、ベランダ越しに人の部屋へ入ってきたり、互いにあけすけに話をしあえる仲だったはずなのに。
四、五日前からだったろうか、妙に口数は減り、俺の部屋へ顔を出すこともなくなった。
そして昨日、いや一昨日だったな。
ついには俺を避けるような様子まで見せ始めた。
正直ショックだった。
嫌われるようなことはした覚えがないし、もし気がつかずにしてしまったとしても、真っ直ぐにそれを話してくれるヤツだったから。
事情も解らないままに離れていく幼なじみに言い表しがたい淋しさを覚えていた。
考えても考えても答えは出ない。
当たり前だった。なにもしてない、ハズなんだから。
- 181 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:50 ID:sVbTKPV.
-
それでも考えて考え抜いて、そして一つの結論にたどり着いた。
それが事実だとすれば……そう考えると何故だか胸が苦しくなってくる。
ああ、そうだったんだと気がつかされるんだ。
「俺、美貴のことが好きだったんだな」
言葉に出してしまえば簡単なことで。
だけどそれは決定的に時機を逸してしまっているだろうことがより俺の胸の痛みを強くする。
日の沈みだした薄暗い部屋で横たわり、自分はどうするべきなのかを探し求めていた。
- 182 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:50 ID:sVbTKPV.
-
部屋が真っ暗になった頃、ようやく導き出した答えに身体を起こしたとき、美貴の部屋に明かりが灯った。
カーテンに映るシルエットが美貴の行動を逐一教えてくれる。
窓際にある勉強机に肘をついた姿勢で落ち着いたらしい。
俺はベランダへ出て、口笛で一つ合図をする。
すぐに気がついたらしい美貴がカーテンを開くけれど、俺の顔を見るなりサッと閉められてしまった。
やれやれとため息を洩らし、美貴のベランダへと渡ることにした。
コンコンとノックをして「ちょっと話せないか」と声をかける。
少し逡巡するような間をおいて、静かにガラス戸が開かれた。
怒っているようなぶっきらぼうな表情で部屋へと迎え入れられる。
- 183 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:51 ID:sVbTKPV.
-
「なに?」
「お前さ……好きなのか?」
「な、なに言ってんのよ、今さら……」
図星だったらしい。
少し頬を赤らめて、動揺が声にもありありと表れている。
改めて事実と向き合うのはなかなか辛いことだった。
「お前がそう決めたんなら……俺は祝福するよ」
やっとの思いで口にしたセリフだった。
笑顔の美貴が見たかったから、笑ってそう口にしたつもりだった。
- 184 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:51 ID:sVbTKPV.
-
「アンタ……バカ?」
「えっ?」
「なんでそんなこと言うのっ? なんでそんな他人事なワケっ!?」
急に激昂した美貴に捲し立てられる。
俺がなにをしたって言うんだろう。
「だって……違うのか?」
「違わないっ! 全然違わないから怒ってんでしょ!」
「ち、ちょっと待てよ。訳が解らないよ」
「ハァ!? アンタふざけてんの?」
「いや、マジで。どういうことなんだよ」
「それが美貴が必死んなって書いた手紙の答えだってことでしょ」
「手紙? 手紙って……なんの?」
「えっ? 手紙……入ってたでしょ。下駄箱に」
美貴が急激にトーンダウンする。
手紙? 手紙……
- 185 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:52 ID:sVbTKPV.
-
「あぁ!?」
一声上げて急いで自室に戻った。
机の引き出し……確か無造作に放り込んだハズだ。
「あった!」
とんぼ返りで美貴の部屋へ戻る。
困ったような顔で立ちつくしている美貴へ手紙を見せた。
「これのことか?」
「ほ、他になにがあんの」
「これ……美貴が?」
「そうだよっ。今さら照れくさかったけど、どうしてもって思ったから書いたのに……」
「いや、だってこれ……イタズラだと思って」
「はっ? なにそれ。人が恥ずかしいの我慢して一生懸命に書いた――」
「名前、書いてないから……」
「……え?」
「名前、書いてないんだ。誰かのイタズラかと思った」
「……え?」
「いつもの美貴の字じゃないし」
「うっ……」
- 186 :名無し娘。:2006/10/07(土) 18:52 ID:sVbTKPV.
-
よほど丁寧に書いたんだろう。
普段の美貴の字とはまるで違う文字で書かれている手紙。
「そっか。美貴だったのか……」
「そ、そうだよ」
「そっか。ふはっ、はははっ」
「なに笑ってんだよっ」
思わずこみ上げてきた笑いを、美貴が真っ赤な顔で遮る。
やっぱ可愛いやコイツ。
「それで……?」
「え?」
「ど、どうすんの? それ」
ついには耳まで真っ赤にしてささやくような小声で見上げてくる美貴。
どうしようもないほどにわき上がってくる思いと、少しばかりのこみ上げる笑いを堪えて。
そっと手を差し伸べた。
「これからもよろしくな」
笑顔の美貴が見たいから……。
おわり
- 187 :名無し娘。:2006/10/07(土) 22:40 ID:QNDmXXhc
-
○○さん、美貴さん、本日はおめでとうございます。そしてご両家の皆様には心よりお
喜び申し上げます。わたくしは新婦の美貴さんの幼なじみの●●と申します。
わたくしには美貴さんがいかに素晴しい方かぜひご紹介を、とのことでございましたが
、わたくしから申し上げるまでもなく、美貴さんは世間に知られたアイドルでございまし
て、その魅力のほどはよくよく知られているところでございますので、私としましては、
アイドルになる前の美貴さんのエピソードを1つ紹介させていただきたいと思います。
あれは中学生の時分でした。わたくしは部活動で野球部をしていたのでございますが、
来る日も来る日も玉拾いばかりで本当につまらない日々でした。ある日、わたくしはやっ
とのことで守備の練習をさせてもらえることになったのですが、先生の見ていないところ
で先輩のノックを受けたものですから、先輩たちが調子にのって千本ノックをすると言い
出したのです。わたくしはその時、ここでいやだと言えば一生玉拾いだと思ったものです
から、一生懸命ノックを受けました。そして夕焼けがやってきました。わたくしはまだ先
輩のノックを受けていました。わたしはもうへろへろだったことを、覚えています。それ
でも先輩たちは面白がってやめようとしなかったのです。
もう、お分かりでしょうが、その時私を助けてくれたのが美貴さんでした。あの時の光
景は今でも目に浮かぶようです。美貴さんの投げた球は素晴しいコントロールで先輩の頭
のボール1つ分横を通り過ぎました。そして「●●はもうへとへとなのに、これ以上ノッ
クを続けるならタダじゃおかない」と言ってくれたのです。
○○さん。このように美貴さんは正義感がつよくて、行動的なすばらしい人だと思いま
す。その行動に面食らうことがあっても、必ず理由のあることだと思います。ですから、
なにがあっても美貴さんのことを幸せにしてあげてくださいね。
どうか幸せな家庭を築いていただけますように。それではもう一度お祝いの言葉を述べ
させていただきたいと思います。本当にこの度はおめでとう。
- 188 :名無し娘。:2006/10/07(土) 22:40 ID:QNDmXXhc
-
「こんな感じでいいかな?お前どう思う?」
「うーん、ちょっと普通すぎねぇか?」
「そうかな?野球部のくだりなんかよくねぇ?」
「うーんでもさ、ちょっとこれじゃあ怖い人っぽくない?」
「あー、ちょっとやりすぎたか。こういうエピソードって作るのむずかしいな。」
「おい。作り話かよ。」
「そうだよ。」
「そうだよ、ってお前。そんなの新婦が会場で聞いたらびっくりするじゃないか。」
「大丈夫だって。うーん、ていうかさ、やっぱ今はサッカーかな。俺、野球部とサッカ
ー部ならどっちがかっこいい?」
「知らねーよ。ていうかなに?お前本当はなに部なの?」
「帰宅部だよ。」
「おいおい。なんだよそれ。そんなの美貴さんの中学時代を知ってる連中はみんな苦笑
いじゃないか。」
「苦笑いでも笑いは笑いだろ?」
「その発想はどうかな。」
「わかったよ。じゃあ特に面白いことはありませんでした。ってことにしておくわ。」
「おいおい。それはないだろ。なんか1つくらいないのかよ。実話でさ。」
「意外とないものだぜ。お前さ、自分の幼なじみのこと考えてみろよ。何かあるか?」
「そういわれると確かに思いつかないな。」
「だろ?そういうもんなんだよ。だからさ、適当にいい話をでっち上げた方が客の受け
もいいし、簡単なんだって。」
「わかったよ。じゃあとにかくさ、先輩にボールを投げつけたっていうのは無しにしろ
よ。それから自分のことわたくし、っていうの堅苦しいからやめにしようよ。」
「俺様、とか?」
「だめだよ。」
「そうかな?面白くね?」
「面白くても、新婦に恥じかかせちゃだめだよ。ここは僕でいいだろ。」
「はいはい、僕ね。」
「それからさ、なんていうんだろもう少しお前の本音っていうかさ、堅苦しい一通りの
話だけじゃなくて、もうちょっとおまえ自身の言葉を多くした方がいいと思うよ。」
「そういうものかな。」
「うん。みんな堅苦しいからなスピーチってのは。もっとくだけた感じでもいいと思う
んだよね。俺は。」
「わかった。もうちょっと考えてみる。」
- 189 :名無し娘。:2006/10/07(土) 22:41 ID:QNDmXXhc
-
○○さん、美貴さん、本日はハッピーウェディング。そしてご両家の皆さん心よりチェ
ケラッチョー。俺様、新婦の美貴さんの幼なじみの●●。オナショーでオナチューってや
つだからマジで腹いてぇ。
美貴さんは、なんつぅか、たしかにアイドルとかしてるらしいんすけど。はっきり言っ
て、曲とか聴く気んなんねぇ。ていうかつんくっしょ?腹いたくね?俺様はさっきからマ
ジいてぇんだけど。マジ?お前も?俺様もさっきからなんすよ。料理やばくね?
あぁ、っつーか、エピソードなんすけどぉ。昨日からマジ徹夜してでっち上げてやろう
っていうか、まあ嘘ぶちかましてやろうかとおもったんですよー。いや、マジマジ。マジ
で嘘の話なんですけどね。俺様、昔ラグビー部にいたんすよ。あ、いま笑ったやつはオナ
チューでうちにラグビー部無いって知ってるやつなんすけどぉ。うはっ。言っちゃった。
うーわ。お前のせいだからな。マジで。マジでお前のせいだからな。うはっ。あいつ要チ
ェックだったわ。もう要チェケラッチョーだったわ。うわ。まじうぜぇ。全存在がうぜえ
。まぁ嘘ってばれちゃったんすけど。あえてそれを無視するのがクールなんす。マジっす
。だからみんなもマジ無視してくれるのがクールなんすよ。まぁ、結局なにが言いたかっ
たかって言うと、美貴さんは先輩ぶん殴っておれを助けてくれたんす。いやホント感謝っ
す。
あ、そうだ○○さん。この通り美貴さんは……うはっ。俺様、美貴さんが殴ったってい
っちゃったじゃん。うはっ。やっべぇ。言うなって言われてたんすよね。うーわ。やっべ
ぇ。ていうかマジ腹いてぇ。腹痛くて死にそ。うーわ。ま、ともかく今日は本当におめで
とうっす。美貴さんのこと幸せにしてほしいっす。
ていうか、最後なんで、もう一回お祝いなんすけどぉ、その、えっとなんだっけ。えっ
と……えっと……あ、そうだ。ハッピーウェディング、アンド、要チェケラッチョー。○
○ですた。うわ、噛んだ。
- 190 :名無し娘。:2006/10/07(土) 22:41 ID:QNDmXXhc
-
「どう?」
「お前は俺をおちょくってるのか?なんだよ腹いてぇって。」
「なんか書いてるうちに緊張してきちゃってさ。」
「だからって原稿用紙に書くことないだろ。」
「俺どうしても頭のイメージに文章が引きずられちゃうんだよな。」
「それになんだよ。俺様はやめろって言っただろ。」
「それもさ、なんか緊張したら言っちゃいけない事を言っちゃったていうかさ、ほら、
自転車とか運転しててもぶつかりそうな方に目が行って結局本当にぶつかったりする
じゃん。」
「そんなたとえとかいいから。ていうか、なんだよはじめちゃんと書けてたのにこれは
ぜんぜんだめじゃん。」
「だってお前みてたじゃん。俺さぁ人に見られてると緊張してダメなんだよね。」
「そんなやつがよく結婚式のスピーチなんか引き受けたな。」
「いや、まだ引き受けてないよ。」
「なんだ。そうなのか。じゃあ今から断りの電話入れろよ。こんなんじゃあ頼む方は迷
惑だよ。」
「あぁ、その必要は無いよ。」
「なんで?」
「俺、頼まれてすらいないから。」
「頼まれてすらいないのかよ。じゃあなんでお前こんなの書いてるの?」
「だって俺幼なじみだよ?絶対頼まれると思ってさ。」
「あぁ、前もって準備しておこうってことか。」
「うんだって、急に頼まれたらそれこそ緊張でどうなるかわからないじゃん。」
「その時は丁重に断ればいいだろ?」
「あー、それもそうだな。」
「あ、そうだそうだ。そういえばさ、美貴さんって藤本美貴だろ?」
「そうだよ。」
「あーやっぱりそうなのかー。残念だなー。俺大ファンなんだよね。
あーショックだぁ。結婚しちゃうんだー。知らなかったよ。」
「あ、お前しらなかったの?」
「そうなんだよ。まあ覚悟はしてたけどな。あ、それでさ。その結婚式なんとかもぐり
こませてもらえないかな。ほらファンとしてはどんなやつか顔見ておきたいし。」
「あー、でもなぁ。」
「そこをなんとか。」
「いや、でもな。いつ結婚するかわからないぞ。アイドルは恋愛とか結構厳しいらしい
し。」
「ん?」
「だからいつ結婚するか…」
「え?なに?お前結婚式があるからその準備してるんじゃないの?」
「ちがうよ。」
「は?じゃあ、お前はなにしてるの?」
「お前のことおちょくってやろうと思って。」
「うわ、やられた。だめだこりゃ。」
おわり
- 191 :名無し娘。:2006/10/07(土) 23:35 ID:oGoSH3/g
- 俺のベッドでマガジンを読んでいる美貴。
退屈だ。
「なぁ美貴。」
「ん。」
「お前焼肉好きだよな。」
「うん。」
「納豆は?」
「好き。」
「ネギは?」
「好き。」
こいつ俺の話聞いてないな。
「亜弥ちゃんは?」
「好き。」
「俺のことは?」
「好き。」
「・・・え?」
「え?」
「マジで?」
「何が?」
「好きなの?」
「え?え?アンタ何聞いたの?」
「そうか、美貴は好きなのか。」
ドカッ
「痛っ!殴るな!」
「どうせエッチなこと聞いたんでしょこの変態!」
ダメだこりゃ・・・。
- 192 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:52 ID:4utTka3M
-
「あぁ久しぶりだなお前とこーやって飲んでると」
『だな、中学ン時以来じゃねー? てかお前今何やってんだよ』
「塾の先生・・・、だな」
『へぇ〜』
「てかお前何やってんだ?」
『いやぁー、なんもしとらんよ?
川*VvV)< 来たよ
『おー、よー来たなぁ』
「誰? お前の恋人か?」
_,
川;VvV) ・・・・・
- 193 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:53 ID:4utTka3M
-
『お前忘れたんか? ほらほら隣の美貴ちゃんだよ』
「えっとぉ……、あれ?」
_, ,_
川+VvV) ・・・・・・・・
『思い出せんか? じゃあの話するかぁ?』
Σ川;VvV)っ< やっ、やめてぇ!!
『やっぱ美貴には黒歴史かい?』
_,
川;VvV)< そ、そーゆーわけじゃないけどさぁ
「ひょ、ひょっとしてミキティ?」
『やっとで思い出せたのかよぉ!!』
川*VvV)ノ< ヨッ
- 194 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:53 ID:4utTka3M
-
「いやぁでっかくなったなぁ!!
昔はこーんなに小さくてさ、いっつもこいつの後ろにちょこちょこついて来とったよなぁ」
『そーだろ、もう二十歳だからな』
「こんなにべっぴんさんになると思ったらもう少し優しくしてやりゃよかったかなぁ?」
川*VvV) エヘッ
「元気にしてたん?」
川*VvV)< まぁね
『昔からこの窓から入ってくるんよ』
「じゃ、あのころみたいにオテンバさん?」
『そうそう、あのころから変わらず大きくなったカンジよ』
川;VvV) モジモジ
- 195 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:53 ID:4utTka3M
-
「覚えてるか? 多分ミキティが5つの夏だっかな?」
川;VvV) エットォ
『あぁーあぁーあったねぇ懐かしいねそれ!』
川;VvV) ・・・・・・
「俺らが飛んで用水路渡ったときにミキティもマネして落ちたんだよな」
Σ川;VvV) !!
『増水してたからマジビビッたなぁ!!』
「あれ以来、水は大丈夫??」
川;VvV) エッエットォ
『あのとき泣かんかった美貴は偉かったぞ』
川*VvV) ・・・・・・
- 196 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:54 ID:4utTka3M
-
「もう15年も経つんかぁ、小学校卒業してからミキティ見てなかったし
いやぁビックリしたなぁ!!」
川*VvV) ・・・・・・・
『俺らもオッサンになるんだよ、そりゃね』
「二十歳にもなったら大好きな恋人とか出来たかい?」
プルプル
((Vv三vV))
『俺もそーいう話聞かんなぁ〜』
「じゃ、俺と恋人になろうか?」
Σ川*VvV) !!
「冗談だよ冗談、マジんすんなよ!!」
川*VvV) ・・・・・・
- 197 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:54 ID:4utTka3M
-
『おろ? もう帰るんか?』
川*VvV)ノシ
「じゃまたね!」
vV*川ノシ
「女って変わるもんだなぁ」
『見た目はな、でもやっぱあのころの美貴みたいな子さ』
「そっかぁ〜」
「そういえば“あの話”ってなんだ?」
『あ、あぁお前忘れたか?』
「なんの話だ?」
『まぁ細かいことは気にするなってことさ』
「なんじゃそりゃ、そこまで言われたら尚のこと気になるじゃねーかよ!!」
- 198 :名無し娘。:2006/10/08(日) 21:54 ID:4utTka3M
-
川*VvV)。o( ・・・・・・・・・・・・・
あの人は相変わらず変わってなかった
『ねぇねぇミキの話ー』
「どうしたんだ?」
『ミキねー、おにーちゃんと結婚するのぉー!!』
「はははっ、覚えてたらなっ!!」
『ほんとほんと!?』
「覚えてたらなー!!」
川*VvV)。o( ・・・・・・・・・・・
- 199 :名無し娘。:2006/10/08(日) 22:11 ID:gKRNCFZI
- 「もしもし。あ、美貴?」
「何?わざわざ電話かけてきて。」
「いや、ちょっとそっち行けないんだよ。」
「なんで?隣なんだからすぐ来れるじゃん。」
「いや、それが無理なんだよ。」
「まぁ無理なのはわかったけど。で、一体何の用?」
「ちょっと抜いてくんない?」
「・・・はぁ!?」
「なんだよ、んなでっかい声出すなよ。」
「いや、あんた何言ってんの?」
「いや、だからコレを抜いて欲しいんだって。」
「コレとか・・・殴るよ?」
「待てよ!なんで殴られなきゃならん!」
「・・・アンタ、美貴をそういう目で見てたの?」
「いや、そういう目って・・・コレ抜いてって言ってるだけじゃん。」
「だけって・・・ど、どうやって抜くのよ?」
「どうやってって・・・そりゃあ手でだろうな。」
「て、手で・・・?・・・美貴がいいの?」
「え?」
「そういうこと・・・美貴にしてほしいワケ?」
「いや、別に誰でもいいんだけど・・・。今家に誰もいないんだよ。」
「誰でも!?アンタ最低!!お母さんとかにそんなことさせてるワケ!?」
「・・・もういいよ。美貴のお母さんに頼むから。」
「やめて!美貴のママに手を出さないで!それだったら美貴が・・・するから・・・。」
「なんか話がおかしくなってるような気がするが・・・。とりあえず来てくれ。」
ガチャ
「おー美貴。ここだよここ。足の裏にトゲみたいなの刺さっちゃって歩けないんだよ。抜いてくれー。」
「・・・。」
ベキッ
終わり
- 200 :名無し娘。:2006/10/09(月) 02:20 ID:eFWE/MVU
- 免許を取って早1年。
ようやく運転にもなれた頃、ミキスケがドライブに連れて行けと言い出した。
高速道路の追い越し車線を走る俺の車の助手席にミキスケ
俺が軽快なハンドル捌きで1台、2台と抜き去るたびに手を叩いて喜ぶミキスケ
何も言わなくても左手を伸ばせばお茶のカップを渡してくれる
意外と気が利くところをみせるミキスケ
意外と……いいムードだな、こういうの。
そう思いながら助手席のミキスケに目をやると
さっきまではしゃいでいたのに、ちょっぴりおしゃまな表情でどこかの一点を見てる。
「つ、次のサービスエリアで……と、トイレ」
顔を真っ赤にして小さな声でつぶやくミキスケ
……ダメだこりゃ
- 201 :名無し娘。:2006/10/12(木) 15:53 ID:h30kCgmc
- 参加者の一人ですが
14日は一日ネットに繋げない状況になっちゃいました。
(正確には13日夜から16日朝まで)
特別ルールで13日の夜に作者申告してもいいでしょうか?
- 202 :チン亀太郎 ◆kaMeXBmqDk :2006/10/12(木) 22:52 ID:EqmM9RX6
- すいません、遅くなりました
13日の夜で構いません
それでお願いします
- 203 :偽5を ◆MSFG2bNo :2006/10/13(金) 18:46 ID:lkG4w1Hc
- (偽5-_-)ノ<フライング申告申し訳ない…
参加してます
- 204 :名無し娘。:2006/10/13(金) 19:54 ID:v.ljimB2
-
美貴の部屋。いつも通り、だらだらしながら他愛の無い話をしていた。
「だからー。美貴の方がすごいの」
「はぁ?冗談だろ。俺の方がすごいね」
今日のテーマは『どっちがすごいか』だ。
まぁ、説明すると・・・・ただの自己推薦だ。要するに。
「何言ってんの? 格闘ゲームだって美貴の方が上手いし、試験だって美貴の方が点取るしぃ。それに、腕相撲だって勝率は美貴の方が上だもんねー」
「そんなの生ぬるいね。身長・体力は俺の勝ちだし、体重だって――」
「バーカ。どっちが生ぬるいのよ! 体重なんて勝ちたくもないし、身長や体力は○○が男なんだから当たり前でしょー」
「男ねぇ・・・ふーん、お前、俺のことちゃんと“男として”見てたんだな」
「なっ・・何言ってんのよ。急に・・・・別に男としてとかじゃなくても、あんたは男で美貴が女なのは生まれた時からのものでしょ・・・・」
少し顔が赤くなってるぞ。美貴。
なんて言いたかったけど、これ言うともっと赤くなるだろうしなぁ・・・あ、俺のほっぺたもな。
「でもさ。正直ちょっと嬉しかったな」
「え・・な、何がよ・・」
「いやさ、お前、俺の事普通に部屋に入れてくれるじゃん。まぁ、幼馴染だからってこともあるけどさ。でも、どっかで「どうせ何もしない」って思われてるんだなって思ってさ」
「・・・・・」
急に黙り込む美貴・・・・何だよ。なんか変な空気になったじゃんか・・・
俺そんなに変な事言ったか・・?
「・・・ねぇ、○○・・・」
「ん?何だよ・・」
「それじゃあさ・・・・逆に○○はどう思ってるの?美貴の事・・・」
「え? ど、どうって・・・別に・・・・」
いきなり何を聞いてくんだよ。こいつ・・・
っていうか、何だよ・・・この雰囲気は・・・・
「・・○○の方こそ・・・美貴の事、女と思ってくれてるわけ・・・?」
「あ・・え、えっと・・・・何て言うか・・まぁ、そうかな・・・・・」
や、やばい・・・絶対今顔赤いって・・・・っていうか耳が熱い
- 205 :名無し娘。:2006/10/13(金) 19:54 ID:v.ljimB2
-
「な、なぁ!も、もう辞めない?この話。ほ、ほらゲームしようぜ!ゲーム」
立ち上がり、ゲームが置いてある棚に向かおうとすると、
急に足首を掴まれた。
「ちょっ、転ぶだろ・・・み、美貴?」
振り向いて美貴の方を見ると、涙目になった美貴が、赤い眼で俺を見上げていた。
その顔は今まで見てきた美貴の顔の中でも・・・
「・・・・・○○、座って・・・・」
「あ、あぁ・・・」
足首を離され、俺はまた元の場所に座る。
美貴は俺の真正面に座り、ずっと下を見ている。
その姿は何度か見たことがある。そう・・・・何かを言おうと決心を固めている姿だ。
「・・・美貴ね。実はずっと思ってたことがあるの」
「・・・・・」
「美貴たちってさ。幼馴染としてずーっと過ごしてきたけど・・・・それもいつかは終わるんだなって思ってた。それがどんな形になるかはわかんないけどさ・・・・」
それは・・・俺にもあった感情だった。
俺たちは幼いころから一緒だった。そんな関係には、兄妹とか、家族とか、いろいろ表現方法があると思うけど、
でも、そのどれとも違う。それが“幼馴染”――
何て言うか、選択肢がたくさんある関係だと思う。
友達、恋人、夫婦、赤の他人・・・・そして、そのままの幼馴染。
そして、その選択肢を決定するものは・・・・お互いの気持ち次第なんだよな・・・・
- 206 :名無し娘。:2006/10/13(金) 19:54 ID:v.ljimB2
-
「でもね。もし終わるとしてもさ・・・美貴は、良い形で終えたいって思ってた。二人にとっての良い形でさ・・・・・ ねぇ、○○」
「・・・な、何・・・?」
「・・・・・・・・美貴と・・・美貴とエッ」
“プルルルル プルルルル”
・・まるで空間を切り裂くように、美貴の家の電話が鳴り響く。
それと同時に美貴が急に立ち上がり、部屋を出ようとドアの方へ走る。
「み、美貴!」
その姿を見て、俺はなぜか声をかけてしまった。
美貴はそんな俺を見ずに、ドアノブを掴んだまま――
「・・・ごめん。今日のことは忘れよ? ね・・・お願い」
そう言うと、ドアを開け、電話へと走る足音を遠くさせていく・・・・
「・・・・ふぅ・・・。何か・・・今日はめちゃくちゃ疲れた・・・・」
そんな独り言を言いながら美貴の机がある壁を見ると、
『美貴と○○。1992年2月26日』
と書かれた写真が貼ってあった。
「へぇ・・こんな写真貼ってあったんだ・・・・全然気付かなかった」
そう言いながら、近寄って見てみると。そこにはバカな格好で写る俺と―――
そんな俺の横顔を、赤い頬で見つめる美貴が写っていた。
おわり。
- 207 :名無し娘。:2006/10/13(金) 22:19 ID:bL97v7XA
- 3ヶ月ぶりに、美貴が俺の部屋に飲みにやってきた。
しかしどうも虫の居所が悪いらしい。
「グラス持ったままなに難しい顔してんのよぉ。ミキの酒が飲めないっての?」
・・・口が悪いのは普段通りなのだが、今日は手まで出してくる。
さっきもグーで殴られたばかりだ。何があったんだろ?
「ミキが飲んでやってるんだからアンタも飲むの!」
「ああ、もーイライラする!」
酔ってるのか?いや、そんなには飲んでないはずだ。
あー、またこっち向いて拳を繰り出してきそうな勢いだ。
俺だって殴られっぱなしで黙っているわけにはいかない。
美貴のパンチをかわしつつ、俺は間合いを詰めた。それから・・・
- 208 :名無し娘。:2006/10/13(金) 22:19 ID:bL97v7XA
- 頭を撫でてあげたら、美貴は驚くほどおとなしくなった。
『なんか辛いことでもあった?』
しばしの沈黙。
「・・・、よっちゃんと仕事のことで喧嘩した。」
そんなことだったのか。美貴もこう見えて女の子なんだよなぁ。
いつもとは違う美貴の表情を見て一種の優越感に浸りながら、
俺は美貴の願い事を聞いてあげることにした。
『そっかあ。俺でよかったら何でも協力するよ?』
「じゃあ・・・、ミキがいいって言うまでナデナデしてて。」
『ぷっ。』
「なによぉ、何でもしてくれるんでしょ?」
『はいはい、ごめんなさいお姫様。』
「わかればよろしい。」
- 209 :名無し娘。:2006/10/13(金) 22:21 ID:bL97v7XA
- 俺が膝枕するような格好でしばらく撫でているうちに、美貴は眠ってしまった。
そして、美貴の寝顔を眺めているうちに、俺も眠ってしまった。
翌朝―
「うそ、アンタなんでそこで寝てんの!?」
『なんでって言うか、ここ俺の部屋なんだけど。』
「そ、そうだったっけ。いま何時?8時半?あーこれ絶対遅刻だわ。
なんで起こしてくれなかったのよー。最っ低!」
・・・だめだこりゃ。
でも、美貴は普段の元気を取り戻したみたいだ。
玄関で、彼女の背中が「・・・ありがとね。」って呟いた。
- 210 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:43 ID:KYFGDTkA
- 朝もはよから差し込む光。さえずる小鳥。
さわやか過ぎるほど心地の良い秋の朝、ベッドの中で惰眠を貪る物体X。
身じろぎもせずに、一定のリズムを刻んですぅすぅと息を吐いている。
しかしその平穏はすぐそこに終わりが近づいていた。
なぜなら。
「やっぱお約束は守らんと」
ドアをそっと開けて部屋に侵入してくる一つの影。
そのままベッドの側に抜き足で接近したスネークは、ひとり頷いて悪戯っぽい笑みを見せる。
ちょいと寝顔を拝見……うーん布団に隠れてよく見えないけどカワイイ寝顔だ。
ニィと口角を上げて、お約束の醍醐味を堪能しつつ、早速本来の目的を行うことにした。
「朝だよー」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
優しく揺すりながら、目覚めの時をそっと告げる。
いやー優しいなあ自分と自画自賛するも、肝心の対象にさしたる反応は見られない。
どんどん過激になっていくアクション。
優しい朝の寝覚めを体験させるという当初の目標はあっさりと失われているのだった。
- 211 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:44 ID:KYFGDTkA
- 「おーきーろー! ホラ朝ですよー!」
仕舞いには激しくその体を揺さぶりながら、耳元に向かって叫んでいた。
ここまでされて起きないなんて相当のツワモノである。
やむなくその頬っぺたを引っ張ってみた。
無反応。
耳穴に生暖かい息を吹きかけてみた。
わずかに口元がひくつくだけ。
流石にそれ以上深くボディにアクセスするのは、ちょっとためらわれた。
親しき仲にも礼儀あり。
と格好付けてみたものの、正直な所反撃が恐ろしいというのが事実だ。
しかしこのままでは埒が明かない。
あまり穏便な方法をとっていては、時間に間に合わなくなってしまうかもしれない。
かくなる上はもっと過激な手段に訴えるべきか。
その内容を模索し、思わずにやにやと頬が緩んだ時、足元にゴスっと何がぶつかる感触がした。
ディスイズアドッグ。
見ればラブリーな犬が足元に鎮座ましましている。
なんだよ驚かすなよーと思わずそのキラキラとした瞳に突っ込みを入れた時、
興味津々で足を見ていたその犬はやおら愛らしい口を開いてそのままガブリと噛み付いてきた。
- 212 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:45 ID:KYFGDTkA
- 「ちょ、ちょっおまっ、うわあああっ!!!」
甘噛みだったのかさほど痛みは感じなかったが、如何せん予想外の衝撃に思わず動転してしまった。
その時、何とか踏みとどまっていたもう一方の足にも何やら生体反応が見られた。
「ま、マジすか」
やんちゃそうなそいつは予想を裏切らず、しかも今回はかなり本気で顎を閉じてきた。
言葉にならない悲鳴を漏らしつつ、完全にバランスを失ってふらりと体が傾いだ。
そのまま成すすべもなくベッドにダイブ。
当然の如くベッドで惰眠を貪る物体Xと激しく接触した。
サイレン、サイレン。
頭の中でレッドアラートが鳴り響く。
この状況で目を覚ましてしまったら確実に言い訳ができない気がする。
うわあうわあと慌てながら何とか身を起こそうとするもの、動転しているせいか中々うまくいかない。
それどころか何だか段々お互いの密着度が上がってきているような気配。
やはりここはもがくのではなく、もっと抜本的な対策を採らなければいけない。
そう思い、左手に力を込めてどうにか体の位置を遠ざけようとしたところ―――
- 213 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:45 ID:KYFGDTkA
- むに。
左の掌は、確実に無機物ではない何か柔らかいものに遭遇した。
世の半分を劣等感に苛む平均という概念化を行うと、確かに貧相であるかもしれないが、
それはその感触を理解できるほどにはちゃんと存在を主張していた。
だが、そのことについて思考を巡らす余裕は無かった。
なぜなら。
今まで頑なに閉じたままだった対象の瞼が突然開いた。
最初はどこか蕩けたようにぼんやりとしていた視点が徐々に定まってくる。
パチパチと何度か瞬きをして、その焦点が次第に俺の顔を中心に結ばれていく。
やがて完全に認識が行われ、その目に理解の色が宿る。
凍りつく時間。
「や、やあ、おはよー」
とりあえず間抜けな挨拶をしてみる。
「朝なのに夜這いとはやってくれるじゃん」
不機嫌が鼻声に包まれて恐ろしいほどの濃度で伝わってきた。
- 214 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:46 ID:KYFGDTkA
- しかし悲鳴を上げたり驚かれたりしないのは流石と言うべきか。
体の上にのしかかって、あまつさえ胸まで触っているわけだが、もしかして気づかれていないのだろうか。
何にせよどうせ逝ってしまうのであれば、今一度ここでこの柔らかいものを堪能してしまっても、
バチは当たらないのじゃないだろうか。
そう思い、とっさに手の末端神経に大胆な命令を下そうとする、その時。
「ねえ、今すぐ死ぬのと、記憶を失ってボケ老人として生きるのとどっちがいい?」
「あ、あはは、ハイ、すいません……」
「ほら、早くどきなさいよ」
「わ、わかった」
手早く身を起こし軽く咳払いをする。
その際チラッと見えた美貴の耳元は微かに赤くなっているような気がして、つい余計な口を開いてしまった。
「美貴ってさー、寝顔は結構カワイイのな」
「ば、バカなこと言ってんじゃねええええっ!」
強烈な打撃。
さらに犬どもの追い討ち。
その後平謝りに謝って、美貴が朝食を採っている間ずっと土下座し続けた結果、
どうにか今日の昼と焼肉食べ放題で手打ちにしてもらう事が出来た。
- 215 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:47 ID:KYFGDTkA
- 「ていうかさー、モーニングコールしてっつったのに何で起こしにくるワケ?」
「やっぱそういうお約束はちゃんとやったほうがいいかなあ、みたいな」
「お約束とかそういうのいらないんですけどー」
「でもさー幼馴染が起こしにくるとか萌えない? 萌えるっしょ?」
「萌えとか言うなキショイ」
「やっぱ裸エプロンで起こしにくればよかった?」
「そんなことしたらもう一生口きいて上げない」
「うーんそりゃ困るなあ」
「そうだよ、美貴だってそんな面倒なことイヤなんだからやめてよね」
「じゃあ今度美貴が俺のこと起こしに来てよ」
「やだよ、そんな面倒くさいこと」
「そしたら勝負パンツでお出迎えするのに」
「死ねボケ。もう絶対起こしになんて行かない」
そんな会話をしてからしばらく経って、世にも恐ろしい目覚めを体験したのは言うまでもない。
おわり
- 216 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:52 ID:PvuUwYPY
- 少し遅めの夏休みを取って帰省した。
近況を聞いてみて、隣に住んでいた幼馴染の美貴も丁度帰省しているという事を知る。
俺と美貴は共に地元を離れ、帰省の時期も合わない為にここ何年か会っていなかった。
だいぶ物置としての役割を果たす様になってきた自分の部屋で、
過去の出来事に思いを馳せていると、丁度お隣に人の気配を感じる。
わざわざ訪ねるにはやや気が引けていた俺だが、もしやという思いで玄関を出ると、
果たしてお隣の庭に、小柄で小顔、特徴的な声の美貴が、
数年前とあまり変わらない後姿で佇んでいるのを見つけた。
- 217 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:53 ID:PvuUwYPY
-
「美貴」
「…おぉ!すっごい久しぶりじゃん。元気にしてた?」
「あぁ。美貴も元気そうじゃないか」
「勿論でしょ。ふふっ、アンタあんまり変わってないね」
人懐っこい笑みを見せる美貴。
互いの近況報告もそこそこに、思い出話に花が咲き出す。
立ち話も何なので、近所を少し歩くことにした。
美貴は「インドア派だから」と若干渋ったが、無理やり連れ出す。
- 218 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:53 ID:PvuUwYPY
- 久しぶりではあるものの、見慣れた近所の街並み。
照りつける日差しとセミの鳴き声、そして隣を歩く美貴の存在が、
俺の記憶を数年前にタイムスリップさせる。
「アンタ背伸びたね」
と美貴が言う。俺と同じように、記憶の中と今を重ね合わせていたのだろうか。
「さっきはあんまり変わってないって言ってたじゃないか」
「それは雰囲気がって事」
「お前のほうこそ…」
「何よ。アタシは相変わらず背ぇちっちゃいまんまじゃん」
「ま、背に限らずというか何というか」
「何だって」
なんてやり取りで美貴に小突かれながら、歩みを進める。
小さい頃の遊び場だった神社に差し掛かったので、そこで涼むことにした。
- 219 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:54 ID:PvuUwYPY
- 「さっきさ」
「ん?」
「背は伸びたけど、変わってないねって話したじゃん」
「あぁ」
「実はさ、安心したんだよ」
そう言う美貴の横顔は、俺の記憶の中にあるより数段大人びた笑みを浮かべて
遠くを見つめている。改めてまじまじと見つめたまま、視線を逸らせなくなる。
俺は黙って次の言葉を待った。
「変わってない物を見て、何か昔を思い出せた。安心できる感じを思い出せたって言うか」
素直に喜んでいいのだろうか。
「疲れてんのか?」
「かもね」
嘆息して見せて、美貴が続ける。
- 220 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:55 ID:PvuUwYPY
- 「変わっちゃうものなんて、いっぱいあるじゃん。世の中ほとんどそうだし、美貴自身だってそう」
「俺だってそうだよ」
「でも…思い出させてくれる。変わっちゃいけない事を思い出させてくれた気がする。
…アンタから見て、美貴は変わった?変わっちゃった?」
「お前は…変わったよ」
「…」
「ずっと色っぽくなった」
「なっ…!」
驚いて目を見開き、徐々に頬が赤くなる美貴。
「あんたにまでそんな事言われたら…困っちゃうじゃんか」
と俯きだす。それを見た俺が
「なんてね。そうやってすぐ顔に出るところが変わってない」
と続けると
「くっ!このーっ」
と今度は美貴に小突かれた。
- 221 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:56 ID:PvuUwYPY
- だめだこりゃ。
どうも俺の役回りは以前から変わっていないらしい。
さっきの俺の言葉は決してウソじゃない。
でも幼馴染みとしての変わらない俺の存在が、美貴の助けになっているのだろうか。
「そろそろ戻るか」
「ん」
もしそうならば、立派に務めようじゃないか。今日だって昔のように家に送り届けてやるんだ。
傾きだした日の光に照らされた美貴を横目に見ながら思う。
「まだこっち居るんでしょ。時間あったらまた話そうよ」
「あぁ」
幼馴染み。
昔も今も、この関係が心地よい。
<終>
- 222 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:57 ID:dnwJcKvw
- test
- 223 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:57 ID:dnwJcKvw
-
「東京」と書かれたスケッチブックの隣で車が停止した。運転手
は助手席のドアをあける。
「君、ひとりかい?」
「はい。」
「乗りな。」
「ありがとうございます。」
男はスケッチブックをしまいながら車に乗り込んだ。車は発進した。
「こんなところでヒッチハイクなんて珍しいな。」
「ええ全然車がこなくて焦ってたんです。」
「だろうな。」
「本当にありがとうございます。」
「いいってことさ。旅は楽しい方がいいからな。」
「あ、申し遅れましたけど、僕●●と言います。」
「●●君か。えっと、俺は──って言うんだ。よろしく。てかさ
名前なんかよりなんか面白い話しようぜ。なんか旅の最中で面白い
話とかないの?」
「実は僕旅を始めたばかりなんです。」
「え、そうなの?なんか旅慣れてる感じだと思ったのに。」
「そう見えました?実はこの辺地元なんですよね。」
「そうなんだ?なに?じゃ、東京になにしにいくの?」
「実は友達が上京してて。」
「ほうほう。」
「で、僕も行こうって思ったんだけど、お金なくてでヒッチハイ
クで。」
「おいおい、親御さんは承知だろうね?」
「はい・・・反対してお金は出してくれませんでしたけど。お前の人
生だから好きにしろって。」
「そうか。そこまでして東京に出たいんだ。」
「そうなんです。」
「そっか。まぁ俺も地方から東京に出て行ったんだけどね。」
「そうなんですか?」
「ああ。でも俺は地方で就職して、会社の関係で東京に行くこと
になってさ。」
「東京は大変ですか?」
「いや俺は特にそうは思わなかったけどさ。夢を追いかけて東京
に出てった連中にはずいぶん大変そうなやつもいたよ。そういうの
じゃなきゃ大丈夫だよ。」
「あぁ、僕そういうのなんですよね。」
「え、君?」
「はい。実は僕音楽やってるんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
「はい。実はお金ないのもそれが原因で・・・」
「高いギターでも買ったか?」
「いや、実はCD作ったんです。」
「え?CD?すごいじゃん。売ってるのそれ?」
- 224 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:58 ID:dnwJcKvw
-
「まだ売ってはないです。東京に出たら売るつもりで録音した
やつなんで。いま持ってますよ聞いてみますか?」
「お、だんだん面白くなってきたね。でもちょっと待って。CDこ
っからじゃ入んないんだよ。ていうか伴奏なしで歌えない?」
「え、アカペラですか?」
「それくらいの度胸はあるだろ?今から売り込みに行くくらいな
んだから。」
「よっし、じゃあ『Last Day』って曲歌います。」
車に歌声が響く。歌は3分くらいの曲だった。
「いい歌じゃん。」
「そうですか?ありがとうございます。」
「心がこもってるよ。なんだめちゃくちゃ下手だったら面白いと
思ったのにな。」
「それ逆に気まずくないですか。」
「それもそうだな。いやでもいい曲だよ、ほんと。君が全部作っ
たの?曲とか歌詞とか。」
「そうです。」
「見た目によらず純真なんだな。あんな一途な恋の歌歌うと思わ
なかったよ。」
「え、僕ってどんな風に見えるんですか?」
「すごく遊んでそう。」
「うわっ。そうすか?」
「だね。」
「僕、めちゃくちゃまじめですよ。いやほんとですって。」
「わかったわかった。で、その歌詞だけどさ、実話なの?」
「え?」
「ほら、東京に女の子を迎えに行くって歌詞だよ。」
「あぁ現実と言うより願望入ってます。」
「願望?」
「そういう女の子がいたらいいな、っていう。」
「なるほどね。やっぱり妄想が作品作りには大事ってわけだ。」
「そうですね。」
- 225 :名無し娘。:2006/10/13(金) 23:58 ID:dnwJcKvw
-
運転手は男に飯を食わせた。話をしているうちに男の言う東京
の友達と言うのは、幼なじみの女だということがわかった。歌手
をしているらしい。
「その女の子を迎えに行くわけだ。『Last Day』みたく。」
「違いますよ。あれはあくまで想像ですよ。それに……」
「それに?」
「あいつ結構売れてるんですよ。だからそう簡単には会えないん
です。」
「そうなんだ。」
「僕も成功すれば会えるんですけどね。」
「はは、実はそれが目的だったりして。」
「……」
「っと、怒らないで。本気で言ったんじゃないんだから。ごめん。」
「いえ。…実はかなりそういう気持ちもあるんですよ。」
「そうなの?」
「変……ですよね。僕。」
「変じゃないよ。」
「そうですか?」
「それくらい好きなんだろ。」
「はい。」
「いいじゃないか。若いなぁ。」
「でもこんなことじゃうまく行かないですよね。」
「ん?」
「僕、本当に音楽も好きで東京に行こうって決めたんですけど、
こんな生半可な気持ちじゃやっぱりだめかなって思ったりして…
…。」
「今からもう一回引き返せっていうんじゃないだろうね。」
「まさか。もちろん決心はしたんです。」
「まだ少し迷いがあるな。大丈夫だよ君の歌は本当によかったと
思うよ。たとえそれが君の彼女をつかまえるための手段だったと
しても、伝えようとする気持ちって言うのかな、そういうのが俺
にも分かったよ。」
「そうですか。そういってもらえるとうれしいです。」
2人は無事に東京についた。男は運転手にCDを置いていった。
夕焼けが若者の船出を祝うようだった。ルームミラーから男が
消えるのを確認すると、運転手は彼の成功を祈った。
「俺の若い頃にもあんな勇気があったらなぁ。」
男は泣き始めた。男にも歌手の幼なじみがいた。藤本という名前だった。
end
- 226 :名無し娘。:2006/10/14(土) 00:11 ID:hAGxCQWM
- 第2回期限内エントリー作品まとめ
1 ID:vU/8Z4.6
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/113-132
2 ID:g3i/0tr6
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/133-152
3 ID:k20CQu22
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/153-167
4 ID:78Hq7fDY
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/168-169
5 ID:loGAHRnE
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/170-174
6 ID:uXBU/9.M
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/175-176
7 ID:7wTZMWfo
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/177-179
8 ID:sVbTKPV.
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- 227 :名無し娘。:2006/10/14(土) 00:12 ID:hAGxCQWM
-
9 ID:QNDmXXhc
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/187-190
10 ID:oGoSH3/g
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11 ID:4utTka3M
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12 ID:gKRNCFZI
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13 ID:eFWE/MVU
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14 ID:v.ljimB2
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15 ID:bL97v7XA
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/207-209
16 ID:KYFGDTkA
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/210-215
17 ID:PvuUwYPY
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/216-221
18 ID:dnwJcKvw
ttp://www.omosiro.com/~sakuraotome/live/test/read.cgi/bbs/1143224174/223-225
- 228 :チン亀太郎 ◆kaMeXBmqDk :2006/10/14(土) 00:15 ID:UxZKeU3E
- 「お、締め切りみたいだぞ。お疲れ様。」
「18個もネタ書いてくれたなんて、アンタ達意外に美貴のこと好きなんじゃん。」
「・・・調子に乗るなって。じゃあ今から『作者申告&作者予想期間』ってことらしいからネタを書いた固定の人は参加表明をしてくれ。
名無しの人も名無しだってことを言ってくれると予想しやすいからよろしくな。」
「あせって『○番書いたのは僕です!』とか言わないよーにね。まだ予想期間だから。」
「というワケで、今から『作者申告&作者予想期間』のスタートだ。」
- 229 :チン亀太郎 ◆kaMeXBmqDk :2006/10/14(土) 00:16 ID:UxZKeU3E
- >>227
ありがとうございます。
予想する時は>>227を参考にどうぞ。
- 230 :匿名 ◆TokDD0paCo :2006/10/14(土) 00:16 ID:LhIofwLs
-
三本書きました(・_・)/
- 231 :◆EriX.adiTg :2006/10/14(土) 00:21 ID:bABwOBWM
- 1コ書きました
- 232 :みきれな:2006/10/14(土) 00:21 ID:25GXkr2s
- 書きましたー
- 233 :エヌ ◆45KgZeCOYA :2006/10/14(土) 00:26 ID:vvU/xjpM
- 1つだけ書きました
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