(　´ⅴ｀)＜鈴木あみ裁判はいつ終わるんれすかね？

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75 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:15: Hunt2.Explosion Demon of the Sun

真っ暗だった。辺り一面、光すら射さない暗闇だった。

｢ここは…？｣
無限に続く暗闇の中で、ヤグチ…矢口真里は独り立ち尽くしていた。

｢オイラは… 誰…？｣
自分の名前すら忘れてしまった。自分は何者なのか…
その時、前の方から光が射してきた。余りの眩しさに、ヤグチは思わず目を凝らした。

｢ヤグチ…｣
前方から、人の声がしてきた。何となく聞き覚えのある女性の声であった。
目が慣れてきた真里は声のした方を向いた。
するとそこには、真里とさほど背丈の変わらない少女が立っていた。
柔らかな笑みで、温かさを感じる雰囲気。
ただ普通の人と違うのは、背中に大きく広がる白い翼…

｢行くよ、ヤグチ。｣
彼女は手を伸ばし、真里を招いている。

｢あ、ああ…｣
真里が手を伸ばそうとすると、突然前方の光が明るさを増してきた。
余りもの眩しさに、真里は再び目を凝らした。
そして数々の絵が、真里の頭を過ぎった。
76 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:16: 白と黒の衝突…
この星を覆い尽くすような閃光…
廃墟と化した大都市…
傷つき、動かなくなった自分の体…
そんな自分を見下ろす紺色の軍服…
辺りには様々な残骸…
残骸…
残骸…

｢うっ！！｣
真里は何かの音に気づき、目が覚めた。
それは緊急事態を知らせるサイレンだった。

『緊急事態発生！緊急事態発生！待機中の隊員は直ちに出動せよ！！』

けたたましく放送が流れる。
急いで体を起こす真里。
窓の外はまだ暗く、壁掛けの時計を見ればまだ真夜中である。

｢ちっ… 悪ぃ寝起きだぜ。一回裕子の野郎を問い詰めにゃ気がすまねぇな…｣
真里はそうつぶやくと司令室へと走っていった。
夜はまだ長い。
77 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:18: 夢から覚めた真里は、急いで司令室へと向かっていった。
そして慌しい隊員達の波をかわし、司令室へと入った彼女は、
司令室の中心にいた裕子を見つけるとそばに駆け寄っていった。

｢おい裕子ぉ！緊急事態っていったい何なんだよ！？｣
先の夢のこともあり、苛立ちを裕子にぶつける真里。
だが、そんな真里に構わず、裕子は周りにいた隊員に二三指示を与えると、
ゆっくりと真里に向き合った。

｢ヤグチ、落ち着いて聞いてくれるか。｣
いつもとは違う様子なので、この事態が尋常でないものを真里はすぐに感じ取った。
｢新宿のビル街でビル爆破が立て続けに起こったんや。しかもな…｣
｢しかも…？｣
｢単なるテロとかやとええねんけど、どうも主犯は狩娘らしいねん。｣
｢ふ～ん…｣
そう淡々と返しつつも、真里は自分の拳に力が入っていることに気づいていない。
特殊能力を持つ者同士の、命を懸けた戦いは避けられまい。
知らず知らずの内に、気分が高揚してきているのだ。
78 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:18: ｢爆弾使いか…｣
｢ヤグチ、心当たりはあんのか？｣
｢ああ。そいつを始末すればいいんだろ？｣
｢そうや。犠牲は最小限で頼むで。｣
｢無理な注文だね。オイラ達が戦えば、明日新宿と言う都市はこの国から消えてるさ。｣
｢それでも… や。ウチとの“契約”、忘れてるわけやないやろ？｣
｢…！｣
｢シティガーディアンズの一隊長なら、それに見合う行動を示してもらわなあかん。｣
先に問い詰める予定だったのが、逆に弱点として突かれてしまった。
かつて命を助けてもらった以上に、真里は裕子に対して“契約”で縛られている。
どんな形にしろ、この“契約”を破棄すれば、真里には味方がいなくなる。
利用するつもりが利用され続けていることは薄々感じている。
しかし、そんな契約上の味方でもいなければ、真里は困るのだ。

｢わーかった。わかったよ！さっさと行って、さっさと片づけてやるさ。
　アイツがいりゃあ、被害は最小限に済むかも知れないんだけけどな～…｣
吐き捨てた最後の言葉が、唯一の抵抗だった。

｢おめーら、行くぞ！｣
真里は待機していた部下達を引き連れ、エアバイクの格納庫へと向かった。
途中、何箇所か壁に拳をぶつけながら。
79 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:19: ｢おうおう… 苛立っとるな。｣
ただでさえ小さい背中が見えなくなるのを確認すると、
裕子は携帯端末をデスクのコネクタに繋げた。

慣れた手つきでパッドを叩くと、端末の画面にはある女性の顔が表示された。
裕子と同い年ぐらいで、ネズミっぽい顔つきの意志の強そうな女性だ。
少し視線を逸らすと、ガレージから次々とエアバイクが出動しているのが窓越しに確認できる。
先頭を行くのは勿論真里だ。

｢ヤグチ… コイツ相手に本当に被害を少なくしてくれるかいな…｣
裕子はそう呟くと、端末を操作して別の回線に接続した。
今度はテレビ電話のようで、しばらくすると相手が登場した。

『中澤さん、お呼びですか？』
若い声。先程中年の後ろをとった人物の声だ。
｢新宿の爆弾魔なんやけどな…｣
『はい、情報は入っています。狩娘のようですね。』
｢主犯は判っとるけど、他に配下のヤツがおるかもしれん。
　どうせザコやろうからとっつかまえて情報を得て来い。
　くれぐれもヤグチには気づかれないように頼むで。｣
『わかりました。』
80 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:19: 摩天楼の間をすり抜けると、やがて副都心･新宿が見えてくる。
だが、輝くビル街は見る影もなく、赤い炎の森と化している。

｢ひっでぇな…｣
都市の変わり様に、真里は呻いた。
シンボルでもある高層ビル群は無惨にも瓦礫の山とかし、周りに人々の死体が散らばっていた。
虫の息の人々の呻き声が熱風の起こす爆音と共に響き、血と焼けた人の臭いが充満していた。
中には腕や足だけという酷いものもある。

だが敵に対する怒りもそこそこに、真里は背後の隊員に指示を与える。
｢おめぇらは生きている人々の救助を優先しろ。ヤツはオイラが狩る｣
｢はいっ！｣
数人の精鋭を矢口に残し、素早く隊員達は散った。

｢野郎どもいくぜ！｣
｢はっ！｣
真里達はエアバイクを最高出力で噴かせると、勢い良く新宿の真っ只中へと突っ込んだ。
街中を疾駆するエアバイクは当然のように即座に発見され、真里の行く手を阻むが如く、
無数の人型ロボット達が武器を手にエアバイクの前に立ち塞がる。
爆弾魔の置き土産か、それとも便乗犯のものか、どちらにしろ敵に変わりない。

｢急な飛び出しは自殺行為だぜ。どきなっ！｣
そう言い放つと真里は右手を一閃し、衝撃波でロボット達を薙ぎ払った。
ロボット達はそれぞれぶつかり合って、みな無残に四散していった。
81 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:20: ｢フン… 今ごろノコノコ現れたんかい。ヤグチ…｣
あるビルの一室から、真里のエアバイク部隊を見据え、冷笑を浮かべる女性。
先程裕子の携帯端末に表示され、この事件の主犯の狩娘である。
彼女の背後には他に二人居並んでいた。
二人とも、年齢は彼女の半分ほどの少女だ。
｢おいお前ら。アイツはウチにやらせな。さっきの花火なんじゃ準備運動にもならなかったしな。｣
｢あれだけ暴れておいて、まだ足りませんか？｣
｢お豆、アンタ判ってないね～。ビルぶっ壊すのとレベルの高い狩娘と戦うんじゃ雲泥の差だよ。｣
｢そ、そうですかぁ…｣
お豆と呼ばれた、眉毛が特徴の少女は、納得がいかないようだ。
というより、狩娘同士の戦いを体験したことがないので、実感がわかないだけだ。

｢まあええわ。高橋とお前は渋谷方面に向かいつつ、被害を広げな。
　シティガーディアンズも手が出せないほどに、派手にやんなよ。｣
そう言い放つと、彼女は勇んで出撃していく。

その姿を見据えながらお豆と呼ばれた少女が苦笑しながら口を開く。
｢結局、矢口さんとやりたいだけじゃ…｣
｢あの人ぐらいの実力者なら、強き者を目の当たりにしたら戦わずにはいられないんちゃう？
　真の狩娘ってのは、生まれき戦いに飢えた戦士なんじゃないかなとあっしは思うよ。｣
もう一人の少女は、自分勝手な上司に呆れつつも一定の理解を示してはいる。
｢ま、それよりも指示は出たから、行くやよ。｣
｢了解。｣
82 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:22: ｢くそ！遅かったか！！｣
天高くそびえる摩天楼。
だがその人類繁栄の象徴たるビル群はすでに骨組みだけと化している。
隊員たちは苦虫を噛み潰したような表情でその様を見据え歯噛みして悔しがった。

｢落胆するのはまだ早ぇぜ。壊されたものはあとで立て直しゃいい。
　そしてオイラ達は犯人を狩ればいい… それだけの話なんだからよ。｣
そんな真里の傍らから、一人の部下が口を開く。

｢そうですよね隊長。俺達はシティガーディアンズの精鋭部隊。
　さっさとヤツらを見つけ出し、思い知らせてやりましょう！！｣
｢ああ… 期待してるぜ。だが、そいつの相手はオイラ一人だ。｣
｢え？そいつ？？？｣
｢…！！｣
思わず目を見開く隊員達。
気配すら感じさせず、自分達の居並ぶ真っ只中に単身現れた女性の姿に、
みな愕然とした表情を隠せない。

｢来たな。狩娘で爆破にかけてはトップクラスの女…｣
｢私と戦う資格があるのはやはりお前だけだね、ヤグチ。
　他の雑魚どもにはコイツらで遊んでもらおうかね！！｣
そう叫ぶと、女性は予め周囲に伏せておいた配下のロボット兵達に攻撃の合図を下し、
真里達の部隊を周囲から完全に包囲孤立させる。
83 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:22: 一方その様子は、真里と別れた救助部隊からも確認された。
｢おい！！隊長の小隊が奇襲を受けているぞ！！｣
｢何人か早く救援に向かわねば！！｣

｢無駄ですよ。｣
浮き足立つ部下達の叫び声のなか、二人の少女が割って入ってきた。
先程のお豆ともう一人だ。

｢な、何だお前たち！？｣
｢無駄とはどういうことだ？｣
｢あなた達、矢口さんたちを奇襲している方をご存知ですか？｣
叫ぶ隊員達に向かい問い掛けるお豆。
若干挑発口調なのが、非常に気になる。

｢まあ、知ってるのは元･狩娘の矢口さんだけですけどね。あなた達には教えておきますよ。
　あの方は『太陽の爆裂鬼』稲葉貴子。狩娘では並ぶ者のない、爆弾製造能力を持った方です。｣
｢爆破製造能力… あ、あの女が今回の！？｣
｢ええ。そして私たちは稲葉さん直属の狩娘、新垣理沙と…｣
｢高橋愛やよ。短い間やけど、よろしく。｣
｢よろしく… だと！？｣
理沙と愛の言葉と態度に部下達が騒然とする。
と同時に、誰ともなく特殊銃に手をかけていた。
84 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:23: ｢あらぁ…！｣
｢理沙ちゃん、あの人たちやる気やよ。｣
十数もの銃口を向けられても、余裕の理沙と愛。
それが隊員たちの戦闘意欲に火をつけた。

｢この小娘達も処分対象だ！さっさと始末して、矢口隊長を援護するぞ！全員構えっ！！｣

小隊長の命令に反射的に、みな銃床の下側を左手で押しあげる形でマシンガンを翻し、
二人の少女を斜めに傾くオプチカルサイトにおさめいれていた。

｢敵、狩娘二名。｣
｢了解！｣
｢撃てっ！！｣

ダダダダダダダッ！！

一斉射撃がはじまった。
まったく避けるそぶりも見せず、不敵な笑みを浮かべる二人の少女に、
対特殊犯罪用の高性能炸裂弾の嵐が襲い掛かる。
85 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:23: ｢無駄ですよ。｣
｢な…！？｣
理沙の一言で、全て止まった。銃弾が。
生気を失ったように、そのまま重力に任せて落ちた。
地面に落ちた鋭利な銃弾は、皆白い輝きを発している。
凍結している。

｢これはいったい…？｣
｢あっしの能力やよ。｣
呆気にとられる隊員たちの目の前に、愛は手のひらを差し出した。
すると手のひらの上に、半透明な球体が出現した。
と同時に、辺りの気温が急激に低下し始めた。

｢愛ちゃんは凍気を自在に操れるんですよ。
　離れた物体も凍らせることが出来ます。｣
理沙が説明する。
先の銃弾も、愛の凍気によってエネルギーが失われたというのだ。
常軌を逸脱している能力に、隊員達は固まった。

｢次はアンタ達の番やよ。｣
そう言い終わらない内に、局地的な吹雪が辺りを覆った。
残されたのは、見事な氷像のみだった。
86 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:24: それに気付かず、真里の部隊は稲葉貴子達に必死の抵抗を続けていた。
雑兵同士の抗争は、やはり貴子配下のロボット達がガーディアンズ側を圧倒している。
既に隊員の中には数人死者も発生しているようだ。
だが隊長である真里はそんな部下達に構っている暇はなかった。
それだけ稲葉貴子という狩娘のステータスが高いのだ。

｢おい… あんまりアイツらを殺すなよ。あとで上司に叱られんのオイラだからよ。｣
｢お前んとこの部下がヤワなだけやろ？助けてやればええやん。｣
｢生憎それが出来なくてな…｣
｢ふん、安心しいや。お前が上司とやらに叱られることはない。
　この稲葉貴子がこの場でお前を狩ってやるからや！！｣
すると貴子の周囲に、ビル瓦礫やら小型のメカやら、あらゆる物質が集まり始めた。
貴子を中心とし、一種のバリアを築いているようにも見える。

｢ウチの“能力”はどんなガラクタからでも爆弾を作れること。こんな風にな！｣
すると、浮遊しているガラクタはいくつかのまとまりに収束すると同時に、
みるみるうちにその形状を変化させていき、球体へと化してゆく。

｢…今更言われんでも知ってる。｣
すると真里は隊員達の屍の上を飛び越えながら、貴子と距離を置いた。
87 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:25: だがそのタイミングを見計らったかのように、貴子は爆弾を放った。
｢逃げるのは結構やけどな、次の動作までには必ず隙が生じるで！！｣
｢どうかね…｣
貴子の言葉に冷笑を浮かべる真里。

｢セクシービームサーベル！！｣
真里はエネルギーを収束させ、右手に鞭状の武器を創り上げた。
彼女は爆弾が接触するよりも早くサーベルを出現させると、
見えない斬撃で爆弾の雨を貴子に弾き返した。

(そいつはフェイクやでヤグチ！！)
貴子は新たな爆弾を手に取ると、帰ってきた爆弾にそれをぶつけ、
お互いの爆風でその威力を相殺する。
辺りは黒煙に包まれた。

｢行け！ロボットども！！｣
貴子が叫ぶ。
と同時に、ガーディアンズ隊員を片付け、手持ち無沙汰だったロボット達が、
弾かれたように煙の中から真里に向かって飛んできた。

｢ザコどもに構っているヒマねぇんだよっ！！｣
ビームサーベルを一閃させ、一気にロボット兵を斬る真里。
88 ：忍者おじゃ丸：2003/11/21(金) 00:25: だが次の瞬間…

　ギィンッ！！

｢なにぃっ！？｣
突如真里の周りにロボットの残骸が集まり、真里を封じ込めてしまう。
残骸は次第に収束すると同時にその形状を変化させていき、十字架を形成していく。
唖然とする真里を捕らえたまま、十字架は地面に突き刺さった。

｢かかったなヤグチ。お前はもうその十字架からは逃げられん。｣
｢くっ… くそっ！！｣
真里の両腕両足は十字架に飲み込まれており、自由が利かない。

｢おまえは光のエネルギーを自由に操るが、手が使えなければ意味がないやろ？｣
｢チッ…｣
舌打ちをしつつも、真里は力ずくで拘束を破ろうとした。
だが、逆に十字架に締め付けられてゆく。

｢さっきの訂正や。ウチの“能力”はどんなガラクタからでも爆弾を作れること。
　ただしその際にはウチの意のままに形作ることができる。こんな風にな！
　爆弾とその威力だけに気ぃとられすぎやで、おチビちゃん。｣
｢くっ… このぉ…！｣
｢覚えておけ、ザコにもこんな利用法もあるって事をな。さあ、花火の時間や。｣
次の瞬間、貴子は十字架に向け右拳を振りかざした。それが起爆の合図だった。

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