(　´ⅴ｀)＜鈴木あみ裁判はいつ終わるんれすかね？

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59 ：忍者おじゃ丸：2003/11/19(水) 23:45: Hunt1.Mid-Night of Tokyo City

東京。満月はとうに南天高く上っていたが、街が眠りにつく気配はない。
夜の大地を照らす満月の存在を否定するがごとく、ビルのネオンが輝く不夜城。
車から吐き出される排ガス、店々から絶え間なく立ち昇る蒸気や煙、
そして行き交う人々の呼気で、辺りの空気は沼のように澱んでいる。

大通りからそう遠くないところに、それはあった。
浮浪者やならず者の巣、スラム街。
その一角で死闘が繰り広げられていた。

ドガァッ！！

大男が金網を突き破り背後へと吹き飛ばされていく。

｢くそぉ… あのガキァ… どこへ行きやがった！？｣
大男はゆっくりと上体を起こし周囲を見回す。

｢出てきやがれぇぇっっ！！｣
巨漢は凄まじい声で咆哮すると、手当たり次第に周りの建物を壊し始めた。
その鍛え上げられた両腕はハンマーのごとく、コンクリ壁を砕いてゆく。
恐らく、その両腕にに捕まったら、人間であれば難なく四肢を引き千切られてしまうだろう。
普通の人間ならば…
60 ：忍者おじゃ丸：2003/11/19(水) 23:50: ｢おいおい。そんなにはしゃがなくたってオイラは逃げやしないって。｣
声のするほうに目を向けると、なんとも小柄な少女の姿が目に入った。
その途端、男の目の色が変わった。

｢そこかぁぁぁぁぁぁ！！｣
獲物を見つけた野獣のように凶悪な笑みを浮かべると、
巨漢はその全身にエネルギーを漲らせ、その少女へと襲い掛かってゆく。
だが…

｢遅いよ…｣
小柄の少女が漆黒の空へと飛翔する。
常人の何倍もの跳躍力は、それはまさに飛翔というに相応しい“能力”だ。

彼女はそのまま巨漢の背後に降り立つと、振り向きざまに左腕を巨漢に向けた。
そして素早く…
｢セクシービーム！｣
一条の光線を発射した。
61 ：忍者おじゃ丸：2003/11/19(水) 23:55: ｢ぐぁっ！！｣
うめき声を上げ巨漢が後方へと倒れ伏す。
｢ここまでだね…｣
｢なめるなぁっ！！｣
大男がその拳にエネルギーを収束させ、少女に向かって振り下ろす。
だがそれを少女は見極めて交しつつ、巨漢の胸部に右手をかざした。
｢そっちこそ、なめんなよ。｣
そして素早くエネルギー波を放った。

｢ぐあっ… バ… カ…… な…｣
胴体に穴をあけられ、為す術も無く倒れ込む巨漢。
少女はそんな彼を冷ややかに見詰めていた。
その余りに冷たい視線に思わず身をすくませる巨漢。
｢ま、待ってくれ！助けてくれ！命は… 命だけはぁっ！！｣

迫り来る彼女に哀願するように叫ぶ大男。
そんな彼に向かって少女は冷ややかに言い放つ。
｢そんなこと言われてもさぁ、アンタ相当な殺人鬼じゃん。
　裁判やっても死刑だからさ、助けても意味ないんだよね。
　それに、助けるのがオイラの仕事じゃないんだよ。じゃ！｣
｢え…｣
それがその男の最後の言葉だった。
黄色い閃光に飲み込まれ、その体は塵一つ残さず消えてゆく。
62 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:00: ｢ふん… オイラをチビってバカにした罰だ。筋肉だけのデカ物はキライなんだよ。｣
男の消滅を確認すると、少女は、短く彼(のいた場所)に向かって呟いた。
その時…

｢隊長！！ヤグチ隊長ご無事でしたか！？｣
数人の男が彼女のもとに走りよってくる。
皆市街戦でも行うような格好である。

隊長と呼ばれた少女、ヤグチは彼らの姿を見止めると静かに口を開いた。
｢見ての通りだよ。それよりこいつの手下どもは？｣
｢はっ、それは我々特殊部隊が全て漏らさず処分いたしました。｣
｢あっそ… じゃ、これで今回の任務は終了だな。後の事は処理班に任せて帰るぞ。｣
｢はっ！！｣
帰還の指示を部下に下すと、ヤグチはエアバイクに乗り込み、颯爽とその場を後にする。

｢すげえな… 流石はヤグチ隊長だ…｣
ヤグチを追い、エアバイクに乗り込みながら、一人の隊員が口を開く。
｢ああ、あの大男にゃ他の部隊員が既に１０人やられてるってのに、
　相手に反撃すら許さずにさっさと処分しちまうんだもんな～…｣
｢やはり、元･狩娘(ハンター)だけはあるな。格が違うな。｣
｢オレも能力者に生まれたかったぜ…｣
他の隊員も口々に隊長であるヤグチを賞賛する。
そんな彼らの声を聞いてか聞かずか、ヤグチは夜のハイウェイを飛ばす。
苛立ったように歯を噛み締めながら。
(ぬぁにが隊長だ。こちとら好きでやってんじゃねぇよ…)
63 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:05: 狩娘－Hunter－

時は２２世紀…
科学分野の著しい発達により、人類はかつてないほど豊かな生活を送っていた。

だが、それはあくまで表面上の話で、犯罪も複雑かつ巨大なものとなっていた。
人間性思考を備えたロボットの兵器利用、遺伝子操作による戦闘的な人体改造、
科学の発展そのものが犯罪の発展に繋がるようになっていた。
このような犯罪は急激に増加し、一時は深刻な社会現象になるに至った。

その事態を収拾すべく発足したのが、対特殊犯罪警察組織“シティガーディアンズ”だった。
だが相手は人間以上の身体能力を備えたロボットや改造人間。
当然人間をどんなに訓練しようと彼らに対抗するのには限界がある。
故に、“シティガーディアンズ”のメンバーには特殊訓練を受けた人間の他に、
優秀な戦闘能力を持つロボットや改造人間も混ざっているのだ。

ヤグチもまた、狩娘(ハンター)と呼ばれる特殊能力を備えた改造人間である。
彼女は一部隊の隊長として、日々都市の平和を脅かす者を狩るのであった。
しかし…
64 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:10: ｢お疲れ、ヤグチ。｣
その日の任務を終え、ガレージにエアバイクを停めるヤグチに向かって、
明るく声をかけてくる女性が一人。
彼女は中澤裕子。“シティガーディアンズ”の総指揮を任されている。
前線に立つことは今は無く、この基地で隊員のサポートをする。
隊員からの信頼は非常に厚く、頼れる姉御的存在でもある。

｢出迎えごくろうさん。｣
素っ気の無い挨拶すると、ヤグチは足早に自室に向かった。

｢ったく、もう少し気の利いたことは言えへんのかいな。｣
廊下の角に消えたヤグチに向かって、裕子は呆れ半分で呟いた。
｢あのじゃじゃ馬も、いつまで下でいてくれるかな…｣
65 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:15: ザァァァァァァァァァ…

ヤグチはシャワーを浴びていた。
水量を最大にして、滝のようなシャワーを浴びる。
それが彼女の仕事後の日課であった。
だが、仕事の汗を流すとか、疲れを飛ばすという意味で浴びてるわけではない。
ただ、大量の湯を肌に打ちつけ、熱とわずかな衝撃を感じること。
それが彼女が唯一ヒトでいられる瞬間であった。

｢ふぅ…｣
ヤグチは大きく息を吐き、自分の両手を見つめた。
健康的な色、つや、そしてよく水滴を弾く様は、若さの証だ。
だが、ヤグチはそんな恵まれた体に納得はしていない。
年齢の割に、身長が150cmに満たないとかいう問題ではない。
指紋も生命線も汗腺もあり、何もかも常人と変わらない皮膚の内側…
彼女の体内の大半は普通の人間とは異なる。
その違いが能力と引き換えの犠牲であり、小さな体に刻まれた大きな傷だ。
66 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:20: ドクン…！

真っ黒な… 闇に包まれた世界が続く。

(…ここはどこ…？)

真っ黒な闇の中にヤグチただ一人。
浮遊感も重力感もまるでない。

(…オイラは… 一体なんだ？どうしてここにいる！！）

その次の瞬間、ヤグチの頭に鈍い激痛が走り、目から火花が飛び散った。
それと同時に声が、どこかで聞いた声が聞こえてきた。

『ヤグチ逃げろ！ここは……が抑えるから！！』
『死ねぇ！ ……の仇ぃ！！』

閃光… 爆音… 衝撃…

｢うああああああああああっ！！！｣
強烈な痛みと共にヤグチの意識は闇に飲み込まれた。
67 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:25: ｢あああああっ！！｣
一吠えして、ヤグチはシャワーを止めた。
シャワーを全開にしていると、いつしか回りの音が聞こえなくなる。
自然と自分の体のことを考え、深みにはまる。
そして今のように、過去の断片がフラッシュバックする。
これ以上続けると、自分であり続けることが困難になる。
だから止めた。
現実に戻ってきた。

ピチョン… ピチョン…

垂れた前髪から落ちる水滴が床に落ちる音。
ヤグチはその音にあわせて呼吸を整える。
いつもと変わらない日課、それゆえに疲れる日課。
ヤグチはいつもこうして疲れに疲れてから眠る。
68 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:30: 閑静な一等地に佇む豪奢な邸宅。
その一室… 広いホールに設置された一台のグランドピアノを、
品のいいとはいえないスーツに身を包んだ一人の中年男性が奏でていた。
弾いている曲もクラシックではなく、昔流行った歌謡曲のようなものだ。
調子よく歌まで歌っている。

｢どうですか、矢口真里の成績は？｣
そんな彼の傍らで紺の軍服に身を包んだ一人の女性が口を開く。
彼女は一枚のデータディスクを手に愉快そうに笑みを浮かべていた。

｢さすがに元･狩娘だけはあるな。ホンマ処理がスムーズに進むわ。
　それから、あの娘の経歴に関しては調べられるだけ調べておいた。
　詳しくはそのディスクを見てくれればわかる。｣
｢ほな、こっちもお渡しします。｣

ピアノを奏でながら答える中年に、軍服の女性も別のデータディスクを取り出すと、
中年の背後に立っている、これまたヤクザなスーツの中年の男に手渡した。

｢…確かに…｣
どちらかといえば締まりの無い、下品な笑みが印象的なその男は、
女からディスクを受け取ると、手に持った携帯端末でそのデータ内容を確認する。
69 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:35: ｢それにしても中澤、狩娘をよく配下に置いたな。裏切りはせんのか？｣
ピアノの中年が女性… “シティガーディアンズ”総指揮の中澤裕子に向かって口を開く。

｢大丈夫ですよ。あの子との間には“契約”があります。｣
｢“契約”ね…｣
携帯端末を見ながら、もう一人の中年が呟く。
｢そっちの管理は大丈夫なんだろうな？｣
｢ええ。一番使える“駒”を配置してありますので。｣
｢駒？｣
｢ええ、ウチ直属の優秀なヤツが。｣
裕子は自信満々といった様子で、男達に答える。
｢もう既に貴方の傍におりますがね。｣
｢…！｣

ピアノの演奏が止まった。

｢今日も完璧です…｣
何時現れたのか、知らぬ間にピアノの男の真後ろに誰か付いていた。
その者の背中に右腕を押し付けている。
何時でも武器や技をを出せる体勢なのか。
それとも単なる威嚇なのか…
70 ：忍者おじゃ丸：2003/11/20(木) 00:40: ｢おいおい、何もそこまでしなくてもええよ。｣
｢…わかりました。｣
次の瞬間には、気配もろとも消えうせていた。

｢駒か… ホンマお前も中々喰えんヤツやな。｣
平静を装いつつも、男の心中は決して穏やかではない。
いつの間にか全身が汗でびっしょりになっていた。
本気で殺されるかと思った。

｢喰えんヤツですか… お褒めの言葉と受け取っておきますよ。
　ほな、ウチは次の用事があるんでこれで失礼しますわ。｣
そう言うと裕子は一礼し、足早に中年達の前から立ち去る。

その姿を見つめながら、中年は先ほど裕子からディスクを受け取った男に向かって口を開く。
｢和田さん… 兼ねてよりの打ち合わせ通り、『M-Force』の量産頼みますよ。
　本格的な戦力増強までには、まだいくらか時間がるはずやとは思いますけど。｣
｢わかった。研究所の方には急ぐよう指示はしておく。いよいよやな…｣
｢ええ。今を置いて他に好機はないでしょうや…｣
椅子から立ち上がると、中年は窓の外を見詰めると口元に笑みを浮かべる。
｢オレらがこの国、いやこの星の覇者となる絶好の機会はな…｣

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