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セントラル娘。

152 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:24

【1999年の章】

153 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:25

七月

154 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:25

市井紗耶香
矢口真里
保田圭
安倍なつみ
飯田圭織
石黒彩
中澤裕子

155 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:26


ASAYANに仰々しいアナウンスが流れ、モーニング娘。の解散が告げられる。
その決定がいかに意外なものであるかを番組は必死にアナウンスする。
視聴者はそれをいつものように少し冷ややかな視線で見つめる。
多くのアーチストを生んだこの番組で、また一つの企画が終わる。


番組の収録が終わり、しばしの間メンバー達は解放される。
まるで憑き物が落ちたかのように彼女達はぐったりとしている。
一人去り、二人去り、やがて部屋には中澤と安倍だけが残る。


中澤「そろそろ帰ろか。な」
安倍「ごめんね。裕ちゃん」
中澤「だからあんたのせいやないて」
安倍「みんな、怒ってるよね」
中澤「そう自分を責めんなって」
安倍「あたし、もっとこのグループで」
中澤「これからは一人や」
安倍「嫌だ。みんなで」
中澤「それはもう無理やから」


なにがみんなでやねん、と中澤は心の中で舌打ちする。
今後も一人で活動できるのは安倍一人くらいだろう。
だから解散するんだ。
他のみんなもそのことが全然わかっていない。
だから解散なんだ。


まだ泣いている安倍を見ながら、泣きたいのはこっちだと中澤は思う。
 

156 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:28


解散コンサートはセカンドモーニングの佳曲で彩られる。
最後の曲、Never Forgetを歌いながら保田は
福田明日香はこの解散についてどう思っているんだろうと思う。
最後にメンバーは一列に並んで挨拶を行う。
誰もが皆、そこに欠けている一人の人間について思いを寄せる。


幕が下り、メンバー達は舞台から下りて暗い通路を歩く。
市井はTVカメラを一瞬で見つける。
だがカメラは市井を捕らえることなく安倍の方へ向かう。
そこで順番を待つのもバカバカしいと思った市井は控え室へ戻る。
誰かいるだろうと思った部屋には保田しかいない。


市井「なんだ。圭ちゃんか」
保田「紗耶香。あんた泣いてんの?」
市井「泣くわけないじゃん」
保田「あたしは泣きたいよ」
市井「泣けばいいじゃん。カメラの前で」
保田「怒るよ」
市井「最後なんだから好きなようにすればいいじゃん」
保田「最初も最後もないよ」
市井「今日で最後だよ?」
保田「いいの。泣きたくないし怒りたくもない」
 

157 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:28


中澤「ちょっとは落ち着いた?」
飯田「うん。ありがと」
中澤「まあ好きなだけ泣いたらええがな」
飯田「だって・・・・・だって・・・・・」
中澤「明日からはそんな泣くこともないやろ」
飯田「裕ちゃんのバカ」


そう言うと飯田は本当に再び泣き出す。
よう泣く子やと中澤は半ばあきれながらそれを見つめる。
くしゃくしゃに歪みながらも飯田の泣き顔は美しい。
いつも飯田の考えてることはわからないが、
今この瞬間だけは理解できると中澤は思う。


解散に関連する全ての仕事が終了する。
中澤は自宅に着く。
テレビをつける。
チャンネルをいくつか替える。
そして消す。
テレビの下にあるラックをじっと凝視する。


このビデオの山は捨てずにずっと置いておこうと中澤は思う。
 

158 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:29






そして悲劇は時と場所を変えて永遠に繰り返される。




 

159 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:30

四月

160 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:30

市井紗耶香
矢口真里
保田圭
福田明日香
安倍なつみ
飯田圭織
石黒彩
中澤裕子

161 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:31


福田はウォークマンでNever Forgetを聴いている。
これは「当たり」の曲かもと福田は他人事のように思う。
彼女は歌っている時の自分の声が長く伸びていくような瞬間が好きだ。
この曲ではその瞬間をじっくりと楽しめそうな気がする。


モーニング娘。の解散がテレビで流れるのは今日のはずだ。
解散は唐突な気がするが、テレビ局や事務所には色々都合があるのだろう。
そういったことは自分とは何の関係もないことだと福田は思う。


解散コンサートにはたくさんの人が集まるだろう。
きっとこの先の人生で出会う人達とは比べ物にならないくらいたくさん。
私には私の思いがあるように、きっとお客さんにはお客さんの思いがある。
良いコンサートにしたい。福田は心からそう思う。
 

162 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:32


飯田「なっちはずっとライバルだと思ってました」
安倍「カオリがいたからここまで頑張れたと思います」
飯田「年も近かったし出身も同じ北海道だったし」
安倍「思い出すのは楽しかったことばかりです」
飯田「辛いこともあったけど今は笑って話せます」
安倍「勝ってる所もあるけど負けてる所もあると思います」
飯田「羨ましいなんて思ったことは一度もありません」
安倍「彼女と一緒にこのグループでやってこれてよかったです」
飯田「一番嬉しかったのはやっぱりデビューが決まった時ですね」
安倍「一番嬉しかったのはやっぱりデビューが決まった時ですね」


解散コンサートを終えて疲労困憊の二人は
あまり何も考えずに機械的にインタビューに答える。
反射的に出てくる答が台本通りなのか本心なのか二人にもわからない。


それでも飯田は安倍の答だけは覚えておこうと思う。
この収録が終わったら。
この会場を後にしたら。
このグループが完全に解散してしまったら。
きっと安倍とは二度と会わないだろうから―――と飯田は思う。
 

163 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:34


市井は笑顔で談笑している福田を見ている。
涙を見せない福田を見て、なんだか泣いている自分がバカらしいと思う。
飲んでいたジュースを半分以上捨てる。
この一年余り自分がやってきたことの薄っぺらさに嫌気が差す。
市井は自分の逃げ場所を探す。


これはきっと私じゃない。
モーニング娘。なんて誰も知らない。
私も知らない。
だって売れてないんだもん。
だから解散するんだもん。


市井の思いは現在と過去を行き来する。
未来のことなど何一つ頭には浮かんでこない。
最悪だ。
夢も希望もありゃしない。
解散するってこういうことなのかなと市井は寂しく思う。
 

164 :ジョルノ市井 ◆JOJO533w :2004/10/15(金) 12:35






そして悲劇は時と場所を変えて永遠に繰り返される。




 

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