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セントラル娘。

176 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:19

【1997年の章】

177 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:19

八月

178 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:20


シャ乱Qオーディションの合格者として平家充代の名前が読み上げられる。
少しはにかみながら話す平家をよそに不合格者の10人はテレビ東京を去る。

ASAYANではまた別のオーディションの開催が告げられる。
いくつかの企画の進行がテレビで流れる。
別の部屋では別の企画の中止が決定される。


オーディションに落ちたことはかなり大きなショックだったが、
飯田はすでに気持ちを切り替えている。
最終選考まで残った自信が彼女にとって大きな力となる。


だが彼女の夢の輪郭は少し歪む。
オーディションでの楽しかった記憶を辿る。
楽しいことはたくさんあったが、それは彼女の夢とは直接関係ないものだ。
自分が将来なりたいと思う未来図が
オーディションの前とは少し変化してきていることに飯田は気づく。


新千歳空港行きのチケットをみつめながら
次はどんなオーディションを受けようかなと飯田は考える。
 

179 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:21


不合格を告げられてから一時間ほど経っただろうか。
福田は自宅の部屋でCDをかける。
お気に入りの曲が流れ、福田は少し落ち着きを取り戻す。


一時間前まで福田がいた夢の世界はゆっくりと姿を消す。
明日学校でちょっとした行事があることを思い出す。
準備をしながら福田は曲を口ずさむ。


福田は自分の声が好きだ。
テレビから流れる自分の声ではなく、
自分がいつも聞いている自分の声が好きだ。
録音された自分の声を初めて聴いた時の違和感を思い出す。
あれは福田明日香の声ではないと福田は思う。


私がいつも聴いている声をみんなに聴かせてあげたい。
オーディションなんかに合格するよりもはるかに難しい夢が、
いつか実現する日が来ないかなと福田は思う。
 

180 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:22


中澤は靴も脱がずにホテルのベッドに身を投げる。
そんなことをしてももちろん、徒労感は中澤から抜けはしない。
会社は辞めなアカンかな、と中澤は思う。
テレビの影響力の大きさを今回のことで中澤は学んでいる。


目の前で閉じられた扉の予想以上の重さに中澤は絶望する。
彼女よりも歌も踊りも上手い子は10代でも腐るほどたくさんいる。
その事実は不合格よりも重く中澤の肩にのしかかる。
自分が重ねた年月を否定されるのは何よりも辛い。


中澤は今回のオーディションに費やした金額をざっと計算する。
思ったよりも少なかったかな、とも中澤は思うが、
そこで比較できる対象など何もないことに気づく。


何もない。
海外旅行。習い事。洋服や鞄。宝石。
どんな物に使ったお金も、今回使ったお金と比べることはできない。
あたしがこれまで稼いだお金は無駄ではなかったんかな。
そう思うと中澤の心は少しだけ軽くなる。
 

181 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/17(日) 09:23






そして悲劇は時と場所を変えて永遠に繰り返される。




 

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